(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
H03H9/25 C
(21)【出願番号】P 2021505042
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009800
(87)【国際公開番号】W WO2020184466
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2019045880
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥永 洋夢
【審査官】小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235605(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047255(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/198654(WO,A1)
【文献】特開2017-224890(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131454(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/08-3/10
H03H 9/145,9/25,9/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
圧電膜と、
前記圧電膜上に設けられたIDT電極と、
前記圧電膜と前記支持基板との間に設けられており、前記圧電膜にエネルギーを閉じ込めるためのエネルギー閉じ込め層と、を備え、
前記エネルギー閉じ込め層が、前記圧電膜側に位置している第1の主面と、前記支持基板側に位置している第2の主面とを有し、
前記圧電膜と前記支持基板との間の少なくとも一部において、
前記IDT電極の上方から平面視したときに、前記エネルギー閉じ込め層の前記第1の主面と部分的に重なるように
設けられている音速調整膜をさらに備え、
前記音速調整膜が、前記エネルギー閉じ込め層の
a)前記第1の主面
に接するように、b)前記第2の主面
に接するように、または
c)前記第1の主面と前記第2の主面との間に
、設けられており、かつ前記圧電膜と異なる材料からな
り、
前記IDT電極が、一対のバスバーと、間挿し合う第1及び第2の電極指とを有し、弾性波伝搬方向にみたときに前記第1の電極指と前記第2の電極指とが重なっている領域を交差領域とした場合に、該交差領域が、前記第1,第2の電極指の延びる方向において中央に位置している中央領域と、前記中央領域の両側に配置されたエッジ領域とを有し、前記音速調整膜が、前記エッジ領域の下方または前記バスバーの下方において、前記弾性波伝搬方向に延びるように設けられている、弾性波装置。
【請求項2】
前記音速調整膜が、前記圧電膜に接するように設けられている、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記IDT電極が正規型のIDT電極である、請求項1
または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記エネルギー閉じ込め層が、相対的に音響インピーダンスが低い低音響インピーダンス層と、前記低音響インピーダンス層よりも前記支持基板側に配置されており、相対的に音響インピーダンスが高い、高音響インピーダンス層とを有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記低音響インピーダンス層と、前記高音響インピーダンス層とが交互に複数層積層されている、請求項
4に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記エネルギー閉じ込め層が、伝搬するバルク波の音速が、前記圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも高い、高音速材料層と、
伝搬するバルク波の音速が、前記圧電膜を伝搬するバルク波の音速よりも低い、低音速材料からなる低音速材料層とを有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記支持基板が高音速材料からなり、前記高音速材料層と前記支持基板とが同一材料により一体に構成されている、請求項
6に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記エネルギー閉じ込め層が、前記圧電膜側において、前記IDT電極が設けられている部分の下方に位置している開口部を有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記エネルギー閉じ込め層に前記開口部を有する凹部が設けられている、請求項
8に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音速調整膜を有する弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波の音速を部分的に異ならせるための音速調整膜を有する弾性波装置が知られている。例えば下記の特許文献1に記載の弾性波装置では、第1の電極指と第2の電極指とが弾性波伝搬方向から見た場合に重なっている交差領域内の両端近傍に、第1,第2のエッジ領域が設けられている。この第1,第2のエッジ領域の音速を低めるために、第1,第2のエッジ領域において、第1,第2の電極指に、質量を付加するための金属膜が積層されている。また、下記の特許文献2では、エッジ領域において、第1,第2の電極指に、誘電体膜を積層した構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2011/088904A1
【文献】特開2015-111923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2に記載の弾性波装置では、金属や誘電体からなる音速調整膜を、第1,第2の電極指上に積層しているものであるため、高い精度で音速調整膜を形成することが困難であった。そのため、高い精度で音速を調整することが困難であった。また、電極指に比較的厚い音速調整膜を積層すると、音響損失が大きくなる。そのため、電気機械結合係数やQ特性が劣化するおそれもあった。
【0005】
本発明の目的は、高い精度で音速を調整することができ、音響損失が生じがたい、弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波装置は、支持基板と、圧電膜と、前記圧電膜上に設けられたIDT電極と、前記圧電膜と前記支持基板との間に設けられており、前記圧電膜にエネルギーを閉じ込めるためのエネルギー閉じ込め層と、前記圧電膜と前記支持基板との間の少なくとも一部に設けられており、かつ前記圧電膜と異なる材料からなる音速調整膜とを備える、弾性波装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高精度に音速を調整することができ、かつ音響損失が生じがたい、弾性波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、本発明の第1の実施形態の弾性波装置の要部を説明するための平面図及び正面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態の弾性波装置の電極構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置の要部を示す正面断面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、本発明の第3の実施形態の弾性波装置の要部を説明するための平面図及び正面断面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、本発明の第4の実施形態の弾性波装置の要部を説明するための平面図及び正面断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第5の実施形態の弾性波装置の要部を説明するための正面断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の要部を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0010】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0011】
図1(a)及び
図1(b)は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の要部を示す平面図及び正面断面図であり、
図2は、本実施形態の弾性波装置の電極構造を示す模式的に示す平面図である。
【0012】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、弾性波装置1は支持基板2を有する。支持基板2上に、エネルギー閉じ込め層3が積層されている。エネルギー閉じ込め層3上に圧電膜4が積層されている。圧電膜4は、対向し合う第1の主面4aと、第2の主面4bとを有する。第2の主面4bがエネルギー閉じ込め層3に接するように圧電膜4がエネルギー閉じ込め層3に積層されている。圧電膜4の第1の主面4a上にIDT電極7が設けられている。
【0013】
図1(a)及び
図1(b)では、IDT電極7が設けられている部分を示しているが、実際には、
図2に示すように、IDT電極7の弾性波伝搬方向両側に、反射器8,9が設けられている。それによって、弾性波共振子が構成されている。
【0014】
また、弾性波装置1では、音速調整膜11,12が設けられている。音速調整膜11,12は、伝搬する弾性波の音速を調整するために設けられている。本実施形態の弾性波装置1では、音速調整膜11,12を設けることにより、部分的に音速を異ならせることが可能とされている。しかも、後述するように、音響損失が生じがたく、従って、電気機械結合係数やQ特性の劣化が生じがたい。以下、弾性波装置1の詳細を説明する。
【0015】
支持基板2は、絶縁体や半導体などからなる。このような材料は特に限定されず、例えばSi、Al2O3などを挙げることができる。エネルギー閉じ込め層3は、相対的に音響インピーダンスが低い低音響インピーダンス層3a,3c,3eと、相対的に音響インピーダンスが高い高音響インピーダンス層3b,3dとを有する。低音響インピーダンス層3a,3c,3eと、高音響インピーダンス層3b,3dとが交互に積層されている。
【0016】
低音響インピーダンス層3a,3c,3eを構成する材料及び高音響インピーダンス層3b,3dを構成する材料は、上記音響インピーダンス関係を満たす限り、特に限定されない。低音響インピーダンス層3a,3c,3eの材料としては、例えば、酸化珪素、酸窒化珪素などを挙げることができる。高音響インピーダンス層3b,3dの材料としては、金属や、Al2O3などの誘電体を挙げることができる。
【0017】
エネルギー閉じ込め層3の上面に、圧電膜4が積層されている。圧電膜4は、LiNbO3やLiTaO3などの圧電単結晶、または圧電セラミックスにより構成し得る。本実施形態では、LiNbO3が用いられている。
【0018】
IDT電極7は、第1,第2の櫛型電極5,6を有する。第1の櫛型電極5は、複数本の第1の電極指5aと、第1のバスバー5bとを有する。第2の櫛型電極6は、複数本の第2の電極指6aと、第2のバスバー6bとを有する。複数本の第1の電極指5aと、複数本の第2の電極指6aとが、互いに間挿し合っている。
【0019】
IDT電極7は、Al、Cu、W、Moなどの金属もしくはこれらの金属を主体とする合金により構成することができる。また、複数の金属膜を積層してなる積層金属膜を用いてもよい。もっとも、IDT電極7の材料は特に限定されない。
【0020】
IDT電極7における電極指ピッチで定まる波長をλとする。圧電膜4の厚みは、好ましくは1.5λ以下とされる。このような薄い圧電膜4の場合、発生した弾性波を、エネルギー閉じ込め層3を用いて圧電膜4内に効果的に閉じ込めることができる。エネルギー閉じ込め層3では、低音響インピーダンス層3a,3c,3eのうち少なくとも一層が、高音響インピーダンス層3b,3dのうちの少なくとも一層よりも圧電膜4側に位置しておればよい。それによって、弾性波を反射し、圧電膜4に弾性波のエネルギーを効果的に閉じ込めることができる。
【0021】
なお、エネルギー閉じ込め層3における低音響インピーダンス層及び高音響インピーダンス層の積層数は特に限定されない。
【0022】
音速調整膜11,12は、IDT電極7において、交差幅方向において、音速が異なる領域を設けるために配置されている。IDT電極7においては、弾性波伝搬方向に見たときに、第1の電極指5aと、第2の電極指6aとが重なっている領域が交差領域である。この交差領域において、弾性波が励振される。
【0023】
交差領域において、第1,第2の電極指5a,6aが延びる方向中央に位置する中央領域に比べて、中央領域の両側に位置する第1,第2のエッジ領域A,Bの音速が、音速調整膜11,12により、低められている。すなわち、音速調整膜11,12が設けられている領域が、第1,第2のエッジ領域A,Bであり、
図1(a)に示すように、第1,第2のエッジ領域A,Bは、弾性波伝搬方向に沿って延びている長方形の形状を有する領域となっている。この領域に、音速調整膜11,12が設けられている。
【0024】
音速調整膜11,12は、エネルギー閉じ込め層3の上面に位置している。音速調整膜11,12は、エネルギー閉じ込め層3上でのパターン形成により設けることができる。従って、音速調整膜11,12を高精度に形成することができ、音速を高精度に調整することが可能となる。しかも、第1,第2の電極指5a,6a上に他の膜を付加するものではないため、音響損失による、電気機械結合係数やQ特性の劣化も生じがたい。このような音速調整膜11,12の材料としては、適宜の材料を用いることができる。例えば、Au、Pt、Pd、Ta、NbまたはWなどの金属もしくはこれらの金属を主体とする合金、あるいはこれらの金属の酸化物などを好適に用いることができる。本実施形態では、音速調整膜11,12による質量付加作用により、第1,第2のエッジ領域A,Bにおける音速を、中央領域における音速よりも低くすることが可能とされている。それによって、横モードによるリップルを抑制することができる。
【0025】
本実施形態では、音速調整膜11,12は、エネルギー閉じ込め層3と、圧電膜4との界面において、圧電膜4に接するように設けられていた。従って、第1,第2のエッジ領域A,Bにおける音速を効果的に低めることができる。このような音速調整膜11,12は、エネルギー閉じ込め層3の上面に積層するように形成してもよく、あるいは、圧電膜4の第2の主面4b上にパターン形成し、エネルギー閉じ込め層3を形成した後に、支持基板2と積層してもよい。いずれの形成方法においても、平坦な面上に音速調整膜11,12をパターン形成すればよい。従って、音速調整膜11,12を高精度に形成することができる。なお、音速調整膜11,12と、圧電膜4の間には、密着層が形成されていてもよい。
【0026】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置の要部を示す正面断面図である。第2の実施形態の弾性波装置21では、音速調整膜11,12が、エネルギー閉じ込め層3内に設けられている。
図3では、エネルギー閉じ込め層3は略図的に示しているが、実際には、第1の実施形態のエネルギー閉じ込め層3と、同様に構成されている。従って、複数の高音響インピーダンスと、複数の低音響インピーダンス層とが交互に積層されている。
【0027】
第2の実施形態の弾性波装置21では、音速調整膜11,12が、エネルギー閉じ込め層3内に設けられている。すなわち、音速調整膜11,12は、圧電膜4の第2の主面4bに直接接していない。このように、音速調整膜11,12は、圧電膜4の第2の主面4bと、支持基板2との間の任意の位置に形成することができるが、圧電膜4から1/2λ~1λの距離に形成すると、より好ましい。
【0028】
また、弾性波装置21では、音速調整膜11,12は、第1,第2のエッジ領域A,Bではなく、第1,第2のバスバー5b,6bが設けられている部分の下方に位置している。このように本発明に係る弾性波装置では、第1,第2のエッジ領域A,Bに限らず、他の部分の音速を異ならせるように、音速調整膜11,12が設けられてもよい。また、音速調整膜11,12は、音速を高くするために設けられてもよい。材料としては、アルミナ、SiC、ダイヤモンドなどを用いることができる。
【0029】
図4(a)及び
図4(b)は、第3の実施形態に係る弾性波装置31の要部を示す平面図及び正面断面図である。
【0030】
弾性波装置31では、弾性波装置21と同様に、音速調整膜11,12が、第1,第2のバスバー5b,6bの下方に位置するように設けられている。もっとも、音速調整膜11,12は、圧電膜4の第2の主面4bに接するように設けられている。このように、音速調整膜11,12は、第1,第2のエッジ領域A,B以外の部分の音速を異ならせる場合にも、圧電膜4の第2の主面4bに接するように設けられていてもよい。
【0031】
図5(a)及び
図5(b)は、第4の実施形態に係る弾性波装置41の要部を示す平面図及び正面断面図である。
【0032】
弾性波装置41では、IDT電極7において、第1の電極指5aの先端を結ぶ包絡線と、第2の電極指6aの先端同士を結ぶ包絡線とが、第1,第2の電極指5a,6aと直交する方向ではなく、直交する方向に対して傾斜している。それにともなって、第1,第2のバスバー5b,6bの延びる方向も、弾性波伝搬方向に対し傾斜している。音速調整膜11,12についても、第1,第2のエッジ領域A,Bが同様に傾斜しているため、平面視において、弾性波伝搬方向に傾斜するように設けられている。このように、IDT電極7において、第1,第2のエッジ領域A,Bが弾性波伝搬方向に対して傾斜している構造であってもよい。
【0033】
ここで、第1の実施形態におけるIDT電極7は、傾斜構造を有しない正規型のIDT電極である。本実施形態の弾性波装置41は、上記IDT電極7における傾斜構造を除けば、第1の実施形態の弾性波装置1と同様に構成されている。従って、音速調整膜11,12により、音速を高精度に調整することが可能となり、第1,第2のエッジ領域A,Bの音速を効果的に低めることができる。
【0034】
図6は、第5の実施形態に係る弾性波装置51の要部を示す正面断面図である。弾性波装置51では、高音速材料層としての高音速膜52と、低音速材料層としての低音速膜53とを有するエネルギー閉じ込め層54が用いられている。エネルギー閉じ込め層3に代えてエネルギー閉じ込め層54が設けられていることを除いては、弾性波装置51は、弾性波装置1と同様に構成されている。
【0035】
高音速膜52としては、伝搬するバルク波の音速が圧電膜4を伝搬する弾性波の音速よりも高い高音速材料からなる膜を用いることができる。このような高音速材料としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、酸窒化ケイ素、DLC膜またはダイヤモンド、上記材料を主成分とする媒質等のさまざまな高音速材料を用いることができる。
【0036】
低音速膜53は、低音速材料からなる。低音速材料とは、伝搬するバルク波の音速が、圧電膜4を伝搬するバルク波の音速よりも低い材料をいう。このような低音速材料としては、酸化ケイ素、ガラス、酸窒化珪素、酸化タンタル、また、酸化ケイ素にフッ素や炭素やホウ素を加えた化合物など、上記材料を主成分とした媒質を用いることができる。
【0037】
上記低音速膜53及び高音速膜52は、繰り返して積層されていてもよい。少なくとも1層の低音速膜53よりも、少なくとも1層の高音速膜52が支持基板2側に位置しておればよい。それによって、圧電膜4内に弾性波のエネルギーを効果的に閉じ込めることができる。
【0038】
従って、高音速膜52が、高音速材料からなる支持基板2と一体に形成されていてもよい。その場合においても、高音速部材上に、低音速膜53及び圧電膜4が積層されていることになる。従って、圧電膜4内に弾性波のエネルギーを効果的に閉じ込めることができる。なお、例えば、高音速膜52と支持基板2とが同一材料により一体に構成されていてもよい。
【0039】
弾性波装置51においても、音速調整膜11,12が、第1,第2のエッジ領域A,Bの下方に設けられているため、第1,第2のエッジ領域A,Bにおける音速を低めるように調整することができる。しかも、第1の実施形態の場合と同様に、音速調整膜11,12を高精度に形成することができ、かつ音響損失による電気機械結合係数やQ特性の劣化も生じがたい。
【0040】
図7は、第6の実施形態に係る弾性波装置の要部を示す正面断面図である。弾性波装置61では、エネルギー閉じ込め層としてキャビティXが中間層62に設けられている。ここでは、支持基板2上に中間層62は設けられている。中間層62において、上方に開いた凹部が形成されて、キャビティXが設けられている。このキャビティXを覆うように、圧電膜4が、中間層62上に積層されている。圧電膜4の第2の主面4bに、音速調整膜11,12が設けられている。音速調整膜11,12は、IDT電極7における第1,第2のエッジ領域A,Bの下方に設けられている。従って、本実施形態の弾性波装置61においても、第1,第2のエッジ領域A,Bの音速を効果的に低めることができる。
【0041】
本発明において、エネルギー閉じ込め層は、このようなキャビティXであってもよい。それによって、圧電膜4内に弾性波のエネルギーを効果的に閉じ込めることができる。
【0042】
弾性波装置61においても、音速調整膜11,12は、圧電膜4の第2の主面4b上に設ければよいため、高精度に形成することができ、音速を高精度に調整することが可能となる。また、音速調整膜11,12の音響損失も生じがたいため、電気機械結合係数やQ特性の劣化も生じがたい。
【0043】
なお、上記中間層62を構成する材料としては、酸化ケイ素に限らず、様々な誘電体材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1…弾性波装置
2…支持基板
3…エネルギー閉じ込め層
3a,3c,3e…低音響インピーダンス層
3b,3d…高音響インピーダンス層
4…圧電膜
4a…第1の主面
4b…第2の主面
5…第1の櫛型電極
5a…第1の電極指
5b…第1のバスバー
6…第2の櫛型電極
6a…第2の電極指
6b…第2のバスバー
7…IDT電極
8,9…反射器
11,12…音速調整膜
21,31,41,51,61…弾性波装置
52…高音速膜
53…低音速膜
54…エネルギー閉じ込め層
62…中間層
X…キャビティ