IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 雨谷 智昭の特許一覧

<>
  • 特許-乾燥糞の製造方法及び製造システム 図1
  • 特許-乾燥糞の製造方法及び製造システム 図2
  • 特許-乾燥糞の製造方法及び製造システム 図3
  • 特許-乾燥糞の製造方法及び製造システム 図4
  • 特許-乾燥糞の製造方法及び製造システム 図5
  • 特許-乾燥糞の製造方法及び製造システム 図6
  • 特許-乾燥糞の製造方法及び製造システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】乾燥糞の製造方法及び製造システム
(51)【国際特許分類】
   C05F 3/06 20060101AFI20220809BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20220809BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20220809BHJP
   C10L 5/42 20060101ALI20220809BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20220809BHJP
   C02F 11/10 20060101ALI20220809BHJP
   C02F 11/13 20190101ALI20220809BHJP
   B09B 3/38 20220101ALI20220809BHJP
【FI】
C05F3/06 A
C05F3/06 G
B09B3/40 ZAB
B09B3/60
C10L5/42
C02F11/02
C02F11/10 Z
C02F11/13
B09B3/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021135348
(22)【出願日】2021-08-23
【審査請求日】2022-01-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521371669
【氏名又は名称】雨谷 智昭
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】雨谷 智昭
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-111712(JP,A)
【文献】特開2019-155272(JP,A)
【文献】特開2007-040684(JP,A)
【文献】特開2017-071722(JP,A)
【文献】特開2010-075772(JP,A)
【文献】特開2017-125189(JP,A)
【文献】特開2018-053101(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2205450(KR,B1)
【文献】国際公開第1993/014046(WO,A1)
【文献】伊藤 貴則,低温酸化プロセスを用いた高水分廃棄物系バイオマスの固形燃料化技術の開発,北海道大学 博士論文(農学)甲第13327号,2018年09月25日,1-75ページ,URL:http://hdl.handle.net/2115/80592
【文献】前杢 直宏,自己発熱型半炭化法における到達温度と雰囲気圧力が牛ふん半炭化物の燃料特性におよぼす影響,北海道大学大学院農学院 修士論文発表会 要旨,2020年02月07日,全ページ
【文献】高橋 能彦 ほか,鶏糞半炭化の肥効特性の検討,土肥要旨集,2007年,第53集 Part II,266ページ 上段58
【文献】BAKRI, Sitty Nur Syafa Binti et al.,Torrefaction of high moisture content biomass in an industrial rotary kiln combustion type reactor,Journal of JSAM,2018年,Vol.80, No.2,pp.123-132
【文献】浦野 義雄 ほか,家畜ふん炭化処理前後の性状変化,群馬県畜産試験場研究報告,1999年,6号,107-110ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B 1/00-21/00
C05C 1/00-13/00
C05D 1/00-11/00
C05F 1/00-17/02
C05G 1/00-5/00
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
C10L 5/42
C02F 11/02
C02F 11/10
C02F 11/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛糞、豚糞、及び、鶏糞からなる群より選択される少なくとも1種の家畜糞を発酵させた発酵糞を加熱乾燥して乾燥糞を製造する乾燥糞の製造方法において、
記家畜糞の一部を嫌気性環境下で熱分解して半炭化糞を製造する半炭化糞製造工程と、
前記製造した半炭化糞を前記発酵糞に混合して混合糞を製造する混合糞製造工程と、
前記製造した混合糞を好気性環境下で加熱乾燥して前記乾燥糞を製造する加熱乾燥工程と、を備えたことを特徴とする乾燥糞の製造方法。
【請求項2】
前記混合糞製造工程では前記発酵糞に前記半炭化糞を5~20質量%の範囲で混合する請求項1に記載の乾燥糞の製造方法。
【請求項3】
前記家畜糞を発酵させて前記発酵糞を製造する発酵糞製造工程を更に有する請求項1に記載の乾燥糞の製造方法。
【請求項4】
前記発酵糞製造工程において、前記加熱乾燥工程で発生する高温な乾燥排ガスを前記発酵させる前記家畜糞の堆積物の底部から曝気させる請求項3に記載の乾燥糞の製造方法。
【請求項5】
牛糞、豚糞、及び、鶏糞からなる群より選択される少なくとも1種の家畜糞を発酵させた発酵糞を加熱乾燥して乾燥糞を製造する乾燥糞の製造システムにおいて、
記家畜糞の一部を嫌気性環境下で熱分解して半炭化糞を製造する半炭化糞製造機と、
前記製造した半炭化糞を前記発酵糞に混合して混合糞を製造する混合機と、
前記製造した混合糞を好気性環境下で加熱乾燥して前記乾燥糞を製造する加熱乾燥機と、を備えたことを特徴とする乾燥糞の製造システム。
【請求項6】
前記半炭化糞製造機は外熱式のスクリューコンベア方式であり、前記加熱乾燥機は外熱式のロータリーキルン方式である請求項5に記載の乾燥糞の製造システム。
【請求項7】
前記家畜糞を発酵して前記発酵糞を製造する発酵糞製造機を更に有し、前記混合機では前記家畜糞に代えて前記製造した前記発酵糞に前記半炭化糞を混合する請求項5又は6に記載の乾燥糞の製造システム。
【請求項8】
前記発酵糞製造機は、
少なくとも1槽の発酵槽と、
前記発酵槽の底面に形成された底面開口を臨むように設けられ、上面開口が前記底面開口に連通する曝気容器と、
前記曝気容器に収納され、複数の噴出孔が上向き開口された曝気管と、
前記曝気容器に充填され、前記噴出孔の直径よりも粒径の大きな粒状部材と、
前記曝気管から延設された曝気用配管と、
前記曝気用配管と前記加熱乾燥機の加熱乾燥によって発生する高温な乾燥排ガスを排出する排出管とを着脱自在に連結する連結ホースと、を有する請求項7に記載の乾燥糞の製造システム。
【請求項9】
前記半炭化糞製造機と前記混合機と前記加熱乾燥機とのうち、少なくとも前記半炭化糞製造機と前記加熱乾燥機とを搭載する台車を更に有する請求項5~8の何れか1項に記載の乾燥糞の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥糞の製造方法及び製造システム並びに乾燥糞に係り、特に牛糞、豚糞、鶏糞等の家畜糞を加熱乾燥して乾燥糞を製造する際の悪臭問題や不均一乾燥の問題を解決する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から牛糞、豚糞、鶏糞等の家畜糞は堆肥を製造するのに使用されている。家畜糞から堆肥を製造するには、水分調節した家畜糞を雨が当たらないように積み上げ、定期的にかき混ぜて空気を入れる切り返しを定期的に行う。
【0003】
これによって、家畜糞の中に含まれる易分解性有機物を好気性の微生物で分解して発酵させることにより堆肥を製造する。発酵は一般的に高温の一次発酵と熟成の二次発酵とに分かれ、一次発酵では、発酵による発熱によって60℃以上(例えば80℃)になり、家畜糞中の病原菌を死滅させると共に好気性の微生物が糞臭(悪臭)の原因となる易分解性有機物を急速に分解する。この一次発酵により、糞臭等の悪臭成分が消失し、水分が蒸発してサラっとした状態になる。
【0004】
二次発酵では、易分解性有機物が略無くなっているので発熱は余りなく、この状態で好気性の微生物によって木質などに含まれる分解し難い成分が徐々に分解される。これにより、堆肥を作りはじめてから半年ほどで良質な堆肥が製造される。
しかしながら、堆肥製造は時間がかかるため、家畜糞の発生量が多くなると、堆肥製造による家畜糞処理だけでは家畜糞置き場が満杯になってしまうため、家畜糞の廃棄処理に多大な費用を要している。
【0005】
このため、家畜糞を乾燥して減容化することにより家畜糞の量を減らす必要がある。また、家畜糞を乾燥することで燃料や家畜舎の敷料にしたり、発酵・乾燥を行うことで肥料にしたりすることが行われている。
【0006】
特許文献1には、家畜糞と木屑の破砕物を均一に混合して顆粒状態にした燃料を利用して熱風を製造し、この熱風で高水分な家畜糞を乾燥することにより、家畜糞からの燃料、敷料、肥料を製造する製造システムが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、回転ドラム式の気密乾燥ドラムに真空ポンプの吸引側を連結し、排気側を第二乾燥ドラムに連結すると共に気密乾燥ドラムで真空乾燥した家畜糞を第二乾燥ドラムに搬送するスクリューコンベアを備えた真空乾燥方式の家畜糞回転ドラムが開示されている。特許文献2によれば、家畜糞を加熱しないで真空乾燥するので、糞臭である悪臭発生を防止すると共に家畜糞に含有された肥料成分を逃さずに乾燥できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-168542号公報
【文献】公開実用昭和49-84757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の家畜糞からの燃料と敷料と肥料への製造システムでは、家畜糞を熱風により加熱乾燥することで悪臭が発生して周囲環境を悪化させてしまう。また、家畜糞は水分が極めて高く粘着性があるので、加熱乾燥中に塊になったり、乾燥装置の内壁面や攪拌羽根等に付着して搬送詰まりを起こしたりし易い。この結果、家畜糞の加熱乾燥を均一に行えないという問題がある。
【0010】
この不均一乾燥の対策として、高水分な家畜糞に低水分のおが屑や籾殻等を混合して塊や搬送詰まりが生じないようにすることも考えられるが、おが屑や籾殻等を混合した分、本来乾燥すべき家畜糞の処理量が減ってしまい効率的ではないという問題がある。
【0011】
また、特許文献2の真空乾燥方式の家畜糞回転ドラムでは、乾燥時の悪臭問題は解決できても回転ドラムの内壁面や攪拌羽根等に付着してしまうことは解決できず、特許文献1と同様に回転ドラム内での家畜糞の搬送詰まりや乾燥が不均一になり易いという問題がある。また、特許文献2の真空乾燥方式は真空ポンプが高価であり、加熱乾燥方式に比べて装置コストが高くなる。
【0012】
このような背景から、加熱乾燥方式で乾燥糞を製造する場合であっても、家畜糞を加熱乾燥する際の悪臭問題や不均一乾燥の問題を解決でき且つ家畜糞処理量も低減させることがない乾燥糞の製造方法や製造システムが要望されている。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、家畜糞を加熱乾燥する際の悪臭問題や不均一乾燥の問題を解決でき且つ家畜糞処理量を低減させることなく乾燥糞を製造できる乾燥糞の製造方法及び製造システム並びに乾燥糞を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の乾燥糞の製造方法は、牛糞、豚糞、鶏糞等の家畜糞を加熱乾燥して乾燥糞を製造する乾燥糞の製造方法において、加熱乾燥する前の家畜糞の一部を嫌気性環境下で熱分解して半炭化糞を製造する半炭化糞製造工程と、製造した半炭化糞を前記家畜糞に混合して混合糞を製造する混合糞製造工程と、製造した混合糞を好気性環境下で加熱乾燥して乾燥糞を製造する加熱乾燥工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
ここで、家畜糞とは、加熱乾燥等の処理を何ら行っていない生の家畜糞を言う。また、嫌気性環境下とは燃焼するための酸素(空気)が殆どない環境下を言い、好気性環境下とは燃焼するための酸素(空気)が十分にある環境下を言う。
本発明の乾燥糞の製造方法によれば、家畜糞の一部を嫌気性環境下で加熱して半炭化糞を製造し、製造した半炭化糞と家畜糞とを混合して混合糞を製造し、この混合糞を好気性環境下で加熱乾燥するようにした。
【0016】
このように、家畜糞に半炭化糞を混合した混合糞を加熱乾燥することで、加熱乾燥中の半炭化糞の脱臭効果、半炭化糞の燃焼による均一乾燥効果、水分低減効果が生じるので、家畜糞を加熱乾燥する際の悪臭問題や不均一乾燥の問題を解決できる。また、半炭化糞を混合することで、おが屑や籾殻等を混合して水分低減を行うよりも家畜糞処理量を低減させることがない。
【0017】
本発明の乾燥糞の製造方法において、混合糞製造工程では家畜糞に半炭化糞を5~20質量%の範囲で混合することが好ましい。これにより、上記の半炭化糞の脱臭効果、半炭化糞の燃焼による均一乾燥効果、水分低減効果を発揮し易くなる。
【0018】
本発明の乾燥糞の製造方法において、家畜糞を発酵させて発酵糞を製造する発酵糞製造工程を更に有し、混合糞製造工程では家畜糞に代えて製造した発酵糞に半炭化糞を混合するようにした。このように、加熱乾燥の原料として家畜糞よりも低水分な発酵糞を使用することにより、加熱乾燥効率が向上するだけでなく、加熱乾燥した乾燥糞を肥料とすることができる。
【0019】
本発明の乾燥糞の製造方法では、発酵糞製造工程において、加熱乾燥工程で発生する高温な乾燥排ガスを発酵させる家畜糞の堆積物の底部から曝気させることが好ましい。家畜糞を乾燥排ガスで温めることで発酵を促進することができると共に、乾燥排ガスを直接大気に放出しないので、周囲の環境にも好ましい。
【0020】
本発明の乾燥糞の製造システムは、牛糞、豚糞、鶏糞等の家畜糞を加熱乾燥して乾燥糞を製造する乾燥糞の製造システムにおいて、加熱乾燥する前の家畜糞の一部を嫌気性環境下で熱分解して半炭化糞を製造する半炭化糞製造機と、製造した半炭化糞を家畜糞に混合して混合糞を製造する混合機と、製造した混合糞を好気性環境下で加熱乾燥して乾燥糞を製造する加熱乾燥機と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明の乾燥糞の製造システムは、本発明の家畜糞の製造方法を実施する装置として構成したものであり、家畜糞を加熱乾燥する際の悪臭問題や不均一乾燥の問題を解決でき且つ家畜糞処理量を低減させることなく乾燥糞を製造できる。
本発明の乾燥糞の製造システムにおいて、半炭化糞製造機は外熱式のスクリューコンベア方式であり、加熱乾燥機は外熱式のロータリーキルン方式であることが好ましい。
【0022】
本発明の乾燥糞の製造システムにおいて、家畜糞を発酵して発酵糞を製造する発酵糞製造機を更に有し、混合機では家畜糞に代えて製造した発酵糞に半炭化糞を混合する。このように、加熱乾燥の原料として家畜糞よりも低水分な発酵糞を使用することにより、加熱乾燥効率が向上するだけでなく、加熱乾燥した乾燥糞を肥料とすることができる。
【0023】
本発明の乾燥糞の製造システムにおいて、発酵糞製造機は、少なくとも1槽の発酵槽と、発酵槽の底面に形成された底面開口を臨むように設けられ、上面開口が前記底面開口に連通する曝気容器と、曝気容器に収納され、複数の噴出孔が上向き開口された曝気管と、曝気容器に充填され、噴出孔の直径よりも粒径の大きな粒状部材と、曝気管から延設された曝気用配管と、曝気用配管と加熱乾燥機の加熱乾燥によって発生する高温な乾燥排ガスを排出する排出管とを着脱自在に連結する連結ホースと、を有することが好ましい。これは、発酵糞製造機の好ましい構成である。
【0024】
本発明の乾燥糞の製造システムにおいて、半炭化糞製造機と混合機と加熱乾燥機とのうち、少なくとも半炭化糞製造機と加熱乾燥機とを搭載する台車を更に有することが好ましい。これにより、家畜糞置き場の場所に関係なく、半炭化糞製造機と加熱乾燥機とを要望する場所に移動させることができる。
【0025】
本発明の乾燥糞は、牛糞、豚糞、鶏糞等の家畜糞を加熱乾燥して得られる燃料、肥料、敷料の何れかの乾燥糞であって、家畜糞を嫌気性環境下で熱分解して製造された半炭化糞が含有されていることを特徴とする。これにより、良質な燃料、肥料、敷料になる。
本発明の乾燥糞において、乾燥糞には半炭化糞が5~20質量%の範囲で含有されていることが好ましい。
【0026】
本発明の乾燥糞において、乾燥糞には、おが屑、籾殻、間伐材の何れかが混合されていることが好ましい。これにより、乾燥糞が一層燃えやすくなり、燃料としての質を向上できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の乾燥糞の製造方法及び製造システムによれば、家畜糞を加熱乾燥する際の悪臭問題や不均一乾燥の問題を解決でき且つ家畜糞処理量も低減させずに乾燥糞を製造できる。
また、本発明の乾燥糞によれば、牛糞、豚糞、鶏糞等の家畜糞を嫌気性環境下で熱分解して製造された半炭化糞が含有されているので、良質な燃料、肥料、敷料になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】乾燥糞の製造システムの第1の実施の形態の全体構成を説明する部分断面正面図
図2】乾燥糞の製造システムの第1の実施の形態の側面図
図3】半炭化糞製造機の部分断面側面図
図4】加熱乾燥機の部分断面側面図
図5】加熱乾燥機の回転ドラム及び煙道用カバーの説明図
図6】乾燥糞の製造システムの第2の実施の形態の全体構成を説明する説明図
図7】乾燥糞の製造方法のプロセスフロー図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面にしたがって本発明の乾燥糞の製造方法及び製造システム並びに乾燥糞の好ましい実施の形態について説明する。
【0030】
本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を" ~ "を用いて表す場合は、" ~ "で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0031】
[乾燥糞の製造システムの第1の実施の形態]
図1は、乾燥糞の製造システム10の全体構成を説明する部分断面正面図であり、図2は、乾燥糞の製造システム10の側面図である。なお、図2では、図2の表面方向に半炭化糞製造機12を描写し、裏面方向に加熱乾燥機16を描写している。
【0032】
図1及び図2に示すように、乾燥糞の製造システム10は、主として、加熱乾燥する前の家畜糞W1の一部を嫌気性環境下で熱分解して半炭化糞W2を製造する半炭化糞製造機12と、製造した半炭化糞W2を家畜糞W1に混合して混合糞W3を形成する混合機14と、混合糞W3を好気性環境下で加熱乾燥して乾燥糞W4を製造する加熱乾燥機16と、半炭化糞製造機12と加熱乾燥機16とを搭載する台車18とで構成される。
【0033】
なお、台車18は、上記した半炭化糞製造機12、混合機14、加熱乾燥機16の全てを搭載してもよいが、本実施の形態では半炭化糞製造機12と加熱乾燥機16とを搭載し、混合機14は図1に示すように家畜糞置き場15に隣接して設ける場合で説明する。
【0034】
また、以下の説明において、家畜糞W1とは加熱乾燥する前の何ら処理を行っていないものを言い、半炭化糞W2とは家畜糞W1を嫌気性環境下で熱分解して半炭化処理した後のものを言い、混合糞W3とは家畜糞W1に半炭化糞W2を混合したものを言い、乾燥糞W4とは加熱乾燥した後のものを言う。
【0035】
なお、乾燥糞の製造システム10の第1の実施の形態では、混合糞W3とは家畜糞W1に半炭化糞W2を混合したものを言うが、後記する乾燥糞の製造システム10の第2の実施の形態では、混合糞W3とは家畜糞W1を発酵させた発酵糞W5(図6図7参照)に半炭化糞W2を混合したものを言う。
また、嫌気性環境下とは燃焼するための酸素(空気)が殆どないか不足している環境下を言い、好気性環境下とは燃焼するための酸素(空気)が十分にある環境下を言う。
【0036】
(半炭化糞製造機)
半炭化糞製造機12は家畜糞W1を嫌気性環境下で熱分解できればどのような装置でもよいが、本実施の形態では外熱・スクリューコンベア方式で説明する。
図3は、外熱・スクリューコンベア方式の半炭化糞製造機12の部分断面側面図であり、加熱乾燥機16を台車18から除いた状態で図示している。
【0037】
図1図3に示すように、外熱・スクリューコンベア方式の半炭化糞製造機12は、主として、円筒形状の長尺なコンベア筒20と、コンベア筒20の内部に設けられたスクリューフィーダ22と、煙道用カバー24と、燃焼炉26と、半炭化糞排出ライン28とで構成される。
【0038】
コンベア筒20は、複数本のパイプによって直方体状に形成された第1の支持フレーム30の上に水平横向きに支持される。また、第1の支持フレーム30は、基台フレーム32上に動かないように固設される。コンベア筒20周面の前側上面には、家畜糞W1を供給する供給口20Aが形成されると共に供給口20Aの上に家畜糞W1を投入する投入ホッパー34が設けられる。
【0039】
投入ホッパー34には、図1に示すように開閉蓋34Aが開閉自在に支持され、家畜糞W1の半炭化処理が行われる際には開閉蓋34Aが閉成されてコンベア筒20の内部が密閉される。また、コンベア筒20周面の後側下面には、半炭化処理された半炭化糞W2が排出される排出口(図示せず)が形成される。
【0040】
また、コンベア筒20周面の後側上面には、家畜糞W1の熱分解により発生する乾留ガスの乾留ガス排気管36が設けられ、乾留ガス排気管36には外気がコンベア筒20の内部に侵入するのを防止する逆止弁36Aが設けられる。これにより、家畜糞W1の半炭化処理が行われる際には、投入ホッパー34の開閉蓋34Aが閉成されることと相まってコンベア筒20の内部は空気が入り込まない嫌気性環境になる。
【0041】
なお、コンベア筒20の前側(又は前端)とはコンベア筒20の供給口20Aの側のことを言い、後側(又は後端)とはコンベア筒20の排出口の側のことを言う。
スクリューフィーダ22は、コンベア筒20の軸芯方向に配設された回転軸22Aに螺旋状のスクリュー羽根22Bが設けられたものであり、スクリュー羽根22Bの直径はコンベア筒20の内壁面に接触しないぎりぎりの大きさに形成される。
【0042】
これにより、コンベア筒20の内部において、高水分で粘着性の家畜糞W1を効率的に搬送することができるので、家畜糞W1がコンベア筒20の内壁面に付着したまま搬送されないで滞留することを防止する。
【0043】
スクリューフィーダ22の回転軸22Aの両端は一対の軸受38A、38Bに回転自在に支持されると共に回転軸22Aの一端が無段階モータ40に連結される。これにより、無段階モータ40を駆動すると、スクリューフィーダ22が回転して家畜糞W1を搬送すると共に、回転速度を調整することにより家畜糞W1の搬送速度即ち半炭化処理速度を調整することができる。
【0044】
煙道用カバー24は、コンベア筒20の外側に空隙を有して被装されるカバーであって、コンベア筒20よりも一回り大きな円筒形状に形成される。これにより、煙道用カバー24とコンベア筒20との間の空隙に燃焼炉26で発生した排煙の煙道24Aを形成する。また、煙道用カバー24周面の後側上面には、煙道24Aを流れる排煙を排出する煙突42が設けられる。
【0045】
燃焼炉26は、主として燃焼缶26Aと、燃焼缶26Aの底部に置かれた燃焼皿26Bとで構成され、燃焼缶26Aの上面開口26Cが煙道用カバー24周面の中央下面に形成された煙道入口24Bに接続される。そして、燃焼皿26Bで燃料を燃やした炎でコンベア筒20の外側を直接的に加熱すると共に高温な煙が燃焼缶26Aから煙道入口24Bを通って煙道24Aに流れ込み、煙突42から排出される。
【0046】
これにより、燃焼炉26は、コンベア筒20を直接加熱するだけでなく、煙道24Aを流れる高温な排煙によってコンベア筒20の全体を間接加熱する。即ち、燃焼炉26で燃料を燃焼して発生する高温な排煙は煙道24Aを流れ、コンベア筒20の内部に供給された家畜糞W1と熱交換し、家畜糞W1を熱分解する。
【0047】
上記の如く構成された半炭化糞製造機12によれば、投入ホッパー34を介して供給口20Aからコンベア筒20の内部に投入された家畜糞W1は、空気(酸素)が不足した嫌気性環境下で加熱されながらスクリューフィーダ22の回転によりゆっくりと排出口の側に搬送される。搬送される途中で家畜糞W1は燃焼炉26からの熱によって熱分解されて半炭化し、半炭化糞W2が製造される。製造された半炭化糞W2は排出口のスライド式の開閉蓋が開くことにより半炭化糞排出ライン28に排出される。
【0048】
半炭化糞排出ライン28は、主としてコンベア筒20の排出口から排出された半炭化糞W2を受け取る排出ホッパー28Aと、半炭化糞W2を一時的に貯留する貯留タンク28Bと、半炭化糞W2を燃焼炉26に供給するスクリューコンベア28Cとで構成される。排出ホッパー28Aはコンベア筒20の排出口下方に設けられ、排出ホッパー28Aの下方に四角形な貯留タンク28Bが設けられる。
【0049】
また、四角形な貯留タンク28Bの一側面の底部には、貯留された半炭化糞W2を混合機14に供給する配管27(図1)を着脱自在に連結する連結具28Dが設けられる。更に、貯留タンク28Bの燃焼炉26側の側面下部から燃焼炉26にスクリューコンベア28Cが延設されている。これにより、貯留タンク28Bに貯留された半炭化糞W2は、混合機14に供給することもでき、必要に応じて燃焼炉26の燃料として供給することもできる。
【0050】
図1に示すように、家畜糞W1が例えば家畜糞置き場15に平置き状態で堆積されている場合、台車18に搭載された半炭化糞製造機12の投入ホッパー34は人の背丈よりも大分高い位置に位置することになる。したがって、家畜糞置き場15に堆積された家畜糞W1を半炭化糞製造機12の投入ホッパー34の高さまで搬送する搬送コンベア44(図1参照)を設ける必要がある。
【0051】
この場合、家畜糞W1は高水分(例えば80%以上)であり、スクリューコンベア方式では上手く搬送されないので、図1に示すようにベルトコンベア方式の搬送コンベア44を使用することが好ましい。
【0052】
(混合機)
図1に示すように、混合機14は、半炭化糞製造機12で製造した半炭化糞W2を家畜糞W1に混合するものであり、家畜糞置き場15に隣接して設けられる。なお、本実施の形態では混合機14を家畜糞置き場15に隣接して設けたが、家畜糞置き場15に隣接することは限定されない。また、混合機14を半炭化糞製造機12や加熱乾燥機16と一緒に台車18に搭載する態様も可能である。
【0053】
混合機14は、主として混合槽14Aと、撹拌機14Bと、家畜糞W1を家畜糞置き場15から混合機14の混合槽14Aに移送する移送ポンプ14Cと、移送配管14Dとで構成される。移送ポンプ14Cは、家畜糞置き場15と混合槽14Aとの間の隔壁の上に配置され、移送ポンプ14Cの吸引側と吐出側に移送配管14Dがそれぞれ接続される。そして、半炭化糞製造機12で製造されて貯留タンク28Bに貯留された半炭化糞W2が移送配管14Dを介して混合槽14Aに供給される。
【0054】
一方、家畜糞置き場15に堆積された家畜糞W1が移送ポンプ14Cにより混合槽14Aに供給される。そして、攪拌機14Bで家畜糞W1に半炭化糞W2が混合される。これにより、家畜糞W1に半炭化糞W2を混合した混合糞W3が製造される。家畜糞W1に半炭化糞W2を混合する比率としては、5~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0055】
なお、家畜糞置き場15及び混合槽14Aの底面近傍にはそれぞれ金網15A、14Eが水平に張設されることが好ましい。これにより、家畜糞置き場15に堆積された高水分な家畜糞W1の水分を濾過すると共に、混合槽14Aで形成された混合糞W3中の水分を濾過することができるので、次の加熱乾燥機16での乾燥負荷を低減できる。
【0056】
(加熱乾燥機)
次に、混合糞W3を加熱乾燥する加熱乾燥機16について説明する。加熱乾燥機16は混合糞W3を好気性環境下で加熱乾燥できればどのような装置でもよいが、本実施の形態では外熱・ロータリーキルン方式で説明する。
【0057】
図4は、外熱・ロータリーキルン方式の加熱乾燥機16の部分断面側面図であり、半炭化糞製造機12を台車18から除いた状態で図示している。
図1図2及び図4に示すように、加熱乾燥機16は、主として回転ドラム46と、煙道用カバー48と、燃焼炉50と、傾動手段52と、乾燥糞排出ライン54とで構成される。
【0058】
回転ドラム46は、円筒形状に形成され、複数本のパイプによって直方体状に形成された第2の支持フレーム56の上に、回転ドラム46の軸芯周りに回転自在な状態で横向きに支持される。即ち、回転ドラム46は、第2の支持フレーム56上の前側(供給部60の側)であって回転ドラム46の径方向の両側位置に設けられた一対の前側ローラ71と、第2の支持フレーム56上の後側(排出部62の側)であって回転ドラム46の径方向両側に設けられた一対の後側ローラ73との上に載置される。
【0059】
これにより、回転ドラム46は軸芯周りに回転自在な状態で第2の支持フレーム56に支持される。なお、前側ローラ71及び後側ローラ73は、図4の裏面側にも配置されている。また、前側ローラ71の軸受部71A及び後側ローラ73の軸受部73Aは、回転ドラム46の前端及び後側にそれぞれ形成されたフランジ67、67によって形成されたリング状溝に係合しており、回転ドラム46の軸芯方向のズレを防止している。
【0060】
また、第2の支持フレーム56は基台フレーム32上に固定されない状態で載置される。第2の支持フレーム56は基台フレーム32上に固定されない状態で載置される理由は、傾動手段52の説明で行う。
【0061】
なお、本実施の形態では、傾動手段52を設けることで、回転ドラム46の供給部60の側が排出部62の側よりも所望の傾斜角度で高くなるようにし、混合糞W3が回転ドラム46内を供給部60の側が排出部62の側に搬送され易くした。しかし、傾動手段52を設けない場合には、回転ドラム46の供給部60の側が排出部62の側よりも高くなるように第2の支持フレーム56に支持する必要がある。
【0062】
図4では回転ドラム46を1本の円筒管として示したが、図5に示すように、複数本の円筒管をリング状の繋ぎ部材58(例えばフランジ)で繋いで分割可能に形成することが好ましい。
回転ドラム46は、軸芯方向に回転軸46Aが貫通しており、回転軸46Aの両端が前側軸受47と後側軸受49に回転自在に支持される。なお、以後の説明において、回転ドラム46の前側(又は前端)とは回転ドラム46の供給部60側のことを言い、後側(又は後端)とは回転ドラム46の排出部62側のことを言う。
【0063】
また、回転軸46Aの後端は後側軸受49から突出しており、回転軸46Aの突出部46Bに第1のギア74が設けられる。また、第1のギア74の下方であって、第2の支持フレーム56の下部には、回転ドラム46を回転駆動させる無段階モータ76が固定され、モータ軸76Aに第2のギア78が設けられる。そして、第1のギア74と第2のギア78との間に無端状チェーン80が架け渡される。これにより、無段階モータ76を駆動すると、回転ドラム46は軸芯周り方向に回転すると共に、回転速度を調整することができる。
【0064】
また、回転ドラム46は、前側に混合糞W3を供給する供給部60を有すると共に後側に混合糞W3を加熱乾燥させた乾燥糞を排出する排出部62を有する。回転ドラム46の供給部60は、主として、混合糞W3を回転ドラム46に供給する供給ホッパー72と、供給ホッパー72に供給された混合糞W3を、回転ドラム46と同速度で回転しながら回転ドラム46の内部に送り込むスクリューコンベア68とで構成される。
【0065】
また、スクリューコンベア68の上に供給ホッパー72が設けられる。また、スクリューコンベア68のコンベアケーシング70の周面と、供給ホッパー72の下部とは供給口72Aを介して連通されている。また、回転ドラム46の排出部62は回転ドラム46周面の後側に形成された排出口64と、排出口64に設けられた開閉蓋66とで構成される。
【0066】
スクリューコンベア68の回転軸は、回転ドラム46の回転軸46Aと同じ回転軸で構成される。即ち、回転ドラム46の前端から前側軸受47までの間の回転軸46Aに筒状のコンベアケーシング70が被せられ、回転軸46Aにスクリューコンベア68のスクリュー羽根68Aが形成されている。
【0067】
このように、スクリューコンベア68は回転ドラム46の回転軸46Aと同じ回転軸で構成して、回転ドラム46の回転速度とスクリューコンベア68の回転速度とが同じになるようにした。これにより、スクリューコンベア68の回転速度を速くして、供給ホッパー72からスクリューコンベア68を介して回転ドラム46に送り出される混合糞W3の送り出し量を多くすれば、回転ドラム46の回転速度も速くなり、混合糞W3を供給部60から排出部62まで回転搬送する搬送速度も大きくなるようにした。
【0068】
逆に、スクリューコンベア68の回転速度を遅くして、供給ホッパー72からスクリューコンベア68を介して回転ドラム46に送り出される混合糞W3の送り出し量を少なくすれば、回転ドラム46の回転速度も遅くなり、混合糞W3を供給部60から排出部62まで回転搬送する搬送速度も小さくなるようにした。したがって、混合糞W3の水分量に応じて回転ドラム46に滞留させる時間、即ち乾燥時間を調整できるだけでなく、回転ドラム46の内部で混合糞W3が滞留しないようにできる。
【0069】
また、回転ドラム46の前端面とスクリューコンベア68との間には、外気を回転ドラム46内に送気する空洞な送気チャンバ82が設けられる。送気チャンバ82には送気管82Aが接続され、送気管82Aの途中に送気ファン82Bが設けられる。送気チャンバ82は、スクリューコンベア68のコンベアケーシング70に支持されると共に回転ドラム46とはロータリジョイント(図示せず)を介して接続されており、回転ドラム46の回転に連れ回りしないように縁切りされている。
【0070】
また、回転ドラム46の後端面には、混合糞W3を加熱乾燥した際に発生する水分等の乾燥排ガスを排気する空洞な排気チャンバ84が設けられ、排気チャンバ84に排気管84Aが接続される。排気チャンバ84は、回転ドラム46に対してロータリジョイント(図示せず)を介して接続されており、回転ドラム46の回転に連れ回りしないように縁切りされている。
【0071】
また、図4に示すように、回転ドラム46の内部には、回転ドラム46の内周面から回転軸46Aの方向に突出した複数枚の攪拌板88が設けられることが好ましい。これにより、回転ドラム46の回転と一緒に攪拌板88が回転し、回転ドラム46の内部に供給された混合糞W3を掻き上げることにより、加熱乾燥を促進する。攪拌板88の枚数は特に限定されないが、回転ドラム46の円周方向に120°間隔で3枚(図1参照)、又は90°間隔で4枚(図示せず)設けることが好ましい。
【0072】
図1及び図4に示すように、加熱乾燥機16の煙道用カバー48は、基本的な構造は上記説明した半炭化糞製造機12の煙道用カバー24と同様である。即ち、煙道用カバー48は回転ドラム46よりも一回り大きな円筒形状に形成され、回転ドラム46の外側に回転ドラム46の回転を阻害しないように被装される。
【0073】
これにより、煙道用カバー48と回転ドラム46との間の間隙に燃焼炉50で発生した排煙の煙道48Aを形成する。煙道用カバー48の前端部の上面に、煙道48Aを流れる排煙を排気する煙突63が形成されると共に、煙道用カバー48の後端部の下面に煙道48Aに排煙を導入する煙道入口48Bが形成される。そして、煙道入口48Bに燃焼炉50が取り付けられる。
【0074】
燃焼炉50は、半炭化糞製造機12で説明した燃焼炉26と基本的に同様である。即ち、燃焼炉50は、主として燃焼缶50Aと、燃焼缶50Aの底部に置かれた燃焼皿50Bとで構成され、燃焼缶50Aの上面開口50Cが煙道用カバー48周面の中央下面に形成された煙道入口48Bに接続される。そして、燃焼皿50Bで燃料を燃やした炎で回転ドラム46の外側を直接的に加熱すると共に高温な煙が燃焼缶50Aから煙道入口48Bを通って煙道48Aに流れ込む。
【0075】
これにより、燃焼炉50は、回転ドラム46を直接加熱するだけでなく、煙道48Aを介して回転ドラム46を高温な排煙により間接加熱することができる。即ち、燃焼炉50で燃料を燃焼して発生する高温な排煙は煙道48Aを流れ、回転ドラム46の内部に供給された混合糞W3と熱交換し、混合糞W3を加熱乾燥して乾燥糞W4を製造する。
【0076】
この場合、図5に示すように、煙道48Aには、燃焼炉50から供給された排煙に流動抵抗を付与する流動抵抗付与手段を設けることが好ましい。流動抵抗付与手段としては、リング状の邪魔板65を煙道48Aに対して垂直に設けるとよい。
これにより、煙道48Aを流れる高温な排煙が煙道48A内で滞留し易くなり、回転ドラム46の内部の空気や回転ドラム46の内部を移動する混合糞W3との熱交換効率が向上する。したがって、混合糞W3を加熱乾燥して乾燥糞W4を製造する加熱乾燥効率が向上する。
【0077】
また、図5に示すように分割可能に構成された回転ドラム46の場合には、リング状の繋ぎ部材58を流動抵抗付与手段として利用することができる。また、煙道48Aに保温性を持たせる場合には、煙道用カバー48外側にガラスウール等の保温材を巻回することができる。なお、図5において、符号69は、煙道用カバー48と回転ドラム46周面との接触部をシールするリング状のシール部材であり、滑り性を有する部材で形成される。
【0078】
なお、図5で説明した排煙に流動抵抗を付与する流動抵抗付与手段、ガラスウール等の保温材、リング状のシール部材は、半炭化糞製造機12における煙道用カバー24やコンベア筒20にも適用することが好ましい。
【0079】
傾動手段52は、回転ドラム46の供給部60側(前側)が排出部62側(後側)よりも高くなるように傾動させて回転ドラム46を傾斜させることにより、回転ドラム46内の混合糞W3の搬送速度を可変するものである。傾動手段52としては、回転ドラム46を傾動できればどのような手段でもよいが、本実施の形態では油圧シリンダ86の例で説明する。
【0080】
図4に示すように、基台フレーム32の前側に油圧シリンダ本体部86Aが設けられ、シリンダロッド86Bの先端が第2の支持フレーム56の前側であって第2の支持フレーム56の幅方向中央位置に接続される。即ち、加熱乾燥機16を支持する第2の支持フレーム56の前側は、シリンダロッド86Bに支持されると共に、油圧シリンダ本体部86Aは基台フレーム32に支持される。
【0081】
一方、第2の支持フレーム56の後端下部と基台フレーム32の後端部とは回動軸32Aによって回動自在に連結されている。そして、上記したように、第2の支持フレーム56は基台フレーム32に固定されていない。これにより、シリンダロッド86Bを伸長させると、回動軸32Aを中心として第2の支持フレーム56が回動し、第2の支持フレーム56に支持される回転ドラム46が傾動する。
【0082】
この結果、回転ドラム46の供給部60側が排出部62側よりも高くなり、回転ドラム46には、供給部60側から排出部62側に向かう下り勾配が形成される。したがって、回転ドラム46の内部に供給された混合糞W3は、撹拌板88による掻き上げ落下を繰り返し、供給部60側から排出部62側に自重によって移動する。
【0083】
なお、回転ドラム46は、傾動手段52によって供給部60側が排出部62側よりも高くなるように傾斜する傾斜角度が大きくなる場合もある。したがって、回転ドラム46の軸芯方向のズレを防止する方法として、上記した前側ローラ71の軸受部71A及び後側ローラ73の軸受部73Aと、回転ドラム46の前端及び後側にそれぞれ形成されたフランジ67とによる回転ドラム46の軸芯方向のズレ防止以外に、例えば回転ドラム46の後端側面に回転ドラム46を軸芯方向の供給部60側に押圧する押圧ローラ(図示せず)を設けてもよい。
【0084】
これにより、供給ホッパー72に投入された混合糞W3は、スクリューコンベア68によって回転ドラム46の内部に供給され、回転ドラム46の回転搬送により供給部60側から排出部62側に搬送されると共に送気ファン82Bによって回転ドラム46の内部に十分な空気(酸素)が供給される。
【0085】
これにより、回転ドラム46の内部を搬送される途中で混合糞W3は燃焼炉50からの熱によって加熱乾燥され、乾燥糞W4が製造される。製造された乾燥糞W4は排出口64の開閉蓋66が開くことにより乾燥糞排出ライン54に排出される。なお、供給ホッパー72や送気管82Aから回転ドラム46の内部に十分な空気(酸素)が入り込むようになっていれば、送気ファン82Bを使用しなくてもよい。
【0086】
乾燥糞排出ライン54は、半炭化糞製造機12の半炭化糞排出ライン28と同様であり、主として回転ドラム46の排出口64から排出された乾燥糞W4を受ける排出ホッパー54Aと、乾燥糞W4を一時的に貯留する貯留タンク54Bと、乾燥糞W4を燃焼炉50に供給するスクリューコンベア54Cとで構成される。
【0087】
排出ホッパー54Aは回転ドラム46の下方に設けられ、排出ホッパー54Aの下方に四角形な貯留タンク54Bが設けられる。貯留タンク54Bの一側面の下部には、貯留タンク54Bに貯留された乾燥糞W4を排出する配管27(図1)を連結する連結具54D(図4の裏面側、図1参照)が設けられる。
【0088】
更に、貯留タンク54Bの燃焼炉50の側の側面下部から燃焼炉50にスクリューコンベア54Cが延設されている。
これにより、貯留タンク54Bに貯留された乾燥糞W4は商品として加熱乾燥機16の外部に排出することもでき、必要に応じて燃焼炉50の燃料として利用することもできる。
【0089】
なお、供給ホッパー72は、通常、人の背丈よりも高い位置に配置されることになるので、混合糞W3を供給ホッパー72の高さまで搬送する搬送コンベアを設けることが好ましい。この場合、混合糞W3は半炭化糞W2を混合することで家畜糞W1よりも水分は低下しているが、スクリューコンベア方式では上手く搬送されないので、図1に示すようにベルトコンベア方式を使用することが好ましい。
【0090】
この場合、図1に示すように、家畜糞置き場15の家畜糞W1を半炭化糞製造機12の投入ホッパー34に搬送したベルトコンベア方式の搬送コンベア44を兼用することができる。
【0091】
(台車)
台車18は、半炭化糞製造機12を支持する第1の支持フレーム30と加熱乾燥機16を支持する第2の支持フレーム56とを搭載する板状の搭載台18Aと、搭載台18Aの下面4隅に設けられ、回転軸18Dを介して設けられた4個の車輪18Bと、搭載台18Aを例えばトレーラー等の自動車92に着脱自在に連結する連結具18Cとで構成される。これにより、台車18に搭載された半炭化糞製造機12と加熱乾燥機16とを家畜糞置き場15等の必要な場所に移動し、その場所で家畜糞の加熱乾燥処理を行うことができる。
【0092】
(制御盤)
そして、半炭化糞製造機12及び加熱乾燥機16の制御は、第2の支持フレーム56に設けられた制御盤90によって行われる。例えば、家畜糞W1を熱分解する度合いを調整するには、制御盤90は半炭化糞製造機12の無段階モータ40や燃焼炉26等を制御して、スクリューフィーダ22の回転やコンベア筒20の加熱状態を調整することにより行う。
【0093】
また、混合糞W3を加熱乾燥する度合いを調整するには、制御盤90は加熱乾燥機16の無段階モータ76、燃焼炉50、傾動手段52等を制御して、回転ドラム46の傾斜角度及び回転ドラム46の回転数を変えたり、回転ドラム46の加熱状態を変えたりすることにより行う。
【0094】
[乾燥糞の製造システムの第2の実施の形態]
乾燥糞の製造システム10の第2の実施の形態は、乾燥糞の製造システム10の第1の実施の形態の構成に、家畜糞W1を発酵させて発酵糞W5を製造する発酵糞製造機100を更に設けた。そして、家畜糞W1の代わりに製造した発酵糞W5に半炭化糞W2を混合して混合糞W3を製造し、この混合糞W3を加熱乾燥して乾燥糞W4を製造するようにした。
【0095】
図6は、乾燥糞の製造システム10の第2の実施の形態の装置構成の説明図である。
図6に示すように、乾燥糞の製造システム10の第2の実施の形態は、主として、加熱乾燥する前の家畜糞W1の一部を嫌気性環境下で熱分解して半炭化糞W2を製造する半炭化糞製造機12と、家畜糞W1を発酵させて発酵糞W5を製造する発酵糞製造機100と、製造した発酵糞W5に半炭化糞W2を混合して混合糞W3を形成する混合機14(図1参照)と、混合糞W3を好気性環境下で加熱乾燥して乾燥糞W4を製造する加熱乾燥機16と、半炭化糞製造機12と加熱乾燥機16とを搭載する台車18とで構成される。
【0096】
上記構成のうち、発酵糞製造機100以外の半炭化糞製造機12、混合機14、加熱乾燥機16、台車18の構成は乾燥糞の製造システム10の第1の実施の形態と同様なので説明は省略し、ここでは発酵糞製造機100について説明する。
【0097】
発酵糞製造機100は、家畜糞W1を発酵させて発酵糞W5を製造できる装置であれば、どのようなものでもよいが、本実施の形態では、加熱乾燥機16から発生する高温な乾燥排ガスで発酵糞製造機100の発酵槽102に堆積された家畜糞W1を加熱し、発酵糞W5の製造を促進するように構成した装置構成で説明する。
【0098】
図6に示すように、発酵糞製造機100は、主として少なくとも1槽の発酵槽102と、曝気容器104と、曝気管106と、粒状部材108と、曝気用配管110と、連結ホース126とで構成される。
【0099】
発酵槽102は、家畜舎において発生した牛糞等の家畜糞W1を貯めておき、貯まった堆積物を好気性の微生物により発酵して発酵糞W5即ち堆肥を製造する槽であり、家畜糞W1の堆積物に加熱乾燥機16から発生する高温な乾燥排ガスを供給して発酵を促進する。
【0100】
図6では、3槽の発酵槽102A、102B、102Cの場合で図示している。そして、3槽の発酵槽102A、102B、102Cに順番に家畜糞W1を貯めていき、貯まった発酵槽102に乾燥排ガスを供給して発酵を順番に行うことで、効率的な発酵を行うことができるようにした。
【0101】
発酵槽102は、上面が開放された四角形な槽本体112を縦方向に立設された2枚の仕切り板114で等分に区切ることにより形成される。また、槽本体112は地面に構築された装置フレーム116に支持される。
発酵槽102の底面には、発酵槽102の底面よりも一回り小さな四角形な底面開口118が形成される。発酵槽102の底面近傍には、金網120が水平に設けられ、金網120と底面開口118との間に空間122が形成される。
【0102】
これにより、発酵槽102に堆積される高水分(例えば80%以上)な家畜糞W1の水分をある程度濾過することができる。したがって、家畜糞W1を60~70%程度まで低水分にしてから発酵処理を行うことができるので、発酵を行う微生物を有効に働かせることができる。
【0103】
また、金網120と底面開口118との間に空間122が形成されることにより、曝気管106の噴出孔106Aが閉塞することを防止できるだけでなく、曝気管106から噴出する乾燥排ガスが発酵槽102に堆積された家畜糞W1の全体に偏りなく行き渡らせることができる。
【0104】
曝気容器104は、発酵槽102の底面に形成された底面開口118を臨むように設けられる。即ち、曝気容器104は四角形な箱形状に形成され、上面開口104Aが発酵槽102の底面開口118と同じ大きさに形成される。そして、曝気容器104の上面開口104Aが発酵槽102の底面開口118に連通するように接続される。
【0105】
また、曝気容器104の底面近傍には、ドレイン抜き配管124とバルブ124Aが設けられる。これは上記したように、家畜糞W1の水分が金網120で濾過されることにより、水分が発酵槽102から曝気容器104に侵入するため、曝気容器104から排除するためである。
【0106】
曝気管106は、曝気容器104に収納された長尺な管状部材であり、図6の表面側から裏面側に向かって水平に配設される。曝気管106は、一端が閉塞されると共に他端に曝気用配管110が接続され、曝気管106の上面に多数の噴出孔106Aが形成される。
【0107】
そして、曝気管106が配設された曝気容器104の内部に粒状部材108が充填される。粒状部材108は曝気管106の噴出孔106Aを塞がないように、噴出孔106Aの直径よりも粒径の大きなものが使用される。粒状部材108としては例えば砂利を好適に使用することができる。
このように、曝気容器104に粒状部材108を充填し、粒状部材108の層の中に曝気管106を配置することで、曝気管106の噴出孔106Aが閉塞することを防止できる。
【0108】
曝気用配管110は、3槽の発酵槽102A、102B、102Cの曝気容器104にそれぞれ設けられた曝気管106にそれぞれ接続された枝配管110Aと、枝配管110Aに連通する幹配管110Bとで構成される。幹配管110Bの一端側は装置フレーム116の外側まで延設され、一端側の部分には連結ホース126に着脱自在に連結するための連結具110Cが設けられる。
【0109】
また、それぞれの枝配管110Aには開閉バルブ110Dが設けられ、加熱乾燥機16からの乾燥排ガスの供給先を3槽の発酵槽102A、102B、102Cごとに切り替えられるように構成されている。また、幹配管110Bには、ドレイン抜き配管110Eとバルブ110Fが設けられ、曝気管106を介して曝気用配管110の内部に侵入した家畜糞W1の水分を除去する。
【0110】
連結ホース126はフレキシブルなホースとして形成され、一端側には曝気用配管110の幹配管110Bに着脱自在に連結する連結具126Aが設けられ、他端側には加熱乾燥機16の排気管84Aに着脱自在に連結する連結具126Bが設けられる。これにより、加熱乾燥機16の排気管84Aと曝気用配管110とを連結することにより、加熱乾燥機16の高温な乾燥排ガスを発酵槽102に供給することができる。
【0111】
なお、本実施の形態では、加熱乾燥機16の排気管84Aと曝気用配管110とを連結することで、乾燥排ガスの熱で発酵槽102に堆積された家畜糞W1を温めて発酵を促進するようにした。しかし、これに限定されず、加熱乾燥機16の煙突63と曝気用配管110とを連結することで、排煙の熱で発酵槽102に堆積された家畜糞W1を温めて発酵を促進してもよい。更には、加熱乾燥機16から発生する乾燥排ガスの熱と排煙の熱とを両方利用してよい。
【0112】
また、発酵糞製造機100に加熱乾燥機16の乾燥排ガスや排煙と熱交換する熱交換器(図示せず)を設け、熱交換された綺麗で温かい空気を発酵槽102に供給するようにしてもよい。このように、家畜糞W1を加熱乾燥機16から発生する乾燥排ガスで温めることで家畜糞W1の発酵を促進することができると共に、乾燥排ガスを直接大気に放出しないので、周囲の環境にも好ましい。
【0113】
[乾燥糞の製造方法の第1の実施の形態]
次に、上記の如く構成された乾燥糞の製造システム10の第1の実施の形態を用いて、本発明の乾燥糞の製造方法の第1の実施の形態を説明する。
図7の(A)は、乾燥糞の製造方法の第1の実施の形態のプロセスフローを説明する説明図である。
【0114】
先ず、図1に示すように、半炭化糞製造機12及び加熱乾燥機16を搭載した台車18を、家畜糞置き場15に横づけする。そして、図7の(A)に示すように、半炭化糞製造機12を用いて、家畜糞置き場15に堆積された家畜糞W1の一部から半炭化糞W2を製造する。即ち、図1及び図3に示すように、家畜糞置き場15に堆積されている家畜糞W1の一部をベルトコンベア方式の搬送コンベア44で半炭化糞製造機12の投入ホッパー34に投入し、コンベア筒20の内部に供給する。
【0115】
家畜糞W1を投入ホッパー34に投入し終わったら、投入ホッパー34の開閉蓋34Aを閉じる。これにより、乾留ガス排気管36に逆止弁36Aを設けていることと相まってコンベア筒20の内部は空気が入らない嫌気性環境になる。また、燃焼炉26でコンベア筒20を直接加熱すると共に、燃焼炉26により発生した高温な排煙を煙道24Aへ送り込み、コンベア筒20の内部を外部より加熱する。
【0116】
これにより、コンベア筒20の内部に供給された家畜糞W1は、スクリューフィーダ22により搬送されながら嫌気性環境下で加熱される。この結果、家畜糞W1は水分が蒸発すると共に揮発性の化合物が除去され、更に加熱すると有機化合物の熱分解反応が起き、燃えることなく炭素成分が多い物質である半炭化糞W2に変化する。製造された半炭化糞W2は半炭化糞排出ライン28の貯留タンク28Bに貯留される。
【0117】
次に、図7の(A)に示すように、半炭化糞製造機12で製造された半炭化糞W2を家畜糞W1に混合して混合糞W3を製造する。即ち、図1及び図3に示すように、家畜糞置き場15に堆積された家畜糞W1を移送ポンプ14Cによって混合機14の混合槽14Aに供給すると共に、貯留タンク28Bに貯留された半炭化糞W2を連結配管27を介して混合機14の混合槽14Aに供給する。そして、攪拌機14Bで家畜糞W1と半炭化糞W2とを攪拌混合して混合糞W3を製造する。
【0118】
家畜糞W1に混合する半炭化糞W2の混合割合としては、5~20質量%の範囲であることが好ましい。なお、貯留タンク28Bに貯留されている半炭化糞W2は混合糞W3を製造する以外にも、スクリューコンベア28Cで燃焼炉26に送って燃料として使用することもできる。
【0119】
次に、図7の(A)に示すように、混合機14で製造された混合糞W3を加熱乾燥機16で加熱乾燥して乾燥糞W4を製造する。即ち、図1及び図4に示すように、混合機14で製造された混合糞W3をベルトコンベア方式の搬送コンベア44で加熱乾燥機16の供給ホッパー72に投入し、スクリューコンベア68によって回転ドラム46の内部に供給する。搬送コンベア44は家畜糞W1を半炭化糞製造機12の投入ホッパー34に投入したときに使用したものを兼用することができる。
【0120】
混合糞W3を回転ドラム46の内部に供給すると共に、送気管82Aに設けられた送気ファン82Bを稼働して回転ドラム46の内部に空気が十分に入るようにして好気性環境にする。また、燃焼炉50で回転ドラム46を直接加熱すると共に、燃焼炉50により発生した高温な排煙を煙道48Aへ送り込み、回転ドラム46の内部を外部より加熱する。
【0121】
更には、必要に応じて、傾動手段52によって回転ドラム46の供給部60の側が排出部62の側よりも高くなるように傾斜させる。これにより、回転ドラム46の内部に供給された混合糞W3は、回転ドラム46の回転に伴う攪拌板88の回転により掻き上げられながら加熱乾燥されて供給部60の側から排出部62の側に搬送される。この結果、水分が10%程度まで低減した乾燥糞W4が製造される。製造された乾燥糞W4は回転ドラム46の排出口64から乾燥糞排出ライン54に排出されて貯留タンク54Bに貯留される。
【0122】
以上により、家畜糞W1を嫌気性環境下で熱分解して製造された半炭化糞W2が含有された本発明の乾燥糞W4が製造される。このように、家畜糞W1に半炭化糞W2を混合した混合糞W3を加熱乾燥することで、加熱乾燥中に家畜糞から発生する糞臭等の悪臭成分が半炭化糞W2の吸着効果により除去され易くなるので、乾燥排ガスの悪臭を抑制することができる(半炭化糞の吸着脱臭効果)。
【0123】
また、混合機14の撹拌機14Bで家畜糞W1と半炭化糞W2を攪拌混合することにより、混合糞W3中には略均等に半炭化糞W2が混在することになる。したがって、加熱乾燥を十分な空気の好気性環境下で行うことにより、混合糞W3中の半炭化糞W2が部分的に燃焼して混合糞W3の内部温度を満遍なく高めることができる。これにより、混合糞W3の加熱乾燥を促進することができるだけでなく、均一な乾燥を行うことができる(半炭化糞の乾燥促進効果)。
【0124】
また、高水分な家畜糞W1に低水分な半炭化糞W2を混合することで、混合糞W3をべたつかない程度の水分まで下げることができる。これにより、加熱乾燥時に混合糞W3の塊ができにくく且つ加熱乾燥機16の回転ドラム46の内壁等に付着しにくくなるので、混合糞W3を一層均一に乾燥することができる(半炭化糞の水分低減効果)。
また、家畜糞W1に半炭化糞W2を混合することで、おが屑や籾殻等を混合して水分低減を行うよりも家畜糞W1の処理量をアップできる(半炭化糞の処理量アップ効果)。
【0125】
これらの効果により、本発明の乾燥糞の製造方法は、家畜糞を加熱乾燥する際の悪臭問題や不均一乾燥の問題を解決でき且つ沢山の家畜糞を加熱乾燥できる。これにより、本発明の乾燥糞の製造方法及び製造システム10は、家畜糞W1を加熱乾燥する際の悪臭問題や不均一乾燥の問題を解決でき且つ家畜糞処理量を低減させることなく乾燥糞W4を製造できる。
【0126】
製造された乾燥糞W4は、図1に示すように、貯留タンク54Bから連結配管27を介して製品タンク29等に排出される。乾燥糞W4は半炭化糞が5~20質量%の範囲で含有されていることが好ましい。家畜糞W1に半炭化糞W2を5質量%未満では、上記した半炭化糞W2の吸着脱臭効果、乾燥促進効果、水分低減効果を発揮し難いと共に20質量%を超えると、半炭化糞W2の製造負担が大きくなってしまい、家畜糞W1から乾燥糞W4を製造することで家畜糞W1を減容化するという本来の目的からはずれてしまう。
【0127】
乾燥糞の製造システム10の第1の実施の形態を用いて製造された本発明の乾燥糞W4の用途としては、燃料や家畜舎に敷く敷料として好適に使用することができる。乾燥糞W4を燃料の用途に使用する場合、乾燥糞に、おが屑、籾殻、間伐材の何れかを混合することが好ましい。これにより、燃焼性を改善することができる。
【0128】
[乾燥糞の製造方法の第2の実施の形態]
次に、上記の如く構成された乾燥糞の製造システム10の第2の実施の形態を用いて、本発明の乾燥糞の製造方法の第2の実施の形態を説明する。
図7の(B)は、乾燥糞の製造方法の第2の実施の形態のプロセスフローを説明する説明図である。
【0129】
図7の(B)に示すように、乾燥糞の製造システム10の第2の実施の形態は、基本的には第1の実施の形態と同様であり、家畜糞W1を発酵させて製造した発酵糞W5に半炭化糞製造機12で製造した半炭化糞W2を混合機14で混合して混合糞W3を製造する部分が相違する。したがって、半炭化糞製造機12、混合機14、加熱乾燥機16の操作は第1の実施の形態と同様なので、ここでは発酵糞製造機100での操作だけを説明する。
【0130】
即ち、図6に示すように、発酵糞製造機100の少なくとも1つの発酵槽102に家畜糞W1の堆積物を形成する。この場合、家畜糞置き場15に堆積されている家畜糞W1を発酵槽102に供給してもよく、家畜舎で発生した家畜糞W1を発酵槽102に直接供給してもよい。また、加熱乾燥機16の排気管84Aと曝気用配管110とを連結ホース126で連結する。
【0131】
この状態で、図7の(A)で説明した乾燥糞の製造方法の第1の実施の形態を行い、加熱乾燥機16の高温な乾燥排ガスを発酵糞製造機100に供給する。加熱乾燥機16の高温な乾燥排ガスは、連結ホース126及び発酵糞製造機100の曝気用配管110を介して曝気管106に送られる。そして、曝気管106の多数の噴出孔106Aから発酵槽102に堆積された家畜糞W1の堆積物の底部に向けて噴出する。
【0132】
噴出した乾燥排ガスは堆積物に浸透して家畜糞W1を温めると共に乾燥排ガスの噴出力により堆積物をかき混ぜて空気を入れる。これによって、家畜糞W1の中に含まれる易分解性有機物を好気性の微生物で分解して発酵させることにより発酵糞W5を製造する。
【0133】
製造した発酵糞W5は、図7の(B)に示すように、混合機14に供給されて半炭化糞製造機12で製造された半炭化糞W2と混合されて混合糞W3が製造される。即ち、家畜糞W1の代わりに家畜糞W1から製造した発酵糞W5に半炭化糞W2を混合して混合糞W3を製造する。その後のプロセスは第1の実施の形態と同様である。
【0134】
これにより、家畜糞W1を発酵させた発酵糞W5に半炭化糞W2が含有された乾燥糞W4、即ち堆肥が製造される。製造された発酵糞W5は家畜糞W1よりも水分が少ないので、家畜糞W1に半炭化糞W2を混合した混合糞W3を加熱乾燥する場合(第1の実施の形態)よりも加熱乾燥機16における乾燥負荷を軽減できる。更には、発酵糞W5は好気性菌を多く含み、好気性環境下では家畜糞W1よりも発熱し易いので、混合糞W3の加熱乾燥を促進すると共に混合糞W3中の半炭化糞W2の燃焼を助長する。
【0135】
本発明の乾燥糞の製造方法の第2の実施の形態のように、発酵糞W5に半炭化糞W2が含有された乾燥糞W4の用途としては、肥料として好適に使用することができる。
上記の如く本発明の乾燥糞の製造方法の第1の実施の形態及び第2の実施の形態で製造された乾燥糞W4は半炭化糞W2が含有されており、次の特徴を有する。
【0136】
半炭化糞W2は多孔質の微細構造を持っているので、内部表面積が大きくなり、吸着性・保水性・保肥性・透水性・通気性に優れている。したがって、乾燥糞W4の中に半炭化糞W2が含有されていることにより、燃料としたときに燃焼し易い。また、肥料としたときに保水性・保肥性・透水性・通気性を向上できる。更には、敷料としたときに半炭化糞W2の吸着脱臭効果により家畜の尿臭や糞臭を抑制できる。
【0137】
なお、家畜糞W1に低水分な籾殻、おが屑、間伐材等の混ぜ物を混合して加熱乾燥機16で加熱乾燥することも考えられるが、混ぜ物を混合する分、家畜糞W1の加熱乾燥の処理量が減ってしまう。これに対して、本発明の乾燥糞の製造方法及び製造システムのように、家畜糞W1の一部で製造した半炭化糞W2を家畜糞W1に混合することで、家畜糞W1の加熱乾燥の処分量が減ることを防止できる。
【符号の説明】
【0138】
10…乾燥糞の製造システム、12…半炭化糞製造機、14…混合機、14A…混合槽、14B…攪拌機、14C…移送ポンプ、14D…移送配管、14E…金網、15…家畜糞置き場、15A…金網、16…加熱乾燥機、18…台車、18A…搭載台、18B…車輪、18C…連結具、18D…回転軸、20…コンベア筒、20A…供給口、22…スクリューフィーダ、22A…回転軸、22B…スクリュー羽根、24…煙道用カバー、24A…煙道、24B…煙道入口、26…燃焼炉、26A…燃焼缶、26B…燃焼皿、26C…上面開口、27…配管、28…半炭化糞排出ライン、28A…排出ホッパー、28B…貯留タンク、28C…スクリューコンベア、28D…連結具、29…製品タンク、30…第1の支持フレーム、32…基台フレーム、32A…回動軸、34…投入ホッパー、34A…開閉蓋、36…乾留ガス排気管、36A…逆止弁、38A、38B…軸受、40…無段階モータ、42…煙突、44…搬送コンベア、46…回転ドラム、46A…回転軸、46B…突出部、47…前側軸受、48…煙道用カバー、48A…煙道、48B…煙道入口、49…後側軸受、50…燃焼炉、50A…燃焼缶、50B…燃焼皿、50C…上面開口、52…傾動手段、54…乾燥糞排出ライン、54A…排出ホッパー、54B…貯留タンク、54C…スクリューコンベア、54D…連結具、56…第2の支持フレーム、58…繋ぎ部材、60…供給部、62…排出部、63…煙突、64…排出口、65…邪魔板、66…開閉蓋、67…フランジ、68…スクリューコンベア、68A…スクリュー羽根、69…シール部材、70…コンベアケーシング、71…前側ローラ、71A…軸受部、72…供給ホッパー、72A…供給口、73…後側ローラ、73A…軸受部、74…第1のギア、76…無段階モータ、76A…モータ軸、78…第2のギア、80…無端状チェーン、82…送気チャンバ、82A…送気管、82B…送気ファン、84…排気チャンバ、84A…排気管、86…油圧シリンダ、86A…油圧シリンダ本体部、86B…シリンダロッド、88…攪拌板、90…制御盤、92…自動車、100…発酵糞製造機、102、102A、102B、102C…発酵槽、104…曝気容器、104A…上面開口、106…曝気管、106A…噴出孔、108…粒状部材、110…曝気用配管、110A…枝配管、110B…幹配管、110C…連結具、110D…開閉バルブ、110E…ドレイン抜き配管、110F…バルブ、112…槽本体、114…仕切り板、116…装置フレーム、118…底面開口、120…金網、122…空間、124…ドレイン抜き配管、124A…バルブ、126…連結ホース、126A…連結具、W1…家畜糞、W2…半炭化糞、W3…混合糞、W4…乾燥糞、W5…発酵糞
【要約】
【課題】家畜糞を加熱乾燥する際の悪臭問題や不均一乾燥の問題を解決でき且つ家畜糞処理量を低減させることなく乾燥糞を製造できる。
【解決手段】牛糞、豚糞、鶏糞等の家畜糞W1を加熱乾燥して乾燥糞W4を製造する乾燥糞の製造システム10において、加熱乾燥する前の家畜糞W1の一部を嫌気性環境下で熱分解して半炭化糞W2を製造する半炭化糞製造機12と、製造した半炭化糞W2を家畜糞W1に混合して混合糞W3を製造する混合機14と、製造した混合糞W3を好気性環境下で加熱乾燥して乾燥糞W4を製造する加熱乾燥機16と、を備えた。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7