(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】消毒装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20220809BHJP
A01K 13/00 20060101ALI20220809BHJP
A61L 101/06 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
A61L2/18
A01K13/00 F
A01K13/00 Z
A61L101:06
(21)【出願番号】P 2018200653
(22)【出願日】2018-10-25
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】506310050
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】内海 洋
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0201583(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0174872(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2163155(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0037084(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0265449(US,A1)
【文献】実開昭58-188767(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L2/00-2/28
A61L11/00-12/14
A01K13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒液を用いて有蹄動物の蹄部を消毒する消毒装置であって、
複数の開口部を有し、有蹄動物が歩く床体と、
前記開口部に対応して設けられ、前記開口部を閉鎖する閉位置及び前記開口部を開口させる開位置に移動する移動体とを備え、
前記移動体が前記閉位置から前記開位置に移動して前記開口部が開口すると、この開口部から消毒液が噴射され、この噴射された消毒液によって有蹄動物の蹄部が消毒される
ことを特徴とする消毒装置。
【請求項2】
移動体を閉位置に向けて付勢する付勢体を備え、
前記移動体は、有蹄動物の蹄部に踏まれることにより前記付勢体の付勢力に抗して前記閉位置から開位置に移動する
ことを特徴とする請求項1記載の消毒装置。
【請求項3】
移動体は、閉位置に位置した状態では床体の上面よりも上方に位置し、開位置に位置した状態では前記床体の上面と同一面上に位置する蹄部踏面を有する
ことを特徴とする請求項2記載の消毒装置。
【請求項4】
有蹄動物の蹄部を検知する検知手段と、
この検知手段の検知に基づいて消毒液を有蹄動物の蹄部に向けて噴射する噴射手段とを備える
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の消毒装置。
【請求項5】
消毒液は、次亜塩素酸水である
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の消毒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒液を用いて有蹄動物の蹄部を消毒する消毒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された、脚先に蹄部を有する牛、馬、豚等の有蹄動物の洗浄施設が知られている。
【0003】
この従来の洗浄施設は、塩化物の希薄塩水溶液を被電解水とする電解生成アルカリ性水を貯えて有蹄動物の下肢の前洗浄に使用される第1洗浄槽と、この第1洗浄槽の前方にて一段高い位置に配置され、前記塩化物の希薄塩水溶液を被電解水とする電解生成酸性水を貯えて前記有蹄動物の下肢の後洗浄に使用される第2洗浄槽とを備えている。
【0004】
そして、有蹄動物を前記第1洗浄槽内に導いてその下肢を前記電解生成アルカリ性水により洗浄し、その後、有蹄動物を前記第2洗浄槽に導いてその下肢を前記電解生成酸性水により洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の洗浄施設では、有蹄動物を2つの第1洗浄槽及び第2洗浄槽に順に導く必要があるため、有蹄動物の蹄部の消毒に手間を要するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、有蹄動物の蹄部を効率よく消毒できる消毒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の消毒装置は、消毒液を用いて有蹄動物の蹄部を消毒する消毒装置であって、複数の開口部を有し、有蹄動物が歩く床体と、前記開口部に対応して設けられ、前記開口部を閉鎖する閉位置及び前記開口部を開口させる開位置に移動する移動体とを備え、前記移動体が前記閉位置から前記開位置に移動して前記開口部が開口すると、この開口部から消毒液が噴射され、この噴射された消毒液によって有蹄動物の蹄部が消毒されるものである。
【0009】
請求項2記載の消毒装置は、請求項1記載の消毒装置において、移動体を閉位置に向けて付勢する付勢体を備え、前記移動体は、有蹄動物の蹄部に踏まれることにより前記付勢体の付勢力に抗して前記閉位置から開位置に移動するものである。
【0010】
請求項3記載の消毒装置は、請求項2記載の消毒装置において、移動体は、閉位置に位置した状態では床体の上面よりも上方に位置し、開位置に位置した状態では前記床体の上面と同一面上に位置する蹄部踏面を有するものである。
【0011】
請求項4記載の消毒装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の消毒装置において、有蹄動物の蹄部を検知する検知手段と、この検知手段の検知に基づいて消毒液を有蹄動物の蹄部に向けて噴射する噴射手段とを備えるものである。
【0012】
請求項5記載の消毒装置は、請求項1ないし4のいずれか一記載の消毒装置において、消毒液は、次亜塩素酸水であるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有蹄動物の蹄部を効率よく消毒することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る消毒装置の平面図である。
【
図3】同上消毒装置の移動体の動作説明図で、(a)は移動体が閉位置に位置した状態の図、(b)は移動体が開位置に位置した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について
図1ないし
図3を参照して説明する。
【0016】
図1において、1は有蹄動物用の消毒装置で、この消毒装置1は、蹄病予防のために、人や動物に無害の消毒液を用いて有蹄動物である牛2の蹄部3を消毒するものである。
【0017】
消毒液は、環境を汚染しない「食品衛生法の飲用適の水」に合致した水、すなわち例えば、次亜塩素酸(HClO)を含む水である次亜塩素酸水である。なお、消毒液としては、次亜塩素酸水を用いることが好ましいが、これには限定されず、一般の消毒液を使用することも可能である。
【0018】
また、有蹄類としての牛2は、猪や山羊等と同じ偶蹄類であるから、前後左右の4本の各脚5の先端部に左右1対の主蹄6を有している。なお、左右1対の主蹄6によって、4本の各脚5の蹄部3が構成されている。
【0019】
消毒装置1は、牛2が有する4本の脚5の蹄部(2本の指に付いた主蹄)3をまとめて同時に効率的に消毒可能なもので、
図1ないし
図3に示すように、所定時(例えば搾乳時、採食時、或いは給水時等)に牛2が一時的に収納される収納領域10と、この収納領域10の下面に位置し、牛2がその上面11aを歩く前後方向(牛の移動方向)に長手状で板状の床体11とを備えている。なお、収納領域10は、1頭の牛2に対応した大きさの領域である。
【0020】
また、前後方向に長手方向を有する矩形板状の床体11のうち、牛2の前脚に対応する前側部分及び牛2の後脚に対応する後側部分には、長手方向に対して行列状(例えば5×6行列)をなす円形状の複数の開口部12がそれぞれ形成されている。これら複数の各開口部12は、床体11の上面11aから下面11bに貫通して開口形成されている。
【0021】
そして、床体11の下方には、ポンプ13の作動により消毒液が所定の圧力で圧送循環する循環流路14が設けられている。この循環流路14には、消毒液を貯留する貯留部であるタンク15から供給管(図示せず)を介して消毒液が供給される。
【0022】
また、消毒装置1は、床体11の各開口部12に対応して設けられ、開口部12を閉鎖する上側の閉位置(突出位置)と開口部12を開口させる下側の開位置(非突出位置)との間で上下方向に移動する移動体17と、この移動体17を閉位置に向けて上方に付勢する弾性変形可能な付勢体(例えばコイルバネ)18とを備えている。つまり、床体11の各開口部12ごとに移動体17及び付勢体18がそれぞれ設けられ、これら移動体17及び付勢体18は、循環流路14内に配置されている。
【0023】
移動体17は、
図3に示されるように、上側の閉位置に位置した状態では床体11の上面11aよりも上方に位置し、かつ、下側の開位置に位置した状態では床体11の上面11aと同一面上(略同一面上を含む)に位置する円形の平面状の蹄部踏面21を上面に有している。なお、この円形状の蹄部踏面21の直径Dは、例えば主蹄6の幅寸法よりも小さい。
【0024】
また、移動体17は、上円筒面22と、この上円筒面22よりも径大な下円筒面23と、これら上円筒面22及び下円筒面23間に位置する截頭円錐面24とを周側面に有している。そして、床体11は、開口部(空間部)12に臨んだ截頭円錐面状の当接受部25を有しており、移動体17の截頭円錐面24は、移動体17が閉位置に位置した状態時にその当接受部25に面状に当接する当接部26を有している。
【0025】
さらに、移動体17は、平面状の付勢体受面28を下面に有し、この付勢体受面28とこれに離間対向する対向面29との間に付勢体18が圧縮弾性変形した状態で設けられている。このため、移動体17が閉位置に位置した状態では、移動体17の当接部26は、床体11の当接受部25に所定の押圧力で押し付けられて当接している。これにより、開口部12は移動体17によって閉鎖(全閉)されている。
【0026】
そして、移動体17は、上面の蹄部踏面21が牛2の蹄部3に踏まれることで下向きの力Fが加わると、付勢体18の付勢力に抗して閉位置から開位置に移動する。その結果、開口部12の一部(床体11の当接受部25と移動体17の上円筒面22との間の隙間)が開口して循環流路14に連通し、その循環流路14を循環中の消毒液が当該開口した開口部12の一部から蹄部3に向けて上方へ噴射される。
【0027】
さらに、消毒装置1は、牛2の蹄部3の位置を検知する検知手段31と、この検知手段31によって検知された蹄部3の位置に対応する所定範囲内で移動しながら消毒液を牛2の蹄部3に向けて側方へ噴射する噴射手段32とを備えている。
【0028】
噴射手段32は、前後方向長手状のガイド体33に沿って前後方向に移動可能なノズル支持体35と、このノズル支持体35に支持された噴射ノズル36とを有している。噴射ノズル36は、ノズル支持体35に対して回動可能でかつ牛2の蹄部3に対して接離可能なものであり、その先端部には牛2の蹄部3に向けて消毒液を噴射する噴射口部37を有している。
【0029】
検知手段31は、例えば非接触型の光学系センサからなるものであり、噴射ノズル36の先端付近に取り付けられている。そして、この検知手段31の検知に基づいて噴射手段32が消毒液を牛2の蹄部3に向けて噴射する。
【0030】
次に、消毒装置1の作用等を説明する。
【0031】
牛舎内において、例えば搾乳時、採食時、或いは給水時等の所定時には、作業者は、牛2を誘導して収納領域10に導き入れる。
【0032】
すると、当該収納領域10内において、牛2の各脚5の蹄部3は、噴射手段32の噴射ノズル36の噴射口部37からの消毒液(次亜塩素酸水)と、移動体17が蹄部3に踏まれて閉位置から開位置に下方へ移動することでその一部が開口した開口部12からの消毒液(次亜塩素酸水)とによって、その蹄部3の主蹄6の全体が消毒される。
【0033】
すなわち、噴射手段32の噴射ノズル36は、検知手段31の検知に基づいて所定範囲内で移動しながら消毒液を牛2の蹄部3に向けて所定時間だけ噴射し、この噴射された消毒液によって蹄部3が消毒される。
【0034】
また、移動体17の蹄部踏面21が牛2の蹄部3に踏まれて閉位置から開位置に移動して床体11の開口部12が開口すると、この開口した開口部12から消毒液が噴射され、この噴射された消毒液によっても蹄部3が消毒される。
【0035】
なお、牛2が蹄部3で上方突出状の移動体17を踏んだ場合には、当該蹄部3を構成する左右1対の主蹄6が互いに離間し、これら両主蹄6間の隙間に消毒液が入り込み易くなる。
【0036】
こうして、消毒液による牛2の蹄部3の消毒が完了すると、作業者は、牛2を収納領域10から出す。この際に、牛2の蹄部3が移動体17の蹄部踏面21から離れると、移動体17は、付勢体18の付勢力によって押し上げられて開位置から閉位置へと上方へ移動する。その結果、閉位置に位置した移動体17によって開口部12が全閉され、開口部12からの消毒液の噴射が止まる。
【0037】
そして、上記消毒装置1によれば、噴射手段32の噴射ノズル36の噴射口部37からの消毒液と、移動体17が蹄部3に踏まれて閉位置から開位置に移動することで開口した開口部12からの消毒液とによって牛2の蹄部3を消毒することにより、牛2の蹄部3を効率よくかつ適切に消毒できる。よって、従来とは異なり2つの槽に牛2を順次導く必要がなく作業者の負担軽減を図れるとともに、蹄病の予防や治療に極めて有用である。
【0038】
また、移動体17は、上面の蹄部踏面21が牛2の蹄部3に踏まれることにより、付勢体18の付勢力に抗して閉位置から開位置に移動するため、簡単な構成で床体11の開口部12を適切に開閉できる。
【0039】
さらに、消毒液として次亜塩素酸水を用いるため、環境を汚染することなく、大量に使用しても何ら問題は生じない。
【0040】
なお、消毒装置1は、牛2の4本の脚5に対応して前後左右で4つの噴射手段32を備えることが好ましいが、これには限定されず、例えば左右1対で2つの噴射手段を備える構成や、1つの噴射手段で4本の脚の蹄部を消毒する構成等でもよい。
【0041】
また、消毒対象の有蹄動物は、牛等の偶蹄類のほか、馬等の奇蹄類でもよく、蹄のある動物であればすべて適用可能である。
【0042】
さらに、消毒装置1は、搾乳機等の下部に設置されるものには限定されず、例えば牛が通る通路の途中に設置することも可能であり、当該消毒装置1を複数並べて設置してもよい。
【0043】
また、検知手段31は、非接触型のセンサには限定されず、例えば有蹄動物に接触して検知する接触型のセンサでもよい。
【0044】
さらに、例えば有蹄動物の蹄部を検知する検知手段の検知に基づいて移動体を閉位置から開位置に移動させる移動体駆動手段を備える構成等でもよい。また、移動体の蹄部踏面は、平面には限定されず、例えば球冠状でもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 消毒装置
2 有蹄動物である牛
3 蹄部
11 床体
11a 上面
12 開口部
17 移動体
18 付勢体
21 蹄部踏面
31 検知手段
32 噴射手段