(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】打込機
(51)【国際特許分類】
B25C 1/06 20060101AFI20220809BHJP
B25C 1/04 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
(21)【出願番号】P 2020548468
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036146
(87)【国際公開番号】W WO2020059666
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2018176893
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 貴士
(72)【発明者】
【氏名】塩屋 光司
(72)【発明者】
【氏名】相澤 宗太郎
(72)【発明者】
【氏名】安富 俊徳
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199670(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/182508(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/06
B25C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び前記第1方向とは逆の第2方向に作動可能であり、かつ、前記第1方向に作動して止具を打撃可能な打撃部と、
前記打撃部に設けられた第1伝達部と、
所定方向に回転する回転部材と、
前記回転部材に設けられ、かつ、前記第1伝達部に係合及び解放可能な第2伝達部と、を有し、
前記打撃部は、前記第2伝達部が前記第1伝達部に係合していると前記第2方向に作動可能であり、かつ、前記第2伝達部が前記第1伝達部から解放されていると前記第1方向に作動可能である打込機であって、
前記第2伝達部は、前記回転部材の回転方向に沿って配置され、かつ、所定方向に回動して前記第1伝達部に係合することで、前記打撃部を前記第2方向に作動させる第1係合部と、前記所定方向に作動することにより、前記第1伝達部に係合され、かつ、前記所定方向とは異なる別方向に作動することにより、前記第1伝達部から係合が解放される第2係合部と、を有し、
前記第2係合部は、前記第1伝達部と接触した状態において、前記回転部材を前記所定方向に回転させる回転力の反力として、前記第1伝達部から受ける荷重によって初期位置から前記別方向に作動して、前記第1伝達部から解放され、前記第1伝達部から解放された前記第2係合部を、前記初期位置へ戻す戻し機構が設けられている、打込機。
【請求項2】
前記回転部材を収容するケースが設けられ、前記戻し機構は、前記ケースの内面に設けた張り出し部である、請求項1記載の打込機。
【請求項3】
前記第2係合部はピンまたは歯部である、請求項1または2記載の打込機。
【請求項4】
前記第2係合部は、前記回転部材に対して支持軸を中心として回動可能であり、前記第2係合部は、前記支持軸を中心として前記別方向に作動することにより、前記第1伝達部から解放される、請求項1記載の打込機。
【請求項5】
前記回転部材は、前記第
1伝達部に接近する方向及び前記第
1伝達部から離間する方向に作動可能であり、前記回転部材が前記第
1伝達部から離間する方向に作動すると、前記第2係合部が前記別方向に作動し、かつ、前記第2係合部が前記第1伝達部から解放される、請求項1乃至3の何れか1項記載の打込機。
【請求項6】
前記打撃部は、前記第1係合部が押し付けられる荷重受け部を有し、前記回転部材は、前記第1係合部を前記荷重受け部に押し付けた反力により、前記第
1伝達部から離間する方向に作動する、請求項5記載の打込機。
【請求項7】
前記回転部材が前記第1伝達部から離間する方向に作動した後、前記回転部材が前記第1伝達部に接近する方向に作動することを阻止する第1ストッパが設けられている、請求項5または6記載の打込機。
【請求項8】
前記回転部材にガイド部が設けられ、前記第2係合部は、前記ガイド部に沿って前記別方向に作動可能である、請求項1記載の打込機。
【請求項9】
前記第2係合部が前記別方向に作動した後、前記第2係合部が前記第1伝達部に係合する位置に戻ることを阻止する第2ストッパが設けられている、請求項8記載の打込機。
【請求項10】
第1方向及び前記第1方向とは逆の第2方向に作動可能であり、かつ、前記第1方向に作動して止具を打撃可能な打撃部と、
前記打撃部に設けられた第1伝達部と、
所定方向に回転する回転部材と、
前記回転部材に設けられ、かつ、前記第1伝達部に係合及び解放可能な第2伝達部と、を有し、
前記打撃部は、前記第2伝達部が前記第1伝達部に係合していると前記第2方向に作動可能であり、かつ、前記第2伝達部が前記第1伝達部から解放されていると前記第1方向に作動可能である打込機であって、
前記第2伝達部は、初期位置と、作動位置に移動可能に設けられていて、前記第2伝達部は、前記打撃部に設けられている付勢部材によって、前記初期位置から、前記作動位置に移動し、ノーズ部には、さらに戻し部を有し、前記第2伝達部は、前記作動位置に移動後、前記戻し部によって、前記初期位置に移動することを特徴とする打込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止具を打撃する打撃部を備えた打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、止具を打撃する打撃部を備えた打込機は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された打込機は、電動モータ、打撃部、蓄圧室、動力機構、射出部、マガジン、バッテリ、コントローラ、トリガを有する。打撃部は、蓄圧室の圧力を受けるピストンと、ピストンに固定されたドライバブレードを、を有する。ドライバブレードは第1伝達部としてのラックを有する。ラックは、複数の突起部により構成されている。動力機構は、ホイール及び第2伝達部を有する。ホイールは、電動モータの回転力で回転する。第2伝達部は、ホイールの回転方向に沿って設けた複数の係合部を有する。マガジンから射出部に釘が供給される。
【0003】
特許文献1に記載された打込機は、トリガに操作力が付加されると、コントローラがバッテリの電力を電動モータに供給し、電動モータが回転する。電動モータの回転力でホイールが回転し、かつ、ホイールに設けた係合部が、ドライバブレードに設けた突起部に係合すると、打撃部が上死点に向けて作動する。ホイールに設けた係合部が、ドライバブレードに設けた突起部から解放されると、打撃部は、蓄圧室の圧力で下死点に向けて作動し、ドライバブレードは、射出部の釘を打撃する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、第2伝達部が第1伝達部から解放される過程で、第1伝達部または第2伝達部の少なくとも一方の負荷が増加する、という課題を認識した。
【0006】
本発明の目的は、第1伝達部または第2伝達部の少なくとも一方の負荷が増加することを抑制可能な打込機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態の打込機は、第1方向及び前記第1方向とは逆の第2方向に作動可能であり、かつ、前記第1方向に作動して止具を打撃可能な打撃部と、前記打撃部に設けられた第1伝達部と、所定方向に回転する回転部材と、前記回転部材に設けられ、かつ、前記第1伝達部に係合及び解放可能な第2伝達部と、を有し、前記打撃部は、前記第2伝達部が前記第1伝達部に係合していると前記第2方向に作動可能であり、かつ、前記第2伝達部が前記第1伝達部から解放されていると前記第1方向に作動可能である打込機であって、前記第2伝達部は、前記回転部材の回転方向に沿って配置され、かつ、所定方向に回動して前記第1伝達部に係合することで、前記打撃部を前記第2方向に作動させる第1係合部と、前記所定方向に作動することにより、前記第1伝達部に係合され、かつ、前記所定方向とは異なる別方向に作動することにより、前記第1伝達部から係合が解放される第2係合部と、を有し、前記第2係合部は、前記第1伝達部と接触した状態において、前記回転部材を前記所定方向に回転させる回転力の反力として、前記第1伝達部から受ける荷重によって前記別方向に作動して、前記第1伝達部から解放され、前記第1伝達部から解放された前記第2係合部を、前記初期位置へ戻す戻し機構が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態の打込機は、第1伝達部または第2伝達部の少なくとも一方の負荷が増加することを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の打込機の一実施形態を示す側面断面図である。
【
図2】(A)は、打込機の要部を示す側面断面図、(B)は、ホイールに設けた可動片の一例を示す側面図、(C)は、ホイールに設けた可動片の変更例を示す側面図である。
【
図3】(A)、(B)は、
図1の打込機に設ける変換部の第1実施例の作動過程の前半を示す図である。
【
図4】(A)、(B)は、変換部の第1実施例の作動過程の後半を示す断面図である。
【
図5】(A)、(B)、(C)、(D)は、変換部の第1実施例の他の構成の作動過程を示す断面図である。
【
図6】(A)、(B)は、
図1の打込機に設けた変換部の第2実施例の作動過程の前半を示す断面図である。
【
図7】(A)、(B)は、変換部の第2実施例の作動過程の後半を示す断面図である。
【
図8】(A)、(B)は、変換部の第2実施例の平面断面図である。
【
図9】変換部の第2実施例の他の構成を示す断面図である。
【
図10】(A)、(B)は、変換部の第2実施例の更に他の例における作動過程の前半を示す断面図である。
【
図11】(A)、(B)は、変換部の第2実施例の更に他の例における作動過程の後半を示す断面図である。
【
図12】(A)、(B)は、変換部の第3実施例における作動過程の前半を示す断面図である。
【
図13】(A)、(B)は、変換部の第3実施例における作動過程の後半を示す断面図である。
【
図14】(A)、(B)は、
図13(B)の要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の打込機に含まれるいくつかの実施形態のうち、代表的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1及び
図2に示す打込機10は、ハウジング11、打撃部12、ノーズ部13、電源部14、電動モータ15、減速機構16、変換部17及び蓄圧容器18を有する。ハウジング11は、打込機10の外殻要素であり、ハウジング11は、シリンダケース19と、シリンダケース19に接続されたハンドル20と、シリンダケース19に接続されたモータケース21と、ハンドル20及びモータケース21に接続された装着部22と、を有する。
【0012】
電源部14は、装着部22に取り付け及び取り外しが可能である。電動モータ15はモータケース21内に配置されている。蓄圧容器18は、キャップ23と、キャップ23が取り付けられるホルダ24と、を有する。ヘッドカバー25がシリンダケース19に取り付けられており、蓄圧容器18は、シリンダケース19内及びヘッドカバー25内に亘って配置されている。
【0013】
シリンダ27がシリンダケース19内に収容されている。シリンダ27は金属製、例えば、アルミニウム合金製または鉄製である。シリンダ27はシリンダケース19に対して中心線A1方向及び径方向に位置決めされている。圧力室26が、蓄圧容器18内及びシリンダ27内に亘って形成される。圧力室26に圧縮性気体が充填されている。圧縮性気体は、空気の他、不活性ガスを用いることができる。不活性ガスは、一例として、窒素ガス、希ガスを含む。本実施形態では、圧力室26に空気が充填されている例を説明する。
【0014】
打撃部12は、ハウジング11の内部から外部に亘って配置されている。打撃部12は、ピストン28及びドライバブレード29を有する。ピストン28は、シリンダ27内で中心線A1方向に作動可能である。ピストン28の外周面にシール部材114が取り付けられている。シール部材114の外周面は、シリンダ27の内周面に接触してシール面を形成する。
【0015】
ドライバブレード29は、一例として金属製である。ピストン28とドライバブレード29とが別部材で設けられ、ピストン28とドライバブレード29とが連結されている。ドライバブレードは、
図3(A)に示すラック84を有する。ラック84は、中心線A1方向に間隔をおいて配置した複数の突起部85を有する。打撃部12は、中心線A1方向に作動可能である。
【0016】
ノーズ部13は、シリンダケース19の内外に亘って配置されている。ノーズ部13は、バンパ支持部31、射出部32及び筒部33を有する。バンパ支持部31は筒形状であり、かつ、ガイド孔34を有する。ガイド孔34は中心線A1を中心として配置されている。
【0017】
バンパ支持部31内にバンパ35が配置されている。バンパ35は合成ゴム製、シリコンゴム製の何れでもよい。バンパ35は環状であり、バンパ35はガイド孔36を有する。ガイド孔36は中心線A1を中心として設けられている。ドライバブレード29は、ガイド孔34,36内で中心線A1方向に作動可能である。バンパ35は、ピストン28から荷重を受けて弾性変形する。
【0018】
射出部32はバンパ支持部31に接続され、かつ、バンパ支持部31から中心線A1方向に突出している。射出部32は射出路37を有し、射出路37は中心線A1に沿って設けられている。ドライバブレード29は、射出路37内で中心線A1方向に移動可能である。
【0019】
図1のように、モータケース21内に電動モータ15が配置されている。電動モータ15は、ロータ39及びステータ40を有する。ステータ40は、モータケース21に取り付けられている。ロータ39はロータ軸41に取り付けられ、ロータ軸41の第1端部は、軸受42を介してモータケース21により回転可能に支持されている。電動モータ15は、ブラシレスモータであり、電動モータ15に電圧が印加されると、ロータ39が正回転または逆回転可能である。
【0020】
モータケース21内にギヤケース43が設けられている。ギヤケース43は筒形状であり、中心線A2を中心として配置されている。減速機構16はギヤケース43内に設けられている。減速機構16は、複数組のプラネタリギヤ機構を備えている。
【0021】
減速機構16の入力要素は、動力伝達軸44を介してロータ軸41に連結されている。動力伝達軸44は、軸受45により回転可能に支持されている。回転軸46が筒部33内に設けられている。回転軸46は軸受48,49により回転可能に支持されている。ロータ軸41、動力伝達軸44、減速機構16及び回転軸46は、中心線A2を中心として同心状に配置されている。減速機構16の出力要素77と回転軸46とが同心状に配置され、かつ、出力要素77と回転軸46とが一体回転する。減速機構16は、電動モータ15から回転軸46に至る動力伝達経路に配置されている。
【0022】
変換部17は、筒部33内に設けられている。変換部17は、回転軸46の回転力を、打撃部12の作動力に変換する。
【0023】
(変換部の第1実施例) 変換部17は、
図3(A)のように、回転軸46に固定されたホイール50と、ホイール50の外周面に形成した歯部78と、を有する。ホイール50及び歯部78は、一例として金属材料で一体成形されている。歯部78は、ホイール50の回転方向に間隔をおいて複数設けられている。歯部78は、ホイール50の回転方向で所定角度の範囲内、一例として、270度の範囲内に配置されている。
【0024】
また、可動片79がホイール50に取り付けられている。可動片79は、ホイール50の回転方向で、複数の歯部78が配置された範囲外に設けられている。可動片79は、支持軸80を中心として所定角度の範囲内で作動可能である。可動片79は、係合部81及び接触部82を有する。可動片79は、一例として金属製である。
図2(B)のように、係合部81及び接触部82は、支持軸80の中心線A3方向で同じ範囲内に設けられている。中心線A3は、中心線A2と平行である。
【0025】
図3(A)に示すガイド部83が、ホイール50の径方向で回転軸46の外側に配置されている。ガイド部83は回転しないように設けられている。ガイド部83は、ホイール50の回転方向で所定角度の範囲内に設けられている。ガイド部83の外周面は、中心線A2を中心とする円弧状である。ガイド部83は、ホイール50の径方向で支持軸80よりも内側に配置されている。
【0026】
ホイール50が
図3(A)で反時計回りに回転し、少なくとも1つの歯部78が、突起部85に係合すると、
図1に示す打撃部12は、ホイール50の回転力で第2方向D2に作動、つまり、上昇する。
【0027】
ホイール50が回転すると、ホイール50の回転方向でガイド部83が配置された範囲内において、接触部82がガイド部83の外周面に接触する。接触部82がガイド部83の外周面に接触していると、係合部81の外接円は、歯部78の外接円と共通である。つまり、係合部81は突起部85に係合可能である。ホイール50が回転し、かつ、係合部81が突起部85に係合していると、打撃部12は第2方向D2で作動する。
【0028】
歯部78が突起部85から解放されると、ホイール50の回転力は、歯部78から打撃部12に伝達されない。また、ホイール50の回転方向でガイド部83が形成された範囲外において、接触部82はガイド部83の外周面から離間する。接触部82がガイド部83の外周面から離間すると、可動片79は、突起部85の荷重を受けて
図4(B)で時計回りに作動し、係合部81は突起部85から解放される。したがって、ホイール50の回転力は、打撃部12に伝達されない。
【0029】
打撃部12は、
図1に示す圧力室26の圧力で第1方向D1に常に付勢されている。打撃部12が
図1で第2方向D2に作動することを上昇と定義する。第1方向D1及び第2方向D2は中心線A1と平行であり、かつ、第2方向D2は第1方向D1とは逆向きである。打撃部12は、圧力室26の圧力に抗して第2方向D2で作動する。打撃部12が圧力室26の圧力で第1方向D1に作動することを下降と定義する。
【0030】
図1のように、回転規制機構53がギヤケース43内に設けられている。回転規制機構53は、電動モータ15が正回転した際の回転力で、回転軸46が
図3(A)において反時計回りに回転することを可能にする。回転規制機構53は、打撃部12の第1方向D1の作動力がホイール50に伝達されると、回転軸46が
図3(B)で時計回りに回転することを阻止する。
【0031】
図1に示すように、トリガ54及びトリガセンサ57が、ハンドル20に設けられている。トリガセンサ57は、トリガ54に加わる操作力の有無を検出し、かつ、検出結果に応じた信号を出力する。
【0032】
電源部14は、収容ケース58と、収容ケース58内に収容した複数の電池セルとを有する。電池セルは、充電及び放電が可能な二次電池であり、電池セルは、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池等、公知の電池セルを任意に用いることができる。
【0033】
また、
図1のようにマガジン60が設けられ、マガジン60は射出部32及び装着部22により支持されている。マガジン60内に釘59が複数本収容される。マガジン60はフィーダを有し、フィーダは、マガジン60内の釘59を射出路37へ送る。
【0034】
射出部32は、金属製または合成樹脂製である。射出部32にプッシュレバー64が取り付けられている。プッシュレバー64は、射出部32に対して中心線A1方向の所定範囲内で作動可能である。プッシュレバー64を中心線A1方向に付勢する弾性部材66が設けられている。弾性部材66は圧縮バネであり、弾性部材66は、プッシュレバー64をバンパ支持部31から離れる向きで付勢する。プッシュレバー64はストッパに接触して停止する。
【0035】
制御部67が装着部22内に設けられている。制御部67は、基板113に取り付けられたマイクロプロセッサを有する。マイクロプロセッサは、入出力インタフェース、制御回路、演算処理部及び記憶部を有する。
【0036】
また、モータ基板86がモータケース21内に設けられている。インバータ回路がモータ基板86に設けられている。インバータ回路は、電動モータ15のステータ40と電源部14とを接続及び遮断する。インバータ回路は、複数のスイッチング素子を備え、複数のスイッチング素子はそれぞれオン・オフが可能である。制御部67は、インバータ回路を制御することにより、電動モータ15の回転及び停止、電動モータ15の回転数、電動モータ15の回転方向を制御する。
【0037】
また、プッシュセンサ、位置検出センサがハウジング11に設けられている。プッシュセンサは、プッシュレバー64が被打込材W1に押し付けられているか否かを検出して信号を出力する。位置検出センサは、ホイール50の回転方向の位置を検出して信号を出力する。さらに、電動モータ15のロータ39の回転速度を検出する速度センサ、ロータの回転方向の位相を検出する位相センサが設けられている。
【0038】
トリガセンサ57、プッシュセンサ、位置検出センサ、位相センサから出力される信号は、制御部67に入力される。制御部67は、入力される信号を処理して、インバータ回路を制御する。このように、制御部67は、電動モータ15の停止、回転、回転方向および回転速度を制御する。
【0039】
次に、打込機10の使用例を説明する。制御部67は、トリガ54に操作力が加えられていないこと、またはプッシュレバー64が被打込材W1に押し付けられていないこと、のうち、少なくとも一方を検出すると、電動モータ15に対する電力の供給を停止する。このため、電動モータ15は停止し、打撃部12は待機位置で停止している。本実施形態において、打撃部12の待機位置は、
図3(A)のように、ピストン28がバンパ35に接触している状態、つまり、下死点であるものとして説明する。圧力室26の圧力は、常に打撃部12に加わっており、打撃部12は第1方向D1に付勢されている。打撃部12が待機位置で停止していると、接触部82はガイド部83の外周面に接触している。
【0040】
制御部67は、トリガ54に操作力が加えられていること、及びプッシュレバー64が被打込材W1に押し付けられていること、を検出すると、電源部14から電動モータ15に電圧を印加させ、電動モータ15を正回転させる。電動モータ15の回転力は、減速機構16を経由して回転軸46に伝達される。すると、回転軸46及びホイール50は、
図3(A)で反時計回りに回転する。減速機構16は、ホイール50の回転速度を、電動モータ15の回転速度よりも低速にする。
【0041】
少なくとも1つの歯部78が突起部85に係合すると、ホイール50の回転力は、打撃部12に伝達され、打撃部12が上昇する。打撃部12が上昇すると圧力室26の圧力が上昇する。ホイール50の回転により、複数の歯部78は、突起部85にそれぞれ係合及び解放される。そして、
図3(B)のように、可動片79の係合部81が突起部85に係合した後、全ての歯部78が突起部85から解放された状態で、打撃部12の上昇が継続する。打撃部12が上死点に到達する前に、
図4(A)のように、可動片79の接触部82は、ガイド部83から離間する。すると、ドライバブレード29の突起部85から係合部81に加わる力により、可動片79が
図4(A)で時計回りに作動する。その結果、係合部81が突起部85から解放され、打撃部12は上死点から、圧力室26の圧力で
図4(B)のように下降する。打撃部12が下降すると、ドライバブレード29は、射出路37に位置する釘59を打撃し、釘59は被打込材W1に打ち込まれる。
【0042】
また、ピストン28は、釘59が被打込材W1に打ち込まれた後、バンパ35に衝突する。バンパ35は中心線A1方向の荷重を受けて弾性変形し、バンパ35は打撃部12の運動エネルギの一部を吸収する。制御部67は、打撃部12が下死点に到達した時点で、電動モータ15を停止させる。
【0043】
打撃部12が圧力室26から受ける中心線A1方向の荷重は、打撃部12が上死点に位置すると最大である。そして、可動片79の接触部82がガイド部83の外周面から離間すると、ドライバブレード29の力で可動片79が
図4(A)で時計回りに作動し、係合部81が突起部85から解放される。つまり、係合部81は、ドライバブレード29の突起部85の作動領域外へ移動する。
【0044】
このため、打撃部12が最大の荷重を受け、かつ、係合部81が突起部85から離間する過程で、係合部81と突起部85との接触箇所における摩擦力が増加することを抑制できる。したがって、係合部81または突起部85の少なくとも一方の摩耗を低減でき、かつ、可動片79またはドライバブレード29の少なくとも一方の製品寿命を向上できる。
【0045】
また、可動片79が、ホイール50に対して単独で取り付け及び取り外しが可能であると、係合部81が摩耗した場合に、可動片79を交換すれば済み、ホイール50全体を交換せずに済む。
【0046】
さらに、
図2(B)のように、係合部81及び接触部82が支持軸80の中心線A3方向で同じ範囲に設けられている。したがって、接触部82がガイド部83に接触し、かつ、係合部81が突起部85に係合している場合に、支持軸80が中心線A3に対して傾斜することを抑制可能である。
【0047】
図2(C)は、可動片79の変更例である。
図2(C)に示す可動片79は、中心線A3方向で、係合部81の配置範囲と、接触部82の配置範囲とが異なる。
図2(C)に示す可動片79の作動原理は、
図2(B)に示す可動片79の作動原理と同じである。
【0048】
変換部17の第1実施例の他の構成が、
図5(A)に示されている。
図5(A)の構成において、
図3(A)と同じ構成は、
図3(A)と同じ符号を付してある。
【0049】
溝99が、ホイール50に設けられている。溝99は、ホイール50の回転方向において、歯部78が設けられていない箇所に設けられている。溝99は、ホイール50の径方向に沿い、かつ、中心線A2に向かうように設けられている。可動片100が、ホイール50に取り付けられている。可動片100は、ピン101、歯部102及び接触部115を有する。
【0050】
ピン101は溝99内に配置され、かつ、溝99内でホイール50の径方向に沿い、かつ、中心線A2に接近及び離間する方向に移動可能である。さらに、ピン101は、付勢部材によりホイール50の径方向で外側に向けて付勢されている。付勢部材は図示されていないが、一例として金属製のねじりスプリングを用いることができる。このため、可動片100は、ホイール50の径方向に溝99の範囲内で移動可能であり、かつ、ピン101を中心として所定角度の範囲内で回転可能である。
【0051】
打込機10を使用中に、釘59が射出路37で詰まると、打撃部12は下死点と上死点との間で停止する。つまり、打撃部12は、ピストン28がバンパ35から離間した状態で停止する。すると、変換部17のホイール50で打撃部12をD2方向に移動させる時に、
図5(A)のように歯部102の先端が、突起部85の先端に押し付けられた状態になる場合がある。なお、接触部115は、ガイド部83の外周面に接触している。
【0052】
本実施形態の打込機10では、ホイール50を反時計回りに回転させると、歯部102が突起部85に押し付けられている反力により、ピン101がホイール50の径方向で内側に向けて付勢され、ピン101は、付勢部材の付勢力に抗して、
図5(B)のように、溝99内でホイール50の径方向で内側に向けて移動する。
【0053】
また、歯部102の先端は、突起部85の先端に接触した状態で滑り、歯部102の先端が、突起部85の先端を超えると、付勢部材の付勢力でピン101が押され、歯部102の先端は、
図5(C)のように、突起部85と突起部85との間へ移動する。さらに、ホイール50の回転に伴い、歯部102が
図5(D)のように突起部85に係合すると、ドライバブレード29は第2方向D2に作動する。このように、打込機10の使用中に、釘59が射出路37で詰まった場合等において、ドライバブレード29が中心線A1方向でどの位置にあっても、ドライバブレード29の突起部85と、歯部102とを係合させて、ドライバブレード29を第2方向D2に作動させることができる。このため、作業者は、詰まっている釘59を射出路37から除去することができる。
【0054】
なお、接触部115がガイド部83の外周面から離間する時には、次の歯部78と突起部85とが係合し、可動片100の歯部102と、突起部85の係合は解除される。以上のように、ホイール50が回転を開始すると、可動片100の歯部102が初めに突起部85に係合する。したがって、歯部102の先端が突起部85の先端に接触するような状態になっても、正常に歯部78と突起部85を係合させることができる。
【0055】
(変換部の第2実施例) 変換部17の第2実施例は、
図6(A)、
図6(B)、
図7(A)、
図7(B)、
図8(A)、
図8(B)に示されている。
【0056】
回転軸46は、2つの支持部87によって回転可能に支持されている。2つの支持部87は、射出部に固定されており、2つの支持部87は、非円形の支持孔88をそれぞれ有する。2つの支持部87は、中心線A2方向に間隔をおいて配置されている。回転軸46の長手方向の一部は、2つの支持孔88にそれぞれ配置されている。回転軸46は、
図8(A)、
図8(B)のように、2つの支持孔88内で、中心線A2に対して交差する方向に移動可能である。回転軸46はボス部89を有し、ボス部89は、中心線A2を通る直線状の溝90を有する。
【0057】
出力要素77はボス部91を有し、ボス部91はピン92を有する。ピン92は中心線A2から偏心した箇所に設けられている。ピン92の先端は溝90に配置されている。出力要素77が回転すると、ピン92が溝90内に沿って移動し、回転軸46が回転する。また、回転軸46は、支持孔88内で中心線A2に対して交差する方向に移動する。つまり、ホイール50は、中心線A2に対して交差する方向に移動可能である。ホイール50が、中心線A2に対して交差する方向に移動すると、ホイール50は、ドライバブレード29に接近または離間する。
【0058】
さらに、位置決め部材93が筒部33内に設けられている。位置決め部材93は、弾性変形が可能である。位置決め部材93は、一例として金属製の板バネであり、位置決め部材93の両端は、筒部33により保持されている。位置決め部材93は、中心線A1に対して交差する方向、及び中心線A1方向の何れにも移動しない。位置決め部材93は、回転軸46に向けて突出した規制部94を有する。位置決め部材93は、回転軸46の外周面に押し付けられている。回転軸46が中心線A2に対して交差する方向に作動しようとする力が所定値以下であると、規制部94が回転軸46に押し付けられることで、回転軸46が支持孔88内で移動することを阻止する。
【0059】
回転軸46が中心線A2に対して交差する方向に作動しようとする力が所定値を超えると、位置決め部材93が弾性変形して回転軸46が規制部94を乗り越え、回転軸46が支持孔88内で移動することが可能である。
【0060】
また、筒部の内面から突出した戻し部95が設けられている。ホイール50は、回転軸46を中心とする同一円周上に配置した複数のピン96を有する。複数のピン96は、一例として金属製である、かつ、ホイール50にそれぞれ固定されている。複数のピン96は、ホイール50の回転方向に等間隔で配置されている。複数のピン96の数は、突起部85の数よりも多い。
【0061】
ドライバブレード29は付勢部97を有する。複数の突起部85のうち、中心線A1方向でドライバブレード29の先端に最も近い位置に設けられている突起部85と、ドライバブレード29の先端との間に付勢部97が設けられている。付勢部97は中心線A1方向に沿った平坦面である。なお、複数の突起部85の先端は、それぞれ湾曲している。
【0062】
打撃部12が待機位置で停止し、かつ、電動モータ15が停止している状態において、回転軸46及びホイール50は、
図6(A)のように、初期位置で停止している。つまり、回転軸46及びホイール50は、中心線A2に対して交差する方向で、ドライバブレード29に最も接近した位置で停止している。また、全てのピン96は、戻し部95から離間している。
【0063】
図6(A)において、ホイール50が反時計回りに回転し、何れかのピン96が突起部85に係合すると、打撃部12が上死点に向けて作動する。そして、
図6(B)のように、何れかのピン96が付勢部97に押し付けられると、ピン96が付勢部97に押し付けられた反力で、回転軸46に対して中心線A2と交差する付勢力が増加する。付勢力は、回転軸46をドライバブレード29から離間させる向きの荷重である。回転軸46が受ける荷重が所定値を超えると、回転軸46は規制部94を乗り越え、
図7(A)のように、回転軸46は支持孔88内で移動する。そして、回転軸46及びホイール50は、ドライバブレード29から離間した作動位置で停止する。
【0064】
ホイール50が作動位置で停止すると、全てのピン96は、突起部85の作動領域外に移動する。つまり、全てのピン96は、
図7(B)のように突起部85から解放される。したがって、打撃部12が蓄圧室の圧力で下死点に向けて作動し、ドライバブレードが止具を打撃する。
【0065】
打撃部が下死点に到達した後、何れかのピン96が戻し部95に押し付けられると、その反力で回転軸46をドライバブレード29に接近させる向きの付勢力が生じる。この付勢力が所定値を超えると、回転軸46は支持孔88内で移動し、回転軸46及びホイール50は初期位置で停止する。
【0066】
このため、ピン96は戻し部95から離間し、何れかのピン96が、突起部85の作動領域内に移動し、制御部が電動モータを停止させる。したがって、打撃部12は下死点で停止する。
【0067】
変換部17の第2実施例は、ピン96が突起部85から離間する過程で、ホイール50が回転軸46と共にドライバブレード29から離間する方向に移動する。したがって、ピン96またはドライバブレード29の少なくとも一方の摩耗を抑制でき、かつ、ピン96またはドライバブレード29の少なくとも一方の寿命が向上する。
【0068】
また、ピン96の数が、突起部85の数を超えているため、打撃部12が上死点に到達した時点で、打撃部12の作動力を受けるピン96が、打撃部12を下死点から上死点に向けて作動させる回毎に替わる。このため、打撃部12の作動力に対応する最大負荷を、異なるピン96に分散できる。したがって、ピン96の寿命が一層向上する。
【0069】
図9は、打込機10に設ける変換部17の第2実施例の変更例である。ホイール50に設けたピン96の数は、ドライバブレード29に設けた突起部85の数よりも少ない。
図9に示す変換部17の作用効果は、
図6(A)、
図6(B)、
図7(A)、
図7(B)に示す変換部17の作用効果と同じである。また、
図9に示す変換部17は、ホイール50に設けたピン96の数が、ドライバブレード29に設けた突起部85の数よりも少ないため、ホイール50の直径の増加を抑制できる。したがって、
図1に示す打込機10の小型化、軽量化を図ることができる。
【0070】
図10(A)は、変換部17の第2実施例における他の変更例である。ホイール50の外周面に歯部98が複数設けられている。歯部98及びホイール50は、一例として金属材料で一体化されている。複数の歯部98は、ホイール50の回転方向に等間隔で設けられている。歯部98の数は、突起部85の数よりも多い。
図10(A)に示す変換部17の他の構成は、
図6(A)に示す変換部17の構成と同じである。
【0071】
打撃部12が、
図10(A)のように待機位置で停止している場合に、回転軸46は支持孔88内でドライバブレード29に最も近い初期位置で停止している。
【0072】
そして、ホイール50が回転し、かつ、歯部98と突起部85とが係合すると、ホイール50の回転力が打撃部12に伝達され、
図10(B)のように打撃部12が上昇する。
【0073】
さらに、歯部98が付勢部97に押し付けられると、その反力に対応する荷重が回転軸46に伝達される。このため、回転軸46は、
図11(A)のように、支持孔88内でドライバブレード29から離間する方向にスライドする。そして、回転軸46は、ドライバブレード29から最も離れた位置、つまり、作動位置で停止する。全ての歯部98は、突起部85の作動領域外に位置する。
【0074】
全ての歯部98が突起部85から解放されると、
図11(B)のように、打撃部12が、圧力室26の圧力で上死点から下死点に向けて作動する。また、歯部98が戻し部95に押し付けられ、その反力で回転軸46が作動位置から支持孔88内で移動し、回転軸46が初期位置に戻って停止する。制御部67は、打撃部12が下死点に到達した後、電動モータ15を停止させる。
【0075】
図10(A)に示す変換部17は、
図6(A)に示す変換部17と同様の効果を得ることが可能である。なお、ホイール50に設ける歯部98の数は、突起部85の数より少なくてもよい。
【0076】
(変換部の第3実施例)
図12(A)は、変換部17の第3実施例を示す。ピン103がホイール50に設けられている。ピン103は、ホイール50の回転方向に間隔をおいて複数配置されている。ピン103は、ホイール50の回転方向で、所定角度、一例として270度の範囲内に配置されている。
【0077】
ホイール50にガイド孔104が設けられている。ガイド孔104は、ホイール50の回転方向でピン103が配置されている角度範囲外に配置されている。ガイド孔104は、ホイール50の径方向に配置されている。可動ピン105がホイール50に取り付けられている。可動ピン105は、一例として金属製である。可動ピン105は、ガイド孔104内でホイール50の径方向に作動可能である。可動ピン105の長さ方向の一部は、中心線A2方向で、ホイール50の配置範囲外に位置する。
図14(A)に示す付勢部材110が設けられており、付勢部材110は可動ピン105を、ホイール50の径方向で外側に付勢する。付勢部材110は、一例として金属製の圧縮スプリングである。
【0078】
ピンホルダ106がホイール50に取り付けられている。ピンホルダ106は、一例として金属製である。ピンホルダ106は、ホイール50の回転方向でピン103が配置されている角度範囲外に配置されている。ピンホルダ106は、中心線A2方向でホイール50の配置範囲外であり、かつ、ドライバブレード29の作動範囲外に配置されている。ピンホルダ106は、支持軸107を中心として所定の角度範囲内で作動可能である。
【0079】
ピンホルダ106はフック108を有する。ホイール50において、ガイド孔104とピンホルダ106との間にストッパ109が設けられている。
図14(A)に示す付勢部材111が設けられ、付勢部材111は、ピンホルダ106を
図12(A)で反時計回りに付勢する。付勢部材111は、一例として金属製の圧縮スプリングである。付勢部材111の付勢力は、付勢部材110の付勢力よりも低い。
【0080】
筒部33の内面から突出した戻し部112が設けられている。戻し部112は、ホイール50の外周面から離間している。
【0081】
次に、変換部17の第3実施例の作用を説明する。まず、制御部67が電動モータ15を停止させ、打撃部12が、
図1に示す待機位置で停止している。打撃部12が待機位置で停止していると、可動ピン105は付勢部材110により付勢され、可動ピン105はフック108に保持されて停止している。つまり、可動ピン105は突起部85に係合していない。ピンホルダ106は、ストッパ109に接触して停止している。
【0082】
制御部67が電動モータ15を回転させ、ホイール50が
図12(A)で反時計回りに回転し、かつ、ピン103が突起部85に係合すると、打撃部12がD2方向に作動、つまり、上昇する。
【0083】
ホイール50の回転に伴い、
図12(A)のように、戻し部112がピンホルダ106に係合すると、ピンホルダ106がホイール50に対して時計回りに作動し、ピンホルダ106はストッパ109から離間する。すると、可動ピン105は、付勢部材110の付勢力でガイド孔104内で作動し、可動ピン105は、ホイール50の径方向で最も外側の位置、つまり、初期位置で停止する。
【0084】
ホイール50の回転に伴い、複数のピン103は、突起部85に対してそれぞれ単独で係合及び解放される。全てのピン103が突起部85から解放される前に、可動ピン105が突起部85に係合する。
【0085】
打撃部12が上死点に到達する前に、全てのピン103が、
図12(B)のように突起部85から解放される。次いで、突起部85から可動ピン105に加わる荷重の分力が増加すると、分力で押される可動ピン105が、
図13(A)のように、ガイド孔104内でホイール50の径方向で内側に向けて作動し、可動ピン105が突起部85から解放される。
【0086】
また、可動ピン105がガイド孔104内で作動すると、ピンホルダ106が付勢部材111の付勢力で反時計回りに作動し、ピンホルダ106がストッパ109に接触して停止する。このため、可動ピン105が、付勢部材110の付勢力、及び可動ピン105がガイド孔104の内壁面に衝突して生じる反動により、初期位置に向けて作動すると、
図13(B)のように、フック108が可動ピン105を支持する。つまり、フック108は、可動ピン105が突起部85に衝突することを阻止する。
【0087】
打撃部12は圧力室26の圧力で第1方向D1に作動、つまり、下降し、打撃部12は下死点に到達する。制御部67は、打撃部12が下死点に到達した後、電動モータ15を停止させる。
【0088】
突起部85に係合している可動ピン105が、突起部85から解放される作用を、
図14(A)、
図14(B)を参照して説明する。可動ピン105が突起部85に係合していると、突起部85と可動ピン105との接触位置P1に荷重F1が加わる。荷重F1は、第1方向D1と平行である。また、可動ピン105は、荷重F1の分力F2,F3を受ける。分力F2は、ガイド孔104の長手方向の成分であり、分力F3は、ガイド孔104の長手方向に対して直角な方向の成分である。
【0089】
分力F2が、
図14(A)のように、可動ピン105をドライバブレード29に近づける向きであると、可動ピン105は初期位置で停止している。つまり、可動ピン105が突起部85に係合し、かつ、ホイール50の回転力は、可動ピン105を介して突起部85に伝達される。
【0090】
これに対して、ホイール50の回転に伴い、接触位置P1が、
図14(B)のように、突起部85の先端側に移動すると、荷重F1に対応して可動ピン105に荷重F4が加わる。可動ピン105は、荷重F4の分力F21,31を受ける。分力F21は、ガイド孔104の長手方向の成分であり、分力F31は、ガイド孔104の長手方向に対して直角な方向の成分である。ここで、分力F21は、ドライバブレード29から離間する向きである。このため、可動ピン105は、付勢部材110の付勢力に抗して初期位置から作動し、可動ピン105が突起部85から離間、つまり、解放される。
【0091】
このように、突起部85から可動ピン105に加わる荷重F4の分力F21により、可動ピン105が初期位置から作動する。つまり、可動ピン105が突起部85の作動領域外に移動し、かつ、可動ピン105が突起部85から解放される。このため、可動ピン105が突起部85から解放される過程で、可動ピン105と突起部85との接触位置P1における摩擦力が増加することを抑制できる。したがって、可動ピン105または突起部85の少なくとも一方の摩耗を低減でき、かつ、可動ピン105またはドライバブレード29の少なくとも一方の製品寿命を向上できる。
【0092】
また、可動ピン105が、ホイール50に対して単独で取り付け及び取り外しが可能であると、可動ピン105が摩耗した場合に、可動ピン105を交換すれば済み、ホイール50全体を交換せずに済む。
【0093】
さらに、フック108が可動ピン105を支持するため、可動ピン105が突起部85に衝突することを防止でき、突起部85及び可動ピン105の耐久性を向上できる。
【0094】
各実施例において、打撃部の待機位置は、ピストン28がバンパ35から離間した状態でもよい。さらに、
図3(A)、
図3(B)、
図4(A)、
図4(B)に示す変換部17において、可動片79を時計回りに付勢する付勢部材を設けることも可能である。この場合、接触部82がガイド部83から離間すると、可動片79は、初期位置から付勢部材の付勢力で時計回りに作動し、係合部81が突起部85から解放される。
【0095】
打込機10の実施形態で開示した事項と、請求項に記載されている事項との関係の一例は、次のとおりである。第1方向D1は、第1方向の一例であり、第2方向D2は、第2方向の一例である。打撃部12は、打撃部の一例である。釘59は、止具の一例である。ラック84は、第1伝達部の一例である。中心線A2を中心として円弧状にして移動することが、所定方向に回転することの一例である。歯部78、ピン96,103、可動片79、可動ピン105が、第2伝達部の一例である。
【0096】
歯部78、ピン103が、第1係合部の一例である。可動片79の係合部81、可動ピン105が、第2係合部の一例である。
【0097】
図6(A)、
図6(B)、
図7(A)、
図7(B)及び
図9において、ピン96が付勢部97に押し付けられていない状態で、突起部85に係合及び解放するピン96が、第1係合部の一例である。ピン96が付勢部97に押し付けられている状態で、突起部85に係合及び解放するピン96が、第2係合部の一例である。
【0098】
図10(A)において、歯部98が付勢部97に押し付けられていない状態で、突起部85に係合及び解放する歯部98が、第1係合部の一例である。
図10(B)において、歯部98が付勢部97に押し付けられている状態で、突起部85に係合及び解放する歯部98が、第2係合部の一例である。
【0099】
図4(A)、
図4(B)に示す可動片79の係合部81が、ホイール50の径方向で内側に向けて作動する方向が、別方向の一例である。
図7(A)のように、ホイール50及び回転軸46が支持孔88に沿って作動することにより、ピン96がドライバブレード29から離間する方向に作動する方向が、別方向の一例である。
【0100】
図9に示すホイール50及び回転軸46が支持孔88に沿って作動することにより、ピン96がドライバブレード29から離間する方向に作動する方向が、別方向の一例である。
【0101】
図11(A)に示すように、ホイール50及び回転軸46が支持孔88に沿って作動することにより、歯部98がドライバブレード29から離間する方向に作動する方向が、別方向の一例である。
【0102】
図13(A)に示すように、可動ピン105がガイド孔104内でホイール50の内側に向けて作動する方向が、別方向の一例である。
【0103】
図3(B)に接触部82がガイド部83の外周面に接触することにより、係合部81が、突起部85に係合可能である位置が、初期位置の一例である。
図6(A)に示す回転軸46が初期位置にあり、ピン96が突起部85に係合可能である位置が、初期位置の一例である。
図9に示す回転軸46が初期位置にあり、ピン96が突起部85に係合可能である位置が、初期位置の一例である。
図10(A)に示す回転軸46が初期位置にあり、歯部98が突起部85に係合可能である位置が、初期位置の一例である。
図12(A)のように、可動ピン105が付勢部材110に付勢されてホイール50の最も外側で停止している位置が、初期位置である。
【0104】
ガイド部83、戻し部95、付勢部材110が、戻し機構の一例である。戻し部95,112は、張り出し部の一例である。筒部33は、ケースの一例である。歯部78,98は、歯部の一例である。ピン96、可動ピン105は、ピンの一例である。支持軸80は、支持軸の一例である。ホイール50は、回転部材の一例である。
【0105】
付勢部97は、荷重受け部の一例である。位置決め部材93が、第1ストッパの一例である。ガイド孔104は、ガイド部の一例である。ピンホルダ106は、第2ストッパの一例である。
【0106】
本実施形態で開示した打込機は、回転部材を一方向に回転させている状態で、第2係合部を第1伝達部材に係合させ、かつ、回転部材を一方向に回転させている状態で、第2係合部を別方向に作動させることにより、第2係合部を第1伝達部材から解放させる。
【0107】
打込機は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、打撃部の待機位置は、ピストン28がバンパ35から離間した位置でもよい。この場合、電動モータ15が停止している場合に、回転規制機構53がホイール50の回転を阻止し、打撃部12が待機位置で停止する。
【0108】
さらに、
図3(A)、
図3(B)、
図4(A)及び
図4(B)に示す変換部17において、可動片79を時計回りに付勢する付勢部材を設けることも可能である。この場合、接触部82がガイド部83から離間すると、可動片79は、初期位置から付勢部材の付勢力で時計回りに作動し、係合部81が突起部85から解放される。
【0109】
さらに、
図3(A)、
図3(B)、
図4(A)及び
図4(B)に示すドライバブレード29に設ける第1伝達部は、中心線A1方向に間隔をおいてドライバブレード29に取り付けた複数のピンでもよい。そして、ホイール50が回転すると、歯部78がピンに対してそれぞれ単独で係合及び解放可能である。さらに、係合部81は、ピンに対して係合及び解放可能である。さらに、ピンから係合部81に加わる荷重により、可動片79が時計回りに作動して、係合部81がピンから解放される。
【0110】
支持孔88は、回転軸46の作動方向を別方向に規制するガイド部であり、回転軸46の作動方向を別方向に規制するガイド部は、孔の他、溝、レール、切り欠きを含む。
【0111】
ガイド孔104は、可動ピン105の作動方向を別方向に規制するガイド部であり、可動ピン105の作動方向を別方向に規制するガイド部は、孔の他、溝、レール、切り欠きを含む。
【0112】
本実施形態において、“作動方向が別方向”は、回転軸46の中心線A2に対して垂直な平面内における作動方向である。
【0113】
さらに、打撃部を第1方向に作動させる付勢機構は、圧縮性気体が封入された圧力室の他、固体スプリング、合成ゴム、磁気スプリングでもよい。固体スプリングは、一例として、金属製の圧縮スプリングまたは引張スプリングを含む。固体スプリング及び合成ゴムは、弾性復元力で打撃部を第1方向に作動させる。磁気スプリングは、同極の磁石同士の反発力により、打撃部を第1方向に作動させる。
【0114】
電動モータ15に電圧を印加する電源部は、直流電源または交流電源の何れでもよい。打撃部を第2方向に作動させるモータは、電動モータに代えて、油圧モータ、空気圧モータ、エンジンの何れかを用いることも可能である。
【0115】
第1伝達部及び第2伝達部は、互いに係合及び解放が可能であれば、形状及び構造は問わない。ギヤ、ピン、突起部、ラックの他、凹部、溝、爪などを組み合わせて、第1伝達部及び第2伝達部を構成することも可能である。回転部材は、ホイールの他、ギヤ、プーリ、回転軸、ドラム、円筒部材等を含む。
【0116】
回転部材が回転すると、第1係合部及び第2係合部は、中心線を中心としてそれぞれ回動、つまり、公転する。
【0117】
本実施形態には、次の第1の構成及び第2の構成が記載されている。
【0118】
第1の構成は、第1方向及び前記第1方向とは逆の第2方向に作動可能であり、かつ、前記第1方向に作動して止具を打撃可能な打撃部と、前記打撃部を前記第1方向に作動させる付勢機構と、前記打撃部を支持するハウジングと、前記ハウジングに支持されたモータと、前記モータの回転力で所定方向に回転する回転部材と、前記打撃部に設けられた第1伝達部と、前記回転部材に設けられ、かつ、前記第1伝達部に係合及び解放可能な第2伝達部と、を有し、前記回転部材が回転し、かつ、前記第2伝達部が前記第1伝達部に係合していると、前記打撃部が前記付勢機構の力に抗して前記第2方向に作動し、前記第2伝達部が前記第1伝達部から解放されていると、前記打撃部が前記付勢機構の力で前記第2方向に作動する。
【0119】
第2の構成は、第1の構成における前記モータが、電圧が印加されて回転する電動モータであり、前記電動モータに電圧を印加する電源部が、前記ハウジングに設けられている。
【符号の説明】
【0120】
10…打込機、33…筒部、50…ホイール、78,98…歯部、79…可動片、80…支持軸、81…係合部、83…ガイド部、84…ラック、93…位置決め部材、95,112…戻し部、96,103…ピン、97…付勢部、104…ガイド孔、105…可動ピン、106…ピンホルダ、110…付勢部材、D1…第1方向、D2…第2方向