(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】車両内装用表皮材
(51)【国際特許分類】
D03D 15/547 20210101AFI20220809BHJP
B60Q 3/217 20170101ALI20220809BHJP
B60Q 3/51 20170101ALI20220809BHJP
B60Q 3/54 20170101ALI20220809BHJP
B60Q 3/62 20170101ALI20220809BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20220809BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20220809BHJP
D03D 15/587 20210101ALI20220809BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20220809BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20220809BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20220809BHJP
F21W 106/00 20180101ALN20220809BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220809BHJP
【FI】
D03D15/547
B60Q3/217
B60Q3/51
B60Q3/54
B60Q3/62
B60R13/02 B
D03D15/283
D03D15/587
F21S2/00 443
F21V8/00 282
F21V17/00 402
F21W106:00
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2018099179
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2017104693
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510045438
【氏名又は名称】TBカワシマ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309042783
【氏名又は名称】大喜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝政
(72)【発明者】
【氏名】坂井 宏彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳由
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-199889(JP,A)
【文献】特許第6412674(JP,B1)
【文献】特許第6853529(JP,B2)
【文献】特許第6116775(JP,B1)
【文献】特開2001-316953(JP,A)
【文献】特開2009-084738(JP,A)
【文献】特開2016-005949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 15/547
B60Q 3/217
B60Q 3/51
B60Q 3/54
B60Q 3/62
B60R 13/02
D03D 15/283
D03D 15/587
F21S 2/00
F21V 8/00
F21V 17/00
F21W 106/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の車両内装用基体に接合される車両内装用表皮材において、
経糸又は緯糸として、合成樹脂繊維、側面発光型光ファイバー及び熱融着性繊維を用いて製織された織物を備え、
前記合成樹脂繊維と、前記合成樹脂繊維に隣接する前記側面発光型光ファイバーと、が各々の長さ方向において前記熱融着性繊維により接合されていることを特徴とする車両内装用表皮材。
【請求項2】
隣り合う前記合成樹脂繊維の間に、複数の前記側面発光型光ファイバーが織り込まれており、隣接する前記側面発光型光ファイバーが各々の長さ方向において前記熱融着性繊維により接合されている請求項1に記載の車両内装用表皮材。
【請求項3】
前記熱融着性繊維は、マルチフィラメントと、前記マルチフィラメントより融点の低い熱融着糸と、が撚られているものである請求項1又は2に記載の車両内装用表皮材。
【請求項4】
前記マルチフィラメントは、前記接合の後、構成糸として残存する請求項3に記載の車両内装用表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂繊維、側面発光型光ファイバー、及び熱融着性繊維を用いて製織された織物において、隣接する合成樹脂繊維と側面発光型光ファイバーとが長さ方向において接合され、所定形状及び寸法に裁断したときに、裁断された端縁部における側面発光型光ファイバーのほつれが抑えられる車両内装用表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及等とともに、光通信などの技術分野において光ファイバーの使用が拡大している。また、一端から入射した光を他端に導いて光を伝送させることができるという光ファイバーの特性に基づき、各種の照明及びディスプレー等の用途でも用いられている。
【0003】
例えば、複数本の光ファイバーの経糸と普通糸からなる経糸が交互に配列され、光ファイバーの表裏に配列された緯糸と、普通糸からなる経糸、又は所定の間隔で配列された連結経糸が交錯して一体化された光ファイバー織物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、この光ファイバー織物では、普通糸からなる経糸と緯糸による光ファイバーの表面の覆われ方により、織物表面側における光ファイバーの露出度が低い領域と高い領域とで織物面にパターンが形成され、光ファイバーの側面漏光により、鮮明な発光パターンが表現されると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された光ファイバー織物では、普通糸からなる経糸と緯糸による光ファイバーの表面の覆われ方により、光ファイバーの側面漏光によって、鮮明な発光パターンが表現される。しかし、特許文献1には、光ファイバー織物を所定形状及び寸法に裁断したときに、裁断された端縁部における光ファイバーのほつれを抑えることについては全く言及されていない。
【0006】
また、従来、合成樹脂繊維等を用いて製織された織物では、所定形状及び寸法に裁断したときに、裁断された端縁部において繊維がほつれ易い場合、熱融着糸を織り込むことにより、ほつれが抑えられている。更に、モノフィラメントであるとともに、断面が略円形であり、滑り易い光ファイバーを織り込んだ織物20(
図8及び
図8のB-B断面を表す
図9参照)では、裁断時に特に光ファイバーがほつれ易く、このほつれを抑えるため熱融着糸の使用が考えられる。
【0007】
上述のように、光ファイバーのほつれを抑えるため熱融着糸を使用することが考えられるが、熱融着糸はそのまま用いられるのではなく、通常、マルチフィラメントと撚り合わせた繊度の大きい熱融着性繊維として使用される。そのため、例えば、光ファイバーを緯糸とし、熱融着性繊維を経糸として製織した場合、繊度の大きい熱融着性繊維は間隔をおいて織り込まざるを得ず、光ファイバーと熱融着性繊維とは点状に接触することになる。その結果、光ファイバーを十分に固定することができず、裁断時に光ファイバーがほつれてしまうことがあり得る。
【0008】
本発明は、上述の従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、合成樹脂繊維、側面発光型光ファイバー、及び熱融着性繊維を用いて製織された織物において、隣接する合成樹脂繊維と、側面発光型光ファイバーと、が長さ方向において接合され、所定形状及び寸法に裁断したときに、裁断された端縁部における側面発光型光ファイバーのほつれが抑えられる車両内装用表皮材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のとおりである。
1.樹脂製の車両内装用基体に接合される車両内装用表皮材において、
経糸又は緯糸として、合成樹脂繊維、側面発光型光ファイバー及び熱融着性繊維を用いて製織された織物を備え、
前記合成樹脂繊維と、前記合成樹脂繊維に隣接する前記側面発光型光ファイバーと、が各々の長さ方向において前記熱融着性繊維により接合されていることを特徴とする車両内装用表皮材。
2.隣り合う前記合成樹脂繊維の間に、複数の前記側面発光型光ファイバーが織り込まれており、隣接する前記側面発光型光ファイバーが各々の長さ方向において前記熱融着性繊維により接合されている前記1.に記載の車両内装用表皮材。
3.前記熱融着性繊維は、マルチフィラメントと、前記マルチフィラメントより融点の低い熱融着糸と、が撚られているものである前記1.又は2.に記載の車両内装用表皮材。
4.前記マルチフィラメントは、前記接合の後、構成糸として残存する前記3.に記載の車両内装用表皮材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両内装用表皮材は、経糸又は緯糸として、合成樹脂繊維、側面発光型光ファイバー及び熱融着性繊維を用いて製織された織物を備え、合成樹脂繊維と、この合成樹脂繊維に隣接する側面発光型光ファイバーと、が各々の長さ方向において熱融着性繊維により接合されている。
このように、合成樹脂繊維と、これに隣接する側面発光型光ファイバーと、が長さ方向において熱融着性繊維により接合されていることにより、車両内装用表皮材を所定形状及び寸法に裁断するときに、モノフィラメントであるとともに、断面が略円形で滑り易い側面発光型光ファイバーのほつれを十分に抑えることができる。また、多くの熱融着性繊維を用いることなく、側面発光型光ファイバーを十分に固定することができるためコスト面でも有利である。
また、隣り合う合成樹脂繊維の間に、複数の側面発光型光ファイバーが織り込まれており、隣接する側面発光型光ファイバーが各々の長さ方向において熱融着性繊維により接合されている場合は、隣り合う合成樹脂繊維間に複数の側面発光型光ファイバーが連続して織り込まれているにも拘わらず、車両内装用表皮材の裁断時に、側面発光型光ファイバーのほつれを十分に抑えることができる。
更に、熱融着性繊維が、マルチフィラメントと、マルチフィラメントより融点の低い熱融着糸と、が撚られているものである場合は、製織時には、織り込む繊維としての十分な強度を有し、合成樹脂繊維と側面発光型光ファイバーとの間、及び隣り合う側面発光型光ファイバー間に、確実に、且つ容易に織り込むことができ、裁断時の側面発光型光ファイバーのほつれを十分に抑えることができる。
また、マルチフィラメントが、接合の後、構成糸として残存する場合は、熱融着性繊維が有する熱融着糸が溶融し、合成樹脂繊維と側面発光型光ファイバーとの間等を接合させた後も車両内装用表皮材の強度などが低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両内装用表皮材の一部の模式的な平面図である。
【
図2】
図1の車両内装用表皮材のA-A断面を表す模式的な断面図である。
【
図3】
図2の一部を拡大して表す模式的な断面図である。
【
図4】
図1の車両内装用表皮材が車両内装用基体に接合された形態を表す模式的な斜視図である。
【
図5】本発明の車両内装用表皮材の製造に使用される織物の模式的な平面図である。
【
図6】
図5の織物のa-a断面を表す模式的な断面図である。
【
図7】熱融着性繊維の一例の模式的な正面図である。
【
図8】熱融着性繊維が織り込まれていない従来の車両内装用表皮材の製造に使用される織物の模式的な平面図である。
【
図9】
図8の織物のB-B断面を表す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、図も参照しながら詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0013】
本発明の車両内装用表皮材100(
図1、
図1のA-A断面を表す
図2及び
図2の一部を拡大して表す
図3参照)は、樹脂製の車両内装用基体4に接合される(
図4参照)。また、経糸又は緯糸として、合成樹脂繊維1b、1a、側面発光型光ファイバー2及び熱融着性繊維3を用いて製織された織物10(
図5及び
図5のa-a断面を表す
図6参照)を備え、合成樹脂繊維1b、1aと、合成樹脂繊維1b、1aに隣接する側面発光型光ファイバー2と、が各々の長さ方向において融着性繊維3により接合されている(
図1~3の接合部3a参照)ことを特徴とする。
【0014】
織物10は、経糸又は緯糸として、合成樹脂繊維1b、1a、側面発光型光ファイバー2、及び熱融着性繊維3を用いて織製される。また、合成樹脂繊維1b、1aと、この合成樹脂繊維1b、1aに隣接する側面発光型光ファイバー2との間には、熱融着性繊維3が織り込まれる。従って、側面発光型光ファイバー2が緯糸として織り込まれるときは、熱融着性繊維3も緯糸として織り込まれ、側面発光型光ファイバー2に隣接する合成樹脂繊維も緯糸1bとして織り込まれる。一方、側面発光型光ファイバー2が経糸として織り込まれるときは、熱融着性繊維3も経糸として織り込まれ、側面発光型光ファイバー2に隣接する合成樹脂繊維も経糸1aとして織り込まれる。
【0015】
合成樹脂繊維1b、1a、側面発光型光ファイバー2、及び熱融着性繊維3の各々が、経糸として織り込まれるか、緯糸として織り込まれるかは、上述のとおりであるが、製織に用いる織機は特に限定されない。織機としては、例えば、レピア織機(伊国、イテマウィービング社製、型式「G6500、R9500」)、ジャカード織機(仏国、ストーブリ社製、型式「CX880、DX110、LX1602、SXB」)、ドビー織機(仏国、ストーブリ社製、型式「UVIVAL500」)等が挙げられる。
【0016】
合成樹脂繊維1b、1aはマルチフィラメントであってもよく、モノフィラメントであってもよいが、マルチフィラメントが多用される。合成樹脂繊維1b、1aの繊度も特に限定されず、側面発光型光ファイバー2及び熱融着性繊維の各々の繊度等を勘案し、製織のし易さ、織物10の物性などを考慮して設定すればよい。
【0017】
合成樹脂繊維1b、1aの材質も特に限定されず、各種の合成樹脂からなる繊維を用いることができる。この合成樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。合成樹脂としては、特にポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましい。
【0018】
光ファイバーは、通常、コア層とクラッド層とから構成されており、コア層の外周をクラッド層が被覆した構造を有する。また、コア層及びクラッド層は、それぞれ単層でもよく、複数層が積層された形態であってもよい。そして、コア層及びクラッド層の各々の材質、屈折率、反射率等により、側面から適度に漏光し、発光する側面発光型光ファイバー2とすることができる。具体的には、例えば、コア層に散乱物質を配合することにより、コア層とクラッド層との境界部での全反射を生じることなく、側面から散乱光が漏光するもの、及びクラッド層の一部が除去されて、側面から漏光するものが挙げられる。
【0019】
光ファイバーとしては、樹脂製光ファイバー、石英系光ファイバー等の各種のものがあるが、本発明では、合成樹脂繊維1b、1a及び熱融着性繊維3とともに、織物10の経糸又は緯糸として織り込まれる光ファイバーである。そのため、柔軟で曲げ衝撃性等に優れ、容易に製織することができる樹脂製の側面発光型光ファイバー2が用いられる。
【0020】
更に、既存の樹脂製光ファイバー等の側面発光型光ファイバー2の直径は0.1~10mm程度であるが、製織のし易さ、発光ムラの低減、又は汎用性の観点から、直径が0.15~1.5mm、特に0.15~1.0mm、更には0.15~0.4mmの側面発光型光ファイバー2を用いることが好ましい。また、樹脂製の側面発光型光ファイバー2の繊度は、コア層及びクラッド層を構成する各々の樹脂の種類にもよるが、例えば、前述のように、直径が0.25mmであるときに、繊度が略607dtexの側面発光型光ファイバー2が挙げられ、好ましい繊度の範囲は、合成樹脂繊維1b、1b及び熱融着性繊維3の各々の繊度との好ましい繊度比により設定すればよい。
【0021】
樹脂製光ファイバーのコア層としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリオレフィン系樹脂等の優れた透明性を有する樹脂が用いられていることが好ましい。更に、クラッド層としては、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニリデンテトラフルオロエチレン共重合樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、トリフルオロイソプロピルメタクリレート樹脂等の優れた透明性を有するとともに、コア層より屈折率が小さい樹脂が用いられていることが好ましい。
【0022】
また、車両内装用表皮材100に織り込まれた側面発光型光ファイバー2を発光させるためには、複数本の側面発光型光ファイバー2の先端部が束ねられ、その端面と対向する位置に光源が配置される。光源は特に限定されないが、通常、LEDが用いられる。そして、LED光源から束ねられた側面発光型光ファイバー2の端面に向けて光を照射させ、導光させることで、側面発光型光ファイバー2が発光する。更に、複数本の側面発光型光ファイバー2の先端部を束ねる場合、車両内装用表皮材100の形状、寸法(面積)によって、可能であれば、車両内装用表皮材100に織り込まれた全ての側面発光型光ファイバー2を束ねてもよく、所定本数の側面発光型光ファイバー2が束ねられた複数の側面発光型光ファイバー束としてもよい。
【0023】
隣り合う合成樹脂繊維1b、1a間に連続して織り込まれる側面発光型光ファイバー2の本数は、特に限定されないが、車両内装用表皮材100の内装材としての意匠性、及び織物10としての形態、強度等の観点で1~5本とすることができる。また、合成樹脂繊維1b、1aがマルチフィラメントであるときは(
図1等参照)、連続して織り込まれる側面発光型光ファイバー2の本数は2~5本とすることができ、3~4本であることが好ましい。
【0024】
一方、合成樹脂繊維1b、1aがモノフィラメントであるときは、その光沢を利用し、光ファイバーからの光を反射させて十分な輝度を確保することができる。そのため、合成樹脂繊維1b、1a間に織り込まれる側面発光型光ファイバー2は1本でもよい。更に、連続して織り込まれる場合の本数は、合成樹脂繊維1b、1aがマルチフィラメントであるときと比べて少なくすることができ、2~3本とすることができる。合成樹脂繊維1b、1aがモノフィラメントであれば、側面発光型光ファイバー2が2本であっても、更には1本であっても、意匠性に優れ、見栄えの良い車両内装用表皮材100とすることができる。
【0025】
更に、合成樹脂繊維1b、1aがマルチフィラメントであるときも、モノフィラメントであるときも、隣り合う合成樹脂繊維1b、1aの間に、複数の側面発光型光ファイバー2が織り込まれた場合は、隣接する側面発光型光ファイバー2が、各々の長さ方向において熱融着性繊維3により接合されていることが好ましい。このように、隣接する合成樹脂繊維1b、1aと側面発光型光ファイバー2との間のみでなく、隣接する側面発光型光ファイバー2間も接合されておれば、車両内装用表皮材100を裁断するときの側面発光型光ファイバー2のほつれを、より効率よく抑えることができる。
【0026】
熱融着性繊維3は、少なくともその一部が所定の温度で溶融し、合成樹脂繊維1b、1aと、これに隣接する側面発光型光ファイバー2、及び側面発光型光ファイバー2が隣接して織り込まれているときは、これらの側面発光型光ファイバー2を、各々の長さ方向において接合することができればよく、その材質等は特に限定されない。また、熱融着性繊維3の少なくとも一部が溶融する温度も特に限定されないが、車両内装用表皮材100の製造工程のうちのいずれかにおいて溶融し、合成樹脂繊維1b、1aと、隣接する側面発光型光ファイバー2、及び隣接する側面発光型光ファイバー2を接合することができれば、別途、熱融着のための工程を設ける必要がなく好ましい。
【0027】
上述のように、熱融着性繊維3の材質、溶融する温度は特に限定されないが、織物10を車両内装用表皮材100とする工程において溶融し、熱融着性繊維3として作用させるためには、比較的、低温、例えば、70~100℃、特に70~90℃で溶融する材質であることが好ましい。このような熱融着性繊維3としては、例えば、非晶性共重合ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維等が挙げられる。
【0028】
更に、熱融着性繊維3は、通常、熱融着糸31のみで用いられるのではなく、熱融着糸31が溶融するときに溶融しない合成樹脂繊維からなるマルチフィラメント32と、熱融着糸31と、が撚られた形態の複合繊維として用いられる(
図7参照)。また、マルチフィラメント32としては、合成樹脂繊維1b、1aと同様の材質で、繊度の小さいマルチフィラメントを用いることができる。このような複合繊維とすることで、十分な強度等を有し、織物10を製織するときに容易に織り込むことができる。更に、溶融し、接合の作用をした後も、マルチフィラメント32は、そのまま車両内装用表皮材100の構成糸として残存し、車両内装用表皮材100の強度等の低下が抑えられる。
【0029】
車両内装用基体4(
図4参照)は、通常、合成樹脂製の成形体であり、成形型を用いて加熱、加圧するプレス成形法により、ドアトリム、ルーフトリム等の車両用内装材の形状に成形される。また、合成樹脂は特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、及びナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂が用いられる。これらの合成樹脂のうちでは、成形のし易さ、強度等の観点でポリプロピレンが好ましい。また、剛性等の物性を向上させるため、ガラス繊維、カーボン繊維等が配合された繊維強化樹脂を用いることもできる。
【0030】
尚、前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施態様の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その態様において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施態様を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は車両内装用基体に接合され、間接的な車室内照明として機能する車両内装用表皮材の技術分野において利用することができる。特に、ドアトリム、ルーフトリムなどの車両内装材の表皮材の技術分野において有用である。
【符号の説明】
【0032】
100;車両内装用表皮材、10、20;織物、1a;合成樹脂繊維(経糸)、1b;合成樹脂繊維(緯糸)、2;側面発光型光ファイバー、3;熱融着性繊維、31;熱融着糸、32;マルチフィラメント、3a;接合部、4;樹脂製の車両内装用基体。