(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】積層剥離容器入り化粧料
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20220809BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220809BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20220809BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20220809BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220809BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A45D34/04 555
A61K8/02
A61Q1/14
A61Q5/06
A61Q19/00
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2020071577
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2021-06-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-01
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514015972
【氏名又は名称】エスコ 株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】石井 純一
(72)【発明者】
【氏名】谷本 康
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】窪田 治彦
【審判官】田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-134729(JP,A)
【文献】特開2019-064616(JP,A)
【文献】特開2016-141419(JP,A)
【文献】特開平09-030577(JP,A)
【文献】特開平09-012070(JP,A)
【文献】実開平09-000566(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D34/00-34/06
A61Q1/14,5/06,19/00,19/10
A61K8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層剥離容器に充填された化粧料であって、
前記化粧料は融点未満の温度範囲において、外力を加えない状態では固形であり、
外力を加えた状態では液状になることを特徴とし、
前記化粧料は前記積層剥離容器内において固形であり、前記積層剥離容器から吐出された際には液体に変化する化粧料であり、
前記積層剥離容器は
、ポンプタイプである
、積層剥離容器入り化粧料。
【請求項2】
前記融点は40~80℃の範囲内にある、請求項1に記載の積層剥離容器入り化粧料。
【請求項3】
前記化粧料は、クレンジング化粧料、マッサージ化粧料、クリーム、整髪料である、請求項1または2に記載の積層剥離容器入り化粧料。
【請求項4】
前記外力は、撹拌による物理的破断である、請求項1~3のいずれかに記載の積層剥離容器入り化粧料。
【請求項5】
前記積層剥離容器は、化粧料である内容物を収容する収容部と、前記収容部から前記化粧料を排出する口部とを備え、
前記収容部および前記口部は外層と内層から構成され、前記化粧料は内層に充填されており、
前記化粧料の減少に伴って、前記収容部において前記内層が前記外層から剥離し収縮する積層剥離容器である、請求項1~4のいずれかに記載の積層剥離容器入り化粧料。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の積層剥離容器入り化粧料の製造方法であって、前記化粧料は融点以上の温度範囲まで加熱され、液体の状態で積層剥離容器に充填されることを特徴とする、積層剥離容器入り化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層剥離容器に充填された化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クレンジング化粧料、マッサージ化粧料などの分野において、常温で容器内ではワックス状の固体で、手に取ることによってクリーム状またはオイル状の液体に変化する化粧料が数多く販売されている。このような化粧料は、従来、いわゆるジャー容器に充填されて販売されており、消費者はスパチュラなどの道具を用いてジャー容器からすくいだし、手に取って温める、又は手で混ぜたり伸ばしたりすることにより、液体に変化させてから、顔など化粧を施す部位に塗り広げて使用していた。
【0003】
ところで、化粧料はより簡単に手間なく使いたいという消費者の要望があるのに対し、上記の化粧料の使用方法は煩雑で手間がかかり、面倒であるという問題点があった。さらに化粧料は風呂場や洗面所などで使用されるケースが多いが、そのような環境ではジャー容器は狭いスペースを占領することがある。また、ジャー容器は開口部が広いため、水等が入り込む可能性が高く、衛生的な状態を保つのが難しい。また、水が入ることにより、クレンジング料本来の機能を損ねるという問題点もあった。
【0004】
取り出しが容易になる方法として、例えば、特許文献1に記載されているポンプを備える容器に充填された化粧品などがある。特許文献1の化粧品は、押下ボタンを使用者が押すことにより、ポンプが容器内の化粧品を吸い上げ、吐出口から化粧品が吐出されるため、使用者はスパチュラなどで化粧品をすくい出す必要がなく、すぐに化粧品を肌に塗り広げることができ、簡便である。また、広い開口部を持たないため、ジャー容器に比べると、水分などが入り込む可能性は低い。しかし、上述した化粧料の様に容器の中で固体である化粧料の場合、特許文献1の様な容器はポンプの吸引力だけで内容物を吸い出す構造であるため、化粧料は十分に液体化せず、容器から取り出すことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のような課題を達成するために、外力を加えない状態では固体であり、外力を加えた状態では液体になる化粧料を積層剥離容器に充填した化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示すとおりである。
<1>積層剥離容器に充填された化粧料であって、
前記化粧料は融点未満の温度範囲において、外力を加えない状態では固形であり、
融点以上に加熱された状態、または外力を加えた状態では、液状になることを特徴とする、積層剥離容器入り化粧料。
<2>前記融点は40~80℃の範囲にある、前記<1>記載の積層剥離容器入り化粧料。
<3>前記化粧料は、クレンジング化粧料、マッサージ化粧料、クリーム、整髪料である、前記<1>または<2>に記載の積層剥離容器入り化粧料。
<4>前記外力は、撹拌による物理的破断である、前記<1>~<3>のいずれかに記載の積層剥離容器入り化粧料。
<5>前記積層剥離容器は、化粧料である内容物を収容する収容部と、前記収容部から前記化粧料を排出する口部とを備え、
前記収容部および前記口部は外層と内層から構成され、前記化粧料は内層に充填されており、
前記化粧料の減少に伴って、前記収容部において前記内層が前記外層から剥離し収縮する積層剥離容器である、前記<1>~<4>のいずれかに記載の積層剥離容器入り化粧料。
<6>前記剥離容器は、スクイズタイプまたはポンプタイプである、前記<1>~<5>のいずれかに記載の積層剥離容器入り化粧料。
<7>前記<1>~<6>のいずれかに記載の積層剥離容器入り化粧料の製造方法であって、前記化粧料は融点以上の温度範囲まで加熱され、液体の状態で積層剥離容器に充填されることを特徴とする、積層剥離容器入り化粧料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積層剥離容器に充填された化粧料は、ノズルヘッドを押し下げる、または容器の側面を握ることによって、液体になって口部から吐出されるため、取り出しがワンステップで簡単であり、使い勝手が向上している。また、容器内に水や空気が入り込むことがないため衛生的であり、さらに、化粧料を最後まで確実に使い切ることが可能となり無駄がない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に用いることができるスクイズタイプの積層剥離容器の一例を示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の内容物の化粧料は、外力を加えない状態では固体のような挙動を示し流動性を持たないが、一定の外力を加えると流動性を示す物質である。したがって、固体状態の前記化粧料を手に取った場合には、手で撹拌したり塗り伸ばしたりすることで化粧料に物理的破断力を加えることにより、状態が変化し、オイル状またはクリーム状の液体となる。本発明の様に前記化粧料が積層剥離容器に充填されている場合には、容器内部にあって外力が加えられえない状態では固体であるが、吐出された際には液体である。
また、本発明の内容物の化粧料は、融点未満の状態では上述したように固体であるが、加熱して融点以上になると、外力を加えた場合と同じように、液体となる。ここで、化粧料の融点は、ポリエチレン等のゲル化剤の配合量によって変化するため任意の温度に調節することが可能であるが、40~80℃、好ましくは50~70℃、さらに好ましくは55~65℃の温度範囲にある。
なお、液体になった化粧料の粘度はその温度の上昇に伴って低下するため、化粧料を容器に充填する際には、所望の粘度を示す温度帯にまで化粧料を加熱することで、粘度を調節することができる。
【0011】
本発明において、「固体」とは、一定の形と体積とを保ち、圧縮およびずれに抵抗する性質をもつ物質の集合状態を意味する。また、固体は、レオメーター(株式会社レオテック社製)動作条件:粘性用(4)アダプターの径D10mmを用い、落下速度1mm/sec、100gスケール感度で測定した場合、200以上の値を示す状態である。
さらに本発明において、「液体」とは、圧縮に対し抵抗を示して一定の体積をもつが,ずれに対してはほとんど抵抗せず一定の形をもたない、物質の集合状態を意味する。液体は、粘性を全く持たないか、粘性があっても流動性を示す状態である。
【0012】
本発明の実施態様として、内容物は、マッサージ化粧料とすることができる。
上記マッサージ化粧料は、上述の粘度の範囲を満たすものであれば、任意の成分を使用することができるが、主成分としてオイル、ゲル化剤としてポリエチレンを含むことができる。さらに、上記の必須成分に加え、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲で、水、美容成分、防腐剤、pH調整剤、中和剤、酸化防止剤、香料等の化粧料に常用される各種原料を配合することができる。以下に、本発明のマッサージ化粧料の配合の一例を記載する。
<マッサージ化粧料配合例>
オイル 90重量部
ポリエチレン 8重量部
香料 1重量部
美容成分 1重量部
【0013】
本発明のその他の実施態様として、内容物は、クレンジング化粧料とすることができる。
上記クレンジング化粧料は、上述の粘度の範囲を満たすものであれば、任意の成分を使用することができるが、主成分として界面活性剤、オイル、ゲル化剤としてポリエチレンを含むことができる。さらに、上記の必須成分に加え、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲で、水、美容成分、防腐剤、pH調整剤、中和剤、酸化防止剤、香料等の化粧料に常用される各種原料を配合することができる。以下に、本発明のクレンジング化粧料の配合の一例を記載する。
<クレンジング化粧料配合例>
オイル 84重量部
非イオン界面活性剤 6重量部
ポリエチレン 7重量部
香料 1重量部
美容成分 1重量部
水 1重量部
【0014】
本発明のその他の実施態様として、内容物は、クリーム、または整髪料とすることができるが、これらに限定されない。
【0015】
積層剥離容器には、容器の側面を手で握って圧縮し内容物を吐出させるスクイズタイプと、ノズルヘッドを押し下げることにより内容物を吐出させるポンプタイプがあり、本発明の積層剥離容器としてはいずれのタイプの容器も使用することができる。
【0016】
積層剥離容器の一例の断面図を
図1に示す。積層剥離容器1は、容器本体3と、弁部材5を備える。容器本体3は、収容部7及び口部9において、外層11と内層13 を備えており、外層11によって外殻12が構成され、内層13によって内袋14が構成される。化粧料は内袋14に収容される。化粧料の減少に伴って内層13が外層11から剥離することによって、内袋14が外殻12から剥離して収縮する。口部9は、雄ネジ部が設けられており、雄ネジ部には、雌ネジを有するキャップやポンプなどが取り付けられる。収容部7は、前記収容部の長手方向に向かって断面形状が略一定である胴部19と、胴部19と口部9の間を繋ぐ肩部17を備える。外殻12には、収容部7において中間空間21と外部空間を連通する外気導入孔15が設けられている。外気導入孔15は、外殻12にのみ設けられた貫通孔であり、内袋14には到達していない。弁部材5は、外気導入孔15に挿通される。
【0017】
本発明の化粧料は、上述したように、容器内部で外力が加えられえない状態では固体であるが、スクイズまたはポンプにより容器から吐出された際には液体に変化している。そのメカニズムについて、図を用いて以下に詳細に説明する。
積層剥離容器入り化粧料を使用する際には、
図2(a)~(c)に示すように、化粧料が充填された製品を傾けた状態で外殻12の側面を握って圧縮して化粧料を吐出させる。使用開始時は、内袋14と外殻12の間に実質的に隙間がない状態であるので、外殻12に加えた圧縮力は、そのまま内袋14の圧縮力となり、内袋14が圧縮されて化粧料が吐出される。このとき、内袋14が圧縮されることによって化粧料全体に圧力がかかるため、油相内で形成されているポリエチレンの分子間架橋が崩れ、固体状の化粧料が液体へと状態変化する。その結果、吐出された化粧料は液状となる。
キャップ23は、図示しない逆止弁を内蔵しており、内袋14内の化粧料を吐出させることはできるが、内袋14内に外気を取り込むことはできない。そのため、内容物の吐出後に外殻12へ加えていた圧縮力を除くと、外殻12が自身の復元力によって元の形状に戻ろうとするが、内袋14はしぼんだままで外殻12だけが膨張することになる。そして、
図2(d)に示すように、内袋14と外殻12の間の中間空間21内が減圧状態となり、外殻12に形成された外気導入孔15を通じて中間空間21内に外気が導入される。中間空間21が減圧状態になっている場合、弁部材5は、外気導入孔15に押し付けられないので、外気の導入を妨げない。
次に、
図2(e)に示すように、再度、外殻12の側面を握って圧縮した場合、弁部材5が外気導入孔15を閉塞することによって、中間空間21内の圧力が高まり、外殻12に加えた圧縮力は中間空間21を介して内袋14に伝達され、この力によって内袋14が圧縮されて化粧料が吐出される。この時、内袋14が圧縮されることによって化粧料全体に圧力がかかるため、化粧料は液体へと変化する。
内容物の吐出後は、
図2(f)に示すように、外殻12へ加えていた圧縮力を除くと、外殻12は、外気導入孔15から中間空間21に外気を導入しながら、自身の復元力によって元の形状に復元される。
【0018】
本発明の化粧料は、上述したように、化粧料が減るにしたがって内層が収縮するため、化粧料が容器の隅に残存して取り出せなくなる、ということが起こりにくく、最後まで無駄なく使いきることができるという利点も有する。
【0019】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
先ず、(i)オリブ油93.9重量部、(ii)ポリエチレン(分子量約500)6.0重量部をステンレス容器に計量し、温湯・蒸気・オイルバスなどで80~90℃に加温・混合する。それらの混合が均一になったところで、それらを放置冷却によって放冷し、それらの中に70℃の下で(iii)ビタミンEオイル(酸化防止剤)0.1重量部を添加、混合して、マッサージ化粧料を製造した。
【0021】
上記製造方法によって製造されたマッサージ化粧料を70℃まで放置冷却し、その後積層剥離容器に流し込み充填した。その後、静置放冷した。積層剥離容器は、ポンプタイプ容量50mL、ポンプタイプ容量300mL、スクイズタイプ容量100mLの3種類を使用し、比較例として剥離構造を有さない一般ポンプ容器容量300mLを使用した。
完全に固体となった積層剥離容器入り化粧料について、化粧料の吐出状態をテストした。容器内容量の多寡によらず液状となって吐出された場合には〇、液状で吐出されても吐出量が不十分だったり一部が固体状態で吐出されたり、また、容器内容量の多寡により吐出物の状態が変化したりした場合には△、また、全く吐出されなかった場合には×として、評価を行った。結果を表1に示す。
【0022】
【0023】
積層剥離容器では、ポンプタイプ、スクイズタイプのいずれでも液状の吐出物が得られた。一般ポンプ容器では、内容物が吐出されなかった。一般スクイズ容器(チューブ容器)の場合、押し出し当初は剥離容器と同様、液状(クリーム状)に吐出されるが、チューブ全体に何度も加圧をするうちに液にストレスが掛かり、回数を重ねるとともに粘性が降下し、最終的には液状化にまで至るため、実使用には不向きである。また、チューブ内部の液が減るにつれ空間が生じてしまい、最後までスムースな液の取り出しができない事も不適切判定の一因となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、積層剥離容器に充填された、常温で外力が加えられない状態で固体であって、外力が加えられることによって液体になる化粧料に関する。さらに、同様の状態変化をしめす組成物、例えば医薬品や飲食品、塗料などの工業製品についても、同様に、積層剥離容器を用いて同様な効果を得ることができると考えられる。
【符号の説明】
【0025】
1:積層剥離容器
3:容器本体
5:弁部材
7:収容部
9:口部
11:外層
12:外殻
13:内層
14:内袋
15:外気導入孔
21:中間空間
23:キャップ