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特許7120690関節位置推定装置、関節位置推定方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】関節位置推定装置、関節位置推定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20220809BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20220809BHJP
【FI】
G06T7/00 660Z
G06T7/70 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021505611
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005836
(87)【国際公開番号】W WO2020184066
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2019046390
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 夏美
【審査官】山田 辰美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-91108(JP,A)
【文献】特開2017-116403(JP,A)
【文献】特開2001-195599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する画像データ取得と、
前記画像データ取得が取得した画像データから人体部位を推定する推定と、
前記推定が複数の人体部位を推定した場合、前記推定が推定した人体部位の領域、および、前記人体部位の領域以外の領域それぞれに対して、一または複数の画素にマーキングするマーキングと、
前記マーキングによるマーキング後の画像データに対して、分水嶺アルゴリズムを適用して、前記画像データ内の領域を複数に分割する分割と、
前記分割が分割した領域のうち、関節に隣接する人体部位に対応する2つの領域から、関節位置を計算する計算と、
を備える、関節位置推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の関節位置推定装置であって、
関節に隣接する、前記推定が推定した人体部位を包含する領域を設定する領域設定
をさらに備え、
前記マーキングは、前記領域設定が設定した領域内でマーキングし、
前記分割は、前記領域設定が設定した領域を複数に分割する、
関節位置推定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の関節位置推定装置であって、
前記画像データは、画素毎の深度が付加された画像データである、
関節位置推定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の関節位置推定装置であって、
前記分割は、前記マーキングがマーキングした画素と、画素値が前記画素の所定範囲内である画素とを同じ領域として、領域を複数に分割する、
関節位置推定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の関節位置推定装置であって、
前記計算は、前記2つの領域間が最小距離となる前記2つの領域それぞれにおける位置を基準として、関節位置を計算する、
関節位置推定装置。
【請求項6】
画像データを取得し、
前記画像データに対して、人体部位を推定し、
前記画像データに対して複数の人体部位を推定した場合、推定した人体部位の領域、および、前記人体部位の領域以外の領域それぞれに対して、一または複数の画素にマーキングし、
マーキング後の画像データに対して、分水嶺アルゴリズムを適用して、前記画像データ内の領域を複数に分割し、
分割した複数の領域のうち、関節に隣接する人体部位に対応する2つの領域から、関節位置を計算する、
関節位置推定方法。
【請求項7】
画像データを取得するコンピュータに、
前記画像データに対して、人体部位を推定させ、
複数の人体部位が推定された場合、推定された人体部位の領域、および、前記人体部位の領域以外の領域それぞれに対して、一または複数の画素にマーキングさせ、
前記マーキング後の画像データに対して、分水嶺アルゴリズムを適用して、前記画像データ内の領域を複数に分割させ、
分割された領域のうち、関節に隣接する人体部位に対応する2つの領域から、関節位置を計算させる、
命令を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データから関節位置を推定する関節位置推定装置および関節位置推定方法に関し、さらには、これらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人物を撮像装置で撮像し、その人物の姿勢、人物が行う動作(ジェスチャなど)を推定する様々な技術が提案されている。例えば、非特許文献1には、人物の関節位置を推定して、人物の姿勢を推定する技術が開示されている。非特許文献1では、深度画像から人物の人体部位を推定し、その推定結果を用いて関節位置推定器により関節位置を推定している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】高橋龍平、“特別研究報告書 CNNによる深度画像を用いた視点不変な人物姿勢推定”、平成30年2月8日、インターネット<URL:http://www.mm.media.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2018/02/2017-b-takahashi.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1では、人体部位の推定を精度よく行わないと、関節位置の推定精度が低下するという問題点があった。
【0005】
本発明の目的の一例は、関節位置を精度よく推定できる、関節位置推定装置、関節位置推定方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における関節位置推定装置は、
画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した画像データから人体部位を推定する推定部と、
前記推定部が複数の人体部位を推定した場合、前記推定部が推定した人体部位の領域、および、前記人体部位の領域以外の領域それぞれに対して、一または複数の画素にマーキングするマーキング部と、
前記マーキング部によるマーキング後の画像データに対して、分水嶺アルゴリズムを適用して、前記画像データ内の領域を複数に分割する分割部と、
前記分割部が分割した領域のうち、関節に隣接する人体部位に対応する2つの領域から、関節位置を計算する計算部と、
を備える。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における関節位置推定方法は、
画像データを取得するステップと、
前記画像データに対して、人体部位を推定するステップと、
前記画像データに対して複数の人体部位を推定した場合、推定した人体部位の領域、および、前記人体部位の領域以外の領域それぞれに対して、一または複数の画素にマーキングするステップと、
マーキング後の画像データに対して、分水嶺アルゴリズムを適用して、前記画像データ内の領域を複数に分割するステップと、
分割した領域のうち、関節に隣接する人体部位に対応する2つの領域から、関節位置を計算するステップと、
を備える。
【0008】
更に、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは、画像データを取得するコンピュータに、
前記画像データに対して、人体部位を推定するステップと、
複数の人体部位を推定した場合、推定した人体部位の領域、および、前記人体部位の領域以外の領域それぞれに対して、一または複数の画素にマーキングするステップと、
マーキング後の画像データに対して、分水嶺アルゴリズムを適用して、前記画像データ内の領域を複数に分割するステップと、
分割した領域のうち、関節に隣接する人体部位に対応する2つの領域から、関節位置を計算するステップと、
を実行させる命令を含む。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、関節位置を精度よく推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1における関節位置推定装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、関節位置推定装置の構成を具体的に示すブロック図である。
図3図3は、画像データ一例を示す図である。
図4図4は、特徴ベクトル計算部が求めた特徴量を示す図である。
図5図5は、図4に示す推定部による推定結果に対して設定した領域を示す図である。
図6図6は、マーキング部によるマーキング結果を示す図である。
図7図7は、分割部による領域分割結果を示す図である。
図8図8は、計算部による計算方法を説明するための図である。
図9図9は、関節位置推定装置による動作を示すフロー図である。
図10図10は、実施形態における関節位置推定装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明における一実施形態の関節位置推定装置および関節位置推定方法について、図1図10を参照しながら説明する。
【0012】
[装置構成]
図1は、実施形態1における関節位置推定装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0013】
関節位置推定装置1は、画像データから、人体の部位(例えば手のひらと前腕など)を推定して、推定した人体部位から関節の位置を計算する装置である。この関節位置推定装置1は、画像データ取得部2、推定部3、マーキング部4、分割部5、および計算部6を備えている。
【0014】
画像データ取得部2は画像データを取得する。
【0015】
推定部3は、画像データ取得部2が取得した画像データから人体部位を推定する。
【0016】
マーキング部4は、推定部3が複数の人体部位を推定した場合、推定部3が推定した人体部位の領域、および、その人体部位の領域以外の領域それぞれに対して、一または複数の画素にマーキングする。
【0017】
分割部5は、マーキング部4によるマーキング後の画像データに対して、分水嶺アルゴリズムを適用して、画像データ内の領域を複数に分割する。
【0018】
計算部6は、分割部5が分割した領域のうち、関節に隣接する人体部位に対応する2つの領域から、関節位置を計算する。
【0019】
このように、本実施形態においては、人体部位の推定した結果に対してマーキングをし、分水嶺アルゴリズムを適用している。このため、マーキングを精度よく行うことができ、その結果を入力として、分水嶺アルゴリズムを適用することで、画像データの領域分割を精度よく行える。その結果、関節に隣接する人体部位の領域も精度よく推定できるため、信頼度の高い、関節(手首)の位置の計算結果が得られる。
【0020】
続いて、図2を参照して、本実施形態における関節位置推定装置1の構成をより具体的に説明する。図2は、関節位置推定装置1の構成を具体的に示すブロック図である。
【0021】
関節位置推定装置1は、上記した画像データ取得部2、推定部3、マーキング部4、分割部5、および計算部6に加え、領域設定部7を備えている。
【0022】
画像データ取得部2は画像データ50を取得する。画像データ取得部2は、有線または無線LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して、画像データ50を取得してもよいし、近距離無線通信などにより画像データ50を取得してもよい。また、関節位置推定装置1には撮像装置が直接接続され、または、関節位置推定装置1は撮像装置を備え、画像データ取得部2は、その撮像装置から画像データ50を取得してもよい。
【0023】
図3は、画像データ50の一例を示す図である。画像データ50は、人体の前腕から指にかけて撮像された画像である。本実施形態における画像データ50は、画素毎の深度が付加された画像データ(以下、TOF画像と言う)である。TOF画像は、撮像装置から撮像対象までの距離を示す情報(深度情報)が各画素に対応づけられた画像である。なお、画像データ50は、TOF画像に限定されるものではなく、2次元画像であってもよい。
【0024】
また、画像データ50は、人物の全体像が撮像された画像であってもよい。この場合、例えば画像データ取得部2が、人物の全体像が撮像された画像から関節を含む部位(例えば、手全体)を推定して、その部位の画像データを抽出するようにしてもよい。そして、以降の処理は、抽出した画像データに対して行われるようにしてもよい。
【0025】
推定部3は、画像データ50に写っている人体部位の種別(前腕、指など)を推定する。推定部3は、特徴ベクトル計算部31と、推定実行部32とを有している。
【0026】
特徴ベクトル計算部31は、画像データ50の画素ごとに特徴量(特徴ベクトル)を求める。図4は、特徴ベクトル計算部31が求めた特徴量を示す図である。図4に示すように、特徴ベクトル計算部31は、各特徴量51、52、53、54を求める。推定実行部32は、ニューラルネットワークなどによる機械学習を行い、その学習モデル60を用いて、特徴ベクトル計算部31が求めた特徴量から、画像データ50に写っている物体の種別を推定する。図4の場合、推定実行部32は、特徴量51は前腕の特徴量であり、特徴量52は手のひらの特徴量であり、特徴量53は指の特徴量であると推定する。また、推定実行部32は、特徴量54は、人体部位以外であり、背景に写った物体の特徴量であると推定する。なお、図4では、特徴ベクトル計算部31が求めた特徴量の理解のために、図3で示す人体部位を破線で示している。
【0027】
なお、画像データ50がTOF画像であることにより、推定部3での人体部位の推定精度は高くなる。例えば、画像データ50が関節を含む画像である場合、関節が曲げられた姿勢であっても、特徴ベクトル計算部31は、画素ごとの深度情報を利用することで、特徴量を精度よく求めることができる。その結果、推定実行部32による人体部位の推定精度は高くなる。
【0028】
領域設定部7は、推定部3が推定した人体部位のうち、関節に隣接する人体部位である前腕および手のひらを包含する領域を設定する。図5は、図4に示す推定部3による推定結果に対して設定した領域55を示す図である。図5では、領域55は、指の特徴量53を包含しているが、少なくとも、関節(手首)に隣接する前腕の特徴量51、および手のひらの特徴量52を包含していればよい。領域55を設定することで、以降の処理において、不要な領域に対して処理が行われないようにできる。
【0029】
マーキング部4は、領域設定部7が設定した領域55内の一または複数の画素をマーキングする。図6は、マーキング部4によるマーキング結果を示す図である。マーキング部4は、領域55内において、関節(手首)に隣接する人体部位(前腕、手のひら)と、人体部位以外の領域(背景)に対して初期マーキングする。図6に示すマーキング56は、前腕の特徴量51に対して設定した初期マーキングである。マーキング57は、手のひらの特徴量52に対して設定した初期マーキングである。マーキング58は、背景の領域に対して設定した初期マーキングを示す。
【0030】
マーキング部4は、前腕の特徴量51、および、手のひらの特徴量52に対して初期マーキングする場合、他の領域との境界に近いとノイズが影響するため、ノイズの影響を防ぐために、各特徴量の領域の中心部をマーキングする。また、マーキング部4は、背景の領域に対して初期マーキングする場合、マーキング56、57より一定距離範囲外の位置にマーキングする。なお、マーキング部4は、一画素のみをマーキングしてもよいが、後述する分水嶺アルゴリズムにおいて、TOF画像の深度値の変化が滑らかではない場合、マーキングした領域が広がらないことがある。したがって、マーキング部4は、複数の画素をマーキングすることが好ましい。
【0031】
分割部5は、マーキング部4が設定したマーキング56、57、58を入力とする分水嶺アルゴリズムを適用して、領域設定部7が設定した領域55を複数の領域に分割する。分水嶺アルゴリズムでは、マーキング56、57、58を、画素値(深度値)の極小値(または極大値)として、領域を広げつつ画素値の極大値(または極小値)となる点を求めていく。その極大値となる点を境界として、画素値(深度値)が近い領域を一つの領域とする。図7は、分割部5による領域分割結果を示す図である。図7では、領域55は、前腕領域59Aと、手のひら領域59Bと、背景領域59Cとに分割されている。
【0032】
なお、分水嶺アルゴリズムでは、必ずしもマーキング数と同じ数の領域に分割されるわけではなく、図7において、4つ以上の領域に分割される場合もある。また、分割部5は、深度値を用いてマーキングした領域を広げているが、画像データ50の各画素の情報であれば、輝度値などを用いてもよい。
【0033】
計算部6は、分割部5が分割した領域のうち、人体部位に対応する2つの領域59A、59Bから、関節位置を計算する。図8は、計算部6による計算方法を説明するための図である。計算部6は、領域59A、59Bそれぞれに対してラベリング処理を行い、各領域の輪郭を取得する。図8では、輪郭は概略的に示している。図8に示すように、領域59Aと、領域59Bとが離れている場合、計算部6は、2つの領域59A、59Bにおいて、互いに最も近くなる座標位置59A1、59B1を求める。計算部6は、座標位置59A1、59B1を繋ぐ最短直線Lを包含する領域59Dを計算して、関節位置とする。なお、2つの領域59A、59Bの輪郭が重なる場合、計算部6は、重なり部分を関節位置としてもよい。
【0034】
[動作説明]
次に、本実施形態における関節位置判定装置の動作について図9を用いて説明する。図9は、関節位置推定装置1による動作を示すフロー図である。以下の説明においては、適宜図1図8を参酌する。また、本実施形態では、関節位置推定装置を動作させることによって、関節位置推定法が実施される。よって、本実施形態における関節位置推定方法の説明は、以下の関節位置推定装置の動作説明に代える。
【0035】
まず、前提として、撮像装置で関節を含む人体部位が撮像され、その画像データが関節位置推定装置1に入力されるものとする。
【0036】
上述の前提において、画像データ取得部2は入力された画像データを取得する(S1)。次に、推定部3の特徴ベクトル計算部31は、画像データ50の画素ごとに特徴量51~54(図4参照)を求める(S2)。そして、推定部3の推定実行部32は、特徴ベクトル計算部31が求めた特徴量から、その特徴量をもつ物体の種別を認識し、画像データ50内における人体部位を推定する(S3)。
【0037】
続いて、領域設定部7は、位置推定対象の関節に隣接する、推定部3が推定した人体部位を包含する領域55(図5参照)を設定する(S4)。マーキング部4は、領域設定部7が設定した領域55内において、初期マーキングする(S5)。S5では、マーキング部4は、位置推定対象の関節(手首)に隣接する前腕のマーキング56(図6参照)、および、手のひらのマーキング57と、人体部位以外の領域(背景)のマーキング58とを設定する。
【0038】
分割部5は、マーキング56、57、58を入力とする分水嶺アルゴリズムを適用して、S4で設定した領域55を複数の領域59A、59B、59C(図7参照)に分割する(S6)。そして、計算部6は、分割部5が分割した領域のうち、人体部位に対応する2つの領域59A、59Bから、関節位置を計算する(S7)。
【0039】
[本実施形態による効果]
以上のように本実施形態によれば、画像データ50から人体部位を推定し、推定結果に対して初期マーキングしている。このため、画像データ50において、マーキングする対象領域、例えば前腕または手のひらの形状が、複雑な形状であっても、初期マーキングを精度よく行える。その初期マーキングを入力として、分水嶺アルゴリズムを利用することで、関節に隣接する部位である、前腕および手のひらの2つの領域の推定精度は高くなる。前腕または手のひらの一方の領域が明確に判断できないと、2つの領域の間にある関節(手首)の位置を精度よく計算できないが、2つの領域を精度よく推定することで、信頼度の高い関節(手首)の位置の計算結果を得ることができる。
【0040】
また、関節、例えば手首の位置が決まると、手首の先にある指の位置を推定しやすくなり、また、手の動作、手の姿勢も推定しやすくなる。その結果、手を動かしたジェスチャーを認識する装置などに適用することができる。
【0041】
[プログラム]
本発明の実施形態におけるプログラムは、コンピュータに、図9に示すステップS1~S7を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施形態における関節位置推定装置と関節位置推定方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、画像データ取得部2、推定部3、マーキング部4、分割部5および計算部6として機能し、処理を行なう。
【0042】
また、本実施形態では、画像データ取得部2、推定部3、マーキング部4、分割部5および計算部6は、コンピュータに備えられたハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって、またはこのデータファイルが格納された記録媒体をコンピュータと接続された読取装置に搭載することによって実現されている。
【0043】
また、本実施形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、画像データ取得部2、推定部3、マーキング部4、分割部5および計算部6のいずれかとして機能しても良い。
【0044】
[物理構成]
ここで、本実施形態におけるプログラムを実行することによって、関節位置推定装置1を実現するコンピュータについて図10を用いて説明する。図10は、本実施形態における関節位置推定装置1を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0045】
図10に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、またはCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。
【0046】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0047】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0048】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0049】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、またはCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0050】
なお、本実施形態における関節位置推定装置1は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、関節位置推定装置1は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0051】
上述した実施形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)~(付記15)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0052】
(付記1)
画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した画像データから人体部位を推定する推定部と、
前記推定部が複数の人体部位を推定した場合、前記推定部が推定した人体部位の領域、および、前記人体部位の領域以外の領域それぞれに対して、一または複数の画素にマーキングするマーキング部と、
前記マーキング部によるマーキング後の画像データに対して、分水嶺アルゴリズムを適用して、前記画像データ内の領域を複数に分割する分割部と、
前記分割部が分割した領域のうち、関節に隣接する人体部位に対応する2つの領域から、関節位置を計算する計算部と、
を備える、関節位置推定装置。
【0053】
(付記2)
付記1に記載の関節位置推定装置であって、
関節に隣接する、前記推定部が推定した人体部位を包含する領域を設定する領域設定部、
をさらに備え、
前記マーキング部は、前記領域設定部が設定した領域内でマーキングし、
前記分割部は、前記領域設定部が設定した領域を複数に分割する、
関節位置推定装置。
【0054】
(付記3)
付記1または付記2に記載の関節位置推定装置であって、
前記画像データは、画素毎の深度が付加された画像データである、
関節位置推定装置。
【0055】
(付記4)
付記1から付記3までのいずれか一つに記載の関節位置推定装置であって、
前記分割部は、前記マーキング部がマーキングした画素と、画素値が前記画素の所定範囲内である画素とを同じ領域として、領域を複数に分割する、
関節位置推定装置。
【0056】
(付記5)
付記1から付記4までのいずれか一つに記載の関節位置推定装置であって、
前記計算部は、前記2つの領域間が最小距離となる前記2つの領域それぞれにおける位置を基準として、関節位置を計算する、
関節位置推定装置。
【0057】
(付記6)
画像データを取得するステップと、
取得した画像データに対して、人体部位を推定するステップと、
複数の人体部位を推定した場合、推定した人体部位の領域、および、前記人体部位の領域以外の領域それぞれに対して、一または複数の画素にマーキングするステップと、
マーキング後の画像データに対して、分水嶺アルゴリズムを適用して、前記画像データ内の領域を複数に分割するステップと、
分割した領域のうち、関節に隣接する人体部位に対応する2つの領域から、関節位置を計算するステップと、
を備える、関節位置推定方法。
【0058】
(付記7)
付記6に記載の関節位置推定方法であって、
関節に隣接する、推定した人体部位を包含する領域を設定するステップ、
をさらに備え、
前記一または複数の画素にマーキングするステップでは、設定した領域内でマーキングし、
前記画像データ内の領域を複数に分割するステップでは、設定した領域を複数に分割する、
関節位置推定方法。
【0059】
(付記8)
付記6または付記7に記載の関節位置推定方法であって、
前記画像データは、画素毎の深度が付加された画像データである、
関節位置推定方法。
【0060】
(付記9)
付記6から付記8までのいずれか一つに記載の関節位置推定方法であって、
前記画像データ内の領域を複数に分割するステップでは、マーキングした画素と、画素値が前記画素の所定範囲内である画素とを同じ領域として、領域を複数に分割する、
関節位置推定方法。
【0061】
(付記10)
付記6から付記9までのいずれか一つに記載の関節位置推定方法であって、
前記関節位置を計算するステップでは、前記2つの領域間が最小距離となる前記2つの領域それぞれにおける位置を基準として、関節位置を計算する、
関節位置推定方法。
【0062】
(付記11)
画像データを取得するコンピュータに、
前記画像データに対して、人体部位を推定するステップと、
複数の人体部位を推定した場合、推定した人体部位の領域、および、前記人体部位の領域以外の領域それぞれに対して、一または複数の画素にマーキングするステップと、
マーキング後の画像データに対して、分水嶺アルゴリズムを適用して、前記画像データ内の領域を複数に分割するステップと、
分割した領域のうち、関節に隣接する人体部位に対応する2つの領域から、関節位置を計算するステップと、
を実行させる命令を含む、プログラム。
【0063】
(付記12)
付記11に記載のプログラムであって、
記コンピュータに、
関節に隣接する、推定された人体部位を包含する領域を設定するステップ、
を実行させる命令をさらに含み、
前記前記一または複数の画素にマーキングするステップでは、設定された領域内でマーキングし、
前記画像データ内の領域を複数に分割するステップでは、設定された領域を複数に分割する、
プログラム
【0064】
(付記13)
付記11または付記12に記載のプログラムであって、
前記画像データは、画素毎の深度が付加された画像データである、
プログラム
【0065】
(付記14)
付記11から付記13までのいずれか一つに記載のプログラムであって、
前記画像データ内の領域を複数に分割するステップでは、マーキングされた画素と、画素値が前記画素の所定範囲内である画素とを同じ領域として、領域を複数に分割する、
プログラム
【0066】
(付記15)
付記11から付記14までのいずれか一つに記載のプログラムであって、
前記関節位置を計算するステップでは、前記2つの領域間が最小距離となる前記2つの領域それぞれにおける位置を基準として、関節位置を計算する、
プログラム
【0067】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0068】
この出願は、2019年3月13日に出願された日本出願特願2019-46390を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、関節位置を精度よく推定できる。
【符号の説明】
【0070】
1 :関節位置推定装置
2 :画像データ取得部
3 :推定部
4 :マーキング部
5 :分割部
6 :計算部
7 :領域設定部
31 :特徴ベクトル計算部
32 :推定実行部
50 :画像データ
60 :学習モデル
51、52、53、54 :特徴量
55 :領域
56、57、58 :マーキング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10