IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

特許7120335液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法
<>
  • 特許-液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法 図1
  • 特許-液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法 図2
  • 特許-液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法 図3
  • 特許-液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法 図4
  • 特許-液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法 図5
  • 特許-液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法 図6
  • 特許-液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法 図7
  • 特許-液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法 図8
  • 特許-液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20220809BHJP
   G01N 30/34 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01N30/26 L
G01N30/26 A
G01N30/34 A
G01N30/34 E
G01N30/26 Q
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020570336
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2019004713
(87)【国際公開番号】W WO2020161911
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】森川 毅
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第17/154083(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0336026(US,A1)
【文献】特開2004-138413(JP,A)
【文献】特開2013-185947(JP,A)
【文献】特開2006-258732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の分析を行う液体クロマトグラフであって、
複数の移動相源群にそれぞれ対応する複数の流路と、
各移動相源群が含む複数の移動相源から1または複数の移動相を中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給する供給装置と、
前記複数の流路にそれぞれ流れる複数の中間混合移動相を混合し、混合された複数の中間混合移動相を分析用移動相として生成する混合器と、
前記試料の分析開始時に前記分析用移動相における前記複数の中間混合移動相の混合比が予め設定された初期比に調整されるようにかつ前記試料の分析期間中に前記複数の中間混合移動相の混合比が前記初期比から時間的に変化するように、前記供給装置および前記混合器のうち少なくとも一方を制御する分析制御部と、
前記試料の分析開始前に、前記複数の中間混合移動相の混合比が前記初期比に調整されるように前記供給装置および前記混合器のうち少なくとも一方を制御するパージ制御部とを備え、
前記パージ制御部は、前記初期比における前記複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、前記複数の中間混合移動相の混合比を前記初期比に調整する制御の前に、前記複数の中間混合移動相が前記複数の流路をそれぞれ流れるように前記供給装置および前記混合器のうち少なくとも一方を制御する、液体クロマトグラフ。
【請求項2】
前記パージ制御部は、前記初期比における前記複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、前記複数の流路への前記複数の中間混合移動相の供給が順次行われるように前記供給装置および前記混合器のうち少なくとも一方を制御する、請求項1記載の液体クロマトグラフ。
【請求項3】
前記パージ制御部は、前記初期比における前記複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、前記複数の流路への前記複数の中間混合移動相の供給が並行して行われるように前記供給装置および前記混合器のうち少なくとも一方を制御する、請求項1記載の液体クロマトグラフ。
【請求項4】
前記初期比を設定するとともに、前記試料の分析期間中に前記分析用移動相における前記複数の中間混合移動相の混合比の時間的変化を設定する設定部をさらに備え、
前記分析制御部および前記パージ制御部は、前記設定部により設定された混合比の時間的変化に基づいて前記供給装置および前記混合器のうち少なくとも一方を制御する、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項5】
前記パージ制御部は、前記試料の分析開始前でかつ前記複数の流路に前記複数の中間混合移動相が供給される前に、予め定められた移動相の順序に従って各移動相源群の複数の移動相が当該移動相源群に対応する流路に順次供給されるように前記供給装置および前記混合器のうち少なくとも一方を制御し、
前記複数の流路にそれぞれ流れるべき複数の中間混合移動相における1または複数の移動相の混合比はそれぞれ予め設定され、
前記予め定められた移動相の順序は、前記試料の分析に用いられない移動相、前記試料の分析開始時に用いられない移動相、前記複数の中間混合移動相に含まれかつ混合比の項がより小さい移動相、および前記複数の中間混合移動相に含まれかつ混合比の項がより大きい移動相の順である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項6】
前記供給装置は、
前記複数の移動相源群および前記複数の流路にそれぞれ対応する複数のポンプを含み、
各ポンプは、対応する移動相源群から複数の移動相をそれぞれ吸引しつつ混合し、混合された複数の移動相を中間混合移動相として対応する流路に供給する、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項7】
試料の分析を行う液体クロマトグラフであって、
複数の移動相源群にそれぞれ対応する複数の流路と、
各移動相源群が含む複数の移動相源から1または複数の移動相を中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給する供給装置と、
前記複数の流路にそれぞれ流れる複数の中間混合移動相のいずれかを分析用移動相として選択する選択器と、
前記試料の分析開始時に前記分析用移動相として前記複数の中間混合移動相のうち予め設定された1つが選択されるようにかつ前記試料の分析期間中に前記分析用移動相として前記複数の中間混合移動相のうち予め設定された他の1つが選択されるように、前記選択器を制御する分析制御部と、
前記試料の分析開始前に、前記複数の中間混合移動相が前記複数の流路をそれぞれ流れるように前記供給装置および前記選択器のうち少なくとも一方を制御するパージ制御部とを備える、液体クロマトグラフ。
【請求項8】
試料の分析を行う液体クロマトグラフを用いた分析方法であって、
前記液体クロマトグラフは、
複数の移動相源群にそれぞれ対応する複数の流路を有し、
前記分析方法は、
前記試料の分析期間中に、各移動相源群が含む複数の移動相源から1または複数の移動相を中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給するステップと、
前記試料の分析期間中に、前記複数の流路にそれぞれ流れる複数の中間混同移動相を混合し、混合された複数の中間混同移動相を分析用移動相として生成するステップと、
前記試料の分析開始時に前記分析用移動相における前記複数の中間混合移動相の混合比が予め設定された初期比に調整されるようにかつ前記試料の分析期間中に前記複数の中間混合移動相の混合比が前記初期比から時間的に変化するように、前記複数の中間混合移動相の混合比を調整するステップと、
前記試料の分析開始前に、前記複数の中間混合移動相の混合比が前記初期比に調整されるように前記分析用移動相を生成するステップとを含み、
前記試料の分析開始前に、前記複数の中間混合移動相の混合比が前記初期比に調整されるように前記分析用移動相を生成するステップは、前記初期比における前記複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、前記複数の中間混合移動相の混合比を前記初期比に調整する前に、前記複数の中間混合移動相を前記複数の流路にそれぞれ供給することを含む、分析方法。
【請求項9】
前記初期比における前記複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、前記試料の分析開始前に前記複数の中間混合移動相を前記複数の流路にそれぞれ供給することは、前記複数の中間混合移動相の供給を順次行うことを含む、請求項8記載の分析方法。
【請求項10】
前記初期比における前記複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、前記試料の分析開始前に前記複数の中間混合移動相を前記複数の流路にそれぞれ供給することは、前記複数の中間混合移動相の供給を並行して行うことを含む、請求項8記載の分析方法。
【請求項11】
前記初期比を設定するとともに、前記試料の分析期間中に前記分析用移動相における前記複数の中間混合移動相の混合比の時間的変化を設定するステップをさらに含み、
前記試料の分析期間中に前記分析用移動相における前記複数の中間混合移動相の混合比を調整するステップおよび前記試料の分析開始前に前記複数の中間混合移動相の混合比が前記初期比に調整されるように前記分析用移動相を生成するステップは、前記設定するステップにより設定された前記初期比および前記混合比の時間的変化に基づいて前記複数の流路に流れる前記複数の中間混合移動相の混合比を調整することを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項12】
前記複数の流路にそれぞれ流れるべき複数の中間混合移動相における1または複数の移動相の混合比をそれぞれ設定するステップと、
前記試料の分析開始前でかつ前記複数の流路に前記複数の中間混合移動相が供給される前に、予め定められた移動相の順序に従って各移動相源群の複数の移動相を当該移動相源群に対応する流路に順次供給するステップをさらに含み、
前記予め定められた移動相の順序は、前記試料の分析に用いられない移動相、前記試料の分析開始時に用いられない移動相、前記複数の中間混合移動相に含まれかつ混合比の項がより小さい移動相、および前記複数の中間混合移動相に含まれかつ混合比の項がより大きい移動相の順である、請求項8~10のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項13】
試料の分析を行う液体クロマトグラフを用いた分析方法であって、
前記液体クロマトグラフは、
複数の移動相源群にそれぞれ対応する複数の流路を有し、
前記分析方法は、
前記試料の分析期間中に、各移動相源群が含む複数の移動相源から1または複数の移動相を中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給するステップと、
前記試料の分析開始時に、前記複数の流路を流れる複数の中間混合移動相のうち予め設定された1つを分析用移動相として選択するステップと、
前記試料の分析期間中に、前記複数の中間混合移動相のうち予め設定された他の1つを前記分析用移動相として選択するステップと、
前記試料の分析開始前に、前記複数の中間混合移動相を前記複数の流路にそれぞれ供給するステップとを含む、分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の分析を行う液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーの分野において、グラジエント溶離と呼ばれる溶離方法が知られている。グラジエント溶離は、移動相の組成(混合比)を連続的に変化させつつ試料の溶離を行う方法である。グラジエント溶離を行うための送液システムとして、高圧グラジエントシステムおよび低圧グラジエントシステムがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体クロマトグラフ分析装置に設けられる2つの流路構成が記載されている。2つの流路構成は、それぞれ高圧グラジエントシステムおよび低圧グラジエントシステムにそれぞれ対応する。
【0004】
高圧グラジエントシステムは、例えば2つの溶媒瓶および2つのポンプを備える。2つの溶媒瓶には、2つの移動相がそれぞれ貯留されている。2つのポンプは、2つの溶媒瓶から2つの移動相をそれぞれ吸引する。吸引された2つの移動相が混合されることにより任意混合比の混合移動相が生成される。このとき、各ポンプの流量比が混合移動相の混合比となるように各ポンプの流量を制御することにより、混合移動相が生成される。この混合方式を高圧混合方式と呼ぶ。混合移動相の総流量を一定とする条件下で、各ポンプの流量比が時間的に制御されることにより各ポンプの下流に流れる混合移動相の混合比が時間的に変化する。それにより、分析に使用される混合移動相の組成(混合比)が連続的に変化する。この混合移動相の混合比の時間制御を高圧グラジエント方式と呼ぶ(特許文献1の図2(a))。
【0005】
低圧グラジエントシステムは、例えば3つの溶媒瓶、3つのバルブおよび1つのポンプを備える。1つのポンプは、3つのバルブを介して3つの溶媒瓶にそれぞれ接続されている。1つのポンプにより、開放状態にある複数のバルブに接続された溶媒瓶から当該溶媒瓶に貯留された移動相が吸引される。1つのポンプにより吸引された複数の移動相が混合されることにより任意混合比の混合移動相が生成される。このとき、各バルブの単位時間当たりの開放時間比が混合移動相の混合比となるように順次バルブを開放状態にする制御を繰り返すことにより、混合移動相が生成される。この混合方式を低圧混合方式と呼ぶ。また、このような制御が可能に構成されたバルブを低圧混合用バルブと呼ぶ。混合移動相の総流量を一定とする条件下で、各バルブの単位時間当たりの開放時間比が時間的に制御されることにより3つのバルブの下流に流れる混合移動相の混合比が時間的に変化する。それにより、分析に使用される混合移動相の組成(混合比)が連続的に変化する。この混合移動相の混合比の時間制御を低圧グラジエント方式と呼ぶ(特許文献1の図2(b))。
【文献】特許第4525400号
【文献】特開2004-138413号公報
【文献】特許第4228502号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体クロマトグラフのグラジエントシステムにおいては、試料の分析開始前に予め当該分析に用いる混合移動相が設定される。試料の分析開始時に液体クロマトグラフにおける各流路内に分析開始時の条件として設定された混合移動相とは異なる組成(混合比)の混合移動相が存在すると、分析開始直後は高い精度で分析を行うことができない。
【0007】
そこで、試料の分析開始前には、液体クロマトグラフ内の複数の流路の各々が、試料の分析開始時に当該流路内に存在すべき移動相または混合移動相(使用されるべき移動相または混合移動相)によりパージされる。特許文献1には、液体クロマトグラフにおける特定の流路を分析開始時に用いられるべき混合移動相で自動パージすることが記載されている。また、特許文献1には、上記の2つの流路構成において溶媒瓶に接続される流路に当該溶媒瓶に貯留された移動相を順次自動パージすることが記載されている。
【0008】
高圧グラジエントシステムに対応する上記の流路構成においては、試料の分析開始前に、例えば複数のポンプを1つずつ送液状態となるように順次制御することにより各溶液瓶の移動相のパージが行われる。一方、低圧グラジエントシステムに対応する上記の流路構成においては、試料の分析開始前に、例えば1つのポンプが動作する状態で当該ポンプの上流に位置する複数のバルブを1つずつ開放状態となるように順次制御することにより各溶媒瓶の移動相のパージが行われる。
【0009】
近年、低圧混合用バルブと高圧グラジエントシステムとが上流から下流にこの順で並ぶように設けられた構成を含む液体クロマトグラフが開発されている(例えば、特許文献2参照)。この液体クロマトグラフによれば、多数種類の移動相を所望の混合比で混合することができるので、より多様な移動相を容易に生成することが可能である。このような液体クロマトグラフにおいても、高い精度で試料を分析するために適切なパージが行われることが望まれる。
【0010】
本発明の目的は、多様な分析用移動相を容易に生成することが可能であるとともに、分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料の分析を行うことが可能な液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフを用いた分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一局面に従う液体クロマトグラフは、試料の分析を行う液体クロマトグラフであって、複数の移動相源群にそれぞれ対応する複数の流路と、各移動相源群が含む複数の移動相源から1または複数の移動相を中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給する供給装置と、複数の流路にそれぞれ流れる複数の中間混合移動相を混合し、混合された複数の中間混合移動相を分析用移動相として生成する混合器と、試料の分析開始時に分析用移動相における複数の中間混合移動相の混合比が予め設定された初期比に調整されるようにかつ試料の分析期間中に複数の中間混合移動相の混合比が初期比から時間的に変化するように、供給装置および混合器のうち少なくとも一方を制御する分析制御部と、試料の分析開始前に、複数の中間混合移動相の混合比が初期比に調整されるように供給装置および混合器のうち少なくとも一方を制御するパージ制御部とを備え、パージ制御部は、初期比における複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、複数の中間混合移動相の混合比を初期比に調整する制御の前に、複数の中間混合移動相が複数の流路をそれぞれ流れるように供給装置および混合器のうち少なくとも一方を制御する。
【0012】
その液体クロマトグラフにおいては、試料の分析期間中に、各移動相源群から1または複数の移動相が中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給される。複数の流路に流れる複数の中間混合移動相が混合され、分析用移動相が生成される。これにより、多様な分析用移動相を容易に生成することが可能である。
【0013】
試料の分析開始時には、分析用移動相における複数の中間混合移動相の混合比が予め設定された初期比に調整される。また、試料の分析期間中には、複数の中間混合移動相の混合比が初期比から時間的に変化するように、複数の中間混合移動相の混合比が調整される。
【0014】
試料の分析開始前に、複数の中間混合移動相の混合比が初期比に調整されるように分析用移動相が生成される。この場合、複数の流路のうち少なくとも一の流路について、試料の分析開始時に使用されるべき中間混合移動相を用いたパージが行われる。
【0015】
ここで、上記のパージ動作において、グラジエント溶離等の試料の分析条件によっては、試料の分析開始時に複数の流路を流れる複数の中間混合移動相のうちいずれかの流量が0またはほぼ0に設定される場合がある。これは、初期比における複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に相当する。この場合、上記のパージ動作のみでは、流量が0またはほぼ0に設定された中間混合移動相に対応する流路についてはパージを行うことができない。
【0016】
そこで、初期比におけるいずれかの項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合には、試料の分析開始前でかつ複数の中間混合移動相の混合比を初期比に調整するパージ動作の前に、複数の中間混合移動相が複数の流路にそれぞれ供給される。これにより、複数の流路が複数の中間混合移動相によりそれぞれパージされる。その後、試料の分析が行われる。
【0017】
このように、試料の分析開始前に予め複数の流路が複数の中間混合移動相によりパージされる。それにより、試料の分析開始時点で使用されず分析開始後に使用される中間混合移動相が存在する場合でも、予め設定された混合比で正確に生成された分析用移動相を試料の分析期間全体に渡って用いることができる。したがって、分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料を分析することが可能になる。
【0018】
(2)パージ制御部は、初期比における複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、複数の流路への複数の中間混合移動相の供給が順次行われるように供給装置および混合器のうち少なくとも一方を制御してもよい。この場合、複数の中間混合移動相による複数の流路のパージが個別に行われる。
【0019】
(3)パージ制御部は、初期比における複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、複数の流路への複数の中間混合移動相の供給が並行して行われるように供給装置および混合器のうち少なくとも一方を制御してもよい。この場合、複数の中間混合移動相による複数の流路のパージが並行して行われる。
【0020】
(4)液体クロマトグラフは、初期比を設定するとともに、試料の分析期間中に分析用移動相における複数の中間混合移動相の混合比の時間的変化を設定する設定部をさらに備え、分析制御部およびパージ制御部は、設定部により設定された混合比の時間的変化に基づいて供給装置および混合器のうち少なくとも一方を制御してもよい。
【0021】
この場合、試料の分析期間中に設定された混合比の時間的変化に基づく分析用移動相の生成が適切にかつ自動的に行われるとともに、試料の分析開始前に適切なパージが自動的に行われる。したがって、使用者は、パージのために煩雑な操作を行う必要がない。
【0022】
(5)パージ制御部は、試料の分析開始前でかつ複数の流路に複数の中間混合移動相が供給される前に、予め定められた移動相の順序に従って各移動相源群の複数の移動相が当該移動相源群に対応する流路に順次供給されるように供給装置および混合器のうち少なくとも一方を制御し、複数の流路にそれぞれ流れるべき複数の中間混合移動相における1または複数の移動相の混合比はそれぞれ予め設定され、予め定められた移動相の順序は、試料の分析に用いられない移動相、試料の分析開始時に用いられない移動相、複数の中間混合移動相に含まれかつ混合比の項がより小さい移動相、および複数の中間混合移動相に含まれかつ混合比の項がより大きい移動相の順であってもよい。
【0023】
これにより、複数の流路に複数の中間混合移動相をそれぞれ供給するパージの前に、各移動相源群の複数の移動相源と当該移動相源群に対応する流路とをつなぐ他の複数の流路について適切なパージが行われる。
【0024】
(6)供給装置は、複数の移動相源群および複数の流路にそれぞれ対応する複数のポンプを含み、各ポンプは、対応する移動相源群から複数の移動相をそれぞれ吸引しつつ混合し、混合された複数の移動相を中間混合移動相として対応する流路に供給してもよい。
【0025】
この場合、複数のポンプにより、高圧グラジエントシステムが構成される。したがって、各ポンプの上流側に低圧混合用バルブを設けることにより、多様なグラジエント溶離が可能となる。
【0026】
(7)本発明の他の局面に従う液体クロマトグラフは、試料の分析を行う液体クロマトグラフであって、複数の移動相源群にそれぞれ対応する複数の流路と、各移動相源群が含む複数の移動相源から1または複数の移動相を中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給する供給装置と、複数の流路にそれぞれ流れる複数の中間混合移動相のいずれかを分析用移動相として選択する選択器と、試料の分析開始時に分析用移動相として複数の中間混合移動相のうち予め設定された1つが選択されるようにかつ試料の分析期間中に分析用移動相として複数の中間混合移動相のうち予め設定された他の1つが選択されるように、選択器を制御する分析制御部と、試料の分析開始前に、複数の中間混合移動相が複数の流路をそれぞれ流れるように供給装置および選択器のうち少なくとも一方を制御するパージ制御部とを備える。
【0027】
その液体クロマトグラフにおいては、試料の分析期間中に、各移動相源群から1または複数の移動相が中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給される。試料の分析開始時に複数の流路を流れる複数の中間混合移動相のいずれかが分析用移動相として選択される。試料の分析期間中に複数の中間混合移動相のうち他の1つが分析用移動相として選択される。これにより、多様な分析用移動相を容易に生成することが可能である。
【0028】
試料の分析開始前に、複数の中間混合移動相が複数の流路にそれぞれ供給される。これにより、複数の流路が複数の中間混合移動相によりそれぞれパージされる。その後、試料の分析が行われる。
【0029】
このように、試料の分析開始前に予め複数の流路が複数の中間混合移動相によりパージされる。それにより、複数の中間混合移動相のいずれかが試料の分析開始時点で使用されず分析開始後に使用される場合でも、予め設定された混合比で正確に生成された分析用移動相を試料の分析期間全体に渡って用いることができる。したがって、分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料を分析することが可能になる。
【0030】
(8)本発明のさらに他の局面に従う液体クロマトグラフを用いた分析方法は、試料の分析を行う液体クロマトグラフを用いた分析方法であって、液体クロマトグラフは、複数の移動相源群にそれぞれ対応する複数の流路を有し、分析方法は、試料の分析期間中に、各移動相源群が含む複数の移動相源から1または複数の移動相を中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給するステップと、試料の分析期間中に、複数の流路にそれぞれ流れる複数の中間混同移動相を混合し、混合された複数の中間混同移動相を分析用移動相として生成するステップと、試料の分析開始時に分析用移動相における複数の中間混合移動相の混合比が予め設定された初期比に調整されるようにかつ試料の分析期間中に複数の中間混合移動相の混合比が初期比から時間的に変化するように、複数の中間混合移動相の混合比を調整するステップと、試料の分析開始前に、複数の中間混合移動相の混合比が初期比に調整されるように分析用移動相を生成するステップとを含み、試料の分析開始前に、複数の中間混合移動相の混合比が初期比に調整されるように分析用移動相を生成するステップは、初期比における複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、複数の中間混合移動相の混合比を初期比に調整する前に、複数の中間混合移動相を複数の流路にそれぞれ供給することを含む。
【0031】
その分析方法においては、試料の分析期間中に、各移動相源群から1または複数の移動相が中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給される。複数の流路に流れる複数の中間混合移動相が混合され、分析用移動相が生成される。これにより、多様な分析用移動相を容易に生成することが可能である。
【0032】
試料の分析開始時には、分析用移動相における複数の中間混合移動相の混合比が予め設定された初期比に調整される。また、試料の分析期間中には、複数の中間混合移動相の混合比が初期比から時間的に変化するように、複数の中間混合移動相の混合比が調整される。
【0033】
試料の分析開始前に、複数の中間混合移動相の混合比が初期比に調整されるように分析用移動相が生成される。この場合、複数の流路のうち少なくとも一の流路について、試料の分析開始時に使用されるべき中間混合移動相を用いたパージが行われる。
【0034】
初期比におけるいずれかの項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合には、試料の分析開始前でかつ複数の中間混合移動相の混合比を初期比に調整するパージ動作の前に、複数の中間混合移動相が複数の流路にそれぞれ供給される。これにより、複数の流路が複数の中間混合移動相によりそれぞれパージされる。その後、試料の分析が行われる。
【0035】
このように、試料の分析開始前に予め複数の流路が複数の中間混合移動相によりパージされる。それにより、試料の分析開始時点で使用されず分析開始後に使用される中間混合移動相が存在する場合でも、予め設定された混合比で正確に生成された分析用移動相を試料の分析期間全体に渡って用いることができる。したがって、分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料を分析することが可能になる。
【0036】
(9)初期比における複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、試料の分析開始前に複数の中間混合移動相を複数の流路にそれぞれ供給することは、複数の中間混合移動相の供給を順次行うことを含んでもよい。この場合、複数の中間混合移動相による複数の流路のパージが個別に行われる。
【0037】
(10)初期比における複数の中間混合移動相のうちいずれかに対応する項が0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、試料の分析開始前に複数の中間混合移動相を複数の流路にそれぞれ供給することは、複数の中間混合移動相の供給を並行して行うことを含んでもよい。この場合、複数の中間混合移動相による複数の流路のパージが並行して行われる。
【0038】
(11)分析方法は、初期比を設定するとともに、試料の分析期間中に分析用移動相における複数の中間混合移動相の混合比の時間的変化を設定するステップをさらに含み、試料の分析期間中に分析用移動相における複数の中間混合移動相の混合比を調整するステップおよび試料の分析開始前に複数の中間混合移動相の混合比が初期比に調整されるように分析用移動相を生成するステップは、設定するステップにより設定された初期比および混合比の時間的変化に基づいて複数の流路に流れる複数の中間混合移動相の混合比を調整することを含んでもよい。
【0039】
この場合、試料の分析期間中に設定された混合比の時間的変化に基づく分析用移動相の生成が適切に行われるとともに、試料の分析開始前に適切なパージが行われる。
【0040】
(12)分析方法は、複数の流路にそれぞれ流れるべき複数の中間混合移動相における1または複数の移動相の混合比をそれぞれ設定するステップと、試料の分析開始前でかつ複数の流路に複数の中間混合移動相が供給される前に、予め定められた移動相の順序に従って各移動相源群の複数の移動相を当該移動相源群に対応する流路に順次供給するステップをさらに含み、予め定められた移動相の順序は、試料の分析に用いられない移動相、試料の分析開始時に用いられない移動相、複数の中間混合移動相に含まれかつ混合比の項がより小さい移動相、および複数の中間混合移動相に含まれかつ混合比の項がより大きい移動相の順であってもよい。
【0041】
これにより、複数の流路に複数の中間混合移動相をそれぞれ供給するパージの前に、各移動相源群の複数の移動相源と当該移動相源群に対応する流路とをつなぐ他の複数の流路について適切なパージが行われる。
【0042】
(13)本発明のさらに他の局面に従う液体クロマトグラフを用いた分析方法は、試料の分析を行う液体クロマトグラフを用いた分析方法であって、液体クロマトグラフは、複数の移動相源群にそれぞれ対応する複数の流路を有し、分析方法は、試料の分析期間中に、各移動相源群が含む複数の移動相源から1または複数の移動相を中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給するステップと、試料の分析開始時に、複数の流路を流れる複数の中間混合移動相のうち予め設定された1つを分析用移動相として選択するステップと、試料の分析期間中に、複数の中間混合移動相のうち予め設定された他の1つを分析用移動相として選択するステップと、試料の分析開始前に、複数の中間混合移動相を複数の流路にそれぞれ供給するステップとを含む。
【0043】
その分析方法においては、試料の分析期間中に、各移動相源群から1または複数の移動相が中間混合移動相として当該移動相源群に対応する流路に供給される。試料の分析開始時に複数の流路を流れる複数の中間混合移動相のいずれかが分析用移動相として選択される。試料の分析期間中に複数の中間混合移動相のうち他の1つが分析用移動相として選択される。これにより、多様な分析用移動相を容易に生成することが可能である。
【0044】
試料の分析開始前に、複数の中間混合移動相が複数の流路にそれぞれ供給される。これにより、複数の流路が複数の中間混合移動相によりそれぞれパージされる。その後、試料の分析が行われる。
【0045】
このように、試料の分析開始前に予め複数の流路が複数の中間混合移動相によりパージされる。それにより、複数の中間混合移動相のいずれかが試料の分析開始時点で使用されず分析開始後に使用される場合でも、予め設定された混合比で正確に生成された分析用移動相を試料の分析期間全体に渡って用いることができる。したがって、分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料を分析することが可能になる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、多様な分析用移動相を容易に生成することが可能になるとともに分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料の分析を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は本発明の一実施の形態に係る液体クロマトグラフの構成を示す図である。
図2図2は第1の生成例で生成される分析用移動相に対応するパージの一例を説明するための図である。
図3図3は第1の生成例で生成される分析用移動相に対応するパージの一例を説明するための図である。
図4図4は適切なパージが行われない課題を説明するための図である。
図5図5は第2の生成例で生成される分析用移動相に対応するパージの一例を説明するための図である。
図6図6図5の2つの制御を並行して行う場合の一例を説明するための図である。
図7図7は他の実施の形態に係る液体クロマトグラフの一構成例を示す図である。
図8図8は他の実施の形態に係る液体クロマトグラフの他の構成例を示す図である。
図9図9は他の実施の形態に係る液体クロマトグラフのさらに他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
[1]液体クロマトグラフの構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る液体クロマトグラフの構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態に係る液体クロマトグラフ100は、第1の調整部10、第2の調整部20、分析用移動相生成部30、試料導入部40、カラム50、検出器60、制御装置70、操作部81および表示部82を含む。
【0049】
第1の調整部10および第2の調整部20は、それぞれ第1の切替バルブ11および第2の切替バルブ21を含む。第1および第2の切替バルブ11,12の各々は、いわゆる低圧混合用バルブである。低圧混合用バルブは、複数の入口ポートおよび1つの出口ポートを有し、複数の入口ポートと1つの出口ポートとの間の複数の流路を選択的に開放可能に構成される。また、低圧混合用バルブは、比較的微小な単位時間(例えば、0.6sec程度)当たりの複数の流路間の開放時間を調整することにより複数の液体を任意の比率で排出可能に構成される。分析用移動相生成部30は、いわゆる高圧グラジエントシステムと基本的に同じ構成を有し、第1のポンプ31、第2のポンプ32およびミキサ33を含む。
【0050】
第1の調整部10には、複数の(本例では4個)のボトルB1~B4が設けられている。ボトルB1~B4には、互いに異なる種類の移動相が貯留されている。第1の調整部10の第1の切替バルブ11は、複数(本例では4個)の配管p1~p4によりボトルB1~B4にそれぞれ接続されるとともに、配管p11により分析用移動相生成部30の第1のポンプ31の入口ポートに接続されている。第1のポンプ31の出口ポートは配管p12によりミキサ33に接続されている。
【0051】
第1の切替バルブ11は、配管p1~p4のうち一の配管の内部空間を配管p11の内部空間に選択的に連通させる。それにより、第1のポンプ31の動作時には、ボトルB1~B4のいずれか一のボトルから第1のポンプ31に当該一のボトルに貯留された移動相が吸引される。ここで、第1の切替バルブ11の状態は、例えばボトルB1~B4のうちいずれか2以上のボトルに貯留された2以上の移動相が単位時間当たり予め定められた割合で第1のポンプ31に吸引されるように時分割で切り替えられる。この場合、第1のポンプ31においては、吸引された2以上の移動相が混合されつつ混合移動相として配管P12に供給される。第1のポンプ31は、後述する制御装置70の制御に基づいて配管P12に供給される混合移動相の量(流量:単位時間あたりに流れる混合移動相の量)を変更可能に構成されている。
【0052】
第2の調整部20には、複数の(本例では4個)のボトルB5~B8が設けられている。ボトルB5~B8には、互いに異なる種類の移動相が貯留されている。第2の調整部20の第2の切替バルブ21は、複数(本例では4個)の配管p5~p8によりボトルB5~B8にそれぞれ接続されるとともに、配管p21により分析用移動相生成部30の第2のポンプ32の入口ポートに接続されている。第2のポンプ32の出口ポートは配管p22によりミキサ33に接続されている。
【0053】
第2の切替バルブ21は、第1の切替バルブ11と同じ構成を有し、配管p5~p8のうち一の配管の内部空間を配管p21の内部空間に選択的に連通させる。それにより、第2のポンプ32の動作時には、ボトルB5~B8のいずれか一のボトルから第2のポンプ32に当該一のボトルに貯留された移動相が吸引される。ここで、第2の切替バルブ21の状態は、例えばボトルB5~B8のうちいずれか2以上のボトルに貯留された2以上の移動相が単位時間当たり予め定められた割合で第2のポンプ32に吸引されるように時分割で切り替えられる。この場合、第2のポンプ32においては、吸引された2以上の移動相が混合されつつ混合移動相として配管P22に供給される。第2のポンプ32は、後述する制御装置70の制御に基づいて配管P22に供給される混合移動相の流量を変更可能に構成されている。
【0054】
ミキサ33においては、基本的に第1のポンプ31および第2のポンプ32から配管p21,p22を通してそれぞれ供給される2種類の混合移動相が混合されることにより分析に使用される分析用移動相が生成される。なお、第1のポンプ31および第2のポンプ32のうち一のポンプのみが動作する場合には、当該一のポンプから供給される混合移動相が分析用移動相としてミキサ33を通過する。
【0055】
ミキサ33には、配管p31の一端が接続されている。配管p31には、試料導入部40、カラム50および検出器60がこの順で設けられている。ミキサ33から配管p31を通して試料導入部40に分析用移動相が供給される。試料導入部40は、例えばインジェクタであり、供給された分析用移動相に試料を導入する。試料が導入された分析用移動相は、カラム50に導かれる。カラム50において、分析用移動相に導入された試料の複数の成分が分離される。検出器60は、カラム50により分離された試料の各成分を検出する。検出器60を通過した分析用移動相は、図示しない排液装置に送られる(特許文献3参照)。
【0056】
操作部81は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスであり、制御装置70に接続される。表示部82は、液晶表示装置等の表示デバイスであり、制御装置70に接続される。
【0057】
制御装置70は、例えばCPUおよびメモリまたはマイクロコンピュータから構成される。制御装置70は、図1に一点鎖線の矢印で示すように、第1および第2の切替バルブ11,12を制御するとともに、第1および第2のポンプ31,32を制御する。また、制御装置70は、試料導入部40および検出器60を制御する。さらに、制御装置70は、例えば試料の分析条件等の入力を受け付けるための情報を表示部82に表示させるとともに、使用者による操作部81の操作に応答して試料の分析条件等の設定を行う。試料の分析条件には、試料の分析に用いる分析用移動相を生成するための情報(以下、移動相生成情報と呼ぶ。)が含まれる。
【0058】
図1に示すように、制御装置70は、機能部として分析制御部71、パージ制御部72および記憶部73を含む。記憶部73は、使用者により設定された試料の分析条件を記憶する。分析制御部71は、記憶部73に記憶された分析条件に基づいて、設定された移動相生成情報に従って分析用移動相が生成されるように、第1の切替バルブ11、第2の切替バルブ21、第1のポンプ31および第2のポンプ32を制御する。
【0059】
パージ制御部72は、試料の分析開始前に、記憶部73に記憶された分析条件に基づいて、適切な組成(混合比)の混合移動相でミキサ33の上流側の配管p11,p12がパージされるように、第1の切替バルブ11および第1のポンプ31を制御する。また、パージ制御部72は、試料の分析開始前に、記憶部73に記憶された分析条件に基づいて、適切な組成(混合比)の混合移動相でミキサ33の上流側の配管p21,p22がパージされるように、第2の切替バルブ21および第2のポンプ32を制御する。パージ制御部72による、第1の切替バルブ11、第2の切替バルブ21、第1のポンプ31および第2のポンプ32の制御例については後述する。
【0060】
[2]グラジエント溶離による試料の分析
以下、第1のポンプ31を動作させつつ第1の切替バルブ11を制御することによりボトルB1~B4に貯留された4種類の移動相のうち2以上の移動相を予め設定された第1の混合比で混合することにより得られる混合移動相を第1の混合移動相と呼ぶ。また、第2のポンプ32を動作させつつ第2の切替バルブ21を制御することによりボトルB5~B8に貯留された4種類の移動相のうち2以上の移動相を予め設定された第2の混合比で混合することにより得られる混合移動相を第2の混合移動相と呼ぶ。
【0061】
本実施の形態に係る液体クロマトグラフ100においては、第1のポンプ31および第2のポンプ32を同時に動作させることにより、第1および第2の混合移動相をさらに混合して新たな組成(混合比)の混合移動相を分析用移動相として生成することができる。このとき、第1のポンプ31および第2のポンプ32の動作を時間的に変化させることにより、配管p12,p22に供給される第1および第2の混合移動相の混合比を連続的に変化させることができる。それにより、分析用移動相の組成を連続的に変化させるグラジエント溶離による試料の分析を行うことが可能である。
【0062】
なお、本実施の形態においては、第1の混合移動相を生成するための第1の混合比は、試料の分析中時間的に変化することなく一定に固定されるものとする。また、第2の混合移動相を生成するための第2の混合比も、試料の分析中時間的に変化することなく一定に固定されるものとする。
【0063】
(a)分析用移動相の第1の生成例
グラジエント溶離に用いる分析用移動相の第1の生成例について説明する。以下、図1のボトルB1、ボトルB2、ボトルB5およびボトルB6に貯留される移動相をそれぞれ第1の移動相、第2の移動相、第3の移動相および第4の移動相と呼ぶ。また、以下の説明では、試料の分析開始時に対応する分析用移動相における第1および第2の混合移動相の予め設定された混合比を第3の混合比と呼ぶ。また、試料の分析終了時に対応する分析用移動相における第1および第2の混合移動相の予め設定された混合比を第4の混合比と呼ぶ。
【0064】
移動相生成情報として、第1の移動相と第2の移動相とが第1の混合比(60:40)で混合された第1の混合移動相を用いることが設定されているものとする。また、第3の移動相と第4の移動相とが第2の混合比(80:20)で混合された第2の混合移動相を用いることが設定されているものとする。さらに、第1の混合移動相と第2の混合移動相との混合比が第3の混合比(90:10)から第4の混合比(10:90)に連続的に変化するように分析用移動相を生成することが設定されているものとする。
【0065】
この場合、分析制御部71は、試料の分析開始時に、ミキサ33に流入する第1の混合移動相の流量と第2の混合移動相の流量との比が第3の混合比(90:10)となるように第1のポンプ31および第2のポンプ32を制御する。その後、分析制御部71は、試料の分析開始から分析終了までの間、第1および第2の混合移動相の混合比が第3の混合比(90:10)から第4の混合比(10:90)まで連続的に変化するように第1のポンプ31および第2のポンプ32を制御する。
【0066】
なお、分析制御部71は、第1のポンプ31が動作する間、第1の移動相と第2の移動相とが第1の混合比(60:40)で混合されるように第1の切替バルブ11を制御する。また、分析制御部71は、第2のポンプ32が動作する間、第3の移動相と第4の移動相とが第2の混合比(80:20)で混合されるように第2の切替バルブ21を制御する。
【0067】
(b)分析用移動相の第2の生成例
グラジエント溶離に用いる分析用移動相の第2の生成例について説明する。第2の生成例においては、第1の混合移動相と第2の混合移動相との混合比が第3の混合比(100:0)から第4の混合比(0:100)に連続的に変化するように移動相を生成することを除いて、第1の生成例と同じ移動相生成情報が設定されているものとする。
【0068】
この場合、分析制御部71は、試料の分析開始時に、ミキサ33に流入する第1の混合移動相の流量と第2の混合移動相の流量との比が第3の混合比(100:0)となるように第1のポンプ31および第2のポンプ32を制御する。この開始時に、第2のポンプ32は停止している。その後、分析制御部71は、試料の分析開始から分析終了までの間、第1および第2の混合移動相の混合比が第3の混合比(100:0)から第4の混合比(0:100)まで連続的に変化するように第1のポンプ31および第2のポンプ32を制御する。
【0069】
なお、分析制御部71は、第1の生成例と同様に、第1のポンプ31が動作する間、第1の移動相と第2の移動相とが第1の混合比(60:40)で混合されるように第1の切替バルブ11を制御する。また、分析制御部71は、第1の生成例と同様に、第2のポンプ32が動作する間、第3の移動相と第4の移動相とが第2の混合比(80:20)で混合されるように第2の切替バルブ21を制御する。
【0070】
[3]パージ
試料の分析開始前には、第1の調整部10、第2の調整部20および分析用移動相生成部30の各配管内に予め存在する移動相(以下、残留移動相と呼ぶ。)および気泡が当該分析に用いる組成(混合比)の移動相でパージされる。
【0071】
ここで、パージ制御部72は、試料の分析開始時に対応して設定される第3の混合比における第1および第2の混合移動相のうちいずれかに対応する項が0に設定されている場合と、それ以外の場合とで異なる制御を行う。上記の第1の生成例の移動相生成情報が設定されていることは、第3の混合比における第1および第2の混合移動相の項が0以外に設定されている場合に相当する。上記の第2の生成例の移動相生成情報が設定されていることは、試料の分析開始時に対応して設定される第3の混合比における第1および第2の混合移動相のうちいずれかに対応する項が0に設定されている場合に相当する。
【0072】
(a)分析用移動相の第1の生成例に対応するパージ
第3の混合比における第1および第2の混合移動相に対応する項が0以外に設定されている場合の制御例として、第1の生成例に対応するパージの具体例を説明する。
【0073】
図2および図3は、第1の生成例で生成される分析用移動相に対応するパージの一例を説明するための図である。図2および図3では、パージのための各種移動相の流れが太い実線、太い点線、太い一点鎖線および太い二点鎖線のいずれかの矢印で示される。
【0074】
図2に示すように、パージ制御部72は、まずボトルB4に貯留された移動相がミキサ33へ供給されるように、第1のポンプ31および第1の切替バルブ11を制御する。この制御を制御C1とする。これにより、配管p4,p11,p12内に既存の残留移動相および気泡等がボトルB4に貯留された移動相でパージされる。
【0075】
次に、パージ制御部72は、ボトルB3に貯留された移動相がミキサ33へ供給されるように、第1のポンプ31および第1の切替バルブ11を制御する。この制御を制御C2とする。これにより、配管p3,p11,p12内に既存の残留移動相および気泡等がボトルB3に貯留された移動相でパージされる。
【0076】
次に、パージ制御部72は、ボトルB2に貯留された第2の移動相がミキサ33へ供給されるように、第1のポンプ31および第1の切替バルブ11を制御する。この制御を制御C3とする。これにより、配管p2,p11,p12内に既存の残留移動相および気泡等がボトルB2に貯留された第2の移動相でパージされる。
【0077】
次に、パージ制御部72は、ボトルB1に貯留された第1の移動相がミキサ33へ供給されるように、第1のポンプ31および第1の切替バルブ11を制御する。この制御を制御C4とする。これにより、配管p1,p11,p12内に既存の残留移動相および気泡等がボトルB1に貯留された第1の移動相でパージされる。上記の制御C1~C4においては、第2のポンプ32は停止状態で維持される。
【0078】
次に、パージ制御部72は、ボトルB8に貯留された移動相がミキサ33へ供給されるように、第2のポンプ32および第2の切替バルブ21を制御する。この制御を制御C5とする。これにより、配管p8,p21,p22内に既存の残留移動相および気泡等がボトルB8に貯留された移動相でパージされる。
【0079】
次に、パージ制御部72は、ボトルB7に貯留された移動相がミキサ33へ供給されるように、第2のポンプ32および第2の切替バルブ21を制御される。この制御を制御C6とする。これにより、配管p7,p21,p22内に既存の残留移動相および気泡等がボトルB7に貯留された移動相でパージされる。
【0080】
次に、図3に示すように、パージ制御部72は、ボトルB6に貯留された第4の移動相がミキサ33へ供給されるように、第2のポンプ32および第2の切替バルブ21を制御する。この制御を制御C7とする。これにより、配管p6,p21,p22内に既存の残留移動相および気泡等がボトルB6に貯留された第4の移動相でパージされる。
【0081】
次に、パージ制御部72は、ボトルB5に貯留された第3の移動相がミキサ33へ供給されるように、第2のポンプ32および第2の切替バルブ21を制御する。この制御を制御C8とする。これにより、配管p5,p21,p22内に既存の残留移動相および気泡等がボトルB5に貯留された第3の移動相でパージされる。
【0082】
次に、パージ制御部72は、試料の分析開始時と同じ条件で動作するように、第1の切替バルブ11、第2の切替バルブ21、第1のポンプ31および第2のポンプ32を制御する。この制御を制御C9とする。具体的には、パージ制御部72は、ミキサ33に流入する第1の混合移動相の流量と第2の混合移動相の流量との比が第3の混合比(90:10)となるように、第1のポンプ31および第2のポンプ32を制御する。また、パージ制御部72は、第1の移動相と第2の移動相とが第1の混合比(60:40)で混合されるように、第1の切替バルブ11を制御する。さらに、パージ制御部72は、第3の移動相と第4の移動相とが第2の混合比(80:20)で混合されるように、第2の切替バルブ21を制御する。これにより、分析用移動相の第1の生成例に対応するパージが終了する。
【0083】
本例では、配管p1,p2,p5,p8の内部空間が、それぞれ第1の移動相、第2の移動相、第3の移動相および第4の移動相でパージされる。また、配管p11,p12の内部空間が第1の混合移動相によりパージされる。さらに、配管p21,p22の内部空間が第2の混合移動相によりパージされる。さらに、図1の配管p31の内部空間が、第1の混合移動相と第2の混合移動相とが第3の混合比(90:10)で混合された分析用移動相によりパージされる。これにより、試料の分析開始時に、予め定められた成分を有する移動相を高い精度でカラム50に供給することが可能になる。
【0084】
なお、上記の制御C1~C9のうち制御C1~C4と制御C5~C8とは逆の順に行われてもよい。また、上記の制御C1~C9のうち制御C1~C4と制御C5~C8とは並行して行われてもよい。さらに、上記の制御C1~C9のうち制御C1,C2,C5,C6によるパージで用いられる移動相は、分析用移動相の生成に用いられない。そのため、気泡の残留によるバルブの誤動作等が発生しない条件下では、制御C1,C2,C5,C6は省略されてもよい。
【0085】
上記の制御C1~C9において、ミキサ33に供給される各種移動相は、図1の配管p31を通して試料導入部40に送られる。試料導入部40においては、パージ制御時に分析用移動相生成部30から供給される移動相および混合移動相は、図示しないドレインを通して廃棄される(特許文献3参照)。
【0086】
(b)分析用移動相の第2の生成例に対応するパージ
第3の混合比における第1および第2の混合移動相のうちいずれかに対応する項が0に設定されている場合の制御例として、第2の生成例に対応するパージの具体例を説明する。
【0087】
移動相が第2の生成例で生成される場合には、上記の制御C1~C9のパージ制御を順次行っても一部の配管内で適切なパージが行われない。この課題について説明する。
【0088】
図4は、適切なパージが行われない課題を説明するための図である。上記のように、移動相の第2の生成例では、試料の分析開始時に、ミキサ33に流入する第1および第2の混合移動相の混合比が第3の混合比(100:0)となるように第1のポンプ31および第2のポンプ32が制御される。この場合、パージ制御部72が上記の制御C1~C9を順次行うと、制御C9で第2のポンプ32は停止状態となる。そのため、制御C9で配管p5,p6,p21,p22の内部空間には移動相および混合移動相の流れが生じない。したがって、図4に白抜きの矢印で示される配管p21,p22の内部空間には、制御C8によりパージされた第3の移動相のみが残留する。
【0089】
この状態で、試料の分析が開始されると、第2のポンプ32の動作開始直後は、配管p21,p22に残留する第3の移動相のみがミキサ33に流れ込む。そのため、第1の混合移動相と第3の移動相との混合液が分析用移動相として生成されることになる。この分析用移動相には、第4の移動相の成分が含まれない。その結果、初期段階における試料の分析精度が低下する。
【0090】
そこで、パージ制御部72は、第3の混合比における第1および第2の混合移動相のうちいずれかに対応する項が0に設定されている場合に、第1の混合移動相により配管p11,p12をパージする制御を行う。また、パージ制御部72は、試料の分析開始時に配管p12,p22のうち一方を流れる第1または第2の混合移動相の流量が0に設定されている場合に、第2の混合移動相で配管p21,p22をパージするための制御を行う。
【0091】
図5は、第2の生成例で生成される分析用移動相に対応するパージの一例を説明するための図である。図5では、パージのための各種移動相の流れが太い実線および太い点線の矢印で示される。
【0092】
本例では、パージ制御部72は、まず図2および図3の制御C1~C8を順次行う。その後、パージ制御部72は、第1の混合移動相が配管p12に供給されるように、第1のポンプ31および第1の切替バルブ11を制御する。この制御を制御C11とする。これにより、配管p11,p12内に既存の残留移動相および気泡等が第1の混合移動相でパージされる。
【0093】
次に、パージ制御部72は、第2の混合移動相が配管p22に供給されるように、第2のポンプ32および第2の切替バルブ21を制御する。この制御を制御C12とする。これにより、配管p21,p22内に既存の残留移動相および気泡等が第2の混合移動相でパージされる。その後、パージ制御部72は、図4の制御C9を行う。すなわち、パージ制御部72は、試料の分析開始時と同じ条件で動作するように、第1の切替バルブ11、第2の切替バルブ21、第1のポンプ31および第2のポンプ32を制御する。
【0094】
上記の制御C11,C12によれば、試料の分析開始前に、配管p12が第1の混合移動相でパージされ、配管p22が第2の混合移動相でパージされる。それにより、予め設定された成分を有する分析用移動相を、試料の分析開始直後から用いることができる。したがって、初期段階における試料の分析精度の低下が防止され、高い精度で試料を分析することが可能になる。
【0095】
上記の制御C11,C12は逆の順に行われてもよい。また、上記の制御C11,C12は並行して行われてもよい。図6は、図5の2つの制御C11,C12を並行して行う場合の一例を説明するための図である。図6では、パージのための各種移動相の流れが太い実線、太い点線、太い一点鎖線および太い二点鎖線のいずれかの矢印で示される。
【0096】
図6に示すように、本例では、図2および図3の制御C1~C8が順次行われた後、制御C9が行われる前に、図5の制御C11,C12が同時に行われる。この制御を制御C13とする。制御C13によれば、第1の混合移動相による配管p12のパージと第2の混合移動相による配管p22のパージとが並行して行われる。
【0097】
制御C13において、第1のポンプ31および第2のポンプ32は、ともに動作していればよい。制御C13により第1のポンプ31および第2のポンプ32によりミキサ33に流入する第1および第2の混合移動相の混合比は例えば(50:50)である。この場合、第1のポンプ31に接続された配管のパージと第2のポンプ32に接続された配管のパージとを同じ程度の効率で行うことができる。なお、制御C13により第1のポンプ31および第2のポンプ32によりミキサ33に流入する第1および第2の混合移動相の混合比は、(50:50)には限定されない。この混合比は、使用される移動相の特性(粘度等)および第1のポンプ31の特性および第2のポンプ32の特性等に応じて(50:50)以外の比に設定されてもよい。
【0098】
本例においても、上記の制御C1~C9のうち制御C1,C2,C5,C6によるパージで用いられる移動相は、分析用移動相の生成に用いられない。そのため、制御C1,C2,C5,C6は省略されてもよい。さらに、本例では、制御C9,C11の動作が同じである。したがって、上記の制御C9,C11のうち制御C11は、省略されてもよい。この場合、パージに要する時間を短縮することができる。
【0099】
[4]効果
(a)本実施の形態に係る液体クロマトグラフ100においては、試料の分析期間中に、吸引されつつ混合された第1および第2の移動相が第1の混合移動相として配管p12に供給される。このとき、第1の混合移動相における第1および第2の移動相の混合比が予め定められた第1の混合比に調整される。また、吸引されつつ混合された第3および第4の移動相が第2の混合移動相として配管p22に供給される。このとき、第2の混合移動相における第3および第4の移動相の混合比が予め定められた第2の混合比に調整される。さらに、試料の分析期間中には、配管p21,p22を流れる第1および第2の混合移動相の混合比が予め設定された混合比に調整され、分析用移動相が生成される。これにより、多様な分析用移動相を容易に生成することが可能である。
【0100】
配管p21,p22に流れる第1および第2の混合移動相の流量は、総流量と混合比の積となるように調整される。総流量は、ミキサ33の下流に単位時間当たりに流れる移動相(分析用移動相)の量である。分析期間中に生成される分析用移動相における第1および第2の混合移動相の混合比が第3の混合比から第4の混合比にかけて時間的に変化することによりグラジエント溶離が行われる。
【0101】
試料の分析開始時に対応して設定される第3の混合比における第1および第2の混合移動相のうちいずれかに対応する項が0に設定されている場合には、試料の分析開始前に、第1の混合移動相が配管p12に供給され、第2の混合移動相が配管p22に供給される。これにより、配管p12,p22が第1および第2の混合移動相によりそれぞれパージされる。その後、試料の分析開始時に設定された第3の混合比で第1または第2の混合移動相が配管p12,p22のうちいずれか一方に供給される。これにより、配管p12,p22のうち一方が第1または第2の混合移動相によりパージされる。その後、試料の分析が行われる。
【0102】
一方、試料の分析開始時に対応して設定される第3の混合比における第1および第2の混合移動相に対応する項が0以外に設定されている場合には、試料の分析開始前に、試料の分析開始時に設定された第3の混合比で第1および第2の混合移動相が配管p12,p22に供給される。これにより、配管p12,p22が第1および第2の混合移動相によりそれぞれパージされる。その後、試料の分析が行われる。
【0103】
これらの場合、試料の分析開始前に予め配管p12,p22が第1および第2の混合移動相によりパージされるので、予め設定された混合比で正確に生成された分析用移動相を分析開始直後から用いることができる。したがって、高い精度でグラジエント溶離を行うことができる。その結果、高い精度で試料を分析することが可能になる。
【0104】
(b)また、上記の液体クロマトグラフ100においては、ミキサ33において混合される第1の混合移動相と第2の混合移動相との混合比の時間的変化を移動相生成情報として設定することが可能である。分析制御部71は、設定された移動相生成情報に基づいて分析用移動相を生成する。それにより、設定された分析用移動相の生成が適切にかつ自動的に行われる。また、パージ制御部72は、設定された移動相生成情報に基づいて各種パージを行う。それにより、設定された混合比の時間的変化に基づく適切なパージが自動的に行われる。したがって、使用者は、分析用移動相の生成およびパージのために煩雑な操作を行う必要がない。
【0105】
(c)図2および図3のパージの例では、第1および第2の混合移動相によるパージが行われる前に、複数のボトルB1~B8に貯留された複数の移動相のパージが予め定められた移動相の順序に従って順次行われている。
【0106】
ここで、予め定められた移動相の順序は、試料の分析に用いられない移動相、試料の分析開始時に用いられない移動相、第1または第2の混合移動相に含まれかつ混合比の項がより小さい移動相、および第1または第2の混合移動相に含まれかつ混合比の項がより大きい移動相の順である。
【0107】
これにより、配管p12,p22が第1および第2の混合移動相によりパージされる前に、複数のボトルB1~B8につながる複数の配管p1~p8について適切なパージが行われる。
【0108】
[5]他の実施の形態
(a)上記実施の形態においては、第3の混合比におけるいずれかの項が0に設定されているか否かで、第1および第2の混合移動相をそれぞれ配管p12,p22に供給するパージの要否が判定されるが、本発明はこれに限定されない。
【0109】
第3の混合比における全ての項が0でない場合でも、いずれかの項が0に近い値である場合、分析開始時の第3の混合比に従うパージを行っても十分な量で第1および第2の混合移動相を用いたパージを行うことができない可能性がある。そこで、いずれかの項が0を含む予め定められた範囲(例えば、0~5)内に設定されている場合には、第3の混合比に従うパージの前に、第1および第2の混合移動相をそれぞれ配管p12,p22に供給するパージが行われてもよい。
【0110】
上記の範囲は、使用される移動相の特性、配管の長さおよびポンプの特性等を考慮した上で、第3の混合比に従うパージで対象となる配管内の残留移動相および気泡が十分に除去できないと考えられる範囲に定められることが望ましい。
【0111】
(b)上記実施の形態に係る分析用移動相生成部30は、2つのポンプを含みかつ各ポンプの入口ポートに低圧混合用バルブが接続された高圧グラジエントシステムの構成を有するが、本発明はこれに限定されない。分析用移動相生成部30は、上記の構成に代えて、3つ以上のポンプを含みかつ各ポンプの入口ポートに低圧混合用バルブが接続された高圧グラジエントシステムの構成を有してもよい。
【0112】
この場合、第3および第4の混合比の各々は、2つの混合移動相の混合比ではなく、3つ以上の混合移動相の混合比となる。3つ以上の混合移動相について第3および第4の混合比が設定されることにより、より多数の混合移動相を所望の混合比で混合することができる。したがって、より多様なグラジエント溶離が可能となる。
【0113】
この場合においても、第3の混合比における3つ以上の混合移動相のうちいずれかに対応する項が0または0を含む予め定められた範囲内に設定されている場合に、上記実施の形態における制御C11~C13と同様のパージ制御を行う。それにより、分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料を分析することが可能になる。
【0114】
(c)分析用移動相生成部30は、2つ以上のポンプを有する高圧グラジエントシステムの構成に代えて、1つのポンプを有する低圧グラジエントシステムの構成を有してもよい。具体的には、分析用移動相生成部30は、低圧混合用バルブと1つのポンプとを含む構成を有してもよい。
【0115】
図7は他の実施の形態に係る液体クロマトグラフの一構成例を示す図である。図7の液体クロマトグラフ100は、分析用移動相生成部30の構成が図1の液体クロマトグラフ100と異なる。
【0116】
図7の分析用移動相生成部30は、第3のポンプ36、切替バルブ37およびミキサ33を含む。切替バルブ37は、2つの入口ポートと1つの出口ポートとを含む低圧混合用バルブである。切替バルブ37の一方の入口ポートは、配管p12を介して第1の切替バルブ11に接続される。切替バルブ37の他方の入口ポートは、配管p22を介して第2の切替バルブ21に接続される。切替バルブ37の出口ポートには、配管p31が接続される。配管p31には、第3のポンプ36およびミキサ33が、上流から下流に向かってこの順に設けられる。この構成においては、第3のポンプ36の作動時に切替バルブ37が制御されることにより、単位時間当たりの配管p12,p31間の流路開放時間と配管p12,p31間の流路開放時間との比が調整される。それにより、第1の混合移動相と第2の混合移動相とを所望の混合比で混合することができる。
【0117】
この場合においても、上記の実施の形態と同様に、第3の混合比における第1および第2の混合移動相の項に基づくパージの制御を行うことにより、分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料を分析することが可能になる。
【0118】
なお、図7の液体クロマトグラフ100においては、単位時間当たりに切替バルブ37から第3のポンプ36に供給される第1および第2の混合移動相が第3のポンプ36内で混合されるのであれば、ミキサ33は設けられなくてもよい。
【0119】
(d)分析用移動相生成部30は、2つ以上のポンプを有する高圧グラジエントシステムの構成に代えて、1つのポンプとセレクトバルブとを含む構成を有してもよい。ここで、セレクトバルブは、複数の入口ポートと1つの出口ポートとの間の複数の流路を選択的に開放可能に構成されるが、複数の流路間の選択的な開放状態の切替を高速(微小周期)で行うことができない点が低圧混合用バルブとは異なる。
【0120】
図8は、他の実施の形態に係る液体クロマトグラフの他の構成例を示す図である。図8の液体クロマトグラフ100は、分析用移動相生成部30の構成が図1の液体クロマトグラフ100と異なる。
【0121】
図8の分析用移動相生成部30は、第4のポンプ38およびセレクトバルブ39を含む。セレクトバルブ39は、2つの入口ポートと1つの出口ポートとを含む。セレクトバルブ39の一方の入口ポートは、配管p12を介して第1の切替バルブ11に接続される。セレクトバルブ39の他方の入口ポートは、配管p22を介して第2の切替バルブ21に接続される。
【0122】
セレクトバルブ39の出口ポートには、配管p31の一端が接続される。配管p31においては、セレクトバルブ39と試料導入部40との間に第4のポンプ38が取り付けられている。セレクトバルブ39は、第4のポンプ38の動作時に、配管p12を流れる第1の混合移動相と配管p22を流れる第2の混合移動相とのいずれか一方を分析用移動相として選択する選択器として機能する。
【0123】
図8の液体クロマトグラフ100においては、例えば試料の分析開始時に配管p12,p22を流れる第1および第2の混合移動相のいずれか一方がセレクトバルブ39により分析用移動相として選択される。試料の分析期間中に第1および第2の混合移動相のうち他方がセレクトバルブ39により分析用移動相として選択される。これにより、多様な分析用移動相を容易に生成することが可能である。
【0124】
ここで、図8の液体クロマトグラフ100においては、制御装置70のパージ制御部72の制御により、試料の分析開始前に、第1の混合移動相が配管p12に供給され、第2の混合移動相が配管p22に供給される。これにより、配管p12,p22が第1および第2の混合移動相によりそれぞれパージされる。その後、試料の分析が行われる。
【0125】
このように、試料の分析開始前に予め配管p12,p22が第1および第2の混合移動相によりパージされる。それにより、第1および第2の混合移動相のうち一方が試料の分析開始時点で使用されず分析開始後に使用される場合でも、予め設定された混合比で正確に生成された分析用移動相を試料の分析期間全体に渡って用いることができる。したがって、上記の実施の形態と同様に、分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料を分析することが可能になる。
【0126】
なお、図8の例において、分析用移動相生成部30のセレクトバルブ39は、3つ以上の入口ポートを有してもよく、3つ以上の入口ポートにさらに低圧混合用バルブが接続されてもよい。この場合においても、試料の分析開始前に、セレクトバルブ39の3つ以上の入口ポートに接続された配管が予め設定された混合比で生成された混合移動相によりパージされる。それにより、分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料を分析することが可能になる。
【0127】
(e)上記実施の形態においては、第1および第2の切替バルブ11,12は、低圧混合用バルブであるが、本発明はこれに限定されない。第1の調整部10は、第1の切替バルブ11に代えてセレクトバルブを含んでもよい。また、第2の調整部20は、第2の切替バルブ12に代えてセレクトバルブを含んでもよい。
【0128】
図9は他の実施の形態に係る液体クロマトグラフのさらに他の構成例を示す図である。図9の液体クロマトグラフ100は、第1および第2の調整部10,20の構成が図1の液体クロマトグラフ100と異なる。
【0129】
図9の第1の調整部10は、セレクトバルブ11xを含む。セレクトバルブ11xは、3つの入口ポートと1つの出口ポートとを含む。セレクトバルブ11xの3つの入口ポートは、配管p1,p2,p3を介してボトルB1,B2,B3にそれぞれ接続される。セレクトバルブ11xの出口ポートは、配管p11を介して第1のポンプ31の入口ポートに接続される。
【0130】
図9の第2の調整部20は、セレクトバルブ21xを含む。セレクトバルブ21xは、3つの入口ポートと1つの出口ポートとを含む。セレクトバルブ21xの3つの入口ポートは、配管p5,p6,p7を介してボトルB5,B6,B7にそれぞれ接続される。セレクトバルブ21xの出口ポートは、配管p21を介して第2のポンプ32の入口ポートに接続される。
【0131】
この構成においては、第1の調整部10は、ボトルB1,B2,B3に貯留された複数の移動相のうちの一の移動相を上記の第1の混合移動相として出口ポートから選択的に流出させる。また、第2の調整部20は、ボトルB5,B6,B7に貯留された複数の移動相のうちの一の移動相を上記の第2の混合移動相として出口ポートから選択的に流出させる。
【0132】
この場合においても、上記の実施の形態と同様に、第3の混合比における第1および第2の混合移動相の項に基づくパージの制御を行うことにより、分析用移動相の成分を変化させつつ高い精度で試料を分析することが可能になる。
【0133】
なお、各セレクトバルブ11x,21Xは、3つの入口ポートと1つの出口ポートとを含むように構成されるが、2つの入口ポートと1つの出口ポートとを含むように構成されてもよいし、4つの入口ポートと1つの出口ポートとを含むように構成されてもよい。この場合、各セレクトバルブ11x,21xには、入口ポートの数に応じた数のボトルを接続することができる。
【0134】
また、図9の例では、第1および第2の調整部10がそれぞれセレクトバルブ11x,21xを含むが、第1および第2の調整部10のうち一方がセレクトバルブを含み、第1および第2の調整部10のうち他方が低圧混合用バルブを含んでもよい。すなわち、図9の液体クロマトグラフ100において、第1の調整部10のみが図1の第1の調整部10に置き換えられてもよい。あるいは、図9の液体クロマトグラフ100において、第2の調整部20のみが図1の第2の調整部20に置き換えられてもよい。さらに、図9の液体クロマトグラフ100においては、分析用移動相生成部30のみが図7または図8の分析用移動相生成部30に置き換えられてもよい。
【0135】
(f)上記実施の形態においては、液体クロマトグラフの一例として一般的な高速液体クロマトグラフを説明したが、本発明はこれに限定されない。上記の第1の調整部10、第2の調整部20、分析用移動相生成部30および制御装置70を備える構成は、高速液体クロマトグラフに限らず、超臨界流体クロマトグラフにも適用することができる。この場合においても、上記実施の形態の例と同様の効果を得ることができる。したがって、本発明に係る液体クロマトグラフには、超臨界流体クロマトグラフが含まれる。なお、超臨界クロマトグラフにおいては、超臨界流体が気化しないようにバックプレッシャーレギュレータが設けられる。そのため、超臨界クロマトグラフでは、高速液体クロマトグラフに対して比較的低い流量でパージを行う必要がある。
【0136】
(g)上記実施の形態に係る第1の調整部10は、低圧混合用バルブである1つの第1の切替バルブ11によりボトルB1~B4に貯留された複数の移動相を混合するが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の調整部10は、配管p1,p2,p3,p4を枝管とし、配管p11を主管とする分岐配管を有するとともに、配管p1,p2,p3,p4にそれぞれ取り付けられた複数のバルブを有してもよい。この場合、各バルブの開閉状態が切り替えられることにより、上記の第1の切替バルブ11と同様の機能が実現される。
【0137】
また、上記実施の形態に係る第2の調整部20は、低圧混合用バルブである1つの第2の切替バルブ21によりボトルB5~B8に貯留された複数の移動相を混合するが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の調整部20は、配管p5,p6,p7,p8を枝管とし、配管p21を主管とする分岐配管を有するとともに、配管p5,p6,p7,p8にそれぞれ取り付けられた複数のバルブを有してもよい。この場合、各バルブの開閉状態が切り替えられることにより、上記の第2の切替バルブ21と同様の機能が実現される。
【0138】
(h)上記実施の形態では、第1および第2の調整部10,20の各々は、それぞれ4つのボトルを使用可能に構成されるが、本発明はこれに限定されない。第1および第2の調整部10,20の各々は、5つ以上のボトルを使用可能に構成されてもよいし、3つ以下のボトルを使用可能に構成されてもよい。
【0139】
(i)上記実施の形態に係る液体クロマトグラフ100においては、第1の調整部10の下流側にさらに第1および第2の調整部10,20と同様の機能を実現するための低圧混合用バルブまたはセレクトバルブが設けられてもよい。また、第2の調整部20の上流にさらに第1および第2の調整部10,20と同様の機能を実現するための低圧混合用バルブまたはセレクトバルブが設けられてもよい。この場合、生成可能な移動相のさらなる多様化が実現される。
【0140】
[6]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明する。
【0141】
上記実施の形態においては、ボトルB1~B8が複数の移動相源の例であり、ボトルB1~B4からなるボトル群およびボトルB5~B8からなるボトル群がそれぞれ移動相源群の例であり、配管p12,p22が流路の例である。
【0142】
また、図1の第1の切替バルブ11、第2の切替バルブ21、第1のポンプ31および第2のポンプ32の組み合わせ、図7の第1の切替バルブ11、第2の切替バルブ21および第3のポンプ36の組み合わせ、図8の第1の切替バルブ11、第2の切替バルブ21および第4のポンプ38の組み合わせ、および図9のセレクトバルブ11x,21x、第1のポンプ31および第2のポンプ32の組み合わせが供給装置の例である。
【0143】
また、ミキサ33が混合器の例であり、第1および第2の混合移動相が中間混合移動相の例であり、第3の混合比が初期比の例であり、セレクトバルブ39が選択器の例である。
【0144】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9