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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】介護用補助ベルト
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/44 20060101AFI20220809BHJP
   A61G 7/10 20060101ALI20220809BHJP
   A61F 5/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61G 7/05 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A61F5/44 W
A61G7/10
A61F5/00 Z
A61G7/05
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018084779
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2018187372
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2017091590
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515318452
【氏名又は名称】植田 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【弁理士】
【氏名又は名称】東田 潔
(72)【発明者】
【氏名】植田 一也
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3136534(JP,U)
【文献】登録実用新案第3205493(JP,U)
【文献】中国実用新案第201806815(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00-58
A61G 1/00-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臥位の被介護者に対する身体介護時に使用する介護用補助ベルトであって、前記被介護者が臥床するベッドの幅方向両縁に立設された両サイドレールに、寝床面に沿わせて遊架可能な長さを有し、断面が平坦に形成され、前記両サイドレールの上辺部を頂点として、前記ベッドの寝床面側で懸垂状に載置可能であるとともに、臥位の被介護者の背面側で前記臥位状態を変位させることなく、引張状態を維持可能な本体部と、前記本体部の長手方向一端に、前記長手方向の他端を前記本体部一端の厚さ方向に挿通する挿通孔を設けた挿通部と、前記他端に設けた環状の把持部と、前記本体部の中央で長手方向に形成され、介護用おむつ又は介護用おむつと当該介護用おむつを固定するボードを挟み込むことができる長さと幅を有するスリット部と、を有し、
前記両サイドレールのうち、任意の一方の上辺に前記本体部を巻回し、折り返した前記他端を前記挿通部に挿通させて前記サイドレールの上辺に固定させることを特徴とする介護用補助ベルト。
【請求項2】
前記スリット部を形成する位置は、前記巻回する位置を前記被介護者の腰部と前記ベッドの幅方向に直線上で並ぶ位置とし、前記本体部を前記被介護者の足元で、前記巻回されたサイドレールに対向するサイドレール側にかけ渡し、前記把持部を持ってベッドの幅方向外側に引張するとともに、前記被介護者の自重によって前記巻回された部分が前記上辺で緊締状態に固定され、前記巻回された部分を固定端として、前記被介護者の足元背面と寝床面との間から前記被介護者の腰部方向に回動させ、前記巻回する位置と前記把持部とが前記ベッドの幅方向に対して平行な位置に到達したときに、被介護者の腰背部に対向する位置に形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の介護用補助ベルト。
【請求項3】
前記本体部の素材は、ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1又は2記載の介護用補助ベルト。
【請求項4】
前記本体部を前記巻回されたサイドレールと反対側のサイドレールにかけ渡したときに、前記反対側のサイドレールから前記ベッドの外側に懸架される位置に、足先を挿入する挿入部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の介護用補助ベルト。
【請求項5】
前記挿入部は、前記本体部の長手方向に所定間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項4記載の介護用補助ベルト。
【請求項6】
前記本体部の長手方向両端は、前記挿通部及び前記把持部に代えて、同一形状の輪状部を設け、前記スリット部は、前記本体部の長手方向一辺の中央部に設けられた突片部の長手方向中央であって、前記突片を本体部側に折り返し、前記本体部と前記突片部と前記折り返しの内辺で内部空間を形成したときに、前記本体部の中央で前記本体部の長手方向に位置するように形成され、前記本体部は、前記輪状部に挿通できる形に変形可能な柔軟な素材で形成されたことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の介護用補助ベルト。
【請求項7】
前記本体部の短手方向に前記介護用おむつのサイドフラップを巻装させて固定する1対の固定帯が設けられていることを特徴とする請求項6記載の介護用補助ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臥位の被介護者に対する身体介護時に使用する介護用補助ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
わが国では、総人口に占める高齢者の人口の割合が増大する高齢化社会が急速に進行している。一方、高齢者の増加と相反して介護職員の不足が慢性化している。介護職員不足は、複合的な理由によるものであるが、主要な理由の一つとして、介護職員一人当たりの物理的な作業負荷の増大が挙げられている。特に、いわゆる寝たきりの高齢者の排泄処理、着替え等、身体介護における体位の変更等の負荷は大きく、介護職員の体力的消耗を加速させている。
【0003】
従来、前記高齢者をはじめ、臥位状態の被介護者の体位を変えるための支援器具として、被介護者の尻部を浮かせた状態の姿勢を保持するために、下肢とベッドの頭部側パイプとを結びつける補助ベルトが提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、特許文献1にかかる補助ベルトは、被介護者の脚部を頭部側で屈曲回転させるため、非介護者に体力的な負荷がかかるうえ、臀部を突き出した姿勢が強制されるため精神的抵抗感があった。
【0005】
そこで、被介護者の前記体力的負荷、精神的抵抗感を軽減するため、被介護者の下に敷く大きめの布の左右に、ベッドの柵などにかけるS字フックを取り付ける位置を調整するための輪が連なった紐をつけ、前記大きめの布のうえに小さめの布を左右に各1枚ずつ中央側の短辺で縫い付け、前記小さめの布の反対の辺にはこの2枚を中央で固着させるように面ファスナをつけて、被介護者の体を小さめの布で巻いて体を安定させる介護用補助用品が提案されていた(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、両端に引き紐を設けたベルトであって、ベルト本体部を被介護者とベッドとの間に入れて、臥位の被介護者側方の一側方にいる介護職員が、他側方に位置する引き紐を前記被介護者の腰部で巻き付けるようにして引き寄せることにより、被介護者を側方回転させるおむつ交換用の支援ベルトが提案されていた(例えば、特許文献3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-62003号公報
【文献】特開2008-237855号公報
【文献】特開2014-18207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2は、ベッドの柵に固定する固定具がS字フックであるため、固定力が弱く、被介護者の姿勢を変位させるときに、被介護者の自重が、もとの安定した臥位状態に戻ろうとする力として作用し、S字フックが固定位置からずれるおそれがあった。また、被介護者の腰部から臀部にかけて本体を入れ込むためには一時的とはいえ、被介護者を寝床面から浮かす必要があり、そのための作業負荷が大きかった。さらに、おむつ交換の際には、本体が邪魔になるおそれがあった。
【0009】
また、特許文献3では、ベルトを使用するとはいえ、仰臥位状態の被介護者を横向きに回転させるためには、一定の力を要し、また、おむつ交換作業中、かかる状態を維持しなければならないため、結果として介護職員の物理的作業負荷の軽減は限定的なものになるおそれがあった。
【0010】
なお、例えば、電気的な駆動機構を備えた大掛かりな装置を用いれば、介護職員の物理的な負担を軽減することが可能であるが、大掛かりなものとなれば、当該装置の設置に時間を要する可能性が高く、また、そもそも、介護職員を抱える企業のコスト負担が大きくなるため、現実的な解決手段とはいえない。従って、特許文献1乃至3のように、部材として可搬性が良好で、簡易な構造のベルト状のものを選択することは好ましいと思われる。
【0011】
本発明は、上記課題を解消させるためのものであり、低コストで生産可能であって、被介護者の身体的、精神的負荷と介護職員の作業負荷を軽減させることが可能な介護用補助ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成させるために、本発明にかかる介護用補助ベルトは、前記被介護者が臥床するベッドの幅方向両縁に立設された両サイドレールに、寝床面に沿わせて遊架可能な長さを有し、断面が平坦に形成され、前記両サイドレールの上辺部を頂点として、前記ベッドの寝床面側で懸垂状に載置可能であるとともに、臥位の被介護者の背面側で前記臥位状態を変位させることなく、引張状態を維持可能な本体部と、前記本体部の長手方向の一端に、前記長手方向の他端を前記本体部一端の厚さ方向に挿通する挿通孔を設けた挿通部と、前記他端に設けた環状の把持部と、前記本体部の中央で長手方向に形成された所定長さのスリット部と、を有し、
前記両サイドレールのうち、任意の一方の上辺に前記本体部を巻回し、折り返した他端を前記挿通部に挿通させて前記サイドレールの上辺に固定させることを最も主要な特徴とする。
【0013】
また、前記スリット部を形成する位置は、前記巻回する位置を前記被介護者の腰部と前記ベッドの幅方向に直線上で並ぶ位置とし、前記本体部を前記被介護者の足元で、前記巻回されたサイドレールに対向するサイドレール側にかけ渡し、前記把持部を持ってベッドの幅方向外側に引張するとともに、前記被介護者の自重によって前記巻回された部分が前記上辺で緊締状態に固定され、前記巻回された部分を固定端として、前記被介護者の足元背面と寝床面との間から前記被介護者の腰部方向に回動させ、前記巻回する位置と前記把持部とが前記ベッドの幅方向に対して平行な位置に到達したときに、被介護者の腰背部に対向する位置とすればよい。
【0014】
さらに、前記スリット部は、少なくとも、介護用おむつ又は介護用おむつと当該介護用おむつを固定するボードとを挟み込むことができる長さと幅を有するものであってもよい。
【0015】
これらの構成によれば、本発明にかかる介護用補助ベルトは、前記一端を容易にベッドに固定することができ、被介護者の臥位をほとんど変位させることなく、例えば取替え用おむつを所望の位置、すなわち、腰背部に移動させることが可能となる。
【0016】
なお、前記本体部を前記巻回されたサイドレールと反対側のサイドレールにかけ渡したときに、前記反対側のサイドレールから前記ベッドの外側に懸架される位置に、足先を挿入する挿入部を設けてもよい。
【0017】
この構成によれば、本発明にかかる介護用補助ベルトを使用する介護要員の体重をかけて被介護者の体を浮かすことが可能となる。
【0018】
前記本体部の長手方向両端は、前記挿通部及び前記把持部に代えて、同一形状の輪状部を設け、前記スリット部は、前記本体部の長手方向一辺の中央部に設けられた突片部の長手方向中央であって、前記突片を本体部側に折り返し、前記本体部と前記突片部と前記折り返しの内辺で内部空間を形成したときに、前記本体部の中央で前記本体部の長手方向に位置するように形成され、前記本体部は、前記輪状部に挿通できる形に変形可能な柔軟な素材で形成されたものであってもよい。
【0019】
この構成によれば、取替え用おむつを前記折り返したスリット部に挿入し、本体部と突片の間に収納、固定されるので、介護用補助ベルトを前記した通り、スリット部からずれることなく、被介護者の臀部にスムーズに移動させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる介護用補助ベルトは、被介護者の臥位をほとんど変位させることなく、身体介護を施すことが可能となるため、被介護者の身体的、精神的負荷が軽減されるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明にかかる介護用補助ベルトは、簡易な構造で可搬性が良好であり、ベッドへの固定も容易なうえ、足先を挿入する挿入部を設けたものである場合は、体重をかけて被介護者をベッドから浮かすことができ、介護職員の作業負荷を大幅に軽減させ、作業効率を向上させるという効果を奏する。
【0022】
さらに、本発明にかかる介護用補助ベルトは、簡易な構造であり、かつ、軽量であるため、低コストで量産可能となり、個々の介護職員各々に所持させることも可能であるため、介護職員を雇用する企業にとっても、コスト負担の軽減になるとともに、作業負荷、作業効率の向上に伴って、介護職員の定着率向上にも資するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明にかかる介護用補助ベルトの第1実施形態を示す図である。
図2図2は、第1実施形態にかかる介護用補助ベルトの挿通部によってベッドのサイドレールに固定する場合の部分拡大図であり、(a)は、本体部他端の挿通前の状態を示した部分拡大図、(b)は、本体部他端の挿通後の状態を示した部分拡大図、(c)は、図2(b)の状態の側断面図である。
図3図3は、第1実施形態にかかる介護用補助ベルトをサイドレールに取り付けてベッドの幅方向に遊架させた状態を示す図である。
図4図4は、おむつ取替えを例として第1実施形態にかかる介護用補助ベルトの使用方法を示した図であり、(a)は、被介護者の足元背面と寝床面との間に介護用補助ベルトを挟入した状態を示した図、(b)は、介護用補助ベルトを図4(a)の状態から被介護者の腰背部に回動させた状態を示した図である。
図5図5は、第1実施形態にかかる介護用補助ベルトの挿入部に足先を挿入した状態を示した図である。
図6図6は、第1実施形態かかる介護用補助ベルトのスリット部の変形例を示した図である。
図7図7は、本発明にかかる介護用補助ベルトの第2実施形態を示す図である。
図8図8は、第2実施形態にかかる介護用補助ベルトにおむつを装着する手順を示した図であり、(a)は、おむつを装着する前の展開状態の図、(b)は、突片部を本体部側に折り返した図、(c)は、スリット部におむつを挿入した図、(d)は、おむつをスリット部に挿入後、後見頃側の両サイドフラップを挿通帯に固定した状態を示した図である。
図9図9は、おむつの取替えを例として第2実施形態にかかる介護用補助ベルトの使用方法を示した図であり、(a)は、被介護者の足元背面と寝床面との間に介護用補助ベルトを挟入した状態を示した図、(b)は、介護用補助ベルトを図4(a)の状態から被介護者の腰背部に回動させた状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1を参照して、1は、第1実施形態にかかる介護用補助ベルトである。介護用補助ベルト1は、断面が平坦に形成された平ベルト状の本体部11と、本体部11の長手方向の一端に設けた挿通部12と、本体部11の長手方向の他端に設けた把持部16と、挿通部12と把持部16との間に本体部11の短手方向略中心位置に、長手方向に伸びたスリット部14とから構成される。さらに、スリット部14と把持部16との間に後述するように足先挿入可能な挿入部15を設けてもよい。本実施の形態では、挿入部15を前記長手方向に5つ(15a乃至15e)設けているが、挿入部15の数は、本実施の形態に限定する趣旨ではない。なお、挿通部12の基体部分は本体部11の幅方向(短手方向)の寸法よりも大き目の幅寸を有した板状体を形成し、当該板状体の厚さ方向に向かって本体部11を挿通させることが可能な挿通孔13が開口されている。
【0025】
介護用補助ベルト1の素材は、引張状態を維持可能な可撓性を有するものであれば特に限定しないが、被介護者を持ち上げた状態で引張するので、所定の強度は必要とする。前記強度(耐久性等)を満たすものとして、例えばポリプロピレンが好適である。
【0026】
図2は、挿通部12によってベッドのサイドレールSに挿通する状態を示した部分拡大図である。以下、図2を使って介護用補助ベルト1をサイドレールSに取り付ける方法について説明する。
【0027】
一般に、介護用のベッドには、通常、被介護者の転落防止のためにサイドレールSが設けられている。サイドレールSの素材、形状は、ベッドによって異なるが、典型的には、断面円形の金属製パイプから成り、前記金属製パイプを矩形の枠体状に形成している。また、一般に、サイドレールSの取り付け位置は、ベッドの幅方向両縁に、寝床面に対して立設して固定設置されるか、ヒンジを介してベッド使用時に、前記立設状態に回動させて固定設置されている。本実施の形態では、少なくとも、サイドレールSの形状を矩形(長方形)状の枠体とし、前記立設させた状態で、上辺部が、断面円形のパイプ状とする。
【0028】
図2(a)は、本体部11の他端(把持部16が設けられている側)の挿通前の状態を示したものである。すなわち、ベッドの寝床面を挟んで対抗設置されたサイドレールSのうち、任意の一方のサイドレールSの上辺部のパイプを頂点として、寝床面側に一端となる挿通部12、ベッドの外側に本体部11及び他端となる把持部16を懸垂状に載置する。なお、前記載置された挿通孔13から臨む位置に、前記上辺部のパイプが見えるようにしてもよいが、少なくとも、挿通孔13の下部は、本体部11が前記ベッドの外側から前記上辺部のパイプに阻害されずに進入可能なように、パイプの下側が見えるような位置関係で載置することが好ましい。
【0029】
図2(b)は、本体部他端の挿通後の状態を示した部分拡大図である。すなわち、図2(a)の状態から、把持部16側から、前記上辺部のパイプを巻回(本実施の形態で時計回りに巻回)するように本体部11の他端を折り返し、挿通孔13に挿通する。挿通孔13から前記挿通された本体部11が前記上辺部のパイプに密着状態に巻回されるまで引き出すことにより、介護用補助ベルト1は、前記一端側で固定される。図2(c)は、かかる固定された状態の側断面図である。
【0030】
なお、図2では、前記した通り、懸垂状に載置する方法で説明したが、逆向き、すなわち、カテナリー曲線状(懸垂曲線状)にして、前記巻回する方向を逆時計回りにして本端部11を挿通孔13に挿通する方法でもよい(図示せず)。
【0031】
図3は、図2で説明した通り、介護用補助ベルト1の一端側を一方のサイドレールSで固定した状態で、介護用補助ベルト1をベッドBの寝床面Kに沿わせて、前記サイドレールSに対向する反対側のサイドレールSに架け渡した状態を示した図である。後述するように、寝床面Kに仰臥する被介護者を浮かすために、介護用補助ベルト1を引張するため、引張前は、両サイドレールSに架け渡した状態で緊張状態とならないように余長を設け、図3のように両サイドレールSに遊架可能な長さとすることが好ましい。具体的な長さは、ベッドBの大きさにもよるが、例えば、サイドレールSの前記上辺部からベッドBを置く床面までの高さが80cm、寝床面Kの幅が100cmのベッドの場合、介護用補助ベルト1の長手方向の長さは、280cm程度あればよい。なお、介護用補助ベルト1の長さを使用するベッドBの大きさ(具体的には、サイドレールSの高さと寝床面Kの幅)に合わせて調節できるように、バックルを設けてもよい(図示せず)。
【0032】
また、前記の通り、介護用補助ベルト1で支持しながら被介護者を浮かすため、被介護者の体表面を極度に圧迫しないように、介護用補助ベルト1の短手方向も所定の幅を有することが好ましい。例えば、前記短手方向の幅寸を15cm程度とすればよい。さらに、本体部11の被介護者Cの腰背部に対応する部分のみ幅広に形成するものであってもよい(図示せず)。
【0033】
図4は、介護用補助ベルト1を使って、ベッドBの寝床面Kで、仰臥位状態の被介護者Cにおむつを装着する方法を示した図である。
【0034】
図4(a)は、おむつDをスリット部14に貫装させて、介護用補助ベルト1を被介護者Cの足元背面と寝床面Kとの間に挟入した状態を示したものである。このとき、介護用補助ベルト1の一端側、すなわち、挿通部12側は、図2で説明したように固定されている。前記固定する位置は、被介護者Cの腰部とベッドBの幅方向に直線上(直線L上)で並ぶ位置である。なお、被介護者Cの足元背面と寝床面Kとの間に介護用補助ベルト1を挟入するためには、被介護者Cの足を若干持ち上げる必要はあるが、被介護者Cの体全体を持ち上げる場合と比べて格段に小さな力で持ち上がるので介護職員の体力的負荷は非常に小さい。
【0035】
介護用補助ベルト1は、前記挟入する際に、挿通部12が固定されたサイドレールSに対向する反対側のサイドレールS側に架け渡される。架け渡された介護用補助ベルト1の把持部16を持ってベッドBの幅方向外側に引張することにより、挿通部12の巻回されている部分は、介護者の自重によって緊締状態となり、固定端となる。
【0036】
介護用補助ベルト1は、巻回されている挿通部12側を固定端とすることにより、他端の把持部16側は自由端となる。自由端となった把持部16を持って前記引張状態を維持しながら、被介護者Cの腰部方向に引き寄せると、介護用補助ベルト1は、図4(b)で示す通り、前記足元背面と寝床面Kとの間に挟入した状態の位置Pから弧状の軌道Aに沿って直線L方向に回動する。介護用補助ベルト1が、直線L上に一致すると、スリット部14に貫装されたおむつDは、被介護者Cの腰背部に到達する。この状態で、介護用補助ベルト1を取り去りおむつDを装着すればよい。
【0037】
なお、介護用補助ベルト1を前記回動させる場合に、自由端側も前記反対側のサイドレールSに架けることにより、前記固定端と自由端は、両サイドレールSの高さになるため、把持部16を前記引張状態にすることで、自ずと被介護者Cの体が浮上する方向にも動くことになる。被介護者Cの体を極端に浮かすと、被介護者Cの体が介護用補助ベルト1に密着状態になり、前記回動を阻害するため、若干浮かして被介護者Cと寝床面Kとの間に隙間を形成しつつ、回動させればよい。
【0038】
介護用補助ベルト1を使用することにより、被介護者CのおむつDの装着作業で、被介護者Cの臥位(本実施形態では仰臥位)をほとんど変位させることなく、被介護者Cの腰背部にまでおむつDを到達させることができるため、おむつDの装着作業を行う介護職員の作業負荷を軽減できるとともに、被介護者Cの肉体的、精神的な負荷も軽減することができる。
【0039】
さらに、おむつDの交換又は床ずれ・褥瘡防止のため、被介護者Cの体を浮かす必要がある場合、さらに、把持部16を持ってベッドBの幅方向外側に引張すればよく、直接被介護者Cの体を持ち上げる場合に比べて、介護職員の体力的負荷は各段に軽減される。
【0040】
ここで、前記おむつDの交換、床ずれ・褥瘡防止のほか、前記おむつDの装着作業で、被介護者Cの臀部近傍は、特に寝床面Kとの隙間がないため、この場合も、被介護者Cの体を若干浮かす必要がある。介護職員が、介護用補助ベルト1を引き寄せる力が弱い場合、又は被介護者Cの体重が重い場合などは、把持部16によって手で引き寄せるだけでは十分に持ち上がらない可能性がある。また、被介護者Cの体を浮かしながら、両手で作業をする必要が生じる場合がある。この場合、図5で示す通り、前記介護職員が、挿入部15aに足Fを挿入し、体重をかけて床面方向に押し下げれば、把持部15で引き寄せて被介護者Cの体を浮かすよりも、比較的容易に浮かすことができ、さらに、両手も解放されるため、作業効率が向上する。
【0041】
図6は、スリット部14の変形例を示した図である。本変形例では、図6(a)で示す通り、スリット部の中間部14aと長手方向両端部14bのスリット幅を変えたもので、中間部14aのスリット幅が長手方向両端部14bのスリット幅よりも大きく形成されている。
【0042】
ところで、出願人は、図6(b)で示すように、おむつDのサイドフラップを上面にて固定するボードを先に出願(特願2016-133355)したが、このボードにおむつDを載置すると、両端のボード部分の厚さと、おむつDを載置した部分厚さが異なる。とくにおむつDは、ボードと異なり、前記貫装するスリット幅が狭いと、スリットに抗して貫装しにくく、スリット手前で進入を阻害され、ボードだけが進入する結果、おむつDによれが生じる場合がある。そこで、前記ボードに装着したおむつDをスムーズにスリットに通すため(図6(c)参照)、スリット部を図6(a)で示したような形状とした。
【0043】
<第2実施形態>
図7を参照して、2は、第2実施形態にかかる介護用補助ベルトである。介護用補助ベルト2は、介護用補助ベルト1同様、ベルト状の本体部21を有するが、スリットを本体に直接形成せず、本体部21の長手方向1辺の中央部に設けられた突片部24の長手方向略中央にスリット部25を形成する。
【0044】
本体部21には、短手方向におむつのサイドフラップを巻装させて固定する1対の固定帯22を設けてもよい。
【0045】
また、介護用補助ベルト2は、介護用補助ベルト1のように、本体部の長手方向両端に挿通部12と把持部16のような異なる構成、機能のものではなく、同一形状の輪状部23が前記両端に設けられている。輪状部23の径サイズは、特に限定しないが、介護用補助ベルト1と同様、輪状部23の一方から、本体部21をベッドのサイドレール上辺部のパイプに巻回させるように折り返して他方の輪状部23にくぐらせ、本体部21が前記パイプに密着状態に巻回されるまで引き出すことにより、介護用補助ベルト2を固定するようにするため、少なくとも、本体部21を挿通させることが可能な径サイズが必要となる。
【0046】
介護用補助ベルト2の素材も特に限定はしないが、後述するように、使用時には、少なくとも、おむつの後身頃部分を覆うことになるため、本体部21の短手方向の幅を介護用補助ベルト1よりも大き目に形成する必要がある。従って、前記した通り、輪状部23に挿通する際に、細くできるよう柔軟な素材(輪状部23に挿通できる形に変形可能な素材)であること、さらには、おむつの着脱に使用することから、防水性を有すること、さらには、後述するように、ベッドと要介護者の間で摺動する際に、滑りやすい素材であること、が好ましい。たとえば、ナイロンタフタなどが好適である。
【0047】
図8は、介護用補助ベルト2におむつDを装着する手順を示したものである。図8(a)は、図7同様の状態、すなわち、おむつDの装着前で、突片部24を展開した状態の図である。
【0048】
図8(a)の状態から、おむつを装着するスペースを形成するために、突片部24を本体部21側に折り返す(図8(b)参照)。前記折り返した突片部24と本体部21との間に形成されている内部の空間に、スリット部25からおむつDを挿入する。従って、おむつDの挿入により、突片部24と本体部21とでおむつDを挟むような状態になる。なお、おむつDは、後見頃側から挿入する。おむつDのサイドフラップ展開状態では、スリット部25に入らない場合は、後見頃側サイドフラップd2、d3をおむつ本体d1側に折り曲げればよい。従って、スリット部25のサイズは、長手方向は、少なくとも、おむつ本体d1の幅相当の長さを有し、短手方向は、少なくとも、おむつ本体d1と後見頃側サイドフラップd2又はd3とを重ねた厚さ相当の幅が必要である。
【0049】
次いで、図8(d)で示す通り、スリット部25に挿入したおむつDの上端部(後見頃側のおむつ本体d1の長手方向上辺部)が、前記突片部24の折り返し内辺に当接するところまで挿入する。挿入後、前記後見頃側サイドフラップd2、d3を展開し、各々、本体部21と固定帯22との間を挿通して折り返す。折り返した後見頃側サイドフラップd2、d3の先端に取り付けられている面ファスナd21、d31を突片部24と固定帯22との間で本体部21上面(おむつD装着側の面)で露出している後見頃側サイドフラップd2、d3に接着しておむつDを固定する。
【0050】
本実施形態にかかる介護用補助ベルト2は、介護用補助ベルト1と異なり、前記折り返された突片部24と本体部21との間に形成された空間内におむつDを収納することにより、少なくとも、介護用補助ベルト2の上面上では、おむつDは露出しない。したがって、このような構成とすることで、後述するように、被介護者におむつDを装着する際、おむつDが直接要介護者に接触して摺動することがなく、おむつDのよれを防ぐほか、おむつDの表面を要介護者に装着するまで清潔に保つこともできる。さらに、前記した通り、介護用補助ベルト2の素材をナイロンタフタ等、滑りの良い素材とすることで、介護者の作業負荷の軽減にも寄与する。
【0051】
図9は、介護用補助ベルト2を使って、ベッドBの寝床面Kで、仰臥位状態の被介護者Cにおむつを装着する方法を示した図である。装着方法は、介護用補助ベルト1の場合(図4参照)と基本的に同じである。すなわち、図9(a)で示す通り、まず、介護用補助ベルト2の一端側の輪状部23をベッドBのサイドレールSのいずれか一方で固定し、図8で説明した手順でおむつDを装着した介護用補助ベルト2を被介護者Cの足元背面と寝床面Kとの間に挟入する。自由端となった方の輪状部23を持って引張状態で、被介護者Cの腰部方向に引き寄せると、介護用補助ベルト2は、図9(b)で示す通り、前記足元背面と寝床面Kとの間に挟入した状態の位置Pから弧状の軌道Aに沿って回動し、被介護者Cの臀部と両端の輪状部23、23とを直線で結ぶ線上であってベッドBの幅方向に平行な位置に到達する。
【0052】
図9(b)では、おむつDの前身頃を股間から被介護者Cの前面(正面)に引き上げた状態を示している。この状態から、図8(d)で説明した通り、介護用補助ベルト2に固定されているおむつDの後身頃側を取り外す。すなわち、まず、面ファスナd21、d31を後身頃側サイドフラップd2、d3から剥がし、各々固定帯22から引き抜く。次いで、後身頃側サイドフラップd2、d3を被介護者Cの腰部両側方から前記前身頃側に引き上げ、面ファスナd21、d31を前身頃側サイドフラップd4、d5に接着し、被介護者CにおむつDを装着する。従って、図9(b)の状態になった後、おむつDを被介護者Cに装着するまでの前記一連の作業において、被介護者Cを移動させることなくおむつDの装着作業が可能になるため、介護者の負荷は、従来のおむつ装着支援具等に比べて格段に軽減される。
【0053】
おむつDを被介護者Cに装着後、被介護者Cの臀部下にある介護用補助ベルト2をさらに、被介護者Cの頭部方向に引き上げると、被介護者Cが、仰臥位状態であるため、臀部によって腰部と寝床面Kとの間に形成されている空間に介護用補助ベルト2を手繰り寄せることができ、容易に被介護者Cの腰背部から介護用補助ベルト2を容易に、かつ、被介護者C背後で強く擦過することなく、取り出することができる。
【0054】
なお、介護用補助ベルト2は、前記の通り、両端に同一の輪状部23を形成することにより、サイドレールSに固定せず、介護者の両手で各々の輪状部23を把持し、交互に上下させながら、被介護者Cの頭部方向に引き上げるようにしてもよい(図示せず)。
【符号の説明】
【0055】
1 介護用補助ベルト(第1実施形態)
11 本体部
12 挿通部
13 挿通孔
14 スリット部
15 挿入部
16 把持部
2 介護用補助ベルト(第2実施形態)
21 本体部
22 固定帯
23 輪状部
24 突片部
25 スリット部
B ベッド
S サイドレール
K 寝床面
D おむつ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9