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特許7120440多極コネクタセット及び回路基板接続構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】多極コネクタセット及び回路基板接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6585 20110101AFI20220809BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20220809BHJP
【FI】
H01R13/6585
H01R12/71
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021504976
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009241
(87)【国際公開番号】W WO2020184347
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2019045877
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】常門 陸宏
(72)【発明者】
【氏名】前田 吉朗
(72)【発明者】
【氏名】眞室 稔
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-321358(JP,A)
【文献】特開2018-116925(JP,A)
【文献】国際公開第98/09354(WO,A1)
【文献】米国特許第6764315(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコネクタと第2のコネクタとを互いに嵌合方向に嵌合して構成される多極コネクタセットであって、
前記第1のコネクタは、前記嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第1の内部端子で構成される第1の内部端子群と、前記第1の内部端子群と並列に配列された複数の第2の内部端子で構成される第2の内部端子群と、前記第1の内部端子群及び前記第2の内部端子群を保持する第1の絶縁性部材と、を備え、
前記第2のコネクタは、前記嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第3の内部端子で構成される第3の内部端子群と、前記第3の内部端子群と並列に配列された複数の第4の内部端子で構成される第4の内部端子群と、前記第3の内部端子群及び前記第4の内部端子群を保持する第2の絶縁性部材と、を備え、
前記第1の絶縁性部材には、前記第1の内部端子群と前記第2の内部端子群との間に配置され、前記嵌合方向に貫通する貫通孔が設けられ、
前記多極コネクタセットは、
前記嵌合方向から見て、前記第1の内部端子群と前記第2の内部端子群との間、及び、前記第3の内部端子群と前記第4の内部端子群との間に配置されるとともに、前記貫通孔を前記嵌合方向に移動可能な導電性のシールド部材と、
前記シールド部材を、嵌合方向と平行で前記第2の絶縁性部材から前記第1の絶縁性部材に向かう向きに付勢するバネ部とを更に備え、
前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとが互いに嵌合した状態において、前記シールド部材が前記貫通孔を貫通して前記第1の絶縁性部材から突出するように構成された、多極コネクタセット。
【請求項2】
前記シールド部材の前記配列方向の長さは、前記第1の内部端子群の前記配列方向の長さよりも長い、請求項1に記載の多極コネクタセット。
【請求項3】
前記シールド部材は、前記嵌合方向および前記配列方向に沿うように配置される板状部材であり、
前記バネ部は、前記シールド部材を両主面側又は底面から付勢して前記嵌合方向における前記シールド部材の姿勢を保持するように構成される、請求項1又は請求項2に記載の多極コネクタセット。
【請求項4】
前記シールド部材は、前記嵌合方向および前記配列方向に沿うように配置される板状部材であり、
前記バネ部は、前記嵌合方向から見たときに、前記嵌合方向及び前記配列方向と交差する方向において前記シールド部材の一方の主面及び他方の主面、又は前記シールド部材の底面から延びる一対の脚部を有し、
前記一対の脚部は互いに離れる方向に湾曲される、請求項1から請求項3のいずれ1つに記載の多極コネクタセット。
【請求項5】
前記シールド部材は、前記嵌合方向および前記配列方向に沿うように配置される板状部材であり、
前記バネ部は、前記嵌合方向から見たとき、前記配列方向に沿うように延びるとともに前記シールド部材と重なる位置に設けられている、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の多極コネクタセット。
【請求項6】
第1のコネクタと第2のコネクタとを互いに嵌合方向に嵌合して構成される多極コネクタセットと、前記第1のコネクタと接続する第1の回路基板と、前記第2のコネクタと接続する第2の回路基板とを備える回路基板接続構造であって、
前記第1のコネクタは、前記嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第1の内部端子で構成される第1の内部端子群と、前記第1の内部端子群と並列に配列された複数の第2の内部端子で構成される第2の内部端子群と、前記第1の内部端子群及び前記第2の内部端子群を保持する第1の絶縁性部材と、を備え、
前記第2のコネクタは、前記嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第3の内部端子で構成される第3の内部端子群と、前記第3の内部端子群と並列に配列された複数の第4の内部端子で構成される第4の内部端子群と、前記第3の内部端子群及び前記第4の内部端子群を保持する第2の絶縁性部材と、を備え、
前記第1の絶縁性部材には前記第1の内部端子群と前記第2の内部端子群との間に配置され、前記嵌合方向に貫通する貫通孔が設けられ、
前記多極コネクタセットは、
前記嵌合方向から見て、前記第1の内部端子群と前記第2の内部端子群との間、及び、前記第3の内部端子群と前記第4の内部端子群との間に配置されるとともに、前記貫通孔を前記嵌合方向に移動可能な導電性のシールド部材と、
前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとが互いに嵌合した状態において、前記シールド部材を、嵌合方向と平行で前記第2の絶縁性部材から前記第1の絶縁性部材に向かう向きに付勢し、前記貫通孔を通じて前記シールド部材を前記第1の回路基板に接触させるバネ部と、を更に備える、回路基板接続構造。
【請求項7】
前記第1の回路基板において前記シールド部材と最も近い位置に設けられる第1のグランド導体の厚みは、前記第2の回路基板において前記シールド部材と最も近い位置に設けられる第2のグランド導体の厚みよりも薄い、請求項6に記載の回路基板接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のコネクタと第2のコネクタを互いに嵌合して構成される多極コネクタセット及び回路基板同士を多極コネクタセットによって接続する回路基板接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の回路基板と接続される第1のコネクタと、他方の回路基板と接続される第2のコネクタと、を互いに嵌合して構成される多極コネクタセットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の多極コネクタセットにおいては、それぞれのコネクタにおいて複数の内部端子で構成される内部端子群が互いに並列に複数列設けられている。内部端子群の列間の干渉を抑制するため、内部端子群の列間にはシールド部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開第2012-18781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器が使用する周波数帯の高周波化に伴い、内部端子群の列間のアイソレーションの重要性が高くなっている。特許文献1では、内部端子群の列間のアイソレーションを向上させるという点において改善の余地がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、内部端子群の列間におけるアイソレーションを向上させることができる多極コネクタセット及び回路基板接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の多極コネクタセットは、第1のコネクタと第2のコネクタとを互いに嵌合方向に嵌合して構成される多極コネクタセットであって、第1のコネクタは、嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第1の内部端子で構成される第1の内部端子群と、第1の内部端子群と並列に配列された複数の第2の内部端子で構成される第2の内部端子群と、第1の内部端子群及び第2の内部端子群を保持する第1の絶縁性部材と、を備え、第2のコネクタは、嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第3の内部端子で構成される第3の内部端子群と、第3の内部端子群と並列に配列された複数の第4の内部端子で構成される第4の内部端子群と、第3の内部端子群及び第4の内部端子群を保持する第1の絶縁性部材と、を備え、第1の絶縁性部材には、第1の内部端子群と第2の内部端子群との間に配置され、嵌合方向に貫通する貫通孔が設けられ、多極コネクタセットは、嵌合方向から見て、第1の内部端子群と第2の内部端子群との間、及び、第3の内部端子群と第4の内部端子群との間に配置されるとともに、貫通孔を嵌合方向に移動可能な導電性のシールド部材と、シールド部材を、嵌合方向と平行で第2の絶縁性部材から第1の絶縁性部材に向かう向きに付勢するバネ部とを更に備え、第1のコネクタと第2のコネクタとが互いに嵌合した状態において、シールド部材が貫通孔を貫通して第1の絶縁性部材から突出するように構成される。
【0008】
また、本発明の回路基板接続構造は、第1のコネクタと第2のコネクタとを互いに嵌合方向に嵌合して構成される多極コネクタセットと、第1のコネクタと接続する第1の回路基板と、第2のコネクタと接続する第2の回路基板とを備える回路基板接続構造であって、第1のコネクタは、嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第1の内部端子で構成される第1の内部端子群と、第1の内部端子群と並列に配列された複数の第2の内部端子で構成される第2の内部端子群と、第1の内部端子群及び第2の内部端子群を保持する第1の絶縁性部材と、を備え、第2のコネクタは、嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第3の内部端子で構成される第3の内部端子群と、第3の内部端子群と並列に配列された複数の第4の内部端子で構成される第4の内部端子群と、第3の内部端子群及び第4の内部端子群を保持する第1の絶縁性部材と、を備え、第1の絶縁性部材には第1の内部端子群と第2の内部端子群との間に配置され、嵌合方向に貫通する貫通孔が設けられ、多極コネクタセットは、嵌合方向から見て、第1の内部端子群と第2の内部端子群との間、及び、第3の内部端子群と第4の内部端子群との間に配置されるとともに、貫通孔を嵌合方向に移動可能な導電性のシールド部材と、第1のコネクタと第2のコネクタとが互いに嵌合した状態において、シールド部材を、嵌合方向と平行で第2の絶縁性部材から第1の絶縁性部材に向かう向きに付勢し、貫通孔を通じてシールド部材を第1の回路基板に接触させるバネ部と、を更に備える。
【発明の効果】
【0009】
このような構成によれば、第1の内部端子群と第2の内部端子群の間のアイソレーションを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】実施の形態1における多極コネクタセットの概略斜視図
図1B図1Aの多極コネクタセットの分解斜視図
図1C図1Aの多極コネクタセットの断面図
図2A図1Aの多極コネクタセットが備える第1のコネクタの概略平面図
図2B図2Aの第1のコネクタのA-A断面図
図3A図1Aの多極コネクタセットが備える第2のコネクタの概略平面図
図3B図3Aの第2のコネクタのB-B断面図
図3C図3Aの第2のコネクタのC-C断面図
図4A図1Aの多極コネクタセットが備えるシールド部材の斜視図
図4B図4Aのシールド部材の展開図
図5】実施の形態2における多極コネクタセットを回路基板に実装した回路基板接続構造の実装図
図6図4Aのシールド部材の変形例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者らは、多極コネクタにおいて内部端子群の列間のアイソレーションを向上させるために鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
【0012】
従来の多極コネクタでは、内部端子群の列間に配置されるシールド部材は、回路基板に対して隙間をあけて配置されている。本発明者らは、近年の高周波化により信号の波長が短くなることで、当該信号がシールド部材と回路基板との隙間を通じて伝送され、内部端子群の列間で電波の干渉が生じ、多極コネクタのアイソレーションが低下することを見出した。これらの新規な知見に基づき、本発明者らは以下の発明を見出した。
【0013】
本発明の第1態様によれば、第1のコネクタと第2のコネクタとを互いに嵌合方向に嵌合して構成される多極コネクタセットであって、第1のコネクタは、嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第1の内部端子で構成される第1の内部端子群と、第1の内部端子群と並列に配列された複数の第2の内部端子で構成される第2の内部端子群と、第1の内部端子群及び第2の内部端子群を保持する第1の絶縁性部材と、を備え、第2のコネクタは、嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第3の内部端子で構成される第3の内部端子群と、第3の内部端子群と並列に配列された複数の第4の内部端子で構成される第4の内部端子群と、第3の内部端子群及び第4の内部端子群を保持する第1の絶縁性部材と、を備え、第1の絶縁性部材には、第1の内部端子群と第2の内部端子群との間に配置され、嵌合方向に貫通する貫通孔が設けられ、多極コネクタセットは、嵌合方向から見て、第1の内部端子群と第2の内部端子群との間、及び、第3の内部端子群と第4の内部端子群との間に配置されるとともに、貫通孔を嵌合方向に移動可能な導電性のシールド部材と、シールド部材を、嵌合方向と平行で第2の絶縁性部材から第1の絶縁性部材に向かう向きに付勢するバネ部とを更に備え、第1のコネクタと第2のコネクタとが互いに嵌合した状態において、シールド部材が貫通孔を貫通して第1の絶縁性部材から突出するように構成された、多極コネクタセットを提供する。このような構成によれば、第1のコネクタが実装された回路基板とシールド部材の密着性を高めることができる。そのため、第1の内部端子群と第2の内部端子群との間におけるアイソレーションを向上させることができる。
【0014】
本発明の第2態様によれば、シールド部材の配列方向の長さは、第1の内部端子群の配列方向の長さよりも長い、第1態様に記載の多極コネクタセットを提供する。このような構成によれば、第1の内部端子群と第2の内部端子群の列間において隙間が減少するので、第1の内部端子群と第2の内部端子群のアイソレーションを向上させることができる。
【0015】
本発明の第3態様によれば、シールド部材は、嵌合方向及び配列方向に沿うように配置される板状部材であり、バネ部は、シールド部材を両主面側又は底面から付勢して嵌合方向におけるシールド部材の姿勢を保持するように構成される、第1態様に記載の多極コネクタセットを提供する。このような構成によれば、嵌合方向に付勢力をもたせることができるので、シールド部材を回路基板へより密着させることができる。そのため、第1の内部端子群と第2の内部端子群のアイソレーションを向上させることができる。
【0016】
本発明の第4態様によれば、シールド部材は、嵌合方向および配列方向に沿うように配置される板状部材であり、バネ部は、嵌合方向から見たときに、嵌合方向及び配列方向と交差する方向においてシールド部材の一方の主面及び他方の主面、又はシールド部材の底面から延びる一対の脚部を有し、一対の脚部は互いに離れる方向に湾曲される、第1態様に記載の多極コネクタセットを提供する。このような構成によれば、シールド部材を回路基板へより安定的に密着させることができる。そのため、第1の内部端子群と第2の内部端子群のアイソレーションを改善することができる。このような構成によれば、第1の内部端子群と第2の内部端子群の間における電磁波の干渉をより抑制することができる。
【0017】
本発明の第5態様によれば、シールド部材は、嵌合方向及び配列方向に沿うように配置される板状部材であり、バネ部は、嵌合方向から見たとき、配列方向に沿うように延びるとともにシールド部材と重なる位置に設けられている、第1態様に記載の多極コネクタセットを提供する。このような構成によれば、省スペースでシールド部材を第2の絶縁性部材に設置することができる。
【0018】
本発明の第6態様によれば、第1のコネクタと第2のコネクタとを互いに嵌合方向に嵌合して構成される多極コネクタセットと、第1のコネクタと接続する第1の回路基板と、第2のコネクタと接続する第2の回路基板とを備える回路基板接続構造であって、第1のコネクタは、嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第1の内部端子で構成される第1の内部端子群と、第1の内部端子群と並列に配列された複数の第2の内部端子で構成される第2の内部端子群と、第1の内部端子群及び第2の内部端子群を保持する第1の絶縁性部材と、を備え、第2のコネクタは、嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の第3の内部端子で構成される第3の内部端子群と、第3の内部端子群と並列に配列された複数の第4の内部端子で構成される第4の内部端子群と、第3の内部端子群及び第4の内部端子群を保持する第2の絶縁性部材と、を備え、第1の絶縁性部材には第1の内部端子群と第2の内部端子群との間に配置され、嵌合方向に貫通する貫通孔が設けられ、多極コネクタセットは、嵌合方向から見て、第1の内部端子群と第2の内部端子群との間、及び、第3の内部端子群と第4の内部端子群との間に配置されるとともに、貫通孔を嵌合方向に移動可能な導電性のシールド部材と、第1のコネクタと第2のコネクタとが互いに嵌合した状態において、シールド部材を、嵌合方向と平行で第2の絶縁性部材から第1の絶縁性部材に向かう向きに付勢し、貫通孔を通じてシールド部材を第1の回路基板に接触させるバネ部と、を更に備える、回路基板接続構造を提供する。このような構成によれば、第1の回路基板とシールド部材の密着性を高めることができる。そのため、第1の内部接続端子群と第2の内部接続端子群の間におけるアイソレーションを向上させることができる。
【0019】
本発明の第7態様によれば、第1の回路基板においてシールド部材と最も近い位置に設けられる第1のグランド導体の厚みは、第2の回路基板においてシールド部材と最も近い位置に設けられる第2のグランド導体の厚みよりも薄い、第6態様に記載の回路基板接続構造を提供する。このような構成によれば、第1のグランド導体から反射される電磁波が第2のグランド導体から反射される電磁波よりも大きい場合であっても、第1の内部端子群と第2の内部端子群のアイソレーションを向上させることができる。
【0020】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
<全体構成>
図1Aは、実施の形態1の多極コネクタセット1の組み立て斜視図である。図1Bは、実施の形態1の多極コネクタセット1の分解斜視図である。図1Cは、図1Aの多極コネクタセット1の断面図である。
【0022】
本実施の形態1における多極コネクタセット1は、図1A及び図1Bに示すように、第1のコネクタ10と、シールド部材30が配置された第2のコネクタ20とを嵌合方向であるZ方向に嵌合させることで構成される。
【0023】
第1のコネクタ10及び第2のコネクタ20は、それぞれ別の回路基板(図5に示す、第1の回路基板110及び第2の回路基板120)に接続される。これらの回路基板が、第1のコネクタ10及び第2のコネクタ20から構成される多極コネクタセット1を介して電気的に接続される。
【0024】
第1のコネクタ10は、複数の第1の内部端子11をZ方向に対して交差(例えば、直交)する配列方向であるX方向に配列した第1の内部端子群11Aと、複数の第2の内部端子12をX方向に配列した第2の内部端子群12Aとを備える。第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aとは第1の絶縁性部材13によって保持される。第2のコネクタ20は、複数の第3の内部端子21をX方向に配列した第3の内部端子群21Aと、複数の第4の内部端子22をX方向に配列した第4の内部端子群22Aとを備える。第3の内部端子群21Aと第4の内部端子群22Aとは第2の絶縁性部材23によって保持される。
【0025】
図1Cに示すように、第1のコネクタ10と第2のコネクタ20が嵌合した状態において、第3の内部端子群21Aと第4の内部端子群22Aの間に導電性のシールド部材30が配置されている。第1のコネクタ10と第2のコネクタ20とが嵌合した状態において、第1の内部端子群11Aと第3の内部端子群21A、第2の内部端子群12Aと第4の内部端子群22Aとは互いに接触する。
【0026】
図1Aに示すように、シールド部材30は、第1のコネクタ10と第2のコネクタ20を嵌合した際に、第1の絶縁性部材13に設けられた貫通孔14を貫通して第1の絶縁性部材13から突出するように配置される。また、貫通孔14は、平面視において第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aとの間に設けられているX方向に長手方向を有する長孔である。第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aとは、X方向及びZ方向に対して交差(例えば、直交)するY方向に互いに対向するように配置されている。第1の内部端子群11Aの複数の第1の内部端子11と第2の内部端子群12Aの複数の第2の内部端子12とはX方向にずらして配置される。なお、図1Aに示すように、貫通孔14のX方向の長さは、X方向における第1の内部端子群11A及び第2の内部端子群12Aの長さよりも長い。
【0027】
以下、第1のコネクタ10、第2のコネクタ20、及びシールド部材30についてより詳細に説明する。
【0028】
<第1のコネクタ10>
図2A図2Bを用いて第1のコネクタ10について説明する。図2Aは、第1のコネクタ10の平面図である。図2Bは、図2AのA-A線に沿った断面図である。
【0029】
図2Aに示すように第1のコネクタ10は、第1の絶縁性部材13と、第1の内部端子群11Aと、第2の内部端子群12Aとを備える。
【0030】
第1の絶縁性部材13は、図2Cに示すように、貫通孔14が設けられた絶縁性の部材である。絶縁性の部材としては、例えば、樹脂やセラミックなどが用いられる。
【0031】
本実施の形態1では、第1の内部端子11,第2の内部端子12を第1の絶縁性部材13にインサート成形することにより、第1のコネクタ10が製造される。
【0032】
図2Aに示すように、第1の内部端子群11Aは、複数の第1の内部端子11によって構成される。第2の内部端子群12Aは、複数の第2の内部端子12によって構成される。第1の内部端子11及び第2の内部端子12はそれぞれ、信号電位又は接地電位に接続される導体である。第1の内部端子群11Aは、X方向に配列された複数の第1の内部端子11で構成される。第2の内部端子群12Aについても同様で、X方向に配列された複数の第2の内部端子12で構成される。また、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aは並列して配列される。図2Aに示す例では、第1の内部端子群11Aは3つの第1の内部端子11で構成されている。また、第2の内部端子群12Aは3つの第2の内部端子12で構成されている。
【0033】
図2Bに示すように、第1の内部端子11及び第2の内部端子12は導電性を有する板状や棒状などの部材を折り曲げて構成される。図1Cに示すように、第1のコネクタ10と第2のコネクタ20の嵌合状態において、第1の内部端子11は第3の内部端子21と接触し、第2の内部端子12は第4の内部端子22と接触する。第1の内部端子11は第3の内部端子21と接触し、第2の内部端子12は第4の内部端子22と接触することで、第1のコネクタ10と第2のコネクタ20が互いに電気的に接続される。
【0034】
<第2のコネクタ20>
図3A図3B、及び図3Cを用いて第2のコネクタ20について説明する。図3Aは、第2のコネクタ20の平面図である。図3Bは、図3Aの第2のコネクタ20のB-B線に沿った断面図である。図3Cは、図3Aの第2のコネクタ20のC-C線に沿った断面図である。
【0035】
第2のコネクタ20は、第2の絶縁性部材23と、第3の内部端子群21Aと、第4の内部端子群22Aと、シールド部材30とを備える。第2のコネクタ20の各構成は、第1のコネクタ10の各構成と類似するものであるため、適宜説明を省略する。
【0036】
図3Aに示すように、第2の絶縁性部材23は、前述した第1の絶縁性部材13と同様に、複数の第3の内部端子21を備える第3の内部端子群21Aと、複数の第4の内部端子22を備える第4の内部端子群22Aと、シールド部材30とを一体的に保持する絶縁性の部材である。例えば、絶縁性の部材は樹脂やセラミックなどが用いられる。
【0037】
第3の内部端子群21A及び第4の内部端子群22Aは嵌合方向と交差する配列方向に配列された複数の内部端子で構成され且つ互いに並列に配列されている。図3Aに示す例では、第3の内部端子群21Aは3つの第3の内部端子21で構成されている。また、第4の内部端子群22Aは3つの第4の内部端子22で構成されている。図3Bに示すように、第3の内部端子21及び第4の内部端子22は第1の内部端子11及び第2の内部端子12と同様に、導電性を有する板状や棒状などを折り曲げて構成される。
【0038】
図1A図1Bに示すように、第1の内部端子11と第3の内部端子21とは一対一で対応して接触し、第2の内部端子12と第4の内部端子22とは一対一で対応して接触するように設けられている。
【0039】
<シールド部材30>
図4A及び図4Bを用いてシールド部材30について説明する。図4Aはシールド部材30の斜視図である。図4Bはシールド部材30の展開図である。
【0040】
シールド部材30は、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aとの間、及び第3の内部端子群21Aと第4の内部端子群22Aとの間における電磁波の干渉を抑制するための導電性の部材である。図3Aに示すように、シールド部材30は第3の内部端子群21Aと第4の内部端子群22Aの間に配置されるとともに、第2の絶縁性部材23に保持される。図1Aに示すように第1のコネクタ10と第2のコネクタ20を嵌合した際に、シールド部材30は第1の絶縁性部材13の貫通孔14を貫通して配置される。このような構成によって、第1のコネクタ10及び第2のコネクタ20を嵌合した際に、シールド部材30が貫通孔14内を移動することができる。
【0041】
図4A図4Bに示すように、シールド部材30は、X方向に長手方向を有する板状の導電性の部材である。本実施の形態1においてシールド部材30は矩形状となっている。また、シールド部材30の下端部にはバネ部31が接続されている。バネ部31は、Z方向と平行で第2の絶縁性部材23から第1の絶縁性部材13に向かう向きに付勢するように構成されている。本実施の形態1においては、二つのバネ部31がシールド部材30の下端部にX方向に間隔をあけて設けられている。また、本実施の形態1において二つのバネ部31とシールド部材30とは、一枚の金属板を切欠き加工や曲げ加工などをすることによって一体的に構成されている。
【0042】
図4Aに示すように、バネ部31は、シールド部材30の下端部に対してZ方向に離れるに従い、Y方向に延びる湾曲した一対の脚部31aを備える。図4Bに示すように、加工前においてシールド部材30の下端部から突出するように一対の脚部31aが設けられている。この状態から一対の脚部31aは、互いに離れる方向に湾曲するように曲げ加工をされることで、図4Aに示す一対の脚部31aとなる。
【0043】
上述したバネ部31は、シールド部材30を両主面側から付勢してZ方向におけるシールド部材30の姿勢を保持する。より具体的には、バネ部31は一対の脚部31aがシールド部材30の両主面において互いに反対側から均等な力で付勢するように構成されている。本実施の形態1において、一対の脚部31aは同じ長さを有している。図1Aに示すように、脚部31aの先端側の部分は、第2の絶縁性部材23にY方向において摺動可能に保持されている。なお、バネ部31は、シールド部材30の底面から付勢してZ方向におけるシールド部材30の姿勢を保持してもよい。
【0044】
図1Cに示すように、第1のコネクタ10と第2のコネクタ20との嵌合状態においてバネ部31はシールド部材30の上端部がZ方向において第1の絶縁性部材13よりも上方に突出するようにシールド部材30を配置する。シールド部材30の上端部が下方に押されたとき、バネ部31の一対の脚部31aの先端側の部分が互いに離れるようにY方向に摺動する。それに伴ってバネ部31がシールド部材30を上方に付勢する力が増加するように構成される。
【0045】
本実施の形態1に係る多極コネクタセット1によれば、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aとの間に貫通孔14をZ方向に移動可能なシールド部材30が配置される。また、多極コネクタセット1は、第1のコネクタ10と第2のコネクタ20とが互いに嵌合した状態において、シールド部材30が第1の絶縁性部材13から突出するように、シールド部材30をZ方向のプラスの方向に向かう向きに付勢するバネ部31を備える。このような構成によれば、第1のコネクタ10が実装された回路基板とシールド部材30の密着性を高めることができる。そのため、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aとの間におけるアイソレーションを向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態1に係る多極コネクタセット1によれば、シールド部材30のX方向の長さは、第1の内部端子群11AのX方向の長さよりも長い。このような構成によれば、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aの列間において隙間が減少するので、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aのアイソレーションを向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態1に係る多極コネクタセット1によれば、シールド部材30は、板状部材であり、バネ部31は、シールド部材30を両主面側から付勢してZ方向におけるシールド部材30の姿勢を保持するように構成される。このような構成によれば、Z方向に付勢力をもたせることができるので、シールド部材30を回路基板へより密着させることができる。そのため、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aのアイソレーションを向上させることができる。
【0048】
また、本実施の形態1に係る多極コネクタセット1によれば、シールド部材30は、板状部材であり、バネ部31は、Z方向から見たときに、Y方向においてシールド部材30の一方の主面及び他方の主面から延びる一対の脚部31aを有し、一対の脚部31aは互いに離れる方向に湾曲される。このような構成によれば、シールド部材30を回路基板へより安定的に密着させることができる。そのため、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aのアイソレーションを改善することができる。このような構成によれば、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aの間における電磁波の干渉をより抑制することができる。また、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aとは、Y方向に重ならない位置にあるので、端子同士の干渉を更に抑制することができる。なお、バネ部31は、Z方向から見たときに、Y方向においてシールド部材30の底面から延びる一対の脚部31aを備える構成でもよい。
【0049】
(実施の形態2)
図5図1Aの多極コネクタセット1を用いた回路基板接続構造100を示す側面図である。
【0050】
回路基板接続構造100は、第1のコネクタ10と、第2のコネクタ20と、第1の回路基板110と、第2の回路基板120とを備える。本実施の形態2において第1のコネクタ10は第1の回路基板110に実装されている。第2のコネクタ20は第2の回路基板120に実装されている。第1のコネクタ10の第1の内部端子群11Aは第1の回路基板110の電極111と半田などの導電性接合材40を介して電気的に接続されている。同様に、第1のコネクタ10の第2の内部端子群12Aは第1の回路基板110の電極112と半田などの導電性接合材40を介して電気的に接続されている。第2のコネクタ20の第3の内部端子群21Aは第2の回路基板120の電極121と半田などの導電性接合材40を介して電気的に接続される。同様に、第2のコネクタ20の第4の内部端子群22Aは第2の回路基板120の電極122と半田などの導電性接合材40を介して電気的に接続される。
【0051】
図5に示すように、シールド部材30は第1の回路基板110の電極115と接触することで電気的に接続されている。第1のコネクタ10と第2のコネクタ20が嵌合されるとき、シールド部材30は、第1の回路基板110に接触し、貫通孔14(図1A参照)を通じて第1の絶縁性部材13から第2の絶縁性部材23に向かう向きに移動する。この際、バネ部31は、シールド部材30を第2の絶縁性部材23から第1の絶縁性部材13に向かう向きに付勢する。バネ部31の付勢力はシールド部材30の移動量が大きくなるに従って増加する。
【0052】
なお、シールド部材30と第1の回路基板110の電極の間には半田などの導電性接合材40を介して電気的に接続されていてもよい。また、シールド部材30は第1の回路基板110と直接接する構造でもよい。
【0053】
また、一般的に回路基板の信号が外部へ漏れ出ることや外部からの電磁波が回路基板の信号線と干渉するのを防ぐために、回路基板にグランド導体(グランド電極)が設けられることが多い。例えば、一対の回路基板が互いに異なる厚さのグランド導体を備える場合、薄いグランド導体を備える回路基板側で信号の反射が生じやすくなる。信号の反射が生じると信号同士の干渉が生じやすくなり、当該回路基板が備える内部端子群間でアイソレーションが低下しやすくなる。本実施の形態2では、バネ部31により、第1の回路基板110とシールド部材30の密着性が向上され、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aのアイソレーションが向上する。そこで、本実施の形態2では第1の回路基板110においてシールド部材30と最も近い位置に設けられる第1のグランド導体113の厚みは、第2の回路基板120においてシールド部材30と最も近い位置に設けられる第2のグランド導体123の厚みよりも薄くなるように構成されている。このような構成によれば、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aのアイソレーションの低下を抑制することができる。
【0054】
また、図4Aに示すようにバネ部31はY方向に延びる部分を有する脚部31aを備えるものとしたが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、バネ部131は、シールド部材130の長手方向に沿って延びる脚部131aの形態でもよい。また、Z方向からシールド部材130を見た場合に、脚部131aは少なくとも一部がシールド部材130と重なっている位置に設けられている。このような構成によれば、省スペースでシールド部材130を第2の絶縁性部材23に設置することができる。なお、バネ部31は、別体で構成されるコイルばねでも良いが、Z方向から見たときに、Y方向においてシールド部材30の底面から延びる一対の脚部31aを備える構成(図4A参照)の方がシールド部材がY方向にずれにくく、好ましい。
【0055】
本実施の形態2に係る回路基板接続構造100によれば、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aとの間に貫通孔14をZ方向に移動可能なシールド部材30が配置される。また、多極コネクタセット1は、第1のコネクタ10と第2のコネクタ20とが互いに嵌合した状態において、シールド部材30を第2の絶縁性部材23から第1の絶縁性部材13に向かう向きに付勢し、貫通孔を通じてシールド部材30を第1の回路基板110に接触させるバネ部31を備える。第1のコネクタ10と第2のコネクタ20が嵌合したときに、バネ部31がシールド部材30を第1の回路基板110に向けて付勢してシールド部材30と第1の回路基板110との密着性を高めることができる。その結果、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aとの間で信号が伝送されることを抑えることができ、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aの間におけるアイソレーションを向上させることができる。
【0056】
本実施の形態2に係る回路基板接続構造100によれば、第1の回路基板110においてシールド部材と最も近い位置に設けられる第1のグランド導体113の厚みは、第2の回路基板120においてシールド部材30と最も近い位置に設けられる第2のグランド導体123の厚みよりも薄い。このような構成によれば、第1のグランド導体113から反射される電磁波が第2のグランド導体123から反射される電磁波よりも大きい場合であっても、第1の内部端子群11Aと第2の内部端子群12Aのアイソレーションを向上させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 多極コネクタセット
10 第1のコネクタ
11 第1の内部端子
11A 第1の内部端子群
12 第2の内部端子
12A 第2の内部端子群
13 第1の絶縁性部材
14 貫通孔
20 第2のコネクタ
21 第3の内部端子
21A 第3の内部端子群
22 第4の内部端子
22A 第4の内部端子群
23 第2の絶縁性部材
30、130 シールド部材
31、131 バネ部
31a、131a 脚部
40 導電性接合材
100 回路基板接続構造
110 第1の回路基板
111、112、115、121、122 電極
113 第1のグランド導体
120 第2の回路基板
123 第2のグランド導体
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6