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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】伝送線路部品および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20220809BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20220809BHJP
   H01F 17/08 20060101ALI20220809BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20220809BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220809BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/06 103
H01F17/08
H01F27/00 R
H05K1/02 B
H05K1/16 B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021573078
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2021000712
(87)【国際公開番号】W WO2021149540
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2020008881
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020157277
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 哲聡
(72)【発明者】
【氏名】西尾 恒亮
(72)【発明者】
【氏名】永井 智浩
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018134(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/098921(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/139046(WO,A1)
【文献】特開2000-277335(JP,A)
【文献】特開2005-302810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42
H05K 1/00- 1/02
H05K 1/09
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が伝送される方向である第1方向に延びる形状からなり、絶縁性材料を主体とする基材と、
前記基材に形成された第1の信号導体および第2の信号導体と、
前記第1の信号導体と前記第2の信号導体との結合を強め合うことによって形成されるコモンモードチョークコイルと、
を備え、
前記基材は、
前記コモンモードチョークコイルが形成されているコイル部と、
前記第1の信号導体と前記第2の信号導体との結合が前記コモンモードチョークコイルよりも弱い信号線路部と、
を備え、
前記信号線路部は、前記基材の厚み方向に曲がる湾曲部を有する、
伝送線路部品。
【請求項2】
前記コイル部の信号導体の幅は、前記信号線路部の信号導体の幅よりも小さい、
請求項1に記載の伝送線路部品。
【請求項3】
前記信号線路部の前記第1方向の長さは、前記コイル部の前記第1方向の長さよりも長い、
請求項1または請求項2に記載の伝送線路部品。
【請求項4】
前記信号線路部は、前記第1の信号導体および前記第2の信号導体に前記基材の厚み方向に対向するグランド導体を備える、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の伝送線路部品。
【請求項5】
前記基材は、熱可塑性樹脂を材料に含む、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の伝送線路部品。
【請求項6】
前記基材は、前記第1方向に離間して配置された第1外部接続導体と第2外部接続導体とを備え、
前記信号線路部は、前記第1方向において、前記コモンモードチョークコイルの一方端および前記第1外部接続導体に接続する第1信号線路部と、前記コモンモードチョークコイルの他方端および前記第2外部接続導体に接続する第2信号線路部と、を備え、
前記第1信号線路部は、前記湾曲部を有し、
前記第2信号線路部の複数の信号導体は、伝送する高周波信号の周波数の波長の1/2よりも短い、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の伝送線路部品。
【請求項7】
前記コイル部は、第1のコモンモードチョークコイルが形成された第1コイル部と、第2のコモンモードチョークコイルが形成された第2コイル部とを有し、
前記第1のコモンモードチョークコイルと前記第2のコモンモードチョークコイルは、前記第1の信号導体および前記第2の信号導体に接続する、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の伝送線路部品。
【請求項8】
前記第1のコモンモードチョークコイルの周波数特性と、前記第2のコモンモードチョークコイルの周波数特性とは、異なる、
請求項7に記載の伝送線路部品。
【請求項9】
前記コイル部の厚みは、前記信号線路部の厚みよりも厚い、
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の伝送線路部品。
【請求項10】
前記コモンモードチョークコイルは、前記厚み方向に平行な巻回軸を有するスパイラル形状のコイルである、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の伝送線路部品。
【請求項11】
前記コイル部の厚みは、前記信号線路部の厚みよりも厚く、
前記コモンモードチョークコイルは、前記厚み方向に平行な巻回軸を有するスパイラル形状のコイルであり、
前記基材の厚み方向において、前記コモンモードチョークコイルの一方端は、前記信号線路部と同じ位置にあり、他方端は、前記信号線路部と異なる位置にある、
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の伝送線路部品。
【請求項12】
前記コイル部は、磁性体を備える、
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の伝送線路部品。
【請求項13】
前記磁性体は、前記コイル部における前記コモンモードチョークコイルを挟む、
請求項12に記載の伝送線路部品。
【請求項14】
前記第1の信号導体及び前記第2の信号導体に接続し、前記基材に実装されるコモンモードチョークコイル素子を備える、
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の伝送線路部品。
【請求項15】
前記基材は、複数のコイル部及び複数の信号線路部を備えており、
前記複数のコイル部と前記複数の信号線路部は、交互に並んでおり、
前記複数のコイル部の信号導体の幅は、前記複数の信号線路部の信号導体の幅よりも小さく、
前記複数のコイル部の複数の信号導体間の距離は、前記複数の信号線路部の複数の信号導体間の距離よりも長い、
請求項1に記載の伝送線路部品。
【請求項16】
前記複数の信号線路部のディファレンシャルモードの高周波信号に対する特性インピーダンスと前記複数のコイル部のディファレンシャルモードの高周波信号に対する特性インピーダンスとの差は、前記複数の信号線路部のコモンモードの高周波信号に対する特性インピーダンスと前記複数のコイル部のコモンモードの高周波信号に対する特性インピーダンスとの差よりも小さい、
請求項15に記載の伝送線路部品。
【請求項17】
前記複数の信号線路部の前記第1方向の長さは、前記コイル部の前記第1方向の長さよりも長い、
請求項15又は請求項16に記載の伝送線路部品。
【請求項18】
前記複数の信号線路部の両端部は、テーパ形状を有しており、
前記複数の信号線路部の両端部の前記第1方向の長さのそれぞれは、前記複数のコイル部の前記第1方向の長さの1/4以下である、
請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の伝送線路部品。
【請求項19】
伝送線路部品と、該伝送線路部品が取り付けられる別部材と、を備え、
前記伝送線路部品は、
高周波信号が伝送される方向である第1方向に延びる形状からなり、絶縁性材料を主体とする基材と、
前記基材に形成された複数の信号導体と、
前記複数の信号導体の結合を強め合うことによって形成されるコモンモードチョークコイルと、
を備え、
前記基材は、
前記コモンモードチョークコイルが形成されているコイル部と、
前記複数の信号導体の結合が前記コモンモードチョークコイルよりも弱い信号線路部と、
を備え、
前記信号線路部は、前記基材の厚み方向に曲がる湾曲部を有し、
前記別部材は、前記伝送線路部品が取り付けられる面に段差を有し、
前記伝送線路部品は、前記湾曲部を前記段差に沿わせて配置される、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号を伝送する複数の線路導体と、コモンモードチョークコイルとを基材に配置した伝送線路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のフィルタ付きフラットケーブルは、基板本体、差動線路を構成する2本の信号線路、および、コモンモードチョークコイルを備える。
【0003】
2本の信号線路は、平行に配置された線状の導体パターンからなり、基板本体の一面に形成されている。
【0004】
コモンモードチョークコイルは、基板本体に表面実装される部品であり、筐体とその両端に形成された実装用端子を備える。コモンモードチョークコイルの実装用端子は、2本の信号線路を構成する導体パターンに接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-332302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構成では、例えば、基板本体が曲げられると、この曲げによる応力が、コモンモードチョークコイルの実装用端子と導体パターンの接合部に加わってしまう。これにより、接合部に対する不具合が生じ易い。接合部に対する不具合とは、接合部の剥離や、接合部へのクラック等である。そして、このような接合部の不具合によって、差動線路に不整合が生じてしまうことがある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、曲げ応力による差動線路の不具合の発生を抑制できる伝送線路部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の伝送線路部品は、基材、第1の信号導体、第2の信号導体、および、コモンモードチョークコイルを備える。基材は、高周波信号が伝送される方向である第1方向に延びる形状からなり、絶縁性材料を主体とする。第1の信号導体及び第2の信号導体は、基材に形成されている。コモンモードチョークコイルは、第1の信号導体と第2の信号導体との結合を強め合うことによって形成される。基材は、コモンモードチョークコイルが形成されているコイル部と、第1の信号導体と第2の信号導体との結合がコモンモードチョークコイルよりも弱い信号線路部と、を備える。信号線路部は、基材の厚み方向に曲がる湾曲部を有する。
【0009】
この構成では、基材が厚み方向に曲がる湾曲部は、信号線路部にある。したがって、コイル部の信号導体と信号線路部の信号導体との接続部に、曲げ応力が係り難い。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、曲げ応力による差動線路の不具合の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)は、第1の実施形態に係る伝送線路部品の外観斜視図であり、図1(B)、図1(C)は、側面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る伝送線路部品の分解斜視図である。
図3図3(A)、図3(B)、図3(C)、図3(D)は、第1の実施形態に係る伝送線路部品を構成する各層の平面図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る伝送線路部品の等価回路図である。
図5図5は、第2の実施形態に係る伝送線路部品のコモンモードチョークコイルの形状を示す分解斜視図である。
図6図6は、第3の実施形態に係る伝送線路部品の概略的な構成を示す側面図である。
図7図7(A)は、第4の実施形態に係る伝送線路部品の概略的な構成を示す側面図であり、図7(B)は、第4の実施形態に係る電子機器モジュールの概略的な構成を示す側面図である。
図8図8は、第5の実施形態に係る伝送線路部品の概略的な構成を示す側面図である。
図9図9は、第6の実施形態に係る伝送線路部品の概略的な構成を示す側面図である。
図10図10(A)および図10(B)は、それぞれに、第6の実施形態に係る伝送線路部品の回路パターンの一例を示す等価回路図である。
図11図11(A)、図11(B)は、特性の設定例を示すグラフである。
図12図12(A)および図12(B)は、それぞれに、第7の実施形態に係る伝送線路部品の回路パターンの一例を示す等価回路図である。
図13図13は、第8の実施形態に係る伝送線路部品の信号導体の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態に係る伝送線路部品について、図を参照して説明する。図1(A)は、第1の実施形態に係る伝送線路部品の外観斜視図であり、図1(B)、図1(C)は、側面図である。図2は、第1の実施形態に係る伝送線路部品の分解斜視図である。図3(A)、図3(B)、図3(C)、図3(D)は、第1の実施形態に係る伝送線路部品を構成する各層の平面図である。図3(A)、図3(B)、図3(C)は、第1主面側の面を示し、図3(D)は、第2主面側の面を示す。図4は、第1の実施形態に係る伝送線路部品の等価回路図である。図1(A)、図1(B)は、湾曲部を有する状態を示し、図1(C)、図2図3(A)、図3(B)、図3(C)、および、図3(D)は、構造を分かり易くするために、湾曲部を有する前の状態(湾曲部を有さない状態)を示す。
【0013】
(回路構成)
まず、第1の実施形態に係る伝送線路部品10の回路構成について説明する。図4に示すように、伝送線路部品10は、信号線路111、信号線路112、信号線路121、信号線路122、コモンモードチョークコイル300、外部接続端子P11、外部接続端子P12、外部接続端子P21、および、外部接続端子P22を備える。
【0014】
信号線路111は、外部接続端子P12とコモンモードチョークコイル300とに接続する。信号線路112は、外部接続端子P11とコモンモードチョークコイル300とに接続する。信号線路111は、第1の信号導体に相当する。
【0015】
信号線路121は、外部接続端子P22とコモンモードチョークコイル300とに接続する。信号線路122は、外部接続端子P21とコモンモードチョークコイル300とに接続する。信号線路121は、第2の信号導体に相当する。
【0016】
外部接続端子P11と外部接続端子P21とは、第1の端子対を構成する。外部接続端子P12と外部接続端子P22とは、第2の端子対を構成する。
【0017】
信号線路111、信号線路112、信号線路121、および、信号線路122は、高周波信号を伝送する。具体的には、信号線路111と信号線路121との組、および、信号線路112と信号線路122との組は、差動信号を伝送する。伝送線路部品10における信号線路111と信号線路121とが形成されている部分が、第1信号線路部TL1である。伝送線路部品10における信号線路112と信号線路122とが形成されている部分が、第2信号線路部TL2である。
【0018】
コモンモードチョークコイル300は、コイル301とコイル302とを備える。コイル301とコイル302とは、互いに電磁界結合するように配置されている。伝送線路部品10におけるコモンモードチョークコイル300が形成されている部分が、コイル部CLである。
【0019】
差動信号は、外部接続端子P11と外部接続端子P21とからなる第1の端子対から入力され、第2信号線路部TL2の信号線路112と信号線路122とを伝送し、コイル部CLのコモンモードチョークコイル300を介し、第1信号線路部TL1の信号線路111と信号線路121とを伝送して、外部接続端子P12と外部接続端子P22とからなる第2の端子対から出力される。もちろん、差動信号の伝送方向は、この逆であってもよい。
【0020】
このような構成によって、伝送線路部品10は、第1の端子対と第2の端子対との間で、差動信号を伝送し、且つ、差動信号に含まれるコモンモードノイズをコモンモードチョークコイル300にて抑圧する。
【0021】
(概略構造)
図1(A)、図1(B)、図1(C)、図2に示すように、伝送線路部品10は、絶縁基材20および保護膜71を備える。絶縁基材20は、直交する第1方向DIR1と第2方向DIR2に広がる矩形である。第1方向DIR1とは、伝送線路部品10において、信号線路111、信号線路112、信号線路121、および、信号線路122が延びる方向に平行な方向である。第2方向DIR2とは、第1方向DIR1および第3方向(厚み方向)DIR3に直交する方向である。
【0022】
具体的に、例えば、絶縁基材20は、第1方向DIR1が第2方向DIR2よりも長い形状を有する。絶縁基材20の第1方向DIR1の一方端が、絶縁基材20の第1端部E1であり、第1方向DIR1において、第1端部E1と反対側の他方端が、第2端部E2である。絶縁基材20は、第1方向DIR1および第2方向DIR2に平行な第1主面201と第2主面202とを有する。第1主面201と第2主面202は、第1方向DIR1および第2方向DIR2に直交する第3方向(厚み方向)DIR3に離間して配置され、互いに対向する。
【0023】
絶縁基材20の第2主面202には、外部端子導体611、外部端子導体612、外部端子導体613、外部端子導体614、および、外部端子導体615が形成されている。
【0024】
外部端子導体611、外部端子導体612、外部端子導体613、外部端子導体614、および、外部端子導体615は、矩形の導体パターンである。外部端子導体611、および、外部端子導体612は、第1端部E1の付近に配置されており、外部端子導体613、外部端子導体614、および、外部端子導体615は、第2端部E2の付近に配置されている。回路的には、外部端子導体611は、外部接続端子P11に対応し、外部端子導体612は、外部接続端子P21に対応する。同様に、回路的には、外部端子導体613は、外部接続端子P12に対応し、外部端子導体614は、外部接続端子P22に対応する。また、回路的には、外部端子導体615は、接地用端子(グランド接続用端子)に対応する。
【0025】
具体的な構成は後述するが、上述のコモンモードチョークコイル300、信号線路111、信号線路112、信号線路121、および、信号線路122は、図2図3(A)、図3(B)、図3(C)、図3(D)に示すように、絶縁基材20に形成されている。信号線路111、信号線路112、信号線路121及び信号線路122は、同一平面に形成されている。この際、コモンモードチョークコイル300は、第2端部E2よりも第1端部E1に近い位置に配置される。
【0026】
さらに、第1方向DIR1に沿った寸法において、第1信号線路部TL1の長さLtは、コイル部CLの長さLcLよりも長い。そして、図1(A)、図1(B)に示すように、絶縁基材20が湾曲部BDを有する場合、湾曲部BDは、第1信号線路部TL1内に配置される。なお、湾曲部BDとは、例えば、図1(A)、図1(B)に示すように、絶縁基材20が第1主面201および第2主面202に直交する方向(第3方向DIR3)に曲がる部分である。
【0027】
そして、このように、第1信号線路部TL1がコイル部CLよりも長いことで、第1信号線路部TL1に湾曲部BDを容易に形成できる。また、伝送線路部品10の第1方向DIR1における湾曲部BDを形成可能な領域が広くなり、設計の自由度が向上する。
【0028】
また、このような構成によって、コモンモードチョークコイル300と信号線路111および信号線路121との接続部(接合部)には、湾曲部BDによる曲げ応力および湾曲部BDを形成する際に生じる応力は、係り難い。これにより、接続部(接合部)の破断や部分的なクラック等が生じることは、抑制される。したがって、伝送線路部品10は、湾曲部BDに起因する曲げ応力による差動線路の不具合の発生を抑制できる。
【0029】
なお、このような湾曲部BDは、絶縁基材20を可撓性材料で形成することによって、容易に実現できる。より具体的には、例えば、絶縁基材20の主材料を熱可塑性樹脂とすることによって、容易に実現できる。工程としては、熱可塑性樹脂を主材料とする絶縁基材20を、湾曲部BDを模る金型で挟み込み、加熱プレスする。これにより、絶縁基材20は、塑性変形されて、湾曲部BDは、形成される。
【0030】
なお、湾曲部BDは、第1信号線路部TL1内にあれば、第1方向DIR1における位置は、図示したものに限るものではなく、湾曲する方向も、図に示す方向に限るものではない。
【0031】
保護膜71は、絶縁基材20の第1主面201に配置される。保護膜71は、第1主面201の略全面を覆っている。なお、保護膜71は、可撓性を有するものであればよい。
【0032】
また、保護膜71は、省略することも可能である。また、保護膜は、第2主面202に配置されていてもよい。
【0033】
(内部構造)
伝送線路部品10のより具体的な一例の構造は、図2図3(A)、図3(B)、図3(C)、図3(D)の通りである。
【0034】
図2図3(A)、図3(B)、図3(C)、図3(D)に示すように、絶縁基材20は、絶縁体層21、絶縁体層22、絶縁体層23、および、絶縁体層24の積層体である。絶縁体層21、絶縁体層22、絶縁体層23、および、絶縁体層24は、可撓性を有する材料からなり、熱可塑性樹脂を材料とすることが好ましい。例えば、絶縁体層21、絶縁体層22、絶縁体層23、および、絶縁体層24は、液晶ポリマ等を主材料としている。
【0035】
絶縁体層21は、平膜状であり、主面211と主面212とを有する。主面211が、絶縁基材20の第1主面201に対応する。絶縁体層21の主面211には、線状導体311、線状導体312、および、グランド導体41が形成されている。
【0036】
線状導体311および線状導体312は、第2端部E2よりも第1端部E1の近くに配置されている。線状導体311および線状導体312は、第1方向DIR1および第2方向DIR2の両方に対して直交および平行でない角度に沿って延びる形状である。線状導体311および線状導体312は、平行に配置されている。
【0037】
グランド導体41は、矩形の導体であり、絶縁体層21の主面211における第1信号線路部TL1の略全面に配置されている。
【0038】
絶縁体層21には、層間接続導体511、層間接続導体512、層間接続導体513、層間接続導体514、複数の層間接続導体515が形成されている。層間接続導体511、層間接続導体512、層間接続導体513、層間接続導体514、複数の層間接続導体515は、絶縁体層21における主面211と主面212との間を貫通する(厚み方向に貫通する)。
【0039】
絶縁体層22は、平膜状であり、主面221と主面222とを有する。絶縁体層22の主面221は、絶縁体層21の主面212に当接する。絶縁体層22の主面221には、配線導体321、配線導体322、信号線路導体323、信号線路導体324、補助導体325、補助導体326、複数のグランド用補助導体421が形成されている。
【0040】
配線導体321および配線導体322は、第1端部E1の近傍に配置されており、第2信号線路部TL2を構成する。配線導体321および配線導体322は、第1方向DIR1に平行に延びる形状であり、第2方向DIR2に沿って間隔を空けて配置されている。
【0041】
信号線路導体323および信号線路導体324は、第1信号線路部TL1を構成する。信号線路導体323および信号線路導体324は、第1方向DIR1に平行に延びる形状であり、第2方向DIR2に沿って間隔を空けて配置されている。より具体的には、信号線路導体323および信号線路導体324は、信号線路部ReTLの第1方向DIR1の略全長に亘って延びている。信号線路導体323および信号線路導体324は、絶縁基材20の厚み方向に対向している。
【0042】
補助導体325、補助導体326、および、複数のグランド用補助導体421は、平面視して矩形の導体である。補助導体325および補助導体326は、コイル部CLの一部を構成する。第1方向DIR1において、補助導体325は、配線導体321と信号線路導体323との間に配置されている。第1方向DIR1において、補助導体326は、配線導体322と信号線路導体324との間に配置されている。複数のグランド用補助導体421は、信号線路部ReTL内に配置されている。複数のグランド用補助導体421は、第1方向DIR1に平行に間隔を空けて配置されており、第2方向DIR2において、信号線路導体323と信号線路導体324との間に配置されている。
【0043】
絶縁体層22には、層間接続導体521、層間接続導体522、層間接続導体523、層間接続導体524、層間接続導体525、層間接続導体526、複数の層間接続導体527、層間接続導体528、および、層間接続導体529が形成されている。層間接続導体521、層間接続導体522、層間接続導体523、層間接続導体524、層間接続導体525、層間接続導体526、複数の層間接続導体527、層間接続導体528、および、層間接続導体529は、絶縁体層22における主面221と主面222との間を貫通する(厚み方向に貫通する)。
【0044】
絶縁体層23は、平膜状であり、主面231と主面232とを有する。絶縁体層23の主面231は、絶縁体層22の主面222に当接する。絶縁体層23の主面231には、線状導体331、線状導体332、グランド導体43、補助導体431、補助導体432、補助導体433、および、補助導体434が形成されている。
【0045】
線状導体331および線状導体332は、第2端部E2よりも第1端部E1の近くに配置されている。線状導体331および線状導体332は、第1方向DIR1および第2方向DIR2の両方に対して直交および平行でない角度に沿って延びる形状である。線状導体331および線状導体332は、平行に配置されている。線状導体331および線状導体332の延びる方向と、線状導体311および線状導体312の延びる方向の成す角は、例えば、略90°である。この成す角は、180°(0°)でなければよい。
【0046】
グランド導体43は、矩形の導体であり、絶縁体層23の主面231における第1信号線路部TL1の略全面に配置されている。
【0047】
補助導体431、補助導体432、補助導体433、および、補助導体434は、矩形の導体である。補助導体431および補助導体432は、第1端部E1の近傍に配置されている。補助導体433および補助導体434は、第2端部E2の近傍に配置されている。補助導体433は、導体非形成部403を介して、グランド導体43から分離されており、補助導体434は、導体非形成部404を介して、グランド導体43から分離されている。
【0048】
絶縁体層23には、層間接続導体531、層間接続導体532、層間接続導体533、層間接続導体534、複数の層間接続導体535が形成されている。層間接続導体531、層間接続導体532、層間接続導体533、層間接続導体534、複数の層間接続導体535は、絶縁体層23における主面231と主面232との間を貫通する(厚み方向に貫通する)。
【0049】
絶縁体層24は、平膜状であり、主面241と主面242とを有する。絶縁体層24の主面241は、絶縁体層23の主面232に当接する。絶縁体層24の主面242には、外部端子導体611、外部端子導体612、外部端子導体613、外部端子導体614、複数のグランド用の外部端子導体615が形成されている。
【0050】
外部端子導体611、外部端子導体612、外部端子導体613、外部端子導体614、複数のグランド用の外部端子導体615は、矩形の導体である。
【0051】
外部端子導体611、および、外部端子導体612は、第1端部E1の近傍に配置されている。外部端子導体613、外部端子導体614、複数のグランド用の外部端子導体615は、第2端部E2の近傍に配置されている。
【0052】
絶縁体層24には、絶縁体層23に続くように、層間接続導体531、層間接続導体532、層間接続導体533、層間接続導体534、複数の層間接続導体535が形成されている。層間接続導体531、層間接続導体532、層間接続導体533、層間接続導体534、複数の層間接続導体535は、絶縁体層24における主面241と主面242との間を貫通する(厚み方向に貫通する)。
【0053】
(導体の接続パターン)
配線導体321の一方端は、層間接続導体521、補助導体431、および、層間接続導体531を介して、外部接続端子P11である外部端子導体611に接続する。配線導体322の一方端は、層間接続導体522、補助導体432、および、層間接続導体532を介して、外部接続端子P21である外部端子導体612に接続する。この構成により、図4に示す信号線路112および信号線路122、すなわち、第2信号線路部TL2が実現される。
【0054】
配線導体321の他方端は、層間接続導体511を介して、線状導体311の一方端に接続する。線状導体311の他方端は、層間接続導体512、補助導体326、および、層間接続導体525を介して、線状導体331の一方端に接続する。線状導体331の他方端は、層間接続導体526を介して、信号線路導体323の一方端に接続する。これにより、外部接続端子P11に接続するコモンモードチョークコイル300のコイル301は、第1方向DIR1平行な巻回軸を有する形状で形成される。
【0055】
配線導体322の他方端は、層間接続導体523を介して、線状導体332の一方端に接続する。線状導体332の他方端は、層間接続導体524、補助導体325、および、層間接続導体513を介して、線状導体312の一方端に接続する。線状導体312の他方端は、層間接続導体514を介して、信号線路導体324の一方端に接続する。これにより、外部接続端子P21に接続するコモンモードチョークコイル300のコイル302は、第1方向DIR1平行な巻回軸を有する形状で形成される。
【0056】
そして、この構成では、コイル301を構成する線状導体311、331とコイル302を構成する線状導体312、332とが近接して平行に配置される。この際、線状導体311、331と線状導体312、332との電磁界結合は、配線導体321と配線導体322との電磁界結合、および、信号線路導体323と信号線路導体324との電磁界結合よりも強い。電磁界結合の強さは、例えば、並走する導体の長さ(並走距離)、並走する導体間の距離(間隔)によって調整できる。そして、この構成によって、コイル部CLに、コモンモードチョークコイル300が実現される。
【0057】
信号線路導体323の他方端は、層間接続導体528、補助導体433、および、層間接続導体533を介して、外部接続端子P12である外部端子導体613に接続する。信号線路導体324の他方端は、層間接続導体529、補助導体434、および、層間接続導体534を介して、外部接続端子P22である外部端子導体614に接続する。
【0058】
グランド導体41とグランド導体43とは、複数の層間接続導体515、複数のグランド用補助導体421、および、複数の層間接続導体527を介して接続される。また、グランド導体43は、複数の層間接続導体535をそれぞれに介して、複数のグランド用の外部端子導体615に接続する。
【0059】
この構成により、ストリップライン構造を備える、図4に示す信号線路111および信号線路121、すなわち、第1信号線路部TL1が実現される。
【0060】
この構成において、上述のように、湾曲部BDが第1信号線路部TL1内に配置されることで、コモンモードチョークコイル300に対して、曲げ応力が加わることは抑制される。特に、絶縁基材20が熱可塑性樹脂を主材料とすることによって、塑性変形で湾曲部BDを形成でき、コモンモードチョークコイル300に対して、曲げ応力が加わることは、さらに抑制される。
【0061】
また、この構成では、第1信号線路部TL1には、平板状のグランド導体41およびグランド導体43が備えられている。したがって、湾曲部BDの形状は、平板状のグランド導体41およびグランド導体43の塑性変形によって、安定に保たれる。なお、グランド導体41およびグランド導体43の少なくとも一方は省略することができる。湾曲部BDの曲率は、第1信号線路部TL1の曲率及び第2信号線路部TL2の曲率より大きい。
【0062】
また、この構成では、コモンモードチョークコイル300が第1端部E1に近い位置に形成されており、第2信号線路部TL2の第1方向DIR1に平行な長さが短い。これにより、第2信号線路部TL2でのノイズの伝送を抑制できる。この際、第2信号線路部TL2の長さ、すなわち、配線導体321および配線導体322の長さは、伝送線路部品10で伝送する高周波信号の波長の1/2未満であることが好ましい。これにより、第2信号線路部TL2における不要な共振の発生を抑制できる。
【0063】
また、上述の構成において、コイル部CLを構成する線状導体311、線状導体312、線状導体331、および、線状導体332の幅は、第1信号線路部TL1を構成する信号線路導体323および信号線路導体324の幅よりも小さいことが好ましい。これにより、コイル301およびコイル302のQが向上し、インダクタ特性が向上する。
【0064】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る伝送線路部品について、図を参照して説明する。図5は、第2の実施形態に係る伝送線路部品のコモンモードチョークコイルの形状を示す分解斜視図である。
【0065】
第2の実施形態に係る伝送線路部品10Aは、コモンモードチョークコイル300Aを備える。第2の実施形態に係る伝送線路部品10Aにおけるコモンモードチョークコイル300A以外の構成は、第1の実施形態に係る伝送線路部品10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0066】
コモンモードチョークコイル300Aは、線状導体311A、線状導体312A、線状導体331A、および、線状導体332Aを備える。線状導体311A、線状導体312A、線状導体331A、および、線状導体332Aは、全周に亘らない環状(部分的な環状)である。線状導体311Aと線状導体312Aとは、絶縁基材20の同層、すなわち、厚み方向(第3方向DIR3)における略同じ位置に配置されており、互いに並走している。線状導体331Aと線状導体332Aとは、絶縁基材20の同層、すなわち、厚み方向(第3方向DIR3)における略同じ位置に配置されており、互いに並走している。
【0067】
線状導体311Aおよび線状導体312Aが配置される層と、線状導体331Aおよび線状導体332Aが配置される層とは、異なる。言い換えれば、絶縁基材20の厚み方向(第3方向DIR3)において、線状導体311Aおよび線状導体312Aが配置される位置と、線状導体331Aおよび線状導体332Aが配置される位置とは、異なる。
【0068】
線状導体311Aと線状導体332Aとは、重なっており、線状導体312Aと線状導体331Aとは重なっている。
【0069】
線状導体311Aの一方端には、配線導体3111が接続し、他方端には、補助パッド導体3112が接続する。線状導体312Aの一方端には、配線導体3121が接続し、他方端には、補助パッド導体3122が接続する。
【0070】
線状導体331Aの一方端には、配線導体3311が接続し、他方端には、補助パッド導体3312が接続する。線状導体332Aの一方端には、配線導体3321が接続し、他方端には、補助パッド導体3322が接続する。
【0071】
補助パッド導体3112と補助パッド導体3312とは、層間接続導体510Aを介して接続する。補助パッド導体3122と補助パッド導体3322とは、層間接続導体520Aを介して接続する。
【0072】
このような構成によって、線状導体311Aおよび線状導体331Aを主たる部分とし、中央に所定面積の開口を有し、第3方向DIR3に平行な巻回軸を有するスパイラル形状の第1コイル(コイル301に相当)が形成される。また、線状導体312Aおよび線状導体332Aを主たる部分とし、中央に所定面積の開口を有し、第3方向DIR3に平行な巻回軸を有するスパイラル形状の第2コイル(コイル302に相当)が形成される。そして、第1コイルと第2コイルとが近接して配置されていることによって、コモンモードチョークコイル300Aが形成される。
【0073】
このように、伝送線路部品10Aは、第1の実施形態に係る伝送線路部品10に対して、巻回軸が異なり、絶縁基材20の厚み方向に平行な巻回軸を有するコモンモードチョークコイル300Aを有する構成を備える。そして、このような構成であっても、伝送線路部品10Aは、伝送線路部品10と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
また、この構成では、第1コイルを構成する線状導体と第2コイルを構成する線状導体とが、第1方向DIR1、第2方向DIR2、第3方向DIR3の全ての方向において近接し、結合し易い。したがって、コモンモードチョークコイル300Aは、所望の特性を、より確実に実現できる。
【0075】
また、この構成では、絶縁基材20を厚くすることなく、中央の開口の面積を大きくできる。これにより、伝送線路部品10Aは、薄型でありながら、コモンモードチョークコイル300Aを構成する第1コイルと第2コイルとの特性を向上できる。
【0076】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る伝送線路部品について、図を参照して説明する。図6は、第3の実施形態に係る伝送線路部品の概略的な構成を示す側面図である。
【0077】
図6に示すように、第3の実施形態に係る伝送線路部品10Bは、第1の実施形態に係る伝送線路部品10に対して、コイル部CL1、および、コイル部CL2を備える点で異なる。
【0078】
伝送線路部品10Bは、第1端部E1の近傍にコイル部CL1を備え、第2端部E2の近傍にコイル部CL2を備える。コイル部CL1の一方端は、第2信号線路部TL2に接続し、コイル部CL1の他方端は、第1信号線路部TL1に接続する。第1信号線路部TL1は、コイル部CL2の一方端に接続し、コイル部CL2の他方端は、第3信号線路部TL3に接続する。第3信号線路部TL3は、例えば、上述の実施形態に示した第2信号線路部TL2と同様の構成を備える。コイル部CL1、および、コイル部CL2の具体的な内部構造は、上述の第1、第2の実施形態に係る伝送線路部品10、10Aの構造と同様である。
【0079】
このような構成であっても、伝送線路部品10Bは、上述の各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、伝送線路部品10Bは、コイル部CL1およびコイル部CL2がそれぞれに外部接続端子の近傍に配置されるので、第2信号線路部TL2および第3信号線路部TL3の長さが短くなり、第2信号線路部TL2および第3信号線路部TL3でのノイズの伝送を抑制できる。
【0080】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る伝送線路部品について、図を参照して説明する。図7(A)は、第4の実施形態に係る伝送線路部品の概略的な構成を示す側面図であり、図7(B)は、第4の実施形態に係る電子機器モジュールの概略的な構成を示す側面図である。
【0081】
図7(A)に示すように、第4の実施形態に係る伝送線路部品10Cは、第1の実施形態に係る伝送線路部品10に対して、コイル部CLの厚みと第1信号線路部TL1の厚みとの関係において異なる。伝送線路部品10Cの他の構成は、伝送線路部品10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0082】
コイル部CLは、例えば、第2の実施形態に記載したコモンモードチョークコイル300Aを備える。ただし、本実施形態では、コモンモードチョークコイル300Aの構成において、配線導体3111および配線導体3121と、配線導体3311および配線導体3321との上下の位置関係は逆転している。
【0083】
配線導体3111および配線導体3121は、第1端部E1の近傍に配置される。これら配線導体3111および配線導体3121によって、第2信号線路部TL2が構成される。配線導体3311および配線導体3321は、第1信号線路部TL1との接続端部の近傍に配置される。
【0084】
配線導体3111および配線導体3121は、同層に配置される。配線導体3311および配線導体3321は、同層に配置される。絶縁基材20の厚み方向(第3方向DIR3)における、配線導体3111および配線導体3121の位置と、配線導体3311および配線導体3321の位置とは、異なる。より具体的には、配線導体3111および配線導体3121は、配線導体3311および配線導体3321よりも第2主面202に近い。言い換えれば、配線導体3311および配線導体3321は、配線導体3111および配線導体3121よりも第1主面201に近い。
【0085】
配線導体3311は、層間接続導体を介することなく、厚み方向(第3方向DIR3)の同じ位置に配置された信号線路導体323に接続する。配線導体3321は、層間接続導体を介することなく、厚み方向(第3方向DIR3)の同じ位置に配置された信号線路導体32に接続する。
【0086】
コイル部CLの厚みDcは、第1信号線路部TL1の厚みDtよりも大きい。これにより、コイル部CLの形状は、第1信号線路部TL1の形状よりも安定する(変形し難い)。逆に、第1信号線路部TL1は、コイル部CLよりも曲げ易い。したがって、伝送線路部品10Cは、第1信号線路部TL1において湾曲部BDを形成し易く、この湾曲部BDの形成によるコイル部CLの破損等の不具合を、さらに抑制できる。
【0087】
また、図7(A)、図7(B)に示すように、伝送線路部品10Cでは、第1信号線路部TL1の第1主面201とコイル部CLの第1主面201とは、段差を有することなく、繋がっている。一方、第1信号線路部TL1の第2主面202は、コイル部CLの第2主面202に対して、第1主面201側に凹む段差を介して繋がっている。すなわち、伝送線路部品10Cは、絶縁基材20における第1信号線路部TL1が形成される部分に凹部DIPを有する形状である。
【0088】
このような構成では、図7(B)に示すような電子機器モジュール90の構成を実現できる。電子機器モジュール90は、伝送線路部品10C、回路基板900、実装型電子部品990を備える。回路基板900には、実装用ランド901、実装用ランド902、および、コネクタ9020が配置されている。第1方向DIR1において、実装用ランド902は、実装用ランド901とコネクタ9020との間に配置されている。
【0089】
実装型電子部品990は、実装用ランド902に接続している。伝送線路部品10Cの外部端子導体611、612は、実装用ランド901に接続しており、伝送線路部品10Cの外部端子導体613、614に接続するコネクタ6130は、コネクタ9020に接続している。
【0090】
この際、伝送線路部品10Cが凹部DIPを有することによって、伝送線路部品10Cは、凹部DIPに実装型電子部品990が重なるように、回路基板900に接続できる。
【0091】
これにより、伝送線路部品10Cは、薄い第1信号線路部TL1を実装型電子部品990に重ね、厚いコイル部CLと同じ厚みの第1端部E1の外部端子導体611にて、回路基板900に接続できる。したがって、伝送線路部品10Cを、実装型電子部品990を回避して配置しなくても、電子機器モジュール90を薄型に構成できる。また、この構成では、湾曲部BDは、第1信号線路部TL1におけるコイル部CLと反対側の端部付近に配置される。したがって、湾曲部BDを形成することによるコイル部CLの破損等の不具合を、さらに抑制できる。
【0092】
また、この構成では、コモンモードチョークコイル300Aを外部端子導体611および外部端子導体612に接続する配線導体3111および配線導体3121(第2信号線路部TL2に対応する部分)は、第2主面202の近傍に配置される。したがって、外部端子導体611および外部端子導体612と配線導体3111および配線導体3121とを接続する層間接続導体を短くできる。したがって、コモンモードチョークコイル300Aと回路基板900との電気的な距離を短くでき、この間のノイズの伝送を抑制できる。
【0093】
また、図7(B)の構成では、コモンモードチョークコイル300Aに接続する配線導体3311および配線導体3321は、層間接続導体を介することなく、信号線路導体323および信号線路導体324に接続する。これにより、コモンモードチョークコイル300Aの線状導体331Aおよび線状導体332Aと信号線路導体323および信号線路導体324とを、層間接続導体を介することなく接続でき、接続の信頼性は向上する。そして、この構成によって、例えば、図7(A)に示すように、コイル部CLと第1信号線路部TL1との境界の近傍に、湾曲部BDが形成されても、コモンモードチョークコイル300Aと差動線路を構成する信号線路導体323および信号線路導体324との接続の信頼性が向上し、湾曲部BDを形成することによる上述のような各種の不具合の発生は抑制される。
【0094】
また、この構成では、曲げやすい第1信号線路部TL1側の第2端部E2をコネクタを介して回路基板900に接続し、曲がり難いコイル部CL側の第1端部E1をはんだ等によって直接回路基板900に接続する。これにより、伝送線路部品10Cは、回路基板900に対して、より安定的で、且つ、容易に、接続され、接続時における外部応力を小さくでき、接続時に生じる外部応力に起因する上述の各種の不具合の発生を抑制できる。
【0095】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る伝送線路部品について、図を参照して説明する。図8は、第5の実施形態に係る伝送線路部品の概略的な構成を示す側面図である。
【0096】
図8に示すように、第5の実施形態に係る伝送線路部品10Dは、第4の実施形態に係る伝送線路部品10Cに対して、コイル部CL内の構造において異なる。伝送線路部品10Dの他の構成は、伝送線路部品10Cと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0097】
伝送線路部品10Dのコイル部CL内には、磁性体81が配置されている。磁性体81は、第3方向DIR3において、コモンモードチョークコイルが形成されるコイル形成層を挟むように配置されている。磁性体81は、コイル部CLにおけるコモンモードチョークコイルを挟んでいる。磁性体81は、例えば、Mn-Zn系フェライト、Ni-Zn系フェライト等を材料としている。
【0098】
このような構成によって、コモンモードチョークコイルの特性は向上する。さらに、磁性体81は破損し易いが、厚みの厚いコイル部CL内に形成されていることによって、破損し難くなる。したがって、破損によるコモンモードチョークコイルの特性変化を抑制できる。
【0099】
なお、磁性体81は、コイル部を厚み方向(第3方向DIR3)において挟むだけではなく、第1方向DIR1、第2方向DIR2(図示を省略)において挟む構造であってもよい。
【0100】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る伝送線路部品について、図を参照して説明する。図9は、第6の実施形態に係る伝送線路部品の概略的な構成を示す側面図である。
【0101】
図9に示すように、第6の実施形態に係る伝送線路部品10Eは、第1の実施形態に係る伝送線路部品10に対して、コモンモードチョークコイル素子39を追加した点で異なる。伝送線路部品10Eの他の構成は、伝送線路部品10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0102】
伝送線路部品10Eは、コモンモードチョークコイル素子39を備える。コモンモードチョークコイル素子39は、表面実装型の部品であり、絶縁基材20の第1主面201に実装される。コモンモードチョークコイル素子39は、コイル部CLに実装される。なお、この際、コモンモードチョークコイル素子39の実装位置は、湾曲部BDからできる限り離れていることが好ましい。
【0103】
コモンモードチョークコイル300(図9では図示を省略している。)とコモンモードチョークコイル素子39とは、例えば、次に示すような回路構成によって、差動信号を伝送する信号線路に接続する。
【0104】
図10(A)および図10(B)は、それぞれに、第6の実施形態に係る伝送線路部品の回路パターンの一例を示す等価回路図である。
【0105】
図10(A)に示す伝送線路部品10E1では、コモンモードチョークコイル300と実装型のコモンモードチョークコイル素子39とは、1つの差動信号の信号線路対に対して、直列に接続している。
【0106】
外部接続端子P11には、信号線路112を介して、実装型のコモンモードチョークコイル素子39のコイル391が接続し、コイル391には、コモンモードチョークコイル300のコイル301が接続する。コイル301には、信号線路111が接続し、信号線路111には、外部接続端子P12が接続する。また、外部接続端子P21には、信号線路122を介して、実装型のコモンモードチョークコイル素子39のコイル392が接続し、コイル392には、コモンモードチョークコイル300のコイル302が接続する。
【0107】
コイル302には、信号線路121が接続し、信号線路121には、外部接続端子P22が接続する。
【0108】
図10(B)に示す伝送線路部品10E2では、コモンモードチョークコイル300とコモンモードチョークコイル素子39とは、それぞれ別の差動信号を伝送する信号線路の対に接続している。
【0109】
外部接続端子P11には、信号線路112を介して、コモンモードチョークコイル300のコイル301が接続する。コイル301には、信号線路111が接続し、信号線路111には、外部接続端子P12が接続する。外部接続端子P21には、信号線路122を介して、コモンモードチョークコイル300のコイル302が接続する。コイル302には、信号線路121が接続し、信号線路121には、外部接続端子P22が接続する。
【0110】
また、外部接続端子P31には、信号線路132を介して、コモンモードチョークコイル素子39のコイル391が接続する。コイル391には、信号線路131が接続し、信号線路131には、外部接続端子P32が接続する。外部接続端子P41には、信号線路142を介して、コモンモードチョークコイル素子39のコイル392が接続する。コイル392には、信号線路141が接続し、信号線路141には、外部接続端子P42が接続する。
【0111】
ここで、コモンモードチョークコイル300は、絶縁基材20に形成された線状導体によって形成されている。したがって、コモンモードチョークコイル300とコモンモードチョークコイル素子39とは、コイルの形状、磁性体の有無、磁性体の種類、絶縁体の種類等を、容易に異ならせることができる。これにより、コモンモードチョークコイル300とコモンモードチョークコイル素子39とは、異なる特性を容易に実現できる。図11(A)、図11(B)は、特性の設定例を示すグラフである。
【0112】
例えば、図11(A)に示すように、コモンモードチョークコイル300の共振周波数f1Aと、コモンモードチョークコイル素子39の共振周波数f2Aとを近接または一致させる。そして、それぞれの周波数特性を調整し、この構成を、例えば、図10(A)に示す回路構成に適用する。これにより、伝送線路部品10E1は、例えば、図11(A)に示すように、極周波数f12Aでの減衰量を、共振周波数f1Aおよび共振周波数f2Aでの減衰量よりも大きくでき、且つ、広帯域に亘って所定の減衰量を得られる構成を実現できる。なお、周波数特性とは、例えば、周波数と伝送線路部品の挿入損失との関係である。
【0113】
また、図11(B)に示すように、コモンモードチョークコイル300の共振周波数f1Bと、コモンモードチョークコイル素子39の共振周波数f2Bとを異ならせる。そして、この構成を、例えば、図10(B)に示す回路構成に適用する。これにより、伝送線路部品10E2は、それぞれに異なる周波数の差動信号に対して、コモンモードノイズを抑制し、それぞれの差動信号を伝送できる。
【0114】
また、上述のように、コモンモードチョークコイル300の共振周波数f1A、f1B、コモンモードチョークコイル素子39の共振周波数f2A、f2B、それぞれの周波数特性を適宜調整することによって、伝送線路部品10E、10E1、10E2は、伝送する差動信号の周波数の組合せ、個数等に応じて、コモンモードノイズを、より確実且つ安定して抑制できる。
【0115】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態に係る伝送線路部品について、図を参照して説明する。図12(A)および図12(B)は、それぞれに、第7の実施形態に係る伝送線路部品の回路パターンの一例を示す等価回路図である。
【0116】
図12(A)、図12(B)に示すように、第7の実施形態に係る伝送線路部品10F1、10F2は、第1の実施形態に係る伝送線路部品10に対して、2個のコモンモードチョークコイル300およびコモンモードチョークコイル300Aを備える点で異なる。
【0117】
伝送線路部品10F1、10F2の他の構成は、伝送線路部品10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0118】
図12(A)、図12(B)に示すコモンモードチョークコイル300は、上述の第1の実施形態に示したように、第1方向DIR1に平行な巻回軸を有する。コモンモードチョークコイル300Aは、第2の実施形態に示したように、第3方向DIR3に平行な巻回軸を有する。すなわち、コモンモードチョークコイル300とコモンモードチョークコイル300Aとは、巻回軸が直交するように、絶縁基材20に配置される。
【0119】
図12(A)の場合、伝送線路部品10F1は、図10(A)に示した伝送線路部品10E1と同様に、コモンモードチョークコイル300とコモンモードチョークコイル300Aは、1つの差動信号の信号線路対に、直列に接続している。
【0120】
図12(B)の場合、伝送線路部品10F2は、図10(B)に示した伝送線路部品10E2と同様に、コモンモードチョークコイル300とコモンモードチョークコイル300Aとは、それぞれに異なる差動信号の信号線路対に、接続している。
【0121】
図12(A)、図12(B)に示すように、コモンモードチョークコイル300の巻回軸とコモンモードチョークコイル300Aの巻回軸とが直交していることによって、コモンモードチョークコイル300とコモンモードチョークコイル300Aとの結合、干渉を抑制できる。特に、本発明の伝送線路部品では、コイル部CLの面積が小さく、コモンモードチョークコイル300とコモンモードチョークコイル300Aとは、近接して配置され易い。このような場合であっても、本実施形態の構成を備えることによって、コモンモードチョークコイル300とコモンモードチョークコイル300Aとの結合、干渉を効果的に抑制できる。
【0122】
なお、コモンモードチョークコイル300の巻回軸とコモンモードチョークコイル300Aの巻回軸とは、平行でなければよいが、直交(成す角が90°)に近いほど好ましい。
【0123】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態に係る伝送線路部品について、図を参照して説明する。図13は、第8の実施形態に係る伝送線路部品の信号導体の上面図である。
【0124】
伝送線路部品10Gの絶縁基材20は、複数のコイル部CL11~CL13及び複数の信号線路部TL11~TL14を備えている。複数のコイル部CL11~CL13及び複数の信号線路部TL11~TL14は、第1方向DIR1に交互に並んでいる。
【0125】
絶縁基材20の絶縁体層23には、信号導体701,703,705,707,709,711,713,715,721,723,725,727,729,731が設けられている。信号導体701,721,703,723,705,725,707は、この順に並ぶように直列に接続されている。信号導体709,727,711,729,713,731,715は、この順に並ぶように直列に接続されている。
【0126】
複数のコイル部CL11~CL13の信号導体721,723,725,727,729,731の幅は、複数の信号線路部TL11~TL14の信号導体701,703,705,707,709,711,713,715の幅よりも小さい。更に、複数のコイル部CL11~CL13の複数の信号導体721,723,725,727,729,731間の距離は、複数の信号線路部TL11~TL14の信号導体701,703,705,707,709,711,713,715間の距離よりも小さい。これにより、複数のコイル部CL11~CL13における信号導体721,723,725,727,729,731の結合は、複数の信号線路部TL11~TL14における信号導体701,703,705,707,709,711,713,715の結合よりも強い。従って、複数のコイル部CL11~CL13は、コモンモードチョークコイルとして機能する。すなわち、複数のコイル部CL11~CL13は、コモンモードの高周波信号を減衰する。
【0127】
また、複数の信号線路部TL11~TL14のディファレンシャルモードの高周波信号に対する特性インピーダンスは、複数のコイル部CL11~CL13のディファレンシャルモードの高周波信号に対する特性インピーダンスと整合している。複数の信号線路部TL11~TL14のディファレンシャルモードの高周波信号に対する特性インピーダンス、及び、複数のコイル部CL11~CL13のディファレンシャルモードの高周波信号に対する特性インピーダンスは、例えば、100Ωである。一方、複数の信号線路部TL11~TL14のコモンモードの高周波信号に対する特性インピーダンスは、複数のコイル部CL11~CL13のコモンモードの高周波信号に対する特性インピーダンスと整合していない。複数の信号線路部TL11~TL14のコモンモードの高周波信号に対する特性インピーダンスは、33オームである。複数のコイル部CL11~CL13のコモンモードの高周波信号に対する特性インピーダンスは、93オームである。以上のように、複数の信号線路部TL11~TL14のディファレンシャルモードの高周波信号に対する特性インピーダンス(100Ω)と複数のコイル部CL11~CL13のディファレンシャルモードの高周波信号に対する特性インピーダンス(100Ω)との差は、複数の信号線路部TL11~TL14のコモンモードの高周波信号に対する特性インピーダンス(33Ω)と複数のコイル部CL11~CL14のコモンモードの高周波信号に対する特性インピーダンス(93Ω)との差よりも小さい。
【0128】
これにより、ディファレンシャルモードの高周波信号は、複数の信号線路部TL11~TL14と複数のコイル部CL11~CL13との境界において殆ど反射しない。一方、コモンモードの高周波信号は、複数の信号線路部TL11~TL14と複数のコイル部CL11~CL13との境界において反射する。その結果、伝送線路部品10Gでは、ディファレンシャルモードの高周波信号が伝送され、コモンモードの高周波信号が減衰される。
【0129】
また、複数の信号線路部TL11~TL14の第1方向DIR1の長さL1は、コイル部CL11~CL13の第1方向DIR1の長さL2よりも長い。前記の通り、複数の信号線路部TL11~TL14の信号導体701,703,705,707,709,711,713,715の幅は、複数のコイル部CL11~CL13の信号導体721,723,725,727,729,731の幅より大きい。従って、複数の信号線路部TL11~TL14の信号導体701,703,705,707,709,711,713,715の単位長さ当たりの抵抗値は、複数のコイル部CL11~CL13の信号導体721,723,725,727,729,731の単位長さ当たりの抵抗値より小さい。そこで、複数の信号線路部TL11~TL14の第1方向DIR1の長さL1は、コイル部CL11~CL13の第1方向DIR1の長さL2よりも長い。これにより、伝送線路部品10Gにおいて、単位長さ当たりの抵抗値が小さい区間が長くなる。その結果、伝送線路部品10Gの挿入損失の低減が図られる。
【0130】
また、複数の信号線路部TL11~TL14の両端部は、テーパ形状を有している。複数の信号線路部TL11~TL14の両端部の第1方向DIR1の長さL3のそれぞれは、複数のコイル部CL11~CL13の第1方向DIR1の長さの1/4以下である。すなわち、複数のコイル部CL11~CL13の第1方向DIR1の長さは、十分に短く設計される。これにより、信号線路部TL11~TL14とコイル部CL11~CL13との境界におけるコモンモードの高周波信号に対する特性インピーダンスの変動が急激になる。従って、伝送線路部品10Gでは、ディファレンシャルモードの高周波信号が伝送され、コモンモードの高周波信号は、減衰される。
【0131】
なお、複数のコイル部CL11~CL13の信号導体721,723,725,727,729,731は、高周波信号の1/2波長の長さ程度に設計される。テーパ形状を有する区間の長さは、例えば、高周波信号の1/10程度に設計される。
【0132】
また、複数の信号線路部TL11~TL14においてテーパ形状を有する区間の幅は、図13の拡大図に示すように、連続的に変化していることが好ましい。すなわち、複数の信号線路部TL11~TL14の両端部には、角が形成されないことが好ましい。このように、複数の信号線路部TL11~TL14の両端部には、角が形成されないことにより、角に電界が集中することに起因する高周波信号の伝送ロスが低減される。
【0133】
なお、上述の各実施形態では、伝送線路部品の外部への接続を、外部端子導体によって実現する態様を一例として示した。しかしながら、コネクタを用いた態様であってもよく、外部端子導体を直接接続する態様と、コネクタを用いて接続する態様とを併用してもよい。
【0134】
なお、コモンモードチョークコイル300の周波数特性とコモンモードチョークコイル300Aの周波数特性とは異なっていてもよい。
【0135】
また、上述の各実施形態の構成は、適宜組み合わせることができ、組み合わせに応じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0136】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10E1、10E2、10F1、10F2,10G:伝送線路部品
111、112、121、122、131、132、141、142:信号線路
20:絶縁基材
21、22、23、24:絶縁体層
39:コモンモードチョークコイル素子
41、43:グランド導体
71:保護膜
81:磁性体
90:電子機器モジュール
201:第1主面
202:第2主面
211、212、221、222、231、232、241、242:主面
300:コモンモードチョークコイル
300A:コモンモードチョークコイル
301:コイル
302:コイル
311、311A、312、312A、331、331A、332、332A:線状導体
321、322:配線導体
323、324:信号線路導体
325、326:補助導体
391:コイル
392:コイル
403、404:導体非形成部
421:グランド用補助導体
431、432、433、434:補助導体
510A、511、512、513、514、515、520A、521、522、523、524、525、526、527、528、529、531、532、533、534、535:層間接続導体
611、612、613、614:外部端子導体
615:グランド用の外部端子導体
701、703、705、707、709、711、713、715、721、723、725、727、729、731:信号導体
900:回路基板
901、902:実装用ランド
990:実装型電子部品
3111、3121、3311、3321:配線導体
3112、3122、3312、3322:補助パッド導体
6130、9020:コネクタ
BD:湾曲部
DIP:凹部
DIR1:第1方向
DIR2:第2方向
DIR3:第3方向
Dt:厚み
E1:第1端部
E2:第2端部
f1A、f1B、f2A、f2B:共振周波数
f12A:極周波数
P11、P12、P21、P22、P31、P32、P41、P42:外部接続端子
CL、CL11~CL13:コイル部
TL1:第1信号線路部
TL2:第2信号線路部
TL11~TL14:信号線路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13