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特許7120329検出方法、分析方法、分析装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】検出方法、分析方法、分析装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20220809BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220809BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N1/00 102Z
G01N30/86 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020567294
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2019001999
(87)【国際公開番号】W WO2020152800
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】工藤 恭彦
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-300745(JP,A)
【文献】特開2012-141292(JP,A)
【文献】特開昭48-49493(JP,A)
【文献】TARKA,M.,Approaches to the validation of derivatized multicomponent analysis by GLC,Analytical letters,1986年,VOL.19,5-6,537-541
【文献】KIM, J.W. et al.,フタル酸エステル分析におけるスクリーニング法(Pyrolysis-GC/MS)と定量法(溶媒抽出-GC/MS)の比較,島津製作所 テクニカルレポート [オンライン],2016年,https://www.shimadzu.com/an/literature/gcms/jpo216004.html,[2019年4月5日検索],インターネット:<URL:https://www.shimadzu.com/an/literature/gcms/jpo216004.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- G01N 35/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象試料の濃度の変化の検出方法であって、
前記対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、少なくとも一つの化合物を既知の濃度で有する試料とを測定して得られた少なくとも一つの第1相対応答係数、または前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値を取得することと、
前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料とを測定し、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記少なくとも一つの化合物に関する少なくとも一つの第2相対応答係数を算出することと、
前記少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1閾値と、対応する前記少なくとも一つの第2相対応答係数とに基づいて、前記対象試料の濃度の変化についての第1情報を生成することとを備える検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検出方法において、
前記少なくとも一つの第2相対応答係数が、対応する前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値に基づく条件を満たすか否かに基づいて、前記対象試料の前記濃度が変化したかを判定する検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の検出方法において、
前記対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、複数の化合物を既知の濃度で有する試料とを分析して得られた複数の第1相対応答係数または前記複数の第1相対応答係数にそれぞれ基づく複数の第1閾値を取得することと、
前記対象試料と、前記複数の化合物を含む試料とを測定し、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記複数の化合物に関する複数の第2相対応答係数を算出することと、
前記対象試料の少なくとも一つの成分のそれぞれに対して、前記複数の化合物のうちいくつが前記条件を満たすかに基づいて、前記少なくとも一つの成分のそれぞれの濃度が変化したかを判定することとを備える、検出方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の検出方法において、
前記少なくとも一つの化合物は、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)を含む検出方法。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の検出方法において、
前記少なくとも一つの成分は、フタル酸のエステルを含む検出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の検出方法において、
前記少なくとも一つの成分は、フタル酸ジイソブチル(DIBP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)、フタル酸ジノルマルオクチル(DNOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸モノ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジ(2-メトキシエチル)、フタル酸ビス(2-ブトキシエチル)、フタル酸-n-ペンチルイソペンチル、フタル酸ジプロピルヘプチル、フタル酸ジ-n-ペンチル(DPENP)、フタル酸ジ-イソ-ペンチル(DPENP)、フタル酸ジ-n-ヘキシル(DHEXP)、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、フタル酸ジベンジル、フタル酸ジへプチル、フタル酸ジイソヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジイソウンデシルおよびフタル酸ジイソトリデシルからなる群から選択される1以上の化合物である、検出方法。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の検出方法において、
前記第1情報に基づいて通知を出力することを備える検出方法。
【請求項8】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の検出方法において、
前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料との測定を複数回行い、複数回の前記測定のそれぞれに対応した前記第2相対応答係数を算出することと、
算出された複数の前記第2相対応答係数に基づいて、前記試料の劣化の予測についての第2情報を生成することとを備える検出方法。
【請求項9】
請求項8に記載の検出方法において、
前記第2情報に基づく前記第2相対応答係数の予測値と、実際の測定で得られた前記第2相対応答係数の値との差に基づいて、前記実際の測定の信頼性についての第3情報を生成することを備える検出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の検出方法において、
前記差が、第2閾値に基づく条件を満たすか否かに基づいて、前記実際に行われた測定の精度が十分か否かを判定する検出方法。
【請求項11】
請求項9に記載の検出方法において、
前記第3情報に基づいて通知を出力することを備える検出方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の検出方法により対象試料の濃度が変化したかについての第1情報を生成することと、
前記第1情報に基づいて、前記対象試料を用いた分析を行うことと、
を備える分析方法。
【請求項13】
対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、少なくとも一つの化合物を既知の濃度で含む試料とを測定して得られた少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値を取得する第1相対応答係数取得部と、
前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料とを測定する測定部と、
前記測定で得られた測定データに基づいて、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記少なくとも一つの化合物に関する少なくとも一つの第2相対応答係数を算出する第2相対応答係数算出部と、
前記少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1閾値と、対応する前記少なくとも一つの第2相対応答係数とに基づいて、前記対象試料の濃度の変化についての第1情報を生成する情報生成部と
を備える、分析装置。
【請求項14】
対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、少なくとも一つの化合物を既知の濃度で含む試料とを測定して得られた少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値を取得する第1相対応答係数取得処理と、
前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料とを測定して得られた測定データに基づいて、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記少なくとも一つの化合物に関する少なくとも一つの第2相対応答係数を算出する第2相対応答係数算出処理と、
前記少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1閾値と、対応する前記少なくとも一つの第2相対応答係数とに基づいて、前記対象試料の濃度の変化についての第1情報を生成する情報生成処理とを処理装置に行わせるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出方法、分析方法、分析装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
分析に用いる試薬は時間と共に劣化し、濃度が変化する。特に分析装置の調整に用いられる標準試料の濃度が変化した場合には、分析への影響は大きくなる。この分析装置の調整は、分析装置により分析対象の試料の分析を行う前に、既知の濃度を有する標準試料を測定した測定データに基づいて行われる。例えば、質量分析計では、標準試料の測定により検量線を作成し、当該検量線を用いてm/zの値の較正が行われる(非特許文献1参照)。この場合、標準試料の濃度の変化を検出するために、既知の濃度の別の標準試料を測定して検量線を作成し、当該検量線を用いて分析に用いる標準試料の濃度を測定することが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Kim JW, Moon HM, Maruyama F, Fujimaki S, Kudo Y, Sakamoto Y, Miyagawa H, Nakagawa K, “Comparison of Screening Method (Py-GC/MS) and Quantitative Method (Solvent Extraction-GC/MS) for Phthalate Esters Analysis”、[online]、2016年、島津製作所、[2019年1月22日検索]、インターネット<URL:https://www.shimadzu.com/an/literature/gcms/jpo216004.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分析に用いる標準試料の濃度の測定のために検量線を作成することは、煩雑な作業であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、対象試料の濃度の変化の検出方法であって、前記対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、少なくとも一つの化合物を既知の濃度で有する試料とを測定して得られた少なくとも一つの第1相対応答係数、または前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値を取得することと、前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料とを測定し、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記少なくとも一つの化合物に関する少なくとも一つの第2相対応答係数を算出することと、前記少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1閾値と、対応する前記少なくとも一つの第2相対応答係数とに基づいて、前記対象試料の濃度の変化についての第1情報を生成することとを備える検出方法に関する。
本発明の第2の態様は、第1の態様の検出方法により対象試料の濃度が変化したかについての第1情報を生成することと、前記第1情報に基づいて、前記対象試料を用いた分析を行うことと、を備える分析方法に関する。
本発明の第3の態様は、対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、少なくとも一つの化合物を既知の濃度で含む試料とを測定して得られた少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値を取得する第1相対応答係数取得部と、前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料とを測定する測定部と、前記測定で得られた測定データに基づいて、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記少なくとも一つの化合物に関する少なくとも一つの第2相対応答係数を算出する第2相対応答係数算出部と、前記少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1閾値と、対応する前記少なくとも一つの第2相対応答係数とに基づいて、前記対象試料の濃度の変化についての第1情報を生成する情報生成部とを備える分析装置に関する。
本発明の第4の態様は、対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、少なくとも一つの化合物を既知の濃度で含む試料とを測定して得られた少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値を取得する第1相対応答係数取得処理と、前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料とを測定して得られた測定データに基づいて、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記少なくとも一つの化合物に関する少なくとも一つの第2相対応答係数を算出する第2相対応答係数算出処理と、前記少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1閾値と、対応する前記少なくとも一つの第2相対応答係数とに基づいて、前記対象試料の濃度の変化についての第1情報を生成する情報生成処理とを処理装置に行わせるためのプログラムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、煩雑な操作を必要とせず、試薬の濃度の変化を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態の検出方法を説明するための概念図である。
図2図2(A)および図2(B)は、対象試料の各成分の濃度が変化したか否かの判定を説明するための表である。
図3図3は、フタル酸のエステルを例示する図である。
図4図4は、一実施形態に係る分析装置の構成を示す概念図である。
図5図5は、一実施形態に係る分析方法の流れを示すフローチャートである。
図6図6(A)および図6(B)は、対象試料の各成分の濃度が変化したか否かの判定を説明するための表である。
図7図7は、複数の基準化合物を用いた場合の、対象試料の各成分の濃度が変化したか否かの判定を説明するための表である。
図8図8は、相対応答係数の経時的変化を示すグラフである。
図9図9は、プログラムを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0009】
-第1実施形態-
本実施形態の検出方法では、試料に含まれる成分の濃度の変化を検出する。以下では、濃度の変化を検出する対象となる試料およびその成分をそれぞれ対象試料および対象成分と呼ぶ。本実施形態の検出方法では、予め得られた第1相対応答係数と、対象試料および基準化合物を有する試料を測定して得られた第2相対応答係数に基づいて対象試料の濃度の変化についての情報を生成する。以下では、この情報を濃度変化情報と呼ぶ。
【0010】
(第1相対応答係数の取得)
対象成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、基準化合物を既知の濃度で有する試料との測定が行われ、当該測定で得られたデータ(以下、第1測定データと呼ぶ)に基づいて、第1相対応答係数が取得される。この測定の方法は、定量分析を行うことができれば特に限定されず、例えばガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、質量分析、ガスクロマトグラフィ/質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフィ/質量分析(LC/MS)、フーリエ変換赤外分光法、および紫外・可視光を利用した分光光度法の少なくとも一つを用いることができる。以下では、対象成分に相当する化合物を対象化合物と呼ぶ。
【0011】
相対応答係数(Relative Response Facter;RRF)は2つの化合物の応答係数(Response Factor;RF)の比率で表される。応答係数RFは、測定した化合物の重量をM、測定して得られた強度をAとすると以下の式(1)で表される。
RF=A/M …(1)
【0012】
基準化合物Rに対する対象化合物Sの相対応答係数をRRFS/Rとする。測定した基準化合物Rの重量をM、測定により得られた強度をAとし、測定した対象化合物Sの重量をM、測定により得られた強度をA、とするとRRFS/Rは以下の式(2)で表される。
RRFS/R=(A/M)/(A/M) …(2)
RRFS/Rを取得する際の測定で使用した基準化合物Rの濃度をC、対象化合物Sの濃度をCとし、測定した試料の体積をVとするとM=C×V、M=C×Vである。このことと上記の式(2)からRRFS/Rは以下の式(3)により定義される。
RRFS/R= (A/(C×V)) / (A/(C×V))
= (A/C) / (A/C) …(3)
従って、第1相対応答係数RRF1S/Rを取得する際の測定で使用した基準化合物Rの濃度をCR1、当該測定で得られた強度をAR1とし、対象化合物Sの濃度をCS1、当該測定で得られた強度をAS1とすると、第1相対応答係数RRF1S/Rは以下の式(4)により算出される。
RRF1S/R=(AS1/CS1) / (AR1/CR1) …(4)
【0013】
相対応答係数は、同一の機種の分析装置、特に同一の機種の質量分析計では、略一定に保たれる。基準化合物Rおよび対象化合物Sの同一の組合せについて、相対応答係数が変化した場合は、基準化合物Rおよび測定が安定であることを前提とすると、対象化合物Sの実際の濃度が、相対応答係数の算出に用いた濃度の値から変化したものと推定することができる。ここで、「機種」とは、同一の仕様の測定部を有する製品を示す。機種ごと、または装置ごとに、第1相対応答係数として、基準化合物Rに対する対象化合物Sの相対応答係数が予め記憶される。
【0014】
(第2相対応答係数の算出)
第1相対応答係数を測定した装置と同一の機種の装置を用いて、対象試料および基準化合物Rを含む試料が測定され、当該測定で得られたデータ(以下、第2測定データと呼ぶ)に基づいて、第2相対応答係数RRF2S/Rが算出される。ここでは、第2相対応答係数RRF2S/Rを取得する際の測定に使用した基準化合物Rの濃度をCR2、当該測定で得られた強度をAR2とし、対象化合物Sの濃度をCS2、当該測定で得られた強度をAS2とすると、第2相対応答係数RRF2S/Rは以下の式(5)で示される。
RRF2S/R=(AS2/CS2) / (AR2/CR2) …(5)
なお、上記では、基準化合物Rに対する対象化合物Sの相対応答係数を用いるものとしたが、対象化合物Sに対応する基準化合物Rの相対応答係数を用いてもよい。以降では、煩雑さを避けるため、基準化合物に対する対象化合物の第1相対応答係数をRRF1、第2相対応答係数をRRF2と記載する。
【0015】
(濃度変化情報の生成)
第1相対応答係数RRF1と、第2相対応答係数RRF2とに基づいて、濃度変化情報が生成される。第2相対応答係数RRF2が、第1相対応答係数RRF1に基づく許容範囲に入るか否かに基づいて、対象試料の濃度が変化したか否かが判定される。この判定を、濃度変化判定と呼ぶ。濃度変化判定の結果や、第1相対応答係数RRF1および第2相対応答係数RRF2に関する情報が、濃度変化情報として生成され、分析者等に提示される。
【0016】
図1は、濃度変化判定を説明するための概念図である。第2相対応答係数RRF2が、第1相対応答係数RRF1に基づいて設定された許容範囲R1に入る場合、対象試料の濃度は変化していないものと判定される。第2相対応答係数RRF2が、許容範囲R1に入らない場合、対象試料の濃度は変化したものと判定される。許容範囲R1の下限となる閾値(以下、第1判定閾値Th1と呼ぶ)は、分析の精度等に基づいて設定することができ、例えば第1相対応答係数RRF1よりも10%、または20%低い値が設定される。許容範囲R1の上限となる閾値(以下、第2判定閾値と呼ぶ)は、分析の精度等に基づいて設定することができ、例えば第1相対応答係数RRF1よりも10%、または20%高い値が設定される。第1判定閾値Th1および第2判定閾値Th2そのものの値は、それぞれ許容範囲R1に含めてもよいし、含めなくてもよい。
【0017】
図2(A)は、濃度変化判定を具体的に説明するための表2-Aを示す図である。表2-Aは、全ての対象化合物が、濃度変化判定において濃度が変化しなかったと判定された場合を示す。基準化合物をAとし、対象試料には、対象化合物B,CおよびDが含まれているものとする。
【0018】
予め得られている基準化合物Aに対する対象化合物B,CおよびDの第1相対応答係数RRF1は、それぞれ1.0、2.0および3.0となっている。これらの第1相対応答係数RRF1に基づいて、対象化合物B,CおよびDの許容範囲R1がそれぞれ0.8-1.2、1.6-2.4および2.6-3.4と定められている。対象試料および基準化合物Aを実測して得られた、基準化合物Aに対する対象化合物B,CおよびDの第2相対応答係数RRF2はそれぞれ1.1、2.1および3.2であり、いずれも許容範囲R1内にある。従って、濃度変化判定において、対象化合物B,CおよびDは全て濃度が変化しなかったものと判定される。
【0019】
図2(B)は、濃度変化判定を具体的に説明するための表2-Bを示す図である。表2-Bでは、表2-Aと同様の許容範囲R1が設定されているが、測定の結果、基準化合物Aに対する対象化合物Bの第2相対応答係数が0.6であり、対応する許容範囲R1である0.8-1.2から外れている。従って、濃度変化判定において、対象化合物Bは濃度が変化したものと判定される。
【0020】
(基準化合物および対象化合物について)
基準化合物は、濃度が既知であれば特に限定されない。但し、基準化合物の濃度が不安定であると、基準化合物の濃度を確かめるために、基準化合物および基準化合物の濃度を測定するための基準となる他の化合物を頻繁に測定しなければならず手間がかかってしまう。従って、基準化合物は、基準化合物を既知の濃度で有する試料中で、気化または分解等がしにくく比較的安定な化合物が好ましく、特に対象化合物よりも安定な化合物が好ましい。基準化合物を複数用いてもよい。対象試料が複数の対象化合物を含む場合、少なくとも一つの対象化合物を基準化合物として用いてもよい。
【0021】
対象試料に含まれる対象化合物の種類は特に限定されず、様々な化合物を対象化合物とすることができる。対象化合物は表2-Aおよび2-Bに示したように複数でもよい。特に、対象試料は、分析において正確な濃度を有することが必要とされる標準試料であることが好ましい。標準試料は、濃度が既知の少なくとも一つの標準物質を含む。
【0022】
対象化合物は、フタル酸のエステルが好ましく、フタル酸エステルがより好ましい。以下の実施形態において、「フタル酸エステル(phthalate ester)」はフタル酸のオルト体のエステルを指し、「フタル酸のエステル(ester of phthalic acid)」はフタル酸のオルト体、イソ体およびテレ体のエステルの全てを指すものとする。
【0023】
対象試料に対象化合物として好適に含まれるフタル酸のエステルは、フタル酸ジイソブチル(DIBP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)、フタル酸ジノルマルオクチル(DNOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸モノ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジ(2-メトキシエチル)、フタル酸ビス(2-ブトキシエチル)、フタル酸-n-ペンチルイソペンチル、フタル酸ジプロピルヘプチル、フタル酸ジ-n-ペンチル(DPENP)、フタル酸ジ-イソ-ペンチル(DPENP)、フタル酸ジ-n-ヘキシル(DHEXP)、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、フタル酸ジベンジル、フタル酸ジへプチル、フタル酸ジイソヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジイソウンデシルおよびフタル酸ジイソトリデシルからなる群から選択される少なくとも一つの化合物である。
【0024】
図3は、上記フタル酸のエステルのうち、DIBP、DBP、BBP、DEHP、DNOP、DINPおよびDIDPの構造を示す図である。図3中、「M.W.」は分子量を示す。図3に示した7つのフタル酸エステルは、いくつかの国または地域において、人間等の生物や環境への影響から規制の対象となっている規制物質として認定されており、その濃度を測定するために正確な標準試料を用意する必要があるため、対象化合物としてさらに好ましい。
【0025】
基準化合物の好適な一例は、安定性の観点からフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)である。対象化合物がフタル酸のエステル、特に上記に列挙したフタル酸のエステルである場合には、DEHPを基準化合物として用いることが好ましい。
【0026】
対象化合物および基準化合物は、測定の際、試料に固体に分散されて含まれていてもよいし、液体に分散されて含まれていてもよい。第1相対応答係数RRF1の算出のための測定と、第2相対応答係数RRF2の算出のための測定とで、対象化合物または基準化合物が分散される当該固体または液体の種類は異なっていてもよい。
【0027】
(分析対象について)
本実施形態の対象試料の濃度の変化の検出方法は、対象試料を用いる、任意の分析対象の分子の分析の前に行うことができる。分析対象の分子は、上述のフタル酸エステルのように、工業的に生産され流通されている化学物質であったり、規制物質を含むことが好ましいが、特に限定されない。
【0028】
(分析装置について)
図4は、本実施形態に係る分析装置の構成を示す概念図である。分析装置1は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(以下、GC-MSと呼ぶ)であり、測定部100と情報処理部40とを備える。測定部100は、ガスクロマトグラフ10と、質量分析部30とを備える。分析装置1により、第2相対応答係数RRF2の算出のための測定が行われる。
なお、本実施形態に係る分析装置は、定量分析が可能であれば特に限定されない。分析装置としては、ガスクロマトグラフ(GC)、液体クロマトグラフ(LC)、質量分析計、熱分解GC-MS、液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS)、フーリエ変換赤外分光光度計、および紫外・可視分光光度計等を用いることができる。
【0029】
ガスクロマトグラフ10は、キャリアガス流路11、分析対象の試料または対象試料(以下、「試料等」と呼ぶ)が導入される試料導入部12、カラム温度調節部13、分離カラム14および試料ガス導入管15を備える。質量分析部30は、真空容器31と、排気口32と、試料等をイオン化してイオンInを生成するイオン化部33と、イオン調整部34と、質量分離部35と、検出部36とを備える。
【0030】
情報処理部40は、入力部41と、通信部42と、記憶部43と、出力部44と、制御部50とを備える。制御部50は、装置制御部51と、データ処理部52と、出力制御部53とを備える。データ処理部52は、係数取得部521と、係数算出部522と、判定部523とを備える。出力制御部53は、通知部530を備える。
【0031】
測定部100は、分離分析により試料等の各成分を分離し、試料等を検出する。
【0032】
ガスクロマトグラフ10は、試料等に含まれる成分を物理的または化学的特性に基づいて分離する。分離カラム14に導入される際に、試料等はガスまたはガス状となっているが、これを試料ガスと呼ぶ。
【0033】
キャリアガス流路11は、ヘリウム等のキャリアガスの流路であり、キャリアガスを試料導入部12に導入する(矢印A1)。試料導入部12は、試料気化室等の試料等を導入する室を備え、不図示のシリンジやオートサンプラー等の注入器により注入された試料等を一時的に収容し、試料等が液体の場合は気化させて、試料ガスを分離カラム14に導入する(矢印A2)。
【0034】
分離カラム14は、キャピラリーカラム等のカラムを備える。分離カラム14は、カラムオーブン等を備えるカラム温度調節部13により数百℃以下等に温度制御されている。試料ガスの各成分は、移動相と、分離カラム14の固定相との間の分配係数等に基づいて分離され、分離された試料ガスの各成分は異なる時間に分離カラム14から溶出し、試料ガス導入管15を通って質量分析部30のイオン化部33に導入される。
【0035】
質量分析部30は、質量分析計を備え、イオン化部33に導入された試料等をイオン化し、質量分離して検出する。イオン化部33で生成されたイオンInの経路を矢印A3で模式的に示した。
なお、クロマトグラフから溶出された試料等の検出方法は基準化合物および対象化合物の強度を取得できれば特に限定されず、吸光度検出器等を用いてもよい。また、試料等に対応するイオンInを所望の精度で質量分析して検出することができれば、質量分析部30を構成する質量分析計の種類は特に限定されず、任意の種類の1以上の質量分析器を含むものを用いることができる。
【0036】
質量分析部30の真空容器31は、排気口32を備える。排気口32は、ターボ分子ポンプ等の、10-2Pa以下等の高真空が実現可能なポンプおよびその補助ポンプを含む不図示の真空排気系と接続されている。図4では、真空容器31の内部の気体が排出される点を矢印A4で模式的に示した。
【0037】
質量分析部30のイオン化部33は、イオン源を備え、イオン化部33に導入された試料等を電子イオン化によりイオン化する。電子イオン化の際に試料等は解離されるため、イオンInは、試料等が解離されて得られたフラグメントイオンを含む。イオン化部33で生成されたイオンInはイオン調整部34に導入される。
なお、イオン化部33によるイオン化の方法は、所望の効率でイオン化を行うことができれば特に限定されない。GC-MSの場合、化学イオン化等を用いてもよい。LC-MSの場合もエレクトロスプレー法等を適宜用いることができる。
【0038】
質量分析部30のイオン調整部34は、レンズ電極やイオンガイド等のイオン輸送系を備え、電磁気学的作用により、イオンInを収束させる等して調整する。イオン調整部34から出射されたイオンInは質量分離部35に導入される。
【0039】
質量分析部30の質量分離部35は、四重極マスフィルタを備え、導入されたイオンInを質量分離する。質量分離部35は、四重極マスフィルタに印加された電圧により、m/zの値に基づいてイオンInを選択的に通過させる。質量分離部35で質量分離されたイオンInは検出部36に入射する。
【0040】
質量分析部30の検出部36は、イオン検出器を備え、入射したイオンInを検出する。検出部36は、入射したイオンInの検出により得られた検出信号を、不図示のA/D変換器によりA/D変換し、デジタル化された検出信号を測定データとして情報処理部40に出力する(矢印A5)。
【0041】
情報処理部40は、電子計算機等の情報処理装置を備え、分析装置1のユーザー(以下、単に「ユーザー」と呼ぶ)とのインターフェースとなる他、様々なデータに関する通信、記憶、演算等の処理を行う。
なお、分析装置1が用いるデータの一部は遠隔のサーバ等に保存してもよく、分析装置1が行う演算処理の一部は遠隔のサーバ等で行ってもよい。
【0042】
入力部41は、マウス、キーボード、各種ボタンまたはタッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部41は、測定部100の制御や制御部50の処理に必要な情報等を、ユーザーから受け付ける。予め想定されている対象化合物および基準化合物の濃度または、基準化合物および対象化合物を検出するためのm/zが入力部41を介して入力される。通信部42は、インターネット等の無線または有線接続による通信を行うことができる通信装置を含んで構成され、測定部100の制御や制御部50の処理に関するデータ等を適宜送受信する。
【0043】
記憶部43は、不揮発性の記憶媒体で構成され、測定データ、制御部50が処理を実行するためのプログラム、データ処理部52が処理を行うために必要なデータおよび当該処理により得られたデータ等を記憶する。
【0044】
記憶部43には、上述の第1相対応答係数RRF1を示す数値が記憶されている。
なお、記憶部43に、上述の第1判定閾値Th1、第2判定閾値Th2、または許容範囲R1等の第1相対応答係数に基づくデータが記憶されていてもよい。記憶部43が第1相対応答係数RRF1を記憶していなくても、当該データを用いて濃度変化判定を行うことができる。
【0045】
出力部44は、液晶モニタ等の表示装置やプリンター等を含んで構成される。出力部44は、濃度変化情報若しくは濃度変化判定に基づく通知、または、データ処理部52の処理により得られたデータ等を、表示装置に表示したり、プリンターにより印刷したりして出力する。
【0046】
制御部50は、CPU等のプロセッサを備え、測定部100の各部の動作を制御したり、測定データを処理する等、分析装置1の動作の主体となる。
【0047】
制御部50の装置制御部51は、測定部100の各部の動作を制御する。例えば、装置制御部51は、質量分離部35で通過させるイオンのm/zを連続的に変化させるスキャンモードや、特定のm/zを有する複数のイオンを通過させるSIM(Selective Ion Scannning)モードによりイオンInの検出を行うことができる。この場合、装置制御部51は、入力部41からの入力等に基づいて設定されたm/zを有するイオンInが質量分離部35を選択的に通過するように、質量分離部35の電圧を変化させる。
【0048】
制御部50のデータ処理部52は、測定データを処理し、解析する。
【0049】
係数取得部521は、記憶部43に記憶されている第1相対応答係数RRF1に対応する数値を取得し、メモリに参照可能に記憶させる。
なお、記憶部43に、上述の第1判定閾値Th1、第2判定閾値Th2、または許容範囲R1等の第1相対応答係数RRF1に基づくデータが記憶されている場合には、係数取得部521はこれらの数値を取得し、メモリに参照可能に記憶させる。
【0050】
係数算出部522は、測定データから、検出された基準化合物の強度と、検出された少なくとも一つの対象化合物の強度とを算出する。SIMモードにより質量分析が行われた場合、係数算出部522は、設定された各m/zに対応する基準化合物および対象化合物の強度を、当該m/zに対応して検出された強度として算出する。スキャンモードにより質量分析が行われた場合、係数算出部522は、測定データから、マススペクトル等に対応するデータを生成し、基準化合物および対象化合物のそれぞれに対応するピークのピーク強度やピーク面積を基準化合物および対象化合物の強度として算出する。
【0051】
係数算出部522は、検出された基準化合物の強度および検出された少なくとも一つの対象化合物の強度に基づいて、基準化合物に対する各対象化合物の第2相対応答係数RRF2を算出する。係数算出部522は、基準化合物および対象化合物の強度、ならびに、入力部41からの入力等に基づいて設定された、基準化合物および対象化合物について想定されている濃度を用いて、上述の式(5)により、第2相対応答係数RRF2を算出する。
【0052】
判定部523は、第1相対応答係数RRF1および算出された第2相対応答係数RRF2に基づいて、濃度変化判定を行う。判定部523は、第1相対応答係数RRF1に基づいて第1判定閾値Th1および第2判定閾値Th2を算出し、第2相対応答係数RRF2が第1判定閾値Th1と第2判定閾値Th2により定まる許容範囲R1内であるか否かに基づいて濃度変化判定を行う。判定部523は、濃度変化判定の結果を含む濃度変化情報を生成する情報生成部として機能する。
【0053】
出力制御部53は、データ処理部52の処理により得られた、濃度変化情報等を含む出力画像を生成し、出力部44を制御して当該出力画像を出力させる。
【0054】
出力制御部53の通知部530は、濃度変化判定の結果、対象試料の濃度が変化していた場合に、その旨をユーザーに伝えるための通知を出力する。例えば、通知部530は、判定部523の濃度変化判定の結果、対象試料の濃度が変化したと判定された場合、「不合格」「FAIL」等の文字を出力部44に出力させ、警告することができる。対象試料が標準試料の場合には、通知部530は、「標準試料が劣化している可能性があります」等の文字を出力部44に出力させることができる。このような警告の表示方法は特に限定されないが、例えば画面にポップアップメッセージとして表示してもよい。通知部530は、濃度変化判定の結果、対象試料の濃度が変化したと判定された場合にも、「合格」「PASS」等の文字を出力部44に出力させてもよい。
【0055】
(分析方法について)
図5は、本実施形態の検出方法を含む分析方法の流れを示すフローチャートである。ステップS1001において、係数取得部521は、第1相対応答係数RRF1を取得する。ステップS1001が終了したら、ステップS1003が開始される。ステップS1003において、測定部100は、対象試料と、基準化合物を含む試料とを測定し、係数算出部522は第2相対応答係数RRF2を算出する。ステップS1003が終了したらステップS1005が開始される。
【0056】
ステップS1005において、判定部523は、第2相対応答係数RRF2が第1相対応答係数RRF1に基づく許容範囲内かを判定する(濃度変化判定)。判定部523は、濃度変化判定に基づく濃度変化情報を生成する。第2相対応答係数が許容範囲内であった場合、判定部523は、ステップS1005を肯定判定してステップS1007が開始される。許容範囲外であった場合、判定部523は、ステップS1005を否定判定してステップS1009が開始される。
【0057】
ステップS1007において、濃度変化情報に基づき、対象試料を用いた分析対象の試料の分析が、分析装置1により行われる。ステップS1007が終了したら、処理が終了される。
【0058】
ステップS1009において、通知部530は、濃度変化判定に基づく通知を出力する。ステップS1009が終了したら、ステップS1011が開始される。ステップS1011において、ユーザーは、測定データの補正のため対象試料の濃度を精密に測定するか、対象試料に代わる試料を用意する。ステップS1011が終了したら、ステップS1013が開始される。
【0059】
ステップS1013において、分析装置1は、分析対象の試料の分析を行う。ステップS1013が終了したら、処理が終了される。
【0060】
次のような変形も本発明の範囲内であり、上述の実施形態と組み合わせることが可能である。以下の変形例において、上述の実施形態と同様の構造、機能を示す部位等に関しては、同一の符号で参照し、適宜説明を省略する。
(変形例1)
上述の実施形態において、基準化合物を複数用いる場合、対象成分のそれぞれに対して、複数の基準化合物のうちいくつが個別濃度変化判定の条件を満たすかに基づいて、対象成分の濃度が変化したかを判定することができる。ここで、個別濃度変化判定とは、上述の実施形態の図2(A)および2(B)で示された濃度変化判定と同様の、基準化合物が一つのみの場合の濃度変化判定を指す。さらに、個別濃度変化判定の条件とは、個別濃度変化判定において濃度が変化しないと判定する条件を指し、上述の実施形態の例では、第2相対応答係数RRF2の値が許容範囲R1内にある場合を指す。
【0061】
図6(A)、図6(B)および図7は、濃度変化判定を具体的に説明するための表を示す図である。本変形例の以下の表では、化合物A,B,CおよびDのそれぞれが、基準化合物であるとともに対象化合物であるとする。また、化合物Aが劣化し、濃度が約半分に減少している一方、化合物B,CおよびDは濃度が変化していない場合を想定する。
【0062】
図6(A)の表6-Aは、化合物Aを基準化合物とした場合の個別濃度変化判定の結果を示す表である。化合物B,CおよびDは濃度が変化していないにも関わらず、基準化合物Aの濃度が約半分に減少しているために、第2相対応答係数RRF2が許容範囲R1の約2倍の値になってしまっている。その結果、化合物B,CおよびDは濃度が変化していないにも関わらず、濃度が変化したものとする判定結果となっている。
【0063】
図6(B)の表6-Bは、図6(A)の場合と同様の想定の下、化合物Bを基準化合物とした場合の個別濃度変化判定の結果を示す表である。濃度が変化していない基準化合物Bを基準としているため、表6-Bでは、対象化合物Aの濃度が変化したものとし、対象化合物CおよびDの濃度が変化していないものとする正確な判定結果が得られている。
【0064】
本変形例に係る濃度変化判定(以下、統合濃度変化判定と呼ぶ)では、1つの対象化合物について複数の基準化合物のうちいくつが個別濃度変化判定の条件を満たすかにより当該対象化合物の濃度が変化したかを判定する。統合濃度変化判定により、複数の基準化合物の一部の濃度が変化していても、それによる間違った判定を行う可能性が低減される。
【0065】
図7の表7は、化合物A,B,CおよびDのそれぞれを基準化合物として対象化合物の個別濃度変化判定を行った結果を統合した、統合濃度変化判定の結果を示す表である。図6(A)に示されたように、劣化した化合物Aを基準化合物として個別濃度変化判定を行った場合には、対象化合物B,CおよびDの全てについて濃度が変化したものとする判定結果が得られる。一方、劣化していない化合物B,CおよびDを基準化合物として濃度変化判定を行った場合には、劣化した化合物Aについては濃度が変化したものとする判定結果が得られ、劣化していない化合物B,CおよびDについては濃度が変化していないのものとする判定結果が得られる。
【0066】
個別濃度変化判定の結果を統合する。対象化合物Aについては、B,CおよびDの3つの基準化合物により個別濃度変化判定を行い、全てで濃度が変化したという判定がされた。対象化合物Bについては、A,CおよびDの3つの基準化合物により個別濃度変化判定を行い、1つの基準化合物について濃度が変化した判定、2つの基準化合物について濃度が変化しなかったという判定がされた。対象化合物Cおよび対象化合物Dについても、1つの基準化合物について濃度が変化した判定、2つの基準化合物について濃度が変化しなかったという判定がされた。
【0067】
複数の基準化合物による個別濃度変化判定のうち、所定の数(ここでは、3つの基準化合物のうち2つとする)以上において濃度が変化しなかった場合に、統合濃度変化判定において濃度が変化しなかったと判定する。そうすると、対象化合物Aは、統合濃度変化判定で濃度が変化したものと判定され、対象化合物B,CおよびDは、統合濃度変化判定で濃度が変化しなかったものと判定され、正確な判定結果が得られることになる。
なお、上述の例では化合物A,B,CおよびDが基準化合物であるとともに対象化合物であるものとしたが、複数の基準化合物の少なくとも一部と対象化合物とが別々の化合物の場合でも、複数の基準化合物について統合濃度変化判定を行うことでより正確な判定結果を得ることができる。また、統合濃度変化判定における、個別濃度変化判定の上記所定の数は、上記例に限定されず、基準化合物の数の6割以上、7割以上、または8割以上等に対応する数を適宜設定することができる。
【0068】
(変形例2)
上述の実施形態において、濃度変化判定が複数回行われた場合に、データ処理部52は、算出された第2相対応答係数RRF2の経時的変化を示すグラフに対応するデータ(以下、相対応答係数データと呼ぶ)を生成することができる。出力制御部53は、当該グラフを示す出力画像を出力部44に出力させることができる。
【0069】
図8は、第2相対応答係数RRF2の経時的変化を示すグラフの一例を示す図である。横軸にデータの取得時期を最初のデータ点P1に対応する日(以下、初日と呼ぶ)からの日数で示し、縦軸に測定された第2相対応答係数RRF2の値を示したグラフ上に、実測に対応するデータ点Pがプロットされている。横軸の時間の単位や縦軸の数値は適宜設定することができる。
【0070】
データ処理部52は、相対応答係数データに基づいて、対象試料の交換時期を予測することができる。データ処理部52は、複数のデータ点Pに基づいて最小二乗法等により回帰直線L1を導出する。データ処理部52は、回帰直線L1に基づいて、第2相対応答係数RRF2が試料の劣化の基準となる閾値(以下、第3判定閾値Th3と呼ぶ)を下回る時期(図8では初日から80日後)を算出する。データ処理部52は、算出された対象試料の交換時期等を含む情報を生成し、出力部44に出力させる。
【0071】
(変形例3)
変形例2において、回帰直線L1に基づく予測が行われた後、測定された第2相対応答係数RRF2の値が回帰直線L1に基づく予測より大きく外れた場合には、対象試料若しくは基準化合物を含む試料の測定に問題があった可能性が考えられる。この点を検出しユーザーに通知してもよい。
【0072】
図8において、回帰直線L1に基づく予測からは、初日から75日目には、第2相対応答係数RRF2の予測値は0.63程度である。データ処理部52は、実測された第2相対応答係数RRF2と、回帰直線L1に基づく予測値との差Dを算出し、差Dに基づいて、測定の信頼性に関する情報(以下、信頼性情報と呼ぶ)を生成する。データ処理部52は、差Dの大きさが、分析の精度等に基づいて設定された閾値(以下、第4判定閾値Th4と呼ぶ)以上または当該閾値よりも大きい場合、測定の精度が十分でなかったと判定し、その点を示す信頼性情報を生成する。データ処理部52は、差Dの大きさが、第4判定閾値Th4以下または当該閾値よりも小さい場合、測定の精度が十分だったと判定し、その点を示す信頼性情報を生成する。信頼性情報は適宜出力部44を介して出力される。
【0073】
通知部530は、測定の精度が十分でなかったと判定された場合には、出力部44を介し、ユーザーに対してその旨を伝える通知を行う。通知部530は、測定の精度が十分であったと判定された場合にも、ユーザーに対して通知を行ってもよい。
【0074】
(変形例4)
分析装置1の情報処理機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録された、上述したデータ処理部52の処理およびそれに関連する処理の制御に関するプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行させてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0075】
また、パーソナルコンピュータ(以下、PCと記載)等に適用する場合、上述した制御に関するプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体やインターネット等のデータ信号を通じて提供することができる。図9はその様子を示す図である。PC950は、CD-ROM953を介してプログラムの提供を受ける。また、PC950は通信回線951との接続機能を有する。コンピュータ952は上記プログラムを提供するサーバーコンピュータであり、ハードディスク等の記録媒体にプログラムを格納する。通信回線951は、インターネット、パソコン通信などの通信回線、あるいは専用通信回線などである。コンピュータ952はハードディスクを使用してプログラムを読み出し、通信回線951を介してプログラムをPC950に送信する。すなわち、プログラムをデータ信号として搬送波により搬送して、通信回線951を介して送信する。このように、プログラムは、記録媒体や搬送波などの種々の形態のコンピュータ読み込み可能なコンピュータプログラム製品として供給できる。
【0076】
上述の実施形態または変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(1)第1の態様による実施形態では、検出方法は、対象試料の濃度の変化の検出方法であって、前記対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、少なくとも一つの化合物(基準化合物)を既知の濃度で有する試料とを測定して得られた少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値を取得することと、前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料とを測定し、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記少なくとも一つの化合物に関する少なくとも一つの第2相対応答係数を算出することと、前記少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1閾値と、対応する前記少なくとも一つの第2相対応答係数とに基づいて、前記対象試料の濃度の変化についての第1情報(濃度変化情報)を生成することとを備える。これにより、煩雑な操作を必要とせず、試薬の濃度の変化を検出することができる。
【0077】
(2)第2の態様に係る実施形態では、第1の態様の検出方法において、前記少なくとも一つの第2相対応答係数が、対応する前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値に基づく条件を満たすか否かに基づいて、前記対象試料の前記濃度が変化したかを判定する。これにより、閾値に基づいて、明確に試薬の濃度が変化したかを判定することができる。
【0078】
(3)第3の態様による実施形態では、第2の態様の検出方法において、前記対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、複数の化合物を既知の濃度で有する試料とを分析して得られた複数の第1相対応答係数または前記複数の第1相対応答係数にそれぞれ基づく複数の第1閾値を取得することと、前記対象試料と、前記複数の化合物を含む試料とを測定し、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記複数の化合物に関する複数の第2相対応答係数を算出することと、前記対象試料の少なくとも一つの成分のそれぞれに対して、前記複数の化合物のうちいくつが前記条件を満たすかに基づいて、前記少なくとも一つの成分のそれぞれの濃度が変化したかを判定することとを備える。これにより、複数の基準化合物の中に濃度が変化したものがあっても、対象化合物の濃度が変化したか否かを検出する精度が低下することを防ぐことができる。
【0079】
(4)第4の態様の実施形態では、第1から第3までのいずれかの態様の検出方法において、前記少なくとも一つの化合物は、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)を含む。DEHPは安定なため、基準化合物とした場合に濃度が変化していないかの確認を長期間行わなくてもよく、手間を削減することができる。
【0080】
(5)第5の態様の実施形態では、第1から第4までのいずれかの態様の検出方法において、前記少なくとも一つの成分は、フタル酸のエステルを含む。これにより、規制物質として、または工業用途等で重要なフタル酸のエステルの分析を行う際に手間を削減することができる。
【0081】
(6)第6の態様の実施形態では、第5の態様の検出方法において、前記少なくとも一つの成分は、DIBP、DBP、BBP、DEHP、DNOP、DINP、DIDP、フタル酸モノ(2-エチルヘキシル)、DMP、DEP、DPRP、フタル酸ジ(2-メトキシエチル)、フタル酸ビス(2-ブトキシエチル)、フタル酸-n-ペンチルイソペンチル、フタル酸ジプロピルヘプチル、DPP、DPENP、DHP、フタル酸ジイソヘキシル、DCHP、フタル酸ジベンジル、フタル酸ジへプチル、フタル酸ジイソヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジイソウンデシルおよびフタル酸ジイソトリデシルからなる群から選択される1以上の化合物である。これにより、規制物質として、または工業用途等で重要なこれらのフタル酸のエステルの分析を行う際に手間を削減することができる。
【0082】
(7)第7の態様の実施形態では、第1から第6までのいずれかの態様の検出方法において、前記第1情報に基づいて通知を出力することを備える。これにより、ユーザーに試薬の濃度についての情報をわかりやすく伝えることができる。
【0083】
(8)第8の態様の実施形態では、第1から第7までのいずれかの態様の検出方法において、前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料との測定を複数回行い、複数回の前記測定のそれぞれに対応した前記第2相対応答係数を算出することと、算出された複数の前記第2相対応答係数に基づいて、前記試料の劣化の予測についての第2情報を生成することとを備える。これにより、煩雑な操作を必要とせず、ユーザーに試料の劣化についての情報を提供することができる。
【0084】
(9)第9の態様の実施形態では、第8の態様の検出方法において、前記第2情報に基づく前記第2相対応答係数の予測値と、実際の測定で得られた前記第2相対応答係数の値との差に基づいて、前記実際の測定の信頼性についての第3情報(信頼性情報)を生成することを備える。これにより、煩雑な操作を必要とせず、測定の信頼性についての情報を提供することができる。
【0085】
(10)第10の態様の実施形態では、第9の態様の検出方法において、前記差が、第2閾値に基づく条件を満たすか否かに基づいて、前記実際に行われた測定の精度が十分か否かを判定する。これにより、閾値に基づいて、測定の精度が十分か否かを明確に判定することができる。
【0086】
(11)第11の態様の実施形態では、第9または第10の態様の検出方法において、前記第3情報に基づいて通知を出力することを備える。これにより、ユーザーに測定の信頼性についての情報をわかりやすく伝えることができる。
【0087】
(12)第12の態様の実施形態では、分析方法は、第1から第11までのいずれかの態様の検出方法により対象試料の濃度が変化したかについての第1情報を生成することと、前記第1情報に基づいて、前記対象試料を用いた分析を行うことと、を備える。これにより、煩雑な操作を必要とせず、濃度変化情報を参考にして精度よく分析を行うことができる。
【0088】
(13)第13の態様の実施形態では、分析装置は、対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、少なくとも一つの化合物(基準化合物)を既知の濃度で含む試料とを測定して得られた少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値を取得する第1相対応答係数取得部と、前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料とを測定する測定部と、前記測定で得られた測定データに基づいて、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記少なくとも一つの化合物に関する少なくとも一つの第2相対応答係数を算出する第2相対応答係数算出部と、前記少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1閾値と、対応する前記少なくとも一つの第2相対応答係数とに基づいて、前記対象試料の濃度の変化についての第1情報(濃度変化情報)を生成する情報生成部とを備える。これにより、煩雑な操作を必要とせず、試薬の濃度の変化を検出することができる。
【0089】
(14)第14の態様の実施形態では、プログラムは、対象試料に含まれる少なくとも一つの成分と同一の成分を既知の濃度で有する試料と、少なくとも一つの化合物(基準化合物)を既知の濃度で含む試料とを測定して得られた少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1相対応答係数にそれぞれ基づく少なくとも一つの第1閾値を取得する第1相対応答係数取得処理(図5のステップS1001に対応)と、前記対象試料と、前記少なくとも一つの化合物を含む試料とを測定して得られた測定データに基づいて、前記対象試料の少なくとも一つの成分および前記少なくとも一つの化合物に関する少なくとも一つの第2相対応答係数を算出する第2相対応答係数算出処理(ステップS1003に対応)と、前記少なくとも一つの第1相対応答係数または前記少なくとも一つの第1閾値と、対応する前記少なくとも一つの第2相対応答係数とに基づいて、前記対象試料の濃度の変化についての第1情報(濃度変化情報)を生成する情報生成処理(ステップS1005に対応)とを処理装置に行わせるためのものである。これにより、煩雑な操作を必要とせず、試薬の濃度の変化を検出することができる。
【0090】
本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1…分析装置、10…ガスクロマトグラフ、12…試料導入部、14…分離カラム、30…質量分析部、33…イオン化部、35…質量分離部、36…検出部、40…情報処理部、44…出力部、50…制御部、52…データ処理部、100…測定部、521…係数取得部、522…係数算出部、523…判定部、530…通知部、In…イオン、D…差、L1…回帰直線、P,P1,Pf…データ点、R1…許容範囲、RRF1…第1相対応答係数、RRF2…第2相対応答係数、Th1…第1判定閾値、Th2…第2判定閾値、Th3…第3判定閾値、Th4…第4判定閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9