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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】コイン送出装置およびコイン処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 1/00 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
G07D1/00 Z GBL
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020090503
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021060960
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019184327
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116987
【氏名又は名称】旭精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅田 正義
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-41396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインを保持する保持部を上面に有するディスクと、複数の前記コインを格納する貯留容器と、前記保持部に保持されている前記コインの側面を押圧して前記コインを前記ディスクの外周方向に移動させる支持片と、を備え、前記貯留容器内の前記コインを前記保持部に保持し、前記ディスクを回転させて前記ディスクの上方側に配置された受け渡し口から、前記支持片によって前記ディスクの外周方向に移動する前記コインを次工程に向けて一枚ずつ送出し、
前記ディスクが水平方向に対して傾斜して配置されており、
前記貯留容器が前記ディスクの下方側に配置されているコイン送出装置において、
前記保持部は、保持する前記コインが1枚である場合は、第1の直径以上の前記コインだけを前記受け渡し口から前記次工程に向けて送出し、前記第1の直径未満の前記コインを前記受け渡し口から前記次工程に向けて送出せず、保持する前記コインが同時に2枚である場合は、保持する2枚の前記コインを前記受け渡し口から前記次工程に向けて送出しない第1の保持部と、前記第1の保持部により保持される前記コインのうち、最大の直径よりも小さい第2の直径を超える前記コインを保持せず、第2の直径以下の前記コインを1枚保持する場合は、前記受け渡し口から前記次工程に向けて送出し、前記第2の直径以下の前記コインを同時に2枚保持しない第2の保持部と、を有することを特徴とするコイン送出装置。
【請求項2】
前記第1の保持部は、前記ディスクの回転方向の上流側に、前記コインの側面と当接し、前記コインを前記回転方向に搬送する第1の上流側凸部と、前記第1の上流側凸部の前記回転方向の下流側に配置され前記コインを載置する第1の保持ベースと、を有し、
前記第2の保持部は、前記回転方向の上流側に、前記コインの側面と当接し、前記コインを前記回転方向に搬送する第2の上流側凸部と、前記第2の上流側凸部の前記回転方向の下流側に配置され前記コインを載置する第2の保持ベースと、を有することを特徴とする請求項1に記載のコイン送出装置。
【請求項3】
前記第1の直径よりも小径の前記コインが前記第1の保持部に保持された場合に、前記第1の保持部から前記次工程に向けての前記コインの送出を阻止する阻止部を、有することを特徴とする請求項2に記載のコイン送出装置。
【請求項4】
前記第2の上流側凸部の前記コインの側面に当接する最も前記ディスクの外周に近い部分が、前記第1の上流側凸部の前記コインの側面に当接する最も前記ディスクの外周に近い位置よりも前記ディスクの外周に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のコイン送出装置。
【請求項5】
前記第1の保持部が、前記第1の直径よりも小径の前記コインを保持した場合に、前記ディスクの回転に伴って前記受け渡し口との対向位置に移動するまでの間に、保持した前記コインを滑り落とすことを特徴とする請求項2に記載のコイン送出装置。
【請求項6】
前記第1の上流側凸部は、前記コインの側面に当接して前記コインを支える支持部と、前記支持部と前記ディスクの外周の間に配置され、前記第1の保持ベースから前記回転方向の上流方向に向かい高くなる斜面部を有し、
前記第1の直径未満の前記コインを前記斜面部により前記貯留容器に落とすことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のコイン送出装置。
【請求項7】
前記支持片は、前記第1の保持部に備わる第1支持片と、前記第2の保持部に備わる第2支持片を含み、
前記ディスクの外周の外側に前記コインの側面と当接し、前記コインの搬送を案内する案内面を有し、
前記第1の保持部は、前記第1の保持ベースの前記回転方向の下流側に、前記コインの側面に当接する第1の下流側凸部と、前記第1の上流側凸部と前記第1の下流側凸部の間に前記コインを前記外周の方向へ移動させる前記第1支持片とを有し、前記コインは、前記第1の上流側凸部、前記第1の下流側凸部と前記案内面によって少なくとも3方が囲まれた状態で搬送され、前記第1支持片によって前記受け渡し口の方向に移動させられ、
前記第2の保持部は、前記第2の保持ベースの前記回転方向の下流側に、前記コインの側面に当接する第2の下流側凸部と、前記第2の上流側凸部と前記第2の下流側凸部の間に前記コインを前記外周の方向へ移動させる前記第2支持片とを有し、前記コインは、前記第2の上流側凸部、前記第2の下流側凸部と前記案内面によって少なくとも3方が囲まれた状態で搬送され、前記第2支持片によって前記受け渡し口の方向に移動させられることを特徴とする請求項6に記載のコイン送出装置。
【請求項8】
前記第1支持片は、前記コインの側面に当接し、前記コインを押動する押動部と、前記第1支持片の中央部から前記回転方向の上流側の一部に配置され、前記ディスクの中央に向かい前記第1支持片の厚み方向に厚くなる支持片斜面部とを有し、前記第1の直径未満の前記コインを前記支持片斜面部によって前記貯留容器に落とすことを特徴とする請求項7に記載のコイン送出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のコイン送出装置と、
前記コインを前記コイン送出装置から受け取り、前記コインの金種を識別する識別部と、
前記コインの金種に対応するコインホッパを備え、前記コインホッパに前記コインを収納する収納部と、を有し、
前記識別部で識別した金種に対応する前記コインホッパに前記コインを格納することを特徴とするコイン処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コインを一枚ずつ送り出すコイン送出装置、およびコイン送出装置を備えるコイン処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、国家によって発行する流通貨幣は、複数の金種のコインを含む。コインは金種毎に直径、厚み、材質、デザインを変えているので、誰にでも容易に金種が識別できる。金種毎に異なる特徴を有するので、機械により金種を識別することも可能である。しかし、コインが2枚重なる等の例外的な状態下では誤った識別をすることが考えられる。そのため、コインを一枚ずつ分けて識別装置に搬送し、金種を識別する必要がある。
【0003】
例えば、貯留容器内のコインを一枚ずつ送り出す装置として、特開2011-165003号公報のコイン送出装置が知られている。
【0004】
この様なコイン送出装置は、2段階の工程を備える。まず、複数枚のコインを1枚ずつ送り出す工程、次に、1枚ずつ搬送されるコインの金種を識別する工程である。また、コイン送出装置の後段に、識別されたコインを金種毎に分けて貯留する工程を備えれば、コイン処理装置になる。
【0005】
このコイン送出装置は、傾斜して配置したディスクを備える。このディスクの下方には、コインを収納する貯留容器が配置されている。ディスクを回転させ、貯留容器内にある複数のコインを、一枚ずつ拾い上げる。ディスクには、コインが1枚入る凹部が設けられている。回転するディスクの凹部が貯留容器内を通ることで、貯留容器内に堆積しているコインが、凹部に1枚だけ入り、搬送される。ディスクの上方には、次工程へコインを受け渡す機構が備わる。そのコインが、ディスクの上方に搬送され、次工程に受け渡される。次工程では、そのコインの金種を識別する。コインのサイズや材質などの特性を検出する複数のセンサーを用いて、コインの金種の識別が行われる。このように、コイン送出装置は、複数のコインから1枚のコインを取り出し、次工程へコインを一枚ずつ送り出し、そのコインの金種を識別する。
【0006】
また、コイン処理装置では、識別後に、さらに次工程へ受け渡すことができる。次工程では、コインはベルトによって搬送される。この工程では、ベルトによる搬送路の途中に、金種毎にスライドが配置され、それぞれのスライドは金種毎に配置されたコインホッパへ接続されている。金種を識別されたコインは、搬送中に対応する金種のスライドへ落とされる。スライドに落とされたコインは、金種毎にコインホッパの貯留容器まで滑り降り、そこに格納される。
【0007】
コインホッパは、所望の枚数のコインを排出することができる。コイン処理装置の例として、自動釣銭機などがある。自動釣銭機は、釣銭の額に応じて、排出するコインの金種および枚数を演算し、各金種に対応するコインホッパを制御して、必要なコインを排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-165003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
国家によって使用するコインのサイズは様々である。多くの国家では、流通するコインの最大直径が最小直径の2倍よりも小さい。この場合、ディスクには、最大直径よりもわずかに大きい凹部を設ければ良い。この凹部には、最小直径のコインが2枚入ることは無いので、2枚同時に次工程に送られることも無い。
【0010】
しかし、流通するコインの最大直径が最小直径の2倍よりも大きい場合もある。この場合に、コインの最大直径に対応する凹部に最小直径のコインが2枚以上入ることが有り得る。次工程へ2枚同時に搬送された場合に、コインの金種の識別を誤る恐れがある。
【0011】
本発明は、コインの直径に影響を受けずに、コインを1枚ずつ好適に区分して搬送できるコイン送出装置、およびそのコイン送出装置を備えるコイン処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様のコイン送出装置は、コインを保持する保持部を上面に有するディスクと、複数の前記コインを格納する貯留容器と、前記保持部に保持されている前記コインの側面を押圧して前記コインを前記ディスクの外周方向に移動させる支持片と、を備え、前記貯留容器内の前記コインを前記保持部に保持し、前記ディスクを回転させて前記ディスクの上方側に配置された受け渡し口から、前記支持片によって前記ディスクの外周方向に移動する前記コインを次工程に向けて一枚ずつ送出し、前記ディスクが水平方向に対して傾斜して配置されており、前記貯留容器が前記ディスクの下方側に配置されているコイン送出装置において、前記保持部は、保持する前記コインが1枚である場合は、第1の直径以上の前記コインだけを前記受け渡し口から前記次工程に向けて送出し、前記第1の直径未満の前記コインを前記受け渡し口から前記次工程に向けて送出せず、保持する前記コインが同時に2枚である場合は、保持する2枚の前記コインを前記受け渡し口から前記次工程に向けて送出しない第1の保持部と、前記第1の保持部により保持される前記コインのうち、最大の直径よりも小さい第2の直径を超える前記コインを保持せず、第2の直径以下の前記コインを1枚保持する場合は、前記受け渡し口から前記次工程に向けて送出し、前記第2の直径以下の前記コインを同時に2枚保持しない第2の保持部と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の第1の態様のコイン処理装置は、上述のコイン送出装置と、前記コインを前記コイン送出装置から受け取り、前記コインの金種を識別する識別部と、前記コインの金種に対応するコインホッパを備え、前記コインホッパに前記コインを収納する収納部と、を有し、前記識別部で識別した金種に対応する前記コインホッパに前記コインを格納することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、ディスクの保持部における第1の保持部と第2の保持部とのうち、最大の直径のコインを保持する第1の保持部は、第1の直径以上のコインだけを、受け渡し口を通じて次工程に向けて送出する。第1の保持部が、第1の直径よりも小径のコインを2枚以上保持したとする。このような場合、第1の保持部は、保持した小径のコインを受け渡し口から次工程に向けて送出することなく、貯留容器内に戻すことが可能である。第1の直径以上のコインだけを第1の保持部から次工程に向けて送出する機能は、例えば、次のような構成によって実現可能である。即ち、第1の保持部から次工程に向けての小径のコインの送出を阻止する構成、第1の保持部をディスクの回転に伴って受け渡し口との対向位置に移動させるまでの間に小径のコインを第1の保持部から滑り落とす構成などである。これらの構成により、第1の保持部に保持した1枚または2枚以上のコインを次工程へコインを受け渡すことを防止できる。コインを一枚ずつ区分して好適に次工程へ送り出すことができる。また、貯留容器内からコインを一枚ずつ区分して送り出すことができるので、コインの金種を好適に識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、コイン送出装置の斜視図である。
図2図2は、コイン処理装置の概要を説明する図である。
図3図3は、コイン処理装置の主要部の斜視図である。
図4図4は、コイン送出装置のディスク部の斜視図である。
図5図5は、ディスク部の動作を説明する図である。
図6図6は、コインの受け渡しを説明する図である。
図7図7は、大径のコインを保持した場合の第1の例を説明する図である。
図8図8は、大径のコインを保持した場合の第2の例を説明する図である。
図9図9は、小径のコインを2枚以上保持した状態を説明する図である。
図10図10は、小径のコインを保持した場合の動作の第1の例を説明する図である。
図11図11は、小径のコインを保持した場合の動作の第2の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0017】
まず、コイン処理装置について、図2を用いて説明する。図2は、コイン処理装置の概要を説明する図である。一般に使用されているコインには、複数の金種が存在する。コインは、サイズ、材質、デザインなどの要素が金種毎に異なっている。コイン処理装置は、コインを識別して金種毎に分けて収納することができる。また、収納されたコインを、払出しなどに再利用している。
【0018】
例えば、コイン処理装置69の例としては、自動釣銭機、自動両替機等である。複数の金種のコインを混ぜた状態で投入されるコイン処理装置69は、一枚ずつコインを分け、分けられたコインの金種を識別し、識別したコインを金種毎に格納する。さらに、コイン処理装置69は、格納されているコインから、所望の金額に対応するコインを払出すことができる。
【0019】
コイン処理装置69は、大きく分けて3つの部分に分けられる。すなわち、投入されたコインを1枚ずつ区分して送り出す送出部37、コインの金種を識別する識別部38、コインを金種毎に分けて格納する収納部39である。コイン送出装置1は、送出部37を含み、識別部38等他の機能を含む構成でも良い。ここでは、コイン送出装置1として送出部37と識別部38を含む構成の装置として説明する。
【0020】
コイン投入口40へ入れられたコイン70は、コイン通路41を通り、貯留容器42へ格納される。コイン投入口40、コイン通路41、貯留容器42は、図2中破線で示されている。また、金種を分けずに複数のコイン70を貯留容器42へ入れることができる。
【0021】
ディスク2の下方側に貯留容器42が配置されている。貯留容器42には、ディスク2の外周に沿った形状の底部が形成されている。貯留容器42は、ディスク2の下側半分から三分の一程度を覆う。また、コインがディスク2側にもたれかかるように、ディスク2は斜めに配置されている。複数のコインがディスク2側にもたれかかり、ディスク2が回転することで、コインが後述の凹部に入り込んで搬送される。
【0022】
ディスク2は、コイン70を保持することができる。ディスク2には、ディスク厚み方向に窪む凹部が設けられ、コイン70はこの凹部内に保持される。凹部の底面は平坦である。凹部の内壁は、凹部の平坦な底面から突出する凸部(後述する第1アーム4、第2アーム5、第3アーム6、選別部13)の側壁によって形成され、ディスク2の外周側の領域で途切れている。凹部内に入り込んだコイン70の側面は、凹部の内壁(凸部の側壁)に当接する。ディスク2は、水平方向に対して斜めの姿勢をとるように配置される。コイン70をディスク2の凹部内に好適に入り込ませるために、ディスク2に傾斜を持たせているのである。傾斜角度としては、30度~80度程度を例示することができる。40度~50度がより好ましい。傾斜角度が小さいと不要なコイン70を凹部から滑り落とせなくなり、傾斜角度が大きいと凹部内にコインを入り込ませ難くなる。
【0023】
コイン70は、凹部の平坦な底面にコイン70の表面又は裏面を対向させる姿勢で、凹部に保持される。また、凹部の内壁は、ディスク2の外周側の領域で途切れており、この途切れている領域をコイン70が通り、次工程に渡される。ディスク2の外周の外側には、コインをディスク回転方向に案内する案内面が配置されている。コイン70は、コイン70の側面を凹部の内壁と案内面とに接触させた状態で、搬送される。
【0024】
ディスク2は、矢印で示されたディスク回転方向33の方向に回転することで、貯留容器42に格納されたコイン70を凹部によって一枚ずつ拾い上げることができる。ディスク2が水平方向に対して斜めに配置されているので、貯留容器42内のコイン70が、ディスク2のコイン70を保持するエリアである凹部に入り込む。コイン70は、ディスク2の底面と壁部と案内面とによって保持され、搬送される。
【0025】
送出部37の上部であり、識別部38の下部である位置においてコイン70が受け渡される。ディスク2によって上方に向けて搬送されたコイン70は、ディスク2から識別部38へ送り出される。ディスク2は、貯留容器42に格納された複数のコイン70を、一枚ずつ取り出して、次工程に渡すことができる。
【0026】
識別部38では、コイン送出装置1の基台の平坦な受取ベース(後述の図1の32)上に配置された受取ホイール27が、矢印で示される受取ホイール回転方向44方向に回転している。受取ホイール27は、ディスク2の回転と連動して回転している。識別部38から送り出されるコイン70は、側面を受取ホイール27に当接させ、押されて受取ベース上を移動する。識別部38は、前述の受取ベース上を移動するコイン70のサイズ、材質等の特徴をセンサーで検出し、不図示の制御部によってコイン70の金種を識別する。コイン70が一枚ずつ区分して搬送されるので、識別部38はコイン70の金種を好適に識別できる。コイン70は、おもて面又は裏面を前述の受取ベースに接触させ、且つ側面を案内路43に接触させた状態で、案内路43に沿って移動し、次工程の収納部39へ受け渡される。
【0027】
収納部39では、案内路43に連なる搬送路68が配置されている。この搬送路68に沿ってコイン70が搬送される。搬送路68に沿ってベルト46が配置されている。ベルト46には、搬送ピン47が等間隔で配置されている。搬送ピン47間に1枚のコイン70が入り、搬送ピン47に押されて搬送される。ベルト46は、無端ベルトであり、ディスク2および受取ホイール27と連動して、矢印で示されているベルト回転方向45の方向に回転する。収納部39は、ベルト46における搬送ピン47に区切られた領域に、コイン70を一枚ずつ保持して搬送することができる。
【0028】
搬送路68に沿って、第1スライド48、第2スライド50、第3スライド52、第4スライド54、第5スライド56、第6スライド58、第7スライド60、第8スライド62、第9スライド64が配置されている。これらのスライドは、予め決められた金種のコインホッパに接続されている。識別部38で識別されたコイン70は、対応する金種のスライドに落とされ、対応する金種のコインホッパに格納される。
【0029】
識別部38で識別されたコイン70は、何れかのスライドに落とされる。すなわち、第1スライド48は第1コインホッパ49に、第2スライド50は第2コインホッパ51に、第3スライド52は第3コインホッパ53に、第4スライド54は第4コインホッパ55に、第5スライド56は第5コインホッパ57に、第6スライド58は第6コインホッパ59に、第7スライド60は第7コインホッパ61に、第8スライド62は第8コインホッパ63に、第9スライド64は、回収容器65に、接続されている。
【0030】
回収容器65は、例えば、流通を抑制したい旧コインを再利用しないように回収するために用いられる。
【0031】
各コインホッパは、払出ベルト66に沿って配置されている。収納部39は、払出ベルト66を駆動することで、各コインホッパから排出されたコインを払出トレー67へ搬送できる。実施形態に係わるコイン処理装置69の収納部39は、8つの異なる金種に対応することができる。
【0032】
コイン投入口40から入ったコイン70は、一枚ずつ分けられて搬送される。コイン70は、金種が識別され、識別結果に対応するコインホッパへ格納される。また、各コインホッパは、必要な枚数のコインを排出することで、払出トレー67へ払出できる。この様に、投入されたコイン70を、払出用に再利用できる。
【0033】
次にコイン送出装置1について説明する。図1は、コイン送出装置の斜視図である。送出部37から貯留容器42を外した状態の斜視図である。
【0034】
フレーム25に送出部37、識別部38が配置されている。ディスク2はディスク回転軸3を中心に回転する。受取ホイール27はホイール回転軸26を中心に回転する。ディスク回転軸3とホイール回転軸26は、モータ24によって回転する。モータ24とディスク回転軸3の間は不図示の輪列によって接続されている。また、モータ24とホイール回転軸26の間は不図示の輪列によって接続されている。モータ24及び不図示の輪列はディスク2、受取ホイール27を回転させる駆動部を構成している。
【0035】
ディスク2の保持ベース17は、コインを載置して保持する平坦な底面を形成する。識別部38の受取ベース32は、コインを保持する平坦な底面を形成する。受取ベース32に対向して受取ホイール27が回転自在に配置されている。保持ベース17と受取ベース32は段差無く配置され、コインを摺動させて移動させることができる。
【0036】
ディスク2の上面には、コインを保持するエリアである保持部が備わる。ディスク2の上面には、保持ベース17がディスク回転軸3を中心として、等角に複数箇所設けられている。例えば、120度間隔に3カ所設けられている。
【0037】
ディスク回転軸3を中心として放射状に第1アーム4、第2アーム5、第3アーム6が延在している。各アームは、保持ベース17に対して突出して設けられている。コインを保持する保持部として、底面である保持ベース17の周りに配置された各アームによって凹部が形成されている。すなわち、ディスク2には、コインを保持する3つの保持部が備わる。第1アーム4、第2アーム5、第3アーム6の一部分は、保持部を構成する凸部とも言える。保持部の回転方向の上流側には上流側凸部、下流側には下流側凸部が設けられているとも言える。すなわち第1の保持部には第1の上流側凸部と第1の下流側凸部、第2の保持部には第2の上流側凸部と第2の下流側凸部、第3の保持部には第3の上流側凸部と第3の下流側凸部を有する。
【0038】
各アームにおいて、それぞれの延在方向におけるディスク回転軸3側の部分は、互いにつながって、一体となっている。各アームの先端は、ディスク回転軸3を中心とする同一の円周に沿って配置されている。各アームは、保持ベース17から突出して設けられている。そして、各アームに挟まれる位置に保持ベース17が配置される。保持ベース17にコインが載置され、搬送される。
【0039】
3カ所の保持ベース17には、各々第1長孔10及び第1支持片7、第2長孔11及び第2支持片8、第3長孔12及び第3支持片9が配置されている。第1支持片7は第1長孔10の長手方向に沿って移動する。第2支持片8は第2長孔11の長手方向に沿って移動する。第3支持片9は第3長孔12の長手方向に沿って移動する。第1支持片7、第2支持片8、第3支持片9は後述の溝カムによって、ディスク2の回転に連動して移動する。
【0040】
第2支持片8が配置されている保持ベース17、及びその保持ベース17の周囲エリアは、第2の保持部である。前述の保持ベース17は、第2アーム5の第4側壁18と第3アーム6の第5側壁19に挟まれている。ディスク2がディスク回転方向33の方向に回転しているときに、コインの側面が第4側壁18あるいは第5側壁19に接することになる。第4側壁18及び第5側壁19が第2の保持部の一部を構成する凸部でもある。第2支持片8が配置されている保持ベース17は、凹部の底面を構成する第2の保持ベースとも言える。
【0041】
第3支持片9が配置されている保持ベース17、及びその保持ベース17の周囲エリアは第3の保持部である。前述の保持ベース17は、第3アーム6の第6側壁20と第1アーム4の第7側壁21に挟まれている。ディスク2がディスク回転方向33の方向に回転しているときに、コインの側面が第6側壁20あるいは第7側壁21に接することになる。第6側壁20及び第7側壁21が第3の保持部の一部を構成する凸部でもある。第3支持片9が配置されている保持ベース17は、凹部の底面を構成する第3の保持ベースとも言える。
【0042】
斜めに配置された保持ベース17と第4側壁18あるいは第5側壁19によってコインを保持することを可能にするために、第4側壁18あるいは第5側壁19は平坦な保持ベースに17に対して垂直に配置されることが好ましい。または多少傾斜しても良いが、コインが滑り落ちない程度の角度にする必要がある。第6側壁20と第7側壁21、及び後述する第1側壁14と第3側壁16についても同様である。
【0043】
第1支持片7が配置されている保持ベース17、及びその保持ベース17の周囲エリアは第1の保持部である。前述の保持ベース17は、第1アーム4の選別部13と第2アーム5の第3側壁16に挟まれている。第1アーム4の図中左側方には、保持ベース17に対して突出して設けられた選別部13が配置される。選別部13は、保持ベース17に面して垂直に設けられた第1側壁14を有する。第1側壁14は、第1アーム4の根元方向側に設けられている。また選別部13は、保持ベース17に面して突出して設けられた第2側壁15を有する。第2側壁15は、第1アーム4の先端側に設けられている。第2側壁15は、保持ベース17から、ディスク回転方向33の上流方向に向かい次第に高さを増す斜面部を備える。第1アーム4の図中左側方、すなわちディスク回転方向33の下流側には、第1アーム4の先端側に第2側壁15、根元側に第1側壁14を備える選別部13が備わる。ディスク2がディスク回転方向33の方向に回転しているときに、コインの側面が選別部13あるいは第3側壁16に接することになる。第1支持片7が配置されている保持ベース17は、凹部の底面を構成する第1の保持ベースとも言える。また第1側壁14はコインの側面と当接し、コインを支持して搬送する支持部でもある。
【0044】
保持部は、保持ベース17のディスク回転方向33の上流側と下流側にそれぞれ凸部(アームまたは選別部13)を有する。その凸部と保持ベース17とを備える保持部(凹部とも言える)によってコインが保持される。
【0045】
ディスク2から識別部38へコインを受け渡す部分以外には、ディスク2の外周の外側に、コインの搬送を案内するために、ガイド部が配置されている。ガイド部は、コインの側面と接し、コインの搬送の案内面となる。ガイド部は、保持ベース17に対して、垂直に突出して設けられている。
【0046】
ディスク2が矢印で示されているディスク回転方向33の方向に回転する。コインを識別部38へ受け渡すために、各支持片がディスク2の外周側の方向に移動する。コインは、各支持片によって押し出され、受取ナイフ22の先端に配置されたナイフ先端部23に当接し、各アームの先端に乗り上げる。そして、受取ホイール27に押され、受取ベース32上を移動する。受取ベース32と保持ベース17は面一に構成されているので、スムースに受け渡しができる。
【0047】
識別部38では、案内部31を移動しているコインを、一枚ずつ識別センサー36によって検出し、金種を識別する。
【0048】
受取ホイール27には、ホイール回転軸26を中心として、放線状に等角に複数の受取体が配置されている。実施形態に係わるコイン処理装置69では、120度の間隔で、第1受取体28、第2受取体29、第3受取体30が配置されている。各受取体の間にコインが入り、そのコインは、受取ベース32上を摺動して移動する。各受取体は、押動壁35が備わり、コインの側面と当接する。すなわち、受取ホイール27が回転すると、この押動壁35が受取ベース32上のコインを押し、移動させる。受取ホイール27はディスク2とは逆の方向に回転する。
【0049】
また、手動ノブ34は、ディスク2及び受取ホイール27を連動して回転させることができる。手動ノブ34は、ディスク2及び受取ホイール27を正方向または逆方向に回転させることができる。
【0050】
次にコイン処理装置69の主要部分について説明する。図3は、コイン処理装置の主要部の斜視図である。
【0051】
送出部37では、貯留容器42に入った複数のコイン70を、ディスク2の回転に伴い1枚ずつ分けて識別部38へ渡す。識別部38では、受取ホイール27でコイン70を1枚ずつ分け、受取ベース32上を移動させ、収納部39へ渡す。案内部31を含む案内路43に沿ってコイン70を搬送する。収納部39では、ベルト46上に複数配置された搬送ピン47間にコイン70が1枚ずつ入る。ベルト46の回転によって搬送ピン47が移動し、コイン70は搬送ピン47に押されて搬送路68上を移動する。搬送ピン47間にはコイン70が一枚だけ入るように、ディスク2及び受取ホイール27の回転に連動してベルト46が回転する。各スライドには、バー71が備わり、このバー71の状態によってコイン70をスライドへ落とすか否かが不図示の制御部によって制御される。すなわち、コイン70の金種に対応するスライドの位置にコイン70が到達すると、バー71の状態を可変して、コイン70を対応するスライドへ落とす。スライドに落とされたコイン70は、対応する金種のコインホッパへ格納される。
【0052】
次にディスク2の詳細について説明する。図4は、コイン送出装置のディスク部の斜視図である。
【0053】
第1アーム4、第2アーム5、第3アーム6は一体に成形され、ディスク2に固定されている。選別部13はディスク2と一体に成形することが好ましい。別体に成形する場合は、ディスク2の平坦な面に窪みを設けてそこへ別体の選別部13を固定する。選別部13とディスク2の境界にコインのエッジが掛らないようにする。
【0054】
曲げ部78は、受取ナイフ(図1の22)を起点として複数のコインが連なり、ディスク2の回転を阻害するのを防止する。そのため、回転方向の上流側のコインを浮き上がらせ、連ならないようにしている。
【0055】
第1アーム4と第2アーム5の間には、第1支持片7が配置されている。第1支持片7は、往復移動することが可能であり、図4では移動範囲の後端位置にある。第1支持片7とは別に示される第1支持片72は、移動範囲の先端位置にある。図4では、第1支持片が2つ描かれているが、先端位置にある第1支持片72は、第1支持片7の移動範囲を説明するために図示してあるにすぎない。
【0056】
後述の溝カムに沿って第1支持片7に固定されている不図示のカムフォロアーが移動することで、第1支持片7が往復移動する。第1支持片7は、ディスク回転方向の両端を先端側(ディスク外周側)に近づけるにつれて先端側に向けて突出させる弧状に形成されている。また、第1支持片7の先端側には、コインと当接してコインを押す押動部73が配置されている。また、その中央部には第1斜面部74、第2斜面部75が設けられている。第1斜面部74、第2斜面部75は、所定の直径以下のコインを、次工程(識別部38)に向けて搬送しないように設けられている。第1支持片7がディスク2の外周の方向に移動し、受取ナイフ22とコインが当接した場合に、コインがこの第1斜面部74あるいは第2斜面部75によってディスク2から持ち上がり、貯留容器42へ滑り落ちることで、次工程へ渡されないようにしている。即ち、第1の保持部は、第1の直径よりも小径のコインを保持した場合に、ディスク2の回転に伴って受け渡し口(図1の101)との対向位置に移動するまでの間に、保持した小径のコインを第1斜面部74、第2斜面部75を含む支持片斜面部によって滑り落とす。第1支持片7が小径のコインを、ディスク2の外周側に向けて移動させることで、第1斜面部74、第2斜面部75に確実に接触させて滑り落とすことが可能になる。
【0057】
各アームの先端である縁79は、同一の円周上にある。図4において、各アームの配置されていない部分には、前述の円周の輪郭を示す点線76が示されている。第1支持片7が、第1支持片72のように先端位置まで移動した場合に、両方向矢印で示されている輪郭部までの距離77の隙間ができる。この距離77と使用するコイン(コイン処理装置69が販売される国家で流通するコイン)の直径とに基づき、コインが受取ベース32へ移動できるか否かが決まるとも言える。直径が大きければコインの下側と受取ナイフ22あるいは受取ホイール27が当接するので、受取ベース32へコインが移動できる。コインの上方に当たるようであれば、受取ベース32へコインが移動することが難しい。
【0058】
第1支持片7が配置された保持ベース17と、この保持ベース17を挟む第1側壁14及び第3側壁16とを備える第1の保持部には、使用する最大直径のコインが入る。すなわち使用する全金種のコインが入る。しかし、所定の第1の直径以上のコインは、第1の保持部から識別部38に受け渡されるが、第1の直径よりも小さなコインは、第1の保持部から貯留容器42へ落とされる。第1の直径以上のコインは第1の保持部に保持され、次の工程に受け渡される。第1の直径未満のコインは、第1の保持部から貯留容器42へ戻される。また、第2の保持部は、第1の保持部で保持できる最大直径のコインよりも小さな第2の直径以下のコインを保持可能である。第1の直径未満のコインは、第2の保持部、あるいは後述の第3の保持部によって次工程に受け渡される。第1の保持部または第2の保持部のみによって次工程に受け渡すことのできるコインのサイズがある。また、第1の保持部と第2の保持部との両方によって次工程に受け渡すことが可能なコインのサイズがある。コインの処理効率を上げるためである。
【0059】
第2アーム5と第3アーム6の間には、第2支持片8が配置されている。第2支持片8は、第2支持片8とは別に示される第2支持片82の位置(先端位置)まで移動する。図4では、先端位置にある第2支持片82は、第2支持片8の移動範囲を説明するために図示してあるにすぎない。
【0060】
後述の溝カムに沿って第2支持片8に固定されている不図示のカムフォロアーが移動することで、第2支持片8が、第2アーム5及び第3アーム6の根元に近い後端位置と先端位置との間を往復移動する。第2支持片8の先端側は、ディスク回転方向の両端を先端側に近づけるにつれて先端側にむけて突出させる弧状に形成されている。また、第2支持片8の先端側には、コインと当接してコインを押す支持側面80と、縁79の延長である輪郭を示す点線76に沿った形状に形成された先端81とが配置されている。支持側面80、先端81はコインを押動する押動部とも言える。また、支持側面80、先端81は、コインの側面に当接させるので、保持ベース17に対して垂直に形成されることが好ましい。多少斜面になっていても良いが、コインの側面と接し、コインを確実に押動させることができるように構成するとよい。
【0061】
第2支持片8が、第2支持片82の位置(先端位置)まで移動した場合に、縁79の延長である輪郭を示す点線76の位置に、先端81が位置する。
【0062】
第2支持片8が配置された保持ベース17と、この保持ベース17を挟む第4側壁18及び第5側壁19とを備える第2の保持部(凹部)には、少なくとも使用する最大直径のコインが入らない。
【0063】
第3アーム6と第1アーム4の間には、第3支持片9が配置されている。第3支持片9の形状、移動範囲は、第2支持片8と同様である。また第3支持片9が配置された保持ベース17と、この保持ベース17を挟む第6側壁20及び第7側壁21とを備える第3の保持部には、少なくとも使用する最大直径のコインが入らない。
【0064】
第1支持片7を備える第1の保持部は、最大直径のコインを含む1金種のコインか、または、最大直径のコインを含み最小直径のコインを含まない複数金種のコインを保持し、次工程に受け渡すことができる。例えば、最大直径と、その次に大きな直径のコインとの2種類を次工程に受け渡し、それより小さいコインを貯留容器42へ落とす。また、第2支持片8または第3支持片9を備える第2の保持部または第3の保持部は、最大直径のコインを含まない1金種あるいは複数金種のコインを保持し、次工程に受け渡すことができる。例えば、最大直径の次に大きなコインの直径以下のコインを次工程に受け渡す。
【0065】
ディスク2には保持部が3つある。そのうちの一つが最大直径のコインのみを扱う構成では、コインを送り出す効率が悪くなる。小さなコインがその保持部に入れば、貯留容器42へ戻される。そこで、効率を上げるために、最大直径のコインを含む複数サイズのコインを扱えるようにすることもできる。また、ディスク2の直径を大きくすれば、保持部を多く設けることも可能であるが、装置が大型化してしまう問題が生じる。
【0066】
次に、第1支持片7、第2支持片8、第3支持片9の往復移動について説明する。図5は、ディスク部の動作を説明する図である。ディスク2の裏面側に、フレーム(図1の25)に点線で示す溝カム86が配置されている。溝カム86に沿って移動する不図示のカムフォロアーが第1支持片7、第2支持片8、第3支持片9の各々に配置されている。ディスク2が回転すると、カムフォロアーが溝カムに沿って移動し、その移動に応じて各支持片が移動する。各支持片は、各長孔に沿って移動する。第1支持片7はディスク2に設けられた第1長孔10に沿った第1移動路83の両端間を往復移動する。同様に第2支持片8は第2長孔11に沿った第2移動路84の両端間を、第3支持片9は第3長孔12に沿った第3移動路85の両端間を、それぞれ往復移動する。
【0067】
各支持片を、少なくとも貯留容器42に対応する位置に移動させたときに、ディスク2の中央方向に所定の期間留めるように、溝カム86が形成されていることが好ましい。各支持片を各移動路の一方端に止め、保持部にコインを入り易くするためである。そして、保持部が、上方に移動し、コインを受け渡す位置では、支持片が移動路の他方端に位置するように移動する。すなわち、他方端に支持片を所定の期間留めるように、溝カム86が形成されている。ディスク2から次工程にコインを受け渡すためである。回転角度と往復移動のタイミング及び位置は、溝カム86の形状によって決まる。
【0068】
次に、送出部37から識別部38へのコインの受け渡しについて説明する。図6は、コインの受け渡しを説明する図である。第2支持片8によってコイン70が受け渡される場合を説明する。
【0069】
ディスク2は矢印で示されているディスク回転方向33の方向に回転する。受取ホイール27は、矢印で示されている受取ホイール回転方向44の方向に回転する。ディスク2が回転すると、コイン70が、第2支持片8を備える第2の保持部に入り、ディスク2の回転に伴って、コインが上方に移動する。送出部37の上方には、識別部38へコイン70を渡す受け渡し口(図1の101)がある。受け渡し口の付近において第2支持片8は、ディスク2の外周側の方向に移動する。このとき、コイン70の一部分は、受取ベース32に入り込む。受取ナイフ22または受取ホイール27にコイン70が当接すると、コイン70は第2支持片8から離れる。第2支持片8から離れたコインは、矢印で示される移動方向87に沿って移動し、第2受取体29と第3受取体30の間に入る。第2受取体29の押動壁(図1の35)がコイン70に矢印で示される受取ホイールの当接方向89の方向に当接し、コイン70を弾く。弾かれたコイン70は、点線で示された移動後のコイン88で示されるように、完全に受取ベース32上に移動する。その後、コイン88は、第2受取体29に押され、案内部31に沿って移動する過程で、金種を識別される。
【0070】
ディスク2と受取ホイール27の回転が同期している。コイン送出装置1は、ディスク2を回転させて貯留容器42内を通過させることで、コインをディスク2の保持部に一枚ずつ保持する。ディスク2は、回転軌道における上方の位置において各支持片を移動させて、保持しているコインの一部分を受取ベース32に掛ける状態にする。コインが受取ナイフ22あるいは受取ホイール27に当接すると、弾かれながら受取ベース32上に移動する。その後、送出部37から識別部38にコインが受け渡される。
【0071】
第1支持片7の移動距離が短いので、小さなコインは、受取ナイフ22あるいは受取ホイール27に当接しても、受取ベース32側に乗らないで、貯留容器42へ戻される場合がある。
【0072】
次にディスク2によって保持されるコインについて説明する。図7は、大径のコインを保持した状態のディスク2の第1の例を説明する図である。ディスク2は矢印で示すディスク回転方向33の方向に回転する。ディスク2の3つの保持部は、ディスク2の下方に配置された貯留容器(図2の42)内を通過すると、保持ベース(図4の17)にコインを保持することができる。ただし、保持できるコインの直径が予め決められている。例えば、使用するコインの内の最大直径の最大径コイン91を保持可能な保持部は1つのみである。実施形態に係わるコイン送出装置1においては、第1支持片7が配置されている第1の保持部だけが、最大径コイン91を保持する。第2支持片8が配置されている第2の保持部、及び第3支持片9が配置されている第3の保持部は、破線で示される最大径コインの影90で示されているように、最大径コイン91を保持することができない。最大径コイン91は、第1側壁14または第3側壁16によって、支えられながら搬送される。また、最大径コイン91は斜面部である第2側壁15には当接しない状態で搬送される。
【0073】
図8は、大径のコインを保持した状態のディスク2の第2の例を説明する図である。ディスク2は矢印で示すディスク回転方向33の方向に回転する。第2の例のディスク2は、図7に示される第1支持片7に比べ、先端を第1側壁(図4の14)に対応する位置まで拡大した第4支持片92を備える。これにより、選別部13は、第1側壁14の部分が無く、第2側壁15の部分が残った形状となる。図7の第1の例では、第1側壁14で最大径コイン91を支えていたが、図8の第2の例では、第4支持片92によって最大径コイン91を支える。選別部13は、斜面部を備える第2側壁15の部分のみを備えることも可能である。最大径コイン91は、第4支持片92または第3側壁(図4の16)によって、支えられながら搬送される。また、最大径コイン91は第2側壁15には当接しない状態で搬送される。第4支持片92の回転方向の上流側は、第3側壁16が延長された部分として、また下流側は、第1側壁14が延長された部分として扱うこともできる。この場合も、小径のコインは、選別部13によって滑り落ちる。
【0074】
図9は、第1支持片7を備えるディスク2において、小径のコインを2枚以上保持した状態を説明する図である。最大直径のコインに対して直径が半分以下のサイズの小径コインを使用する場合に、最大直径のコインを保持できる第1の保持部に、複数枚の小径コインが入ってしまう場合がある。
【0075】
例えば、最大直径のコインに対して、半分以下の直径の最小径コイン93が使用される場合を説明する。第1支持片7が配置されている第1の保持部では、最大直径のコインを保持できる。その第1の保持部には、最小径コイン93が3枚入る。この3枚が同時に次工程に受け渡されると、誤動作を生じる恐れがある。一方、第2支持片8または第3支持片9が配置されている第2の保持部または第3の保持部には、最小径コイン影95で示されているように、最小径コイン93は同時に2枚入ることが無い。第2の保持部または第2の保持部には、最大直径未満の予め決められた直径の中径コイン94から最小径コイン93までが1枚のみ入る。
【0076】
この様に、使用するコインは、サイズによっては、同時に2枚以上送られる可能性がある。よって、次工程に同時に2枚以上送られないようにする必要がある。次に、小径のコインの動作について説明する。図10は、小径のコインを保持したディスク2の動作の第1の例を説明する図である。第1支持片7が配置されている第1の保持部に、2枚の小径コイン96が入ってしまった場合について説明する。ディスク2は矢印で示されるディスク回転方向33の方向に回転する。
【0077】
ディスク2が回転し、小径コイン96が、ディスク2の最下点より、ディスクの回転方向の上流側に移行する。この場合に、小径コイン96の直径がある程度大きければ、小径コイン96は第1側壁14に掛り搬送される。しかし、小径コイン96の直径が小さければ、小径コイン96は第2側壁15だけに掛り、搬送されることになる。第2側壁15は保持ベース17に対して回転方向の上流側に向かうに従い突出する斜面部である。小径コイン96は、この斜面部に沿って移動するので、第1の保持部は小径コイン96を保持し続けることができない。すなわち、小径コイン96は、第2側壁15を滑り落ちてしまう。滑り落ちた小径コイン96は、貯留容器42へ戻される。第1支持片7が配置されている第1保持部は、所定サイズ以下のコインを搬送せずに、貯留容器42内に戻すことができる。つまり、第1の保持部は、第1の直径よりも小径のコインを保持した場合に、ディスク2の回転に伴って受け渡し口(図1の101)との対向位置に移動するまでの間に、保持した小径のコインを滑り落とすものである。ディスク2の外周から第2側壁15の端までの距離に基づいて、貯留容器42内に戻すコインの直径を決めることができる。
【0078】
図11は、小径のコインを保持したディスク2の動作の第2の例を説明する図である。仮に第1支持片7が配置されている第1の保持部に、本来搬送されないサイズの小径コイン96が入った場合について説明する。第1支持片7は、ディスク2の上方へ搬送されると、第1支持片72の位置(先端位置)まで移動する。このとき、一点鎖線で示す中径コイン99の場合は、受取ナイフ22あるいは受取ホイール27に当接し、受取ベース32の方向に移動することができる。しかし、本来この位置まで搬送されない小径コイン96の場合は、貯留容器42に落ちる。小径コイン96が前述の位置まで搬送された場合、受取ナイフ22に小径コイン96の側面の上方側が当接する。このとき、破線で示された小径コインの影97の様に、小径コイン96は第1斜面部74または第2斜面部75に乗り上げ、浮き上がる。そして、矢印で示されるコイン落下方向100の方向に、すなわち貯留容器42へ落ちて戻される。受取ナイフ22は、第1の保持部に保持された第1の直径よりも小径のコインの第1の保持部から次工程に向けての送出を阻止する阻止部として機能する。この阻止部により、第1の直径以上のコインだけを第1の保持部から次工程に向けて送出させることができる。
【0079】
小さなサイズのコインが連なることで、ディスク2の回転が阻害されることを防止できる。また、この保持部に入った所定サイズ以上のコインは次工程に受け渡されるが、所定サイズ未満のコインは貯留容器42へ戻される。このように、2枚以上のコインを保持できないようにすることで、次工程に一枚ずつコインを受け渡すことができる。また、他の保持部ではコインは1枚しか入らないので、確実に一枚ずつ次工程に受け渡すことができる。
【符号の説明】
【0080】
1 コイン送出装置
2 ディスク
3 ディスク回転軸
4 第1アーム
5 第2アーム
6 第3アーム
7 第1支持片
8 第2支持片
9 第3支持片
10 第1長孔
11 第2長孔
12 第3長孔
13 選別部
14 第1側壁
15 第2側壁
16 第3側壁
17 保持ベース
18 第4側壁
19 第5側壁
20 第6側壁
21 第7側壁
22 受取ナイフ
23 ナイフ先端部
24 モータ
25 フレーム
26 ホイール回転軸
27 受取ホイール
28 第1受取体
29 第2受取体
30 第3受取体
31 案内部
32 受取ベース
33 ディスク回転方向
34 手動ノブ
35 押動壁
36 識別センサー
37 送出部
38 識別部
39 収納部
40 コイン投入口
41 コイン通路
42 貯留容器
43 案内路
44 受取ホイール回転方向
45 ベルト回転方向
46 ベルト
47 搬送ピン
48 第1スライド
49 第1コインホッパ
50 第2スライド
51 第2コインホッパ
52 第3スライド
53 第3コインホッパ
54 第4スライド
55 第4コインホッパ
56 第5スライド
57 第5コインホッパ
58 第6スライド
59 第6コインホッパ
60 第7スライド
61 第7コインホッパ
62 第8スライド
63 第8コインホッパ
64 第9スライド
65 回収容器
66 払出ベルト
67 払出トレー
68 搬送路
69 コイン処理装置
70 コイン
71 バー
72 先端位置にある第1支持片
73 押動部
74 第1斜面部
75 第2斜面部
76 輪郭を示す点線
77 輪郭部までの距離
78 曲げ部
79 縁
80 支持側面
81 先端
82 先端位置にある第2支持片
83 第1移動路
84 第2移動路
85 第3移動路
86 溝カム
87 コインの移動方向
88 移動後のコイン
89 受取ホイールの当接方向
90 最大径コインの影
91 最大径コイン
92 第4支持片
93 最小径コイン
94 中径コイン
95 最小径コイン影
96 小径コイン
97 小径コインの影
98 小径コインの移動方向
99 中径コイン
100 コイン落下方向
101 受け渡し口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11