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  • 特許-真空蒸気洗浄方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】真空蒸気洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/10 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
B08B3/10 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017241160
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2019107599
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】516045159
【氏名又は名称】株式会社クリンビー
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和彦
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-237706(JP,A)
【文献】特開2009-028726(JP,A)
【文献】特開昭61-174982(JP,A)
【文献】特開2016-049477(JP,A)
【文献】特開2006-088109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00 - 3/14
B01D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄剤を、液位調整器および煮詰めバルブを介して、蒸気発生・蒸留再生器に供給し、前記蒸気発生・蒸留再生器から発生する前記洗浄剤の蒸気を用いて被洗浄物の真空蒸気洗浄を行い、前記煮詰めバルブを閉じて前記洗浄剤の供給を遮断して、前記蒸気発生・蒸留再生器の残留洗浄剤を、煮詰めて外部に排出する洗浄機の真空蒸気洗浄方法であって、
前記蒸気発生・蒸留再生器に、前記被洗浄物の前記真空蒸気洗浄に必要な規定量の前記洗浄剤を供給し、
前記規定量の前記洗浄剤が前記蒸気発生・蒸留再生器に貯留された後に、前記煮詰めバルブを閉じ、
前記真空蒸気洗浄が行われる間において、前記煮詰めバルブを閉じ状態に保持して、前記液位調整器による前記蒸気発生・蒸留再生器に対する前記洗浄剤の補給動作を行わないことを特徴とする真空蒸気洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載の真空蒸気洗浄方法おいて、
前記洗浄剤として、アルコール類と水を主成分とするノンハロゲン非引火性洗浄剤を用いる真空蒸気洗浄方法。
【請求項3】
洗浄剤を、液位調整器および煮詰めバルブを介して、蒸気発生・蒸留再生器に供給し、前記蒸気発生・蒸留再生器から発生する前記洗浄剤の蒸気を用いて被洗浄物の真空蒸気洗浄を行い、前記煮詰めバルブを閉じて前記洗浄剤の供給を遮断して、前記蒸気発生・蒸留再生器の残留洗浄剤を、煮詰めて外部に排出する洗浄機の真空蒸気洗浄方法であって、
前記蒸気発生・蒸留再生器に対する前記洗浄剤の供給・補給を、第1制御モードおよび第2制御モードのうちの一方の制御モードで行い、
前記第1制御モードは、
前記蒸気発生・蒸留再生器に、前記被洗浄物の前記真空蒸気洗浄に必要な第1規定量の前記洗浄剤を供給し、
前記第1規定量の前記洗浄剤が前記蒸気発生・蒸留再生器に貯留された後に、前記煮詰めバルブを閉じ、
前記被洗浄物の前記真空蒸気洗浄が行われる間において、前記煮詰めバルブを閉じ状態に保持して、前記液位調整器による前記蒸気発生・蒸留再生器に対する前記洗浄剤の補給動作を行わない制御であり、
前記第2制御モードは、
前記蒸気発生・蒸留再生器に、前記第1規定量よりも少ない第2規定量の前記洗浄剤を供給し、
前記第2規定量の前記洗浄剤が前記蒸気発生・蒸留再生器に貯留された後も、前記煮詰めバルブを開状態に保持し、前記被洗浄物の前記真空蒸気洗浄が行われる間において、前記液位調整器による前記蒸気発生・蒸留再生器に対する前記洗浄剤の補給動作を行う制御であることを特徴とする真空蒸気洗浄方法。
【請求項4】
請求項3に記載の真空蒸気洗浄方法おいて、
前記洗浄剤が、水の含有量が所定割合よりも多い第1洗浄剤である場合には、前記第1制御モードを採用し、
前記洗浄剤が、水の含有量が前記所定割合以下の第2洗浄剤である場合には、前記第2制御モードを採用する真空蒸気洗浄方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれか一つの項に記載の真空蒸気洗浄方法において、
前記洗浄機は多槽式の真空蒸気洗浄乾燥機であり、
前記被洗浄物に前記洗浄剤による粗洗浄を施す粗洗浄槽と、
前記粗洗浄後の前記被洗浄物に、前記洗浄剤による仕上げ洗浄を施す仕上げ洗浄槽と、
前記仕上げ洗浄後の前記被洗浄物に、前記真空蒸気洗浄および真空乾燥を施す真空蒸気洗浄乾燥槽と、
を有している真空蒸気洗浄方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のうちのいずれか一つの項に記載の真空蒸気洗浄方法において、
前記洗浄機は1槽式の真空蒸気洗浄乾燥機であり、
前記真空蒸気洗浄乾燥機の真空蒸気洗浄乾燥槽に粗洗浄用の前記洗浄剤を供給して、前記被洗浄物に粗洗浄を施し、前記真空蒸気洗浄乾燥槽から前記洗浄剤を回収する工程と、
前記真空蒸気洗浄乾燥槽に仕上げ洗浄用の前記洗浄剤を供給して、前記粗洗浄後の前記被洗浄物に仕上げ洗浄を施し、前記真空蒸気洗浄乾燥槽から前記洗浄剤を回収する工程と、
前記真空蒸気洗浄乾燥槽に、前記蒸気発生・蒸留再生器から前記蒸気を供給して、前記仕上げ洗浄後の前記被洗浄物に前記真空蒸気洗浄を施す工程と、
前記真空蒸気洗浄乾燥槽を真空引きして、前記真空蒸気洗浄後の前記被洗浄物を真空乾燥する工程と、
を含む真空蒸気洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物に減圧下で洗浄剤の蒸気を接触させて真空蒸気洗浄を行う洗浄機に関する。更に詳しくは、真空蒸気洗浄時における蒸気発生・蒸留再生器に対する洗浄剤の供給・補給の制御を、使用する洗浄剤に応じて適切に行う真空蒸気洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品その他の被洗浄物の洗浄には、炭化水素系溶剤その他の溶剤からなる各種の洗浄剤の蒸気を所定の真空状態の下で被洗浄物に接触させる真空蒸気洗浄(減圧蒸気洗浄)が広く採用されている。真空蒸気洗浄は、被洗浄物が投入された密閉状態の真空蒸気洗浄槽を真空引きし、所定の真空状態(減圧状態)を維持しながら、蒸気発生・蒸留再生器から発生する洗浄剤の蒸気を真空蒸気洗浄槽に導入することによって行われる。
【0003】
真空蒸気洗浄時には、蒸気発生・蒸留再生器に規定量の洗浄剤が貯留され、蒸気として失われる洗浄剤を逐次、補給して、所定量の蒸気発生状態が維持される。そのために、ボールタップ等を用いた液位調整器を介して洗浄剤を補給して、蒸気発生・蒸留再生器の洗浄剤の貯留量を一定に維持している。また、真空蒸気洗浄の終了後等において、蒸気発生・蒸留再生器の残留洗浄剤を排出する際には、液位調整器と蒸気発生・蒸留再生器の洗浄剤供給口との間に配置されている常開弁である煮詰めバルブを閉じて、残量洗浄剤を煮詰めて減容化した後に、外部に廃棄している。例えば、特許文献1には、液位調整機構を備えた真空洗浄・乾燥方法及び装置が開示され、特許文献2には液位調整器を備えた真空蒸留再生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-227581号公報
【文献】特開平6-269604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、真空蒸気洗浄に用いる洗浄剤としては各種のものが知られている。洗浄剤には、有機溶剤、例えばアルコール類と水を主成分とする非引火性洗浄剤として取り扱われるものがある。このような洗浄剤は水の含有率が、他の洗浄剤に比べて相対的に多い。
【0006】
一般的に使用されている蒸気発生・蒸留再生器を用いて、水の含有量が多い洗浄剤による真空蒸気洗浄を行う場合には次のような弊害が発生する場合がある。蒸気発生・蒸留再生器において、水の含有量が多い洗浄剤を加熱して蒸気として発生する場合には、水の沸点の方が有機溶剤よりも低いので、水が先に蒸発する。減圧下では水の沸点が下がるので、洗浄剤に含まれている水が蒸発して無くなるまでは、蒸気発生・蒸留再生器内の温度が十分に高くならない。また、低温の水蒸気が供給される真空蒸気洗浄槽の側でも真空蒸気洗浄に適した温度まで内部温度が上昇しない。
【0007】
さらに、蒸気発生・蒸留再生器内の洗浄剤から水が蒸発すると、その分、洗浄剤の液位が低下するので、液位調整器が作用して、逐次、水の蒸発によって失われた量に対応する量の新たな洗浄剤が補給される。すなわち、蒸気発生・蒸留再生器内の洗浄剤から所定量の水が蒸発すると、水の含有量の多い洗浄剤が補給されてしまう。このため、水の含有量の多い洗浄剤を使用する場合には、有機溶剤の蒸発開始までに時間を要し、真空蒸気洗浄を効率良く行えない場合がある。
【0008】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、水の含有量が相対的に多い洗浄剤を使用する場合でも被洗浄物の真空蒸気洗浄を効率良く行い得る真空蒸気洗浄方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、洗浄剤を、液位調整器および煮詰めバルブを介して、蒸気発生・蒸留再生器に供給し、前記蒸気発生・蒸留再生器から発生する前記洗浄剤の蒸気を用いて被洗浄物の真空蒸気洗浄を行い、前記煮詰めバルブを閉じて前記洗浄剤の供給を遮断して、前記蒸気発生・蒸留再生器の残留洗浄剤を、煮詰めて外部に排出する構成を備えた洗浄機による真空蒸気洗浄方法に関する。
【0010】
本発明による真空蒸気洗浄方法では、前記蒸気発生・蒸留再生器に対する前記洗浄剤の供給・補給を、次のように行う。まず、前記蒸気発生・蒸留再生器に、前記被洗浄物の前記真空蒸気洗浄に必要な規定量の前記洗浄剤を供給する。前記第1規定量の前記洗浄剤が前記蒸気発生・蒸留再生器に貯留された後に、前記煮詰めバルブを閉じる。前記被洗浄物の前記真空蒸気洗浄が行われる間においては、前記煮詰めバルブを閉じ状態に保持して、前記液位調整器による前記蒸気発生・蒸留再生器に対する前記洗浄剤の補給動作を行わないことを特徴としている。
【0011】
真空蒸気洗浄においては、事前に、蒸気発生・蒸留再生器に規定量の洗浄剤が供給される。煮詰めバルブを閉じた状態で蒸気が発生し、液位調整器が作用しないので、蒸気発生中において蒸気発生・蒸留再生器に新たな洗浄剤が補給されることはない。したがって、水の含有量の多い洗浄剤を用いる場合には、最初の所定時間で水が蒸発して無くなり、その後は有機溶剤の蒸気が発生して真空蒸気洗浄槽に供給され始める。従来のように、繰り返し新たな洗浄剤が補給され、有機溶剤の蒸気の発生が開始されるまでに時間を要するという弊害を回避あるいは抑制できる。
【0012】
ここで、使用する洗浄剤の種類に応じて、蒸気発生・蒸留再生器に対する洗浄剤の供給・補給の形態を変えることも可能である。洗浄剤が、水の含有量が所定割合よりも多い第1洗浄剤、例えば、アルコール類と水を主成分とするノンハロゲン非引火性洗浄剤の場合には、上記のように事前に規定量の洗浄剤を蒸気発生・蒸留再生器に供給する第1制御モードを採用して、真空蒸気洗浄を行う。
【0013】
洗浄剤が、水の含有量が上記の所定割合以下の第2洗浄剤の場合には、従来における場合と同様な第2制御モードにより、真空蒸気洗浄を行うことができる。第2制御モードでは、前記蒸気発生・蒸留再生器に、第1規定量よりも少ない第2規定量の前記洗浄剤を供給し、前記第2規定量の前記洗浄剤が前記蒸気発生・蒸留再生器に貯留された後は、前記煮詰めバルブを開状態に保持し、前記被洗浄物の前記真空蒸気洗浄が行われる間において、前記液位調整器による前記蒸気発生・蒸留再生器に対する前記洗浄剤の補給動作を行う。
【0014】
本発明を適用可能な真空洗浄機は、例えば、多槽式の真空蒸気洗浄乾燥機であり、前記被洗浄物に前記洗浄剤による粗洗浄を施す粗洗浄槽と、前記粗洗浄後の前記被洗浄物に、前記洗浄剤による仕上げ洗浄を施す仕上げ洗浄槽と、前記仕上げ洗浄後の前記被洗浄物に、前記真空蒸気洗浄および真空乾燥を施す真空蒸気洗浄乾燥槽とを有している。
【0015】
本発明は、1槽式の真空洗浄乾燥機にも同様に適用可能である。この場合の真空洗浄乾燥機では、その真空洗浄乾燥槽に粗洗浄用の前記洗浄剤を供給して、前記被洗浄物に粗洗浄を施し、前記真空蒸気洗浄乾燥槽から前記洗浄剤を回収する工程と、前記真空蒸気洗浄乾燥槽に仕上げ洗浄用の前記洗浄剤を供給して、前記粗洗浄後の前記被洗浄物に仕上げ洗浄を施し、前記真空蒸気洗浄乾燥槽から前記洗浄剤を回収する工程と、前記真空蒸気洗浄乾燥槽に、前記蒸気発生・蒸留再生器から前記蒸気を供給して、前記仕上げ洗浄後の前記被洗浄物に前記真空蒸気洗浄を施す工程と、前記真空蒸気洗浄乾燥槽を真空引きして、前記真空蒸気洗浄後の前記被洗浄物を真空乾燥する工程が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用した1槽式の真空蒸気洗浄乾燥機のシステム系統図である。
図2】本発明を適用した多槽式の真空蒸気洗浄乾燥機のシステム系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した真空蒸気洗浄乾燥機の実施の形態を説明する。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る1槽式の真空洗浄乾燥機のシステム系統図である。1槽式の真空洗浄乾燥機1は、密閉可能な真空洗浄乾燥槽2を備え、真空洗浄乾燥槽2の底には超音波発生部3が配置されている。真空洗浄乾燥槽2には、被洗浄物が洗浄カゴ4に入れた状態で投入される。真空洗浄乾燥槽2に投入された被洗浄物には、設定されたシーケンスに従って、所要電力および駆動用圧縮空気が供給される電装・圧空ボックス40に内蔵された洗浄機制御部41の制御の下で、真空粗洗浄工程、真空仕上げ洗浄工程、真空蒸気洗浄工程および真空乾燥工程が施される。洗浄機制御部41は、以下に述べるように、各部を駆動制御して、各工程を実行する。なお、熱媒油タンク42から細い破線で示す経路を介して熱媒油が循環して、加熱対象の各部を加熱する。また、外部の冷却水供給源43から太い破線で示す経路を介して冷却水が循環して、冷却対象の各部を冷却する。
【0019】
真空粗洗浄工程では、真空洗浄乾燥槽2には、真空バッファタンク5の粗液タンク6から粗洗浄用の洗浄剤が供給管7を介して供給される。被洗浄物には、浸漬状態で真空超音波洗浄による粗洗浄が施される。真空洗浄乾燥槽2は、真空引き機構16によって所定の真空状態に保持される。粗洗浄後は、洗浄剤がフィルタ8を経由する回収管9を介して、粗液タンク6に回収される。
【0020】
次の真空仕上げ洗浄工程では、真空洗浄乾燥槽2には、真空バッファタンク5の仕上液タンク10から仕上げ洗浄用の洗浄剤が、供給管11を介して供給される。被洗浄物には、浸漬状態で真空超音波洗浄による仕上げ洗浄が施される。この場合も、真空洗浄乾燥槽2は、真空引き機構16によって所定の真空状態に保持される。仕上げ洗浄後は、洗浄剤がフィルタ12を経由する回収管13を介して、仕上液タンク10に回収される。仕上液タンク10には、リザーブタンク14から供給管15を介して、洗浄剤が補給される。
【0021】
洗浄剤の供給・回収は、真空洗浄乾燥槽2と各タンク6、10との間の高低差と、真空引き機構16による真空引きにより行われる。真空引き機構16は、液封式真空ポンプ17aとメカニカルブースターポンプ17bからなる2段構成となっている。洗浄剤の供給・回収時には、真空洗浄乾燥槽2、真空バッファタンク5は、それぞれ、真空引き配管18を介して、液封式真空ポンプ17aによる真空引きが行われ、ベントバルブ19、20による復圧が交互に行われる。
【0022】
仕上げ洗浄工程の後は、真空蒸気洗浄工程が行われる。真空洗浄乾燥槽2は、真空引き機構16の液封式真空ポンプ17aによる1段の真空引きが行われ、所定の真空状態とされる。真空状態を維持しながら、真空洗浄乾燥槽2には、蒸気供給管22を介して、蒸気発生・蒸留再生器23から洗浄剤の蒸気が供給される。真空洗浄乾燥槽2内の被洗浄物に真空蒸気洗浄が施される。
【0023】
蒸気発生・蒸留再生器23には、供給管24を介して、真空バッファタンク5の粗液タンク6から洗浄剤が供給される。洗浄剤は、供給管24に取り付けたフィルタ25、液位調整器26および煮詰めバルブ27を順次に経由して、蒸気発生・蒸留再生器23の下端側に設けた供給口に供給される。蒸気発生・蒸留再生器23内には上下方向にヒーター23bが配置されている。蒸気発生・蒸留再生器23内において、液位調整器26によって規定された液位となるまで、洗浄剤が貯留される。洗浄剤は、ヒーター23bによって加熱されて蒸気となって、蒸気供給管22を介して、真空洗浄乾燥槽2に供給される。真空蒸気洗浄における蒸気発生・蒸留再生器23に対する洗浄剤の供給制御については後述する。
【0024】
蒸気発生・蒸留再生器23の下端部には排液口が配置されている。ここを介して、蒸気発生・蒸留再生器23の残存洗浄剤を、スラッジタンク28に排出可能である。スラッジタンク28に回収された廃液は、廃液管29を介して、外部の廃液ドラム缶30に回収され、産業廃棄物として処分される。
【0025】
なお、蒸気発生・蒸留再生器23において蒸留再生される洗浄剤の蒸気は、凝縮器31を経由する配管32を介して凝縮されて、リザーブタンク14に回収される。あるいは、配管32、33を介して、真空バッファタンク35に回収される。
【0026】
真空蒸気洗浄後は、真空洗浄乾燥槽2の液出しが行われる。真空蒸気洗浄時においては、真空洗浄乾燥槽2内で被洗浄物の表面等に付着して凝結した洗浄剤が、真空洗浄乾燥槽2の底に貯まる。洗浄剤は、回収管34を介して、真空バッファタンク35に回収される。真空バッファタンク35に回収された洗浄剤は、回収管35a、35b、フィルタ12を経由する回収管13を介して、粗液タンク6に回収可能である。
【0027】
この後は、真空乾燥工程が行われる。真空洗浄乾燥槽2は、真空引き管21を介して、真空引き機構16によって2段の真空引きが行われ、所定の真空状態とされて被洗浄物が真空乾燥される。真空引き機構16の液封式真空ポンプ17aで真空引きされた洗浄剤の蒸気は、気液分離槽36で冷却されて凝縮回収される。回収された洗浄剤は、回収管37、35bおよびフィルタ12を経由する回収管13を介して、真空バッファタンク5の粗液タンク6に戻される。
【0028】
(蒸気発生・蒸留再生器への洗浄剤の供給制御)
ここで、真空洗浄乾燥機1における真空蒸気洗浄工程においては、次のように、蒸気発生・蒸留再生器23に対する洗浄剤の供給が制御される。まず、本例では、洗浄剤として、アルコール類と水を主成分とするノンハロゲン非引火性洗浄剤を使用している。このような他の洗浄剤に比べて相対的に水の含有割合が多い洗浄剤としては、例えば、「ノンハロゲン非引火性洗浄剤 HAシリーズ」(東ソー株式会社製)がある。
【0029】
真空蒸気洗浄工程では、真空バッファタンク5の粗液タンク6から、液位調整器26および煮詰めバルブ27を経由する供給管24を介して、洗浄剤を蒸気発生・蒸留再生器23に供給する。洗浄剤は、予め設定された規定量が蒸気発生・蒸留再生器23に貯留されるように供給される。液位調整器26によって規定量が設定される。
【0030】
規定量の洗浄剤が蒸気発生・蒸留再生器23に貯留された後は、煮詰めバルブ27を閉じ、この状態で真空蒸気洗浄を行う。真空蒸気洗浄が行われる間は、煮詰めバルブ27が閉じ状態に保持されるので、液位調整器26は作用せず、蒸気発生・蒸留再生器23に対する洗浄剤の補給動作は行われない。
【0031】
蒸気発生・蒸留再生器23においては、ヒーター23bによって貯留されている洗浄剤を加熱して蒸発させる。最初は、洗浄剤に含まれている沸点の低い水が蒸発し、しかる後に、洗浄剤に含まれている有機溶剤の蒸発が開始され、真空洗浄乾燥槽2において被洗浄物の真空蒸気洗浄が始まる。従来における一般的な真空蒸気洗浄工程においては、煮詰めバルブ27は常開弁であり、蒸気発生・蒸留再生器23に貯留されている洗浄剤の液位が蒸発により低下すると、液位調整器26が作用して、減った量に対応する新たな洗浄剤の補給動作が行われる。
【0032】
水の含有割合が比較的多い洗浄剤の場合には、補給された洗浄剤に含まれる水が蒸発する動作が繰り返されてしまい、有機溶剤の蒸気が発生して真空蒸気洗浄が実際に開始されるまでに時間を要する。本例では、煮詰めバルブ27を閉じ状態に保持するので、洗浄剤の補給動作が行われず、したがって、有機溶剤の蒸気の発生を早めることができ、効率良く、真空蒸気洗浄を行うことができる。
【0033】
また、本例では、最初に蒸気発生・蒸留再生器23に供給される洗浄剤の規定量を、液位調整器26によって洗浄剤を補給する場合に比べて、多めの量に設定する。これにより、真空蒸気洗浄に必要とされる蒸気を発生できる。
【0034】
なお、蒸気発生・蒸留再生器23からの残量洗浄剤の廃棄時には、従来と同様に、煮詰めバルブ27を閉じて、残留洗浄剤を煮詰めて減容化して、スラッジタンク28に廃棄する。
【0035】
(蒸気発生・蒸留再生器への洗浄剤の供給制御の別の例)
ここで、真空洗浄乾燥機1の真空蒸気洗浄工程において、従来と同様に、煮詰めバルブ27を開き状態に保持して、液位調整器26を作用させて、洗浄剤を補給して、蒸気発生・蒸留再生器23の液位を一定に保持する制御を採用できる。
【0036】
例えば、水の含有割合が比較的少ない洗浄剤を使用する場合には、従来と同様な制御モートで洗浄剤の供給・補給制御を行う。この場合には、洗浄機制御部41には、蒸気発生・蒸留再生器23に対する洗浄剤の供給・補給のために、第1制御モードおよび第2制御モードが設定され、いずれか一方の制御モードを選択可能にする。
【0037】
水の含有割合が多い洗浄剤を使用する場合には、第1制御モードを選択する。第1制御モードは、上述の制御により行われる。水の含有割合が少ない洗浄剤を使用する場合には、第2制御モードを選択する。この場合には、蒸気発生・蒸留再生器23に所定の規定量の洗浄剤を供給する。規定量の洗浄剤が蒸気発生・蒸留再生器23に貯留された後も、煮詰めバルブ27を開状態に保持する。被洗浄物の真空蒸気洗浄が行われる間においては、液位調整器26が作用して、蒸気発生・蒸留再生器23に対する洗浄剤の補給動作が行われる。
【0038】
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の形態2に係る多槽式の真空洗浄乾燥機の一例のシステム系統図である。本実施の形態2の真空洗浄乾燥機50は、3槽式の真空洗浄乾燥機であり、被洗浄物に粗洗浄を施す粗洗浄槽である超音波発生部51aを備えた第1洗浄槽51と、粗洗浄後の被洗浄物に仕上げ洗浄を施す仕上げ洗浄槽である第2洗浄槽52と、仕上げ洗浄後の被洗浄物に真空蒸気洗浄および真空乾燥を施す真空蒸気洗浄乾燥槽53とを備えている。第1、第2洗浄槽51、52は共通の真空バッファタンク54内に配置されている。
【0039】
第1、第2洗浄槽51、52、および真空蒸気洗浄乾燥槽53には、被洗浄物が洗浄カゴ55に入れた状態で投入される。設定されたシーケンスに従って、洗浄カゴ55に入れた被洗浄物は、不図示の搬送機構によって、第1洗浄槽51に搬入されて超音波粗洗浄工程が施され、次に、第2洗浄槽52に搬入されて、仕上げ洗浄工程が施され、次に、真空蒸気洗浄乾燥槽53に投入されて、真空蒸気洗浄工程および真空乾燥工程が施される。所要電力および駆動用圧縮空気が供給される電装・圧空ボックス56に内蔵の洗浄機制御部57によって、各部が駆動制御されて、各工程が実行される。
【0040】
超音波粗洗浄工程では、第1洗浄槽51に貯留した粗洗浄用の洗浄剤に、被洗浄物が浸漬され、超音波洗浄による粗洗浄が施される。第1洗浄槽51から隣接のオーバーフロータンク60に流れ落ちた洗浄剤は、タンク61、循環ポンプ62、フィルタ63を経由する循環配管64を介して清浄化されて第1洗浄槽51に戻される。次の仕上げ洗浄工程では、第2洗浄槽52に貯留した仕上げ洗浄の洗浄剤に、被洗浄物が浸漬されて仕上げ洗浄が行われる。洗浄剤は、循環ポンプ65、フィルタ66を経由する循環配管67を介して清浄化されて第2洗浄槽52に戻される。また、リザーブタンク68から、給液ポンプ69を経由する給液管70を介して、洗浄剤が第2洗浄槽52に供給・補給される。第2洗浄槽52に供給された洗浄剤はオーバーフローして隣接の第1洗浄槽51に供給される。
【0041】
仕上げ洗浄工程の後の真空蒸気洗浄工程は、真空蒸気洗浄乾燥槽53に被洗浄物が投入されて行われる。真空蒸気洗浄乾燥槽53は、真空引き配管71を介して、真空引き機構72による真空引きが行われ、所定の真空状態とされる。真空引き機構72は、液封式真空ポンプ73とメカニカルブースターポンプ74を備えている。真空蒸気洗浄工程では、液封式真空ポンプ73による一段の真空引きが行われ、所定の真空状態が維持される。この状態で、真空蒸気洗浄乾燥槽53には、蒸気供給管75を介して、蒸気発生・蒸留再生器76から洗浄剤の蒸気が供給される。真空蒸気洗浄乾燥槽53内の被洗浄物に真空蒸気洗浄が施される。
【0042】
蒸気発生・蒸留再生器76には、第1洗浄槽51の循環配管64から分岐する供給管77を介して、洗浄剤が供給される。洗浄剤は、供給管77に取り付けた液位調整器78および煮詰めバルブ79を順次に経由して、蒸気発生・蒸留再生器76の下端部に設けた供給口に供給される。蒸気発生・蒸留再生器76内には上下方向にヒーター76bが配置されている。蒸気発生・蒸留再生器76内において、液位調整器78によって規定された液位となるまで、洗浄剤が貯留される。洗浄剤は、ヒーター76bによって加熱されて蒸気となって、蒸気供給管75を介して、真空蒸気洗浄乾燥槽53に供給される。真空蒸気洗浄における蒸気発生・蒸留再生器76に対する洗浄剤の供給制御については後述する。
【0043】
蒸気発生・蒸留再生器76の下端部には排液口が配置され、ここを介して、蒸気発生・蒸留再生器76の残存洗浄剤を、スラッジタンク80に排出可能である。スラッジタンク80に回収された廃液は、廃液缶81に回収され、産業廃棄物として処分される。なお、蒸気発生・蒸留再生器23において蒸留再生された洗浄剤の蒸気は、凝縮器82を経由する配管83を介して凝縮されて、真空バッファタンク84に回収される。
【0044】
真空蒸気洗浄後は、真空蒸気洗浄乾燥槽53の液出しが行われる。真空蒸気洗浄時においては、真空蒸気洗浄乾燥槽53内で被洗浄物の表面等に付着して凝結した洗浄剤が、真空蒸気洗浄乾燥槽53の底に貯まる。洗浄剤は、回収管85を介して、真空バッファタンク84に回収される。
【0045】
この後は、真空乾燥工程が行われる。真空蒸気洗浄乾燥槽53は、真空引き管86を介して、真空引き機構72によって2段の真空引きが行われ、所定の真空状態とされて被洗浄物が真空乾燥される。真空引き機構72の液封式真空ポンプ73で真空引きされた洗浄剤の蒸気は、気液分離槽87で冷却されて凝縮回収される。回収された洗浄剤は、回収管88および給液ポンプ69を経由する給液管70を介して、第2洗浄槽52に戻される。
【0046】
(蒸気発生・蒸留再生器への洗浄剤の供給制御)
本例の真空洗浄乾燥機50における真空蒸気洗浄工程において、次のように、蒸気発生・蒸留再生器76に対する洗浄剤の供給が制御される。洗浄剤として、アルコール類と水を主成分とするノンハロゲン非引火性洗浄剤を使用している。このような他の洗浄剤に比べて相対的に水の含有割合が多い洗浄剤としては、例えば、「ノンハロゲン非引火性洗浄剤 HAシリーズ」(東ソー株式会社製)がある。
【0047】
真空蒸気洗浄工程では、液位調整器78および煮詰めバルブ79を経由する供給管77を介して、洗浄剤が蒸気発生・蒸留再生器76に供給される。洗浄剤は、予め設定された規定量が蒸気発生・蒸留再生器76に貯留されるように供給される。液位調整器78によって規定量が設定される。規定量の洗浄剤が蒸気発生・蒸留再生器76に貯留された後は、煮詰めバルブ79を閉じ、この状態で真空蒸気洗浄を行う。真空蒸気洗浄が行われる間は、煮詰めバルブ79が閉じ状態に保持されるので、液位調整器78は作用せず、蒸気発生・蒸留再生器76に対する洗浄剤の補給動作は行われない。かかる制御により、実施の形態1の場合と同様に、効率良く、真空蒸気洗浄工程を実行できる。
【0048】
また、本例においても、洗浄機制御部57に、蒸気発生・蒸留再生器76に対する洗浄剤の供給・補給を、第1制御モードおよび第2制御モードを設定し、いずれか一方の制御モードを選択可能にしておくことができる。第1制御モードは、上述した場合である。第2制御モードは、従来の場合のように、蒸気発生・蒸留再生器76に所定の規定量の洗浄剤を供給する。規定量の洗浄剤が蒸気発生・蒸留再生器76に貯留された後も、煮詰めバルブ79を開状態に保持する。被洗浄物の真空蒸気洗浄が行われる間においては、液位調整器78が作用して、蒸気発生・蒸留再生器76に対する洗浄剤の補給動作が行われる。
【0049】
[その他の実施の形態]
なお、上記は、1槽式、3槽式の例であるが、本発明は、2槽式、あるいは4槽以上の多槽式の真空蒸気洗浄乾燥機に対しても、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 真空洗浄乾燥機
2 真空洗浄乾燥槽
3 超音波発生部
4 洗浄カゴ
5 真空バッファタンク
6 粗液タンク
7 供給管
8 フィルタ
9 回収管
10 仕上液タンク
11 供給管
12 フィルタ
13 回収管
14 リザーブタンク
15 供給管
16 真空引き機構
17a 液封式真空ポンプ
17b メカニカルブースターポンプ
18 配管
19、20 ベントバルブ
21 真空引き管
22 蒸気供給管
23 蒸気発生・蒸留再生器
23b ヒーター
24 供給管
25 フィルタ
26 液位調整器
27 煮詰めバルブ
28 スラッジタンク
29 廃液管
30 廃液ドラム缶
31 凝縮器
32 配管
33 配管
34 回収管
35 真空バッファタンク
35a、35b 回収管
36 気液分離槽
37 回収管
40 電装・圧空ボックス
41 洗浄機制御部
42 熱媒油タンク
43 冷却水供給源
50 真空洗浄乾燥機
51 第1洗浄槽
51a 超音波発生部
52 第2洗浄槽
53 真空蒸気洗浄乾燥槽
54 真空バッファタンク
55 洗浄カゴ
56 電装・圧空ボックス
57 洗浄機制御部
60 オーバーフロータンク
61 タンク
62 循環ポンプ
63 フィルタ
64 循環配管
65 循環ポンプ
66 フィルタ
67 循環配管
68 リザーブタンク
69 給液ポンプ
70 給液管
71 配管
72 真空引き機構
73 液封式真空ポンプ
74 メカニカルブースターポンプ
75 蒸気供給管
76 蒸気発生・蒸留再生器
76b ヒーター
77 供給管
78 液位調整器
79 バルブ
80 スラッジタンク
81 廃液缶
82 凝縮器
83 配管
84 真空バッファタンク
85 回収管
86 真空引き管
87 気液分離槽
88 回収管
図1
図2