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特許7120589検出材およびその製造方法、ならびに検出用具、検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】検出材およびその製造方法、ならびに検出用具、検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/22 20060101AFI20220809BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20220809BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01N31/22 121P
G01N21/78 A
G01N31/00 Q
G01N31/00 T
G01N31/00 U
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022010839
(22)【出願日】2022-01-27
【審査請求日】2022-02-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年1月30日 分離技術、第51巻、第1号、第19~25頁にて、「土壌中の有害重金属イオンの高分子樹脂による吸着-呈色物質との反応による見えない汚染を見える化-」について公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(73)【特許権者】
【識別番号】392012283
【氏名又は名称】有限会社坂本石灰工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】甲野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】岸本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 達宣
(72)【発明者】
【氏名】深浦 仁美
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-152514(JP,A)
【文献】特開2015-232070(JP,A)
【文献】特開2004-154165(JP,A)
【文献】特開2014-227519(JP,A)
【文献】特開2020-122719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/22
G01N 31/00
G01N 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシエチルセルロースを、塩基性水溶液中で、エチレングリコールジグリシジルエーテルと架橋反応させてゲル剤を得る合成工程と、
前記ゲル剤を担持剤として、発色剤を担持させて、発色試験に用いる検出材を得る担持工程と、を有する、土壌中または水中の環境汚染物質の検出材の製造方法。
【請求項2】
前記発色剤が、ランタン-アリザリンコンプレキソン、8-ヒドロキシ-1-(サリチリデンアミノ)-3,6-ナフタレンジスルホン酸・2ナトリウム塩、4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノール、および、ジフェニルカルバジドからなる群から選択されるいずれかの発色剤である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記合成工程における、前記塩基性水溶液がpH13以上であり、
前記水溶液中の前記ヒドロキシエチルセルロースの質量に対する、前記エチレングリコールジグリシジルエーテルの容量の比(EGDEの容量/HECの質量)が、
0.01~2.00(mL/g)である、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記合成工程が、20~80℃で、0.5時間以上、架橋反応させるものである、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ヒドロキシエチルセルロースとエチレングリコールジグリシジルエーテルとの架橋させたゲル剤の担持剤と、前記担持剤に担持された発色剤とを有する、土壌中または水中の環境汚染物質の検出材。
【請求項6】
請求項5に記載の検出材を、容器に収容させた検出用具。
【請求項7】
請求項6に記載の検出用具を、試験対象の土壌に置き、前記土壌の環境汚染物質を検出する検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境汚染物質等の検出に関する。本発明は検出材に関する。また、本発明は検出材の製造方法に関する。また、本発明は検出用具に関する。また、本発明は検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物の処理場や工場跡地などの土壌や水系は、重金属等(クロム、ヒ素、鉛、フッ素等)の環境汚染物質による汚染が懸念される土壌となっている場合がある。
【0003】
汚染土壌や水系の浄化を行うためには、各環境汚染物質の有無および汚染源の特定が必要であるが、そのためには、汚染が予測される広範囲な面積を対象とした土壌の採取とその分析が必要となる。JIS K0102:2016(非特許文献1)は、広く工場排水試験方法に関する規格であり、土壌汚染の程度を評価するに当たってもこれに準じた試験方法が行われている。このJIS規格の評価方法では、ふっ素化合物(34.項)については、ランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度法、イオン電極法、イオンクロマトグラフ法、流れ分析法が開示されているが、これらは吸光光度計等を準備し、測定前の煩雑な処理を必要とするものであった。
【0004】
同様に、JIS K0102:2016においては、ホウ素(B)(47.項)の評価方法としては、メチレンブルー吸光光度法等、鉛(54.項)の評価方法としては、フレーム原子吸光法等が開示されており、いずれも、厳密な定量を目的とするものが多く、特別な測定装置、測定前の処理を行う必要があり、高度な評価技術を必要とするものであった。大型の装置を用いることなく簡便に環境調査を行うために、例えば特許文献1には、シリカ粒子と色素分子を複合化した水中六価クロム検知材が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された技術が適用できる対象、使用できる環境は限られたものであり、様々な環境で多様な環境汚染物質等の分析を行うには十分なものではなかった。
【0005】
また、特許文献2は、フッ素イオン含有試料をイオンクロマトグラフで分離した後、ランタン・アリザリンコンプレキソン反応試薬と反応させ、その反応物を分光光度検出器で検出することを特徴とするフッ素イオン分析方法に関するものである。ここでも、フッ素イオンの分析のために、イオンクロマトグラフを行い、分光光度検出器を用いるため、複雑な処理と、特別な装置を必要とするものである。
【0006】
このような従来公知の評価方法の課題を解決するために、例えば、特許文献3~6のような検出材や検出用具が開示されている。これらを用いることで、簡易な手法で速やかに金属イオンや環境汚染物質の有無を評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-327886号公報
【文献】特開平7-198704号公報
【文献】特許第6288669号公報
【文献】特開2015-83971号公報
【文献】特許第6292647号公報
【文献】特許第6662524号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】JIS K0102:2016“工場排水試験方法”,34項、47項、54項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や2に開示されているような従来の検査技術は複雑な処理や特別な装置が必要であったり、サンプリングしてから測定結果を確認するまでに時間がかかる場合があった。これらの問題を解決するものとして、特許文献3~6などが開示されている。
【0010】
特許文献3~6の吸水性樹脂やホワイトカーボンを用いる検出材等により、懸濁物質(泥水)等を対象としても、それらに含まれる汚染物質の濃度を、簡易に測定することができる。
【0011】
一方で、環境汚染物質の分析が求められる環境は多岐にわたる。また、検出材の製造条件の条件設定は常時検討される。このため、検出材を製造するための手段はより多い方がよい。係る状況下、本発明は、検出材等の新たな製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0013】
<1> ヒドロキシエチルセルロースを、塩基性水溶液中で、エチレングリコールジグリシジルエーテルと架橋反応させてゲル剤を得る合成工程と、
前記ゲル剤を担持剤として、発色剤を担持させて、発色試験に用いる検出材を得る担持工程と、を有する検出材の製造方法。
<2> 前記発色剤が、ランタン-アリザリンコンプレキソン、8-ヒドロキシ-1-(サリチリデンアミノ)-3,6-ナフタレンジスルホン酸・2ナトリウム塩、4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノール、および、ジフェニルカルバジドからなる群から選択されるいずれかの発色剤である前記<1>に記載の製造方法。
<3> 前記合成工程における、前記塩基性水溶液がpH13以上であり、
前記水溶液中の前記ヒドロキシエチルセルロースの質量に対する、前記エチレングリコールジグリシジルエーテルの容量の比(EGDEの容量/HECの質量)が、
0.01~2.00(mL/g)である、前記<1>または前記<2>に記載の製造方法。
<4> 前記合成工程が、20~80℃で、0.5時間以上、架橋反応させるものである、前記<1>~<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5> ヒドロキシエチルセルロースとエチレングリコールジグリシジルエーテルとの架橋させたゲル剤の担持剤と、前記担持剤に担持された発色剤とを有する、検出材。
<6> 前記<5>に記載の検出材を、容器に収容させた検出用具。
<7> 前記<6>に記載の検出用具を、試験対象の土壌に置き、前記土壌の環境汚染物質を検出する検出方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、環境汚染物質を検出することができる。特に、低濃度の環境汚染物質であっても、発色を確認しやすい検出精度を発揮することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の検出材の製造方法の工程に係るフロー図である。
図2】本発明の検出材に用いるゲル剤の合成に係る図である。
図3】本発明の担持工程で発色剤を担持させる段階を説明するためのフロー図である。
図4】本発明に係る検出用具の参考例を示す図である。
図5】本発明の検出材の物性評価に係るグラフである。
図6】本発明の検出材の発色試験例の図である。
図7】本発明の検出材の発色試験例の図である。
図8】本発明の検出材の発色試験例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0017】
[本発明の検出材]
本発明の検出材は、ヒドロキシエチルセルロースとエチレングリコールジグリシジルエーテルとのゲル剤の担持剤と、前記担持剤に担持された発色剤とを有する。
【0018】
[本発明の検出材の製造方法]
本発明の検出材の製造方法は、ヒドロキシエチルセルロースを、塩基性水溶液中で、エチレングリコールジグリシジルエーテルと架橋反応させてゲル剤を得る合成工程と、前記ゲル剤を担持剤として、発色剤を担持させて、発色試験に用いる検出材を得る担持工程と、を有する。本願において、本発明の検出材の製造方法を、単に「本発明の製造方法」と略記する場合がある。
【0019】
なお、本願において本発明の製造方法により本発明の検出材を製造することもでき、これらによる検出材を、本発明の検出用具や、本発明の検出方法に利用することができ、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。本発明の検出材等は、環境汚染物質等の検出に用いることができる。
【0020】
図1は、本発明の検出材の製造方法の工程のフロー図である。本発明の検出材の製造方法は、ゲル剤を得るための合成工程S1と、発色剤を担持させる担持工程S2とを有し、これにより検出材を得る。図3は、合成工程と担持工程のより詳しいフローの例を説明するための図である。
【0021】
[合成工程]
合成工程は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を、塩基性水溶液中で、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)と架橋反応させてゲル剤を得る工程である。図2は、この合成工程に係る概要図である。合成工程は、HECと、NaOH水溶液などの塩基性水溶液と、EGDEとを含む混合液を調製して、この混合液中でゲル化させることで行うことができる。
【0022】
合成工程においては、ゲル剤を得るための、混合条件や、時間等の管理が難しい場合がある。適切な条件で合成しなければ、ゲル化せず溶けることや、混合されにくくなりゲル化したときの均一性が悪くなることあるなど、ゲル化させることができない場合が多く、その条件を見出すことは容易ではない。
【0023】
[ヒドロキシエチルセルロース(HEC)]
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、セルロースをヒドロキシエチル基で修飾した、多糖類高分子である。ヒドロキシエチルセルロースは、乾燥させた粉末状で市販されている。合成工程の条件を検討するにあたっては、乾燥重量に基づいてその量比を設定することができる。
【0024】
HECは、粘度などが指標となるが、本発明には任意のものを用いることができる。粘度が高すぎると、溶解性や撹拌時の操作性が低下する恐れがあるため、1%粘度が、測定下限程度のものから1000mPa・s程度のものを用いることができる。より好ましくは、1%粘度は、20~800mPa・s程度や、50~500mPa・s程度のものを用いることができる。粘度は、25℃、30回転で測定することができる。
【0025】
合成工程を行う混合液において、HEC濃度は、塩基性水溶液に対する混合比率で管理することができる。例えば、HECの質量/塩基性水溶液の容積の比が、0.10~1.00(g/mL)(10%~100%)となるように混合液を調製して反応させることが好ましい。より好ましくは、0.11~0.50(g/mL)や、0.12~0.30(g/mL)とすることができる。HECの含有率が高くなると、相対的に塩基性水溶液に由来する水が減り、粘度が高くなり合成中の流動性や混合性が下がりゲル剤の均一性が低下する恐れがある。HECの含有率が低すぎると、ゲル化せず、溶けてしまうような状態となり、反応温度や反応時間を調整してもゲル剤を得られないおそれがある。
【0026】
[塩基性水溶液]
合成工程は、塩基性水溶液を用いて行う。塩基性水溶液は、pH13以上や、pH13.5以上であることが好ましい。pH14以上のものを用いてもよい。pHが弱塩基性や、中性、酸性になると、EGDEの架橋反応が抑制され、ゲル化しない。このため、解離性が高い塩基性物質の水溶液を用いることが好ましく、例えば、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH水溶液)や、水酸化カリウム水溶液(KOH水溶液)を用いて行うことが好ましい。HECとEGDEとを架橋する合成は、塩基性水溶液を用いて、強アルカリの雰囲気下で行うことができる。
【0027】
NaOH水溶液やKOH水溶液などの塩基性水溶液は、0.3mol/L~3mol/L程度の濃度で用いることができる。より好ましくは、0.5~2mol/Lや、0.8mol/L~1.8mol/Lのものを用いることができる。塩基性水溶液は、合成工程を行う混合液における占める割合が多い主たる成分であり、ゲル剤の架橋体を合成する場となる媒質とすることができる。塩基性水溶液の塩基性が適切ではない場合、HECやEGDEの化学構造が架橋できる構造とならない場合がある。
【0028】
[エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)]
エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)は、図2に示すような構造のものである。EGDEは、分子式:C8144で、体形名は、「2,2´-[エチレンビス(オキシメチレン)]ビスオキシラン」や、「2,2´-(2,5-ジオキサヘキサン-1,6-ジイル)ビスオキシラン」などとも呼ばれ、オキシラン構造を二つ有している。このEGDEが、HECのヒドロキシエチル基を置換して、HECを架橋することができる。
【0029】
EGDEは、合成工程を行う混合液中で相対的にHECや塩基性水溶液よりも量が少ない。このため、混合液における量比としては、塩基性水溶液が主たるものとなり、次にHECを含み、少量のEGDEを含む状態である。混合液においてEGDEが適切な量でないと、HECの架橋部分が不足したり、過剰に架橋するものと考えられ、ゲル剤を得ることができなかったり、担持剤として扱いにくい恐れがある。
【0030】
合成工程における、塩基性水溶液中の、ヒドロキシエチルセルロースの質量に対する、エチレングリコールジグリシジルエーテルの容量の比(EGDEの容量/HECの質量)が、0.01~2.00(mL/g)(1%~200%)であることが好ましい。より好ましくは、0.015~1.50(mL/g)や、0.018~1.00(mL/g)とすることができる。
【0031】
合成工程における架橋反応は、一定程度の時間がかかり、塩基性水溶液が占める割合が多く、HECは溶解に時間がかかる。このため、塩基性水溶液と、HECと、EGDEとを混合する順序は、まず塩基性水溶液にHECを混合する。そして、EGDEを追加して混合し調製することができる。そして、適宜、静置したり、ゲル化が始まる前に攪拌等しながら、所定の時間経過することでゲル剤を得ることができる。
【0032】
[温度]
合成工程の温度は、好ましくは20~80℃で行うことができる。より好ましくは、40~70℃や、50~65℃で行うことができる。温度が低すぎると、架橋反応に係る時間が長すぎて製造効率が著しく低下したり、ゲル化しない場合がある。温度が高すぎると、水が蒸散しやすく反応条件が変化して管理が難しくなったり、着色する場合がある。
【0033】
[時間]
合成工程の反応時間は、0.5時間以上程度行う。好ましくは1時間以上や、2時間以上、6時間以上、10時間以上とすることもできる。反応時間が短い場合、ゲル化するための架橋が十分に行われない場合がある。より好ましくは、12時間以上や、15時間以上である。混合比率などに応じた反応が完了すると、ゲル化の状態はそれ以上変化しにくいため、反応時間の上限は設けなくてもよい。過剰に反応時間を設ける理由はないため、1週間以下や、3日(72時間)以下、2日(48時間)以下程度としてもよい。反応時間の終了時間は、後述する固形物を回収したときまでとすることができる。
【0034】
[ゲル剤の回収]
ゲル化させるための架橋反応が完了したらゲル剤を回収する。ゲル剤は、反応させた混合液の塩基性水溶液などを網状の器具などで濾して、回収した固形分である。回収したゲル剤は、粉砕して、水で中和・洗浄して用いる。粉砕は、回収直後の大きい状態は、粗く粉砕し、その後、ミキサーなどで粉砕するような段階的なものとしてもよい。中和・洗浄は、多量の水への浸漬や、流水で洗うことで中和・洗浄することができる。
【0035】
洗浄後に、適宜、揮発性が高い有機溶剤などと置換して脱水したり、乾燥して用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、アセトンやメタノール、エタノール、プロパノール、ジオキサンなどを用いることができる。また、乾燥するときは、熱風乾燥や、減圧乾燥、凍結乾燥、凍結真空乾燥等を適宜組み合わせて用いることができる。
【0036】
HECとEGDEとを架橋反応させたゲル剤は、製造する各条件などにもよるが、吸水量(g-水/g-HECゲル)が、およそ15~50程度である。すなわち、ゲル剤の乾燥重量の15倍~50倍程度の水を吸水することができる。
【0037】
[担持工程]
ゲル剤を担持剤として、発色剤を担持させて、発色試験に用いる検出材を得る担持工程と、を有する。ゲル剤は、洗浄後、直ちに発色剤を担持させてもよいし、脱水して発色剤を担持させてもよいし、また、乾燥して回収したゲル剤に発色剤を担持させてもよい。
【0038】
[発色剤]
発色剤は、環境汚染物質と反応して発色する任意のものを用いることができる。例えば、ランタン-アリザリンコンプレキソン、8-ヒドロキシ-1-(サリチリデンアミノ)-3,6-ナフタレンジスルホン酸・2ナトリウム塩、4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノール、およびジフェニルカルバジドからなる群から選択されるいずれかの発色剤などを用いることができる。なお、担持剤とするゲル剤に対する発色剤の比である「発色剤/担持剤の比」は、発色剤の種類に応じて、適宜調製する。ここでの発色剤/担持剤の比は、ゲル剤が乾燥した質量を基に換算して設定する。乾燥は、例えば、真空乾燥機で1日程度乾燥することができる。ゲル剤を乾燥していない状態で、発色剤を担持させる場合、乾燥時の見込み質量を基に換算して設定する。
【0039】
発色剤は、次のものを用いることができる。カルセインブルー、4,5-ヒドロキシ-3-(4-スルホ-1-ナフチルアゾ)-2,7-ナフタレンジスルホン酸(二ナトリウム)(SPADNS)、または8-ヒドロキシ-7-ヨード-5-キノリンスルホン酸を用いることができ、これらはフッ素の検出に適している。また、キナリザリン、クルクミン、またはメチレンブルーを用いることができ、これらはホウ素の検出に適している。
【0040】
また、カルボキシアルセナゾ、カルミン酸、キシレノールオレンジ(XO)、8-キノリノール(オキシン)、o-(サリチリデンアミノ)チオフェノール(SATP)、ジチゾン(ジフェニルチオカルバゾン)、ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン、ジンコン(二ナトリウム塩)、スルホアルサゼン(ナトリウム塩)、チオオキシン、チオテノイルトリフルオロアセトン(STTA)、5,10,15,20,-テトラキス(p-スルホフェニル)ポルフィン(TPPS4)、ピロガロールレッド(PR)、またはブロモピロガロールレッド(BPR)を用いることができ、これらは鉛の検出に適している。
【0041】
また、スチルバゾ(二アンモニウム塩)を用いることができ、これはフッ素およびホウ素の検出に適している。また、ピロカテコールバイオレット(PV)を用いることができ、これはフッ素、ホウ素および鉛の検出に適している。また、4-ピリジンカルボン酸、ピリジンを用いることができ、これはシアンの検出に適している。また、ナフチルエチレンジアミンを用いることができ、これは亜硝酸の検出に適している。
【0042】
また、ジフェニルカルバジド、ジチゾンまたはヨウ化第二銅を用いことができ、これらは水銀の検出に適している。また、ジフェニルカルバジドは、六価クロム等の検出にも適している。また、七モリブデン酸六アンモニウム、ピリジンジチオカルバミン酸アンモニウムを用いることができ、これはヒ素の検出に適している。また、2,3-ジアミノナフタレン(DAN)を用いることができ、これはセレンの検出に適している。
【0043】
例えばフッ素化合物に反応するランタン-アリザリンコンプレキソンの場合は以下のような反応性と特徴を有する。フッ素化合物のフッ化物イオン存在下に、ランタン(III)とアリザリンコンプレキソン(1,2-ジヒドロキシアントラキノン-3-イルメチルアミン-N,N-二酢酸二水和物)との錯体(ランタン-アリザリンコンプレキソン)を加え、これがフッ化物イオンと反応して生じる青い色の複合錯体を形成するため、この青色の着色を確認することで、フッ素化合物の有無を確認することができる。
ランタン-アリザリンコンプレキソンを用いた反応については、前述の非特許文献1を参照して、そこで開示されているような各種試薬を調製し加えることで、pHを調整する化合物や、反応阻害物による呈色抑制を防止する化合物等の反応助剤を、適宜、担持させたり、検出材に混合することができる。
【0044】
本発明の検出材は、発色剤以外の物質を発色剤溶液などに混合して担持させてもよい。例えば、pH調整剤や、pH緩衝剤、マスキング剤などを混合して用いることができる。例えば、フッ素を検出するための検出材に担持されるものとしては、アンモニア、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸、アセトン、酢酸ナトリウム、硝酸カリウムが挙げられる。なお、このランタン-アリザリンコンプレキソン化合物を用いて各種反応助剤等を混合したフッ素検定試薬としてアルフッソン(登録商標、同仁化学研究所社製)を用いることができる。また、PAR(4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノール)を用いる場合、シアン化物等を用いることができる。また、アゾメチンH(8-ヒドロキシ-1-(サリチリデンアミノ)-3,6-ナフタレンジスルホン酸)を用いる場合、アスコルビン酸、酢酸アンモニウム、硫酸、リン酸、クエン酸一水和物、EDTA・2Naなどを用いることができる。ジフェニルカルバジドの場合、硫酸、塩酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、硝酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、スルファミン酸、二硫化カリウム、ピロ硫酸カリウムなどを用いることができる。なお、ここで、フッ素、ホウ素、鉛、6価クロムの検出に適した試薬について詳述したが、これらはそれぞれの試薬に適したpHの範囲で強酸性~中性域~弱アルカリ性(pH1~9.5)等で反応するため、それぞれに適したpHとするための各種pH緩衝剤を併せて担持させておいてもよい。
【0045】
図3は、合成や担持のより詳しいフロー例である。混合液の反応が終了したら(工程S11)、固形部の粉砕を行い(工程S12)、その固形部の中和・洗浄を行い(工程S13)、脱水を行い(工程S14)、乾燥を行い(工程S15)、粉砕を行う(工程S16)ことでゲル剤を得ることができる。発色剤の担持は、この工程S13と工程S14の間にゲル剤に発色剤を混合して担持する工程S2aとしてもよい。または、工程S14と工程S15の間にゲル剤に発色剤を混合して担持する工程S2bとしてもよい。または、工程S16を経たゲル剤に発色剤を混合して担持する工程S2cとしてもよい。工程S2a、工程S2bを行っている場合、工程S16の後のゲル剤を、そのまま検出材としてもよい。工程S2cで発色剤を担持する場合、通常、発色剤溶液を用いて担持させるため、乾燥し(工程S21)、さらに粉砕して(工程S22)、検出材を得てもよい。
【0046】
[ランタン-アリザリンコンプレキソン]
ランタン-アリザリンコンプレキソンは、フッ素などと反応して発色する。ランタン-アリザリンコンプレキソンは、発色剤/担持剤の比を、0.3mg/g~1.0g/g程度とすることができ、好ましくは3mg/g~0.8g/g程度、さらに好ましくは15mg/g~0.4g/gとすることができる。
【0047】
[アゾメチンH]
8-ヒドロキシ-1-(サリチリデンアミノ)-3,6-ナフタレンジスルホン酸・2ナトリウム塩は、ホウ素などと反応して発色し、アゾメチンHとよばれる場合もある。アゾメチンHは、発色剤/担持剤の比を、0.01g/g~2.0g/g程度、好ましくは0.1g/g~1.0g/g程度、さらに好ましくは0.1g/g~0.5g/gとすることができる。
【0048】
[PAR]
4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノールは、鉛などと反応して発色し、PARとよばれる場合もある。PARは、発色剤/担持剤の比を、1μg/g~30mg/g程度、好ましくは50μg/g~3mg/g程度、さらに好ましくは0.2mg/g~2mg/g程度とすることができる。
【0049】
[ジフェニルカルバジド]
ジフェニルカルバジドは、六価クロムなどと反応して発色する。ジフェニルカルバジドは、発色剤/担持剤の比を、0.05mg/g~1.0g/g程度、好ましくは0.5mg/g~0.2g/g程度、さらに好ましくは5mg/g~50mg/g程度とすることができる。
【0050】
担持剤は、前述の合成工程などで合成することができる、ヒドロキシエチルセルロースとエチレングリコールジグリシジルエーテルとのゲル剤を用いる。また、この担持剤に担持された発色剤を有する検出材として用いることができる。この検出材は、担持剤であるゲル剤が、白色であることから、発色の状態を確認しやすい。また、ゲル剤の吸水量が15~50倍程度のため、試験対象の水分を、操作性に優れた時間で十分に吸水し、かつ、過剰に吸水するものでもないため、検出用具の設計や管理が行いやすい。
【0051】
[検出用具]
本発明の検出用具は、本発明の検出材を、容器に収容させたものである。検出用具としておくことで、簡便な操作で試験を行うことができる。
【0052】
容器は、検出材を収容できる任意のものを用いることができる。好ましくは、容器内に円滑に試験対象の液を加えることができるように容器内の容量に空きがあるようにしたり、液を収容して容量が広がる袋状のものなどを用いる。このために、容器には容器内に液を加えるための開口部や、開口させるための易割部、開閉を調整できる開閉部、液のみを通過させる通液部などを設けることが好ましい。
【0053】
検出用具は、例えば、検出材を内包させた包装構造を有する検出用具であり、前記包装構造の第一の面として懸濁物質の通過を抑制し通液性を有する多孔質材の層を有し、前記包装構造の第二の面として透明樹脂製の透明層を有し、第一の面と第二の面との周囲に接着部を有する包装構造である検出用具のような構造とすることができる。この構造は、特許第6292647号公報を適宜参照して作製してもよい。このような検出用具とすれば、多孔質材の層から液を選択的に吸液して検出用具内の検出材がその液と接触する。そして反応の有無を確認するときは、この透明層から観察することができる。
【0054】
また、検出用具には、色見本部を設けてもよい。この色見本と比較して、発色剤が反応する対象の物質が試験対象に含まれているか判別することができる。
【0055】
[不織布]
検出用具に用いる容器は、その一部に、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、およびナイロンからなる群から選択される1以上を含む不織布を用いたものであることが好ましい。これらの不織布は、土壌の試験を行うとき、土壌の固形物のろ過性に優れている。この不織布を介して、試験対象の水分を容器内に選択的に通過させて、検出材と接触させて、試験ができる。また、このような不織布は、製造時の成形性にも優れ、試験条件で想定される酸やアルカリ、溶媒等に対しても耐性がある。
【0056】
図4は、本発明に関する検出用具を説明するための図である。この検出用具は、ドーム状の透明な容器内に検出材を容れ、底面に樹脂製の不織布を貼り合わせたものである。不織布側の面を、水分を含ませた土壌に接触させる。この土壌中に発色剤に反応する物質(重金属等)が含まれ、水中に溶出している場合、その水分を吸収することで内部の検出材と接触して発色する。
【0057】
この図4に関する検出材のドーム状の容器は、直径2.3cmの半球状である。検出材(乾燥重量)の内容量は0.15~0.2g程度である。不織布はナイロンの不織布を用いている。土壌と水とを、土壌5g/水50mLの比率で混合して泥水状にして、検出用具の不織布側の面を泥水に接触させて約1時間後に撮像した。(a)は検出対象の成分が無く赤色で、(b)は検出対象の成分があり青紫色となっており、検出対象の有無により、色が変わることが確認できる。
【0058】
[試験対象への耐性]
図5は、本発明の検出材の物性評価に係るグラフである。本発明の検出材の利点として、吸水性が安定していることがあげられる。アクリル酸系の吸水性樹脂の場合、塩や、pH、エタノールなどに弱く、本来の吸水率を達成できなくなる場合がある。これらは、試験環境によっては含まれうる外乱因子である。一方で、本発明に用いるゲル剤は、塩濃度が高い場合や、pHに変動がある場合、エタノールなどを含む場合も、吸水率が安定している。このため、多様な環境で安定した試験結果が期待できる。
【0059】
図5のHECゲルの吸水試験(pH,塩濃度)は、以下の操作を、以下の試薬・機器等を用いて行った。
秤量した15mL遠沈管に乾燥試料0.10gを正確に秤量する。
次に、pH4,7,10に調整した緩衝液、および塩濃度0%(純水),4%,26%(飽和)に調整した塩化ナトリウム水溶液を、それぞれ過剰量加えて24時間静置し、試料を完全に膨潤させる。
遠心分離(10,000rpm,5min)を行い、上清を取り除き、膨潤試料を正確に秤量し、吸水率を算出する。同様の測定を3回ずつ行い、その平均値とした。
【0060】
「試薬・機器等」
pH4:酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 20mM
pH7:リン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム緩衝液 20mM
pH10:炭酸ナトリウム-炭酸水素ナトリウム緩衝液 20mM
遠心機:日立工機 CF16RN
【0061】
[環境汚染物質の評価]
本発明の検出材は、環境汚染物質の有無の評価検出に用いることができる。環境汚染物質は、主に無機化合物系のものと有機化合物系のものとがあるが、本発明においては、本発明の検出材の担持材として用いるゲル剤に担持される発色剤が反応することができるものであればいずれも検出対象とすることができる。特に、弱酸性~弱アルカリ性の水系のものを対象とすることが好ましく、例えば、フッ素、鉛、ホウ素、クロム等を検出対象の環境汚染物質とすることができる。
【0062】
本発明は、前述した本発明の検出材を用いて、環境汚染物質の有無を評価する方法とすることができる。すなわち、土壌中や水中の汚染物質の有無、またはさらにその濃度を評価する評価方法としても達成することができる。
【0063】
例えば、土壌を評価する方法の場合は、必要に応じて適宜土壌を水で湿潤させる等した状態で、検出材を直接接触させることで土壌中に、検出材の発色剤が反応して発色する対象となる汚染物質が存在するか否かを評価することができる。また、試験対象が水中の環境汚染物質の場合、その試験対象とする水に、本発明の検出材を直接接触させ、呈色反応の有無から環境汚染物質の有無を評価することができる。
【0064】
この評価方法は、前述のように検出材を土壌に直接接触させることで行ってもよい。また、直接接触させず、ろ紙等の吸水性物質を介在させて行うこともでき、ろ紙等を用いる場合、測定後の検出材の回収が容易であり、また、ろ紙を介することで土壌中の水分が検出材に直接吸い上げられ、発色の有無を観察しやすくすることができる。また、検出用具の状態で試験対象に接触させて評価してもよい。
【実施例
【0065】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]HECゲルの合成
以下の操作で、HECゲルの製造条件の検討を行った。具体的な混合比率や、反応の温度-時間は、表1に示す。なお、製造工程は、図3に示すフローを適宜参照するフローである。
(1)ガラスビーカーに1.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液を入れる。
(2)次に、ヒドロキシエチルセルロースの乾燥粉末20gを撹拌機で撹拌しながら、完全に溶解させる。
(3)その後、エチレングリコールジグリシジルエーテルを滴下して加え、撹拌させる。
(4)その後、恒温器中で静置して架橋反応させる。
(5)生成物および水300mLをミキサーに入れ、粉砕し、50cm四方のナイロンメッシュシート(255メッシュ)上に取り出す。
(6)それを流水中で静置して、水酸化ナトリウムを完全に取り除く(pH6~7)。
(7)その後、冷凍庫(-20℃)で冷凍し、凍結乾燥機で凍結真空乾燥(10~15Pa,40℃,1.5~2日間)を行い乾燥する。
【0067】
実験例1-1~実験例1-7は、以下の試薬や機器を用いて行った。実験例1-8~実験例1-17は、この実験例1-1~実験例1-7に準じて、適宜スケールアップして製造した。
・ヒドロキシエチルセルロース:富士フィルム和光純薬 Code No.08-0193
・エチレングリコールジグリシジルエーテル:富士フィルム和光純薬 Code No.05-0384
・撹拌機:AS ONE TORNADO S102/PTFE被膜撹拌棒(羽根付)
・恒温器:ADVANTEC DRN320DA
・ミキサー:WARNING 7010BUJ
・ナイロンメッシュシート:SANPLATEC 12568 N255
・凍結乾燥機:EYELA FDU-1200
【0068】
[HECゲルの吸水試験(純水)]
ナイロンメッシュシート(SANPLATEC 12568 N255)製のティーパック(10cm×6cm)に乾燥試料を0.10~0.20g入れ、純水中に24時間浸漬し、試料を完全に膨潤させる。
純水中から取り出して10分間吊るして水を切った後、膨潤した試料3.0~5.0gを加熱乾燥式水分計(A&D MX-50)に入れ、180℃下で完全に乾燥させ、吸水率を算出する。同様の測定を3回ずつ行った平均値である。
【0069】
【表1】
【0070】
なお、表1のそれぞれの量について、「NaOH」は、水酸化ナトリウム水溶液の液量である。「HEC」は、ヒドロキシエチルセルロースの粉体質量である。「EGDE」はエチレングリコールジグリシジルエーテルの液量である。
【0071】
[実施例2]
HECゲルに発色剤を担持させて、検出材の製造を検討した。以下の実施例2-1~実施例2-3に示すように、発色剤を担持させる工程を変更することも検討した。これは、図3に示す、工程S2a、工程S2b、工程S2cの段階に相当する担持である。
【0072】
[試薬等]
・ヒドロキシエチルセルロース:富士フィルム和光純薬製「ヒドロキシエチルセルロース」 Code No.08-0193
・エチレングリコールジグリシジルエーテル:東京化成工業製「Ethylene Glycol Diglycidyl Ether (mixture)」 製品コードE0342
【0073】
[試薬等]
・ランタン-アリザリンコンプレキソン発色剤(発色剤F-a)
ランタン-アリザリンコンプレキソンを用いたフッ素検出用試薬であるアルフッソン(登録商標)(同仁化学製)を用いた。
・ジフェニルカルバジド(発色剤Cr-a)
ジフェニルカルバジド(富士フィルム和光純薬製)を用いた。
・PAR(発色剤Pb-a)
4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノール(PAR)(同仁化学製)を用いた。
【0074】
[実施例2-1]
[検出材の製造フロー(1)]
以下の製造フローで製造した発色試薬を、発色試薬(1)として製造した。
(1)水酸化ナトリウム溶液1000mLにヒドロキシエチルセルロース200gを溶解させる。
(2)EDGE27.7mLを添加し、20分以上撹拌する。
(3)60℃に設定した恒温器中で静置して架橋反応させる。
(4)試料をヘラで粗砕したあと、粉砕機で細かく砕く。
(5)水酸化ナトリウムを抜くために、中性になるまで洗浄する。
(6)水気を切り、吸水状態のHECゲル175g(乾燥後見込み重量20g)を取り分け、発色溶液を添加し、混合する。
(7)試料をバットに移し、冷凍庫で一晩冷凍させる。
(8)真空乾燥機で乾燥させる。
(9)乾燥試料を粉砕する。
(10)検出材完成
【0075】
乾燥後(または乾燥見込み量)のHECゲル20gに添加する発色溶液量は、以下に示す溶液全量+HECゲル(乾燥後重量)20gとした。
【0076】
・六価クロム用発色溶液0.26wt%ジフェニルカルバジド溶液、全量23.8g
【0077】
・鉛用発色溶液0.002wt%PAR溶液、全量101.6g
【0078】
・フッ素用発色溶液3wt%アルフッソン溶液、全量17g
【0079】
[実施例2-2]
[検出材の製造フロー(2)]
以下の製造フローで製造した発色試薬を、発色試薬(2)として製造した。
(1)~(5)は実施例2-1の検出材の製造フロー(1)と同様である。
(6)アセトンで脱水する。
(7)脱水後のHECゲル26.5g(乾燥後見込み重量20g)を取り分け、発色溶液を添加し、混合する。
(8)試料をバットに移し、冷凍庫で一晩冷凍させる。
(9)真空乾燥機で乾燥させる。
(10)乾燥試料を粉砕する。
(11)検出材完成
【0080】
(発色溶液の配合)
なお、発色溶液は、実施例2-1の発色溶液全量と同様である。
【0081】
[実施例2-3]
[検出材の製造フロー(3)]
以下の製造フローで製造した発色試薬を、発色試薬(3)として製造した。
(1)~(5)は実施例2-1の検出材の製造フロー(1)と同様である。
(6)水気を切り、試料をバットに移し、冷凍庫で一晩冷凍させる。
(7)真空乾燥機で乾燥させる。
(8)HECゲル完成
(9)乾燥後のHECゲル20gをはかりとり、発色溶液を添加し、混合する。
(10)一晩冷凍後、真空乾燥機で乾燥する。
(11)粉砕機で粉砕する。
(12)検出材完成
【0082】
(発色溶液の配合)
なお、発色溶液は、実施例2-1の発色溶液全量と同様である。
【0083】
[比較例1]
アクリル系樹脂:アクアコークTWB-P(住友精化社製)
(混合手順)アクリル系樹脂は、HECゲル相当としてそのまま用いることができるため、実施例2-3の(9)~(12)と同じ処理により、検出材を製造した。
【0084】
(発色溶液の配合)
HECゲルと同じ配合で作製した。
アクアコーク20gに対して、実施例2-1の発色溶液全量を担持させた。
【0085】
[実施例3]発色試験
(1)発色試薬を担持した試料である各検出材を0.2gを量りとり、標準溶液を希釈して調整した溶液3mLを添加して、発色試験を行った。なお、六価クロムについては、強酸を添加して約pH1に調整した。
【0086】
各種濃度 いずれも富士フィルム和光純薬製の標準溶液から調整した。
フッ素溶液:0mg/L(ppm),0.4mg/L,0.8mg/L,1.5mg/L,2,5mg/L
鉛溶液:0mg/L,0.1mg/L,0.5mg/L,1mg/L,2mg/L,5mg/L
六価クロム:0mg/L,0.02mg/L,0.05mg/L,0.1mg/L,0.5mg/L,1mg/L
【0087】
図6は、本発明の検出材の発色試験例の図である。
・フッ素:濃度0ppm(水)では、赤紫色であるが、濃度0.4ppmの液と接すると紫色、2ppmでは青紫色が確認できる。比較のアクアコークも同程度の色合い。
【0088】
図7は、本発明の検出材の発色試験例の図である。
・鉛:濃度0ppm(水)では、黄色であるが、濃度0.5ppmの液と接すると山吹色、1ppmでは橙色が確認できる。比較のアクアコークは0ppmで山吹色、5ppmで橙色が確認できる。すなわち、本発明に係る検出材の方が、より低濃度でも色の変化を確認しやすい。
【0089】
図8は、本発明の検出材の発色試験例の図である。
・六価クロム:濃度0ppm(水)では、ほぼ無色であるが、濃度0.02ppmの液と接すると淡いピンク色が確認でき、濃度0.5ppmの液と接するとより濃いピンク色が確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、土壌などの環境汚染物質の検出に利用することができ、産業上有用である。
【要約】
【課題】環境汚染物質などの検出に用いることができる検出材やその製造方法等を提供する。
【解決手段】ヒドロキシエチルセルロースを、塩基性水溶液中で、エチレングリコールジグリシジルエーテルと架橋反応させてゲル剤を得る合成工程と、前記ゲル剤を担持剤として、発色剤を担持させて、発色試験に用いる検出材を得る担持工程と、を有する検出材の製造方法。ヒドロキシエチルセルロースとエチレングリコールジグリシジルエーテルとの架橋させたゲル剤の担持剤と、前記担持剤に担持された発色剤とを有する、検出材。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8