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特許7120459センサデバイスならびにこれを備えるセンサシステムおよび物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】センサデバイスならびにこれを備えるセンサシステムおよび物品
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20220809BHJP
   G01K 7/22 20060101ALI20220809BHJP
   G01K 7/16 20060101ALI20220809BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01L1/20 Z
G01K7/22 Z
G01K7/16 M
G01L5/00 101Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021522700
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2020016746
(87)【国際公開番号】W WO2020241109
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019102308
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】星隈 貴秀
(72)【発明者】
【氏名】日置 泰典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 忠
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179687(JP,A)
【文献】特開平07-055607(JP,A)
【文献】国際公開第2018/138993(WO,A1)
【文献】米国特許第04530249(US,A)
【文献】特開2012-164463(JP,A)
【文献】特表2018-532985(JP,A)
【文献】特開2000-088670(JP,A)
【文献】特開2000-111368(JP,A)
【文献】特開2001-025461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0082920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/20,5/00,
G01K 7/16-7/25,
G01D 21/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に配置されたセンサ素子とを含むセンサデバイスであって、
該センサ素子が、
2つの電極と、該2つの電極間に配置され、かつ導電性または半導体の粒子および有機高分子成分から形成されるサーミスタ部と
を含み、および
該2つの電極間にて測定される抵抗値から外力成分および温度成分を分離し、該外力成分および該温度成分のそれぞれに基づいて、該センサ素子に印加された外力および該センサ素子が曝されている温度を検知する、センサデバイス。
【請求項2】
前記2つの電極が、櫛形電極である、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記2つの電極が、面電極である、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記サーミスタ部が、負の温度係数を有する、請求項1~3のいずれかに記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記基材が、可撓性を有する、請求項1~4のいずれかに記載のセンサデバイス。
【請求項6】
複数の前記センサ素子が、前記基材上に配置されている、請求項1~5のいずれかに記載のセンサデバイス。
【請求項7】
前記複数のセンサ素子が、前記基材上にアレイ状に配置されている、請求項6に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のセンサデバイスと、
前記センサ素子に対して測定される前記抵抗値の電気信号から、外力成分および温度成分を抽出するフィルタと、
該外力成分に基づいて外力の検知結果を得、および、該温度成分に基づいて温度の検知結果を得る、処理部と
を含む、センサシステム。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載のセンサデバイスまたは請求項8に記載のセンサシステムと、
被検知物体と
を含み、該センサデバイスが該被検知物体に接触して配置される、物品。
【請求項10】
前記被検知物体が、電池セルである、請求項9に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサデバイスならびにこれを備えるセンサシステムおよび物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサとして、熱電対、負の温度係数を有するNTCサーミスタおよび正の温度係数を有するPTCサーミスタなどが一般的に利用されている。温度センサは幅広い用途で使用されているが、例えば、電池の温度を検知するために、温度センサを電池に取り付けることがある。より詳細には、特許文献1には、広い環境温度範囲において電池を適切な温度に保ち、これにより電池の性能低下や短寿命化を防止すべく、複数の単電池を接続して構成された組電池において、ヒータ(加熱用)と熱伝導性プレート(放熱用)とを単電池を挟んで交互に積層して配置し、単電池に温度センサを取り付け、該温度センサにより検出された電池温度に基づいて、ヒータの加熱または加熱停止を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-243524号公報
【文献】特開2008-309589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)等において、複数の電池セル(単電池)を接続したバッテリスタック(組電池)を安全かつ長寿命で適切に使用するためのバッテリマネージメントシステム(BMS)が開発されている。BMSにおいては、各電池セルの温度を温度センサで検知することに加えて、各電池セルの変形を検知することができれば好都合であると考えられる。
【0005】
他方、圧力分布を得ること、換言すれば、どの領域に外力が印加されたかを検知することが可能なセンサデバイスが知られている。特許文献2には、導電性フィラーがエラストマー中に分散されて、弾性変形により電気抵抗率が変化する弾性材からなる変形センサと、該変形センサの周縁部に離間して配置された4個以上の電極とを備えるセンサ構造体が開示されており、該変形センサの受圧面に外力が印加された場合に、電極対を切り替えつつ、電極対間の電圧を検出して演算処理することによって、外力が印加された位置を算出できることが記載されている。
【0006】
しかしながら、単一のセンサデバイスであって、温度と外力の双方を検知することが可能なセンサデバイスは、これまで知られていない。
【0007】
本発明の目的は、単一のセンサデバイスであって、温度と外力の双方を検知することが可能なセンサデバイスを提供することにある。本発明の更なる目的は、かかるセンサデバイスを備えるセンサシステムおよび物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの要旨によれば、基材と、該基材上に配置されたセンサ素子とを含むセンサデバイスであって、
該センサ素子が、
2つの電極と、該2つの電極間に配置され、かつ導電性または半導体の粒子および有機高分子成分から形成されるサーミスタ部と
を含み、および
該2つの電極間にて測定される抵抗値に基づいて、該センサ素子に印加された外力および該センサ素子が曝されている温度を検知する、センサデバイスが提供される。
【0009】
本発明のもう1つの要旨によれば、
上記本発明のセンサデバイスと、
前記センサ素子に対して測定される前記抵抗値の電気信号から、外力成分および温度成分を抽出するフィルタと、
該外力成分に基づいて外力の検知結果を得、および、該温度成分に基づいて温度の検知結果を得る、処理部と
を含む、センサシステムが提供される。
【0010】
本発明の更にもう1つの要旨によれば、
上記本発明のセンサデバイスまたは上記本発明のセンサシステムと、
被検知物体と、
を含み、該センサデバイスが該被検知物体に接触して配置される、物品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単一のセンサデバイスであって、温度と外力の双方を検知することが可能なセンサデバイスが提供される。更に、本発明によれば、かかるセンサデバイスを備えるセンサシステムおよび物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の1つの実施形態におけるセンサデバイスに関し、(a)は、基材上に配置される2つの電極の概略上面図であり、(b)は、センサ素子の概略上面図であり、(c)は、(b)のA-A’線に沿って見たセンサデバイスの概略部分断面図である。
図2】本発明の1つの実施形態におけるサーミスタ部の拡大概略断面図である。
図3】(a)は、外力がゼロの場合におけるNTCのサーミスタ特性を模式的に示すグラフであり、(b)は、外力がゼロの場合におけるPTCのサーミスタ特性を模式的に示すグラフである。
図4】温度が一定の場合における抵抗値の経時変化を模式的に示すグラフである。
図5】本発明のもう1つの実施形態におけるセンサデバイスに関し、(a)は、基材上に積層される2つの電極およびサーミスタ部の概略分解上面図であり、(b)は、(a)のA-A’線に沿って見たセンサデバイスの概略部分断面図である。
図6】本発明のもう1つの実施形態におけるセンサデバイスの概略上面図である。
図7】本発明の1つの実施形態におけるセンサシステムの電気信号処理のフローを示すチャートである。
図8】本発明の1つの実施形態におけるセンサシステムの電気信号処理を説明する図であって、抵抗値の実測値(実線)およびフィルタ適用により分離された抵抗値の温度成分(点線)の時間に対するグラフである。
図9】本発明の1つの実施形態におけるセンサシステムの電気信号処理を説明する図であって、(a)は、センサデバイスが曝されている例示的な温度分布を示し、(b)は、センサデバイスに対して例示的な外力が印加された状態を示し、(c)は、(a)および(b)のB-B’に沿った線上での、抵抗値の実測値(実線)およびフィルタ適用により分離された抵抗値の温度成分(点線)の位置に対するグラフである。
図10】本発明の1つの実施形態における物品の概略図であって、(a)は物品の概略斜視図、(b)は(a)のC-C’線に沿って見た概略断面図である。
図11】本発明の改変例におけるセンサデバイスを説明する図であって、PTCのサーミスタ特性を模式的に示すグラフである。
図12】実施例1のセンサデバイスにて測定された抵抗値の変化率を時間に対してプロットしたグラフである。
図13】実施例2のセンサデバイスにて測定された抵抗値の変化率を時間に対してプロットしたグラフである。
図14】参考例1のセンサデバイスにて測定された抵抗値の変化率を時間に対してプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述するが、本発明はこれら実施形態に限定されない。
【0014】
(実施形態1)
本実施形態は、櫛形電極を有するセンサデバイスに関する。
【0015】
図1に模式的に示すように、本実施形態のセンサデバイス20は、基材1と、基材1上に配置されたセンサ素子10とを含み、センサ素子10は、2つの電極3a、3bと、2つの電極3a、3b間に配置されるサーミスタ部5とを含む。サーミスタ部5は、後述するように、導電性または半導体の粒子および有機高分子成分から形成される。センサ素子10は、2つの電極3a、3b間にて測定される抵抗値に基づいて、センサ素子10に印加された外力およびセンサ素子10が曝されている温度を検知する。
【0016】
基材1は、任意の適切な材料からなっていてよく、例えば樹脂やガラスなどから構成され得、いわゆる樹脂フィルムまたはフレキシブル基板(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ナイロン、および任意の適切なアイオノマー等から構成され得るフィルムまたはフレキシブル基板)、ガラス基板、繊維強化プラスチック、ガラスクロスなどであり得る。基材1は、可撓性を有すること、例えばフィルムまたはフレキシブル基板であることが好ましく、これにより、後述するように外力を検知し易くなる。基材1それ自体は、電気絶縁性であり、その上に、センサ素子10の抵抗値が測定可能なように配線(図示せず)が形成されている。基材1は、単層または多層構造であってよく、必要に応じて、配線と基材1との間に接着層が設けられ得る。
【0017】
本実施形態において、センサ素子10は、基材1上に配置され、かつ、2つの電極3a、3bおよびサーミスタ部5を含んで構成される。2つの電極3a、3bは、対向電極を構成し、これら電極3a、3b間にサーミスタ部5が配置され、好ましくは2つの電極3a、3bの少なくとも対向部分がサーミスタ部5に埋設される。サーミスタ部5の厚さtは、例えば約200μm以下、代表的には約5μm以上約50μm以下であり得る。
【0018】
本実施形態においては、2つの電極3a、3bは、図1に模式的に示すような櫛形電極である。より詳細には、電極3a、3bがそれぞれ櫛形を有し、これらの櫛歯が互い違いに配置され、電極3a、3bの引き出し部を除いてサーミスタ部5に埋設されている。電極3a、3bの高さh、櫛歯の数、櫛歯の幅w、櫛歯の対向部分間の距離d、電極3a、3bの上端部とサーミスタ部5の表面との間の距離(以下、本明細書において単に「被覆厚さ」とも言う)t(=t-h)、電極3aおよび3bが成す長辺101および短辺102の大きさ等は、センサデバイス20の用途に応じて適宜選択され得る。例えば、電極3a、3bの高さhは、代表的には1μm以上50μm以下であり得る。2つの電極3a、3bは、それぞれセンサ素子10から引き出されて基材1上に形成された配線(図示せず)と接続される。電極3a、3bの引き出し方向は、図1(a)および(b)に示すように反対側であっても(図示する態様では、上面から見た場合に、電極3a、3bはそれぞれ右側および左側に引き出されているが、これに限定されず、例えば上側および下側に引き出されていてもよい)、同じ側であってもよく(例えば、上面から見た場合に、電極3a、3bの双方が上側および下側のいずれか同じ側に引き出されていてもよい)、あるいは、電極3a、3bの一方または双方が、基材1中に設けられたビアホール導体などを介して基材1の反対側の面(図示する態様では下面)に引き出されていてもよい。2つの電極3a、3bおよび配線は、基材1上に同時に形成された回路パターンであってよいが、これに限定されない。
【0019】
しかしながら、本発明はかかる実施形態に限定されず、2つの電極は、互いに対向し、これらの間にサーミスタ部が配置される限り、任意の適切な形態であってよい。
【0020】
図2に模式的に示すように、サーミスタ部5は、導電性または半導体の粒子7および有機高分子成分9から形成される。導電性または半導体の粒子7は、フィラーとして理解され(以下、本明細書において単に「フィラー」とも言う)、有機高分子成分9中に分散して存在し得る。フィラー7および有機高分子成分9は、センサデバイスの用途(例えば想定される使用温度範囲および外力の印加態様等)に応じて、電極3a、3b間にて測定される抵抗値Rが温度Tおよび外力Fにより変化するように適宜選択され得る。
【0021】
本実施形態のセンサ素子10は、例えば次のようにして作製され得る。まず、基材1および導電性ペースト(いわゆる銀ペーストや銅ペースト等であってよいが、これに限定されない)を準備する。また、サーミスタペーストを、少なくともフィラー7および有機高分子成分9を所定の割合で混合することにより準備する。そして、基材1の上に、導電性ペーストおよびサーミスタペーストをそれぞれ所定のパターンで順次印刷する。必要に応じて熱処理を行ってよく、好ましくは導電性ペーストを印刷した後に1回目の熱処理を行い得、次いで、サーミスタペーストを印刷した後に2回目の熱処理を行い得る。これにより、導電性ペーストから電極3a、3bが形成され、サーミスタペーストからサーミスタ部5が形成されて、センサ素子10が作製される。あるいは、導電性物質(例えば銀、銅など)を基材1上に蒸着させて、電極3a、3bを形成してもよい。あるいは、いわゆる片面銅張シートなどの、基材1上の全面に金属箔が張りつけられている基材を用意し、その金属箔の不要部分をエッチングすることによって、電極3a、3bを形成してもよい。
【0022】
本実施形態のセンサデバイス20は、2つの電極3a、3b間にて測定される抵抗値Rに基づいて、センサ素子10に印加された外力Fおよびセンサ素子10が曝されている温度(ひいてはサーミスタ部5の温度)Tを検知する。抵抗値Rの測定方法は、特に限定されず、例えば2つの電極間に所定の電流を流して、それらの間に生じる電圧を測定することにより、あるいは、2つの電極間に所定の電圧を印加して、それらの間を流れる電流を測定することにより、実施され得る。
【0023】
温度Tによる抵抗値Rの変化は、サーミスタ部5の材料特性により決定され得る。サーミスタ部5の温度Tにより抵抗値R(より詳細には電気抵抗率、本明細書において同様)が変化する性質は、サーミスタ特性(R-T特性)として知られており、サーミスタ部5は、負の温度係数(NTC)を有するものおよび正の温度係数(PTC)を有するもののいずれであってもよい。模式的には、外力Fがゼロの場合、NTCは図3(a)に示されるようなR-T特性を示し、PTCは図3(b)に示されるようなR-T特性を示し得る。
【0024】
負の温度係数(NTC)を有するサーミスタ部5の場合、例えば、フィラー7としては、温度上昇により抵抗値が低下する半導体の粒子が使用され得、有機高分子成分9としては、任意の適切な1種または2種以上の有機高分子(用語「有機高分子」は、ポリマーおよび樹脂を包含する)が、場合により他の材料と共に、使用され得る。かかるサーミスタ部のサーミスタ特性(R-T特性)は、サーミスタ部5におけるフィラー7の含有割合(体積割合)を変化させることにより調整可能である。例えば、フィラー7の含有割合(体積割合)をより大きくすることにより、図3(a)に示されるようなR-T特性をより下方に(抵抗値Rがより小さくなる方向に)シフトさせることができる。
【0025】
より詳細には、国際公開第2017/022373号および国際公開第2018/13899号等を参照することができ、これらの開示内容は参照により本明細書に援用される。半導体の粒子は、Mn、NiおよびFeを含むスピネル型半導体磁器組成物の粉末であってよい。かかる半導体磁器組成物の粉末において、MnとNiとのモル比率は85/15≧Mn/Ni≧65/35であり、かつMnおよびNiの総モル量を100モル部としたとき、Feの含有量は30モル部以下であり得る。半導体磁器組成物の粉末は、X線回折パターンの29°~31°付近に極大値を有するピークを有し、該ピークの半値幅は0.15以上であり得る。上記半導体磁器組成物の粉末は、好ましくは、Co、TiおよびAlからなる群から選択される1種以上を更に含み得、MnおよびNiの総モル量を100モル部としたとき、Co、TiおよびAlの含有量の合計は、2.0モル部以上60モル部以下であり得る。上記半導体磁器組成物の粉末の平均粒径は、例えば2μm以下であり得、その比表面積は、例えば2m/g以上12m/g以下であり得る。サーミスタ部における半導体磁器組成物の粉末の体積割合は、30vol%以上70vol%以下であることが好ましい。有機高分子成分は、熱硬化性樹脂を含み得、好ましくは熱可塑性樹脂を更に含み得る。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂からなる群から選択される1以上の樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、硬化剤未添加のエポキシ樹脂、硬化剤未添加のフェノキシ樹脂、ポリエステルおよびポリ酢酸ビニルからなる群から選択される1以上の樹脂を用いることができる。
【0026】
正の温度係数(PTC)を有するサーミスタ部5の場合、例えば、フィラー7としては、ニッケル、カーボンブラックなどの導電性の粒子が使用され得、有機高分子成分9としては、結晶性ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクトンなどの熱膨張性有機高分子成分が使用され得る。
【0027】
サーミスタ部5は、負の温度係数(NTC)を有するもののほうが、温度上昇により抵抗値が比較的、線形性を確保しながら低下するため(図3(a)参照)、温度を高精度で検知(または計測)するのに好適に利用され得る。正の温度係数(PTC)を有するものは、温度上昇に対してある温度を境に抵抗値が急激に上昇するものが多く(図3(b)参照)、温度を検知(または計測)するのに利用可能であるが、特定温度を検知するのに好適に利用され得る。
【0028】
外力Fによる抵抗値Rの変化は、サーミスタ部5への外力Fの印加により、サーミスタ部5に応力(または歪み)が生じることによりもたらされ得る。模式的には、温度Tが一定の場合、図4を参照して、測定される抵抗値Rは、外力Fが印加されていないときは温度Tに応じて一定であり得るが、外力Fが印加されると変化し(図4には外力Fにより抵抗値Rが減少する場合を例示的かつ模式的に示しているが、これに限定されない)、外力Fが除去されると元の抵抗値に戻り得る。抵抗値の変化は、サーミスタ素子に印加される外力Fの強度に応じて異なり得る(本明細書において、抵抗値の応力特性またはR-F特性とも言う)。
【0029】
本発明はいかなる理論によっても拘束されないが、本実施形態(櫛形電極)では、サーミスタ部5に外力F(例えば図1(c)参照)が印加されると、サーミスタ部5内に応力(または歪み)が生じ、サーミスタ部5が変形して、電極3a、3b間の距離dが変化すること(図1(c)参照)、フィラー7間の距離s(図2参照)が変化すること、および/または、本実施形態のように櫛形電極3a、3bがサーミスタ部5に埋設されている場合には被覆厚さt図1(c)参照)が変化することによって、電極3a、3b間の抵抗値Rが変化すると考えられる。
【0030】
外力Fとして押圧力を印加したとき、電極3a、3b間の距離dは大きくまたは小さくなり得、フィラー7間の距離は小さくなり得、および/または、被覆厚さtは小さくなり得る。特に、本実施形態(櫛形電極)では、基材1が(例えばガラス等の)比較的硬い場合に外力Fとして押圧力を印加したときには、フィラー7間の距離が小さくなることによる影響が大きく、サーミスタ部5のパーコレーション(または導電パス)が変化して、抵抗値が低くなる傾向がある。他方、基材1が(例えばPET等の)比較的柔らかい(または可撓性である)場合に外力Fとして押圧力を印加したときには、基材1が変形して電極3a、3b間の距離dが大きくなることによる影響が大きく、抵抗値が高くなる傾向がある。
【0031】
よって、センサ素子10の2つの電極3a、3b間にて測定される抵抗値Rは、温度Tおよび外力Fに依存して変化し、式R=f(T,F) (式中、fは任意の関数)と表現可能であることが理解される。
【0032】
抵抗値Rにおいて生じる変化は、温度Tの変動による場合と、外力Fの変動による場合とで異なる挙動を示すため、抵抗値Rにおける変化を、温度Tの変動によるものと、外力Fの変動によるものとに分離することができる。かかる分離は、抵抗値Rの挙動を、温度Tの変動による場合および外力Fの変動による場合(ならびに要すればそれらの複合による場合)のそれぞれについて解析および/または学習すること、更に該当する場合には、センサ素子10の特定の用途において観測され得る抵抗値Rの挙動をモデリング(類型化)すること等によって、任意の適切な態様で実施され得る。上記の式表現によれば、抵抗値R=f(F、T)を外力成分R=f(F)と温度成分R=f(T)とに分離することができる。かかる分離は、任意の適切な電気信号処理(例えば実施形態4参照)により行われ得るが、これに限定されない。
【0033】
よって、本実施形態のセンサデバイス20は、単一のセンサデバイスでありながら、抵抗値を外力成分と温度成分とに分離して、温度Tと外力F(または応力/歪み)の双方を検知することができ、換言すれば、温度センサとしての機能と外力(または応力/歪み)センサとしての機能を兼ね備えるものである。
【0034】
(実施形態2)
本実施形態は、面電極を有するセンサデバイスに関する。
【0035】
図5に模式的に示すように、本実施形態のセンサデバイス20は、基材1と、基材1上に配置されたセンサ素子10とを含み、センサ素子10は、2つの電極3c、3dと、2つの電極3c、3d間に配置されるサーミスタ部5とを含む。本実施形態のセンサデバイス20は、センサ素子10における2つの電極の形態が異なる点を除き、実施形態1と同様の構成を有し得る。本実施形態において特に説明のない限り、実施形態1における説明が本実施形態にも同様に当て嵌まり得る。
【0036】
本実施形態において、センサ素子10は、基材1上に配置され、かつ、2つの電極3c、3dおよびサーミスタ部5を含んで構成される。2つの電極3c、3dは、対向電極を構成し、これら電極3c、3d間にサーミスタ部5が配置され、好ましくは電極3c、サーミスタ部5、電極3dが積層される。サーミスタ部5の厚さtは、例えば約200μm以下の厚さであり得、厚さの下限は特に限定されないが、代表的には約0.1μm以上であり得る。
【0037】
本実施形態においては、2つの電極3c、3dは、図5に模式的に示すような面電極である。より詳細には、電極3c、3dが、基材1の表面に対して略平行で、かつ互いに対向する主面を有する。電極3c、3d間の距離d(図示する例では、サーミスタ部の厚さtに等しいが、これに限定されない)、電極3c、3dの互いに対向する部分の面積(より詳細には、かかる対向する部分の長辺111および短辺112の大きさ)等は、センサデバイス20の用途に応じて適宜選択され得る。2つの電極3c、3dは、センサ素子10から引き出されて基材1上に形成された配線(図示せず)と接続される。電極3c、3dの引き出し方向は、特に限定されない。配線は、基材1上に形成された回路パターンであってよいが、これに限定されない。
【0038】
図5に模式的に示すように、サーミスタ部5は、導電性または半導体の粒子(フィラー)7および有機高分子成分9から形成される。フィラー7および有機高分子成分9は、センサデバイスの用途(例えば想定される使用温度範囲および外力の印加態様等)に応じて、電極3c、3d間にて測定される抵抗値Rが温度Tおよび外力Fにより変化するように適宜選択され得る。
【0039】
本実施形態のセンサ素子10は、例えば次のようにして作製され得る。まず、基材1および導電性ペースト(いわゆる銀ペーストや銅ペースト等であってよいが、これに限定されない)を準備する。また、サーミスタペーストを、少なくともフィラー7および有機高分子成分9を所定の割合で混合することにより準備する。そして、基材1の上に、導電性ペースト、サーミスタペースト、導電性ペーストの順に、それぞれ所定のパターンで印刷する。必要に応じて熱処理を行ってよく、好ましくは導電性ペーストを印刷する毎およびサーミスタペーストを印刷する毎に1回熱処理を行い得る。これにより、導電性ペーストから電極3c、3dが形成され、サーミスタペーストからサーミスタ部5が形成されて、センサ素子10が作製される。
【0040】
本実施形態のセンサデバイス20は、2つの電極3c、3d間にて測定される抵抗値Rに基づいて、センサ素子10に印加された外力Fおよびセンサ素子10が曝されている温度(ひいてはサーミスタ部5の温度)Tを検知する。
【0041】
温度Tによる抵抗値Rの変化は、実施形態1と同様に、サーミスタ部5の材料特性により決定され得る。
【0042】
外力Fによる抵抗値Rの変化は、サーミスタ部5への外力Rの印加により、サーミスタ部5に応力(または歪み)が生じることによりもたらされ得る。
【0043】
本発明はいかなる理論によっても拘束されないが、本実施形態(面電極)では、サーミスタ部5に外力F(例えば図5(b)参照)が印加されると、サーミスタ部5内に応力(または歪み)が生じ、サーミスタ部5が変形して、電極3c、3d間の距離dが変化すること(図5(b)参照)、および/または、フィラー7間の距離s(図2参照)が変化することによって、電極3c、3d間の抵抗値Rが変化すると考えられる。
【0044】
外力Fとして押圧力を印加したとき、電極3c、3d間の距離dは小さくなり得、および/または、フィラー7間の距離は小さくなり得る。特に、本実施形態(面電極)では、基材1によらず、押圧力に対して、電極3c、3d間の距離dが小さくなることによる影響が大きく、抵抗値がより低くなる傾向がある。即ち、外力に対する抵抗値の変化率が顕著に大きい。
【0045】
よって、センサ素子10の2つの電極3c、3d間にて測定される抵抗値Rは、実施形態1と同様に、温度Tおよび外力Fに依存して変化し、式R=f(T,F) (式中、fは任意の関数)と表現可能であることが理解される。
【0046】
本実施形態のセンサデバイス20は、実施形態1と同様の効果を奏し得る。更に、本実施形態のセンサデバイス(面電極)によれば、実施形態1のセンサデバイス(櫛形電極)に比べて、外力に対する抵抗値の変化率が顕著に大きく、外力をより高い感度で検知することができる。
【0047】
(実施形態3)
本実施形態は、複数のセンサ素子が基材上に配置されているセンサデバイスに関する。
【0048】
図6に模式的に示すように、本実施形態のセンサデバイス20は、基材1と、基材1上に配置された複数のセンサ素子10a、10b、・・・とを含む。複数のセンサ素子10a、10b、・・・は、互いに独立した素子であり、それらの各々に対して互いに独立して抵抗値を測定することができる。
【0049】
基材1それ自体は、電気絶縁性であり、その上に、複数のセンサ素子10a、10b、・・・の各々に対して互いに独立して抵抗値を測定可能とするように配線(図示せず)が形成されている。基材1は、単層または多層構造であってよく、必要に応じて、配線と基材1との間に接着層が設けられ得る。
【0050】
複数のセンサ素子10a、10b、・・・の各々は、実質的に同様の構成を有していても、いなくてもよく、例えば実施形態1~2にて上述したセンサ素子10のいずれであってもよい。本実施形態において特に説明のない限り、実施形態1~2における説明が本実施形態にも同様に当て嵌まり得る。
【0051】
複数のセンサ素子10a、10b、・・・の総数は、2以上であれば特に限定されず、センサデバイス20の用途や必要な面積等に応じて適宜選択され得る。例えば、複数のセンサ素子10a、10b、・・・は、例えば5~50mmの間隔で配置され得る。
【0052】
複数のセンサ素子10a、10b、・・・は、基材1上にアレイ状に配置されていることが好ましい。「アレイ状」とは、複数のセンサ素子10a、10b、・・・が規則的に整列して配置されていることを意味する。これにより、複数のセンサ素子10a、10b、・・・の各々の位置を容易に把握することができ、更に、温度および外力(または圧力)の各分布を推定することができる。例えば、図6に模式的に示すように、複数のセンサ素子10a、10b、・・・、が、基材1上に二次元マトリクス状に配置されていることが好ましい。「二次元マトリクス状」とは、複数のセンサ素子10a、10b、・・・が二次元的に行および列を成して所定の間隔で配置されていることを意味する。これにより、二次元的な平面に亘って略均等な精度で、温度および外力を検知すること、更に、温度および外力(または圧力)の各面分布を推定することができる。上記所定の間隔は行方向および列方向で同じ(即ち格子点状)であっても、異なっていてもよい。上記所定の間隔がより小さいほど、より高い精度で、温度および外力を検知すること、更に、温度および外力(または圧力)の各面分布を推定することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、複数のセンサ素子10a、10b、・・・の位置が把握可能である限り、複数のセンサ素子10a、10b、・・・は基材1上の任意の適切な位置に配置され得る。
【0053】
複数のセンサ素子10a、10b、・・・の各々において、2つの電極間にて測定される抵抗値Rは、実施形態1~2と同様に、温度Tおよび外力Fに依存して変化し、式R=f(T,F) (式中、fは任意の関数)と表現可能であることが理解される。即ち、本実施形態のセンサデバイス20によれば、複数のセンサ素子10a、10b、・・・の各々に対して抵抗値R、R、・・・が互いに独立して測定されるので、R=f(T,F)、R=f(T,F)、・・・という複数の式が得られる。
【0054】
本実施形態のセンサデバイス20は、実施形態1~2と同様の効果を奏し得る。更に、複数のセンサ素子10a、10b、・・・の各々について把握されている位置の情報と組み合わせることによって、抵抗値Rにおける変化を、温度Tの変動によるものと、外力Fの変動によるものとに分離することも可能となる。
【0055】
更に、本実施形態のセンサデバイス20によれば、複数のセンサ素子10a、10b、・・・がアレイ状に配置されているので、温度および外力(または圧力)の各分布を推定することができる。加えて、本実施形態のセンサデバイス20によれば、複数のセンサ素子10a、10b、・・・が好ましくは二次元マトリクス状に配置されているので、二次元的な平面に亘って略均等な精度で、温度および外力を検知すること、更に、温度および外力(または圧力)の各面分布を推定することができる。
【0056】
(実施形態4)
本実施形態は、センサデバイスを備えるセンサシステムに関する。
【0057】
図7に模式的に示すように、本実施形態のセンサシステム30は、センサデバイス20と、フィルタ21と、処理部23とを含み、必要に応じて表示部25を更に含み、この順に電気信号が受け渡されるようにこれらが電気接続されて構成される。
【0058】
センサデバイス20は、本発明のセンサデバイスであり、実施形態1~3にて上述したセンサデバイスと同様であり得る。本実施形態において特に説明のない限り、実施形態1~3における説明が本実施形態にも同様に当て嵌まり得る。また、センサデバイス20は、実施形態5にて後述するように被検知物体に接触して配置された状態で使用され得るが、これに限定されず、センサ素子に印加された外力およびセンサ素子が曝されている温度を検知する限り、任意の適切な態様で使用され得る。
【0059】
センサデバイス20において、センサ素子10に対して抵抗値Rが測定される。センサデバイス20において、複数のセンサ素子10a、10b、・・・が存在する場合には、これらの各々に対して抵抗値R、R、・・・が互いに独立して測定される。以下、かかる抵抗値R(R、R、・・・である場合も含む)の測定値を、本明細書において単に「実測値」とも言う。抵抗値Rは、経時的に測定してよく(代表的には一定の時間間隔で測定され得るが、これに限定されず、例えば連続的な時間に亘って測定され得)、あるいは、非経時的に任意の適切なタイミングで測定してもよい。このようにして得られる抵抗値Rの実測値の電気信号は、時間(1個または複数のセンサ素子を用いて経時的に測定する場合の時間に対応する)および/または位置(複数のセンサ素子を用いて経時的または非経時的に測定する場合の各位置に対応する)の関数として理解され得る。
【0060】
フィルタ21は、センサデバイス20で得られた抵抗値Rの実測値の電気信号から、外力成分Rおよび温度成分Rを抽出する。概略的には、抵抗値R=f(F、T)が外力成分R=f(F)と温度成分R=f(T)とに分離される。かかるフィルタ21は、例えばローパスフィルタであってよく、複数のセンサ素子が存在する場合には、2次元ローパスフィルタであってよい。
【0061】
センサ素子の用途にもよるが、1つの例として、センサ素子が曝され得る温度は、時間に対して比較的緩やかに変動するのに対して、センサ素子に印加され得る外力(外力は通常、ゼロであっても、ゼロでなくてもよい)は、時間に対して比較的急峻に変化することが想定される場合について説明する。この場合、ある1個のセンサ素子を用いて抵抗値Rを経時的に測定して得られる実測値において、時間に対して緩やかな変動は温度Tの変動によるものと解され、時間に対して急峻な変動は外力Fの変動によるものと解され、これらを分離する閾値が、任意の適切な方法により予め設定され得る。そして、センサデバイス20の使用時において、1個のセンサ素子を用いて抵抗値Rを経時的に測定して得られる実測値(時間の関数である)の電気信号をローパスフィルタに入力すると、ある一定基準を超える時間的に急峻な変化を示す電気信号は減衰し、かかる変化が該基準以下の電気信号が出力される。フィルタ適用後の電気信号(出力)を抵抗値の温度成分であるとみなし、元の実測値から該温度成分を差し引いたものを抵抗値の外力成分であるとみなす(これにより得られる温度成分および外力成分の電気信号は、時間の関数となる)。例えば図8に示すように、温度がt~tの期間で緩やかに上昇し、t以降の期間で実質的に一定であり、外力Fの印加がtにて開始されてtにて終了し、外力Fの印加がtにて開始されてtにて終了する場合、抵抗値Rの実測値は実線のようになり、ローパスフィルタ適用により得られる抵抗値の温度成分は点線のようになる(図中、実線および点線は直線部にて重複し得るが、見易いように少しずらして示している。図示していないが、抵抗値の外力成分は、元の実測値から該温度成分を差し引いて求められる)。なお、複数のセンサ素子が存在する場合には、このような抵抗値Rの実測値の電気信号から、外力成分RFおよび温度成分RTを抽出する操作を、各センサ素子に対して実施し得る(これにより得られる温度成分および外力成分の電気信号は、時間および位置の関数となる)。しかしながら、本実施形態はこれに限定されず、例えば、抵抗値の実測値の電気信号をハイパスフィルタに入力して、フィルタ適用後の電気信号(出力)を抵抗値の外力であるとみなし、元の実測値から該温度成分を差し引いたものを抵抗値の温度成分であるとみなしてもよい。
【0062】
また、別の例として、センサ素子が曝され得る温度は、時間に対して比較的緩やかに変動するのに対して、センサ素子に印加され得る外力(外力は通常、ゼロであっても、ゼロでなくてもよい)は、時間に対して周期的に変化することが想定される場合は、その時間周期に応じたローパスフィルタを利用することを除いて、上記と同様にして、抵抗値Rの実測値の電気信号から、外力成分RFおよび温度成分RTを抽出することができる。
【0063】
更に、別の例として、センサ素子が曝され得る温度は、位置に対して比較的緩やかに変動するのに対して、センサ素子に印加され得る外力(外力は通常、ゼロであっても、ゼロでなくてもよい)は、位置に対して比較的急峻に変化する(換言すれば、局所的である)ことが想定される場合について説明する。この場合、複数のセンサ素子を用いて抵抗値R、R、・・・を各センサ素子の位置に対して測定して得られる実測値において、位置に対して(または空間的に)緩やかな変動は温度Tの変動によるものと解され、位置に対して急峻な変動は外力Fの変動によるものと解され、これらを分離する閾値が、任意の適切な方法により予め設定され得る。そして、センサデバイス20の使用時において、複数のセンサ素子を用いて抵抗値R、R、・・・を位置に対して測定して得られる実測値(位置の関数である)の電気信号を二次元ローパスフィルタに入力すると、ある一定基準を超える位置的に急峻な変化を示す電気信号は減衰し、かかる変化が該基準以下の電気信号が出力される。フィルタ適用後の電気信号(出力)を抵抗値の温度成分であるとみなし、元の実測値から該温度成分を差し引いたものを抵抗値の外力成分であるとみなす(これにより得られる温度成分および外力成分の電気信号は、位置の関数となる)。例えば図9(a)に示すように、温度が等温線(図中、点線にて示す)にて示されるより小さい円に向かって緩やかに上昇し、図9(b)に示すように、外力FおよびFが、センサデバイス20の検知面に対して互いに反対向きに局所的に印加される場合、抵抗値Rの実測値は、例えば図9(a)および(b)のB-B’に沿った線上では実線のようになり(適宜、隣接するセンサ素子の間の位置については、適宜、補間および/または補正されたものであり得る)、二次元ローパスフィルタ適用により得られる抵抗値の温度成分は点線のようになる(図示していないが、抵抗値の外力成分は、元の実測値から該温度成分を差し引いて求められる)。しかしながら、本実施形態はこれに限定されず、例えば、抵抗値の実測値の電気信号を二次元ハイパスフィルタに入力して、フィルタ適用後の電気信号(出力)を抵抗値の外力であるとみなし、元の実測値から該温度成分を差し引いたものを抵抗値の温度成分であるとみなしてもよい。
【0064】
以上のようにして、フィルタ21にて、抵抗値の実測値の電気信号から、外力成分および温度成分が抽出される。これにより得られた外力成分および温度成分の電気信号(時間および/または位置の関数)は、再び図7を参照して、処理部23に送られる。
【0065】
処理部23は、外力成分に基づいて外力の検知結果を得、および、温度成分に基づいて温度の検知結果を得るように機能する。より詳細には、処理部23はプロセッサを含み得、外力成分から外力の存否および外力が存在する場合にはその強度を、抵抗値の応力特性(R-F特性)に基づいて算出し、温度成分から温度を、サーミスタ特性(R-T特性)に基づいて算出する。R-F特性およびR-T特性は、使用するセンサデバイス20に応じて異なり得、これら特性に関するデータは、処理部23の内部または外部に存在し得るメモリに予め格納される。外力および温度の各検知結果から、それぞれ、外力および温度を推定でき、複数のセンサ素子が存在する場合には、外力および温度の分布、好ましくは面分布を推定できる。
【0066】
これにより得られた外力の検知結果および温度の検知結果は、必要に応じて、表示部25で表示され得る。表示部25は任意の適切なディスプレイ、モニタ等であり得る。
【0067】
よって、本実施形態のセンサシステム30は、センサデバイス20を備え、該センサデバイス20で測定される抵抗値を電気信号処理により外力成分と温度成分とに分離して、温度および外力を検知することができる。
【0068】
(実施形態5)
本実施形態は、センサデバイスまたはセンサシステムを備える物品に関する。
【0069】
図10に模式的に示すように、本実施形態の物品40は、センサデバイス20またはこれを含むセンサシステム30(図10に図示せず)と、被検知物体31とを含み、センサデバイス20が被検知物体31に接触して配置される。
【0070】
センサデバイス20は、本発明のセンサデバイスであり、実施形態1~3にて上述したセンサデバイスと同様であり得る。なお、図10においては、センサデバイス20が、センサ素子10として複数のセンサ素子10a、10b、・・・を含む場合を例示的に示しているが、センサ素子10は、1個であってもよい。本実施形態において特に説明のない限り、実施形態1~3における説明が本実施形態にも同様に当て嵌まり得る。
【0071】
あるいは、センサデバイス20を含むセンサシステム30は、本発明のセンサシステムであり、実施形態4にて上述したセンサシステムと同様であり得る。本実施形態において特に説明のない限り、実施形態4における説明が本実施形態にも同様に当て嵌まり得る。
【0072】
被検知物体31は、その温度および外力(本明細書において「被検知物体の外力」とは、被検知物体から生じる外力、被検知物体に印加される外力およびこれらの組合せのいずれであってもよい。以下も同様とする)を検知したい任意の適切な物品であり得る。
【0073】
本実施形態の物品40において、被検知物体31の温度は、センサデバイス20のセンサ素子10(または10a、10b、・・・)に伝播し、センサデバイス20により被検知物体31の温度を検知することができる。また、本実施形態の物品40において、センサデバイス20のセンサ素子10(または10a、10b、・・・)に外力が印加されると、センサデバイス20により被検知物体31の外力を検知することができる。更に、複数のセンサ素子10a、10b、・・・が存在する場合には、被検知物体31の温度および外力(または圧力)の各々の分布、好ましくは面分布を推定することができる。
【0074】
よって、本実施形態の物品40によれば、単一のセンサデバイス20によって被検知物体31の温度および外力を検知することができる。本実施形態の物品40が、センサデバイス20を含むセンサシステム30を含む場合、センサデバイス20で測定される抵抗値を電気信号処理により外力成分と温度成分とに分離して、温度および外力を検知することができる。
【0075】
本実施形態を限定するものではないが、被検知物体31の温度およびそれから生じる外力を検知したい場合、センサデバイス20は、好ましくはセンサ素子10(または10a、10b、・・・)が、被検知物体31の表面に直接に、または該表面が導電性である場合には電気絶縁性の層または部材を解して接触する(好ましくは密着する)ようにして配置され得る。この場合、センサデバイス20のセンサ素子10(または10a、10b、・・・)の基材1と反対側の表面が検知面を構成する。例えば、何らかの原因により、被検知物体31が、センサデバイス20と接触している表面において部分的に変形した場合、被検知物体31の該変形部分から、これと接触しているセンサ素子10に外力が印加されるので、被検知物体31の変形を検知することができる。センサ素子10(または10a、10b、・・・)は、被検知物体31の表面に、例えば接着材などにより貼付され得るが、これに限定されない。
【0076】
被検知物体31は、例えば電池セル、特に充放電を繰り返して使用される二次電池であってよい。かかる場合、電池セルの温度および変形(場合により、温度分布および歪み分布)、例えば温度異常(過熱)および異常変形を検知することができる。電池セル(二次電池)の形態は特に限定されないが、例えばラミネート型(任意の電解質、例えばゲルポリマーや電解液などが使用され得る)、缶型(角形、円筒形等を含み得る)などであってよい。
【0077】
本実施形態の物品40は、複数の被検知物体31を含み、その各々にセンサデバイス20が接触して配置されていてもよい。例えば、本実施形態の物品は、複数の電池セル(単電池)を接続したバッテリスタック(組電池)のためのバッテリマネージメントシステム(BMS)と組み合わせて使用され得、これにより、複数の電池セルの各々について、温度および変形(より詳細には温度分布および歪み分布)を検知することができ、バッテリスタックをより安全かつ長寿命で使用することが可能となる。
【0078】
しかしながら、本実施形態の物品は、被検知物体として電池セルを使用する場合に限定されない。例えば、誘導加熱調理器において、被加熱物(例えば鍋等)が載置されるトッププレートの温度および外力を検知するために使用され得、これにより、トッププレートに載置された被加熱物の大きさおよび温度を把握して、無駄な領域を加熱することなく、被加熱物を効率的にかつ適切な温度で調理することができる。また例えば、ヒータ機能を有する便座、シート、マット、カーペットなどにおいて、ユーザが利用する表面部分の温度および外力を検知するために使用され得、これにより、ユーザの存在およびユーザが存在している領域の温度を把握して、効率的にかつ適切な温度でヒータ機能を制御することができ、また、異常変形を検知した場合には、ヒータ機能を停止することもできる。また例えば、液体が入れられるタンクにおいて、液体と接触する内表面の温度および外力(液体からの圧力の有無すなわち境界)を検知するために使用され得、これにより、液体の温度および液体表面の位置(液面レベル)を計測することができる。
【0079】
(改変例)
本改変例は、ヒータ機能を有するセンサデバイス、またはかかるヒータ機能を有するセンサデバイスを備えるセンサシステムおよび物品に関する。本実施形態において特に説明のない限り、実施形態1~5における説明が本改変例にも同様に当て嵌まり得る。
【0080】
上述した実施形態1~3のセンサデバイスは、2つの電極間にて測定される抵抗値に基づいて、センサ素子に印加された外力およびセンサ素子が曝されている温度(ひいてはサーミスタ部の温度)を検知する。これに対して、本改変例のセンサデバイスは、ヒータ機能を有し、かつ、センサ素子に印加された外力を検知する。
【0081】
本改変例のセンサデバイスは、サーミスタ部が正の温度係数(PTC)を有するもの(PTCサーミスタ)であることを除いて、実施形態1~3のセンサデバイスと同様の構成を有し得る。
【0082】
即ち、本改変例のセンサデバイスは以下のように記述され得る:
基材と、該基材上に配置されたセンサ素子とを含むセンサデバイスであって、
該センサ素子が、
2つの電極と、該2つの電極間に配置され、導電性または半導体の粒子および有機高分子成分から形成され、かつ正の温度係数を有するサーミスタ部と
を含み、および
サーミスタ部に電流または電圧を適用することにより発熱可能であり、該2つの電極間にて測定される抵抗値に基づいて、該センサ素子に印加された外力を検知する、センサデバイス。
【0083】
かかるセンサデバイスは、サーミスタ部に電流または電圧を適用することにより発熱可能であり、即ち、ヒータ機能を有し、かつ、センサ素子に印加された外力を検知する。より詳細には、本改変例のセンサデバイスは、外力が印加されない状態(外力Fがゼロの場合)では、図11に実線で示すPTCのサーミスタ特性(R-T特性)を示すが、外力が印加されると、このR-T特性(基準特性)から抵抗値が変化し、例えば図11の点線で示す閾値を超え得る。よって、抵抗値Rが閾値を超えて変化した場合に、外力Fの変動によるものと判断できる。そして、実施形態1~3にて上述したものと同様の理由により、抵抗値Rにおける変化を、温度Tの変動によるものと、外力Fの変動によるものとに分離することができ、よって、抵抗値R=f(F、T)から外力成分R=f(F)を分離して得ることができる。
【0084】
本改変例のセンサシステムは、以下のように記述され得る:
本改変例のセンサデバイスと、
サーミスタ部に適用する電流または電圧を制御する制御部と、
前記センサ素子に対して測定される前記抵抗値の電気信号から、外力成分を抽出するフィルタと、
該外力成分に基づいて外力の検知結果を得る処理部と
を含み、該制御部は、該外力の検知結果に基づいて、サーミスタ部に適用する電流または電圧を更に制御する、センサシステム。
【0085】
かかる本改変例のセンサシステムによれば、センサデバイスをヒータとして機能させることができ、その間に外力が検知されると、ヒータ機能を制御することができる。
【0086】
本改変例の物品は、以下のように記述され得る:
本改変例のセンサデバイスまたはセンサシステムと、
被検知物体と
を含み、該センサデバイスが該被検知物体に接触して配置される、物品。
【0087】
被検知物体は、例えば電池セル、特に充放電を繰り返して使用される二次電池であってよい。かかる場合、電池セルの変形(場合により、歪み分布)、例えば異常変形を検知すると共に、ヒータ機能により、電池セルをプリヒーティングしたり、寒冷地などにおいて電池セルを加温したりすることができる。
【0088】
本改変例の物品は、複数の電池セル(単電池)を接続したバッテリスタック(組電池)のためのバッテリマネージメントシステム(BMS)と組み合わせて使用され得、これにより、複数の電池セルの各々について、変形(場合により、歪み分布)を検知すると共に電池セルを加熱すること(好ましくは加熱を制御すること)ができ、バッテリスタックをより安全かつ長寿命で使用することが可能となる。
【0089】
しかしながら、本実施形態の物品は、被検知物体として電池セルを使用する場合に限定されない。例えば、便座、シート、マット、カーペットなどにおいて、ヒータ機能を付与すると共に、ユーザが利用する表面部分の外力を検知するために使用され得、これにより、ヒータ機能を制御して、ユーザの存在およびユーザが存在している領域を、効率的にかつ適切にヒーティングすることができ、また、異常変形を検知した場合には、ヒータ機能を停止することもできる。
【実施例
【0090】
(実施例1)
本実施例は、実施形態1のセンサデバイス(櫛形電極)に関する。
【0091】
実施形態1にて上述したセンサデバイス20(櫛形電極、図1参照)を以下の条件で作製した。本実施例のセンサデバイス20において、サーミスタ部5は負の温度係数(NTC)を有するものとした。
基材1の材質:ガラス
基材1の厚さ:約0.7mm
電極3a、3bの材質:Agペースト焼成体
電極3a、3bの高さh:約10μm
電極3a、3bの幅w:約50μm
電極3a、3bの電極間距離d:約50μm
電極3aおよび3bが成す長辺101:約2.5mm
電極3aおよび3bが成す短辺102:約1.5mm
サーミスタ部5におけるフィラー7:Mn、NiおよびFe(より詳細には、Mn、Ni、FeおよびCo)を含むスピネル型半導体磁器組成物の粉末
サーミスタ部5におけるフィラー7の平均粒径:約1μm
サーミスタ部5における有機高分子成分9:フェノール樹脂
サーミスタ部5におけるフィラー7の含有割合:約46体積%
サーミスタ部5の厚さt:約30μm
サーミスタ部5の上面(被押圧面)寸法:長さ4.6mmおよび幅3.2mmの矩形
【0092】
より詳細には、図1を参照して、本実施例のセンサデバイス20を以下のようにして作製した。(フィラー7については、国際公開第2017/022373号の記載を参照した。)
まず、銀粒子を含む市販のAgペースト(TOYOCHEM社製のREXALPHAシリーズ)を、スクリーン印刷法により、基材1の上に印刷し、大気雰囲気下で130℃にて30分間熱処理して、図1(a)に示すような櫛形の電極3a、3bを形成した。基材1および電極3a、3bの詳細は上記の通りである。これにより、電極3a、3bが形成された基材1を準備した。
他方、サーミスタペーストを調製した。まず、セラミック素原料として、Mn、NiO、FeおよびCoの各粉末を、Mn:Ni:Fe:Coの割合が、70:30:20:8(mol%)(国際公開第2017/022373号に記載の例28に該当)となる組成で秤量して、原料混合物を得た。次いで、この原料混合物をボールミルに投入して、ジルコニアからなる粉砕媒体と共に十分に湿式粉砕した。粉砕した原料混合物を、730℃の温度で2時間熱処理して、半導体磁器組成物を得た。得られた半導体磁器組成物、純水、および直径2mmの玉石を1Lポリポットに投入し、ボールミル法により110rpmにて4時間粉砕した。粉砕後のスラリーと玉石とをメッシュで分離し、スラリーをホットプレート上に流し込んで水分を除去した。更にメッシュに通して粗粒を除去し、凝集体を解砕して整粒を行った。次いで、80℃の温度で24時間乾燥させて、半導体磁器組成物の粉末(平均粒径約1μm)を得た。この半導体磁器組成物の粉末は、XRD測定の結果、スピネル型結晶構造の(220)面に対応する29°~31°付近にピーク((220面)のピーク)を有し、該ピークの半値幅は、0.184であった。これにより得られた半導体磁器組成物の粉末は、Mn、Ni、FeおよびCoを含むスピネル型半導体磁器組成物の粉末であり、これをフィラー7として使用した。かかるフィラー7(半導体磁器組成物の粉末)と、有機高分子成分9(フェノール樹脂)と、溶剤(DPMA:ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート)とを乳鉢で混錬し、サーミスタペーストを得た。溶剤は、フィラー7および有機高分子成分9の合計重量の約25wt%の量を添加した。
上記で準備した電極3a、3bを形成した基材1に対して、このサーミスタペーストをスクリーン印刷法により印刷し、大気雰囲気下で80℃にて10分間乾燥させた後、150℃にて1時間熱処理して、図1(b)に示すようなサーミスタ部5を形成した。サーミスタ部5の詳細は上記の通りである。
これにより、本実施例のセンサデバイス20を作製した。
【0093】
そして、室温環境下にて、本実施例のセンサデバイス20におけるセンサ素子10から引き出された2つの電極3a、3b間に一定電流を流して、実質的に温度一定の条件で、それらの間の抵抗値を0~200秒の期間に亘って、一定の時間間隔で測定した。この測定期間のうち、最初の0~120秒間は外力を印加せず、その後10秒毎に外力の印加と除去とを繰り返した(即ち、120~130、140~150、160~170、180~190秒の各期間において外力を印加した)。外力の印加および除去は、シリコーンゴムから成る直方体の押圧部材(押圧面の寸法:長さ8.0mmおよび幅5.0mmの矩形)を支持部材にて握持し、基材1上に形成されたセンサ素子10の上面に対して、押圧部材を略垂直方向に押下して押圧力を印加する(または荷重を加える)こと、次いで、押圧部材を逆方向に戻すことにより実施した。
【0094】
これにより測定された抵抗値の変化率を時間に対してプロットしたグラフを図12に示す。図12から理解されるように、外力(押圧力)を印加した期間にほぼ対応して、抵抗値が約0.6%の変化率で低下し、外力を除去すると、元の抵抗値付近まで戻った。このことから、本実施例のセンサデバイス20は、外力を印加することにより抵抗値が変化することが確認された。
【0095】
(実施例2)
本実施例は、実施形態2のセンサデバイス(面電極)に関する。
【0096】
実施形態2にて上述したセンサデバイス20(面電極、図5参照)を以下の条件で作製した。本実施例のセンサデバイス20において、サーミスタ部5は負の温度係数(NTC)を有するものとした。
基材1の材質:PET
基材1の厚さ:約0.05mm
電極3c、3dの材質:Agペースト焼成体
電極3c、3dの電極間距離d:約15μm
電極3c、3dの対向する部分の長辺111:約8mm
電極3c、3dの対向する部分の短辺112:約5mm
サーミスタ部5におけるフィラー7:Mn、NiおよびFe(より詳細には、Mn、Ni、FeおよびCo)を含むスピネル型半導体磁器組成物の粉末
サーミスタ部5におけるフィラー7の平均粒径:約1μm
サーミスタ部5における有機高分子成分9:フェノール樹脂
サーミスタ部5におけるフィラー7の含有割合:約46体積%
サーミスタ部5の厚さt:約15μm
サーミスタ部5の上面(被押圧面)寸法:長さ8.0mmおよび幅5.0mmの矩形
【0097】
より詳細には、図5を参照して、本実施例のセンサデバイス20を以下のようにして作製した。
基材1上に、Agペーストを電極層3dに対応するパターンに印刷して、大気雰囲気下で130℃にて30分間熱処理を行った。次いで、サーミスタペーストをサーミスタ部5に対応するパターンに印刷して、大気雰囲気下で150℃にて1時間熱処理を行った。その上に、Agペーストを電極層3cに対応するパターンに印刷して、大気雰囲気下で130℃にて30分間熱処理を行った。Agペーストおよびサーミスタペーストは、実施例1と同様のものを使用し、基材1、電極3c、3dおよびサーミスタ部5の詳細は上記の通りである。
これにより、本実施例のセンサデバイス20を作製した。
【0098】
そして、室温環境下にて、本実施例のセンサデバイス20におけるセンサ素子10から引き出された2つの電極3a、3b間に一定電流を流して、実質的に温度一定の条件で、それらの間の抵抗値を0~約120秒の期間に亘って、一定の時間間隔で測定した。この測定期間のうち、最初の0~15秒間は外力を印加せず、その後10秒毎に外力の印加と除去とを繰り返した(即ち、15~25、35~45、55~65、75~85、95~105秒の各期間において外力を印加した)。外力の印加および除去は、実施例1と同様の押圧部材を支持部材にて握持し、基材1上に形成されたセンサ素子10の上面に対して、押圧部材を略垂直方向に押下して押圧力を印加する(または荷重を加える)こと、次いで、押圧部材を逆方向に戻すことにより実施した。
【0099】
これにより測定された抵抗値の変化率を時間に対してプロットしたグラフを図13に示す。図13から理解されるように、外力(押圧力)を印加した期間にほぼ対応して、抵抗値が約2~1%の変化率で顕著に低下し、外力を除去すると、元の抵抗値付近まで戻った。このことから、本実施例のセンサデバイス20は、外力を印加することにより、抵抗値が変化することが確認された。
【0100】
(参考例)
本参考例は、改変例のセンサデバイス(櫛形電極)に関する。
【0101】
改変例にて上述したセンサデバイスとして、実施形態1にて上述したセンサデバイス20(櫛形電極、図1参照)と同様の構成を有するものを作製した。ただし、本参考例のセンサデバイスにおいて、サーミスタ部は正の温度係数(PTC)を有するものとした。正の温度係数(PTC)を有する材料としては、正の温度係数(PTC)を示すように導電性フィラーと結晶性樹脂材料を適宜組み合わせた公知のものを用いることができる。この導電性フィラーとしては、例えば、カーボンやNi等を用いることができる。また、結晶性樹脂材料としては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン等を用いることができる。
【0102】
そして、室温環境下にて、本参考例のセンサデバイスにおけるセンサ素子から引き出された2つの電極間に電流を流してセンサ素子から発熱させながら、それら電極間の抵抗値を0~約120秒の期間に亘って、一定の時間間隔で測定した。この測定期間のうち、最初の0~15秒間は外力を印加せず、その後10秒毎に外力の印加と除去とを繰り返した(即ち、15~25、35~45、55~65、75~85、95~105秒の各期間において外力を印加した)。外力の印加および除去は、実施例1と同様の押圧部材を支持部材にて握持し、基材1上に形成されたセンサ素子10の上面に対して、押圧部材を略垂直方向に押下して押圧力を印加する(または荷重を加える)こと、次いで、押圧部材を逆方向に戻すことにより実施した。
【0103】
これにより測定された抵抗値の変化率を時間に対してプロットしたグラフを図14に示す。図14から理解されるように、外力(押圧力)を印加した期間にほぼ対応して、抵抗値が約1~0.5%の変化率で上昇し、外力を除去すると、元の抵抗値付近まで戻った。このことから、本参考例のセンサ素子は、外力を印加することにより、抵抗値が変化することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のセンサデバイスならびにこれを備える物品およびセンサシステムは、外力および温度を検知することが求められる幅広く様々な用途、例えばBMS、調理器具、ヒータ機能を有する便座等、液体が入れられるタンク、その他に利用可能である。
【0105】
本願は、2019年5月31日付けで日本国にて出願された特願2019-102308に基づく優先権を主張し、その記載内容の全てが、参照することにより本明細書に援用される。
【符号の説明】
【0106】
1 基材
3a、3b 電極(櫛形電極)
3c、3d 電極(面電極)
5 サーミスタ部
7 導電性または半導体の粒子(フィラー)
9 有機高分子成分
10、10a、10b、・・・ センサ素子
20 センサデバイス
21 フィルタ
23 処理部
25 表示部
30 センサシステム
31 被検知物体
40 物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14