(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】動作補助具及び固定方法
(51)【国際特許分類】
F15B 15/10 20060101AFI20220809BHJP
A61F 2/50 20060101ALI20220809BHJP
A61H 1/02 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
F15B15/10 H
A61F2/50
A61H1/02 G
(21)【出願番号】P 2018144439
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2017221516
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592127965
【氏名又は名称】NKE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 翔太
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-153663(JP,A)
【文献】特開2001-355608(JP,A)
【文献】特開2017-055793(JP,A)
【文献】特開2017-148488(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034145(WO,A1)
【文献】特許第5246717(JP,B2)
【文献】特開2009-250362(JP,A)
【文献】特開平05-015485(JP,A)
【文献】特開2010-279689(JP,A)
【文献】米国特許第09463085(US,B1)
【文献】米国特許第06120477(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0346449(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0000935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00-15/20
A61H 1/00- 5/00;99/00
A61F 2/00; 2/02- 2/80; 3/00- 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工筋肉と当該人工筋肉の一端を固定する固定具とを備え、前記人工筋肉を用いて使用者の動作を補助する動作補助具であって、
前記人工筋肉は、
流体が流入される弾性体チューブと、前記弾性体チューブの外周面を覆う編組スリーブとを有する複数本の人工筋肉筋を備え、
前記固定具は、前記1本の人工筋肉筋の一端部を保持する保持部と、前記1本の人工筋肉筋の一端と間隔を空けた状態で複数個の前記保持部を外嵌する内側ケースと、前記内側ケースが前記複数個の保持部を外嵌する状態で前記複数個の保持部と前記内側ケースと前記複数本の人工筋肉筋における一端部とを凹入部に収容する外側ケースと、前記外側ケースの前記凹入部に充填された樹脂とを備える
動作補助具。
【請求項2】
使用者の腰回りに装着される腰ベルト部を備えた動作補助具であって、
前記腰ベルト部は
、人工筋肉と、
当該人工筋肉の一端を固定する固定具とを備え、
前記人工筋肉は、流体が流入される弾性体チューブと、前記弾性体チューブの外周面を覆う編組スリーブとを有する複数本の人工筋肉筋を備え、
前記固定具は、前記1本の人工筋肉筋の一端部を保持する保持部と、前記1本の人工筋肉筋の一端と間隔を空けた状態で複数個の前記保持部を外嵌する内側ケースと、前記内側ケースが前記複数個の保持部を外嵌する状態で前記複数個の保持部と前記内側ケースと前記複数本の人工筋肉筋における一端部とを凹入部に収容する外側ケースと、前記外側ケースの前記凹入部に充填された樹脂とを備える
動作補助具。
【請求項3】
前記動作補助具は、コルセット又はスーツである
請求項
2に記載の動作補助具。
【請求項4】
前記流体は圧縮空気である
請求項
1~3の何れか1項に記載の動作補助具。
【請求項5】
使用者の動作を補助する動作補助具用の人工筋肉筋の一端を固定具に固定する固定方法であって、
前記人工筋肉筋は、流体が流入される弾性体チューブと、前記弾性体チューブの外周面を覆う編組スリーブとを備え、
前記人工筋肉筋は、
前記人工筋肉筋の一端部を保持体に保持させる保持工程と、
前記人工筋肉筋の一端部を保持する前記保持体を内側ケースに挿入させる挿入工程と、
前記人工筋肉筋を保持する前記保持体が挿入された前記内側ケースを外側ケースの凹入部に配置する配置工程と、
前記人工筋肉筋を保持する前記保持体が挿入された前記内側ケースが前記外側ケースの前記凹入部に配置された状態で前記凹入部に硬化前又は固化前の樹脂材料を充填する樹脂充填工程と
を経て固定される固定方法。
【請求項6】
使用者の腰回りに装着され且つ人工筋肉筋と当該人工筋肉筋の一端を固定する固定具とを有する腰ベルト部を備える動作補助具における前記人工筋肉筋の一端を前記固定具に固定する固定方法であって、
前記人工筋肉筋は、流体が流入される弾性体チューブと、前記弾性体チューブの外周面を覆う編組スリーブとを備え、
前記人工筋肉筋は、
前記人工筋肉筋の一端部を保持体に保持させる保持工程と、
前記人工筋肉筋の一端部を保持する前記保持体を内側ケースに挿入させる挿入工程と、
前記人工筋肉筋を保持する前記保持体が挿入された前記内側ケースを外側ケースの凹入部に配置する配置工程と、
前記人工筋肉筋を保持する前記保持体が挿入された前記内側ケースが前記外側ケースの前記凹入部に配置された状態で前記凹入部に硬化前又は固化前の樹脂材料を充填する樹脂充填工程と
を経て固定される固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の人工筋肉筋を並設してなる人工筋肉及び動作補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工筋肉を使用したサポート装置として、例えば、「使用者の腰部に装着される腰部装着部と、前記腰部装着部に支持され、前記使用者の上体に係合されることで該使用者の上体に対する変位が規制される上体係合部と、前記アクチュエータ支持部材に連結されていると共に前記アクチュエータ支持部材に対して傾動可能とされ、前記使用者の上体に対する変位が規制された前記アクチュエータ支持部材に対して傾動されることで前記使用者の大腿部を後方側から押圧して該使用者の腿上げをサポートするサポート力入力部とを備え、前記アクチュエータ支持部材には、作動されることで前記サポート力入力部を傾動させる人工筋肉が取付けられている腿上げサポート装置」が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のサポート装置では、太径の人工筋肉を使用しているため、装置が嵩張るという課題がある。
本発明が解決しようとする課題は、嵩張らない人工筋肉及び動作補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る人工筋肉は、複数本の人工筋肉筋を並設してなる人工筋肉であって、前記人工筋肉筋は、流体が流入される弾性体チューブと、前記弾性体チューブの外周面を覆う編組スリーブとを備え、前記弾性体チューブの外径は4mm以下である。
別の態様に係る動作補助具は、人工筋肉を用いて使用者の動作を補助する動作補助具であって、前記人工筋肉は上述の人工筋肉である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、細径の弾性体チューブを並設しているため、人工筋肉及び動作補助具の嵩張りを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)は本実施形態に係る人工筋肉の斜視図であり、(b)は人工筋肉の平面図である。
【
図2】(a)は人工筋肉筋の斜視図であり、(b)は人工筋肉筋の収縮状態を説明する模式図である。
【
図3】(a)は固定具の斜視図であり、(b)は固定具の内部構造を説明する概略断面図であり、(c)は固定具への人工筋肉筋の挿入状態を説明する模式図である。
【
図4】(a)~(c)は人工筋肉筋への金属スリーブ、金属パイプの挿入状態等を説明する模式図である。
【
図9】コルセットの装着状態を示す左側面図である。
【
図10】コルセットの装着状態を示す右側図である。
【
図11】コルセットの使用状態を説明する模式図であり、(a)は圧縮空気非供給時を示し、(b)は圧縮空気供給時を示す。
【
図12】スーツの使用状態を説明する模式図であり、(a)は圧縮空気非供給時を示し、(b)は圧縮空気供給時を示す。
【
図13】第3実施形態に係る固定具を示す斜視図である。
【
図14】樹脂材料を充填する前の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
本発明の一態様に係る人工筋肉は、複数本の人工筋肉筋を並設してなる人工筋肉であって、前記人工筋肉筋は、流体が流入される弾性体チューブと、前記弾性体チューブの外周面を覆う編組スリーブとを備え、前記弾性体チューブの外径は4mm以下である。
別態様に係る人工筋肉において、前記弾性体チューブは、硬度30度以下且つ肉厚が外径の1/6以下である。このように、柔軟な弾性体チューブを使用することにより、動作補助具に使用した場合でも動作をスムーズに行うことができる。
また、本発明の一態様に係る動作補助具は、人工筋肉を用いて使用者の動作を補助する動作補助具であって、前記人工筋肉は上述の人工筋肉である。人工筋肉の収縮力を利用することにより、使用者の動作を楽に補助することができる。
別態様に係る動作補助具において、使用者の腰回りに装着される腰ベルト部を備えた動作補助具であって、前記腰ベルト部は上述の人工筋肉を有する。人工筋肉の収縮力を利用することにより、腰部の負担を軽減することができる。
別態様に係る動作補助具において、前記動作補助具が、コルセット又はスーツである。これにより、コルセット又はスーツが嵩張らなくなる。
別態様に係る動作補助具において、前記流体は圧縮空気である。これにより、小型携帯ポンプ等により加圧することができる。
別態様に係る動作補助具は、前記人工筋肉の一端を固定する固定具を備え、当該固定具は、前記1本の人工筋肉筋の一端部を保持する保持部と、前記1本の人工筋肉筋の一端と間隔を空けた状態で複数個の前記保持部を外嵌する内側ケースと、前記内側ケースが前記複数個の保持部を外嵌する状態で前記複数個の保持部と前記内側ケースと前記複数本の人工筋肉筋における一端部とを凹部に収容する外側ケースと、前記外側ケースの前記凹部に充填された樹脂とを備える。これにより、人工筋肉を容易に保持できる。
【0009】
<実施形態>
以下に実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1実施形態>
実施形態では、動作補助具の一例としてコルセットについて説明する。
【0010】
1.全体
概要
主に、
図5を用いて説明する。
コルセット100は、使用者の腰回りに装着される腰ベルト部101と、腹回りに装着される腹ベルト部102,103と、人工筋肉セット30とを有する。腰ベルト部101の表面に、2つの人工筋肉セット30が取り付けられている。
以下、各部について説明する。
【0011】
2.各部構成
(1)人工筋肉セット
主に、
図1、
図3及び
図4を用いて説明する。
人工筋肉セット30は、人工筋肉10と、人工筋肉10を固定する固定具20とを備える。なお、人工筋肉10と固定具20との固定部分には金属スリーブ2と金属パイプ3とを利用している。
人工筋肉10は、複数本の人工筋肉筋1を並設してなる。ここでは、10本の人工筋肉筋1を1列に並設している。換言すると、10本の人工筋肉筋1の中心軸が平面内に位置する状態で人工筋肉筋1が配されている。
【0012】
(2)人工筋肉筋
主に、
図2を用いて説明する。
人工筋肉筋1は、内部に圧縮空気が流入される弾性体チューブ1aと、弾性体チューブ1aの外周面を覆う編組スリーブ1bとを備える。
(2-1)弾性体チューブ
主に、
図2を用いて説明する。
弾性体チューブ1aは、外径4mm以下の細径であり、好ましくは2~4mmである。このように細径の弾性体チューブ1aを使用することにより、動作補助具(例えば、コルセットやスーツ)に使用する場合の嵩張りを抑えることができる。また、人工筋肉筋1当りの収縮を、低圧、小空気量で行うことができる。
また、弾性体チューブ1aは、硬度30度以下且つ肉厚(厚さ)が外径の1/6以下のものが好ましく、特に好ましくは硬度10度以下且つ肉厚が外径の1/8以下である。肉厚(厚さ)は具体的には、0.5mm以下が好ましく、特に好ましくは0.2~0.5mmである。このように、柔軟な弾性体チューブを使用することにより、動作補助具(例えば、コルセットやスーツ)にフィットしやすくでき、嵩張らず動作をスムーズに行うことができる。
弾性体チューブ1aは、外径4mm以下の細径であるが、0.5MPa程度までの圧縮空気に耐えることができる。
【0013】
弾性体チューブ1aの主成分としては、特に限定はないが、例えば、ポリウレタン、シリコーン等があげられ、好ましくはポリウレタンである。弾性体チューブ1aの具体例としては、外径4mm以下の細径に成形しやすい点で、ポリ乳酸と特殊エラストマーとを配合した市販の軟質製品(商品名:Ecoフレキシール、ホッティーポリマー社製)が好ましい。
【0014】
(2-2)編組スリーブ
主に、
図2を用いて説明する。
編組スリーブ1bは、ナイロン繊維等の繊維をスリーブ状に編みこんだ構造である。
編組スリーブ1bにおける繊維の編組角度は、20~30度が好ましい。なお、編組角度は、編組スリーブ1bの筒軸(中心軸)と繊維との間の角度である。
編組スリーブ1bにおける繊維同士の間隔は0.5~0.8mmが好ましい。
【0015】
(3)金属スリーブ、金属パイプ
主に、
図3を用いて説明する。
人工筋肉筋1の端部外周には円筒状の金属スリーブ2が挿入され、人工筋肉筋1の端部内周には円筒状の金属パイプ3が挿入されている。この状態では、金属スリーブ2と金属パイプ3との間に弾性体チューブ1aが挟まれた領域があり、金属パイプ3が金属スリーブ2の外端(弾性体チューブ1aの中心軸が延伸する軸方向の外方側端)が外方に延出している。金属スリーブ2の端部側はカシメ部2aであり、これにより弾性体チューブ1aと金属パイプ3とが密閉状態で固定されている。なお、金属パイプ3はカシメ時につぶれない程度又は形状変化で空気流入に影響を与えない程度の剛性を有する。
この人工筋肉筋1は、例えば、
図4に示す手順で作製することができる。すなわち、人工筋肉筋1の端部外周に円筒状の金属スリーブ2を挿入し(
図4(a)参照)、次いで人工筋肉筋1の端部内周に円筒状の金属パイプ3を挿入した後(
図4(b)参照)、金属スリーブ2の端部側(カシメ部2a)をカシメる(
図4(c)参照)ことにより製造できる。
【0016】
(4)固定具
主に、
図3及び
図5を用いて説明する。
固定具20は、人工筋肉10を腰ベルト部101の両端の上下の被係止部104に固定するために使用される。ここでは、固定具20は、平面視において略C字状であり、C字の先端の係止部21が被係止部104に固定される。
また、固定具20は、並設する人工筋肉筋1の数に応じて複数個の開口22を有する。開口22は、固定具20の一端面に一列に形成されている。ここでは、10個の開口22を有する。各開口22には金属スリーブ2等付きの人工筋肉筋1が挿入され、金属スリーブ2が外部から見えなくなるまで、開口22の奥まで押し込まれる。人工筋肉筋1の開口22への挿入方法は、特に限定はなく、例えば、複数本(ここでは、10本)の人工筋肉筋1を同時に開口22に挿入してもよく、人工筋肉筋1を1本ずつ開口22に挿入してもよい。なお、固定には接着剤を利用している。
【0017】
固定具20は、弾性体チューブ1a内に圧縮空気を流入させるために用いられる。
固定具20は、圧縮空気が流れる流路23を開口22の奥側に有し、流路23は各人工筋肉筋1の先端の金属パイプ3と繋がっている。また、固定具20の側面の端部には開口23aを有する。開口23aには、図示しない空気供給装置(例えば、小型携帯ポンプ)が供給チューブを介して接続されている。供給チューブにはバルブが設けられている。バルブは供給チューブ内の空気を開放する際に使用する。
小型携帯ポンプから供給された流体(例えば、圧縮空気等)は、流路23を介して各人工筋肉筋1の弾性体チューブ1aに供給される。弾性体チューブ1aの内部に圧縮空気が供給されると、
図2に示すように、編組スリーブ1bが径方向に膨張し、それにより弾性体チューブ1aが長手方向に収縮する。この収縮により、人工筋肉筋1はその長手方向への力を発生するようになっている。具体的には、圧縮空気が0.2MPaの場合、人工筋肉筋1は30%程度収縮する。
【0018】
(5)腰ベルト部
主に、
図5を用いて説明する。
腰ベルト部101は、中央が幅狭の長手形状である。腰ベルト部101の表面には、2つの人工筋肉セット30がクロスして取り付けられている。ここでは、一方の人工筋肉セット30は腰ベルト部101の左下部から右上部に取り付けられ、他方の人工筋肉セット30は腰ベルト部101の左上部から右下部に取り付けられている。人工筋肉セット30は、固定具20により被係止部104に固定されている。ここでは、被係止部104は4箇所設けられている。
腰ベルト部101は、伸縮性がある材料、例えば伸縮性がある布等により構成されている。
【0019】
(6)腹ベルト部
主に、
図5~
図10を用いて説明する。
腹ベルト部102,103は、腰ベルト部101の左右両側に設けられている。
ここでは、腹ベルト部103の表面に、面ファスナーのメス部103a(
図5参照)が設けられ、腹ベルト部102の裏面に、面ファスナーのオス部102a(
図6参照)が設けられている。これにより、腹ベルト部102と腹ベルト部103との脱着が可能になる。
腹ベルト部102,103は、伸縮性がない材料、例えば伸縮性のない布等により構成されている。
【0020】
3.使用
コルセット100の使用について、
図11を用いて説明する。
使用者400がバルブを開放して小型携帯ポンプのスイッチをオンにすると、流路23に圧縮空気が供給される。すると、矢印方向(F1)に人工筋肉10が収縮するため、腹ベルト部102,103が矢印方向(F2)に引っ張られる(
図11(b)参照)。この状態で、バルブを閉止して圧を保つ。なお、小型携帯ポンプのスイッチをオフにしても、圧は保たれる。これにより、通常のコルセットと同様に、腰回りが締め付けられる。また、矢印方向(F2)へアシスト力が働くため、荷物300を楽に持ち上げることができ、持ち上げる際の腰部の負担も軽減される。
一方、使用者400がバルブを開放して小型携帯ポンプのスイッチをオフにすると圧が下がり、流路23に圧縮空気が供給されなくなる。すると、人工筋肉10は収縮しないため、腰部の締め付けがなくゆとりができ休憩時等には楽である(
図11(a)参照)。
すなわち、本実施形態のコルセット100は、通常のコルセットとは使用態様が異なる。通常のコルセットは、左右の腹ベルト部を締め付けることにより、休憩時等でも常に腰部を締め付けているが、本実施形態のコルセット100は、圧縮空気の非供給時は腰ベルト部101が締め付けられず、腰部にゆとりができるので休憩時等には楽である。
【0021】
<第2実施形態>
実施形態では、動作補助具の一例としてスーツについて説明する。
1.全体
概要
主に
図12を用いて説明する。
スーツ200は、使用者400の腰回りに装着される腰ベルト部201と、肩回りに装着される肩ベルト部202,203と、脚回りに装着される脚ベルト部204,205と、人工筋肉セット30とを有する。
第1実施形態のコルセット100では、人工筋肉10は腰ベルト部101の長手方向に沿って、すなわち使用者400の腰部から腹部方向に沿って設置したが、第2実施形態のスーツ200では、人工筋肉10は腰ベルト部201の幅方向に沿って、すなわち使用者400の腰部から肩部方向に沿って設置している。
第1実施形態のコルセット100では、腹部から腰部方向にアシスト力F2が働くが、第2実施形態のスーツ200では、肩部から腰部方向及び脚部から腰部方向にアシスト力F13が働く。
【0022】
2.使用
スーツ200の使用について、
図12を用いて説明する。
使用者400がバルブを開放して小型携帯ポンプのスイッチをオンにすると、流路23に圧縮空気が供給される。すると、矢印方向(F11)に人工筋肉10が収縮するため、肩ベルト部202,203及び脚ベルト部204,205が矢印方向(F12)に引っ張られ上半身が起き上がる。この状態で、バルブを閉止して圧を保つ。なお、小型携帯ポンプのスイッチをオフにしても、圧は保たれる。これにより、矢印方向(F13)へアシスト力が働くため、荷物300を楽に持ち上げることができ、持ち上げる際の腰部の負担も軽減される(
図12(b)参照)。
一方、使用者400がバルブを開放して小型携帯ポンプのスイッチをオフにすると圧が下がり、流路23に圧縮空気が供給されなくなる。すると、人工筋肉10は収縮しないため、脚部の締め付けがなくゆとりができ休憩時等には楽である(
図12(a)参照)。
重い荷物300を持ち上げる場合には、第2実施形態のスーツ200の方が上半身へのアシスト力が大きいため、より楽に荷物を持ち上げることができ、腰部の負担もより軽減できる。
【0023】
<第3実施形態>
第1実施形態では、人工筋肉筋1の固定具20への固定に金属スリーブ2を利用したが、人工筋肉筋1は他の方法で固定具に固定されてもよい。以下、固定具及び固定方法について説明する。なお、人工筋肉筋1の延伸する方向を単に軸方向とする。
【0024】
1.固定具
第3実施形態に係る人工筋肉10も第1実施形態と同様の複数本の人工筋肉筋1から構成される。
複数本の人工筋肉筋1の一端部は、
図13に示すように、弾性体チューブ1a内に流体を流入可能に固定具50に固定されている。弾性体チューブ1a内の流体の流入は固定具50の開口(連通孔)に挿入された流入チューブ60を利用して行われる。
固定具50は、
図14に示すように、1本の人工筋肉筋1の一端部1Aを保持する保持体(本発明の保持部の一例に相当する)51と、1本の人工筋肉筋1の一端と間隔を空けた状態で1個以上の保持体51に外嵌する内側ケース53と、保持体51が内側ケース53により外嵌された状態で1個以上の保持体51と内側ケース53と複数本の人工筋肉筋1における一端部側とを凹入部551に収容する外側ケース55と、外側ケース55の凹入部551に充填された樹脂57(
図13参照)とを備える。
なお、ここでは、10本の人工筋肉筋1を固定具50に固定する場合について説明するが、人工筋肉筋1の本数は特に限定するものではない。
【0025】
(1)保持体
保持体51は、
図15に示すように、1本の人工筋肉筋1の一端に近い第1部位を保持する第1保持部511を有している。つまり、保持体51は人工筋肉筋1の一端が保持体51から突出する状態で、一端の手前の第1部位を保持する。
第1保持部511は、外側ケース55の凹入部551の開口側が開口する「C」字状をしている。第1保持部511の人工筋肉筋1の軸方向の寸法は、人工筋肉筋1の外径に対して、0.1倍以上1.3倍以下となっている。第1保持部511の開口511aは、人工筋肉筋1を内部に配するための挿入口となっている。第1保持部511は、開口511aの大きさが周方向に変化可能に構成されている。つまり、第1保持部511は、開口511aが広がるように弾性変形可能に構成されている。これにより、1本の人工筋肉筋1の第1保持部511の内部への挿入を容易に行うことができる。なお、人工筋肉筋1を第1保持部511の内部へ挿入する際の方向を、単に「筋肉筋挿入方向」とする。
ここでの保持体51は2個の第1保持部511を一体で有している。つまり、保持体51は2個の第1保持部511で2本の人工筋肉筋1の一端部を保持する。保持体51は、外周形状が方形状をし且つ内周形状が円形状をし、方形状の一つの辺に貫通溝(開口511a)を有するように構成された2個の第1保持部(511)を、貫通溝(開口511a)を同じ向きにした状態で、2本の人工筋肉筋1の並ぶ方向に結合したような形状に構成されている。なお、複数本の人工筋肉筋1が並ぶ方向を、単に「並設方向」とする。
【0026】
保持体51は、
図15に示すように、第1保持部511に対して人工筋肉筋1の軸方向の他端側に間隔をおいて第2保持部512を有している。第2保持部512は、人工筋肉筋1の軸方向の一端に対して他端側に間隔をおいた第2部位を保持する。
第2保持部512は、外側ケース55の凹入部551の開口側が開口する「C」字状をしている。第2保持部512の人工筋肉筋1の軸方向の寸法は、人工筋肉筋1の外径に対して、0.1倍以上1.3倍以下となっている。第2保持部512の開口512aは、人工筋肉筋1を内部に配するための挿入口となっている。第2保持部512は、開口512aの大きさが周方向に変化可能に構成されている。つまり、第2保持部512は、開口512aが広がるように弾性変形可能に構成されている。これにより、1本の人工筋肉筋1の第2保持部512の内部への挿入を容易に行うことができる。なお、人工筋肉筋1を第2保持部512の内部へ挿入する際の方向は、第1保持部511に挿入する方向(筋肉筋挿入方向)と同じである。
【0027】
ここでの保持体51は2個の第2保持部512を一体で有している。つまり、保持体51は2個の第2保持部512で2本の人工筋肉筋1の一端に近い部位(第2部位)を保持する。保持体51は、外周形状が方形状をし且つ内周形状が円形状をし、方形状の一つの辺に貫通溝(開口512a)を有するように構成された2個の第2保持部(512)を、貫通溝(開口512a)を同じ向きにした状態で、並設方向に結合したような形状に構成されている。なお、第2保持部512の開口512aは第1保持部511の開口511aと同じ側にあり、人工筋肉筋1の軸方向と平行な1本の仮想線上に位置する。
【0028】
保持体51は、2つの第1保持部511と2つの第2保持部512とを連結する連結部を有している。ここでの連結部は、第1保持部511の並設方向の外側を連結する一対の側面連結部513を含む。なお、並設方向の外側は、2つの第1保持部511及び2つの第2保持部512が隣接する側と反対側である。側面連結部513は板状をし、その主面が筋肉筋挿入方向と一致する。なお、第1保持部511が並ぶ方向は第2保持部512が並ぶ方向と一致する。
ここでの連結部は、2つの第1保持部511と2つの第2保持部512における開口511a,512aと反対側を連結する底面連結部514を含む。
2つの第1保持部511と2つの第2保持部512とを2つの側面連結部513と1つの底面連結部514とで連結することで、第1保持部511の開口511aと第2保持部512の開口512aとの開口の大きさが変化可能となる。
【0029】
保持体51は、第1保持部511における筋肉筋挿入方向と直交する少なくとも一方の面であって第2保持部512側の端部に段差部を有している。ここでの保持体51は、直交する2つの面に段差部515,516を有している。
段差部515は開口511aが形成されている面に設けられている。段差部515は、人工筋肉筋1の一端側が低くなる段差であり、ここでは、筋肉筋挿入方向と逆方向に突出する突出部分により構成されている。
段差部516は、開口511aが形成されていない面(底面側)に設けられている。段差部516は、人工筋肉筋1の一端側が高くなる段差であり、ここでは、筋肉筋挿入方向と逆方向に凹入する凹入部分により構成されている。
段差部515,516は、換言すると、第1保持部511の一端側の筋肉筋挿入方向の寸法(厚み)を小さくするような段差である。段差部515,516は第1保持部511の一端側が内側ケース53に挿入される際のストッパー機能を有する。
【0030】
保持体51は、第1保持部511における筋肉筋挿入方向と直交する面に凹み又は貫通孔を有している。ここでの保持体51は直交する2面に貫通孔517を有している。貫通孔517は、筋肉筋挿入方向の寸法が小さくなるように形成された段差部515,516に設けられている。貫通孔517は、一体化された2つの第1保持部511における並設方向の中央部分に形成されている。これにより、複数個の保持体51を併設した際に、貫通孔511bのピッチを一定にできる。なお、この貫通孔517には内側ケース53の凸部532が係合する。
【0031】
(2)内側ケース
内側ケース53は、
図16に示すように、人工筋肉筋1の軸方向の他端側が開口する箱状をする箱状部531を有し、内部に1個以上の保持体51の第1保持部511が挿入される。なお、保持体51の内側ケース53への挿入方向は、人工筋肉筋1の軸方向であり、保持体挿入方向ということもある。ここでは5個の保持体51の一端側が挿入される。つまり、ここでの内側ケース53は、並設方向に長い矩形箱状をしている。
箱状部531における並設方向と直交する断面形状は、「コ」字をしている。内側ケース53は、筋肉筋挿入方向と直交する内面に凸部532を有している。凸部532は、保持体51の貫通孔517に対応して設けられ、保持体51が箱状部531に挿入した際に貫通孔517に係合する。ここでは、筋肉筋挿入方向と直交する(箱状部531の長手方向と平行な)2つの長板部536の内面であって開口側端に設けられている。
【0032】
内側ケース53は、箱状部531の長手方向と直交する一方の短板部533に貫通孔534を有している。貫通孔534は人工筋肉筋1内に流体を流入させるための流通路を構成する。内側ケース53は、外側ケース55の凹入部551の内部での位置決部535を有している。位置決部535は、貫通孔534が形成されている短板部533から箱状部531の長手方向の外側に突出する突出部分により構成されている。
【0033】
内側ケース53は、凹入部551へ内側ケース53を配置する際の配置方向と直交する内面(長板部536の内面)であって軸方向の一端側に段差部537を有している。段差部537は、保持体51が内側ケース53に挿入された際に、保持体51の段差部515,516の奥側(保持体挿入方向の奥側であり、内側ケース53の底板部側)に位置する。つまり、内側ケース53に保持体51を挿入した際に、第1保持部511における軸方向の一端面と当接するように構成されている。これにより、内側ケース53の底面側への樹脂57の流入を抑制でき、人工筋肉筋1の一端開口が樹脂57により塞がれることを防止できる。
【0034】
(3)外側ケース
外側ケース55は、
図17に示すように、凹入部551と取付部552とを有する。なお、取付部552は、例えば
図5に示すように腰ベルト部101等の他部材の被係止部104に取り付けるのに利用される。
【0035】
凹入部551は、
図14に示すように、人工筋肉筋1の一端部1A、保持体51、内側ケース53を収容するためのものである。凹入部551は、内側ケース53に保持体51が嵌合する嵌合体52を収容するため、開口側からの投影形状は嵌合体52の投影形状と一致する。ここでは、5個の保持体51における人工筋肉筋1の並設方向の寸法が内側ケース53の並設方向の寸法より小さくなっている。このため、外側ケース55は、凹入部551を構成する内周壁から並設方向の内側へ張り出す張出部553,554を有している。
【0036】
張出部553,554は、凹入部551の底から深さ方向(高さ方向)の半分程度の領域に形成された底側張出部分553a,554aと、底側張出部分553a,554aにおける内側ケース53が収容される側と反対側端であって底側張出部分553a,554aにおける開口側の端部(上端部)から凹入部551の開口まで領域に形成された開口側張出部分553b,554bとを有する。
図14に示すように、底側張出部分553a,554aは、複数個の保持体51における並設方向の端に位置する保持体51に当接(又は近接)し、内周壁における底側張出部分553a,554aに対して開口側張出部分553b554bと反対側部分551c(
図17参照)内側ケース53の並設方向の端面が当接(又は近接)する。
【0037】
外側ケース55は、凹入部551を構成する側壁551aに貫通孔551bを有する。貫通孔551bは、
図13に示す流入チューブ60用である。
外側ケース55は、複数本の人工筋肉筋1を支持する筋支持部555を有する。筋支持部555は、凹入部551における第2保持部512が位置する側に設けられている。筋支持部555は、複数本の人工筋肉筋1を凹入部551の底側から支持する。筋支持部555により支持される人工筋肉筋1は、第2保持部512から他端側に延出する部分であって凹入部551の底側の半分である。筋支持部555は人工筋肉筋1用の凹入部分555aを並設方向に人工筋肉筋1の本数分有する。凹入部分555aは、人工筋肉筋1の半径と略同じ半径の半円柱状に凹入する。換言すると、人工筋肉筋1における第2保持部512に保持される手前部分の下半分が凹入部分555aに嵌る。
【0038】
外側ケース55は、人工筋肉筋1を覆うカバー59を装着するためのケース側装着部556を有する。ケース側装着部556は、筋支持部555おける並設方向であって凹入部分555aの外側に設けられている。ここでのケース側装着部556は、側壁551aの並設方向の両端部から凹入部分555aに向かって凹入する凹入部分556aと、凹入部分556aの底部分に形成された凸部分556bとにより構成される。なお、凹入部分556aは、外側ケース55の凹入部551に嵌合体52を設置する際の設置方向に貫通する欠け部でもあり、凸部分556bは、貫通する欠け部の途中から並設方向の外方へ突出する。
【0039】
(4)カバー
カバー59は、
図18に示すように並設方向に長い矩形棒状をする矩形棒状部591を有する。カバー59は、複数本の人工筋肉筋1を外側ケース55の凹入部551の開口側から被覆する筋被覆部592を矩形棒状部591に有する。筋被覆部592により被覆される人工筋肉筋1は、第2保持部512から他端側に延出する部分であって凹入部551の底と反対側の半分である。筋被覆部592は人工筋肉筋1用の凹入部分592aを人工筋肉筋1の本数分有する。凹入部分592aは人工筋肉筋1の半径と略同じ半径の半円柱状に凹入し、併設方向に沿って有する。換言すると、カバー59の凹入部分592aは人工筋肉筋1における第2保持部512に保持される手前部分の上半分に嵌る。
【0040】
カバー59は、筋被覆部592おける並設方向であって凹入部分592aの外側に、外側ケース55のケース側装着部556に装着するためのカバー側装着部593を有する。ここでのカバー側装着部593は、ケース側装着部556の凹入部分556aに嵌合する嵌合部分593aと、ケース側装着部556の凸部分556bに係合する係合部分593bとにより構成される。なお、カバー59は、外側ケース55に装着されると、外側ケース55の凹入部551の開口側において、カバー59と外側ケース55とが面一状となる。
【0041】
(5)樹脂
樹脂57は、
図14に示すように、外側ケース55に嵌合体52を収容し且つカバー59が装着された状態で、外側ケース55の凹入部551に充填されている。これにより、保持体51により保持された人工筋肉筋1の一端部、内側ケース53、保持体51、カバー59を凹入部551に固定できる。なお、複数本の人工筋肉筋1の一端は、内側ケース53内にあり、凹入部551に充填された樹脂により塞がることはない。なお、樹脂57は、外側ケース55の凹入部551の開口側において、樹脂57とカバー59と外側ケース55とが面一状となるように、充填されている。
【0042】
2.固定方法
複数本の人工筋肉筋1を、弾性体チューブ1a内に流体を流入可能に固定具50に固定する固定方法について説明する。
固定方法は、人工筋肉筋1の先端を残して人工筋肉筋1の一端部を保持体51に保持させる保持工程(
図19の(a)参照)と、人工筋肉筋1の一端部側を保持する保持体51を内側ケース53に挿入する挿入工程(
図19の(b)参照)と、人工筋肉筋1を保持する保持体51が内側ケース53に挿入された状態で外側ケース55の凹入部551内に配置する配置工程(
図19の(c)参照)と、人工筋肉筋1を保持する保持体51が内側ケース53に挿入された状態で凹入部551に配置されている外側ケース55にカバー59を装着する装着工程(
図14参照)と、カバー59が装着された外側ケース55の凹入部551に硬化前又は固化前の樹脂材料を充填する樹脂充填工程とを経て行われる。なお、樹脂が硬化又は固化した状態が
図13である。
【0043】
(1)保持工程
第3実施形態の保持体51は、第1保持部511と第2保持部512とを人工筋肉筋1の軸方向に離間して備え、仮想線上に位置するように開口511a,512aを有している。保持工程は、人工筋肉筋1の端を保持体51から突出するように、人工筋肉筋1の一端部を開口511a,512aから内部へと挿入する。
この際、開口511a,512aの大きさが変化可能に構成されているため、人工筋肉筋1の保持体51の内部への挿入を容易に行える。なお、人工筋肉筋1が保持体51により保持されたものを結合体54とする。
【0044】
(2)挿入工程(保持体の内側ケースへの挿入)
挿入工程は、結合体54の保持体51の第1保持部511側を先頭にして、内側ケース53に挿入する。なお、保持体挿入方向は人工筋肉筋1の軸方向と一致する。この際、保持体51の第1保持部511は段差部515,516により先細りしており、内側ケース53に容易に挿入できる。また、保持体51の段差部515,516及び内側ケース53の段差部537により、結合体54を所定長さ挿入すると、その挿入が規制される。この状態で、内側ケース53の凸部532が保持体51の貫通孔517に係合する。これにより、保持体51が内側ケース53に固定される。なお、
図19の(b)では、結合体54が1個しか現れていないが、上記の挿入工程を後4回繰り返して、すべての人工筋肉筋1が内側ケース53に固定される。
【0045】
(3)配置工程
配置工程では、外側ケース55の凹入部551の開口551dの上方から嵌合体52を凹入部551内に挿入配置する。この際、凹入部551の投影形状は嵌合体52の投影形状に略一致すると共に凹入部551は嵌合体52よりも少し大きいため、配置を容易にできる。
この際、保持体51の第2保持部512から軸方向の他端側に延伸する人工筋肉筋1は外側ケース55の筋支持部555により下方から支持されるため、嵌合体52が凹入部551から外れたり、人工筋肉筋1が湾曲したり等するのを防止できる。
外側ケース55は、凹入部551に張出部554を備えるため、樹脂57により固定しない状態であっても嵌合体52が凹入部551内でガタつくのを防止できる。
なお、嵌合体52を凹入部551内への配置が完了すると、弾性体チューブ1a内の流体の流入用の流入チューブ60を外側ケース55の貫通孔551bから内側ケース53の貫通孔534へと挿入する。
【0046】
(4)装着工程
装着工程では、外側ケース55の凹入部分556aに対して並設方向と直交する方向、換言すると、凹入部分556aの上方からカバー59の嵌合部分593aを嵌合させて、さらに下方にカバー59を押圧することでカバー59の係合部分593bが外側ケース55の凸部分556bに係合する。
この際、外側ケース55の筋支持部555の凹入部分555aと、カバー59の筋被覆部592の凹入部分592aとが対向して設けられているため、カバー59を外側ケース55に装着した際に、人工筋肉筋1を装着方向の両側から支持することができる。
【0047】
(5)樹脂充填工程
ここでは、硬化型の樹脂材料を使用し、外側ケース55の凹入部551に硬化前の樹脂材料を充填する。この際、樹脂材料の粘度は、1,500[mmPa・s]以上12,000[mmPa・s]以下の範囲内が好ましい。この範囲内の粘度を利用することで、保持体51の第1保持部511の一端と、内側ケース53の底との間に樹脂材料が浸入するのを防止できる。これにより、人工筋肉筋1の一端が樹脂により塞がるのを防止できる。
【0048】
3.人工筋肉セット
人工筋肉セットは、複数本の人工筋肉筋1からなる人工筋肉10と、人工筋肉10を固定する固定具50とを備える。人工筋肉セットの製造方法は、人工筋肉10と、保持体51、内側ケース53、外側ケース55、カバー59、樹脂57用の樹脂材料を準備する工程と、複数本の人工筋肉筋1を固定具50に固定する固定工程とを含む。なお、固定工程は、上述の通りである。
【0049】
<変形例>
以上、一実施形態に係る動作補助具について説明したが、この実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例とを組み合わせたものでもよいし、変形例同士を組み合わせたものでもよい。また、実施形態や変形例に記載していない例や要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0050】
1.人工筋肉セット
実施形態においては、2つの人工筋肉セット30を使用したが、数に限定はなく、1つもしくは3つ以上であっても差し支えない。
また、人工筋肉10では、10本の人工筋肉筋1を1列に並設したが、2段以上の多段に並設してもよい。
さらに、人工筋肉10中の人工筋肉筋1の本数は同数(いずれも10本)であるが、人工筋肉毎に異なっていてもよい。
実施形態では、10本の人工筋肉筋1につき、弾性体チューブ1aの外径が同じであったが、異なっていてもよい。但し、弾性体チューブ1aの外径は4mm以下である。例えば、人工筋肉10の上半分(上側5本)と下半分(上側5本)とで外径を変えて、圧縮空気の圧力を変えてもよい。これは固定具20の端部両側に開口23aを設けることで実施できる。
実施形態では、10本の人工筋肉筋1につき、弾性体チューブ1aと編組スリーブ1bとの組み合わせが同じであったが、異なっていてもよい。
人工筋肉10は固定具20で動作補助具に固定させたが、固定手段は限定されるものでない。また、固定具20は人工筋肉10の両端に設けたが、固定具20の取付け場所、取付個数等は、実施形態に限定されるものではない。
動作補助具に使用した場合、小型携帯ポンプ等で加圧しすぎたとしても、細径の弾性体チューブ1aが破裂するため、腰部等を締め付けすぎる恐れがなく、安全性に優れている。
2.流体
実施形態では圧縮空気について説明したが、気体に限らず、オイル等の液体等であってもよい。
【0051】
3.腹ベルト部
腹ベルト部102,103に設けた面ファスナーのメス部とオス部は逆であってもよい。また、腹ベルト部102と腹ベルト部103との着脱は、面ファスナーに限定されるものではない。
4.空気供給装置
空気供給装置として小型携帯ポンプを例示したが、弾性体チューブ1aに流体を流入できるものであれば特に限定はない。例えば、固定式のポンプから流体を供給してもよい。
【0052】
5.コルセット
実施形態では、主に腰回りに使用するコルセット100について説明したが、肩専用、腕専用、脚専用等のコルセットとして使用することもできる。
動作補助具は人工筋肉を用いて使用者の動作を補助するものであれば特に限定はなく、コルセットやスーツに限定されるものではなく、リハビリに使用することもできる。また、コルセット100やスーツ200についても、実施形態の構成に限定されるものではない。
人工筋肉セット30は着脱自在に係合していたが、人工筋肉セット30をコルセット100やスーツ200に縫い付けてもよい。また、人工筋肉セット30は着脱自在のため、他の動作補助具に使用してもよい。
【0053】
6.固定具
(1)保持体
(1-1)保持部
保持体は、2個の第1保持部511を一体で有しているが、1個の第1保持部511を有するようにしてもよいし、3個以上の第1保持部を一体で有してもよい。つまり、第1保持部は、1本の人工筋肉筋1の一端の第1部位を保持できればよく、その個数・形態(独立又は一体等)は特に限定するものではない。
保持体51は、2個の第2保持部512を一体で有しているが、1個の第2保持部512を有するようにしてもよいし、3個以上の第2保持部を一体で有してもよい。つまり、第2保持部は、1本の人工筋肉筋1の第2部位を保持できればよく、その個数・形態(独立又は一体等)は特に限定するものではない。
保持体51は、少なくとも第1保持部511を有していればよく、第2保持部512を有していなくてもよい。但し、第2保持部512を有する方が人工筋肉筋1を安定した状態で保持できる。
【0054】
(1-2)段差部
段差部515,516は、同じ構成であってもよい。例えば、2つの段差部は、突出部分により構成してもよいし、凹入部分で構成してもよい。また、段差部は、筋肉筋挿入方向と直交する2つの面の少なくとも一方の面に設けられていればよい。なお、ストッパー機能は、筋肉筋挿入方向と直交する面に設けなくても、例えば、第1保持部511の軸方向(保持体挿入方向)と直交する一端面から軸方向に突出する突出部により構成することもできる。この場合、突出部は内側ケースの底面と当接する。
【0055】
(2)外側ケース
外側ケース55は、筋支持部555を有しているが、筋支持部を有しなくてもよい。但し、筋支持部がある方が、人工筋肉筋1の固定作用の操作性が向上する。また、筋支持部に相当する部分を保持体に一体に設けてもよい。
外側ケース55は、偏平状をし、その厚み方向の一方側が開口する凹入部を有しているが、厚み方向と直交する側、ここでは、取付部552の反対側に開口を有する凹入部を有してもよい。但し、厚み方向の一方側が開口する方が人工筋肉筋1の固定作用が容易となる。
【0056】
(3)カバー
実施形態では、カバー59を有しているが、例えば樹脂材料によりカバーに相当する部分を形成するようにしてもよいし、保持体に一体で設けてもよい。
(4)人工筋肉筋
実施形態では、人工筋肉筋1の一端部の固定について説明したが、他端部も同様に固定してもよいし、他の方法で固定してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 人工筋肉筋
1a 弾性体チューブ
1b 編組スリーブ
10 人工筋肉
20 固定具
30 人工筋肉セット
100 コルセット
200 スーツ