(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】湿度センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
G01N27/22 A
(21)【出願番号】P 2018132189
(22)【出願日】2018-07-12
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三谷 勇太
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0132542(US,A1)
【文献】特開2012-146449(JP,A)
【文献】特開2011-196835(JP,A)
【文献】特開昭60-166854(JP,A)
【文献】特開2013-057616(JP,A)
【文献】特開昭63-201559(JP,A)
【文献】特開2006-133191(JP,A)
【文献】米国特許第04379406(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された
アルミニウム合金膜からなる下部電極と、
前記下部電極上に形成され
た塑性変形抑制膜と、
前記塑性変形抑制膜上に形成された絶縁性の保護膜と、
前記保護膜を介して前記塑性変形抑制膜
および前記下部電極を覆う
高分子材料からなる感湿膜と、
前記感湿膜上に形成された上部電極と、
前記上部電極を覆う高分子材料からなるオーバーコート膜と、
を有
し、
前記塑性変形抑制膜は、前記感湿膜に対する熱処理による前記下部電極の塑性変形及びマイグレーション現象の発生を抑制する湿度センサ。
【請求項2】
前記感湿膜は、ポリイミドにより形成されている請求項1に記載の湿度センサ。
【請求項3】
前記塑性変形抑制膜は、前記下部電極より硬質の材料により形成されている請求項1または2に記載の湿度センサ。
【請求項4】
前記塑性変形抑制膜は、導電膜である請求項3の湿度センサ。
【請求項5】
前記導電膜は、TiN膜またはTiW膜である請求項4に記載の湿度センサ。
【請求項6】
前記塑性変形抑制膜は、絶縁膜である請求項1または2に記載の湿度センサ。
【請求項7】
前記絶縁膜は、SiO
2膜、SiN膜、またはAl
2O
3膜である請求項6に記載の湿度センサ。
【請求項8】
前記絶縁膜は、膜厚が400nm以上のSiO
2膜である請求項6に記載の湿度センサ。
【請求項9】
前記下部電極の下面に形成された下地膜をさらに有する請求項1ないし
8いずれか1項に記載の湿度センサ。
【請求項10】
前記下地膜は、TiN膜またはTiW膜である請求項
9に記載の湿度センサ。
【請求項11】
基板上に積層された
アルミニウム合金膜からなる第1導電膜及び第2導電膜を加工することにより、前記基板上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられ
た塑性変形抑制膜とを形成する工程と、
前記塑性変形抑制膜上に絶縁性の保護膜を形成する工程と、
前記保護膜を介して前記塑性変形抑制膜
および前記下部電極を覆うように
高分子材料からなる感湿膜を形成する工程と、
前記感湿膜に対して熱処理を行う
ことにより前記感湿膜を硬化する工程と、
前記感湿膜上に上部電極を形成する工程と、
前記上部電極を覆うように高分子材料からなるオーバーコート膜を形成する工程と、
前記オーバーコート膜に対して熱処理を行うことにより前記感湿膜を硬化する工程と、
を有
し、
前記塑性変形抑制膜は、前記感湿膜に対する熱処理による前記下部電極の塑性変形及びマイグレーション現象の発生を抑制する湿度センサの製造方法。
【請求項12】
前記高分子材料は、ポリイミドである請求項11に記載の湿度センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式の湿度センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湿度センサには、吸収した水分量に応じて誘電率が変化する高分子材料で形成された感湿膜を誘電体として用いた静電容量式の湿度センサがある。この静電容量式の湿度センサの電極構造として、櫛歯型や平行平板型が知られている。
【0003】
櫛歯型とは、対向する一対の櫛歯状電極を同一平面上に設け、当該一対の櫛歯状電極上に感湿膜を設けた構造である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
平行平板型とは、基板上に形成された下部電極と、当該下部電極上に対向して設けられた上部電極との間に感湿膜を設けた構造である。この平行平板型の湿度センサでは、感湿膜は、下部電極が形成された基板上に、例えば、スピンコート及びフォトリソグラフィ技術を用いて形成される。この感湿膜を形成する高分子材料として、例えばポリイミドを用い、感湿膜の形成後に感湿膜に対して熱処理を行うことが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-516192号公報
【文献】特開平4-19553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、平行平板型の湿度センサを製造する際に、下部電極上に感湿膜を形成した後、感湿膜に対して熱処理を行うと、下部電極が加熱されてマイグレーション現象が発生する恐れがある。下部電極にマイグレーション現象が生じると、下部電極の表面にヒロックと呼ばれる突起物が自発成長する。下部電極上に突起物が成長して、この突起物が感湿膜を貫通した場合には、下部電極と上部電極とが電気的にショートし、湿度センサが動作不能となってしまう。
【0007】
本発明は、下部電極上におけるヒロックの発生を抑制することを可能とする湿度センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術は、基板上に形成されたアルミニウム合金膜からなる下部電極と、前記下部電極上に形成された塑性変形抑制膜と、前記塑性変形抑制膜上に形成された絶縁性の保護膜と、前記保護膜を介して前記塑性変形抑制膜および前記下部電極を覆う高分子材料からなる感湿膜と、前記感湿膜上に形成された上部電極と、前記上部電極を覆う高分子材料からなるオーバーコート膜と、を有し、前記塑性変形抑制膜は、前記感湿膜に対する熱処理による前記下部電極の塑性変形及びマイグレーション現象の発生を抑制する湿度センサである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下部電極上におけるヒロックの発生を抑制することを可能とする湿度センサが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来技術の問題点を説明するための湿度センサの断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る湿度センサの概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図1のA-A線沿う断面を概略的に示す断面図である。
【
図5】湿度センサの製造時における断面構造を示す図である。
【
図6】湿度センサの製造時における断面構造を示す図である。
【
図7】塑性変形抑制膜によるヒロック抑制効果を示す光学顕微鏡写真である。
【
図8】第1実施形態の変形例に係る湿度センサの概略構成を示す断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る湿度センサの概略構成を示す断面図である。
【
図10】保護膜の厚膜化によるヒロック抑制効果を示す光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<従来技術の問題点の説明>
発明を実施するための形態を説明する前に、従来技術の問題点をより具体的に説明する。
図1は、従来技術の問題点を説明するための湿度センサ200の断面図である。
【0012】
湿度センサ200は、平行平板型の静電容量式湿度センサである。絶縁基板20上に絶縁膜21を介して下部電極10が設けられている。下部電極10上には、保護膜23を介して感湿膜11が設けられている。保護膜23は、例えば、厚みが100nmの酸化シリコン(SiO2)膜である。感湿膜11は、例えば、ポリイミドにより形成される。
【0013】
感湿膜11上には、複数の開口12aを有する上部電極12が形成されている。上部電極12上には、保護膜24を介してオーバーコート膜25が形成されている。
【0014】
湿度センサ200の製造時には、感湿膜11を製膜した後、感湿膜11に対して熱処理が行われる。この熱処理により下部電極10にマイグレーション現象が発生する恐れがある。下部電極10にマイグレーション現象が発生すると、同図に示すように、ヒロックと呼ばれる突起物40が下部電極10から自発成長する。この突起物40が感湿膜11を貫通すると、下部電極10と上部電極12とが電気的にショートし、湿度センサ200が動作不能となってしまう。なお、ヒロックには、ウィスカと呼ばれる針状等の突起物も含まれる。
【0015】
なお、同図では、下部電極10上に保護膜23が設けられているが、この保護膜23は下部電極10の酸化や腐食等の影響を抑制することを目的とするものであるため、突起物40の発生を抑制することはできない。
【0016】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0017】
<第1実施形態>
[概略構成]
第1実施形態に係る湿度センサの構成について説明する。
図2は、第1実施形態に係る湿度センサ100の概略構成を示す平面図である。
図3は、
図2のA-A線沿う断面を概略的に示す断面図である。なお、
図2では、湿度センサ100に含まれる下部電極10、感湿膜11、及び上部電極12のみを概略的に示している。
【0018】
湿度センサ100は、平行平板型の静電容量式湿度センサである。湿度センサ100は、シリコン(Si)基板等の絶縁基板20をベースとして形成されている。絶縁基板20上には、SiO2等で形成された絶縁膜21が設けられている。
【0019】
絶縁膜21上には、平板状の下部電極10が設けられている。下部電極10は、例えば、アルミニウム合金の一種であるAl-Si-Cu合金により形成された導電膜である。下部電極10の厚みは、例えば200nmである。なお、下部電極10は、Al-Si合金等、他のアルミニウム合金で形成されていてもよい。
【0020】
下部電極10上には、下部電極10の塑性変形を抑制するための塑性変形抑制膜22が設けられている。塑性変形抑制膜22は、下部電極10の表面上にのみ設けられており、下部電極10と同一の平面形状を有する。塑性変形抑制膜22は、下部電極10よりも硬質の膜であり、例えば、窒化チタン(TiN)膜である。塑性変形抑制膜22の厚みは、100nm以上であることが好ましい。塑性変形抑制膜22の厚みは、例えば100nmとする。なお、塑性変形抑制膜22は、TiN膜に限られず、TiW膜等であってもよい。
【0021】
塑性変形抑制膜22は、導電性を有し、下部電極10に接触しているので、下部電極10の一部として機能する。
【0022】
塑性変形抑制膜22上には、酸化シリコン等で形成された保護膜23が設けられている。保護膜23は、塑性変形抑制膜22の上面と、塑性変形抑制膜22及び下部電極10の側面を覆っている。保護膜23の厚みは、例えば100nmである。保護膜23は、アルミナ(Al2O3)や、窒化シリコン(SiN)で形成されていてもよい。
【0023】
下部電極10上には、塑性変形抑制膜22及び保護膜23を介して、感湿膜11が設けられている。感湿膜11は、保護膜23、塑性変形抑制膜22、及び下部電極10の全体を覆っている。感湿膜11は、厚みが0.5μm~1.5μmである水分子を吸着しやすい高分子材料で形成されている。感湿膜11は、例えば、厚みが1μmのポリイミド膜であることが好ましい。
【0024】
なお、感湿膜11を形成する高分子材料は、ポリイミドに限られず、セルロース、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)などであってもよい。また、塑性変形抑制膜22上の保護膜23は、必須ではなく、感湿膜11を塑性変形抑制膜22上に直接設けてもよい。
【0025】
感湿膜11の上面は平坦であり、この上面に、平板状の上部電極12が形成されている。上部電極12は、例えば、厚みが200nmのアルミニウム(Al)等で形成された導電膜である。上部電極12は、感湿膜11、保護膜23、及び塑性変形抑制膜22を介して、下部電極10に対向している。
【0026】
上部電極12には、空気中の水分子を感湿膜11に効率的に取り込むために、複数の開口12aが形成されている。これらの開口12aにより、上部電極12の平面形状は、格子状となっている。開口12aは、可能な限り小さいほうが好ましく、小さいほど空気中への電界の漏れが防止される。実際は、多数の開口12aが形成されている。なお、上部電極12の平面形状は、格子状に限られず、ラダー状等であってもよい。
【0027】
上部電極12上には、酸化シリコン等で形成された保護膜24が形成されている。この保護膜24は、上部電極12の酸化や腐食を防止するために設けられているが、必須ではない。
【0028】
上部電極12上には、保護膜24を介してオーバーコート膜25が設けられている。オーバーコート膜25は、高分子材料で形成されており、例えば、感湿膜11と同一の材料で形成されている。オーバーコート膜25の厚みは、例えば0.5μm~10μmである。
【0029】
なお、オーバーコート膜25には、上部電極12の一部を露出させる電源接続用の開口(図示せず)が設けられている。また、オーバーコート膜25及び感湿膜11には、下部電極10の一部を露出させる電源接続用の開口(図示せず)が設けられている。
【0030】
[製造方法]
次に、湿度センサ100の製造方法について説明する。
図4は、湿度センサ100の製造工程を例示する工程図である。
図5及び
図6は、湿度センサ100の製造時における断面構造を示す図である。
【0031】
まず、絶縁基板20としてのシリコンウエハを用意する(ステップS1)。次に、
図5(A)に示すように、絶縁基板20上に、絶縁膜21としてのSiO
2膜を製膜する(ステップS2)。
【0032】
次に、
図5(B)に示すように、絶縁膜21上に、下部電極10を形成するための第1導電膜10aを、例えば200nmの膜厚で製膜し、第1導電膜10a上に、塑性変形抑制膜22を形成するための第2導電膜22aを、例えば100nmの膜厚で製膜する。これにより、第1導電膜10a上に第2導電膜22aが積層される。例えば、第1導電膜10aの材料はAl-Si-Cu合金であり、第2導電膜22aの材料はTiNである。
【0033】
次に、第2導電膜22a上にレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィを行うことにより、
図5(C)に示すように、所定の形状のレジストパターン30を形成する。そして、レジストパターン30をマスクとして、イオンミリング等のエッチング法により第2導電膜22aを加工し、続けて第1導電膜10aを加工する。その後、レジストパターン30を除去して洗浄する。これにより、
図5(D)に示すように、下部電極10及び塑性変形抑制膜22が形成される(ステップS3)。
【0034】
次に、塑性変形抑制膜22上を覆うように、保護膜23としてのSiO
2膜を、例えば100nmの膜厚で製膜する(ステップS4)。そして、
図6(A)に示すように、保護膜23を介して塑性変形抑制膜22及び下部電極10の全体を覆うように、感湿膜11を形成する(ステップS5)。具体的には、例えば、高分子材料としてポリイミドを、スピンコート、バーコータ、スプレイコータ等の方法で、例えば1μmの厚さに塗布し、プリベークを行う。そして、感湿膜11上に、レジストパターン(図示せず)を形成し、このレジストパターンに基づいて感湿膜11を所定の形状に加工する。この後、レジストパターンを除去して洗浄する。
【0035】
そして、感湿膜11に対して、例えば、350℃の窒素ガス雰囲気中で約3時間の間熱処理を行う(ステップS6)。この加熱処理により、感湿膜11は架橋構造が形成されて硬化する。
【0036】
次に、感湿膜11上に第3導電膜を形成し、これをレジストパターンに基づいて加工することにより、
図6(B)に示すように、所定形状の上部電極12を形成する(ステップS7)。
【0037】
次に、上部電極12上を覆うように、保護膜24としてのSiO
2膜を製膜し(ステップS8)、保護膜24を介して上部電極12を覆うようにオーバーコート膜25を形成する(ステップS9)。オーバーコート膜25は、例えば、感湿膜11と同一の高分子材料であるポリイミドを用いて形成される。オーバーコート膜25の製膜方法は、感湿膜11の製膜方法と同様である。この後、ステップS6と同様の熱処理を行うこと(ステップS10)により、
図3に示す構成の湿度センサ100が完成する。
【0038】
[効果]
第1実施形態に係る湿度センサ100では、下部電極10上に、下部電極10よりも硬質の塑性変形抑制膜22が設けられているので、感湿膜11をした後、感湿膜11に対して熱処理を行うことによる下部電極10の塑性変形及びマイグレーション現象の発生が抑制される。この結果、
図1に示すようなヒロック(突起物40)の発生が抑制され、ヒロックによる下部電極10と上部電極12とのショートが抑制される。
【0039】
図7は、塑性変形抑制膜22による塑性変形抑制効果を示す光学顕微鏡写真である。
図7(A)は、
図1に示す湿度センサ200において、感湿膜11に対して熱処理(350℃、3時間)を行った場合における上部電極12の形成後の光学顕微鏡写真である。一方、
図7(B)は、第1実施形態に係る湿度センサ100において、感湿膜11に対して熱処理(350℃、3時間)を行った場合における上部電極12の形成後の光学顕微鏡写真である。いずれの場合においても、保護膜23は、厚みが100nmのSiO
2膜としている。
【0040】
図7(A)に示すように、塑性変形抑制膜22が設けられていない場合には、複数のヒロックが発生し、下部電極10と上部電極12との間をショートさせることが確認された。これに対して、
図7(B)に示すように、塑性変形抑制膜22を設けた場合には、ヒロックの発生が抑制されることが確認された。塑性変形抑制膜22は、厚みが100nmのTiN膜としている。
【0041】
<第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態に係る湿度センサ100の変形例について説明する。
図8は、第1実施形態の変形例に係る湿度センサ100aの概略構成を示す断面図である。
【0042】
図8に示すように、湿度センサ100aにおいては、下部電極10の下面に下地膜50が形成されている。湿度センサ100aのその他の構成は、第1実施形態に係る湿度センサ100と同様である。
【0043】
下地膜50は、例えば、TiW膜である。なお、下地膜50は、TiW膜に限られず、TiN膜等であってもよい。下地膜50は、導電性を有し、下部電極10に接触しているので、下部電極10の一部としても機能する。
【0044】
下地膜50は、
図5(B)で示した第1導電膜10aの製膜の前に、絶縁膜21上に、下地膜50を形成するための第3導電膜を製膜することにより形成される。この第3導電膜を製膜した後、第1導電膜10a及び第2導電膜22aを製膜し、第3導電膜を、第1導電膜10a及び第2導電膜22aとともに、レジストパターン30に基づいてパターニングすることにより、下部電極10下に下地膜50が形成される。
【0045】
この場合、例えば、塑性変形抑制膜22と下地膜50とをともにTiW膜とし、下部電極10をアルミニウム合金膜(例えば、Al-Si-Cu合金膜)とすることが好ましい。また、塑性変形抑制膜22の厚みを60nmとし、下地膜50の厚みを200nmとすることが好ましい。
【0046】
<第2実施形態>
次に、第1実施形態に係る湿度センサについて説明する。第1実施形態では、塑性変形抑制膜を導電膜としているが、第2実施形態では塑性変形抑制膜を絶縁膜とする。
【0047】
図9は、第2実施形態に係る湿度センサ100bの概略構成を示す断面図である。
【0048】
図9に示すように、湿度センサ100bにおいては、塑性変形抑制膜60は、下部電極10上を覆う絶縁膜により形成されている。塑性変形抑制膜60を構成する絶縁膜は、例えば、下部電極10上における膜厚Tが400nm以上のSiO
2膜である。なお、保護膜23は、SiO
2膜に限られず、SiN膜やAl
2O
3膜であってもよい。この場合においても膜厚Tは400nm以上であることが好ましい。
【0049】
湿度センサ100bは、第1実施形態の湿度センサ100において、塑性変形抑制膜22を除去し、保護膜23を厚膜化した構成に相当する。
【0050】
湿度センサ100bのその他の構成は、第1実施形態に係る湿度センサ100と同様である。
【0051】
このように塑性変形抑制膜60を絶縁膜とした場合であっても膜厚Tを大きくすることにより、下部電極10におけるマイグレーション現象の発生を抑制し、ヒロックの発生を抑制することができる。
【0052】
図10は、保護膜23の厚膜化によるヒロック抑制効果を示す光学顕微鏡写真である。
図10(A)は、T=100nmとし、感湿膜11に対して熱処理(350℃、3時間)を行った場合における熱処理後の光学顕微鏡写真である。一方、
図10(B)は、T=400nmとし、感湿膜11に対して熱処理(350℃、3時間)を行った場合における熱処理後の光学顕微鏡写真である。いずれの場合においても、保護膜23は、SiO
2膜としている。
【0053】
図10(A)に示すように、T=100nmの場合には、複数のヒロックが発生し、下部電極10と上部電極12との間をショートさせることが確認された。これに対して、
図10(B)に示すように、T=400nmの場合には、ヒロックの発生が抑制されることが確認された。
【0054】
第2実施形態に係る湿度センサ100bでは、膜厚Tを大きくするほどヒロックの抑制効果が高まる。しかし、湿度センサ100bでは、塑性変形抑制膜60は絶縁性であることから下部電極10の一部として機能せず、かつ水分を吸収しないため、膜厚Tを大きくするほど、感湿膜11の誘電率の変化量が低下する。このため、膜厚Tを大きくするほど、湿度センサ100bによる湿度の検出感度が低下する。したがって、膜厚Tは必要以上に大きくすることなく、400nm程度とすることが好ましい。
【0055】
なお、第2実施形態の変形例として、
図8に示した第1実施形態の変形例と同様に、下部電極10の下面に、下地膜としてTiW膜やTiN膜を設けてもよい。
【0056】
また、上記第1及び第2実施形態では、上部電極12上に保護膜24を設けているが、保護膜24に代えて、または上部電極12と保護膜24との間に、上述の塑性変形抑制膜22または塑性変形抑制膜60と同様の塑性変形抑制膜を設けてもよい。上部電極12を覆うオーバーコート膜25には、熱処理(
図4のステップS10)が行われるため、ヒロックが生じる恐れがあるが、上部電極12上に塑性変形抑制膜を設けることにより、ヒロックの発生が抑制される。但し、上部電極12上にヒロックが発生したとしても、このヒロックが電極間のショートを生じさせることはないので、上部電極12上に塑性変形抑制膜を設けることは必須ではない。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0058】
また、本開示において、基板上という文言は、基板の表面に接する場合だけでなく、基板の表面上に他の要素を介して間接的に配置される場合も含む。膜上や電極上という文言についても同様である。
【符号の説明】
【0059】
10 下部電極
10a 第1導電膜
11 感湿膜
12 上部電極
12a 開口
20 絶縁基板
21 絶縁膜
22 塑性変形抑制膜
22a 第2導電膜
23 保護膜
24 保護膜
25 オーバーコート膜
30 レジストパターン
40 突起物(ヒロック)
50 下地膜
60 塑性変形抑制膜
100,100a,100b,200 湿度センサ