IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カプリコール,インコーポレイテッドの特許一覧

特許7120628細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法
<>
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図1
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図2
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図3
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図4
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図4A
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図5
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図6
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図7
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図8
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図9
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図10
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図11
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図12
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図13
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図14
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図15
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図16
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図17
  • 特許-細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】細胞外小胞による放射線誘発性皮膚炎を予防するまたは治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20220809BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220809BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 35/28 20150101ALN20220809BHJP
   A61K 35/54 20150101ALN20220809BHJP
   A61K 35/34 20150101ALN20220809BHJP
【FI】
A61K35/12
A61P17/02
A61P29/00
A61K35/28
A61K35/54
A61K35/34
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018549328
(86)(22)【出願日】2017-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 US2017023066
(87)【国際公開番号】W WO2017165235
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-01-28
(31)【優先権主張番号】62/311,905
(32)【優先日】2016-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514309457
【氏名又は名称】カプリコール,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヘマッチ,フーマン
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス-ボーランド,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ペック,キール,エー.
(72)【発明者】
【氏名】マーバン,リンダ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-540150(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0222622(US,A1)
【文献】EXPERT OPINION ON BIOLOGICAL THERAPY,2016年01月,Vol.16, No.4,pp.489-506
【文献】J ALLERGY CLIN IMMUNOL,2014年,Vol.134, No.4,pp.836-847
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00 -35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象において皮膚傷害を予防または治療するのに使用するための組成物であって、治療的にまたは予防的に有効な量の細胞外小胞を含み、
前記細胞外小胞は、カーディオスフェア由来細胞(CDC)から得られるものである、
組成物。
【請求項2】
前記皮膚傷害が皮膚炎である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記皮膚炎が放射線誘発皮膚炎である、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記皮膚炎が分割放射線によって誘発される、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
治療的に有効な量の細胞外小胞が、前記対象が1回以上の放射線照射を受けた後に前記対象に1回以上投与されるように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
治療的に有効な量の細胞外小胞が、最初または最終の放射線曝露の1、2、3、4、5、6、7および/または8週後に、または前記対象が放射線によって引き起こされる全身紅斑を発症した後に、1回以上対象に投与されるように構成されている、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
複数の投与が連続投与間に7日の間隔をあけて行われる、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞外小胞がエクソソームである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
エクソソームが10KDaの細孔サイズのフィルタを通過できるサイズを有する、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
エクソソームが、1000KDaの細孔サイズのフィルタを通過できるサイズを有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記投与が皮下注射、経皮注射、皮内注射、局所投与、筋肉内注射、リンパ組織への注射、リンパ系への注射、または全身投与による、請求項5~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
放射線療法を受けた対象において放射線誘発皮膚炎を予防または治療するのに使用するための組成物であって、治療的にまたは予防的に有効な量のエクソソームを含み、
前記エクソソームは、カーディオスフェア由来細胞(CDC)から得られるものである、
組成物。
【請求項13】
治療的に有効な量のエクソソームが前記対象における放射線誘発皮膚炎の最初の臨床症状後に投与される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
予防的に有効な量のエクソソームが最終的な放射線治療処置後に投与される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記対象がヒト患者である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
放射線療法は、広範囲の癌の治療のための強力なツールである。放射線は皮膚に浸透して腫瘍部位に到達する必要があるため、皮膚は放射線治療中に用量依存的損傷を受ける。皮膚は、連続的に再生する臓器であるため、放射線障害を受けやすく、それは急速に増殖し成熟する細胞を含み、基礎ケラチノサイト、毛包幹細胞およびメラノサイトは非常に放射線感受性である。例えば、Ryan,Ionizing radiation:the good,the bad,and the ugly,J Invest Dermatol,132:985-93(2012)を参照されたい。最も感受性の高い皮膚領域は、首の前部、外肢、胸、腹および顔、ならびに頭皮上の毛包および乳房組織である。例えば、McQuestion, Evidence-based skin care management in radiation therapy:clinical update,Semin Oncol Nurs,27:e1-17(2011)を参照されたい。皮膚損傷は、放射線療法を受けている患者の約95%において放射線誘発皮膚炎としてそれ自体が現れ、損傷は軽度の紅斑~湿性落屑および皮膚潰瘍の範囲である。例えば、Brownら、Acute and chronic radiation injury,J Vasc Surg,53:15S(2011)を参照されたい。放射線治療を受けている患者の約20~25%が、湿性落屑および潰瘍を経験する。例えば、Consensus guidelines for the management of radiation dermatitis and coexisting acne-like rash in patients receiving radiotherapy plus EGFR inhibitors for the treatment of squamous cell carcinoma of the head and neck,Ann Oncol,19:142(2008)を参照されたい。放射線皮膚炎は、痛み、かゆみ、および審美的に劣る外観が原因で、患者の生活の質に重大な影響を有する。加えて、これらは放射線治療の早期中断の原因であり、その結果、疾患治療が不十分となり得る。例えば、Isomuraら、IL12RB2 and ABCA1 genes are associated with susceptibility to radiation dermatitis,Clin Cancer Res,14:6683(2008)を参照されたい。長期的には、皮膚創傷は、治癒プロセスの初期段階中に起こり得る過剰な線維症などの、異常な病理学的変化のために再び現れる可能性がある。例えば、Olascoagaら、Wound healing in radiated skin:pathophysiology and treatment options,Int Would J,5:246-57(2008)を参照されたい。
【0003】
放射線誘発皮膚炎は主に、過酸化物およびスーパーオキシドなどの反応性酸素種(ROS)、ならびに反応性の高いヒドロキシルおよび水素ラジカルの生成による細胞の酸化ストレスに起因する。例えば、Niwaら、Protein oxidation damage in the stratum corneum:Evidence for a link between environmental oxidants and the changing prevalence and nature of atopic dermatitis in Japan,Br J Dermatol,149:248-254(2003)を参照されたい。さらに、サイトカインの放出および炎症性細胞の浸潤などの炎症促進プロセスは、さらなるROSの生成、損傷および疾患病状を導く。Rosenthalら、Salen Mn complexes mitigate radiation injury in normal tissues,Anticancer Agents Med Chem,11:359-72(2011)。
【0004】
放射線誘発皮膚炎を予防する、かつ最小限に抑えるための最も一般的な戦略は、照射領域を単純に湿潤させること、およびマイルドな石鹸を使用してその領域を清潔に保つことを伴う。例えば、Maddocks-Jenningsら、Novel approaches to radio therapy-induced skin reactions:a literature review,Complement Ther Clin Pract,11:224-31(2005)を参照されたい。しかし、現在使用される治療レジメンはいずれも、臨床的に有意な有効性を欠いている。例えば、アロエベラゲル、ヒアルロニダーゼベースのクリームまたはスクラルファートクリームの使用は、皮膚炎スコアの有意な改善をもたらさなかった。例えば、Salvoら、Prophylaxis and management of acute radiation-induced skin reactions:a systematic review of the literature,Curr Oncol,17:94-112(2010)を参照されたい。このように、皮膚炎、特に放射線誘発皮膚炎のための効果的な薬理学的処置が依然として必要とされる。
【0005】
細胞は、それぞれ、エクソソームおよびマイクロベシクルと呼ばれる、エンドソームおよび原形質膜を起源とする多様なタイプの膜小胞を細胞外環境に放出する。これらの細胞外小胞は、細胞の膜と細胞質タンパク質、脂質、およびRNAとの間の移動のためのビヒクルとしての役割を果たすことにより、細胞間連絡の重要な様式を提示する。例えば、Graca Raposo and Willem Stoorvogel,Extracellular Vesicles:Exosomes,Microvesicles,and Friends,The Journal of Cell Biology,第200巻、第4号、373-383(2013)を参照されたい。国際公開第2014/028493号は、カーディオスフェア由来の細胞(CDC)由来のエクソソーム、および損傷または罹患した細胞または組織(例えば、損傷した心臓組織)の修復または再生のためのこれらの治療的有用性を記載する。米国特許出願公開第2012/0315252号は同様に、哺乳動物の損傷したまたは罹患した心臓の機能を増大させるためのCDC、カーディオスフェア(cardiosphere)誘導体、およびそれらの治療的有用性を記載する。国際公開第2005/012510号は同様に、ヒトまたは動物の心臓組織生検サンプルからのカーディオスフェア、それらの誘導、ならびに心筋または他の器官の細胞移植および機能的修復におけるそれらの治療的有用性を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、細胞外小胞、例えばエクソソームが皮膚炎、特に放射線誘発皮膚炎の治療に有効であるという本発明者らの驚くべき発見に基づく。当該技術分野においては、放射線誘発皮膚炎を治療するための、細胞外小胞、例えば、エクソソームの潜在的な治療的有用性について何ら認識されていなかったことから、本発明は、特定の細胞外小胞、例えば、カーディオスフェア由来細胞(CDC)など、特定の細胞集団由来のエクソソームが、本明細書に記載の関連する動物モデル実験において確認されるように、放射線誘発皮膚炎を有する対象を治療するのに有効であることが示された、本発明者らによる驚くべき知見に基づいている。
【0007】
本発明の第1の態様は、それを必要とする対象において、皮膚傷害、特に皮膚炎、さらには特に放射線誘発急性または慢性皮膚炎を予防するまたは治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の細胞外小胞を対象に投与することを含む。
【0008】
本発明の第2の態様は、皮膚損傷、特に皮膚炎、さらには特に急性または慢性放射線(例えば分割放射線)誘発皮膚炎の予防または治療に使用するための細胞外小胞を含む配合物を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞は、エクソソーム、マイクロベシクル、膜粒子、膜小胞、エクソソーム様小胞、エクトソーム、エクトソーム様小胞、エクソベシクル(exovesicle)、エピディディモソーム(epididimosome)、アルゴソーム(argosome)、プロミニノソーム(promininosome)、プロスタソーム、デキソソーム、テキソソーム、アーキオソーム(archeosome)、オンコソーム(oncosome)などである。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、好ましくはヒト、より好ましくは、放射線治療、例えば癌放射線治療を受けたことがある、受けている、または受けようとしているヒト患者である。
【0011】
いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、対象が1回以上の放射線量を受けた後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば、各放射線曝露後1時間未満に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば、放射線曝露後1~24時間未満に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば、放射線曝露後24~48時間未満に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、放射線誘発皮膚炎の急性または慢性の臨床症状のうちの1つ以上が生じた後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば、対象が1回以上の放射線量を受けた10~14日後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば最初の放射線曝露の15~21日後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば最初の放射線曝露の1~2週間後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば最初の放射線曝露の2~3週間後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば最初の放射線曝露の4~8週間後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば最初の放射線曝露の1、2、3、4、5、6、7、および/または8週後に、例えば、連続投与間に7日間隔をあけて、1回以上、対象に投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば、最終の放射線量が投与された1~2週後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば、最終の放射線量が投与された2~3週後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば、最終の放射線量が投与された4~5週後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば、最終の放射線量が投与された6~7週後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、例えば、最終線量の放射線が投与された1、2、3、4、5、6、7、および/または8週後に、例えば、連続投与間に7日間隔をあけて、1回以上、対象に投与される。
【0013】
いくつかの実施形態では、治療有効量の細胞外小胞、例えばエクソソームが、対象が放射線によって引き起こされる全身紅斑を発症した後に対象に投与される。
【0014】
いくつかの実施形態では、皮膚炎は、放射線療法、特に広範囲の癌、例えば頭頸部癌、乳癌、肉腫、小児肉腫、菌状息肉腫、黒色腫、肺癌、セザリー症候群などの治療のための放射線療法によって引き起こされる。さらなる実施形態では、皮膚炎は、卵巣癌、膵癌、結腸直腸癌、前立腺癌、黒色腫、肝癌、脳腫瘍、多発性骨髄腫、白血病、子宮頸癌、胃癌、腎細胞癌、肝細胞癌、リンパ腫などの治療のための放射線療法によって誘発される。さらなる実施形態では、皮膚炎は、事故または敵対行為による放射線への曝露、紫外線(UV)放射への曝露などによって引き起こされる。さらなる実施形態では、皮膚炎は、例えば、菌状息肉腫およびセザリー症候群などの皮膚T細胞リンパ腫の治療のための全皮膚電子治療(TSET)などの、電子療法または電子ビーム療法(EBT)によって引き起こされる。
【0015】
いくつかの実施形態では、投与は、皮下注射、経皮注射、皮内注射、局所投与、筋肉内注射、リンパ系組織への注射、リンパ系への注射、全身投与(例えば、経口、静脈内、内部非経口(intraparenteral))などを介する。
【0016】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、薬物送達デバイス、インサート、パッチなどの一部として、晶質液(例えば、Plasmalyte、生理食塩水)、水溶液、ゲル、軟膏、クリーム、局所または移植可能なヒドロゲル、粉末、スプレー、徐放性ポリマー(例えば、PLGAおよびPLAなど)、ポリエチレングリコール(PEG)含有溶液、懸濁液、エマルジョン中に配合される。いくつかの実施形態では、使用前に、細胞外小胞、例えばエクソソームを適切な緩衝液、例えばヒト血清アルブミンを含むまたは含まない滅菌PBS中に再懸濁する。いくつかの実施形態では、エクソソームは、将来の使用のために、例えば-80℃で凍結保存できる。
【0017】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えば、エクソソームは、ヒト細胞または動物細胞に由来する。いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、カーディオスフェアもしくはCDCから、またはnewt A1細胞株から調製される。いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、胚性幹細胞、多能性幹細胞、多機能幹細胞、誘導された多能性幹細胞、出生後幹細胞、成体幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、内皮幹細胞、上皮性幹細胞、神経幹細胞、心臓前駆細胞を含む心臓幹細胞、骨髄由来幹細胞、脂肪由来幹細胞、肝幹細胞、末梢血由来幹細胞、臍帯血由来幹細胞、胎盤幹細胞等の再生幹細胞から調製される。
【0018】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、それらを特定の標的部位に向けるように修飾される(例えば、遺伝的にまたはその他の方法で)。例えば、修飾は、いくつかの実施形態では、エクソソーム上での特定の細胞表面マーカーの発現を誘導することを含んでよく、その結果、所望の標的組織上の受容体との特異的相互作用がもたらされる。一実施形態では、エクソソームの天然含有物が除去され、所望の外因性タンパク質および/または核酸で置換または補充される。
【0019】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、miR-146a、miR-148a、miR-22、miR-24、miR-210、miR-150、miR-140-3p、miR-19a、miR-27b、miR-19b、miR-27a、miR-376c、miR-128、miR-320a、miR-143、miR-21、miR-130a、miR-9、miR-185、およびmiR-23aから選択される1つ以上のマイクロRNAを含む。好ましい実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、miR-146aおよびmiR-210を含む。いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、hsa-miR-23a-3p、hsa-miR-130a-3p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-4516、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-125b-5p、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-199b-3p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-24-3p、hsa-miR-1290、hsa-miR-320e、hsa-miR-423-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-222-3p(miR-221-3pとしても公知である)、hsa-miR-100-5p、hsa-miR-337-5p、hsa-miR-27b-3p、hsa-miR-1915-3p、およびhsa-miR-29b-3p、hsa-miR-25-3p(miR-92a-3pとしても公知である)から選択される1つ以上のマイクロRNAを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、生物学的タンパク質、例えば転写因子、サイトカイン、増殖因子、および標的細胞においてシグナル伝達経路を調節できる類似のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、生物学的タンパク質は、組織の再生および/または改善された機能を促進できる。いくつかの実施形態では、生物学的タンパク質は、Irak1、Traf6、トール様受容体(TLR)シグナル伝達経路、NOX-4、SMAD-4、および/またはTGF-βに関連する経路を調節できる。いくつかの実施形態では、生物学的タンパク質は、Hsp70、Hsp90、14-3-3イプシロン、PKM2、GW182およびAGO2などのサイトゾルタンパク質のエクソソーム形成およびパッケージングに関連する。いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、シグナル伝達脂質、例えばセラミドおよび誘導体を含有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、テトラスパニン、例えばCD63、CD81、CD82、CD53および/またはCD37を発現する。いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、1つ以上の脂質ラフト関連タンパク質(例えば、グリコシルホスファチジルイノシトール固定タンパク質およびフロチリン)、コレステロール、スフィンゴミエリン、および/またはヘキソシルセラミドを発現する。
【0022】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームは、例えば、約15~250nm、約15~205nm、約90~220nm、約30~200nm、約20~150nm、約70~150nm、または約40~100nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばマイクロベシクルは、例えば、約100~1000nmの直径を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームを精製して、汚染物質または望ましくない化合物をエクソソームから除去するようにする。いくつかの実施形態では、患者は、汚染物質の約50%~90%、または最大で100%がエクソソームから除去されるように実質的に精製されたエクソソームを投与される。いくつかの実施形態では、エクソソーム調製物は、非エクソソーム成分を本質的に含まない。
【0024】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えば、エクソソームは、1つ以上の追加の剤と組み合わせて投与される。例えば、いくつかの実施形態では、エクソソームは、エクソソームに由来する1つ以上のタンパク質または核酸と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、エクソソームが単離される細胞が、エクソソームと共に投与される。いくつかの実施形態では、このようなアプローチは有利に、エクソソーム送達の持続時間を急速にし、かつより長くする(例えば、実際のエクソソーム送達に基づいて急速であり、細胞送達に基づいてより長く、細胞は送達後にエクソソームを分泌し続ける)。
【0025】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞、例えばエクソソームの用量は、約1.0×10~約1.0×10エクソソームの範囲である。特定の実施形態では、エクソソーム用量は、1キログラムあたりを基準に、例えば、約1.0×10エクソソーム/kg~約1.0×10エクソソーム/kgで投与される。さらなる実施形態では、エクソソームは、標的組織の質量に基づく量で、例えば、標的組織1グラムあたり約1.0×10エクソソーム~標的組織1グラムあたり約1.0×10エクソソームで、標的組織に送達される。いくつかの実施形態では、エクソソームは、特定の標的組織中のエクソソーム数と細胞数との比に基づいて投与される。エクソソームを併用療法と共に投与する場合(例えば、エクソソームをなお出すことができる細胞、薬剤療法、核酸療法など)、投与されるエクソソームの用量は、適宜、調節できる(例えば、所望の治療効果を達成するために、必要に応じて増減させる)。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】マウス背部への皮下注射24時間後のDiR標識エクソソームの体内分布を示す。
図2図2A図2B。マウス背部への皮下注射24時間後の様々な臓器におけるDiR標識エクソソームの生体内分布および保持を示す。
図3】投与図である。
図4】皮膚収集図である。
図4A】第1の実験の試験設計を概略的に示す。
図5】第1の実験の実験動物の一日平均体重変化率を示す。
図6】第1の実験の全試験過程中の実験動物の累積平均一日平均体重変化を示す。
図7図7図7A。第1の実験の実験動物の平均一日盲検皮膚炎スコアを示す。
図8】第1の実験の全試験過程中の実験動物の累積平均一日平均盲検皮膚炎スコアを示す。
図9】第1の実験の毎日の皮膚炎スコアの比較を示す。
図10】第1の実験の重度の皮膚損傷を有する実験動物の割合(%)を日毎に示す。
図11】第2の実験の試験設計を概略的に示す。
図12】第2の実験の実験動物の平均一日体重変化率を示す。
図13】第2の実験の全試験過程中の実験動物の累積平均一日平均体重変化を示す。
図14図14A図14B。第2の実験の実験動物の平均一日盲検皮膚炎スコアを示す。
図15】第2の実験の全試験過程中の実験動物の累積平均一日盲検皮膚炎スコアを示す。
図16】第2の実験の毎日の皮膚炎スコアの比較を示す。
図17】試験の全試験過程中の重度の皮膚炎(DS>2)を有する動物の日数の割合(パーセンテージ)を示す図16のデータのグラフ表示である。
図18】第2の実験の、重度の皮膚損傷を有する実験動物の割合(%)を日毎に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
A)臨床症状
急性放射線誘発皮膚変化は、通常、放射線量に依存して90日以内に起こり、こうした皮膚変化としては、紅斑、浮腫、色素変化、脱毛、乾性または湿性落屑が挙げられる。Jensenら、「Treatment of acute radiodermatitis with an oil-in-water emulsion following radiation therapy for breast cancer:a controlled,randomized trial」Strahlenther Onkol,187:378(2011)を参照されたい。全身紅斑は放射線曝露の数時間後に生じることがあり、通常、2グレイ(Gy)以上の線量でのみ明白であり、数時間から数日以内に消失する。例えば、Schmuthら、「Permeability barrier function of skin exposed to ionizing radiation」Arch Dermatol,137:1019-23(2001)を参照されたい。さらに持続する第2段階の紅斑は、照射10~14日後に明らかである。乾性落屑は線量12~20Gyで、湿性落屑は20Gy以上で、および壊死は>35またはそれ以上で生じる。例えば、Mendelsohnら、「Wound care after radiation therapy」、Adv Skin Wound Care,15(5):216(2002)を参照されたい。表1は、National Cancer Institute’s Common Toxicity Criteria for Adverse Events(NCI-CTCAE)、バージョン4.03(2010年6月14日)による放射線誘発皮膚炎の分類を示し、NCI-CTCAEでは、放射線皮膚炎は「生物学的に有効なレベルの電離放射線への曝露の結果として生じる皮膚炎症反応の所見」と定義されている。
【表1】
【0028】
慢性放射線皮膚炎は、放射線曝露後数ヶ月~数年間は発症しないことがある。慢性放射線皮膚炎は、皮膚線維症、ならびに色素沈着異常、萎縮および毛細血管拡張を含む、多形皮膚萎縮による皮膚の変化を特徴とする。例えば、Brown and Rzucidlo、「Acute and chronic radiation injury」J Vasc Surg、53:15S(2011)を参照されたい。トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)などの増殖因子に応答する線維症は、局所的または広範囲であり得、組織収縮、運動の制限、および疼痛を生じる。例えば、CanneyおよびDean、「Transforming growth factor beta:a promoter of late connective tissue injury following radiotherapy?」Br J Radiol、63:620-3(1990)を参照されたい。末梢の小動脈および細動脈の内膜肥厚は、血栓症または閉塞に進行し、潰瘍および皮膚崩壊の素因を増加させる可能性がある。Mendelsohnら、「Wound care after radiation therapy」、Adv Skin Wound Care、15:216-24(2002)を参照されたい。皮膚線維芽細胞集団の減少およびコラーゲンの再吸収に関連する皮膚萎縮も、脆弱性を引き起こし、びらんおよび潰瘍に罹患しやすくなる。例えば、Harperら、「Skin toxicity during breast irradiation:pathophysiology and management」、South Med J,97:989-93(2004)を参照されたい。放射線壊死はより一般的に、高線量放射線療法、治癒障害、急性皮膚炎および真皮虚血に関連する晩発(late-consequential)傷害である。例えば、Hopewell、「The skin:its structure and response to ionizing radiation」、Int J Radiat Biol,57:751-73(1990)を参照されたい。
【0029】
本発明の目的のために、用語「皮膚炎」は、皮膚炎症ならびに皮膚炎症に関連する結果的な皮膚傷害を含む。
B)カーディオスフェア
【0030】
カーディオスフェアは、国際公開第2005/012510号およびMessinaら、「Isolation and Expansion of Adult Cardiac Stem Cells From Human and Murine Heart」(Circulation Research,95:911-921(2004))に記載されるように、自己接着クラスターとして増殖する未分化心臓細胞である。これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
簡潔に言えば、心臓組織は、手術または心臓生検中に患者から収集できる。心臓組織は、左心室、右心室、中隔、左心房、右心房、分界稜、右心室心内膜、心室中隔もしくは心室壁、心耳、またはこれらの組み合わせから採取できる。生検材料は、例えば、米国特許出願公開第2009/012422号および同第2012/0039857号に記載されるような経皮的バイオプトームを使用することによって得ることができる(これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。組織を次いで直接培養するか、または代わりに、心臓組織を凍結し、解凍し、次いで培養できる。組織は、コラゲナーゼ、トリプシンなどのプロテアーゼ酵素で消化され得る。心臓組織は、外植片として培養でき、これにより線維芽細胞様細胞およびカーディオスフェア形成細胞を含む細胞が外植片から増殖するようになる。いくつかの例では、外植片は、細胞外マトリックスの1つ以上の成分(例えば、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン、または他の細胞外マトリックスタンパク質)でコーティングされた培養容器で培養される。組織外植片は、カーディオスフェア形成細胞を収集する前に、約1週、2週、3週、4週またはそれより長い間培養できる。線維芽細胞様細胞の層は、カーディオスフェア形成細胞が現れる外植片から増殖し得る。カーディオスフェア形成細胞は、位相差顕微鏡下で、小さくて、丸い相の明るい細胞として現れる場合もある。カーディオスフェア形成細胞を含む、外植片を取り囲む細胞は、手作業または酵素消化によって収集できる。収集されたカーディオスフェア形成細胞は、カーディオスフェアの形成を促進する条件下で培養できる。いくつかの態様では、細胞は、緩衝培地、アミノ酸、栄養素、血清または血清代替物、これらに限定されないがEGFおよびbFGFなどの増殖因子、これに限定されないがカーディオトロフィンなどのサイトカイン、これらに限定されないがトロンビンなどの他のカーディオスフェア促進因子を含むカーディオスフェア増殖培地中で培養される。カーディオスフェア形成細胞は、約20,000~100,000細胞/mLなどの、カーディオスフェア形成に必要な適切な密度で播種できる。細胞は、ポリ-D-リジン、または細胞がディッシュの表面に付着するのを妨げる他の天然分子または合成分子でコーティングされた滅菌ディッシュ上で培養できる。カーディオスフェアは、カーディオスフェア形成細胞が播種されて約2~7日後、またはそれより後に自然に現れる可能性がある。
C)カーディオスフェア由来細胞(CDC)
【0032】
CDCは、例えば、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0315252号に記載される様式でカーディオスフェアを操作することによって生成される細胞の集団である。例えば、CDCは、フィブロネクチン、ヒドロゲル、ポリマー、ラミニン、血清、コラーゲン、ゼラチン、またはポリ-D-リジンなど、培養容器の固体表面への細胞の接着を促進する物質でコーティングされる固体表面上にカーディオスフェアをプレーティングすること、および接着性単層培養物としてこれらを拡張することによって、生成できる。CDCは、標準的な細胞培養方法に従って、2回以上継代されるなど、繰り返し継代できる。
D)エクソソーム
【0033】
エクソソームは、細胞の原形質膜の多小体またはエンドソーム関連領域を含む特定の細胞内経路を介して形成される小胞である。エクソソームは、直径が約20~150nmのサイズの範囲であり得る。ある場合には、それらは約1.1~1.2g/mLの特徴的な浮遊密度、および特徴的な脂質組成を有する。それらの脂質膜は、典型的にはコレステロールが豊富であり、スフィンゴミエリン、セラミド、脂質ラフトおよび露出したホスファチジルセリンを含む。エクソソームは、インテグリンおよび細胞接着分子などの特定のマーカータンパク質を発現するが、一般にリソソーム、ミトコンドリア、またはカベオラのマーカーは欠如している。いくつかの実施形態では、エクソソームは、これらに限定されないが、タンパク質、DNAおよびRNA(例えば、マイクロRNAおよび非コードRNA)などの、細胞由来成分を含む。いくつかの実施形態では、エクソソームは、エクソソームのレシピエントに関して同種、自己、異種、または同系の供給源から得られた細胞から得ることができる。
【0034】
ある種のRNA、例えば、マイクロRNA(miRNA)は、エクソソームによって運搬されることが公知である。miRNAは、多くの場合標的メッセンジャーRNA転写物(mRNA)上の相補的配列への結合を介して、転写後調節因子として機能し、これによって翻訳抑制、標的mRNAの分解および/または遺伝子サイレンシングを生じる。例えば、国際公開第2014/028493号に記載されるように、正常ヒト真皮線維芽細胞から単離されたエクソソームと比較して、miR146aはCDCにおいて250倍以上の発現の増加を呈し、miR210は約30倍アップレギュレートされる。
【0035】
カーディオスフェアおよびCDCから誘導されるエクソソームは、例えば国際公開第2014/028493号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。エクソソームを調製するための方法は、馴化培地中でカーディオスフェアまたはCDCを培養するステップと、馴化培地から細胞を単離するステップと、例えば逐次遠心分離によってエクソソームを精製するステップと、任意により、密度勾配、例えばスクロース密度勾配でエクソソームを浄化するステップ、を含んでよい。場合によっては、単離され精製されたエクソソームは、カーディオスフェアまたはCDCの成分などの、非エクソソーム成分を本質的に含まない。エクソソームは、0.01~1%のヒト血清アルブミンを含有する滅菌PBS緩衝液などの緩衝液中に再懸濁できる。エクソソームは、将来の使用のために凍結し保存してもよい。
【0036】
エクソソームは、これらに限定されないがExoSpin(商標) Exosome Purification Kit、Invitrogen(登録商標) Total Exosome Purification Kit、PureExo(登録商標) Exosome Isolation Kit、ExoCap(商標) Exosome Isolation Kitなどの市販のキットを用いて調製できる。幹細胞からエクソソームを単離するための方法は、例えば、Tanら、Journal of Extracellular Vesicles,2:22614(2013);Onoら、Sci Signal,7(332):ra63(2014)、および米国特許出願第2012/0093885号、および同第2014/0004601号に見出される。カーディオスフェア由来細胞からエクソソームを単離するための方法は、例えば、Ibrahimら、Stem Cell Reports,2:606-619(2014)に見出される。収集されたエクソソームは、当該分野で公知の方法を用いて濃縮および/または精製できる。具体的な方法としては、超遠心分離、密度勾配、HPLC、親和性に基づく基材への付着、またはサイズ排除をベースにしたろ過が挙げられる。
【0037】
例えば分画超遠心分離は、分泌されたエクソソームを培養細胞の上清から単離する主要な技術となっている。このアプローチは、それらの比較的低い浮遊密度を利用することにより、非膜性粒子からのエクソソームの分離を可能にする。サイズ排除は、最大で1,000nmのより大きい直径を有する、生化学的に類似しているが生物物理的には異なるマイクロベシクルからのエクソソームの分離を可能にする。浮遊速度の差はさらに、異なるサイズのエクソソームの分離を可能にする。一般に、エクソソームのサイズは、40~100nmのサイズを含む、30~200nmの範囲の直径を有する。さらなる精製は、目的の特定のエクソソームの特定の性質に依存し得る。これは、例えば、原形質外または外向きの特異的小胞を選択するために、目的のタンパク質との免疫吸着の使用を含む。
【0038】
現在の方法、例えば分画遠心分離、不連続密度勾配、免疫親和性、限外ろ過および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の中で、分画超遠心分離は、エクソソームの単離に最も一般的に使用される。この技術は、2000xgから10,000xgに増加する遠心力を利用して100,000xgでのエクソソームペレットから中程度および大サイズの粒子ならびに細胞破片を分離する。遠心分離のみで馴化培地からのエクソソームのかなりの分離/収集が可能であるが、それは一般的な汚染物質である様々なタンパク質凝集体、遺伝子材料、培地からの微粒子および細胞破片を除去するには不十分である。向上したエクソソーム精製の特異性は、限外ろ過と組み合わせて逐次遠心分離、またはスクロース密度勾配における平衡密度勾配遠心分離を展開して、より高い純度のエクソソーム調製物(浮上密度1.1~1.2g/mL)を提供するか、または調製における別個の糖クッションの適用をもたらすことができる。
【0039】
重要なことに、限外ろ過は、これらの生物活性を損なうことなくエクソソームを精製するために使用できる。100kDaの分子量カットオフ(MWCO)など異なる細孔サイズを有する膜およびより小さい粒子を除去するためのゲルろ過は、非中性pHまたは非生理学的塩濃度の使用を避けるために使用されてきた。現在利用可能なタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)システムは拡張可能であり(>10,000Lまで)、エクソソーム分画を精製するだけでなく濃縮することを可能にし、かつこのようなアプローチは分画遠心分離よりも所要時間が短い。HPLCもまた、エクソソームを均一な粒子に精製しかつ調製物が生理学的pHおよび塩濃度で維持されるのでそれらの生物活性を保持するために用いられる。
【0040】
他の化学的方法は、沈殿技術に関するエクソソームの差異的溶解性、体積排除ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))への添加、場合によっては遠心分離またはろ過のさらなるラウンドの組み合わせを利用する。例えば、沈殿試薬であるExoQuick(登録商標)を馴化細胞培地に加えて、エクソソームの集団を急速に、かつ迅速に沈殿させることができるが、この技術により調製されたペレットを再懸濁することは困難であり得る。フローフィールドフロー分画(FlFFF)は溶離に基づく技術であり、巨大分子(例えば、タンパク質)およびナノ~マイクロサイズの粒子(例えば、オルガネラおよび細胞)を分離し特徴付けるために使用され、これは培養培地からエクソソームを分画するのに上手く使用されてきた。
【0041】
一般的な生化学的特徴および生物物理学的特徴に依存するこれらの技術以外に、目的の特定のエクソソームを単離するために集中的な技術を適用できる。これは、ある種のエクソソーム関連抗原を認識する抗体免疫親和性に依存することを含む。前述のように、エクソソームは膜の表面で膜結合受容体の細胞外ドメインをさらに発現する。これは、共通抗原プロフィールに基づいて、エクソソームをそれらの親細胞起源との関連して単離し分離するための絶好の機会を提供する。磁気ビーズ、クロマトグラフィーマトリックス、プレートまたはマイクロ流体デバイスへのコンジュゲーションは、目的の親細胞または関連する細胞調節状態からのそれらの産生に関連し得るので、目的の特異的なエクソソーム集団の単離を可能にする。他の親和性捕獲方法は、エクソソーム表面上の特異的な糖残基に結合するレクチンを使用する。
E)実施例
【0042】
本発明は、更に、以下の非限定例について記載する。
実施例1:CDC培養
【0043】
CDCを、米国特許出願公開第2012/0315252号に記載されるように調製した。この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
簡潔に言えば、心臓生検材料を小片に細かく刻んで、コラゲナーゼで短時間消化した。外植片を次に、20mg/mLのフィブロネクチンコーティングディッシュ上で培養した。間質様の扁平細胞および位相が鮮明な円形細胞が、組織断片から自然発生的に増殖し、2~3週間でコンフルエントに達した。これらの細胞を、0.25%トリプシンを用いて採取し、20mg/mLのポリ-d-リジンで懸濁培養して自己凝集型カーディオスフェアを形成させた。CDCを、付着単層培養物としてフィブロネクチンコーティングフラスコにカーディオスフェアをプレーティングし拡張することによって得た。すべての培養物を、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および0.1mLの2-メルカプトエタノールを補充したIMDM塩基性培地を用いて、37℃にて5%O、5%COで維持した。CDCを、フィブロネクチンコーティングフラスコで100%コンフルエントに増殖させ、5代継代した。
実施例2:CDCからのエクソソームの単離
【0045】
CDCが所望のコンフルエントに達したとき、フラスコをPBSで3回洗浄した。CDCを無血清培地(IMDM)で処理し、15日間37℃にて5%O、5%COでインキュベートした。15日後、馴化培地を225mLのBD Falconポリプロピレン円錐管(BD352075-Blue Top)に回収し、4℃で20分間2,000rpmで遠心分離して細胞および破片を除去した(ペレットを乱さないように注意した)。馴化培地を0.45μm膜フィルタに通した。馴化培地を、遠心フィルタを用いて濃縮した。3KDa Centricon Plus-70遠心フィルタを10~25mLの分子級水で予めすすぎ、18℃にて5分間3220gで遠心分離した。フィルタをすすいだ後、すべての残りの水を、フィルタに触れずに慎重に除去した。15mLの馴化培地をフィルタに添加し、18℃にて45分間3220gで遠心分離した。最初のスピンの後、残りの培地をピペッティングにより混合し、次いで所望の濃度に達するまで再びスピンした。最終サンプルを次いで0.22μmシリンジフィルタに通した。25μLの濃縮馴化培地を、Nanosightを用いる粒子計数のために975μLのPBS中に希釈した。別の100μLの濃縮馴化培地を用いてタンパク質濃度を測定した。タンパク質を、DCタンパク質アッセイを用いて定量した。場合によっては、過去のデータを用いて、遠心分離(UFC)サンプルによる限外ろ過におけるタンパク質の濃度を計算した。濃縮馴化培地を、直ちに使用したか、または-80℃で保存した。
実施例3:25%ポリエチレングリコール(PEG)によるエクソソーム沈殿
【0046】
適切な容量の25%PEGを、ろ過した濃縮馴化培地に添加した。サンプルを、オービタルシェーカー上で12~16時間4℃で培養した。インキュベーションが完了したら、サンプルを4℃にて30分間1500gで遠心分離した。ペレットを破壊することなく上清を注意深く除去した。ペレットを所望の容量の無血清培地中に再懸濁し、粒子を数えるためにサンプリングした。
実施例3A:CDC-EV(10KDa法および1000KDa法)MSC-EV;Newt-EV
A)10KDaおよび1000KDa
【0047】
CDC-EV(10KDaまたは1000KDa)原薬を、EV含有CDC馴化培地(CM)を10KDaまたは1000KDaの細孔サイズのフィルタを通してろ過した後に得る。分泌されたEVおよび濃縮されたCMからなる最終産物を、PlasmaLyte A中に配合し、凍結保存する。凍結された最終産物は、解凍後に直接結膜下注射または局所送達のためにすぐに使える(ready to use)。
-濃度:10KDa法では2mg/mL、1000KDa法では0.5mg/mL。
-粒子濃度:10KDa法では1.0×1011粒子/ml、1000KDa法では5.0×1010粒子/ml。
B)MSC-Ev
【0048】
ヒト骨髄間葉系幹細胞由来細胞外小胞(MSC-EV)を、CDC-EVの産生と同様のプロセスに従い、10KDaの細孔サイズフィルタを通してEV含有MSC CMをろ過した後に得る。MSC-EVは、規定された無血清条件下で培養されたヒトMSCから得られる非細胞性の、滅菌ろ過済み産物である。分泌されたEVおよび濃縮されたCMからなる最終産物を、PlasmaLyte A中に配合し、凍結保存する。凍結された最終産物は、解凍後に直接結膜下注射のために「すぐに使える」。
C)Newt-Ev
【0049】
newt A1細胞系に由来する細胞外小胞(Newt-EV)を、CDC-EVの産生と同様のプロセスに従い、EV含有A1細胞株CMを10KDaの細孔サイズフィルタを通してろ過した後に得る。Newt-EVは、規定された無血清条件下で培養されたnewt A1細胞から得られる、非細胞性の、滅菌ろ過された産物である。分泌されたEVおよび濃縮されたCMからなる最終産物を、PlasmaLyte A中に配合し、凍結保存する。凍結された最終産物は、解凍後に直接結膜下注射のためにすぐに使える。
実施例4:エクソソーム標識
【0050】
エクソソームサンプルの一部を、超遠心分離を用いてさらに単離した。馴化培地を濃縮後、エクソソームを特定の希釈でDiR親油性色素で標識した。サンプルを37℃のインキュベーターに30分間置いた。サンプルをPlasmalyte約3.5mL中に再懸濁し、超遠心分離管(11×60mm管)中に充填した。サンプルを遠心分離前に秤量して、すべての重量が同等であることを確かめた。サンプルを70分間110,000g(Beckman Coulter SW 60Ti Rotorを用いて39,300rpm)で回転させた。サンプルの回転終了後、上清を各チューブから取り出し、廃棄した。残りのペレットをボルテックスにより再懸濁し、1mLのPlasmalyte中で短時間超音波処理した。その後、2.5mLのPlasmalyteを加え、サンプルをボルテックスし、再び超音波処理した。サンプルを、さらに70分間110,000gで2回目の回転をさせた。2回目の回転の後、残りの上清を遊離色素媒体として保存した。サンプルを1mLのPlasmalyte中にボルテックスおよび短時間超音波処理することによってもう一度再懸濁し、続いて2.5mLのPlasmalyte中で2ラウンド目の再懸濁を行った。小サンプルを使用して、Nanosightで粒子数を測定した。粒子数を計算したら、サンプルを約2e10粒子/mLに正規化した。
実施例5:生体内分布
【0051】
エクソソームを、記載の希釈度で蛍光色素(DiR;1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’-テトラメチルインドールトリカルボシアニンヨウ化物)で蛍光標識した。PEG沈殿プロトコル(実施例3参照)またはUFCプロトコルを用いて単離したDiR標識CDC-エクソソームを、6匹のSCIDマウスの背部に皮下注射した(3匹のマウスにPEG単離エクソソームを注射し、3匹のマウスにUFC単離エクソソームを注射した)。投与前に、直径5mmの穿刺を用いて、マウスの背部に2つの創傷を生じさせた。PEGまたはUFCエクソソームを左の創傷に皮下注射し、PBSを右の創傷に注射した。図1に示すように、創傷の周りの周辺領域へのエクソソームの注入は、投与24時間後にIVISバイオイメージャでモニターするとDiRシグナルを示した。
【0052】
図2A図2Bに示すように、各マウスの内臓のex vivo画像化は蛍光を示さず、DiR陽性シグナルは皮膚においてのみ観察された。
実施例6:実験設計(第1の実験)
【0053】
36匹の雌性Balb/cマウスを、馴化後にそれぞれ12匹の動物の3つの処置群に無作為化した。マウスを、電気シェーバーおよび脱毛クリームを用いて放射線曝露の2日前(-2日目)に全背部の除毛を行うことにより、照射のために準備した。皮膚炎を、0~2日目および5~7日目に与えられた6×10Gy画分として与えられた電離放射線によって誘発した。総蓄積線量は60Gyであった。0~2日目および5~7日目に、マウスを、腹腔内注射によって与えられるキシラジン(5mg/kg)およびケタミン(100mg/kg)を用いて麻酔した。マウスを4mmのポリメチルメタクリレートプレート上に置き、2本の27G針を用いて照射中に背部皮膚を固定した。その基部から切り取られた窓部を含む鉛遮蔽物を動物の上に置き、約2cm×4cmの大きさの皮膚領域が照射のために露出されたままになるようにした。放射線を、30cmの焦点距離で160kVp(15ma)X線源によって生成し、3.2Gy/分の速度で0.35mmCuろ過システムにより硬化した。
【0054】
処置のために、すべての動物を、照射領域の直下に放出されその領域を最大限に網羅するように、0.1mL容量の注射剤の2回の皮下投与により、投薬した。各線量を、図3に例解するように、放射線/皮膚炎領域外に始まり、放射線曝露領域下を通り抜けて投与する、2つの入射部位、すなわち尾部および吻側部を用いて送達し、この領域全体が均一かつ完全に網羅されるようにした。各動物に新しい針を使用した。
【0055】
第1群のマウスに、エクソソームの各投与量と一致するようにビヒクルを投与した。第2群の動物に、各放射線照射日(第0日~第2日および第5日~第7日)に、放射線曝露後1時間未満に低用量のエクソソーム(0.25mg/mL;合計300μg)を投与した。第3群のマウスに、7日目の放射線曝露1時間未満により高用量のエクソソーム(1.5mg/mL;合計1200μg)を投与し、22日目、29日目および36日目に追加用量を投与した。図4Aおよび表1Aは、第1の実験の試験設計の詳細を示す。
【表2】
【0056】
皮膚炎の重症度を、4日目に開始し40日目の試験完了まで隔日で継続して、盲検的様式で臨床的に評価した。皮膚炎を評価するために、スコアを各評価日に視覚的に割り当て、各動物のデジタル写真を撮影し、訓練を受けた2名の盲検観察者により確立された評点スケールに基づいて試験終了時に採点した。これらの2名のスコアの平均を、最終的な盲検スコアとした。スコア5を受けた動物はいずれも、スコアが5未満になるまで毎日2回(b.i.d)ブプレノルフィンを投与された。
【0057】
40日目に、すべての動物をCO窒息により安楽死させた。皮膚を、照射領域から採取した:4片を、組織学的カセット中の10%中性緩衝ホルマリン中に保存し、4片を急速凍結した。データを、GraphPad Prism6.07を用いて分析した。
実施例7:動物の同定、住居、および食事(第1の実験)
【0058】
試験開始時(-2日目)に平均体重(±SD)が17.18±1.24gである5~7週齢の雌Balb/cマウス(株コード028、Charles River Laboratories)を使用した。マウスを試験開始の少なくとも3日前に馴化した。この期間中、状態の悪い動物を除外するために、マウスを毎日観察した。
【0059】
試験を、70±5Fの温度および50±20%の相対湿度で、ろ過された空気が供給される動物室で行った。動物室を、1時間当たり少なくとも12~15回の換気を維持するように設定した。動物室は薄明のない12時間オンおよび12時間オフの明/暗サイクルのための自動タイマーを備えていた。
【0060】
マウスにLabdiet(登録商標)5053認定のPicoLabげっ歯類飼料を与えた。食物および水を、適宜与えた。
実施例8:エンドポイント(第1の実験)
【0061】
試験の様々な時点で群間差を比較するために、その日の平均臨床皮膚炎スコアを表す、各群から1匹のマウスを、26日目および28日目に安楽死させ、各群から2匹のマウスを、36日目の注射前に屠殺した。すべての生存動物を40日目にCO窒息により安楽死させた。すべてのエンドポイントについて、図4に例解するように、8片の皮膚を照射領域から収集し:4片を組織学的カセット中の10%中性緩衝ホルマリン中に保存し、4片を急速凍結した。
実施例9:体重変化の評価(第1の実験)
【0062】
マウスは、モデルに対して放射線抑制された体重増加の典型的なパターンを示した。各群の平均体重は、0日目~35日目に同様に進んだ。しかし、試験の36日目~40日目(後期回復)に、不対両側スチューデントT検定によって評価されたとおり、低用量エクソソーム(第2群)または高用量エクソソーム(第3群)のいずれかで処置した動物の平均体重は、それらの5日中4日で、ビヒクル対照動物(第1群)の平均体重よりも有意に多く、分割放射線曝露後の体重増加に対するエクソソームの効果を示唆する傾向を構成した。一日の平均体重変化率±SEMを図5に示し、矢印は第1群~第3群の放射線曝露の日、またはエクソソーム(第2群~第3群)またはビヒクル(第1群)を投与した日を示し、不対両側スチューデントのt検定を用いて、試験の30日目~40日目(後期回復)のそれぞれについて統計的に有意な差異を決定した。台形則変換を用いてAUCを計算して、試験の全過程にわたる累積一日平均体重変化を評価した。AUCデータを図6に示す。
実施例10:臨床皮膚炎スコアリング(第1の実験)
【0063】
4日目に開始しその後隔日(4日目~40日目)継続して、各動物を放射線誘発皮膚炎について評価し、その後試験完了時での皮膚炎の盲検スコアリングのために撮影した。皮膚炎を評価のために、動物を吸入麻酔剤で麻酔し、皮膚を撮影した。皮膚炎を、表2に定義されるように、正常の0~、重度の潰瘍(臨床スコアリング)の5の範囲の有効な写真スケールとの比較によって視覚的にスコア付けした。
【表3】
【0064】
スコア1~2は疾患の軽度の段階を表すと考えられ、スコア3~5は中等度~重度の皮膚炎を示すと考えられる。この予備臨床スコアリングの後、標準化技術を用いて各動物の皮膚の写真を撮った。動物がスコア5であった場合、または疼痛関連行動を示した場合、本試験に登録されたすべての動物は、0.05~0.1mg/kgBIDの同等のブプレノルフィン皮下注射(照射領域外)を24時間または疼痛もしくは潰瘍が解消されるまで受けた。
【0065】
実験終了時に、写真を、盲検採点のために、無作為に番号付けした。その後、2名の個々に訓練された観察者が、盲検様式で、ならびに以前に確立された参照写真および表2に定義されるスコア表に基づいて写真を等級付けした。各写真について、実際の盲検スコアを、評価者のスコアの平均を用いて導出した。
【0066】
各評価日の平均盲検皮膚損傷スコアを図7および図7Aに示し、AUCを、図8に示すように、第1群~第3群間の皮膚炎の累積差を評価するために台形則を用いて計算した。第1群(ビヒクル対照)の動物は、モデルに典型的である皮膚炎および部分的回復のパターンを示した。放射線誘発皮膚炎の後期回復段階である30日目~40日目に、第3群(高用量エクソソーム)の動物は、不対両側スチューデントt検定によってテストされた各評価日の第1群(ビヒクル対照)の動物より統計学的に有意に低い平均皮膚炎スコアを示した。
【0067】
このデータは、高用量エクソソームが、指示通りに投与された場合、このモデルで分割放射線曝露後の皮膚炎の解消を改善するのに有効であることを示し、かつ高用量エクソソームが臨床現場において同様の有益な効果を促進し得ることを強く示唆する。
実施例11:日ごとの皮膚炎の重症度および処置の治療的効果(第1の実験)
【0068】
各評価日における皮膚炎の重症度の分析を、Mann-Whitney順位和分析を用いて行い、各分析日のビヒクル対照群に対し各処置群の盲検スコアを比較した。この分析結果を図9に示し、指示された日の第1群(ビヒクル対照)と比較して、緑色の陰影(30日目、32日目、34日目および36日目の第3群)は改善を示し、赤色の陰影(6日目、10日目および24日目の第2群)は損傷の悪化を示し、かつ太字は皮膚損傷スコアの有意差を示し、赤色の矢印は放射線曝露(各10Gy)を示し、明るい青色の矢印は低用量エクソソーム(第2群)の投与を示し、および濃い青色の矢印は高用量エクソソームの投与を示す(第3群)。観察が治療的に有意義であるとみなすことができるには、その前に、対照と比較して皮膚炎スコアの統計的に有意な改善が少なくとも2日間必要である。高用量エクソソームで処置した動物(第3群)は、評価30日目に開始して引き続き36日目まで、第1群(ビヒクル対照)と比較して有意に改善された皮膚炎スコアの傾向を表し、傾向は4日連続し、エクソソーム処置が分割放射線曝露後の皮膚炎の解消において治療上有意な改善をもたらしたことを示す。低用量エクソソームで処置した動物(第2群)では、間隔をあけた3つの試験日(6日目、10日目および24日目)に皮膚炎を憎悪させた。
実施例12:重度の皮膚炎の持続時間(第1の実験)
【0069】
2より大きい皮膚炎スコアは、重度の皮膚炎(SD)とみなされる。全試験過程において分割放射線により誘発されたSDの持続時間を処置群間で比較するために、表3に示すとおり、各動物が>2対≦2の平均2の平均SDスコアを示した総日数を、Fischer’s Exact試験を用いて比較した。
【表4】
実施例13:日毎の重度の皮膚炎を有する動物の割合(第1の実験)
【0070】
各評価日で重度の皮膚炎(スコア>2)を有する各群の動物の割合を図10に示す。この評価を用いて、試験の過程で様々な治療が、分割放射線によって誘発された皮膚炎の病理に対し最大の影響を及ぼす時を確認する。低用量エクソソームで処置した動物(第2群)については、図10での赤色陰影で示されるように、より高い比率の動物が、試験14日目および24日目~30日目にビヒクル対照(第1群)と比較して重度の皮膚炎を表した。高用量エクソソームで処置した動物(第3群)については、図10での緑色陰影で示されるように、より低い比率の動物が、16日目、および24日目、および26日目にビヒクル対照(第1群)と比較して重度の皮膚炎を表した。
第1の実験からの結論
【0071】
試験の36日目~40日目(後期回復)から、低用量(0.25mg/mL)または高用量(1.5mg/mL)のCDC-EVで処置した動物の平均体重は、これらの日の5日中4日のビヒクル対照マウスの平均体重よりも有意に重かった。このことは、CDC-EVが分割放射線曝露後の体重増加を強めたことを示している。
【0072】
試験の30日目~40日目(後期回復)から、高用量(1.5mg/mL)のCDC-EVで処置したマウスは、ビヒクル処置マウスよりも統計的に有意に低い平均皮膚炎スコアを示し、高用量CDC-EVが分割放射線曝露後の皮膚炎の解消の改善したことを示す。
【0073】
順位和分析は、高用量CDC-EVで処置されたマウスが、評価30日目に始まり引き続き36日目までビヒクル対照と比較して有意に改善された皮膚炎スコアの傾向を表したことを見出し、傾向は4日連続し、CDC-EV処置が分割放射線曝露後の皮膚炎の解消における治療上有意な改善をもたらしたことを示す。
【0074】
低用量CDC-EVで処置したマウスでは、より高い比率のマウスが、試験14日目および24~30日目のビヒクル対照と比較して重度の皮膚炎を呈した。高用量CDC-EVで処置したマウスでは、より低い比率のマウスが、16日目および24~26日目に重度の皮膚炎を呈した。
実施例14:実験設計(第2の実験)
【0075】
48匹の雌性Balb/cマウスを、馴化後にそれぞれ12匹の動物の4つの処置群に無作為化した。マウスを、電気シェーバーおよび脱毛クリームを用いて放射線2日前(-2日目)に全背部の除毛を行うことにより、照射のために準備した。皮膚炎を、0~2日目および5~7日目に与えられた6×10Gy画分として与えられた電離放射線によって誘発した。総蓄積線量は60Gyであった。0~2日目および5~7日目に、マウスを、腹腔内注射によって与えられるキシラジン(5mg/kg)およびケタミン(100mg/kg)を用いて麻酔した。マウスを次いで、4mmのポリメチルメタクリレートプレート上に置き、2本の27G針を用いて照射中に背部皮膚を固定した。その基部から切り取られた窓部を含む鉛遮蔽物を動物の上に置き、約2cm×4cmの大きさの皮膚領域が露出され皮膚が照射されるようにした。放射線を、30cmの焦点距離で160kVp(15ma)X線源によって生成し、3.2Gy/分の速度で0.35mmCuろ過システムにより硬化した。
【0076】
動物に、それぞれ、2×0.1mL容量のビヒクル(PlasmaLyte;第1群)、低用量試験品(CDC-EV、0.75mg/mL;第2群)、または高用量試験品(CDC-EV、1.5mg/mL;第3群)を皮下注射(sc)により、試験14日目に開始して、21日目、28日目、および35日目での追加投与を伴い、7日毎に(Q7D)投与した。第4群の動物には、21日目のみに1.5mg/mLの高用量CDC-EVを単回投与した。長い針を投薬に使用し、放射線曝露領域の外側に入れた。針を用いて2つの入射部位で始まる投薬を提供し、図3に例解するように、1つは尾部で1つは吻側で、各々が放射線/皮膚炎ゾーンの外側であり、放射線曝露領域下を通り抜けて投与し、この領域全体を均一かつ完全に網羅した。各動物に新しい針を使用した。
【0077】
皮膚炎の重症度を、4日目に開始し36日目に試験が完了するまで隔日で継続して、盲検様式で臨床的に評価した。皮膚炎を評価するために、スコアを各評価日に視覚的に割り当て、各動物のデジタル写真を撮影し、2名の盲検観察者により確立された評点スケールに基づいて試験終了時に採点した。これらの2つの平均スコアを分析のために考慮した。スコア5を与えられた動物は、スコアが5未満に低下するまで毎日2回(b.i.d)ブプレノルフィンを投与された。
【0078】
28日目および35日目に、各群の2匹の動物を屠殺し、血清をMicrotainer(商標)SST管を介して回収し、皮膚を以下に示すように採取した。40日目に、すべての残りの動物をCO窒息により安楽死させた。屠殺した各動物について、皮膚を照射領域から採取し、4片を組織片カセット中の10%中性緩衝ホルマリン(NBF)中に保存し、4片を急速凍結した。図11および表4は、第1の実験の試験設計の詳細を示す。
【表5】
実施例15:動物の識別、住居、および食事(第2の実験)
【0079】
試験開始時(-2日目)に平均体重(±SD)が16.83±1.23gである約6週齢の雌Balb/cマウス(Taconic Biosciences)を使用した。マウスを試験開始の少なくとも3日前に馴化した。この期間中、状態の悪い動物を除外するために、マウスを毎日観察した。
【0080】
試験を、70±5Fの温度および50±20%の相対湿度で、ろ過された空気が供給される動物室で行った。動物室を、1時間当たり少なくとも12~15回の換気を維持するように設定した。動物室は薄明のない12時間オンおよび12時間オフの明/暗サイクルのための自動タイマーを備えていた。
【0081】
マウスにLabdiet(登録商標)5053認定のPicoLabげっ歯類飼料を与えた。食物および水を、適宜与えた。
実施例16:エンドポイント(第2の実験)
【0082】
試験の様々な時点で群間差を比較するために、その日の平均臨床皮膚炎スコアを表す、各群から2匹のマウスを、28日目および35日目に安楽死させた。すべての生存動物を40日目にCO窒息により安楽死させた。すべてのエンドポイントについて、図4に例解するように、8片の皮膚を照射領域から収集し:4片を組織学的カセット中の10%中性緩衝ホルマリン中に保存し、4片を急速凍結した。
実施例17:体重変化の評価(第2の実験)
【0083】
マウスは、分割放射線誘発皮膚炎モデルで通常観察される体重変化の典型的なパターン;最初の約10~12日にわたる体重の最初の増加、続いて12~20日目に現れる放射線曝露による短期間(0~2日目および5~7日目)の体重減少、および最後に緩やかで安定した体重回復パターンおよび最終的な体重の増加、を示した。各群の体重変化の平均率は、試験0~40日目より同様に進んだ。毎日の平均体重変化率±SEMを図12に示す。
【0084】
ビヒクル処置動物と比較して、CDC-EV処置動物の累積体重変化に統計的有意差があるかどうかを決定するために、台形則変換を用いて曲線下面積(AUC)を決定した。統計的評価を、一元配置ANOVAおよびダネットの多重比較事後検定を用いて行った。AUCデータを、図13に示す。
実施例18:臨床皮膚炎スコアリング(第2の実験)
【0085】
実施例10に記載される同じ手順を第2の実験に用いた。
【0086】
各評価日の盲検平均皮膚損傷スコアを図14A図14Bに示す。ビヒクル対照動物は、20日目にピークを迎えその後モデルに典型的な部分回復が続く皮膚炎の増加パターンを示した。放射線誘発皮膚炎の回復段階において、14日目に開始して7日毎に高用量(1.5mg/mL;第3群)または低用量(0.75mg/mL;第2群)のCDC-EVで処置した動物は、不対両側スチューデントt検定によって試験した場合、いくつかの日でビヒクル処置動物よりも統計的に有意に低い平均皮膚炎スコアを示した。21日目に高用量(1.5mg/mL;第4群)のCDC-EVを単回投与された動物は、試験の任意の評価日で対照と比較して統計的に有意な改善された平均皮膚炎スコアを示さなかった。第1群~第4群間の皮膚炎の累積差を評価するために、図15に示すように、台形近似を用いてAUCを計算した。統計的評価を、一元配置ANOVAおよびダネットの多重比較事後検定によって試験した。低用量(0.75mg/mL;第2群)のCDC-EVの投与は、試験の全過程にわたって統計的に有意に改善された平均累積皮膚炎スコアをもたらした(4~40日目)。(平均差=2.531;差の95%CI=0.2207~4.842)。
【0087】
このデータは、示されたように投与された場合、CDC-EVが本モデルにおけるこの分割放射線誘発皮膚炎の解消を支援するのに有効であることを示し、CDC-EVが臨床現場において同様の有益な効果を促進し得ることを示唆する。
実施例19:日毎の皮膚炎の重症度および治療効果(第2の実験)
【0088】
群間の皮膚炎の重症度の差異をMann-Whitney順位和分析を用いて試験して、各処置群の盲検スコアを試験の各評価日のビヒクル対照群と比較した。この分析の結果を図16に示す。観察が治療的に有意義であるとみなすことができるには、その前に、対照と比較して皮膚炎スコアの統計的に有意な改善が少なくとも2日間必要である。低用量の0.75mg/mLのCDC-EVで処置した動物(第2群)は、評価28日目に開始して引き続き34日目まで連続6日間にわたりビヒクル対照(第1群)と比較して有意に改善された皮膚炎スコアを示し、試験のこの部分での皮膚炎の治療的に有意な改善を示す。14日目に開始して7日毎に高用量1.5mg/mLのCDC-EVで処置したマウス(第3群)は、試験の連続していない2日(22日目および26日目)に皮膚炎スコアにおいて統計的に有意な改善を示した。21日目での高用量のCDC-EV(第4群)の単回投与は、いずれの評価日にもビヒクル投与動物と比較して皮膚炎スコアの統計的に有意な改善をもたらさなかった。
【0089】
これらの結果は、この前臨床モデルに示されるように投与された場合の分割放射線誘発皮膚炎の解消を高めることにおける低用量CDC-EV(第2群)の治療有効性を示し、CDC-EVが、臨床現場で投与される分割放射線後の皮膚炎解消の反応速度論を同様に向上し得ることを示唆する。
実施例20:重度の皮膚炎の持続時間(第2の実験)
【0090】
2より大きい皮膚炎スコアは、重度の皮膚炎(SD)とみなされる。全試験過程において分割放射線により誘発されたSDの持続時間を処置群間で比較するために、表5および図17に示すとおり、各動物が>2対≦2の平均SDスコアを示した合計日数を、Fischer’s Exact試験を用いて比較した。
【表6】
【0091】
14日目に開始して7日毎に高用量1.5mg/mLCDC-EVの投与を受けた動物(第3群)は、同じスケジュールでビヒクルを投与された動物(評価日の36.67%)と比較して、重症皮膚炎の動物の数-日数(評価日の27.14%)において統計的に有意な減少を示した(p=0.0465)。
【0092】
これらのデータは、高用量CDC-EVがこの前臨床モデルで投与される場合、重度の皮膚炎の期間を緩和することを示し、CDC-EVが臨床現場で重度の皮膚炎の期間を同様に短縮する可能性があることを示唆する。
実施例21:日毎の重度の皮膚炎を有する動物の割合(第2の実験)
【0093】
分割放射線により誘発された皮膚炎の症状に対して処置が影響を及ぼす時期を決定するために、比較を、各処置群で重度の皮膚炎(スコア>2)を呈する動物の割合を各評価日にビヒクル投与動物と比較して行い、図18に示す。14日目に開始して7日毎に低用量CDC-EV(0.75mg/mL;第2群)で処置された群では、より少ない動物が、評価16日目、および試験24~30日目のビヒクル処置第1群と比較して重篤な皮膚炎を呈した。同様に、14日目に開始して7日毎に高用量CDC-EV(1.5mg/mL;第3群)で処置された群では、より少ない動物が、ビヒクル対照と比較して、試験16日目および22~30日目で重篤な皮膚炎を呈した。21日目に高用量CDC-EV(1.5mg/mL;第4群)を単回処置された群では、より少ない動物が、ビヒクル投与群と比較して24~28日で重篤な皮膚炎を呈したが、この群は、30~34日目でのビヒクル投与群と比較して重度の皮膚炎を有するもう一匹の動物を含んだ。
【0094】
これらの結果は、CDC-EVによる処置が、このモデルにおけるビヒクルによる処置と比較して、回復段階での複数の連続した日にわたって、分割放射線誘発性の重度皮膚炎の有病率を低下させることを示す。
第2の実験からの結論
【0095】
低用量CDC-EV(0.75mg/mL)による処置は、10Gyの6分割の分割放射線曝露後のビヒクル処置対照マウスと比較して全体的な平均皮膚炎スコアにおいて統計的に有意な改善をもたらした。
【0096】
試験26日目~34日(解消段階)から、低用量(0.75mg/mL)または高用量(1.5mg/mL)のCDC-EVで処置されたマウスは、ビヒクル処置マウスと比較して統計的に有意な平均皮膚炎スコアの低下を呈し、CDC-EVが分割放射線曝露後の皮膚炎の解消を改善したことを示す。
【0097】
低用量(0.75mg/mL)のCDC-EVで処置したマウスは、評価28日目に開始して引き続き34日目まで、解消段階で連続6日間にわたりビヒクル処置対照マウスと比較して平均皮膚炎スコアの統計的に有意な減少を呈した。このことは、CDC-EV処置が、分割放射線曝露後の皮膚炎の解消において治療上有意な改善をもたらしたことを示す。
【0098】
高用量(1.5mg/mL)のCDC-EVを投与されたマウスは、ビヒクル処置マウスと比較して、臨床的に重度の皮膚炎の動物の数-日数の統計的に有意な減少(評価日の27.14%対36.67%)を呈した。このことは、CDC-EVが、臨床的に重度の皮膚炎の期間を短縮したことを示す。
【0099】
低用量(0.75mg/mL)または高用量(1.5mg/mL)CDC-EVで処置されたより少ない数のマウスが、ビヒクル処置マウスと比較して、複数の連続評価日にわたって臨床的に重度の皮膚炎を呈した。このことは、解消段階で、CDC-EVによる処置が、ビヒクル処置と比較して、分割放射線によって誘発された臨床的に重度の皮膚炎の有病率を減少させたことを示す。
実施例22:組織病理学的評価
【0100】
病理組織学顕微鏡検査を、表6に示す試験設計に従って実施した。ここでは第1群~第3群のマウスを剖検し、照射領域から皮膚を採取した:4片を10%中性緩衝ホルマリン中に保存した;32個のスライドを切断し、ヘマトキシリン-エオシン染色(H&E)で染色し、32個をマッソントリクローム染色(Trichrome)で染色した。
【表7】
【0101】
皮膚のH&EおよびTrichromeで染色されたスライドを調べ、組織学的所見を表皮肥厚、表皮壊死/潰瘍、炎症、附属器の萎縮/濾胞拡張、および真皮/皮下線維症として記録した。所見を、0(正常)、1(最小)、2(軽度)、3(中等度)または4(重度)として等級付けた。
【0102】
発生率データを表7に示す。
【表8】
【0103】
個々の動物データを表8に示す。
【表9】
【0104】
皮膚サンプルは、比較的損傷のない皮膚の領域および損傷した皮膚の領域を呈した。すべてのマウスで損傷領域は、表皮細胞層の増大に起因する表皮の肥厚を特徴とする中等度~重度の表皮肥厚を呈した。高い頻度で、表皮肥厚に伴う最小~軽度の不全角化症が存在した。表皮壊死および/または潰瘍の病巣が数匹のマウスのサンプルに存在した。これらの病巣は、好酸球性で膨潤性のまたは「バルーン状」のケラチノサイトまたは潰瘍縁に存在する壊死ケラチノサイトを伴うケラチノサイトの限局的喪失(focal loss)(潰瘍形成)によって特徴付けられた。多形核および単核炎症細胞の浸潤を特徴とする最小~軽度の炎症は、すべての動物からの切片に存在した。濾胞壊死および拡張を伴う中等度~重度の附属器の萎縮が、すべての動物に存在した。付属器の萎縮は、皮脂腺の数の減少または不在、毛包数の減少、皮脂腺および濾胞上皮細胞の壊死、ならびに毛包の拡大によって特徴付けられた。中等度~重症の真皮/皮下線維症が、すべてのマウスからの切片に存在した。線維化は、厚くなる真皮コラーゲンの層および増加した真皮コラーゲンの密度によって特徴付けられた。線維症の重症度が増すにつれて、コラーゲンのバンド(線維症)が皮下脂肪層にまで広がった。
【0105】
類似の特徴を有する所見が全群に存在した。しかし、低用量CDC-EV第2群(0.25mg/mL)では明瞭でなかったが、高用量CDC-EV第3群(1.5mg/mL)では明らかであった、表皮肥厚、炎症および付属器の萎縮の重症度におけるCDC-EV用量関連の減少があった。さらに、高用量CDC-EV第3群(1.5mg/mL)で表皮壊死/潰瘍の発生および重症度の両方における低下があった。
【0106】
中等度~重度の表皮肥厚、最小~軽度の炎症、中等度~重度の付属器の萎縮/濾胞拡張、および中等度~重度の真皮/皮下線維症の所見が、すべてのマウスからのサンプルに存在し、多くは最小~中等度の表皮壊死および/または潰瘍の病巣を呈した。しかし、低用量CDC-EV第2群(0.25mg/mL)では明瞭でなかったが、高用量CDC-EV第3群(1.5mg/mL)では明らかであった、表皮肥厚、炎症および付属器の萎縮の重症度におけるCDC-EV用量関連の減少があった。さらに、高用量CDC-EV第3群(1.5mg/mL)で表皮壊死/潰瘍の発生および重症度の両方における低下があった。
図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18