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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】開扉装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 79/22 20140101AFI20220809BHJP
   E05B 79/06 20140101ALI20220809BHJP
   E05B 79/20 20140101ALI20220809BHJP
   E05B 83/38 20140101ALI20220809BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20220809BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
E05B79/22 A
E05B79/06 A
E05B79/20
E05B83/38
B60J5/00 L
B60J5/04 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019124640
(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公開番号】P2021011682
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】高山 達也
(72)【発明者】
【氏名】多賀 隆雄
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043990(JP,A)
【文献】特開2004-308183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前側の端部を軸にして開閉されるスイングドアの車両後方に隣設され、且つ前記スイングドアが開かれている状態で車両後側の端部を軸にして開閉されるアクセスドアの開扉装置であって、
車体ルーフ部に設けられる上部ストライカを係止した状態でロック可能であり、このロックを解除する上部オープンレバーを有する上部ロック装置と、
車体フロア部に設けられる下部ストライカを係止した状態でロック可能であり、このロックを解除する下部オープンレバーを有する下部ロック装置と、
前記上部オープンレバーに接続される上部ケーブル及び前記下部オープンレバーに接続される下部ケーブルを介して、前記上部オープンレバー及び前記下部オープンレバーをロック解除方向に動作させるハンドル装置と、
を備え、
前記上部ロック装置及び/又は前記下部ロック装置は、前記上部オープンレバー及び/又は前記下部オープンレバーをロック解除方向とは反対方向に付勢する第1付勢部材を有し、
前記ハンドル装置は、
前記上部オープンレバー及び前記下部オープンレバーをロック解除方向に動作させるためのロック解除操作が入力されるハンドルと、
前記上部ケーブル及び前記下部ケーブルが接続される第1レバーと、
前記ロック解除操作に応じて第1方向に回転し、この回転を前記第1レバーに伝達する第2レバーと、
前記第2レバーを前記第1方向とは反対の第2方向に付勢し、前記第2レバーを初期位置に復帰させる第2付勢部材と、
を有し、
前記第2レバーは、前記初期位置から回転を開始して前記第1レバーに回転を伝達するまでの間に、遊びストロークを有する開扉装置。
【請求項2】
請求項1記載の開扉装置であって、
前記第1レバーと前記第2レバーとは、前記ハンドルの前記ロック解除操作に応じて前記第2レバーが前記第1方向に回転する際に互いに係合する被押圧部と押圧部とそれぞれ有し、
前記第2レバーが前記初期位置にある場合に、前記第1レバーの前記被押圧部と、前記第2レバーの前記押圧部とは離間している開扉装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の開扉装置であって、
前記ハンドル装置は、前記アクセスドアの前端部に設けられ、
前記スイングドアが全閉状態及び半ドア状態にある場合に、前記ロック解除操作が入力された前記ハンドルは前記スイングドアの後端部に当接し、この当接によって前記ロック解除操作が規制される開扉装置。
【請求項4】
請求項3項記載の開扉装置であって、
前記遊びストロークは、前記ハンドルが半ドア状態の前記スイングドアの後端部に当接するまでの前記第2レバーのストローク以上である開扉装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載の開扉装置であって、
前記ハンドルを回転可能に支持し、且つ前記第1レバー及び前記第2レバーを回転可能に同軸に支持する単一のブラケットを備える開扉装置。
【請求項6】
請求項5記載の開扉装置であって、
前記上部ケーブルは、前記アクセスドアのパネルに固定され、
前記ブラケットは、
前記上部ケーブルの端末部を保持する上部ケーブル保持部と、
前記アクセスドアのパネルに挿し込まれる突出部と、
ボルトが挿通される複数の締結孔と、
を有し、
前記パネルに固定された前記上部ケーブルに吊り下げられ且つ前記突出部が前記パネルに設けられた係止孔に挿し込まれることにより、前記ブラケットは前記パネルに仮固定され、
前記ブラケットが前記パネルに仮固定されている状態で、前記ブラケットの前記締結孔は、前記パネルのボルト孔と重なって配置される開扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセスドアの開扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のサイドドアとして、車両前側の端部を軸にして開閉されるスイングドアと、スイングドアの車両後方に隣設され且つ車両後側の端部を軸にして開閉されるアクセスドアとを備えるサイドドアが知られている。
【0003】
特許文献1に記載されたサイドドアは、前部ドア(スイングドア)と、後部ドア(アクセスドア)とを備える。後部ドアは、車体ルーフ部に設けられる上部ストライカを係止した状態でロック可能な上部ロック装置と、車体フロア部に設けられる下部ストライカを係止した状態でロック可能な下部ロック装置とによって閉じた状態に保持される。そして、前部ドアは、後部ドアの前端部に設けられるストライカを係止した状態でロック可能なロック装置によって閉じた状態に保持される。
【0004】
前部ドアを閉じた状態に保持するロック装置は、前部ドアのハンドルの操作によってロック解除可能である。また、後部ドアを閉じた状態に保持する上部ロック装置及び下部ロック装置は、後部ドアのハンドル装置によってロック解除可能である。このハンドル装置は、後部ドアの車内側に設けられるオープニングハンドルと、ケーブルを介して上部ロック装置及び下部ロック装置と連結されるレバーとを有し、オープニングハンドルに入力されるロック解除操作に応じてレバーを回動させる。レバーの回動に伴ってケーブルが引っ張られ、これにより上部ロック装置及び下部ロック装置が作動し、上部ロック装置及び下部ロック装置のロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4206288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたサイドドアにおいて、前部ドアが閉じた状態でオープニングハンドルにロック解除操作が入力された場合に、オープニングハンドルが前部ドアに当接してロック解除操作が規制される。このため、ロック解除操作に対して上部ロック装置及び下部ロック装置は作動せず、ロックが維持される。すなわち、後部ドアは、単独で開かれることはなく、基本的には前部ドアが開いた状態で開かれる。
【0007】
ただし、前部ドアが半ドア状態であると、ロック解除操作の規制が緩くなる。この場合に、車両の振動等が加わることによって上部ロック装置及び下部ロック装置が作動してしまい、ロックが解除される虞がある。このような不用意なロック解除を防止するために、例えばレバーにおけるケーブルとの接続部を長孔とし、ケーブルを引っ張ることなくレバーを回動させる遊びを設定することが考えられる。しかし、ケーブルに弛みが生じ得る。ケーブルに弛みが生じると、ケーブルが接続されている上部ロック装置及び下部ロック装置並びにハンドル装置において異音が生じ得る。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、不用意なロック解除を防止し、異音の発生を抑制可能な、アクセスドアの開扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の開扉装置は、車両前側の端部を軸にして開閉されるスイングドアの車両後方に隣設され、且つ前記スイングドアが開かれている状態で車両後側の端部を軸にして開閉されるアクセスドアの開扉装置であって、車体ルーフ部に設けられる上部ストライカを係止した状態でロック可能であり、このロックを解除する上部オープンレバーを有する上部ロック装置と、車体フロア部に設けられる下部ストライカを係止した状態でロック可能であり、このロックを解除する下部オープンレバーを有する下部ロック装置と、前記上部オープンレバーに接続される上部ケーブル及び前記下部オープンレバーに接続される下部ケーブルを介して、前記上部オープンレバー及び前記下部オープンレバーをロック解除方向に動作させるハンドル装置と、を備え、前記上部ロック装置及び/又は前記下部ロック装置は、前記上部オープンレバー及び/又は前記下部オープンレバーをロック解除方向とは反対方向に付勢する第1付勢部材を有し、前記ハンドル装置は、前記上部オープンレバー及び前記下部オープンレバーをロック解除方向に動作させるためのロック解除操作が入力されるハンドルと、前記上部ケーブル及び前記下部ケーブルが接続される第1レバーと、前記ロック解除操作に応じて第1方向に回転し、この回転を前記第1レバーに伝達する第2レバーと、前記第2レバーを前記第1方向とは反対の第2方向に付勢し、前記第2レバーを初期位置に復帰させる第2付勢部材と、を有し、前記第2レバーは、前記初期位置から回転を開始して前記第1レバーに回転を伝達するまでの間に、遊びストロークを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、不用意なロック解除を防止し、異音の発生を抑制可能な、アクセスドアの開扉装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態を説明するための、開扉装置の一例の模式図である。
図2図1の開扉装置の下部ロック装置の斜視図である。
図3図2の下部ロック装置の一部を省略した斜視図である。
図4図1の開扉装置のハンドル装置の斜視図である。
図5図4のハンドル装置の側面図である。
図6図4のハンドル装置の平面図である。
図7図4のハンドル装置の動作を示す平面図である。
図8図4のハンドル装置の固定構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す車両のサイドドア1は、スイングドア2と、スイングドア2の車両後方に隣設されたアクセスドア3とを備える。スイングドア2は、車両前側の端部を軸にして開閉され、アクセスドア3は、車両後側の端部を軸にして開閉される。開扉装置10は、アクセスドア3に設けられており、アクセスドア3の開扉を制御する。
【0013】
開扉装置10は、上部ロック装置11と、下部ロック装置12と、ハンドル装置13とを備える。上部ロック装置11は、アクセスドア3の上端部に設置されており、車体ルーフ部に設けられる上部ストライカS1を係止した状態でロック可能である。下部ロック装置12は、アクセスドア3の下端部に設置されており、車体フロア部に設けられる下部ストライカS2を係止した状態でロック可能である。そして、上部ロック装置11が上部ストライカS1を係止し、下部ロック装置12が下部ストライカS2を係止した状態でそれぞれロックされることにより、アクセスドア3は閉じた状態に保持される。ハンドル装置13は、アクセスドア3の前端部に設置されており、上部ケーブル14を介して上部ロック装置11と連結され、また、下部ケーブル15を介して下部ロック装置12と連結され、上部ロック装置11及び下部ロック装置12のロックを解除可能である。
【0014】
スイングドア2には、ロック装置16と、ドアハンドル17とが設けられている。ロック装置16は、スイングドア2の後端部に設置されており、アクセスドア3の前端部に設けられるストライカS3を係止した状態でロック可能である。ストライカS3を係止した状態として、フルラッチ状態と、ハーフラッチ状態とが設定されおり、ロック装置16がフルラッチ状態でロックされた場合に、スイングドア2は全閉状態に保持され、ロック装置16がハーフラッチ状態でロックされた場合に、スイングドア2は半ドア状態に保持される。ドアハンドル17は、スイングドア2の車外側に設置されており、図示しないケーブルを介してロック装置16と連結され、ロック装置16のロックを解除可能である。
【0015】
図2及び図3は、下部ロック装置12を示す。
【0016】
下部ロック装置12は、ボディ20と、カバープレート21と、バックプレート22と、ラッチ24、ラチェット25と、中継レバー26と、オープンレバー27とを備える。なお、図3では、ボディ20及びバックプレート22は省略されている。
【0017】
ボディ20は樹脂材料からなり、カバープレート21及びバックプレート22は金属製の板材からなり、カバープレート21及びバックプレート22は、ボディ20を間に挟んでボディ20にそれぞれ組み付けられている。カバープレート21には、ストライカ溝30が設けられており、下部ストライカS2は、アクセスドア3の閉動作に応じてストライカ溝30に進入し、また、アクセスドア3の開動作に応じてストライカ溝30から脱出する。
【0018】
ラッチ24及びラチェット25は、ボディ20とカバープレート21との間に収容されている。ラッチ24は、カバープレート21に立設されたラッチ軸31によって回転可能に支持されており、ラチェット25は、カバープレート21に立設されたラチェット軸32によって回転可能に支持されている。ラッチ24は、下部ストライカS2と係合する係合溝33を有し、係合溝33の開口部がストライカ溝30に重なって配置されるアンラッチ位置と、係合溝33の開口部がストライカ溝30から逸れて配置されるラッチ位置との間で回転可能である。ラチェット25は、ラッチ位置に配置されたラッチ24の係合溝33の開口部と係合する係合部34を有し、係合部34が係合溝33の開口部と係合するロック位置と、係合部34が係合溝33の開口部から外れるアンロック位置との間で回転可能である。ラチェット25は、ばねによって、アンロック位置からロック位置に向けて矢印A方向に付勢されている。
【0019】
アクセスドア3の閉動作に伴い、下部ストライカS2が、カバープレート21のストライカ溝30に進入し、ラッチ24の係合溝33に収容される。係合溝33に収容された下部ストライカS2はラッチ24を押圧し、押圧されたラッチ24はアンラッチ位置からラッチ位置に向けて矢印A方向とは反対方向に回転する。ラッチ24がラッチ位置に配置されると、係合溝33の開口部はストライカ溝30の一方の側壁によって閉じられ、下部ストライカS2は係合溝33から脱出不能となる。これにより、下部ストライカS2はラッチ24によって係止される。
【0020】
そして、ラッチ24がラッチ位置に配置されると、ラチェット25がアンロック位置からロック位置に向けて矢印B方向に回転し、係合溝33の開口部とラチェット25の係合部34とが係合する。係合溝33の開口部と係合部34とが係合することにより、ラッチ位置からアンラッチ位置に向けたラッチ24の回転が阻止される。これにより、ラッチ24が下部ストライカS2を係止している状態でロックされ、アクセスドア3は閉じた状態に保持される。
【0021】
中継レバー26は、バックプレート22上でラチェット軸32によって回転可能に支持されており、ラチェット25と同軸に配置され、ラチェット25と一体に回転する。オープンレバー27は、バックプレート22に立設されたレバー軸35によって回転可能に支持されている。オープンレバー27は、中継レバー26と係合する係合部36を一方の端部に有し、係合部36が中継レバー26から離間して配置される初期位置と、係合部36が中継レバー26と係合し且つ中継レバー26を押し込むロック解除位置との間で回転可能である。また、オープンレバー27の他方の端部には、下部ケーブル15の一端が固定されている。
【0022】
アクセスドア3が閉じた状態に保持されている際に、ハンドル装置13においてロック解除操作が行われた場合に、下部ケーブル15がハンドル装置13側に引っ張られ、下部ケーブル15の一端が固定されているオープンレバー27が初期位置からロック解除位置に向けて矢印C方向(ロック解除方向)に回転する。オープンレバー27の回転に伴って係合部36が中継レバー26と係合し、オープンレバー27が中継レバー26を押圧する。押圧された中継レバー26が矢印D方向に回し、ラチェット25もまた中継レバー26と一体に矢印D方向に回転し、ロック位置からアンロック位置に移動する。これにより、ラチェット25の係合部34がラッチ24の係合溝33の開口部から外れ、ラッチ24はラッチ位置からアンラッチ位置に向けて回転可能となる。こうして、ロックが解除される。
【0023】
図示は省略するが、上部ロック装置11は、基本的に下部ロック装置12と同様に構成されており、ラッチと、ラチェットと、オープンレバーとを備え、上部ケーブル14の一端はオープンレバーに固定されている。ハンドル装置13においてロック解除操作が行われた場合に、上部ケーブル14がハンドル装置13側に引っ張られ、オープンレバーが初期位置からロック解除位置に向けて回転する。オープンレバーの回転に伴ってラチェットが回転し、ラチェットがロック位置からアンロック位置に移動する。これにより、ラッチのロックが解除される。
【0024】
そして、上部ロック装置11及び下部ロック装置12の少なくとも一方は、オープンレバーを初期位置に向けて付勢する第1付勢部材を有し、本例では、下部ロック装置12が、第1付勢部材としてのトーションばね28を有する。なお、下部ロック装置12に替えて上部ロック装置11が第1付勢部材を有してもよく、上部ロック装置11及び下部ロック装置12の両方が第1付勢部材を有してもよい。
【0025】
トーションばね28は、オープンレバー27を初期位置に向けて矢印C方向とは反対方向に付勢しており、ハンドル装置13においてロック解除操作が行われていない場合、すなわち、下部ケーブル15が引っ張られていない場合に、オープンレバー27は初期位置に保持される。さらに、トーションばね28の付勢は、下部ケーブル15、ハンドル装置13、及び上部ケーブル14を介して、上部ロック装置のオープンレバーにも伝達される。これにより、上部ロック装置のオープンレバーもまた初期位置に保持される。
【0026】
図4から図6は、ハンドル装置13を示す。
【0027】
ハンドル装置13は、ブラケット40と、ハンドル41と、第1レバー42と、第2レバー43とを備える。ハンドル41には、上部ロック装置11及び下部ロック装置12のロックを解除するためのロック解除操作が入力される。第1レバー42には、上部ケーブル14及び下部ケーブル15が接続されている。第2レバー43は、ハンドル41と第1レバー42との間に介在し、ロック解除操作に応じて回転し、この回転を第1レバー42に伝達する。これにより、第1レバー42が回転し、上部ケーブル14及び下部ケーブル15が引っ張られ、上部ロック装置11及び下部ロック装置12のロックが解除される。
【0028】
ブラケット40は、金属製の板材からなり、折り曲げ、切り起こし等の曲げ加工によって形成される単一の部材である。ブラケット40は、ハンドル41の回転軸となるハンドル軸50を保持しており、また、第1レバー42及び第2レバー43に共通の回転軸となるレバー軸51を保持している。
【0029】
ハンドル41は、ハンドル軸50によって回転可能に支持されている。ハンドル41は、アクセスドア3の車内側に露出して配置される操作部52と、第2レバー43と係合する押圧部53とを有する。ロック解除操作に対し、ハンドル41は、ハンドル軸50を中心にして、図6に示される初期位置から矢印F方向に回転する。操作部52は、アクセスドア3の前端部よりも車両前側において、車体フロアと略平行な円弧軌道に沿って車外側に移動される。押圧部53もまた、車体フロアと略平行な円弧軌道に沿って移動される。
【0030】
操作部52の軌道は、全閉状態又は半ドア状態に保持されているスイングドア2の後端部と交差しており、スイングドア2が全閉状態又は半ドア状態に保持されている場合に、操作部52はスイングドア2の後端部に当接する。このため、ロック解除操作が規制される。一方、スイングドア2が開いた状態では、スイングドア2の後端部が操作部52の軌道から外れる。したがって、ロック解除操作の完了が可能である。
【0031】
第2レバー43は、レバー軸51によって回転可能に支持されている。第2レバー43は、ハンドル41と係合する被押圧部54と、第1レバー42と係合する押圧部55とを有する。被押圧部54は、ハンドル41の押圧部53の軌道上で、ロック解除操作に伴って移動する押圧部53の前側に配置されている。ロック解除操作に伴い、矢印F方向に回転するハンドル41によって被押圧部54が押圧され、第2レバー43は、図5に示される初期位置から矢印G方向(第1方向)に回転する。
【0032】
第2レバー43は、第2付勢部材であるトーションばね56によって矢印G方向とは反対方向(第2方向)に付勢されている。さらに、ハンドル41の押圧部53と第2レバー43の被押圧部54との接触が常に維持され、ハンドル41もまた、トーションばね56によって付勢される。ロック解除操作が行われていない場合には、ハンドル41及び第2レバー43は、それぞれの初期位置に保持されている。
【0033】
第1レバー42は、第2レバー43と同軸に配置されており、レバー軸51によって回転可能に支持されている。第1レバー42は、第2レバー43と係合する被押圧部57と、上部ケーブル14の芯線の一端が固定される上部ケーブル接続部58と、下部ケーブル15の芯線の一端が固定される下部ケーブル接続部59とを有する。被押圧部57は、第2レバー43の押圧部55の軌道上で、ロック解除操作に伴って移動する押圧部55の前側に配置されている。ロック解除操作に伴い、矢印G方向に回転する第2レバー43によって被押圧部57が押圧され、第1レバー42もまた図4に示される初期位置から矢印G方向に回転する。
【0034】
そして、上部ケーブル14の芯線14aの一端が固定されている上部ケーブル接続部58は、第1レバー42の回転に伴って下方に移動する。また、下部ケーブル15の芯線15aの一端が固定されている下部ケーブル接続部59は、レバー軸51を挟んで上部ケーブル接続部58とは反対側に設けられており、第1レバー42の回転に伴って上方に移動する。これにより、上部ケーブル14及び下部ケーブル15がそれぞれハンドル装置13側に引っ張られる。これにより、上部ロック装置11及び下部ロック装置12のオープンレバーが初期位置からロック解除方向に回転し、上部ロック装置11及び下部ロック装置12のロックが解除される。
【0035】
ここで、下部ロック装置12のオープンレバー27(図2及び図3参照)は、トーションばね28(図2及び図3参照)によってロック解除方向とは反対方向に付勢されている。下部ケーブル15のハンドル装置13側への引っ張りが解除されると、オープンレバー27は自動的に初期位置に復帰し、下部ケーブル15は下部ロック装置12側に引き戻される。したがって、ロック解除操作が行われていない場合には、第1レバー42は、図5に示される初期位置に保持されている。
【0036】
ハンドル41、第1レバー42、及び第2レバー43が、それぞれの初期位置に配置されている状態で、ハンドル41の押圧部53と第2レバー43の被押圧部54とは接触している。一方、第2レバー43の押圧部55と第1レバー42の被押圧部57とは離間している。したがって、ロック解除操作がハンドル41に入力された際に、第2レバー43が直ちに回転するのに対し、第1レバー42は、第2レバー43の回転によって押圧部55と被押圧部57とが係合した後に回転する。すなわち、第2レバー43は、その初期位置から回転を開始して第1レバー42に回転を伝達するまでの間に、遊びストロークθを有する。
【0037】
図7は、スイングドア2が半ドア状態に保持されている場合におけるハンドル装置13の動作を示す。
【0038】
上述したとおり、ハンドル41の操作部52の軌道は、全閉状態又は半ドア状態に保持されているスイングドア2の後端部と交差しており、スイングドア2が全閉状態又は半ドア状態に保持されている場合に、操作部52はスイングドア2の後端部に当接する。これにより、ロック解除操作が規制される。ただし、半ドア状態に保持されているスイングドア2は、全閉状態に保持されているスイングドア2よりも僅かに開かれている。このため、スイングドア2が半ドア状態に保持されている場合には、ロック解除操作の規制が緩くなる。
【0039】
しかし、第2レバー43は、その初期位置から回転を開始して第1レバー42に回転を伝達するまでの間に、遊びストロークθ(図5参照)を有する。ロック解除操作の規制が緩くなることに起因して、操作部52がスイングドア2の後端部に当接するまでのハンドル41のストロークが増加したとしても、ハンドル41のストロークの増加分を第2レバー43の遊びストロークθによって吸収でき、第2レバー43から第1レバー42への回転の伝達を遮断できる。これにより、不用意なロック解除を防止できる。
【0040】
また、ロック解除操作が行われていない状態では、ハンドル41及び第2レバー43は、第2レバー43を付勢するトーションばね56によって初期位置に保持される。そして、第1レバー42は、下部ケーブル15を介し、下部ロック装置12のオープンレバー27(図2及び図3参照)を付勢するトーションばね28(図2及び図3参照)によって初期位置に保持される。下部ロック装置12のオープンレバー27は、言うまでもなくトーションばね28によって初期位置に保持され、さらに、上部ロック装置11のオープンレバーもまた、上部ケーブル14及び下部ケーブル15並びに第1レバー42を介して、トーションばね28によって初期位置に保持される。このように、可動なハンドル41、第1レバー42、第2レバー43、オープンレバー27、及び上部ロック装置のオープンレバーをそれぞれの初期位置に保持しているので、上部ロック装置11、下部ロック装置12、及びハンドル装置13における異音の発生を抑制できる。
【0041】
好ましくは、ハンドル41の操作部52が半ドア状態のスイングドア2の後端部に当接するまでの第2レバー43のストロークは、第2レバー43の遊びストロークθ以下に設定される。換言すれば、操作部52が半ドア状態のスイングドア2の後端部に当接したタイミングで、第2レバー43の押圧部55と第1レバー42の被押圧部57とが接触するか、又は押圧部55と被押圧部57との間に隙間が残される。これにより、製造上の誤差に起因して、操作部52がスイングドア2の後端部に当接するまでのハンドル41のストロークが設計値に対して増加し、及び/又は第2レバー43の遊びストロークθが設計値に対して減少したとしても、スイングドア2が半ドア状態に保持されている場合における不用意なロック解除をより確実に防止できる。
【0042】
図8は、ハンドル装置13の固定構造を示す。
【0043】
ハンドル装置13のブラケット40は、複数の締結孔60を有し、締結孔60に挿通されるボルトによってアクセスドア3のパネル4に固定される。また、ブラケット40は、締結孔60とは別に、ハンドル装置13をアクセスドア3のパネル4に仮固定する突出部61を有する。突出部61はクランク状に折り曲げられており、パネル4に設けられている係止孔62に挿し込まれ、パネル4の表面及び裏面に沿って配置される。また、ブラケット40は、上部ケーブル保持部63と、上部ケーブル保持部64とを有する。上部ケーブル保持部63は、上部ケーブル14のアウターシースの端末部14bを保持し、下部ケーブル保持部64は、下部ケーブル15のアウターシースの端末部15bを保持する。
【0044】
ハンドル装置13がパネル4に固定される際に、まず、上部ロック装置11及び下部ロック装置12がアクセスドア3に固定される。上部ロック装置11には上部ケーブル14が予め接続されており、下部ロック装置12には下部ケーブル15が予め接続されている。次に、上部ケーブル14のシースの端末部14bがブラケット40の上部ケーブル保持部63に保持される。そして、上部ケーブル14が、パネル4に設置されているクリップ65に固定される。ハンドル装置13は、パネル4に固定された上部ケーブル14に吊り下げられる。
【0045】
次に、ブラケット40の突出部61がパネル4の係止孔62に挿し込まれる。上部ケーブル14に吊り下げられ、且つ突出部61がパネル4に挿し込まれることにより、ブラケット40はパネル4に仮固定される。ブラケット40がパネル4に仮固定されている状態で、ブラケット40の締結孔60は、パネル4のボルト孔66と重なって配置される。各締結孔60にボルトが挿通され、ブラケット40はパネル4に固定される。
【0046】
以上、説明したとおり、本明細書に開示された開扉装置は、車両前側の端部を軸にして開閉されるスイングドアの車両後方に隣設され、且つ前記スイングドアが開かれている状態で車両後側の端部を軸にして開閉されるアクセスドアの開扉装置であって、車体ルーフ部に設けられる上部ストライカを係止した状態でロック可能であり、このロックを解除する上部オープンレバーを有する上部ロック装置と、車体フロア部に設けられる下部ストライカを係止した状態でロック可能であり、このロックを解除する下部オープンレバーを有する下部ロック装置と、前記上部オープンレバーに接続される上部ケーブル及び前記下部オープンレバーに接続される下部ケーブルを介して、前記上部オープンレバー及び前記下部オープンレバーをロック解除方向に動作させるハンドル装置と、を備え、前記上部ロック装置及び/又は前記下部ロック装置は、前記上部オープンレバー及び/又は前記下部オープンレバーをロック解除方向とは反対方向に付勢する第1付勢部材を有し、前記ハンドル装置は、前記上部オープンレバー及び前記下部オープンレバーをロック解除方向に動作させるためのロック解除操作が入力されるハンドルと、前記上部ケーブル及び前記下部ケーブルが接続される第1レバーと、前記ロック解除操作に応じて第1方向に回転し、この回転を前記第1レバーに伝達する第2レバーと、前記第2レバーを前記第1方向とは反対の第2方向に付勢し、前記第2レバーを初期位置に復帰させる第2付勢部材と、を有し、前記第2レバーは、前記初期位置から回転を開始して前記第1レバーに回転を伝達するまでの間に、遊びストロークを有する。
【0047】
また、本明細書に開示された開扉装置は、前記第1レバーと前記第2レバーとが、前記ハンドルの前記ロック解除操作に応じて前記第2レバーが前記第1方向に回転する際に互いに係合する係合部を有し、前記第2レバーが前記初期位置にある場合に、前記第1レバーの前記係合部と、前記第2レバーの前記係合部とは離間している。
【0048】
また、本明細書に開示された開扉装置は、前記ハンドル装置が、前記アクセスドアの前端部に設けられ、前記スイングドアが全閉状態及び半ドア状態にある場合に、前記ロック解除操作が入力された前記ハンドルは前記スイングドアの後端部に当接し、この当接によって前記ロック解除操作が規制される。
【0049】
また、本明細書に開示された開扉装置は、前記遊びストロークが、前記ハンドルが半ドア状態の前記スイングドアの後端部に当接するまでの前記第2レバーのストローク以上である。
【0050】
また、本明細書に開示された開扉装置は、前記ハンドルを回転可能に支持し、且つ前記第1レバー及び前記第2レバーを回転可能に同軸に支持する単一のブラケットを備える。
【0051】
また、本明細書に開示された開扉装置は、前記上部ケーブルが、前記アクセスドアのパネルに固定され、前記ブラケットは、前記上部ケーブルの端末部を保持する上部ケーブル保持部と、前記アクセスドアのパネルに挿し込まれる突出部と、ボルトが挿通される複数の締結孔と、を有し、前記パネルに固定された前記上部ケーブルに吊り下げられ且つ前記突出部が前記係止孔に挿し込まれることにより、前記ブラケットは前記パネルに仮固定され、前記ブラケットが前記パネルに仮固定されている状態で、前記ブラケットの前記締結孔は、前記パネルのボルト孔と重なって配置される。
【符号の説明】
【0052】
1 サイドドア
2 スイングドア
3 アクセスドア
4 パネル
10 開扉装置
11 上部ロック装置
12 下部ロック装置
13 ハンドル装置
14 上部ケーブル
15 下部ケーブル
16 ロック装置
17 ドアハンドル
20 ボディ
21 カバープレート
22 バックプレート
24 ラッチ
25 ラチェット
26 中継レバー
27 オープンレバー
28 トーションばね(第1付勢部材)
30 ストライカ溝
31 ラッチ軸
32 ラチェット軸
33 係合溝
34 係合部
35 レバー軸
36 係合部
40 ブラケット
41 ハンドル
42 第1レバー
43 第2レバー
50 ハンドル軸
51 レバー軸
52 操作部
53 押圧部
54 被押圧部
55 押圧部
56 トーションばね(第2付勢部材)
57 被押圧部
58 上部ケーブル接続部
59 下部ケーブル接続部
60 締結孔
61 突出部
62 係止孔
63 上部ケーブル保持部
64 下部ケーブル保持部
65 クリップ
66 ボルト孔
S1 上部ストライカ
S2 下部ストライカ
S3 ストライカ
θ 遊びストローク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8