(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】樹脂多層基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20220809BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20220809BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20220809BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/00 B
H01F41/04 C
H05K3/46 G
H05K3/46 Q
H05K1/16 B
(21)【出願番号】P 2021533989
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2020027688
(87)【国際公開番号】W WO2021015096
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2019133245
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉 麟太朗
(72)【発明者】
【氏名】荒木 啓介
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/5161(WO,A1)
【文献】特開2008-118059(JP,A)
【文献】特開2015-50422(JP,A)
【文献】特開平2-110907(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174133(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/79941(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 41/04
H05K 3/46
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の樹脂層を積層して形成される積層体と、
前記複数の樹脂層のうち3以上の樹脂層にそれぞれ形成される複数のコイル導体パターンを含んで構成され、前記複数の樹脂層の積層方向に巻回軸を有するコイルと、
を備え、
前記複数のコイル導体パターンは、第1コイル導体パターンと、前記積層方向に前記第1コイル導体パターンに隣接して配置され、前記第1コイル導体パターンよりも線幅の太い幅広部を有する複数の第2コイル導体パターンと、を有し、
前記幅広部は、前記積層方向から視て、隣接する前記第1コイル導体パターンに重なる重なり部と、隣接する前記第1コイル導体パターンに重ならない非重なり部と、を有し、
前記複数の第2コイル導体パターンのうち、
少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記積層方向における一方側または両側に、前記第1コイル導体パターンが配置され、前記少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記非重なり部は、前記重なり部よりも
、前記少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記積層方向における一方側に配置された前記第1コイル導体パターンに前記積層方向に近接するように湾曲し、
前記複数の第2コイル導体パターンのうち、前記積層方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンの非重なり部は、前記積層方向から視て、前記第1コイル導体パターンに対して、前記第2コイル導体パターンの径方向において互いに逆方向に突出している、樹脂多層基板。
【請求項2】
前記積層体は、前記積層方向に直交する主面を有し、
前記複数の第2コイル導体パターンの1つは、前記複数のコイル導体パターンのうち、前記積層方向において最も前記主面寄りに位置する最外層側コイル導体パターンであり、
前記最外層側コイル導体パターンの前記非重なり部は、内層側に位置する他のコイル導体パターンに近接するように湾曲している、請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項3】
前記積層体に形成される外部電極を備え、
前記複数の第2コイル導体パターンのうち、前記積層方向において最も前記外部電極寄りに位置する第2コイル導体パターンの前記幅広部は、前記積層方向から視て、前記外部電極に重なる電極重なり部と、前記外部電極に重ならない電極非重なり部と、を有し、
前記電極非重なり部は、前記電極重なり部よりも前記外部電極に近接するように湾曲している、請求項2に記載の樹脂多層基板。
【請求項4】
前記主面は、互いに対向する第1主面および第2主面を有し、
前記複数の第2コイル導体パターンは、
前記複数のコイル導体パターンのうち、前記積層方向において最も前記第1主面寄りに位置する第1主面側コイル導体パターンと、
前記複数のコイル導体パターンのうち、前記積層方向において最も前記第2主面寄りに位置する第2主面側コイル導体パターンと、を有し、
前記第1主面側コイル導体パターンの非重なり部、および前記第2主面側コイル導体パターンの非重なり部は、それぞれ内層側に位置する前記他のコイル導体パターンに近接するように湾曲している、請求項2に記載の樹脂多層基板。
【請求項5】
前記複数のコイル導体パターンは、それぞれ2ターン以上のスパイラル状である、請求項1から4のいずれかに記載の樹脂多層基板。
【請求項6】
前記第1コイル導体パターンと前記複数の第2コイル導体パターンとは、前記積層方向に交互に配置されている、請求項1から5のいずれかに記載の樹脂多層基板。
【請求項7】
第1コイル導体パターンと、前記第1コイル導体パターンよりも線幅の太い幅広部を有する複数の第2コイル導体パターンとを有する複数のコイル導体パターンを、複数の樹脂層のうち3以上の樹脂層にそれぞれ形成する、コイル導体形成工程と、
前記コイル導体形成工程の後に、前記複数の樹脂層を積層することにより、前記複数の第2コイル導体パターンの前記幅広部が、前記複数の樹脂層の積層方向から視て前記第1コイル導体パターンに重なる重なり部と、前記第1コイル導体パターンに重ならない非重なり部とに分けられ、且つ、前記積層方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンの非重なり部を、前記積層方向から視て、前記第1コイル導体パターンに対して、前記第2コイル導体パターンの径方向において互いに逆方向に突出した状態に
し、且つ、前記複数の第2コイル導体パターンのうち、少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記積層方向における一方側または両側に、前記第1コイル導体パターンを配置した状態にする、積層工程と、
前記積層工程の後に、積層した前記複数の樹脂層を熱圧着して積層体を形成するとともに、前
記少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記非重なり部を、前記重なり部よりも
、前記少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記積層方向における一方側に配置された前記第1コイル導体パターンに前記積層方向に近接するように湾曲させる、積層体形成工程と、
を備える、樹脂多層基板の製造方法。
【請求項8】
前記積層工程の前に、前記複数の樹脂層のいずれかに、所定の形状の開口を形成する、開口形成工程を備え、
前記積層工程は、前記積層方向から視て、前記非重なり部に前記開口が重なるように前記複数の樹脂層を積層する工程を含む、請求項7に記載の樹脂多層基板の製造方法。
【請求項9】
前記開口は貫通孔であり、
前記積層工程は、少なくとも1つの樹脂層が、前記非重なり部と前記開口との間に挟まれるように、前記複数の樹脂層を積層する工程を含む、請求項8に記載の樹脂多層基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の樹脂層にそれぞれコイル導体パターンが形成された樹脂多層基板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の樹脂層の積層体と、この積層体に形成される複数のコイル導体パターンを含んで構成され、積層方向に巻回軸を有したコイルと、を備える樹脂多層基板が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、他のコイル導体パターンよりも線幅の太い幅広部を設けたコイル導体パターンを備える樹脂多層基板が開示されている。上記樹脂多層基板の幅広部は、積層方向から視て、他のコイル導体パターンに重ならない非重なり部を有しており、この非重なり部が他のコイル導体パターンに近接するように湾曲している。この構成によれば、熱圧着時(積層体を形成する際)の他のコイル導体パターン付近の樹脂の流動が、湾曲した非重なり部によって抑制されるため、熱圧着時の樹脂の流動に伴う他のコイル導体パターンの位置ずれや変形等が抑制される。したがって、他のコイル導体パターンの位置ずれ等に起因する電気的特性の変動を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
所望の特性やインダクタンス値を得る等の目的から、多数のコイル導体パターンを積層方向に重ね合わせて、多ターン巻きのコイルを積層体に形成する場合がある。しかし、幅広部を有するコイル導体パターンが複数存在する場合に、積層方向に隣接する2つの幅広部の非重なり部同士が重なっていると、これら非重なり部の間に不要な容量が形成されて、コイルの電気的特性が変動する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、複数の非重なり部が形成されたコイルを備える構成において、積層方向に隣接する非重なり部同士の不要な容量形成を抑制することにより、コイルの電気的特性の変動を抑制した樹脂多層基板、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂多層基板は、
複数の樹脂層を積層して形成される積層体と、
前記複数の樹脂層のうち3以上の樹脂層にそれぞれ形成される複数のコイル導体パターンを含んで構成され、前記複数の樹脂層の積層方向に巻回軸を有するコイルと、
を備え、
前記複数のコイル導体パターンは、第1コイル導体パターンと、前記積層方向に前記第1コイル導体パターンに隣接して配置され、前記第1コイル導体パターンよりも線幅の広い幅広部を有する複数の第2コイル導体パターンと、を有し、
前記幅広部は、前記積層方向から視て、隣接する前記第1コイル導体パターンに重なる重なり部と、隣接する前記第1コイル導体パターンに重ならない非重なり部と、を有し、
前記複数の第2コイル導体パターンのうち、少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記積層方向における一方側または両側に、前記第1コイル導体パターンが配置され、前記少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記非重なり部は、前記重なり部よりも、前記少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記積層方向における一方側に配置された前記第1コイル導体パターンに前記積層方向に近接するように湾曲し、
前記複数の第2コイル導体パターンのうち、前記積層方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンの非重なり部は、前記積層方向から視て、前記第1コイル導体パターンに対して、前記第2コイル導体パターンの径方向において互いに逆方向に突出していることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、積層方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンの非重なり部同士が、第2コイル導体パターンの径方向のそれぞれ逆方向に大きく突出しているため、積層方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンの非重なり部同士の重なりは少ない。そのため、積層方向に隣接する第2コイル導体パターンの非重なり部の間の不要な容量形成は抑制される。
【0009】
一般的に、線幅の細いコイル導体パターンは、線幅の太いコイル導体パターンに比べて、熱圧着時の樹脂の流動によって位置ずれや変形等が生じやすい。一方、上記構成では、少なくとも1つの第2コイル導体パターンの非重なり部が、重なり部よりも第1コイル導体パターンに近接するように湾曲している。これにより、湾曲した非重なり部によって、熱圧着時に流動しやすい第1コイル導体パターン付近の樹脂の流動が抑制される。そのため、熱圧着時の樹脂の流動に伴う第1コイル導体パターンの位置ずれ等が抑制される。
【0010】
本発明の樹脂多層基板の製造方法は、
第1コイル導体パターンと、前記第1コイル導体パターンよりも線幅の広い幅広部を有する複数の第2コイル導体パターンとを有する複数のコイル導体パターンを、複数の樹脂層のうち3以上の樹脂層にそれぞれ形成する、コイル導体形成工程と、
前記コイル導体形成工程の後に、前記複数の樹脂層を積層することにより、前記複数の第2コイル導体パターンの前記幅広部が、前記複数の樹脂層の積層方向から視て前記第1コイル導体パターンに重なる重なり部と、前記第1コイル導体パターンに重ならない非重なり部とに分けられ、且つ、前記積層方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンの非重なり部を、前記積層方向から視て、前記第1コイル導体パターンに対して、前記第2コイル導体パターンの径方向において互いに逆方向に突出した状態にし、且つ、前記複数の第2コイル導体パターンのうち、少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記積層方向における一方側または両側に、前記第1コイル導体パターンを配置した状態にする、積層工程と、
前記積層工程の後に、積層した前記複数の樹脂層を熱圧着して積層体を形成するとともに、前記少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記非重なり部を、前記重なり部よりも、前記少なくとも1つの第2コイル導体パターンの前記積層方向における一方側に配置された前記第1コイル導体パターンに前記積層方向に近接するように湾曲させる、積層体形成工程と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
上記製造方法によれば、複数の非重なり部が形成されたコイルを備える構成でも、非重なり部間の容量形成に起因する、コイルの電気的特性の変動を抑制可能な樹脂多層基板を容易に得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の非重なり部が形成されたコイルを備える構成において、積層方向に隣接する非重なり部同士の不要な容量形成を抑制することによって、コイルの電気的特性の変動を抑制した樹脂多層基板を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る樹脂多層基板101の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、樹脂多層基板101の分解平面図である。
【
図4】
図4は、樹脂多層基板101の製造工程を順に示す断面図である。
【
図5】
図5は、樹脂多層基板101の別の製造工程を順に示す断面図である。
【
図6】
図6は、樹脂多層基板101の別の製造工程を順に示す断面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る樹脂多層基板102の外観斜視図である。
【
図8】
図8は、樹脂多層基板102の分解平面図である。
【
図10】
図10は、樹脂多層基板102の製造工程を順に示す断面図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態に係る樹脂多層基板103の外観斜視図である。
【
図14】
図14は、第4の実施形態に係る樹脂多層基板104の外観斜視図である。
【
図16】
図16は、第5の実施形態に係る樹脂多層基板105の断面図である。
【
図17】
図17は、第6の実施形態に係る樹脂多層基板106の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0015】
《第1の実施形態》
図1は、第1の実施形態に係る樹脂多層基板101の外観斜視図である。
図2は、樹脂多層基板101の分解平面図である。
図3は、
図1におけるA-A断面図である。なお、
図2では、構造を分かりやすくするため、第2コイル導体パターンCP21,CP22の幅広部WP1,WP2をハッチングで示している。
【0016】
樹脂多層基板101は、積層体10、コイルL1および外部電極P1,P2等を備える。後に詳述するように、コイルL1は、複数のコイル導体パターン(1以上の第1コイル導体パターンCP11,CP12、および2以上の第2コイル導体パターンCP21,CP22)を含んで構成され、Z軸方向に巻回軸AXを有する。
【0017】
積層体10は、長手方向がX軸方向に一致する直方体であり、互いに対向する第1主面VS1および第2主面VS2を有する。コイルL1は積層体10の内部に形成されており、外部電極P1,P2は、積層体10の第2主面VS2に露出している(第2主面VS2側に設けられている)。
【0018】
積層体10は、樹脂層16,15,14,13,12,11の順に積層して熱圧着して形成される。積層体10の第1主面VS1および第2主面VS2は、複数の樹脂層11,12,13,14,15,16の積層方向(Z軸方向)に直交する面である。樹脂層11~16は、いずれも長手方向がX軸方向に一致する矩形の熱可塑性樹脂の平板であり、それぞれ可撓性を有する。樹脂層11~16は、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を主成分とするシートである。
【0019】
樹脂層11の裏面には、第2コイル導体パターンCP21が形成されている。第2コイル導体パターンCP21は、樹脂層11の外周に沿って巻回される約1ターンの矩形ループ状の導体パターンである。第2コイル導体パターンCP21は、例えばCu箔等の導体パターンである。
【0020】
樹脂層12の裏面には、第1コイル導体パターンCP11および導体パターン23が形成されている。第1コイル導体パターンCP11は、樹脂層12の外周に沿って巻回される約1ターンの矩形ループ状の導体パターンである。導体パターン23は、樹脂層12の第1角(
図2における樹脂層12の左下角)近傍に配置される矩形の導体パターンである。第1コイル導体パターンCP11および導体パターン23は、例えばCu箔等の導体パターンである。また、樹脂層12には層間接続導体V4,V5が形成されている。
【0021】
樹脂層13の裏面には、第2コイル導体パターンCP22および導体パターン22が形成されている。第2コイル導体パターンCP22は、樹脂層13の外周に沿って巻回される約1ターンの矩形ループ状の導体パターンである。導体パターン22は、樹脂層13の第1角(
図2における樹脂層13の左下角)近傍に配置される矩形の導体パターンである。第2コイル導体パターンCP22および導体パターン22は、例えばCu箔等の導体パターンである。また、樹脂層13には層間接続導体V3,V6が形成されている。
【0022】
樹脂層14の裏面には、第1コイル導体パターンCP12および導体パターン21が形成されている。第1コイル導体パターンCP12は、樹脂層14の外周に沿って巻回される約1ターンの矩形ループ状の導体パターンである。導体パターン21は、樹脂層14の第1角(
図2における樹脂層14の左下角)近傍に配置される矩形の導体パターンである。第1コイル導体パターンCP12および導体パターン21は、例えばCu箔等の導体パターンである。また、樹脂層14には層間接続導体V2,V7が形成されている。
【0023】
樹脂層15の裏面には、外部電極P1,P2が形成されている。外部電極P1,P2は長手方向がY軸方向に一致する矩形の導体パターンである。外部電極P1は、樹脂層15の第1辺(
図2における樹脂層15の左辺)近傍に配置されており、外部電極P2は、樹脂層15の第2辺(
図2における樹脂層15の右辺)近傍に配置されている。外部電極P1,P2は、例えばCu箔等の導体パターンである。また、樹脂層15には層間接続導体V1,V8が形成されている。
【0024】
樹脂層16には、開口部HP1,HP2が形成されている。開口部HP1は、樹脂層16の第1辺(
図2における樹脂層16の左辺)近傍に配置される矩形の貫通孔であり、開口部HP2は、樹脂層16の第2辺(
図2における樹脂層16の右辺)近傍に配置される矩形の貫通孔である。開口部HP1は、外部電極P1の位置に応じた位置に設けられており、開口部HP2は、外部電極P2の位置に応じた位置に設けられている。そのため、樹脂層15の裏面に樹脂層16が積層された場合でも、外部電極P1が開口部HP1から外部に露出し、外部電極P2が開口部HP2から外部に露出する。
【0025】
図2に示すように、第2コイル導体パターンCP21の一端は、層間接続導体V5を介して、第1コイル導体パターンCP11の一端に接続され、第1コイル導体パターンCP11の他端は、層間接続導体V6を介して、第2コイル導体パターンCP22の一端に接続されている。また、第2コイル導体パターンCP22の他端は、層間接続導体V7を介して、第1コイル導体パターンCP11の一端に接続されている。このようにして、3以上の樹脂層11~14に形成される複数のコイル導体パターン(1以上の第1コイル導体パターンCP11,CP12、および2以上の第2コイル導体パターンCP21,CP22)と層間接続導体V5,V6,V7とによって、Z軸方向に巻回軸AXを有するコイルL1が構成される。
【0026】
また、コイルL1の第1端は外部電極P1に接続されており、コイルL1の第2端は外部電極P2に接続されている。具体的には、第2コイル導体パターンCP21の他端が、導体パターン21,22,23および層間接続導体V1,V2,V3,V4を介して、外部電極P1に接続されている。また、第1コイル導体パターンCP12の他端は、層間接続導体V8を介して、外部電極P2に接続されている。
【0027】
図3等に示すように、第2コイル導体パターンCP21は、Z軸方向において第1コイル導体パターンCP11に隣接して配置されている。また、第2コイル導体パターンCP22は、Z軸方向において第1コイル導体パターンCP11,CP12に隣接して配置されている。なお、本実施形態では、第1コイル導体パターンCP11,CP12と第2コイル導体パターンCP21,CP22とが、Z軸方向に交互に配置されている。
【0028】
第2コイル導体パターンCP21は、
図2等に示すように、第1コイル導体パターンCP11,CP12よりも線幅の広い幅広部WP1を有する。なお、本実施形態の第2コイル導体パターンCP21は、全体が幅広部WP1である。
図3等に示すように、幅広部WP1は、Z軸方向から視て、隣接する第1コイル導体パターンCP11に重なる重なり部OP1と、第1コイル導体パターンCP11に重ならない非重なり部NOP1と、を有する。本実施形態の非重なり部NOP1は、重なり部OP1よりも第1コイル導体パターンCP11に近接するように湾曲している。
【0029】
本実施形態の第2コイル導体パターンCP21は、複数のコイル導体パターンの中で、Z軸方向において最も主面(第1主面VS1または第2主面VS2)寄りに位置する「最外層側コイル導体パターン」である。
【0030】
第2コイル導体パターンCP22は、
図2等に示すように、第1コイル導体パターンCP11,CP12よりも線幅の広い幅広部WP2を有する。なお、本実施形態の第2コイル導体パターンCP22は、全体が幅広部WP2である。
図3等に示すように、幅広部WP2は、Z軸方向から視て、隣接する第1コイル導体パターンCP11,CP12に重なる重なり部OP2と、第1コイル導体パターンCP11,CP12に重ならない非重なり部NOP2と、を有する。なお、重なり部OP2は、Z軸方向から視て外部電極P1,P2にも重なる。一方、非重なり部NOP2は、Z軸方向から視て外部電極P1,P2には重ならない。本実施形態の非重なり部NOP2は、重なり部OP2よりも第1コイル導体パターンCP12および外部電極P1,P2に近接するように湾曲している。
【0031】
本実施形態の第2コイル導体パターンCP22は、第2コイル導体パターンCP21,CP22の中で、Z軸方向において最も外部電極P1,P2寄りに位置する(Z軸方向において外部電極P1,P2に最も近接して配置されている)。また、本実施形態では、重なり部OP2が本発明の「電極重なり部」に相当し、非重なり部NOP2が本発明の「電極非重なり部」に相当する。
【0032】
また、
図3に示すように、Z軸方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP21,CP22の非重なり部NOP1,NOP2は、第1コイル導体パターンCP11,CP12に対して、第2コイル導体パターンCP21,CP22の径方向(XY平面に平行な方向、且つ、巻回軸AXを中心とする放射方向。例えば、
図3におけるX軸方向)のそれぞれ逆方向に突出している。より具体的には、第2コイル導体パターンCP21の非重なり部NOP1は、第1コイル導体パターンCP11よりも外周側に突出しており、第2コイル導体パターンCP22の非重なり部NOP2は、第1コイル導体パターンCP11,CP12よりも内周側に突出している。
【0033】
本実施形態に係る樹脂多層基板101によれば、次のような効果を奏する。
【0034】
(a)本実施形態では、
図3等に示すように、積層方向(Z軸方向)に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP21,CP22の非重なり部NOP1,NOP2同士が、第1コイル導体パターンCP11,CP12に対して、径方向のそれぞれ逆方向に大きく突出している。この構成によれば、Z軸方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP21,CP22の非重なり部NOP1,NOP2同士の重なりは少ない。そのため、Z軸方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP21,CP22の非重なり部NOP1,NOP2間の不要な容量形成は抑制される。
【0035】
また、本実施形態では、Z軸方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP21,CP22の非重なり部NOP1,NOP2同士が、Z軸方向から視て重なっていない。例えば、
図3に示す第2コイル導体パターンCP21の幅広部WP1が径方向の内周側にも多少突出している場合(または、第2コイル導体パターンCP22の幅広部WP2が径方向の外周側にも多少突出している場合)、非重なり部NOP1,NOP2同士がZ軸方向に一部重って容量形成することがある。一方、上記構成によれば、非重なり部NOP1,NOP2が、Z軸方向から視て重なっていないため、幅広部WP1,WP2間の不要な容量形成はさらに抑制される。
【0036】
(b)一般的に、線幅の細いコイル導体パターンは、線幅の太いコイル導体パターンに比べて、熱圧着時の樹脂の流動によって位置ずれや変形等が生じやすい。一方、本実施形態では、第2コイル導体パターンCP21の非重なり部NOP1が、重なり部OP1よりも第1コイル導体パターンCP11に近接するように湾曲しており、第2コイル導体パターンCP22の非重なり部NOP2が、重なり部OP2よりも第1コイル導体パターンCP12に近接するように湾曲している。この構成によれば、湾曲した非重なり部NOP1,NOP2によって、熱圧着時に流動しやすい第1コイル導体パターンCP11,CP12付近の樹脂の流動が抑制される。そのため、熱圧着時の樹脂の流動に伴う第1コイル導体パターンCP11,CP12の位置ずれ等が抑制される。また、この構成によれば、非重なり部NOP1,NOP2が湾曲しているため、非重なり部NOP1,NOP2が湾曲していない場合に比べて、熱圧着時における第2コイル導体パターンCP21,CP22自体の位置ずれ等も生じ難い。
【0037】
(c)また、一般的に、積層体の表層付近は熱圧着時にプレス機による熱の影響を受けやすく、積層体の表層付近に配置されるコイル導体パターン(または、外部電極等)は熱圧着時に位置ずれしやすい。本実施形態では、第2コイル導体パターンCP21が最外層側コイルパターン(複数のコイル導体パターンのうち、積層方向において最も主面寄りに位置するコイル導体パターン)である。上述したように、第2コイル導体パターンCP21は、相対的に線幅の太い幅広部WP1を有している。そのため、上記構成により、最表層側コイル導体パターンが第1コイル導体パターンである場合に比べて、熱圧着時の樹脂の流動に伴う最表層側コイル導体パターンの位置ずれが抑制される。
【0038】
さらに、本実施形態では、最表層側コイル導体パターン(第2コイル導体パターンCP21)の非重なり部NOP1が、内層側に位置する他のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11,CP12および第2コイル導体パターンCP22)に近接するように湾曲している。この構成によれば、最表層側コイル導体パターンの非重なり部NOP1が、内層側に位置する他のコイル導体パターンに近接するように湾曲しているため、熱圧着時における複数のコイル導体パターン全体の位置ずれが抑制される。
【0039】
(d)さらに、本実施形態では、複数の第2コイル導体パターンCP21,CP22の中で、Z軸方向に最も外部電極P1,P2寄りに位置する第2コイル導体パターンCP22の非重なり部NOP2(電極非重なり部)が、重なり部OP2(電極重なり部)よりも外部電極P1,P2に近接するように湾曲している。上述したように、第2主面VS2側に配置された外部電極P1,P2は、熱圧着時の樹脂の流動に伴って位置ずれしやすい。一方、この構成によれば、外部電極P1,P2(第2主面VS2)に近接するように湾曲した非重なり部NOP2によって、熱圧着時に流動しやすい外部電極P1,P2付近の樹脂の流動が抑制されるため、結果的に外部電極P1,P2の位置ずれは抑制される。
【0040】
(e)本実施形態に係る樹脂多層基板101のように、第2コイル導体パターンの内外形が矩形(多角形)である場合には、或る1つの第2コイル導体パターンに設けられた非重なり部は、Z軸方向から視て少なくとも対向する2辺(例えば、
図2における第2コイル導体パターンCP21の左辺および右辺)に配置されていることが好ましい。この構成によれば、互いに対向する2辺に設けられた非重なり部によって、熱圧着時における樹脂の流動に伴うコイル(または、コイル導体パターン)の位置ずれが効果的に抑制される。
【0041】
(f)また、本実施形態に係る樹脂多層基板101のように、第2コイル導体パターンの内外形が矩形(多角形)である場合には、或る1つの第2コイル導体パターンに設けられた非重なり部は、Z軸方向から視て3辺以上に設けられていることが好ましい。この構成によれば、Z軸方向から視て2辺に非重なり部が設けられている場合と比較して、非重なり部によるコイルの位置ずれ抑制効果がさらに高まる。
【0042】
なお、本実施形態では、コイル導体パターン(第1コイル導体パターンおよび第2コイル導体パターン)の内外形が矩形(多角形)である例を示したが、本発明の樹脂多層基板はこの構成に限定されるものではない。コイル導体パターンの内外形は適宜変更可能であり、例えば円形や楕円形、L字形等でもよい。その場合に、或る1つの第2コイル導体パターンに設けられる非重なり部は、コイルの巻回軸AXに対して、Z軸方向から視た直交4方向(例えば、+X方向、+Y方向、-X方向および-Y方向)のうち少なくとも2方向に位置していることが好ましい。特に、非重なり部が、巻回軸AXに対して、Z軸方向から視た直交4方向のうち平行な2方向(例えば、+X方向および-X方向)にそれぞれ位置している場合には、熱圧着時における樹脂の流動に伴うコイルの位置ずれが効果的に抑制される。
【0043】
また、熱圧着時におけるコイルの位置ずれ抑制効果をさらに高めたい場合には、非重なり部が、Z軸方向から視て、巻回軸AXを囲むように配置されていること(Z軸方向から視た直交4方向のうち、少なくとも3方向に位置していること)が好ましい。これにより、非重なり部によるコイルの位置ずれ抑制効果がさらに高まる。
【0044】
なお、本実施形態では、1つの第2コイル導体パターンの全長に亘って非重なり部が設けられた樹脂多層基板101を示したが、本発明の樹脂多層基板はこの構成に限定されるものではない。或る1つの第2コイル導体パターンに設けられる非重なり部は、その第2コイル導体パターンの全長の1/5以上の部分に設けられていれば、本発明の作用・効果を奏する。さらに、第1コイル導体パターンおよび第2コイル導体パターンの巻数は、それぞれ1ターンに限定されるものではなく、それぞれのコイル導体パターン毎に異なっていてもよい。
【0045】
本実施形態に係る樹脂多層基板101は、例えば次に示す製造方法によって製造される。
図4は、樹脂多層基板101の製造工程を順に示す断面図である。なお、
図4では、説明の都合上、ワンチップ(個片)での製造工程で説明するが、実際の樹脂多層基板101の製造工程は集合基板状態で行われる。「集合基板」とは、複数の樹脂多層基板101が含まれる基板を言う。このことは、以降の樹脂多層基板の製造工程を示す各断面図においても同様である。
【0046】
まず、
図4中の(1)に示すように、複数の樹脂層11,12,13,14,15,16を準備する。樹脂層11~16は、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のシートである。
【0047】
その後、樹脂層11~15に複数のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11,CP12および第2コイル導体パターンCP21,CP22)および外部電極P1,P2等を形成する。具体的には、樹脂層11~15の裏面に金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その金属箔をフォトリソグラフィでパターニングする。これにより、樹脂層11の裏面に第2コイル導体パターンCP21を形成し、樹脂層12の裏面に第1コイル導体パターンCP11を形成し、樹脂層13の裏面に第2コイル導体パターンCP22を形成し、樹脂層14の裏面に第1コイル導体パターンCP12を形成する。また、樹脂層15の裏面に外部電極P1,P2を形成する。
【0048】
なお、第2コイル導体パターンCP21は幅広部WP1を有しており、第2コイル導体パターンCP22は幅広部WP2を有している。幅広部WP1,WP2は、第1コイル導体パターンCP11,CP12よりも線幅の太い部分である。
【0049】
このように、複数のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11,CP12、および、幅広部WP1,WP2を有した第2コイル導体パターンCP21,CP22)を、3以上の樹脂層11~14にそれぞれ形成するこの工程が、本発明の「コイル導体形成工程」の一例である。
【0050】
また、樹脂層11~15には、層間接続導体(
図2における層間接続導体V1~V8)が形成される。層間接続導体は、例えばレーザー照射またはドリル等で孔を設けた後、その孔にCu,Snもしくはそれらの合金等の金属粉と樹脂材料とを含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の熱圧着によって導電性ペーストを固化させることにより設けられる。
【0051】
さらに、樹脂層16には開口部HP1,HP2が形成される。開口部HP1は、樹脂層16の第1辺(
図4における樹脂層16の左辺)近傍に配置される矩形の貫通孔であり、開口部HP2は、樹脂層16の第2辺(
図4における樹脂層16の右辺)近傍に配置される矩形の貫通孔である。開口部HP1,HP2は、例えばレーザー等により樹脂層16をエッチングすることによって形成される。また、開口部HP1,HP2は、パンチング等によって形成されてもよい。
【0052】
次に、
図4中の(2)に示すように、樹脂層16,15,14,13,12,11の順に積層(載置)する。このとき、第2コイル導体パターンCP21の幅広部WP1は、積層方向(Z軸方向)から視て、第1コイル導体パターンCP11,CP12に重なる重なり部OP1と、第1コイル導体パターンCP11,CP12に重ならない非重なり部NOP1とに分けられる。また、第2コイル導体パターンCP22の幅広部WP2は、Z軸方向から視て、第1コイル導体パターンCP11,CP12に重なる重なり部OP2と、第1コイル導体パターンCP11,CP12に重ならない非重なり部NOP2とに分けられる。また、Z軸方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP21,CP22の非重なり部NOP1,NOP2は、第1コイル導体パターンCP11,CP12に対して、第2コイル導体パターンCP21,CP22の径方向(例えば、
図4中のX軸方向)のそれぞれ逆方向に突出している。
【0053】
「コイル導体形成工程」の後に、複数の樹脂層11~16を積層することにより、Z軸方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP21,CP22の非重なり部NOP1,NOP2を、第1コイル導体パターンCP11,CP12に対して、径方向のそれぞれ逆方向に突出した状態にするこの工程が、本発明の「積層工程」の一例である。
【0054】
その後、積層した複数の樹脂層11~16を熱圧着(一括プレス)して
図4中の(3)に示す積層体10(樹脂多層基板101)を形成する。具体的には、積層した複数の樹脂層11~16を加熱しながら、
図4中の(2)に示す白抜き矢印の方向から擬似的等方圧プレス(加圧)を行う。
【0055】
このとき、第2コイル導体パターンCP21,CP22の非重なり部NOP1,NOP2は、重なり部OP1,OP2よりも、Z軸方向から視て重なる導体パターンの数が少ない。そのため、重なり部OP1,OP2付近に比べて、熱圧着時における非重なり部NOP1,NOP2付近の樹脂は変形しやすい。そのため、第2コイル導体パターンCP21の非重なり部NOP1は、重なり部OP1よりも第1コイル導体パターンCP11に近接するように湾曲する。また、第2コイル導体パターンCP22の非重なり部NOP2は、重なり部OP2よりも第1コイル導体パターンCP12に近接するように湾曲する。
【0056】
「積層工程」の後に、積層した複数の樹脂層11~16を熱圧着して積層体10を形成するとともに、少なくとも一つの第2コイル導体パターンCP21の非重なり部NOP1が、重なり部OP1よりも第1コイル導体パターンCP11に近接するように湾曲させるこの工程が、本発明の「積層体形成工程」の一例である。
【0057】
上記製造方法によれば、複数の非重なり部NOP1,NOP2が形成されたコイルL1を備える構成でも、非重なり部NOP1,NOP2間の不要な容量形成に起因する、コイルの電気的特性の変動を抑制可能な樹脂多層基板101を容易に得られる。
【0058】
また、樹脂多層基板101は、例えば次に示す製造方法で製造されていてもよい。
図5は、樹脂多層基板101の別の製造工程を順に示す断面図である。
【0059】
まず、
図5中の(1)に示すように、複数の樹脂層11~16を準備する。その後、樹脂層11~15に複数のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11,CP12および第2コイル導体パターンCP21,CP22)および外部電極P1,P2等を形成する(コイル導体形成工程)。
【0060】
また、樹脂層11~15には、層間接続導体(
図2における層間接続導体V1~V8)が形成され、樹脂層16には開口部HP1,HP2が形成される。
【0061】
次に、樹脂層13に所定の形状の開口AP1を形成し、樹脂層15に所定の形状の開口AP2を形成する。開口AP1は、第2コイル導体パターンCP21の非重なり部NOP1と略同一の形状をした貫通孔である。開口AP2は、第2コイル導体パターンCP22の非重なり部NOP2と略同一の形状をした貫通孔である。
【0062】
「積層工程」の前に、樹脂層13,15(複数の樹脂層11~16のいずれか)に、所定の形状の開口AP1,AP2を形成するこの工程が、本発明の「開口形成工程」の一例である。
【0063】
次に、
図5中の(2)に示すように、樹脂層16,15,14,13,12,11の順に積層する(積層工程)。このとき、Z軸方向から視て、非重なり部NOP1に開口AP1が重なるように、且つ、非重なり部NOP2に開口AP2が重なるように、複数の樹脂層11~16を積層する。なお、複数の樹脂層11~16を積層する際、非重なり部NOP1と開口AP1との間には、少なくとも1つの樹脂層12が挟まれ、非重なり部NOP2と開口AP2との間には、少なくとも1つの樹脂層14が挟まれる。
【0064】
その後、積層した複数の樹脂層11~16を熱圧着(一括プレス)して
図5中の(3)に示す積層体10(樹脂多層基板101)を形成する(積層体形成工程)。
【0065】
上記製造方法によれば、第2コイル導体パターンCP21,CP22の非重なり部NOP1,NOP2に重なる位置に、開口AP1,AP2(貫通孔)が設けられているため、熱圧着時に非重なり部NOP1の湾曲する向きを制御しやすい。
【0066】
さらに、上記製造方法によれば、熱圧着時における非重なり部NOP1,NOP2の湾曲による短絡の発生を抑制できる。例えば、非重なり部NOP1に接する樹脂層12に開口AP1(貫通孔)が形成されている場合、熱圧着時に非重なり部NOP1が湾曲し、第1コイル導体パターンCP11に接触して短絡してしまう虞がある。一方、本製造方法のように、非重なり部NOP1と開口AP1との間に樹脂層12を挟んだ(非重なり部NOP2と開口AP2との間に樹脂層14を挟んだ)状態で、複数の樹脂層11~16を熱圧着することにより、熱圧着時における非重なり部NOP1,NOP2の湾曲による短絡を抑制できる。
【0067】
さらに、樹脂多層基板101は、例えば次に示す製造方法で製造されていてもよい。
図6は、樹脂多層基板101の別の製造工程を順に示す断面図である。
【0068】
まず、
図6中の(1)に示すように、複数の樹脂層11~16を準備する。その後、樹脂層11~15に複数のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11,CP12および第2コイル導体パターンCP21,CP22)および外部電極P1,P2等を形成する(コイル導体形成工程)。
【0069】
また、樹脂層11~15には、層間接続導体(
図2における層間接続導体V1~V8)が形成され、樹脂層16には開口部HP1,HP2が形成される。
【0070】
次に、樹脂層12の表面に所定の形状の開口AP1Aを形成し、樹脂層14の表面に所定の形状の開口AP2Aを形成する(開口形成工程)。開口AP1Aは、第2コイル導体パターンCP21の非重なり部NOP1と略同一の形状をした凹部(溝)である。開口AP2Aは、第2コイル導体パターンCP22の非重なり部NOP2と略同一の形状をした凹部(溝)である。
【0071】
次に、
図6中の(2)に示すように、樹脂層16,15,14,13,12,11の順に積層する(積層工程)。このとき、Z軸方向から視て、非重なり部NOP1に開口AP1Aが重なるように、且つ、非重なり部NOP2に開口AP2Aが重なるように、複数の樹脂層11~16を積層する。
【0072】
その後、積層した複数の樹脂層11~16を熱圧着(一括プレス)して
図6中の(3)に示す積層体10(樹脂多層基板101)を形成する(積層体形成工程)。
【0073】
上記製造方法では、非重なり部NOP1,NOP2に重なる位置に、凹部(溝)である開口AP1A,AP2Aが設けられる。これにより、非重なり部に接する樹脂層に開口(貫通孔)が形成される場合と比較して、熱圧着時に非重なり部NOP1,NOP2が湾曲することに起因する短絡を抑制できる。なお、非重なり部の湾曲する形状等(重なり部に対する曲率等)は、凹部である開口AP1A,AP2Aの形状や深さ等によって調整可能である。
【0074】
なお、上記製造方法では、非重なり部NOP1に接する樹脂層12の表面に、凹部(溝)である開口AP1Aを形成する例を示したが、この製造方法に限定されるものではない。開口AP1Aは、例えば樹脂層12の裏面に形成してもよく、樹脂層12の表面および裏面の両方に形成してもよい。また、開口AP1Aは、例えば樹脂層13の表面または裏面に形成されていてもよい。
【0075】
同様に、上記製造方法では、非重なり部NOP2に接する樹脂層14の表面に、凹部(溝)である開口AP2Aを形成する例を示したが、この製造方法に限定されるものではない。開口AP2Aは、例えば樹脂層14の裏面に形成してもよく、樹脂層14の表面および裏面の両方に形成してもよい。
【0076】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、積層方向から視て、コイル(複数のコイル導体パターン)が外部電極に重なっていない樹脂多層基板の例を示す。
【0077】
図7は、第2の実施形態に係る樹脂多層基板102の外観斜視図である。
図8は、樹脂多層基板102の分解平面図である。
図9は、
図7におけるB-B断面図である。なお、
図9では、構造を分かりやすくするため、第2コイル導体パターンCP21A,CP22Aの幅広部WP1,WP2をハッチングで示している。
【0078】
樹脂多層基板102は、積層体10A、コイルL2および外部電極P1A,P2A等を備える。積層体10Aは、長手方向(X軸方向)の長さが第1の実施形態で説明した積層体10よりも長い。積層体10Aの他の構成は積層体10と同じである。
【0079】
以下、第1の実施形態に係る樹脂多層基板101と異なる部分について説明する。
【0080】
積層体10Aは、樹脂層16a,15a,14a,13a,12a,11aの順に積層して熱圧着して形成される。樹脂層11a~16aは、長手方向の長さが第1の実施形態で説明した樹脂層11~16よりも長い。樹脂層11a~16aの他の構成は樹脂層11~16と同じである。
【0081】
樹脂層11aの裏面には、第2コイル導体パターンCP21Aが形成されている。第2コイル導体パターンCP21Aは、第1の実施形態で説明した第2コイル導体パターンCP21と略同じ形状であり、樹脂層11aの長手方向(X軸方向)の中央付近に配置されている。
【0082】
樹脂層12aの裏面には、第1コイル導体パターンCP11Aおよび導体パターン23が形成されている。第1コイル導体パターンCP11Aは、第1の実施形態で説明した第1コイル導体パターンCP11と略同じ形状であり、樹脂層12aの長手方向の中央付近に配置されている。導体パターン23は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
【0083】
樹脂層13aの裏面には、第1コイル導体パターンCP12Aおよび導体パターン22が形成されている。第1コイル導体パターンCP12Aは、樹脂層13aの長手方向の中央付近に配置される約1ターンの矩形ループ状の導体パターンである。導体パターン22は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
【0084】
樹脂層14aの裏面には、第2コイル導体パターンCP22Aおよび導体パターン21が形成されている。第2コイル導体パターンCP22Aは、樹脂層14aの長手方向の中央付近に配置される約1ターンの矩形ループ状の導体パターンである。導体パターン21は、第1の実施形態で説明してものと同じである。
【0085】
樹脂層15aの裏面には、外部電極P1A,P2Aが形成されている。外部電極P1Aは、第1の実施形態で説明した外部電極P1と同じものである。外部電極P2Aは、樹脂層15aの第2辺(
図8における樹脂層15aの右辺)近傍に配置されるL字形の導体パターンである。また、樹脂層16aには、開口部HP1,HP2が形成されている。開口部HP1,HP2は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
【0086】
図8に示すように、第2コイル導体パターンCP21Aの一端は、層間接続導体V5を介して、第1コイル導体パターンCP11Aの一端に接続され、第1コイル導体パターンCP11Aの他端は、層間接続導体V6を介して、第1コイル導体パターンCP12Aの一端に接続されている。第1コイル導体パターンCP12Aの他端は、層間接続導体V7を介して、第2コイル導体パターンCP22Aの一端に接続されている。このようにして、3以上の樹脂層11a~14aにそれぞれ形成される複数のコイル導体パターン(1以上の第1コイル導体パターンCP11A,CP12A、および2以上の第2コイル導体パターンCP21A,CP22A)と層間接続導体V5,V6,V7とによって、Z軸方向に巻回軸AXを有するコイルL2が構成される。
【0087】
また、コイルL2の第1端は外部電極P1Aに接続されており、コイルL2の第2端は外部電極P2Aに接続されている。具体的には、第2コイル導体パターンCP21Aの他端が、導体パターン21,22,23および層間接続導体V1,V2,V3,V4を介して、外部電極P1Aに接続されている。また、第2コイル導体パターンCP22Aの他端は、層間接続導体V8を介して、外部電極P2Aに接続されている。
【0088】
図9に示すように、本実施形態のコイルL2は、Z軸方向から視て、その大部分が外部電極P1A,P2Aには重なっていない。また、本実施形態では、第2コイル導体パターンCP21A、第1コイル導体パターンCP11A,CP12Aおよび第2コイル導体パターンCP22Aの順に、-Z方向に配置されている。すなわち、第2コイル導体パターンCP21Aは、Z軸方向において第1コイル導体パターンCP11Aに隣接して配置されており、第2コイル導体パターンCP22Aは、Z軸方向において第1コイル導体パターンCP12Aに隣接して配置されている。
【0089】
なお、本実施形態では、第2コイル導体パターンCP22Aが、複数のコイル導体パターンのうち、Z軸方向において最も第1主面VS1寄りに位置する「第1主面側コイル導体パターン」に相当する。
図9に示すように、第2コイル導体パターンCP22Aの非重なり部NOP2は、内層側に位置する他のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11A,CP12A)に近接するように湾曲している。
【0090】
また、本実施形態では、第2コイル導体パターンCP21Aが、複数のコイル導体パターンのうち、Z軸方向において最も第2主面VS2寄りに位置する「第2主面側コイル導体パターン」に相当する。
図9に示すように、第2コイル導体パターンCP21Aの非重なり部NOP1は、内層側に位置する他のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11A,CP12A)に近接するように湾曲している。
【0091】
なお、Z軸方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP21A,CP22Aの非重なり部NOP1,NOP2は、第1コイル導体パターンCP11A,CP12Aに対して、径方向(例えば、
図9におけるX軸方向)のそれぞれ逆方向に突出している。
【0092】
本実施形態に係る樹脂多層基板102によれば、第1の実施形態で述べた効果以外に、次のような効果を奏する。
【0093】
本実施形態では、第2コイル導体パターンCP22A(第1主面側コイル導体パターン)の非重なり部NOP2、および第2コイル導体パターンCP21A(第2主面側コイル導体パターン)の非重なり部NOP1が、それぞれ内層側に位置する第1コイル導体パターンCP11A,CP12A(他のコイル導体パターン)に近接するように湾曲している。この構成により、第2コイル導体パターン(第1主面側コイル導体パターンおよび第2主面側コイル導体パターン)によって、内層側に位置する他のコイル導体パターンが包み込まれる構造となり、熱圧着時における複数のコイル導体パターン全体の位置ずれ等をさらに抑制できる。
【0094】
なお、本実施形態では、第1主面側コイル導体パターンおよび第2主面側コイル導体パターンが、いずれも第2コイル導体パターンである例を示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、第1主面側コイル導体パターンおよび第2主面側コイル導体パターンのいずれか一方が第1コイル導体パターンでもよく、第1主面側コイル導体パターンおよび第2主面側コイル導体パターンの両方が第1コイル導体パターンでもよい。
【0095】
樹脂多層基板102は、例えば次に示す製造方法で製造される。
図10は、樹脂多層基板102の製造工程を順に示す断面図である。
【0096】
まず、
図10中の(1)に示すように、複数の樹脂層11a~16aを準備する。その後、樹脂層11a~15aに複数のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11A,CP12Aおよび第2コイル導体パターンCP21A,CP22A)および外部電極P1A,P2A等を形成する(コイル導体形成工程)。
【0097】
また、樹脂層11a~15aには、層間接続導体(
図8における層間接続導体V1~V8)が形成され、樹脂層16aには開口部HP1,HP2が形成される。
【0098】
次に、樹脂層13aに所定の形状の開口AP1を形成し、樹脂層12aに所定の開口AP2を形成する(開口形成工程)。開口AP1は、
図10中の(2)に示す第2コイル導体パターンCP21Aの非重なり部NOP1と略同一の形状をした貫通孔である。開口AP2は、
図10中の(2)に示す第2コイル導体パターンCP22Aの非重なり部NOP2と略同一の形状をした貫通孔である。
【0099】
次に、
図10中の(2)に示すように、樹脂層16a,15a,14a,13a,12a,11aの順に積層する(積層工程)。このとき、Z軸方向から視て、非重なり部NOP1に開口AP1が重なるように、且つ、非重なり部NOP2に開口AP2が重なるように、複数の樹脂層11a~16aを積層する。このとき、非重なり部NOP1と開口AP1との間には、少なくとも1つの樹脂層12aが挟まれる。また、非重なり部NOP2と開口AP2との間には、少なくとも1つの樹脂層13aが挟まれる。
【0100】
その後、積層した複数の樹脂層11a~16aを熱圧着(一括プレス)して
図10中の(3)に示す積層体10A(樹脂多層基板102)を形成する(積層体形成工程)。
【0101】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、スパイラル状の複数のコイル導体パターンを有する樹脂多層基板の例を示す。
【0102】
図11は、第3の実施形態に係る樹脂多層基板103の外観斜視図である。
図12は、樹脂多層基板103の分解平面図である。
図13は、
図11におけるC-C断面図である。なお、
図12では、構造を分かりやすくするため、第2コイル導体パターンCP21B,CP22Bの幅広部WP1,WP2をハッチングで示している。
【0103】
樹脂多層基板103は、コイルL3を備える点で、第2の実施形態に係る樹脂多層基板102と異なる。コイルL3は、複数のコイル導体パターン(1以上の第1コイル導体パターンCP11B,CP12B、および2以上の第2コイル導体パターンCP21B,CP22B)を含んで構成される。樹脂多層基板103の他の構成については、樹脂多層基板102と実質的に同じである。
【0104】
以下、第2の実施形態に係る樹脂多層基板102と異なる部分について説明する。
【0105】
図12に示すように、樹脂層11aの裏面には、第2コイル導体パターンCP21Bが形成されている。第2コイル導体パターンCP21Bは、樹脂層11aの長手方向の中央付近に配置された約2.75ターンの矩形スパイラル状の導体パターンである。第2コイル導体パターンCP21Bは、径方向の最外周部(最も外周側に位置する約1巻き部分)に幅広部WP1を有する。
【0106】
樹脂層12aの裏面には、第1コイル導体パターンCP11Bおよび導体パターン23が形成されている。第1コイル導体パターンCP11Bは、樹脂層12aの長手方向の中央付近に配置された約3ターンの矩形スパイラル状の導体パターンである。導体パターン23は、第2の実施形態で説明したものと同じである。
【0107】
樹脂層13aの裏面には、第1コイル導体パターンCP12Bおよび導体パターン22が形成されている。第1コイル導体パターンCP12Bは、樹脂層13aの長手方向の中央付近に配置された約3ターンの矩形スパイラル状の導体パターンである。導体パターン22は、第2の実施形態で説明したものと同じである。
【0108】
樹脂層14aの裏面には、第2コイル導体パターンCP22Bおよび導体パターン21が形成されている。第2コイル導体パターンCP22Bは、樹脂層14aの長手方向の中央付近に配置された約3ターンの矩形スパイラル状の導体パターンである。第2コイル導体パターンCP22Bは、径方向の最内周部(最も内周側に位置する約1巻き部分)に幅広部WP2を有する。導体パターン21は、第2の実施形態で説明したものと同じである。
【0109】
樹脂層15aの裏面には外部電極P1A,P2Aが形成され、樹脂層16aには開口部HP1,HP2が形成されている。外部電極P1A,P2Aおよび開口部HP1,HP2は、第2の実施形態で説明したものと同じである。
【0110】
図12に示すように、第2コイル導体パターンCP21Bの一端は、層間接続導体V5を介して、第1コイル導体パターンCP11Bの一端に接続され、第1コイル導体パターンCP11Bの他端は、層間接続導体V6を介して、第1コイル導体パターンCP12Bの一端に接続されている。第1コイル導体パターンCP12Bの他端は、層間接続導体V7を介して、第2コイル導体パターンCP22Bの一端に接続されている。このようにして、3以上の樹脂層11a~14aにそれぞれ形成される複数のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11B,CP12Bおよび第2コイル導体パターンCP21B,CP22B)と層間接続導体V5,V6,V7とによって、Z軸方向に巻回軸AXを有するコイルL3が形成される。
【0111】
また、コイルL3の第1端は外部電極P1Aに接続されており、コイルL3の第2端は外部電極P2Aに接続されている。具体的には、第2コイル導体パターンCP21Bの他端が、導体パターン21,22,23および層間接続導体V1,V2,V3,V4を介して、外部電極P1Aに接続されている。また、第2コイル導体パターンCP22Bの他端は、層間接続導体V8を介して、外部電極P2Aに接続されている。
【0112】
第2コイル導体パターンCP21Bの幅広部WP1(最外周部)は、Z軸方向から視て、Z軸方向に隣接する第1コイル導体パターンCP11Bに重なる重なり部OP1と、第1コイル導体パターンCP11Bに重ならない非重なり部NOP1と、を有する。第2コイル導体パターンCP21B(第2主面側コイル導体パターン)の非重なり部NOP1は、内層側に位置する他のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11B,CP12B)に近接するように湾曲している。
【0113】
第2コイル導体パターンCP22Bの幅広部WP2(最内周部)は、Z軸方向から視て、Z軸方向に隣接する第1コイル導体パターンCP12Bに重なる重なりOP2と、第1コイル導体パターンCP12Bに重ならない非重なり部NOP2と、を有する。第2コイル導体パターンCP22B(第1主面側コイル導体パターン)の非重なり部NOP2は、内層側に位置する他のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11B,CP12B)に近接するように湾曲している。
【0114】
なお、Z軸方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP21B,CP22Bの非重なり部NOP1,NOP2は、第1コイル導体パターンCP11B,CP12Bに対して、径方向のそれぞれ逆方向に突出している。
【0115】
本実施形態に示したように、複数のコイル導体パターンはそれぞれ2ターン以上のスパイラル状であってもよい。なお、複数のコイル導体パターンは、それぞれ巻数が略同じである構成に限定されるものではない。すなわち、複数のコイル導体パターンは、それぞれ異なる巻数でもよい。
【0116】
なお、第1主面側コイル導体パターンおよび第2主面側コイル導体パターンがいずれも幅広部を有する第2コイル導体パターンである場合には、いずれか一方の非重なり部が少なくとも径方向の最外周部に位置し、他方の非重なり部が少なくとも最内周部に位置すること、且つ、これらの非重なり部がいずれも内層側に位置する他のコイル導体パターンに近接するように湾曲していることが好ましい。第2の実施形態でも説明したように、この構成により、第2コイル導体パターン(第1主面側コイル導体パターンおよび第2主面側コイル導体パターン)によって、内層側に位置する他のコイル導体パターンが包み込まれる構造となり、熱圧着時における複数のコイル導体パターン全体の位置ずれをさらに抑制できる。
【0117】
なお、本実施形態では、幅広部WP1,WP2が、スパイラル状の第2コイル導体パターンCP21B,CP22Bの径方向における最外周部のみ、または最内周部のみに位置する例を示したが、この構成に限定されるものではない。幅広部WP1,WP2は、スパイラル状の第2コイル導体パターンの最外周部または最内周部以外の部分に形成されていてもよく、スパイラル状の第2コイル導体パターン全体が幅広部であってもよい。
【0118】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、3つ以上の第2コイル導体パターンを有する樹脂多層基板の例を示す。
【0119】
図14は、第4の実施形態に係る樹脂多層基板104の外観斜視図である。
図15は、
図14におけるD-D断面図である。
【0120】
樹脂多層基板104は、積層体10B、コイルL3および外部電極P1A,P2A等を備える。外部電極P1A,P2Aは、第2の実施形態で説明したものと同じである。積層体10Bは、樹脂層の積層数が、第2の実施形態で説明した積層体10Aよりも多い。積層体10Bの他の構成は積層体10Aと同じである。
【0121】
以下、第2の実施形態に係る樹脂多層基板102と異なる部分について説明する。
【0122】
コイルL3は、3以上の樹脂層にそれぞれ形成される複数の(3つの第1コイル導体パターンCP11B,CP12B,CP13B、および3つの第2コイル導体パターンCP21B,CP22B,CP23B)を含んで構成されている。図示省略するが、コイルL3の第1端は外部電極P1Aに接続されており、コイルL3の第2端は外部電極P2Aに接続されている。
【0123】
第1コイル導体パターンCP11B,CP12B,CP13Bおよび第2コイル導体パターンCP21B,CP22B,CP23Bは、いずれも約1ターンの矩形ループ状の導体パターンである。
図15に示すように、本実施形態では、第1コイル導体パターンCP11B,CP12B,CP13Bと第2コイル導体パターンCP21B,CP22B,CP23Bとが、Z軸方向に交互に配置されている。具体的には、第2コイル導体パターンCP21B、第1コイル導体パターンCP11B、第2コイル導体パターンCP22B、第1コイル導体パターンCP12B、第2コイル導体パターンCP23Bおよび第1コイル導体パターンCP13Bの順に、-Z方向に配置されている。
【0124】
第2コイル導体パターンCP21Bの非重なり部NOP1は、重なり部OP1よりも第1コイル導体パターンCP11Bに近接するように湾曲している。第2コイル導体パターンCP22Bの非重なり部NOP2は、重なり部OP2よりも第1コイル導体パターンCP12Bに近接するように湾曲している。第2コイル導体パターンCP23Bの非重なり部NOP3は、重なり部OP3よりも第1コイル導体パターンCP13Bに近接するように湾曲している。
【0125】
また、Z軸方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP21B,CP22Bの非重なり部NOP1,NOP2は、第1コイル導体パターンCP11B,CP12Bに対して、径方向のそれぞれ逆方向に突出している。Z軸方向に隣接する2つの第2コイル導体パターンCP22B,CP23Bの非重なり部NOP2,NOP3は、第1コイル導体パターンCP12B,CP13Bに対して、径方向のそれぞれ逆方向に突出している。より具体的には、非重なり部NOP1,NOP3は、第1コイル導体パターンCP11B,CP12B,CP13Bよりも外周側に突出しており、非重なり部NOP2は、第1コイル導体パターンCP11B,CP12Bよりも内周側に突出している。
【0126】
本実施形態で示したように、第1コイル導体パターンの数は3以上でもよく、第2コイル導体パターンの数は3以上でもよい。また、例えば、第1コイル導体パターンの数は1でもよい。
【0127】
本実施形態に係る樹脂多層基板104は、第1主面側コイル導体パターン(第2コイル導体パターンの中で、Z軸方向において最も第1主面VS1寄りに位置する第2コイル導体パターンCP21B)および第2主面側コイル導体パターン(第2コイル導体パターンの中で、Z軸方向において最も第2主面VS2寄りに位置する第2コイル導体パターンCP23B)以外に、内層側に位置する第2コイル導体パターンCP22Bを備える。この構成によれば、第1主面側コイル導体パターンおよび第2主面側コイル導体パターンに設けられた非重なり部NOP1,NOP3だけでなく、内層側の第2コイル導体パターンCP22Bに設けられた非重なり部NOP2によっても、熱圧着時の樹脂の流動が抑制される。そのため、非重なり部が第1主面側コイル導体パターンおよび第2主面側コイル導体パターンのみに設けられている場合に比べて、コイル全体の位置ずれが抑制される。
【0128】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、第2コイル導体パターンが巻回軸に対して反対方向(反対側)に位置する第1部分および第2部分を有し、その第1部分および第2部分が同じ方向に突出する非重なり部を有する樹脂多層基板の例を示す。
【0129】
図16は、第5の実施形態に係る樹脂多層基板105の断面図である。樹脂多層基板105は、第1の実施形態に係る樹脂多層基板101(
図1参照)と同じ外観を有する。
図16には樹脂多層基板105のA-A断面(
図1参照)を示している。
【0130】
樹脂多層基板105は、コイルL4を備える点で、樹脂多層基板101と異なる。樹脂多層基板105の他の構成については、樹脂多層基板101と実質的に同じである。
【0131】
以下、第1の実施形態に係る樹脂多層基板101と異なる部分について説明する。
【0132】
コイルL4は、複数のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11D,CP12D、および第2コイル導体パターンCP21D,CP22D)を含んで構成される。コイルL4の第1端は外部電極P1に接続されており、コイルL4の第2端は外部電極P2に接続されている。
【0133】
第1コイル導体パターンCP11C,CP12Cおよび第2コイル導体パターンCP21C,CP22Cは、いずれも約1ターンの矩形ループ状の導体パターンである。第2コイル導体パターンCP21C、第1コイル導体パターンCP11C、第1コイル導体パターンCP12C、および第2コイル導体パターンCP22Cは、この順に-Z方向に配置されている。
【0134】
第2コイル導体パターンCP21Cは第1部分CP21C1および第2部分CP21C2を有する。第1部分CP21C1および第2部分CP21C2は、Z軸方向から視て、巻回軸AXに対して互いに反対方向に位置する。第1部分CP21C1は重なり部OP11および非重なり部NOP11を有する。第2部分CP22C2は重なり部OP12および非重なり部NOP12を有する。非重なり部NOP11および非重なり部NOP12は、Z軸方向から視て、第1コイル導体パターンCP11C,CP12Cに対して互いに同じ方向に突出している。
【0135】
同様に、第2コイル導体パターンCP22Cは第1部分CP22C1および第2部分CP22C2を有する。第1部分CP22C1および第2部分CP22C2は、Z軸方向から視て、巻回軸AXに対して互いに反対方向に位置する。第1部分CP22C1は重なり部OP21および非重なり部NOP21を有する。第2部分CP22C2は重なり部OP22および非重なり部NOP22を有する。非重なり部NOP21および非重なり部NOP22は、Z軸方向から視て、第1コイル導体パターンCP11C,CP12Cに対して互いに同じ方向に突出している。
【0136】
第2コイル導体パターンの第1部分および第2部分は互いに対向し、その第1部分および第2部分の非重なり部は、その第1部分および第2部分が互いに対向する方向において、第1コイル導体パターンに対して同じ方向に突出してもよい。
【0137】
第2コイル導体パターンCP21Cの第1部分CP21C1および第2コイル導体パターンCP22Cの第1部分CP22C1は、Z軸方向から視て、巻回軸AXに対して互いに同じ方向に位置する。非重なり部NOP11および非重なり部NOP21は、Z軸方向から視て、第1コイル導体パターンCP11C,CP12Cに対して互いに逆方向に突出している。
【0138】
同様に、第2コイル導体パターンCP21Cの第2部分CP21C2および第2コイル導体パターンCP22Cの第2部分CP22C2は、Z軸方向から視て、巻回軸AXに対して互いに同じ方向に位置する。非重なり部NOP12および非重なり部NOP22は、Z軸方向から視て、第1コイル導体パターンCP11C,CP12Cに対して互いに逆方向に突出している。
【0139】
非重なり部NOP11は、重なり部OP11よりも第1コイル導体パターンCP11C,CP12CにZ軸方向に近接するように湾曲する。非重なり部NOP21は、重なり部OP21よりも第1コイル導体パターンCP11C,CP12CにZ軸方向に近接するように湾曲する。即ち、非重なり部NOP11および非重なり部NOP21は、Z軸方向において、互いに逆方向に突出している。
【0140】
同様に、非重なり部NOP12は、重なり部OP12よりも第1コイル導体パターンCP11C,CP12CにZ軸方向に近接するように湾曲する。非重なり部NOP22は、重なり部OP22よりも第1コイル導体パターンCP11C,CP12CにZ軸方向に近接するように湾曲する。即ち、非重なり部NOP12および非重なり部NOP22は、Z軸方向において、互いに逆方向に突出している。
【0141】
第1の実施形態によれば、第2コイル導体パターンCP22は巻回軸AXに対して反対方向に位置する第1部分および第2部分を有し、その第1部分および第2部分の非重なり部NOP2は互いに向かい合う(
図3参照)。一方、第5の実施形態によれば、非重なり部NOP21および非重なり部NOP22は、Z軸方向から視て、第1コイル導体パターンCP11C,CP12Cに対して互いに同じ方向に突出している。このため、非重なり部NOP21および非重なり部NOP22は互いに向かい合わない。したがって、第5の実施形態によれば、第1の実施形態に比べて、非重なり部の間の不要な容量形成を抑制できる。
【0142】
また、第5の実施形態によれば、非重なり部NOP11および非重なり部NOP21は、Z軸方向から視て互いに逆方向に突出し、Z軸方向においても互いに逆方向に突出している。非重なり部NOP12および非重なり部NOP22についても同様である。このため、第2コイル導体パターンCP21C,CP22Cは、第1コイル導体パターンCP11C,CP12Cを囲むように挟む。その結果、熱圧着時の樹脂の流動に伴う第1コイル導体パターンCP11C,CP12Cの位置ずれおよび変形をさらに抑制できる。
【0143】
《第6の実施形態》
第1から第5の実施形態に係る樹脂多層基板は第2コイル導体パターンの間に第1コイル導体パターンを少なくとも1つの有する。第6の実施形態では、第2コイル導体パターンの間に第1コイル導体パターンが設けられない樹脂多層基板の例を示す。
【0144】
図17は、第6の実施形態に係る樹脂多層基板106の断面図である。樹脂多層基板106は、第1の実施形態に係る樹脂多層基板101(
図1参照)と同じ外観を有する。
図17には樹脂多層基板106のA-A断面(
図1参照)を示している。
【0145】
樹脂多層基板106は、コイルL5を備える点で、樹脂多層基板101と異なる。樹脂多層基板106の他の構成については、樹脂多層基板101と実質的に同じである。
【0146】
以下、第1の実施形態に係る樹脂多層基板101と異なる部分について説明する。
【0147】
コイルL5は、複数のコイル導体パターン(第1コイル導体パターンCP11D,CP12D、および第2コイル導体パターンCP21D,CP22D)を含んで構成される。第2コイル導体パターンCP21D、第2コイル導体パターンCP22D、第1コイル導体パターンCP11D、および第1コイル導体パターンCP12Dは、この順に-Z方向に配置されている。隣接する第2コイル導体パターンCP21D,CP22D間には第1コイル導体パターンが設けられていない。
【0148】
第2コイル導体パターンCP21Dの非重なり部NOP1は、第2コイル導体パターンCP21Dの重なり部OP1よりも第1コイル導体パターンCP11D,CP12DにZ軸方向に近接するように湾曲する。同様に、第2コイル導体パターンCP22Dの非重なり部NOP2は、第2コイル導体パターンCP22Dの重なり部OP2よりも第1コイル導体パターンCP11D,CP12DにZ軸方向に近接するように湾曲する。第2コイル導体パターンCP21Dの非重なり部NOP1と第2コイル導体パターンCP22Dの非重なり部NOP2とは、Z軸方向から視て、第1コイル導体パターンCP11D,CP12Dに対して、径方向において互いに逆方向に突出している。
【0149】
第6の実施形態でも、非重なり部の間の不要な容量形成を抑制できる。但し、より広範囲に第1コイルパターンの位置ずれや変形を抑えるためには、第1の実施形態のように第2コイル導体パターンを分散させて配置するのが好ましい。
【0150】
《その他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、積層体が、X軸方向に長手方向を有する直方体である例を示したが、積層体の形状はこれに限定されるものではない。積層体の形状は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。積層体の平面形状は、例えば多角形、円形、楕円形、L字形、U字形、クランク形、T字形、Y字形等でもよい。
【0151】
また、以上に示した各実施形態では、6つの樹脂層を熱圧着して形成される積層体の例を示したが、本発明の積層体はこれに限定されるものではない。積層体を形成する樹脂層の層数は適宜変更可能である。また、積層体の表面にカバーレイフィルムやレジスト膜等の保護膜が形成されていてもよい。
【0152】
なお、以上に示した各実施形態では、巻回軸AXがZ軸方向に一致したコイルL1,L2,L3の例を示したが、コイルの巻回軸AXはZ軸方向と厳密に一致しているものに限らない。本発明において「複数の樹脂層の積層方向に沿った巻回軸を有する」とは、例えばコイルの巻回軸AXがZ軸方向に対して-30°から+30°の範囲内である場合を含む。また、以上に示した各実施形態では、コイルが積層体の内部に形成される例を示したが、コイルは一部が積層体の表面に露出していてもよい。
【0153】
また、樹脂多層基板に形成される回路構成は、以上に示した各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。樹脂多層基板に形成される回路は、例えば導体パターンで形成されるキャパシタや各種フィルタ(ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタ)等の周波数フィルタが形成されていてもよい。また、樹脂多層基板には、各種伝送線路(ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン等)が形成されていてもよい。さらに樹脂多層基板には、チップ部品等の各種電子部品が実装または埋設されていてもよい。
【0154】
なお、第1コイル導体パターン、第2コイル導体パターンおよび外部電極の平面形状・位置・個数は、以上に示した各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。第1コイル導体パターンおよび第2コイル導体パターンの外形は矩形に限定されず、例えば多角形、円形、楕円形等でもよい。また、外部電極の平面形状は、例えば多角形、円形、楕円形、円弧状、リング状、L字形、U字形、T字形、Y字形、クランク形等でもよい。さらに、外部電極は、第2主面VS2上に形成されていてもよく、第1主面VS1側(または、第1主面VS1上)および第2主面VS2側(第2主面VS2上)の両方に形成されていてもよい。さらに、樹脂多層基板は、回路に接続されないダミー電極を備えていてもよい。
【0155】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0156】
AP1,AP1A,AP2,AP2A…開口
AX…コイルの巻回軸
CP11,CP11A,CP11B,CP11C,CP11D,CP12,CP12A,CP12B,CP12C,CP12D,CP13B…第1コイル導体パターン
CP21,CP21A,CP21B,CP21C,CP21D,CP22,CP22A,CP22B,CP22C,CP22D,CP23B…第2コイル導体パターン
HP1,HP2…開口部
L1,L2,L3,L4,L5…コイル
P1,P1A,P2,P2A…外部電極
V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7,V8…層間接続導体
VS1…積層体の第1主面
VS2…積層体の第2主面
WP1,WP2…幅広部
10,10A,10B…積層体
11,11a,12,12a,13,13a,14,14a、15,15a,16,16a…樹脂層
21,22,23…導体パターン
101,102,103,104,105,106…樹脂多層基板