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特許7120584被検体の位置決め装置、被検体の位置決め方法、被検体の位置決めプログラムおよび放射線治療システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】被検体の位置決め装置、被検体の位置決め方法、被検体の位置決めプログラムおよび放射線治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
A61N5/10 T
A61N5/10 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021053062
(22)【出願日】2021-03-26
(62)【分割の表示】P 2017051076の分割
【原出願日】2017-03-16
(65)【公開番号】P2021094460
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸辰
(72)【発明者】
【氏名】田口 安則
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
(72)【発明者】
【氏名】岡屋 慶子
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186537(JP,A)
【文献】特開2016-101358(JP,A)
【文献】特開平3-121579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0205167(US,A1)
【文献】国際公開第2015/125600(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 ― 6/14
A61N 5/10
G16H 30/00 ― 30/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の位置決めを行うときに透視撮影装置を用いて撮影され、前記被検体の位置決めの指標となる指標部の第1像と前記指標部以外の非指標部の第2像と前記第1像および前記第2像が重なった像とが写る3次元ボリューム画像である撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
治療計画時であって前記被検体の位置決めを行う前に少なくとも前記被検体の画像を含む3次元ボリューム画像を取得する3次元画像取得部と、
予め取得されている前記非指標部の3次元形状および3次元空間内における配置に関するデータである3次元モデル情報に基づいて前記撮影画像のうち前記第2像および前記重なった像が写る特定領域を特定する領域特定部と、
前記特定領域に基づいて前記撮影画像から特定された前記第2像および前記重なった像を消去する画像処理を行う画像処理部と、
前記画像処理後に前記撮影画像の前記第1像と前記被検体の位置決めを行う前に前記3次元画像取得部により取得された3次元ボリューム画像に基づいて生成される参照画像の像とを照合して前記被検体の位置決めを行う位置決め部と、
を備えることを特徴とする被検体の位置決め装置。
【請求項2】
前記3次元モデル情報は、前記透視撮影装置に関する情報と、前記被検体を載置する載置台に関する情報と、前記被検体を固定する固定具に関する情報と、の少なくともいずれかの情報を含む請求項1に記載の被検体の位置決め装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記第2像の画素値を前記第1像の画素値よりも低減させる前記画像処理を行う請求項1または請求項2に記載の被検体の位置決め装置。
【請求項4】
前記3次元画像取得部が取得した前記3次元ボリューム画像であって前記被検体および前記被検体以外の画像を含む前記3次元ボリューム画像に基づいて前記非指標部の前記3次元モデル情報を生成するモデル情報生成部を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の被検体の位置決め装置。
【請求項5】
前記3次元画像取得部が取得した前記3次元ボリューム画像に基づいて前記指標部および前記非指標部を特定する指標特定部と、
前記指標特定部が特定した前記指標部および前記非指標部に基づいて前記参照画像を生成する参照画像生成部と、
を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被検体の位置決め装置。
【請求項6】
撮影画像取得部が、被検体の位置決めを行うときに透視撮影装置を用いて撮影され、前記被検体の位置決めの指標となる指標部の第1像と前記指標部以外の非指標部の第2像と前記第1像および前記第2像が重なった像とが写る3次元ボリューム画像である撮影画像を取得するステップと、
3次元画像取得部が、治療計画時であって前記被検体の位置決めを行う前に少なくとも前記被検体の画像を含む3次元ボリューム画像を取得するステップと、
領域特定部が、予め取得されている前記非指標部の3次元形状および3次元空間内における配置に関するデータである3次元モデル情報に基づいて前記撮影画像のうち前記第2像および前記重なった像が写る特定領域を特定するステップと、
画像処理部が、前記特定領域に基づいて前記撮影画像から特定された前記第2像および前記重なった像を消去する画像処理を行うステップと、
位置決め部が、前記画像処理後に前記撮影画像の前記第1像と前記被検体の位置決めを行う前に前記3次元画像取得部により取得された3次元ボリューム画像に基づいて生成される参照画像の像とを照合して前記被検体の位置決めを行うステップと、
を含むことを特徴とする被検体の位置決め方法。
【請求項7】
被検体の位置決めを行うときに透視撮影装置を用いて撮影され、前記被検体の位置決めの指標となる指標部の第1像と前記指標部以外の非指標部の第2像と前記第1像および前記第2像が重なった像とが写る3次元ボリューム画像である撮影画像を取得するステップと、
治療計画時であって前記被検体の位置決めを行う前に少なくとも前記被検体の画像を含む3次元ボリューム画像を取得するステップと、
予め取得されている前記非指標部の3次元形状および3次元空間内における配置に関するデータである3次元モデル情報に基づいて前記撮影画像のうち前記第2像および前記重なった像が写る特定領域を特定するステップと、
前記特定領域に基づいて前記撮影画像から特定された前記第2像および前記重なった像を消去する画像処理を行うステップと、
前記画像処理後に前記撮影画像の前記第1像と前記被検体の位置決めを行う前に取得された3次元ボリューム画像に基づいて生成される参照画像の像とを照合して前記被検体の位置決めを行うステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする被検体の位置決めプログラム。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の被検体の位置決め装置と、
前記位置決めが行われた前記被検体におけるターゲット部に放射線を照射する放射線照射装置と、
を備えることを特徴とする放射線治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線治療システムを用いて治療を行うときの被検体の位置決め技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療では、治療計画時にCT装置を用いて取得した3次元画像に基づいてDRR画像を生成し、このDRR画像と放射線照射前に患者を撮影したX線画像とを照合し、患者の位置合わせをしている。ここで、治療計画時の3次元画像に寝台および拘束具などの像が含まれている場合でも、患者の像のみが抽出されたDRR画像を生成する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-101358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の技術にあっては、治療計画時に生成されるDRR画像(参照画像)から寝台および拘束具などの像が取り除かれるものの、放射線照射前のX線画像(撮影画像)には、寝台および拘束具などの像が写った状態であるので、この像が邪魔になってしまい、患者の位置決めが行い難いという課題がある。
【0005】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、撮影画像と参照画像との照合精度を向上させることができ、被検体の位置決めが行い易くなる被検体の位置決め技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る被検体の位置決め装置は、被検体の位置決めを行うときに透視撮影装置を用いて撮影され、前記被検体の位置決めの指標となる指標部の第1像と前記指標部以外の非指標部の第2像と前記第1像および前記第2像が重なった像とが写る3次元ボリューム画像である撮影画像を取得する撮影画像取得部と、治療計画時であって前記被検体の位置決めを行う前に少なくとも前記被検体の画像を含む3次元ボリューム画像を取得する3次元画像取得部と、予め取得されている前記非指標部の3次元形状および3次元空間内における配置に関するデータである3次元モデル情報に基づいて前記撮影画像のうち前記第2像および前記重なった像が写る特定領域を特定する領域特定部と、前記特定領域に基づいて前記撮影画像から特定された前記第2像および前記重なった像を消去する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理後に前記撮影画像の前記第1像と前記被検体の位置決めを行う前に前記3次元画像取得部により取得された3次元ボリューム画像に基づいて生成される参照画像の像とを照合して前記被検体の位置決めを行う位置決め部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、撮影画像と参照画像との照合精度を向上させることができ、被検体の位置決めが行い易くなる被検体の位置決め技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の放射線治療システムを示す図。
図2】第1実施形態の位置決め装置を示すブロック図。
図3】X線照射部とX線検出部と被検体との関係を示す概略図。
図4】位置決め処理を示すフローチャート。
図5】位置決め処理を示すフローチャート。
図6】X線画像の画像処理を示す説明図。
図7】X線画像とDRR画像との照合処理を示す説明図。
図8】変形例のX線画像の画像処理を示す説明図。
図9】変形例のX線画像とDRR画像との照合処理を示す説明図。
図10】変形例の画像処理技術を示す説明図。
図11】変形例の画像処理技術を示す説明図。
図12】変形例の画像処理技術を示す説明図。
図13】変形例の画像処理技術を示す説明図。
図14】変形例の画像処理技術を示す説明図。
図15】変形例の画像処理技術を示す説明図。
図16】第2実施形態の放射線治療システムを示す図。
図17】第2実施形態の位置決め装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態の被検体の位置決め装置について図1から図15を用いて説明する。図1の符号1は、患者Pの体内に発生した腫瘍などの患部Gに放射線Rを照射して治療を行うために用いる放射線治療システムである。なお、治療に用いる放射線Rには、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、重粒子線などが用いられる。
【0010】
なお、放射線治療を行うときには、充分な出力の放射線Rを患者P(被検体)の患部G(ターゲット部)の位置に正確に照射しなければならない。さらに、患部Gの近傍の正常な組織(非ターゲット部)の被ばく量を抑える必要がある。そこで、本実施形態では、治療計画時に取得した患者Pの画像と、放射線照射時に撮影した患者Pの画像とを照合することで、患者Pの位置決めを行って放射線Rを照射する。
【0011】
図1に示すように、放射線治療システム1を用いた治療計画を立てる際に、3次元ボリューム画像を入手する。例えば、まず、患者P(被検体)のコンピュータ断層撮影を行う。本実施形態では、コンピュータ断層撮影により患者Pの各種検査を行うための医用検査装置2が設けられている。この医用検査装置2は、X線CT装置で構成される。そして、医用検査装置2を用いて患者Pの3次元ボリューム画像(透視画像)を生成する。なお、3次元ボリューム画像は、例えば、ボクセルデータからなる。
【0012】
なお、本実施形態では、医用検査装置2としてX線CT装置を例示しているが、この医用検査装置2(診断装置)は、患者Pの3次元ボリューム画像を取得できるものであれば他の装置であっても良い。例えば、医用検査装置2は、MRI装置(Magnetic Resonance Imaging)であっても良いし、超音波画像診断装置であっても良い。
【0013】
本実施形態の放射線治療システム1は、患者Pを透視した像が写るX線画像40(撮影画像、透視画像、図6参照)を撮影するX線撮影装置3(透視撮影装置)と、このX線画像40に基づいて患者Pの位置決めを行う位置決め装置4と、患者Pが載置される載置台5と、載置台5の位置を変更する台駆動装置6と、患者Pの患部Gに放射線を照射する放射線照射装置7と、放射線照射装置7を制御する照射制御部8と、を備える。また、患者Pは、載置台5に載置された状態で固定具9により固定される(図3参照)。
【0014】
なお、位置決め装置4は、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウエア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、後述の位置決め方法は、プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
【0015】
また、位置決め装置4は、医用検査装置2とX線撮影装置3と台駆動装置6と照射制御部8とに接続される。なお、X線撮影装置3は、X線を患者Pに照射するX線照射部10と、患者Pを透過したX線を検出するX線検出部11と、を備える。また、X線検出部11は、フラットパネルディテクタ(FPD)またはイメージインテンシファイアなどで構成される。
【0016】
本実施形態では、1のX線照射部10および1のX線検出部11で1組の機器が合計2組設けられている。2組のX線照射部10およびX線検出部11で異なる2方向から同時にX線撮影を行う。なお、X線撮影を時系列に沿って連続して行うことで、X線画像40を用いた動画像を生成しても良い。
【0017】
なお、実際のX線撮影では、2組のX線照射部10およびX線検出部11を用いて、2方向(例えば、患者Pの右手側および左手側の2方向)から撮影した一対のX線画像40が得られる。さらに、後述のDRR画像50(Digitally Reconstructed Radiograph、デジタル再構成画像)についても、一対の画像が得られる。一対のX線画像40およびDRR画像50を用いることで、3次元的な位置決めを行うことが可能になる。しかしながら以下の説明では、理解を助けるために、患者Pを1方向から撮影したX線画像40およびDRR画像50を例示して説明する(図6から図15参照)。
【0018】
図3に示すように、放射線治療を行う際には、載置台5(寝台)の上に患者Pが載置される(典型的には、寝かされる)。例えば、脳腫瘍などの治療を行う場合は、患部Gが存在する患者Pの頭部を固定具9で固定する。この固定具9は、載置台5に固定される金属製の固定部材12と、患者Pの顔面を覆う樹脂製の拘束部13を備える。また、載置台5は、樹脂製の台本体14と、その内部に設けられた金属製のフレーム15などを備える。以下、患部Gが頭部に存在する場合を例に説明するが、本発明の適用対象を特に限定するものではなく、患部G(典型的には腫瘍)が全身のいずれに存在する場合にも本発明を適用することができる。
【0019】
なお、金属製の固定部材12およびフレーム15などは、X線を通し難いので、X線画像40に明瞭に写る。また、樹脂製の拘束部13および台本体14などは、X線を通し易いので、X線画像40に殆ど写らない。また、X線撮影装置3では、人体を構成する部分において、骨Sの部分が最も明瞭に写るようにX線の出力を調整される。そして、X線照射部10から照射されたX線がX線検出部11で検出され、骨Sの部分を写したX線画像40が得られる。
【0020】
また、本実施形態では、X線画像40に写る患者Pの骨Sの部分が位置決めの指標となる指標部となっている。そして、この骨S以外の部分、例えば、載置台5および固定具9などの部分を非指標部とする。なお、X線画像40において、人体を構成する骨S以外の臓器なども非指標部とする。
【0021】
さらに、治療計画時に、3次元ボリューム画像に基づいて、患者Pの骨Sの部分のみが写ったDRR画像50を生成する。さらに、放射線照射に適した位置に骨Sが存在するように生成したDRR画像50を参照画像とする。そして、放射線治療時にX線画像40に写る骨Sの位置と、DRR画像50に写る骨Sの位置とが一致するように載置台5を移動させて患者Pの位置決めを行う(図7参照)。本実施形態では、放射線照射装置7の位置が固定されている。
【0022】
なお、一般的に、治療計画を行ってから治療を開始するまでに数週間の時間差が生じる。そのため、患者Pと載置台5および固定具9などの位置関係が、治療計画時と放射線治療時とで異なってしまう場合がある。また、治療計画時に想定した患者Pの位置と放射線照射装置7の位置とが異なってしまう場合もある。そこで、治療計画時に取得した3次元ボリューム画像に基づくDRR画像50と、放射線治療時に撮影するX線画像40とを正確に照合させる必要がある。
【0023】
ここで、X線画像40には、固定具9および載置台5の金属部分の像が写り込んでしまう。このような像がX線画像40に写った状態で、DRR画像50との照合作業を行おうとすると、固定具9および載置台5の像が邪魔になり、位置決め精度の低下を招いてしまう。そこで、本実施形態では、X線画像40における骨S以外の像を消去する画像処理を施す(図3および図6参照)。
【0024】
なお、以下の説明では、X線画像40に写る像おいて、患者Pの骨S(指標部、患者部)の像を第1像41と称し、それ以外の固定具9など(非指標部、非患者部)の像を第2像42と称する場合がある(図6参照)。さらに、DRR画像50に写る骨Sの像を基準像51と称する場合がある(図7参照)。
【0025】
図1に示すように、位置決め装置4は、照射制御部8に接続されている。また、照射制御部8は、放射線照射装置7に接続されている。なお、照射制御部8は、位置決め装置4から出力される照射開始信号を受信したときに、放射線Rの照射を開始するように放射線照射装置7を制御する。
【0026】
図2に示すように、医用検査装置2は、患者Pの複数の方向からの投影データ(透視画像データ)を撮影する投影データ撮影部16と、この投影データ撮影部16により得られる2次元の複数の投影データに基づいて患者Pの立体的な3次元ボリューム画像を生成する3次元画像生成部17と、を備える。なお、3次元ボリューム画像は、複数のボクセルの情報を含む。そして、3次元画像生成部17は、3次元ボリューム画像を位置決め装置4に向けて出力する。
【0027】
なお、医用検査装置2は、コンピュータ断層撮影を時系列に沿って連続して行うことで、患者Pの立体的な動画像を生成しても良い。例えば、患部Gが動く部位である場合に、その3次元的な動きを取得することができる。
【0028】
また、位置決め装置4は、図2に示すように、患者Pの3次元ボリューム画像を医用検査装置2から取得する3次元画像取得部18と、3次元ボリューム画像に含まれる指標部および非指標部の部分を特定する指標特定部19と、3次元ボリューム画像に基づいて指標部のDRR画像50を生成するDRR画像生成部20(再構成画像生成部)と、DRR画像生成部20が生成した画像に基づいて参照画像となるDRR画像50を生成する参照画像生成部21と、生成した参照画像(DRR画像50)を記憶する参照画像記憶部22と、を備える。
【0029】
ここで、DRR画像生成部20は、3次元ボリューム画像とX線撮影装置3のジオメトリ情報とに基づいてDRR画像50(Digitally Reconstructed Radiograph、デジタル再構成画像)を生成する。なお、DRR画像50は、X線撮影装置3を用いて撮影したときのX線画像40を、3次元ボリューム画像に基づいて仮想的に生成した画像である。また、X線画像40およびDRR画像50は、ほぼ同じ構図の画像となる。なお、前述の指標特定部19では、指標部および非指標部を特定する処理を行い、画像を消去する処理を行わない。また、DRR画像生成部20が生成したDRR画像50には、固定具9などが映り込んでいる。
【0030】
また、参照画像生成部21は、DRR画像生成部20が生成したDRR画像50から固定具9などが写った領域の像(非指標部と、この非指標部と重なっている指標部の一部の像を含む像)を消去して、参照画像となるDRR画像50を生成する。そして、生成された参照画像(DRR画像50)が参照画像記憶部22に記憶される。このようにすれば、第1像41(指標部)において消去されずに残された部分に相当する像のみが参照画像となるDRR画像50に含まれるので、X線画像40とDRR画像50との照合精度を向上させることができる。
【0031】
なお、ジオメトリ情報には、X線照射部10の位置、X線検出部11の位置、およびX線検出部11においてX線を検出する面の向きを表すパラメータが含まれる。このジオメトリ情報は、X線撮影装置3の設計図データ(CADデータ)などに基づいて予め構成される。このジオメトリ情報は、後述の情報入力部24に入力される入力情報である。
【0032】
また、ジオメトリ情報は、治療計画時にユーザ(例えば医師)が入力するものであっても良いし、外部機器から取得するものであっても良い。さらに、DRR画像生成部20がジオメトリ情報を予め記憶していても良い。なお、情報入力部24は、X線撮影装置3が可動式である場合に、可動に応じて変化する各状態のジオメトリ情報を継続的に取得しても良いし、予め記憶しておいても良い。
【0033】
また、医用検査装置2で撮影した3次元ボリューム画像には、患者Pの画像の他に、載置台5および固定具9の像も含まれる。また、患者Pの画像は、骨Sの部分および骨S以外の組織の部分の像が含まれる。これら各部分のCT値は、それぞれ異なっている。そして、位置決め装置4の指標特定部19は、3次元ボリューム画像のCT値を識別することで、患者Pの骨Sの部分(指標部)および他の部分(非指標部)を特定することができる。また、情報入力部24に入力される入力情報を用いて骨S以外の部分(非指標部)を特定しても良い。
【0034】
なお、骨Sの部分および他の部分を識別する作業を、治療計画時にユーザの入力作業に基づいて行っても良い。例えば、ユーザが3次元ボリューム画像に含まれる骨Sの部分を特定する入力操作を行っても良い。さらに、ユーザを補助するために、コンピュータが自動的に骨Sの部分を特定し、その修正をユーザが行うものでも良い。
【0035】
また、位置決め装置4は、図2に示すように、X線撮影装置3が撮影したX線画像40を取得するX線画像取得部23(撮影画像取得部)と、載置台5の配置状態などの各種情報が入力される情報入力部24と、非指標部の3次元モデル情報を生成するモデル情報生成部25と、この非指標部の3次元モデル情報を記憶するモデル情報記憶部26と、をさらに備える。
【0036】
また、情報入力部24に入力される各種情報には、X線撮影装置3のジオメトリ情報と、患者Pを載置する載置台5の配置状態を示す台情報と、患者Pを固定する固定具9の配置状態を示す固定具情報などが含まれる。なお、情報入力部24では、ユーザに各種情報の入力が行われても良いし、他の機器からネットワークを介して各種情報の入力が行われても良い。
【0037】
また、モデル情報生成部25は、例えば、前述の指標特定部19が3次元ボリューム画像において特定した骨S以外の部分(非指標部)に基づいて非指標部の3次元モデル情報を生成する。典型的には、3次元ボリューム画像の骨Sの部分(指標部)と、骨S以外の部分(非指標部)とを分離することで、非指標部の3次元ボリューム画像を取得する。そして、この非指標部の3次元ボリューム画像に基づいて非指標部の3次元モデル情報を生成する。
【0038】
例えば、モデル情報生成部25は、3次元ボリューム画像を画素値(ボクセル値)と画素の空間的な連続性を利用して複数の領域に分割する。そして、それぞれの領域の平均画素値、サイズ、形状、位置関係といった情報に基づいて、指標部と非指標部とを決定する。
【0039】
また、予め用意したラベルを各画素に付与し、これらのラベルに基づいて3次元ボリューム画像を分割しても良い。例えば、指標部の画素に指標ラベルを付与し、非指標部の画素に非指標ラベルを付与した画像を予め用意する。さらに、この画像の画素の周辺パターンから抽出した特徴量によって、その画素の非指標部らしさを算出する辞書を作成しておく。そして、3次元ボリューム画像の各画素に対して辞書を適用することで、非指標部らしさを算出し、閾値処理を行うことで非指標部の画素を分離する。なお、治療計画時に入力された非指標部を表す情報がある場合は、その情報に基づいて3次元ボリューム画像を分割しても良い。
【0040】
また、非指標部の3次元モデル情報には、載置台5および固定具9などの構成を示す情報と、患者Pを構成する部分で骨S以外の部分を示す情報とを含んでも良い。このようにすれば、治療計画時などに取得可能な患者Pの3次元ボリューム画像によって、載置台5および固定具9などの非指標部の3次元モデル情報を取得できるので、非指標部の3次元モデル情報(載置台5および固定具9の設計図データなど)を別途に準備する手間を省くことができる。なお、3次元ボリューム画像から分離された非指標部の部分は、3次元モデル情報として生成され、モデル情報記憶部26に記憶される。
【0041】
なお、3次元ボリューム画像を基に非指標部の3次元モデル情報を生成する方法を例として説明したが、3次元モデル情報の生成方法は、特にこれに限定されない。例えば、情報入力部24に入力される台情報または固定具情報を参照して非指標部の3次元モデル情報を生成しても良い。或いはまた、非指標部の3次元モデル情報は、医用検査装置2以外の装置から入力されても良いし、医用画像を蓄積するサーバから入力されても良いし、CDまたはDVDなどの記憶媒体(メディア)から入力されても良いし、他の機器からネットワークを介して入力されても良い。
【0042】
また、位置決め装置4は、図2に示すように、モデル情報記憶部26に記憶された非指標部の3次元モデル情報を取得する非指標情報取得部27と、非指標部の3次元モデル情報に基づいてX線画像40における非指標部の第2像42の領域を特定する領域特定部28と、特定された領域に画像処理を施す画像処理部29と、画像処理が施されたX線画像40の指標部の第1像41と参照画像としてのDRR画像50の基準像51とを照合して患者Pの位置決めを行う位置決め部30と、画像処理が施されたX線画像40を表示する表示部31と、X線画像40の第1像41と参照画像としてのDRR画像50の基準像51とのずれ量を算出するずれ量算出部32と、ずれ量に基づいて載置台5を移動させる台駆動装置6と、ずれ量が予め定められた閾値以下である場合に照射開始信号を出力する照射信号出力部33と、をさらに備える。
【0043】
図6(A)は、X線撮影装置3を用いて撮影したX線画像40である。このX線画像40には、患者Pの頭蓋骨Sの第1像41と、固定具9などの第2像42とが写っている。ここで、領域特定部28は、非指標情報取得部27が取得した非指標部の3次元モデル情報と、情報入力部24に入力された各種情報とに基づいて、X線画像40において固定具9などの第2像42が写っている特定領域Q(図6(A)において破線で示す)を特定する。なお、図6(A)の例では、第2像42の一部が第1像41の一部(頭蓋骨Sの側頭部)と重なっている。なお、特定領域Qは、第2像42と重なった部分であるが、図6(A)では、理解を助けるために、特定領域Qを示す破線と第2像42を示す実線とを、ずらして図示している。
【0044】
本実施形態では、領域特定部28が情報入力部24に入力された各種情報に基づいて特定領域Qを特定することで、X線撮影装置3と載置台5と固定具9の配置状態により写り方が変化する特定領域Q(第2像42が写る領域)を特定することができる。なお、情報入力部24に入力された全ての入力情報を用いる必要はなく、各装置の配置状態を示すいずれかの情報のみを用いて特定領域Qを特定しても良い。また、情報入力部24に入力される各種情報には、患者Pの衣服または装着物の情報が含まれていても良い。
【0045】
図6(B)に示すように、画像処理部29は、X線画像40において特定領域Qに写る像を消去する画像処理を行う。なお、第1実施形態では、特定領域Qに写る第1像41および第2像42の双方を消去する。この画像処理は、特定領域Qの画素値(輝度値)を固定値で置き換えるようにすると良い。例えば、X線画像40の画素値は、必ず正の値を持つため、特定領域Qの画素値を-1に置き換えることで、特定領域Qと特定領域以外の領域(非特定領域)とを区別することができる。このようにすると、X線画像40には、特定領域以外に写る第1像41(頭蓋骨Sの部分)のみが残る。つまり、特定領域Qに写る第2像42を位置決めの照合対象から排除することができる。
【0046】
さらに、表示部31は、画像処理が施されたX線画像40を表示する。なお、この表示部31に表示されたX線画像40をユーザが見ることができる。つまり、位置決め部30による照合状態を、表示部31を用いてユーザが見ることができる。ここで、表示部31は、X線画像40とDRR画像50とを重複した状態で表示する。また、表示部31は、X線画像40とDRR画像50とを並べて表示しても良いし、双方を交互に切り替えて表示しても良い。このようにすれば、指標部を用いて患者Pの位置決めを行うときに、その状態を表示部31に表示されるX線画像40によってユーザが把握することができる。ここで、画像処理が施されたX線画像40を変更または修正するユーザの操作を受け付けるようにしても良い。
【0047】
また、第1実施形態において、表示部31に画像処理後のX線画像40を表示するときには、消去した特定領域Qに所定の色彩を付して表示しても良いし、特定領域Qの画素を反転させて表示しても良いし、特定領域を一色で塗り潰して表示しても良い。
【0048】
図7に示すように、位置決め部30は、画像処理が施されたX線画像40(図7(A))と、参照画像として生成されたDRR画像50(図7(B))とを照合して患者Pの位置決めを開始する。なお、DRR画像50の特定領域Qに写る像は、参照画像生成部において参照画像が生成される際に予め消去されている。また、X線画像40とDRR画像50とを照合する位置決め作業は、互いの画像の類似度(患者Pの位置のずれ量)が閾値以下であると判定されるまで実行される(図7(C))。本実施形態において、2つの画像の類似度は、当該画像に写る患者Pの位置のずれ量を示し、類似度を示す値が小さいほど両画像が類似していることを示すものとする。なお、基準像51は、第1像41と重なった部分であるが、図7(C)では、理解を助けるために、基準像51を示す破線と第1像41を示す実線とを、ずらして図示している。
【0049】
また、ずれ量算出部32は、患者Pの位置のずれ量を示す値であって、X線画像40とDRR画像50との類似度を算出する。例えば、X線画像40とDRR画像50との類似度が閾値を超えている場合は、台駆動装置6を用いて患者Pを載せた載置台5を移動させる。そして、再びX線撮影を行ってX線画像40を取得する。さらに、再びX線画像40とDRR画像50とを照合し、かかる載置台5の移動からX線画像40とDRR画像50とを照合するまでの作業を、X線画像40とDRR画像50との類似度が閾値以下になるまで繰り返す。
【0050】
ここで、DRR画像50とX線画像40の各画素の各座標位置を(u,v)とした場合に、DRR画像50の画素位置(u,v)における画素値をI(u,v)とし、X線画像40の画素位置(u,v)における画素値をX(u,v)として表す。また、DRR画像50(参照画像)とX線画像40(撮影画像)の類似度(患者Pの位置のずれ量)を示す誤差をeとした場合に、以下の数式1および数式2のように計算する。数式1および数式2は、X線画像40の特定領域Qの画素値を-1に置き換える場合のずれ量の計算式である。なお、φは所定の関数である。
【0051】
【数1】
【0052】
【数2】
【0053】
そして、誤差eが予め定められた閾値以下になるまで、X線画像40の撮影と載置台5の移動を繰り返すと良い。
【0054】
なお、患者Pの位置決め作業が完了した後(すなわち、ずれ量算出部32において類似度が閾値以下であると判定されると)、照射信号出力部33が照射制御部8に向けて照射開始信号を出力する。また、照射制御部8は、位置決め装置4から出力される照射開始信号を受信したときに、放射線照射装置7を用いた放射線Rの照射を開始する。
【0055】
次に、位置決め装置4が実行する位置決め処理(位置決め方法)について図4および図5を用いて説明する。なお、フローチャートの各ステップの説明にて、例えば「ステップS11」と記載する箇所を「S11」と略記する。
【0056】
まず、治療計画時において、患者Pを医用検査装置2で検査することで3次元ボリューム画像が生成される。そして、位置決め装置4において、3次元画像取得部18は、医用検査装置2から3次元ボリューム画像を取得する(S11)。次に、X線撮影装置3のジオメトリ情報と載置台5の台情報と固定具9の固定具情報などが、情報入力部24に入力される(S12)。
【0057】
次に、指標特定部19は、3次元ボリューム画像の骨Sの部分(指標部)と、骨S以外の部分(非指標部)とを特定する(S13)。次に、DRR画像生成部20は、3次元ボリューム画像とX線撮影装置3のジオメトリ情報とに基づいてDRR画像50を生成する(S14)。次に、参照画像生成部21は、DRR画像生成部20が生成したDRR画像50から固定具9など(非指標部)の部分を消去して、参照画像となるDRR画像50を生成する(S15)。
【0058】
次に、モデル情報生成部25は、骨Sの部分(指標部)と、骨S以外の部分(非指標部)とが特定された3次元ボリューム画像に基づいて、固定具9など(非指標部)の3次元モデル情報を生成する(S16)。次に、非指標情報取得部27は、固定具9などの3次元モデル情報を取得する(S17)。
【0059】
次に、放射線治療を開始する。この放射線治療の開始時において、X線撮影装置3は、患者PのX線画像40を撮影する(S18)。次に、X線画像取得部23は、患者Pの位置決めの指標となる骨Sの部分(指標部)の第1像41と、骨S以外の部分(非指標部)の第2像42とが写るX線画像40をX線撮影装置3から取得する(S19)。
【0060】
次に、領域特定部28は、X線画像40において固定具9などの第2像42が写っている特定領域Qを特定する(S20)。次に、画像処理部29は、X線画像40において特定領域Qに写る像を消去する画像処理を行う(S21)。次に、表示部31は、画像処理が施されたX線画像40を表示する(S22)。
【0061】
次に、位置決め部30は、画像処理が施されたX線画像40と、参照画像として生成されたDRR画像50とを照合して患者Pの位置決め作業を開始する(S23)。次に、ずれ量算出部32は、患者Pの位置のずれ量を示す値であって、X線画像40とDRR画像50との類似度を算出する(S24)。
【0062】
次に、ずれ量算出部32は、算出されたずれ量(類似度)が閾値以下であるか否かを判定する(S25)。ここで、ずれ量が閾値以下である場合は、照射信号出力部33から照射制御部8へ照射開始信号を出力し(S26)、位置決め処理を終了する。一方、ずれ量が閾値を超えている場合は、台駆動装置6を用いて患者Pを載せた載置台5を移動させる(S27)。そして、前述のS18に戻る。なお、載置台5を移動させるときには、X線画像40とDRR画像50とのずれ量(差分)に基づいて、載置台5の移動方向または移動量を調整しても良い。
【0063】
なお、本実施形態の各フローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
【0064】
なお、第1実施形態では、X線画像40から第2像42を除去するなどの画像処理を行う前に、領域特定部28がX線画像40における特定領域Q(第2像42が写る領域)を特定するので、X線画像40の全体に画像処理を行う必要が無い。即ち、画像処理を行う面積(画素数)を最小限度にすることができる。そのため、リアルタイム処理を効率的に行うことができる。このように、第1実施形態に記載の技術によると、特定領域Qの画素の処理で済み、画像全体の画素を処理することと比較して、画像処理の負荷を低減することができる。例えば、患者P(被検体)の位置合わせをするときには、患者Pの位置が変更される度にX線画像40の再撮影を行うので、多量のX線画像40の処理を行わなければならないが、第1実施形態では、その処理負荷を低減させることができる。
【0065】
また、第1実施形態では、撮影画像が、患者Pの位置決めを行うときに撮影される2次元のX線画像40であり、位置決め部30は、DRR画像50を参照画像として患者Pの位置決めを行うようにしている。このようにすれば、位置決めに用いる撮影画像の撮影を行うときには、2次元のX線画像40の撮影で済むので、患者Pの被ばく量を低減することができる。
【0066】
なお、第1実施形態では、画像処理部29が、特定領域Qに写る第1像41および第2像42の双方を完全に消去するようにしているが、特定領域Qに写る第1像41および第2像42の双方を完全に消去しなくても良い。例えば、特定領域Qに写る第1像41および第2像42の画素値を、特定領域以外に写る第1像41の画素値よりも低減させるものであっても良い。
【0067】
なお、第1実施形態では、非指標部の3次元モデル情報を治療計画時に撮影した3次元ボリューム画像に基づいて生成しているが、その他の態様で3次元モデル情報を取得しても良い。例えば、非指標部の3次元モデル情報が外部から入力されても良い。
【0068】
次に、変形例におけるX線画像40の画像処理について図8および図9を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0069】
図8(A)に示すように、X線画像40(撮影画像、透視画像)には、患者Pの頭蓋骨Sの第1像41と、固定具9などの第2像42とが写っている。ここで、領域特定部28は、非指標情報取得部27が取得した非指標部の3次元モデル情報と、情報入力部24に入力された各種情報とに基づいて、X線画像40において固定具9などの第2像42が写っている特定領域Qを特定する。なお、図8(A)の例では、第2像42の一部が第1像41の一部(頭蓋骨Sの側頭部)と重なっている。なお、特定領域Qは、第2像42と重なった部分であるが、図8(A)では、理解を助けるために、特定領域Qを示す破線と第2像42を示す実線とを、ずらして図示している。
【0070】
図8(B)に示すように、画像処理部29は、前述の位置決め処理の画像処理のステップ(S21)にて、X線画像40において特定領域Qに写る第2像42を消去する画像処理を行う。なお、前述の第1実施形態では、特定領域Qに写る第1像41および第2像42の双方を消去しているが、変形例では、特定領域Qに写る第1像41を残し、第2像42のみを消去する。
【0071】
この画像処理は、DRR画像生成部20が生成したDRR画像50(図9(B))に基づいて、予めX線画像40に写ることが想定される第2像42の画素値(輝度値)を算出しておく。なお、算出した画素値は、画像の各画素に対応している。そして、算出した画素値を、実際に撮影されたX線画像40における各画素から減算することで、第2像42のみを消去することができる。なお、基準像51は、第1像41と重なった部分であるが、図9(C)では、理解を助けるために、基準像51を示す破線と第1像41を示す実線とを、ずらして図示している。
【0072】
このようにすると、第1像41に第2像42の一部が重なっている場合でも、第2像42のみが消去され、第1像41(頭蓋骨Sの部分)の全部がX線画像40(図9(A))に残るので、指標部を指標とした位置決めが行い易くなる(図9(C))。なお、第1像41に第2像42の一部が重なっている場合に、第2像42のみを消去する画像処理技術には、様々なものを適用することができる。
【0073】
なお、変形例では、画像処理部29が、第2像42を完全に消去するようにしているが、第2像42を完全に消去しなくても良い。例えば、第2像42の画素値を第1像41の画素値よりも低減させるものであっても良い。また、第1像41の全部がX線画像40に残るようにしているが、特定領域Qの第1像41の画素値が低減されるものであっても良い。その場合に、第1像41の画素値の低減量が、第2像42の画素値の低減量よりも小さくなっていれば良い。
【0074】
また、変形例において、表示部31に画像処理後のX線画像40を表示するときには、第2像42を消去した部分に所定の色彩を付して表示しても良いし、第2像42を消去したX線画像40と第2像42を消去する前のX線画像40との差分画像を表示しても良いし、第2像42を消去したX線画像40と第2像42を消去する前のX線画像40とを切り換えて表示しても良い。
【0075】
次に、X線画像40から第2像42のみを消去する変形例の画像処理技術について図10図15を用いて説明する。なお、図10図15では、理解を助けるために、X線画像40(撮影画像、透視画像)の頭蓋骨S(第1像41、指標部)の中央近傍に、固定具9(第2像42、非指標部)が写っているものを例示する。なお、図10図15中のラインLは、同じ位置である。
【0076】
また、骨Sおよび固定具9などのX線を透過し難い部分がX線画像40上で暗く写るものとして説明する。さらに、X線画像40において、明るい部分の輝度値が大きく、暗い部分の輝度値が小さくなる。つまり、この輝度値が小さい部分は、骨Sの形状を示す第1像41、または固定具9の形状を示す第2像42を構成する情報を含んでいる場合がある。
【0077】
なお、X線画像40は、白黒反転(明暗反転)させることが可能である。白黒反転した場合には、X線を透過し難い部分がX線画像40上で明るく写る場合がある。以下の説明で述べる「明るい」と「暗い」の文言、および輝度値の大小は、X線画像40の白黒反転に応じて任意に変更可能である。
【0078】
図10(A)は、画像処理前のX線画像40である。このX線画像40には、患者Pの頭蓋骨Sの第1像41と、固定具9の第2像42とが写っている。なお、特定領域Qは、第2像42と重なった部分であるが、図10(A)では、理解を助けるために、特定領域Qを示す破線と第2像42を示す実線とを、ずらして図示している。また、図10(B)のグラフにおいて、横軸は、X線画像40のラインL上の位置(u軸)を示し、縦軸は、X線画像40のラインLに対応した各画素の輝度値(明るさ)を示している。なお、X線画像40において、第1像41の部分の輝度値43が小さくなっている。さらに、第1像41と第2像42とが重なった部分の輝度値44が最も小さくなっている。
【0079】
図11(A)は、固定具9の第2像42が写ったDRR画像50である。このDRR画像50は、非指標部の3次元モデル情報に基づいて生成される。また、図11(B)のグラフにおいて、横軸は、DRR画像50のラインL上の位置(u軸)を示し、縦軸は、DRR画像50のラインLに対応した各画素の輝度値(明るさ)を示している。なお、DRR画像50において、第2像42の部分の輝度値52が小さくなっている。
【0080】
図12(A)は、画像処理後のX線画像40である。このX線画像40は、固定具9の第2像42が消去され、患者Pの頭蓋骨Sの第1像41のみが写っている。また、図12(B)のグラフにおいて、横軸は、X線画像40のラインL上の位置(u軸)を示し、縦軸は、X線画像40のラインLに対応した各画素の輝度値(明るさ)を示している。なお、画像処理後のX線画像40では、前述の図10(B)の最も小さい輝度値44が消去され、第1像41の輝度値43が残っている。
【0081】
X線画像40から第2像42のみを消去する画像処理技術について詳述すると、DRR画像50とX線画像40の各画素の各座標位置を(u,v)とした場合に、図10に示す画像処理前のX線画像40の画素位置(u,v)における画素値をX(u,v)とし、図11に示すDRR画像50の画素位置(u,v)における画素値をI(u,v)とし、図12に示す画像処理後のX線画像40の画素位置(u,v)における画素値をA(u,v)として表す。例えば、図10に示す画像処理前のX線画像40の画素値X(u,v)から、図11に示すDRR画像50の画素値I(u,v)を減算することで、図12に示す画像処理後のX線画像40の画素値A(u,v)が生成される。
【0082】
また、画像処理技術の一例として、図10に示すX線画像40に対して、画像処理としてのインペインティング処理を施すことができる。このインペインティング処理を施すことで、図12に示すX線画像40が生成される。なお、インペインティング処理が施される部分は、固定具9の第2像42が写っている画素が集合した特定領域Qの部分である。この特定領域Qは、前述の固定具9など(非指標部)の3次元モデル情報に基づいて決定することができる。
【0083】
なお、X線画像40には、患者Pの頭蓋骨Sの形状に関する細部情報を含んでいる。この細部情報は、頭蓋骨Sの表面の凹凸、または頭蓋骨Sの内部の詳細な構造などの情報を含んでいる。前述のインペインティング処理では、このような細部情報が消去されてしまう場合がある。そこで、前述の図12に示すX線画像40の画素値A(u,v)に対して細部情報を残した画像処理を行う例を次に説明する。なお、実際のX線画像40は細部情報を含むものであるが、理解を助けるために、図12に示すX線画像40が細部情報を含まないものとして説明をする。
【0084】
図13(A)は、画像処理前のX線画像40である。このX線画像40には、患者Pの頭蓋骨Sの第1像41と、固定具9の第2像42とが写っている。なお、特定領域Qは、第2像42と重なった部分であるが、図13(A)では、理解を助けるために、特定領域Qを示す破線と第2像42を示す実線とを、ずらして図示している。また、図13(B)の画像処理前のX線画像40の画素値X(u,v)のグラフにおいて、横軸は、X線画像40のラインL上の位置(u軸)を示し、縦軸は、X線画像40のラインLに対応した各画素の輝度値(明るさ)を示している。なお、X線画像40において、第1像41と第2像42とが重なった部分の輝度値44に、頭蓋骨Sの表面の凹凸、または頭蓋骨Sの内部の詳細な構造などを示す細部情報45が含まれる。
【0085】
図13(C)は、減算用の画素値Y(u,v)のグラフである。このグラフには、第1像41の部分の輝度値43と、第1像41と第2像42とが重なった部分の輝度値44とが含まれる。なお、第1像41の部分の輝度値43と、第1像41と第2像42とが重なった部分の輝度値44とは、DRR画像生成部20で生成されるDRR画像50に基づいて予め生成することができる。
【0086】
ここで、図13(B)の画像処理前のX線画像40の画素値X(u,v)から、図13(C)の減算用の画素値Y(u,v)を減算することで、図14(B)の減算後の画素値T(u,v)のグラフを得ることができる。なお、図14(A)は、減算後の画素値T(u,v)のX線画像40である。このX線画像40は、第2像42と重なった部分(図13(A)参照)の第1像41の一部41Aを含む。また、図14に示すように、減算後のX線画像40では、第1像41における細部情報45が含まれる部分のみが残る。
【0087】
なお、前述した態様では、減算用の画素値Y(u,v)をDRR画像生成部で生成されるDRR画像50に基づいて生成する場合を例として説明したが、これに限定されない。例えば、図14(B)に示す画素値T(u,v)を推定する場合は、X線画像40における特定領域Qを参照したエッジ保存型の平滑化による処理を行い、図13(C)の減算用の画素値Y(u,v)を推定する。さらに、図13(B)の画素値X(u,v)から図13(C)の画素値Y(u,v)を減算することで、図14(B)の減算後の画素値T(u,v)を推定すると良い。また、エッジ保存型の平滑化としては、例えば、ジョイントバイラテラルフィルタまたはガイデッドフィルタなどを用いることができる。
【0088】
そして、図14(B)の画素値T(u,v)を、図12(B)の画素値A(u,v)に加算することで、図15(A)に示す細部情報45を含む第1像41を生成することができる。図15(B)に示すように、細部情報45を含むX線画像40の画素値A(u,v)を生成することができる。
【0089】
なお、X線画像40に対してインペインティング処理を施す画像処理を例示したが、インペインティング処理を用いない画像処理を行っても良い。例えば、類似度(患者Pの位置のずれ量)を示す誤差をeとした場合に、以下の数式3のように計算する。
【0090】
【数3】
【0091】
ここで、A(u,v)は、X線撮影装置3の被写体に固定具9など(非指標部)がなかったと仮定した場合に、X線照射部10からX線検出部11にX線が多く到達すると想定できる画素値を示す。また、X(u,v)は、実際に撮影されたX線画像40に基づく既知の画像値である。つまり、X線画像40から固定具9の第2像42を仮想的に除去した画素値A(u,v)のX線画像40を生成する場合に、固定具9の第2像42の画素値I(u,v)を推定する必要がある。
【0092】
この画素値I(u,v)を推定するときには、まず、治療計画時に取得される3次元ボリューム画像に基づいて、固定具9の第2像42が写るDRR画像50を生成する。このDRR画像50の画素値をD(u,v)とする。例えば、画素値I(u,v)を画素値D(u,v)の一次変換で表現し、その係数を推定することで、画素値I(u,v)が得られる。この推定は、不良設定問題であるものの、係数が局所的に一定であるなどの仮定を置くことで解ける。こうして画素値I(u,v)が得られることで、画素値A(u,v)が生成される。
【0093】
なお、第1像41および第2像42が写ったX線画像40から第2像42が仮想的に除去された画像を機械学習により生成するようにしても良い。さらに、画素値I(u,v)を各画素に持つ画像を出力する関数を機械学習により取得しても良い。また、機械学習には、Deep Learning、SVMなどを利用することができる。そして、機械学習を行った所定の画像処理装置に、第1像41および第2像42が写ったX線画像40を入力して、第2像42を仮想的に除去されたX線画像40が生成されても良い。また、所定の画像処理装置に、第1像41および第2像42が写ったX線画像40と、第2像42が写ったDRR画像50と、を入力して、第2像42を仮想的に除去されたX線画像40が生成されても良い。
【0094】
なお、患者Pの位置決めを行う場合に、DRR画像50(参照画像)とX線画像40(撮影画像)の類似度(患者Pの位置のずれ量)を示す誤差eを、以下の数式4のように計算すると良い。この例では、X線画像40から固定具9など(非指標部)の第2像42が除去されているので、前述の第1実施形態と異なり、誤差eの計算に用いる画素を、特定領域Qと特定領域以外の領域(非特定領域)とで区別する必要がない。
【0095】
【数4】
【0096】
このようにすれば、X線画像40に写る第1像41とDRR画像50の基準像51との照合精度を向上させることができ、患者Pの位置決めが行い易くなる。
【0097】
なお、本実施形態では、X線画像40(撮影画像)に画像処理を施した後に、DRR画像50(参照画像)と照合しているが、X線画像40に画像処理を施さずに、つまり、第2像42を消去していないDRR画像50と照合しても良い。例えば、DRR画像50の生成は、放射線治療システム1における実際の機器の配置に合わせて行われる。このため、DRR画像50を構成する各画素のうち、第2像42が写る部分(典型的には特定領域Q)の画素を生成することができる。
【0098】
例えば、X線照射部10からX線検出部11の各画素を結ぶ仮想線Kが(図3参照)、固定具9などと交差するか否かを判定し、交差する画素を特定領域の画素として生成する。また、3次元ボリューム画像に基づいて生成する場合に、X線照射部10からX線検出部11の各画素を結ぶ仮想線K上に存在する全てのCT値を積算することで、X線検出部11の各画素の画素値(輝度値)を計算し、閾値処理によって特定領域Qの画素を生成することができる。さらに、2値化するのではなく、例えば、閾値を増やすことで3値のように、離散化された複数の非連続な値を用いても良いし、画素値そのものを用いて連続値としても良い。
【0099】
そして、X線画像40と、第2像42を消去していないDRR画像50とを照合し、互いの画像における画素値の誤差が閾値以下になるまで載置台5の移動を繰り返すときに、特定領域Qの画素値を用いないようにする。例えば、X線画像40の特定領域Qの画素値が2値(0または1)の場合は、特定領域Qの画素値を誤差計算に利用しない。また、X線画像40の特定領域Qの画素値が連続値(0~n)の場合は、誤差計算時に画素値の重みを制御すると良い。
【0100】
ここで、DRR画像50とX線画像40の各画素位置を(u,v)とし、DRR画像50の画素位置における画素値をI(u,v)とし、X線画像40の画素位置における画素値をX(u,v)とし、特定領域Qまたは特定領域Q以外の領域の各画素値を補正する補正値をL(u,v)とし、DRR画像50とX線画像40の類似度(患者Pの位置のずれ量)を示す誤差をeとした場合に、以下の数式5のように計算する。
【0101】
【数5】
【0102】
また、特定領域Qの画素値が2値の場合は、特定領域Qに対応する補正値をL(u,v)=0とし、特定領域Q以外に対応する補正値をL(u,v)=1とする。また、特定領域Qの画素値が連続値の場合は、特定領域Qに対応する補正値(L(u,v))を0に近づけるようにし、特定領域Q以外に対応する補正値(L(u,v))を1に近づけるようにすると良い。そして、誤差eが予め定められた閾値以下になるまで、X線画像40の撮影と載置台5の移動を繰り返すと良い。
【0103】
このようにすれば、X線画像40の画像処理を行わなくても、X線画像40の第1像41とDRR画像50の基準像51とを照合して位置決めを行うことができる。なお、本実施形態では、誤差を画素値の2乗誤差としているが、これに限定されるものではなく、例えば、絶対値誤差または正規化相関などの画像の差を表すものを用いても良い。
【0104】
なお、本実施形態では、2組のX線照射部10およびX線検出部11が設けられているが、1組のX線照射部10およびX線検出部11を用いて1方向以上からX線画像を取得し、この画像を用いて患者Pの位置決めを行っても良い。さらに、3組以上のX線照射部10およびX線検出部11を用いて3方向以上からX線画像を取得し、この画像を用いて患者Pの位置決めを行っても良い。
【0105】
なお、本実施形態では、治療計画時に生成したDRR画像50を参照画像とし、このDRR画像50と放射線治療時に撮影したX線画像40とを照合しているが、DRR画像50以外の画像を参照画像として用いても良い。例えば、放射線治療時に複数回のX線画像40の撮影を行う場合に、先に撮影したX線画像40を参照画像とし、このX線画像40と後に撮影したX線画像40とを照合しても良い。また、複数回の放射線治療を行う場合に、1回目の放射線治療時に位置決めに用いたX線画像40を参照画像とし、このX線画像40と2回目の放射線治療時に撮影したX線画像40とを照合しても良い。これらの場合にもX線画像40から特定領域を算出し、位置決めを行うことで、患者Pの指標部のみに注目した位置決めを行うことができる。
【0106】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の被検体の位置決め装置4Aについて図16から図17を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。また、以下に特段の説明をしない構成については、前述の第1実施形態で説明したものと同様の構成を特に限定なく適用することができる。
【0107】
図16に示すように、第2実施形態の放射線治療システム1Aは、患者Pの3次元ボリューム画像(透視画像)を撮影する3次元撮影装置34(透視撮影装置)と、この3次元ボリューム画像に基づいて患者Pの位置決めを行う位置決め装置4Aと、載置台5と、台駆動装置6と、放射線照射装置7と、照射制御部8と、を備える。
【0108】
また、3次元撮影装置34は、患者Pの複数の方向からの投影データ(透視画像データ)を撮影する投影データ撮影部35と、この投影データ撮影部35により得られる2次元の複数の投影データに基づいて患者Pの立体的な3次元ボリューム画像を生成する3次元画像生成部36と、を備える。
【0109】
第2実施形態の3次元撮影装置34は、前述の第1実施形態の医用検査装置2とほぼ同じ構成のX線CT装置となっている。つまり、治療計画を立てる際に、放射線治療システム1Aの3次元撮影装置34を用いて患者P(被検体)のコンピュータ断層撮影を行うことができる。なお、3次元撮影装置34は、MRI装置であっても良いし、超音波画像診断装置であっても良い。
【0110】
また、位置決め装置4Aは、3次元撮影装置34と台駆動装置6と照射制御部8とに接続される。この第2実施形態では、治療計画時に3次元撮影装置34を用いて撮影した3次元ボリューム画像に基づいて参照画像を生成する。
【0111】
例えば、位置決め装置4Aの3次元画像取得部18が、3次元撮影装置34から3次元ボリューム画像を取得する。そして、指標特定部19は、3次元ボリューム画像のCT値を識別することで、患者Pの骨Sの部分(指標部)を特定する。さらに、参照画像生成部21は、特定された骨Sの部分に基づいて指標像を生成する。そして、この指標像を含む参照画像(3次元ボリューム画像)を参照画像記憶部22に記憶する。
【0112】
なお、第2実施形態では、載置台5および固定具9など(非指標部)の3次元モデル情報が外部から入力される。この非指標部の3次元モデル情報は、モデル情報記憶部26に記憶される。また、指標特定部19は、情報入力部24に入力される各種情報に基づいて、載置台5および固定具9などの部分(非指標部)を特定し、これらの部分を3次元ボリューム画像から消去しても良い。これによって、3次元ボリューム画像から参照画像が生成される。
【0113】
この第2実施形態では、放射線治療時に患者Pの位置決めを行うときに、3次元撮影装置34を用いて患者Pの3次元ボリューム画像(撮影画像)を撮影する。そして、この3次元ボリューム画像を3次元画像取得部18が取得する。この取得した3次元ボリューム画像が領域特定部28に送られる。そして、領域特定部28は、モデル情報記憶部26に記憶された非指標部の3次元モデル情報に基づいて、3次元ボリューム画像に含まれる固定具9など(非指標部)の第2像の領域を特定する。なお、画像処理部29では、3次元ボリューム画像における固定具9などの第2像を消去する画像処理を行う。この第2実施形態における第2像を消去する画像処理方法は、第1実施形態で説明した方法を特に限定なく適用することができる。
【0114】
そして、位置決め部30は、放射線治療時に撮影した3次元ボリューム画像(撮影画像)の骨Sの第1像と、治療計画時に撮影した3次元ボリューム画像(参照画像)の指標像とを照合して、患者Pの位置決めを行う。このようにすれば、3次元ボリューム画像同士を照合するので、骨Sの部分(指標部)の3次元的な位置合わせが行い易くなる。
【0115】
なお、第2実施形態では、非指標部の3次元モデル情報が外部から入力されるが、その他の態様で3次元モデル情報を取得しても良い。例えば、第2の実施態様についても、第1の実施形態と同様に、非指標部の3次元モデル情報を治療計画時に撮影した3次元ボリューム画像に基づいて生成しても良い。
【0116】
本実施形態に係る被検体の位置決め装置を第1実施形態から第2実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
【0117】
なお、本実施形態の所定の値(ずれ量)と判定値(閾値)との判定において「判定値以下か否か」の判定をしているが、この判定は、「判定値未満か否か」の判定でも良いし、「判定値以上か否か」の判定でも良いし、「判定値を超えているか否か」の判定でも良い。
【0118】
なお、位置決め装置4は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウエア構成で実現できる。
【0119】
なお、位置決め装置4で実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
【0120】
また、位置決め装置4で実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、位置決め装置4は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【0121】
なお、本実施形態では、被検体として人間である患者Pを例示しているが、犬、猫などの動物を被検体とし、これらの動物に放射線治療を行う際に、位置決め装置4を用いても良い。
【0122】
なお、本実施形態の位置決め装置4では、X線画像40またはDRR画像50などを表示する表示部(モニタ)を備えているが、表示部の構成を省略しても良い。
【0123】
なお、本実施形態では、患者Pの骨Sの部分が指標部となっているが、骨S以外の部分、例えば、患部Gを指標部としても良く、その場合には、患者Pの骨Sの部分を非指標部として、患者Pの位置決めを行っても良い。
【0124】
なお、本実施形態では、患者Pを載せた載置台5を移動させることで、患者Pの位置決めを行っているが、放射線照射装置7を移動させることで、患者Pの位置決めを行っても良い。例えば、載置台5を固定し、放射線照射装置7を移動可能とする。また、仮想空間内において、DRR画像50に含まれる基準像51の位置と放射線照射装置7の位置とを固定しておく。そして、仮想空間内で、基準像51が、患者PのX線画像40の第1像41と一致するように移動させると、放射線照射装置7の位置が任意に決定される。
【0125】
以上説明した実施形態によれば、第1像と予め生成された参照画像の像とを照合して被検体の位置決めを行う位置決め部を備えることにより、撮影画像と参照画像との照合精度を向上させることができ、被検体の位置決めが行い易くなる。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0127】
1(1A)…放射線治療システム、2…医用検査装置、3…X線撮影装置、4(4A)…位置決め装置、5…載置台、6…台駆動装置、7…放射線照射装置、8…照射制御部、9…固定具、10…X線照射部、11…X線検出部、12…固定部材、13…拘束部、14…台本体、15…フレーム、16…投影データ撮影部、17…3次元画像生成部、18…3次元画像取得部、19…指標特定部、20…DRR画像生成部、21…参照画像生成部、22…参照画像記憶部、23…X線画像取得部、24…情報入力部、25…モデル情報生成部、26…モデル情報記憶部、27…非指標情報取得部、28…領域特定部、29…画像処理部、30…位置決め部、31…表示部、32…ずれ量算出部、33…照射信号出力部、34…3次元撮影装置、35…投影データ撮影部、36…3次元画像生成部、40…X線画像、41(41A)…第1像、42…第2像、43…輝度値、44…輝度値、45…細部情報、50…DRR画像、51…基準像、52…輝度値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17