(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】呼気採取バッグ
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
G01N1/02 W
(21)【出願番号】P 2018095296
(22)【出願日】2018-05-17
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】305059871
【氏名又は名称】株式会社タイヨウ
(73)【特許権者】
【識別番号】516229793
【氏名又は名称】株式会社メディコスパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【氏名又は名称】永田 貴久
(74)【代理人】
【識別番号】100192692
【氏名又は名称】谷 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】冨永 秀治
(72)【発明者】
【氏名】利川 寶
(72)【発明者】
【氏名】池田 大祐
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-098593(JP,U)
【文献】特開2002-206996(JP,A)
【文献】特開2014-117429(JP,A)
【文献】米国特許第04579826(US,A)
【文献】特開平10-014887(JP,A)
【文献】特開2002-340752(JP,A)
【文献】特開2003-166914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と1つの延長突出部
とを備えるアルミニウム製の素材のバッグ
と、
前記延長突出部
が有する開口部
に着脱自在に挿入され
る筒体
と、を備え、
前記筒体は
、呼気を吹き込んだときに音を発する笛部
と、塞ぐことで呼気を前記バッグ内に吹き込み可能とする途中孔とを備え、
前記途中孔は、前記筒体の側面に設けられ、且つ、前記延長突出部によって塞がれていないことを特徴とする呼気採取バッグ。
【請求項2】
前記筒体の内、前記延長突出部に挿入された部分の長さは、前記延長突出部より短いことを特徴とする請求項1に記載の呼気採取バッグ。
【請求項3】
前記延長突出部の内、前記筒体が挿入されていない部分は、前記筒体が挿入されている部分より狭く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の呼気採取バッグ。
【請求項4】
本体部と1つの延長突出部
とを備えるアルミニウム製の素材のバッグ
と、
前記延長突出部
が有する開口部
に着脱自在に挿入され
る筒体
と、を備え、
前記筒体は
、呼気を吹き込んだときに音を発する笛部
と、塞ぐことで呼気を前記バッグ内に吹き込み可能とする途中孔とを備え、
前記途中孔は、前記筒体の側面に設けられ、且つ、前記延長突出部によって塞がれていないことを特徴とする呼気採取バッグを使用して呼気を採取する呼気採取方法であって、
前記開口部から取り外した前記筒体に呼気を吹き込んで前記笛部によって音を発生させることで息を吐き切る時間を測定する工程と、
前記筒体が前記開口部に挿入された状態において、前記バッグ内に呼気が入らないように前記延長突出部を押さえつつ、前記息を吐き切る時間より短い時間呼気を吹き込んで前記途中孔から外部に呼気を排出する工程と、
前記途中孔から外部に呼気を排出した直後、前記途中孔を指で塞いで前記バッグ内に呼気を吹き込む工程と、を含むことを特徴とする呼気採取方法。
【請求項5】
前記息を吐き切る時間の測定は、呼気を吹き込む本人以外が測定することを特徴とする請求項4に記載の呼気採取方法。
【請求項6】
前記息を吐き切る時間より短い時間は、前記筒体に呼気を吹き込んで前記笛部によって音を発生させることで息を吐き切る時間より2~3秒短い時間であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の呼気採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気採取バッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、人間の吐く息、即ち呼気を調べることによって、健康状態や罹患している病気等が分かるようになってきている。この呼気に含まれる、調べるべき成分は非常に微量であり、また水素のような小さい分子も多い。
【0003】
このような微量成分の濃度を測るには、純粋に呼気だけを採取しなければならないことは言うまでもない。なぜならば、大気が混入するとそれだけ濃度が変化するためである。更に、人間の呼気は、必ずしも肺でガス交換した気体とは限らない。即ち、吸った空気が肺にまで達することなく、口や気道内で保持され、それが吐き出されると、その気体は肺でガス交換された気体でないため、種々の検査には使えないことはいうまでもない。
【0004】
最も、検査に有効な気体は、終末呼気と呼ばれる最後に吐き出す呼気である。最初に吐き出される口や気道の気体は論外としても、それがなくなっても肺からの気体が出だしたとしても、まだ口や気道に残っていた気体が少し混ざっている気体が吐き出され、最後の気体がほぼ純粋に肺からの気体である。
【0005】
このため、一定の量(少なくとも、口や気道の容量)は、検査に使用しないように、検査のときに医師又は検査員に指導される。方法としては、医師等が、そばで一定量の呼気を廃棄させ、最後の呼気を容器に取るように指導するのである。
【0006】
被験者(自己の呼気の検査を受ける人)が検査室に居る場合は上記の方法でよいが、最近では、遠方に居る被験者がその呼気のみを送り、検査を依頼することが多くなってきている。
このような場合、上記のような専門家がそばに居ないため、肺からの呼気のみを袋に入れて送るように指導しても、被験者(老齢者が多い)では、完全に理解してその通りにすることは難しい。
【0007】
そこで、種々の呼気採取バッグが考案され販売もされている。特許文献1に記載の呼気検査用バッグは、呼気を吹き込む開口部があるが肺からの呼気だけを採取する工夫はされていない。また、特許文献2は、吹込み口と排出口の2つの開口を有するもので、これも終末呼気がいつからでるか等は分からない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平9-215675号公報
【文献】特開2014-157039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明では、検査員がそばに居ない、一般の高齢者でも、簡単に終末呼気が採取できる呼気採取バッグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明呼気採取バッグを完成したものであり、その特徴とするところは、アルミニウム製の素材のバッグであって、本体部と1つの延長突出部があり、その延長突出部は開口部であり、該開口部に筒体が着脱自在に挿入されたものであって、該筒体は呼気を吹き込んだときに音を発する笛部を有する点にある。
【0011】
バッグとは、単に袋という意味であり気体が収容できればよい。その形状は自由である。
好ましくは、2枚のフィルムをあわせて、その周囲を接着又は融着するのがよい。この構造では、フィルムを2枚貼った構造であり、製造が容易で、保管も場所をとらない。
しかし、封筒でいう「マチ(襠)」のような部分を設けて容量を大きくしてもよい。
【0012】
フィルムとしては、アルミ箔、アルミニウムを蒸着したプラスチックフィルム、アルミ箔とプラスチックフィルムをラミネートしたものその他すくなくともアルミニウムを用いたものであればよい。アルミニウムを用いた理由は、水素ガスのような小さい分子は、プラスチックフィルムでは透過してしまうためである。もし、水素が検査の対象であれば、その対象物は簡単に抜けてしまう。そうなると、ほとんど意味のない検査になる。
【0013】
このバッグは、本体部と延長突出部とからなる。本体部の形状は、平面視四角形状がよい。長方形や正方形である。勿論、その他の形状、たとえば円形、多角形等でもよい。
サイズとしては、長方形(正方形を含む)の場合、限定はしないが、縦が10~20cm、横10~20cmが好適である。人間の終末呼気として測定に必要な量は、数十mL~300mL程度であり、前記サイズであれば十分である。
【0014】
延長突出部は、これも平面視四角形状がよい。勿論、他の形状でもよいことは本体部と同様である。サイズとしては、長方形(正方形を含む)の場合、限定はしないが、縦が3~10cm、横3~6cmが好適である。
【0015】
この延長突出部が開口部である。即ち、延長突出部の先端が開口しているのである。この開口部に後述する筒体が挿入されるのである。
【0016】
筒体とは、基本的には、呼気を本体部に吹き込むためのものであり、延長突出部に着脱自在に挿入されている。
大きさ的には、これも限定はしないが、内径が5~15mm程度が好適であり、長さは3~10が好適である。
さらに、本発明のポイントでもあるが、この筒体は呼気を吹き込んだときに音を発する笛部を有するのである。勿論、一部が笛でも全体として笛であってもよい。
【0017】
この音を発するのも、通常の方法で、通常の強さで息を吐いたときに音がなればよい。笛部は、音の出やすい笛を特別に設けても、単に孔を開けたようなものでもよい。
この筒体は、前後の開口以外に孔が必要である。この孔が笛部を兼ねてもよい。逆に、音の出るものであっても、前後の開口だけで、中間に孔の無いものは使用できない。この前後の開口以外の孔をここでは途中孔という。途中孔は指で押さえれば排出が止まるものである。
この途中孔のないもの、即ち、筒体の中で、笛になってその呼気は上記のバッグの中にだけ入り、外部に出る口のないものは本発明では使用できない。
【0018】
次に本発明呼気採取バッグの使用方法について説明する。
まず、最初に筒体のみをとり、息をいっぱい吸い込み、それを笛のように吹いて完全に吐ききる。このときに、音を聞きながら、何秒間吐き続けたかを時計で確認しておく。ストップウォッチで厳密にしなくても時計の秒針で、大まかに測定すればよい。大人ならば、通常ならば、8~15秒程度である。勿論、年齢、その人の健康状態、肺関係の疾病の有無等によって大きく異なる。
とくに高齢や病人、小児の場合、自己で息をはきながら、その時間を時計で測ることは難しいため、付き添いの者や、家族が行うことになるが、その場合、いつから吹き始めて、いつ終わったかは、本人以外は分からない。しかし、本発明では音がでるため、家族等が明確に分かり、時間がはっきりとする。これが本発明の大きな特徴である。
【0019】
そして、この時間を記憶して、最後の2秒程度を終末呼気と考えるのである。これも2秒に限らず、3秒でもよく、必要な呼気量で考えればよい。そして、最初に息を吐いた秒数から、例えば2秒を差し引いた秒数を覚えておく。例えば、11秒で吐ききった場合、2秒が終末とすれば、9秒間が捨てる時間である。
【0020】
次に、筒体を呼気採取バッグの延長突出部の開口部に挿入する。挿入する深さとしては、筒体の途中孔が延長突出部に入らないような深さである。なぜならば、この途中孔から呼気を外部に排出しなければならないためである。
そして、挿入した筒体の先端部より先で、延長突出部を指で押さえて、呼気がバッグに入らないようにする。これが、呼気を吹き込む状態である。
【0021】
次に被験者は息を十分に吸い込み、そして息を吹き込んでいく。さきほどの9秒間は、そのままの状態で、呼気は途中孔から外部に排出されていく。9秒経過した時点で、延長突出部を押さえていた指を離し、途中孔を指で塞ぐ。そして、最後まで吹き込むのである。
最後まで吹き込んだあとで、また延長突出部を指で押さえ、筒体を抜く。そして、延長突出部を折り曲げるか、封止具で封止する。アルミ製品であるため、何回か折り返して接着テープで止めるだけでほとんど密閉できる。勿論、プラスチックの袋を封止するための開口部を挟み込む封止具(種々市販されている)のようなもので封止してもよい。また、熱を掛けて圧着出来る場合は、シーラーを使って封止しても良い。
バッグの中の圧は、通常大気より高いため、大気が入り込んで濃度が変ることはない。
【0022】
このように封止したものを検査施設に送付すればよい。勿論、家族の者やその他の者が搬送してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明には以下のような効果がある。
(1) 吹き込むときに音が出るため、吹き込んでいる時間が容易に測定できる。
(2) 笛の孔を利用して呼気の排出が簡単である。
(3) アルミ製の袋であり、気体の封止性が高い。
(4) 非常に簡単に終末呼気が採取できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の呼気採取バッグの筒体を除いた平面図である。
【
図3】本発明の呼気採取バッグの1例の平面図である。
【
図4】本発明の呼気採取バッグの筒体を除いた他の例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、実施例は1例であって、本発明をこれに限定するものではない。
図1は、本発明の呼気採取バッグ(筒体は除く)1の平面図である。本体部2と延長突出部3とから構成されている。材質はアルミ箔である。斜線部4は、2枚のアルミ箔を接着した部分である。延長突出部3の先端部5は開口である。
【0026】
この例の大きさは、縦(L)が14cm、横(W)が12cm、E
が5cmで、Dが4cmである。勿論、検査の必要量によって、サイズは自由に変えればよい。
【0027】
図2は、筒体6の1例を示す斜視図である。これはプラスチック製であり、比較的柔軟なものである。中央部に途中孔7が設けられている。この途中孔7だけでも音がでる場合もあるが、この例では、筒体6の中に別途笛(図示略)がはめ込まれている。
【0028】
図3は、
図1の延長突出部3に筒体6を挿入したところを示す平面図である。筒体6の途中孔7は、延長突出部3の外側に位置している。そして、延長突出部3の筒体6が挿入されていない部分8を指で押圧して呼気の流入を防止する。
流入防止を容易にするため、この部分の流路を少し狭くしてもよい。この例では延長突出部3が比較的短いがより長くしてもよい。
【0029】
図4は、
図1と同様のものであるが、底部にマチがあり、容量的に大きなものになっている。このようにすると縦、横のサイズは小さくできる。
【符号の説明】
【0030】
1 本発明の呼気採取バッグ(筒体は除く)
2 本体部
3 延長突出部
4 斜線部
5 先端部
6 筒体
7 途中孔
8 筒体が挿入されていない部分