(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】接着剤セット、接着方法および粉末
(51)【国際特許分類】
C09J 4/04 20060101AFI20220809BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20220809BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220809BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220809BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J5/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2021555408
(86)(22)【出願日】2021-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2021022422
(87)【国際公開番号】W WO2021256406
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020103382
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520214950
【氏名又は名称】有限会社太田自動車
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【氏名又は名称】木村 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【氏名又は名称】木村 薫
(72)【発明者】
【氏名】太田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】太田 銀也
(72)【発明者】
【氏名】太田 満也
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-124522(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19825764(DE,A1)
【文献】特開昭62-007783(JP,A)
【文献】特開平01-307477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/00
JSTPlus/JST5874/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着の対象となる第1の対象物と第2の対象物に提供される接着剤と、前記第1の対象物と前記第2の対象物の接着に用いられる粉末と、を有し
、
前記粉末は、前記第1の対象物と前記第2の対象物に前記接着剤を提供した後に前記接着剤に提供され、
前記粉末は、灰、石灰、重曹、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、およびパテ材料のうち少なくともいずれかの粉末を含み、
前記接着剤は、樹脂系の接着剤とし、
前記樹脂系の接着剤は、シアノアクリレート樹脂系の接着剤とすることを特徴とする接着剤セット。
【請求項2】
前記粉末は、
パテ材料の粉末を含むことを特徴とする請求項1に記載の接着剤セット。
【請求項3】
前記粉末は、
硬化剤を含むことを特徴とする請求項
2に記載の接着剤セット。
【請求項4】
前記粉末は、
有機溶剤を含むことを特徴とする請求項
2に記載の接着剤セット。
【請求項5】
前記
パテ材料の粉末は、
流動性を有するパテ材料を硬化させた後に、前記硬化させた後のパテ材料を所定に粉末状にして形成することを特徴とする請求項
2に記載の接着剤セット。
【請求項6】
前記
流動性を有するパテ材料の硬化は、硬化剤を用いて行うこととし、前記硬化させた後のパテ材料を所定に粉末状にすることにより、前記パテ材料の粉末は、前記硬化剤を含むことを特徴とする請求項
5に記載の接着剤セット。
【請求項7】
前記
流動性を有するパテ材料の重量に対する前記硬化剤の重量の比は、0.001~0.05とすることを特徴とする請求項
6に記載の接着剤セット。
【請求項8】
前記
シアノアクリレート樹脂系の接着剤は、α-シアノアクリレートを含むことを特徴とする請求項
1に記載の接着剤セット。
【請求項9】
前記
第1の対象物と前記第2の対象物の接着は、前記第1の対象物の端部と前記第2の対象物の端部を相互に突き合わせることにより行うとともに、前記突き合わせ端部を前記第1の対象物と前記第2の対象物の接着部分とすることを特徴とする請求項
1に記載の接着剤セット。
【請求項10】
前記接着
部分を凹状とすることを特徴とする請求項1に記載の接着剤セット。
【請求項11】
接着の対象となる第1の対象物と第2の対象物を接着させる接着方法であって、
前記第1の対象物と前記第2の対象物に接着剤を提供する工程と、
前記第1の対象物と前記第2の対象物に前記接着剤を提供した後に前記接着剤に粉末を提供し、前記接着剤を硬化させ、前記第1の対象物と前記第2の対象物を接着させる工程と、を含み、
前記粉末は、灰、石灰、重曹、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、およびパテ材料のうち少なくともいずれかの粉末を含み、
前記接着剤は、樹脂系の接着剤とし、
前記樹脂系の接着剤は、シアノアクリレート樹脂系の接着剤とすることを特徴とする接着方法。
【請求項12】
前記
粉末は、パテ材料の粉末を含むことを特徴とする請求項11に記載の接着方法。
【請求項13】
前記第1の対象物
の端部と前記第2の対象物の
端部を相互に突き合わせて、前記突き合わせ端部を前記第1の対象物の端部と前記第2の対象物の接着部分とする工程を含むことを特徴とする請求項
11に記載の接着
方法。
【請求項14】
前記接着部分を凹状とする
工程を含むことを特徴とする請求項
11に記載の接着
方法。
【請求項15】
前記接着剤に粉末を提供した後に、再度前記接着剤を提供する工程と、
再度前記接着剤を提供した後に再度前記接着剤に前記粉末を提供する工程と、を含むことを特徴とする
請求項11に記載の接着方法。
【請求項16】
前記粉末
に水分を付与する工程を含むことを特徴とする請求項
11に記載の接着方法。
【請求項17】
接着の対象となる第1の対象物と第2の対象物に提供される接着剤とともに用いられ、前記第1の対象物と前記第2の対象物の接着に用いられる粉末であって、
前記第1の対象物と前記第2の対象物に前記接着剤を提供した後に前記接着剤に提供され、
灰、石灰、重曹、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、およびパテ材料のうち少なくともいずれかを含み、
前記接着剤は、樹脂系の接着剤とし、
前記樹脂系の接着剤は、シアノアクリレート樹脂系の接着剤とすることを特徴とする粉末。
【請求項18】
灰、重曹、セスキ炭酸ソーダ、およびパテ材料のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項17に記載の粉末。
【請求項19】
パテ材料を含むことを特徴とする請求項17に記載の粉末。
【請求項20】
硬化剤を含むことを特徴とする請求項19に記載の粉末。
【請求項21】
有機溶剤を含むことを特徴とする請求項19に記載の粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤セット、接着方法および粉末に関し、特に接着の対象となる第1の対象物と第2の対象物に提供される接着剤と、第1の対象物と第2の対象物の接着に用いられる粉末と、を有する接着剤セット、接着方法および粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種の接着剤が一般に広く利用されており、例えば、特許文献1には、瞬間的に接着する瞬間接着剤の例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、瞬間接着剤をはじめとする接着剤を使用すると、接着剤の硬化に時間がかかることがあり、各種の作業に支障きたすことがあった。このため、接着剤の硬化時間を短縮することができる接着方法等の開発が望まれていた。
【0005】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、接着剤の硬化時間を短縮することが可能となる接着剤セット、接着方法および粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の発明者は、鋭意検討した結果、接着剤に粉末を提供することにより、接着剤の硬化時間を短縮することが可能となることを見出した。
【0007】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明に係る接着剤セットは、接着の対象となる第1の対象物と第2の対象物に提供される接着剤と、前記第1の対象物と前記第2の対象物の接着に用いられる粉末と、を有することを特徴とする。
より詳しくは、前記粉末は、前記第1の対象物と前記第2の対象物に前記接着剤を提供した後に前記接着剤に提供されることが好ましい。
前記粉末は、おがくず、灰、石灰、重曹、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、金属、およびパテ材料のうち少なくともいずれかの粉末を含むことが好ましい。
【0008】
前記粉末は、パテ材料の粉末を含むことが好ましい。すなわち、本出願の発明者は、パテ材料の粉末を接着剤に提供することにより、接着剤の硬化時間を更に短縮することが可能となることを見出したものである。
【0009】
前記粉末は、有機溶剤を含むことが好ましい。
【0010】
前記パテ材料の粉末は、流動性を有するパテ材料を硬化させた後に、前記硬化させた後のパテ材料を所定に粉末状にして形成することが好ましい。
【0011】
前記流動性を有するパテ材料の硬化は、硬化剤を用いて行うこととし、前記硬化させた後のパテ材料を所定に粉末状にすることにより、前記粉末状のパテ材料を含む粉末は、前記硬化剤を含むことが好ましい。
【0012】
前記流動性を有するパテ材料の重量に対する前記硬化剤の重量の比は、0.001~0.05とすることが好ましい。
【0013】
前記接着剤は、樹脂系の接着剤とすることが好ましく、前記樹脂系の接着剤は、シアノアクリレート樹脂系の接着剤とすることが好ましい。前記シアノアクリレート樹脂系の接着剤は、α-シアノアクリレートを含むことが更に好ましい。
【0014】
前記第1の対象物と前記第2の対象物の接着は、前記第1の対象物の端部と前記第2の対象物の端部を相互に突き合わせることにより行うとともに、前記突き合わせ端部を前記第1の対象物と前記第2の対象物の接着部分とすることができる。
【0015】
前記接着部分を凹状とすることができる。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る接着方法は、接着の対象となる第1の対象物と第2の対象物を接着させる接着方法であって、前記第1の対象物と前記第2の対象物に接着剤を提供する工程と、前記第1の対象物と前記第2の対象物に前記接着剤を提供した後に前記接着剤に粉末を提供し、前記接着剤を硬化させ、前記第1の対象物と前記第2の対象物を接着させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
前記粉末は、おがくず、灰、石灰、重曹、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、金属、およびパテ材料のうち少なくともいずれかの粉末を含むことが好ましい。
前記粉末は、パテ材料の粉末を含むことが好ましい。
【0018】
前記接着部分を凹状とする工程を含むことが好ましい。
【0019】
前記接着剤に粉末を提供した後に、再度前記接着剤を提供する工程と、再度前記接着剤を提供した後に再度前記接着剤に前記粉末を提供する工程と、を含むことが好ましい。
前記接着剤は、樹脂系の接着剤とすることが好ましい。
【0020】
前記樹脂系の接着剤は、シアノアクリレート樹脂系の接着剤とし、前記粉末に水分を付与する工程を含むことが好ましい。
上記目的を達成するために、本発明に係る粉末は、接着の対象となる第1の対象物と第2の対象物に提供される接着剤とともに用いられ、前記第1の対象物と前記第2の対象物の接着に用いられることを特徴とする。
粉末は、おがくず、灰、石灰、重曹、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、金属、およびパテ材料のうち少なくともいずれかを含むことが好ましい。
粉末は、パテ材料を含むことが好ましい。
粉末は、硬化剤を含むことが好ましい。
粉末は、有機溶剤を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、接着剤の硬化時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る接着剤セットの構成を示す正面図であり、(a)は接着剤を示す正面図、(b)は粉末を示す正面図である。
【
図2】同接着剤セットにより第1の対象物および第2の対象物を接着した状態を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図3】同接着剤セットによる接着方法を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図4】同接着剤セットによる接着方法を示す
図3に続く図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図5】同接着剤セットによる接着方法を示す
図4に続く図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図6】同接着方法を説明するための
図5に続く正面図である。
【
図7】同接着方法を説明するための
図6の一部を拡大した拡大正面図である。
【
図8】同接着方法を説明するための
図6および
図7に続く正面図である。
【
図9】同接着方法を説明するための
図8に続く正面図である。
【
図10】同接着方法を説明するための
図9に続く正面図である。
【
図11】同接着方法を説明するための
図10に続く正面図である。
【
図12】同接着方法を説明するための
図11に続く正面図である。
【
図13】強度の測定方法を説明するための正面図である。
【
図14】強度の測定方法を説明するための別の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態は、接着剤セット、接着方法および粉末について開示するものである。
図1は、本発明の実施形態に係る接着剤セットの構成を示す正面図、
図2は、同接着剤セットにより第1の対象物および第2の対象物を接着した状態を示す正面図である。なお、以下の説明における各方向については、図において明示するものとする。
【0024】
図1および
図2を参照して本実施形態の接着剤セット1の概要を説明すると、接着剤セット1は、接着剤10と粉末20を有しており、所定の接着方法により、第1の対象物30と第2の対象物40の接着を行うことができる。
【0025】
すなわち、接着剤10は、接着の対象となる第1の対象物30と第2の対象物40の接着部分50に提供され、接着部分50において硬化しながら第1の対象物30と第2の対象物40を相互に接着させることができる。
【0026】
接着剤10は、硬化する前の状態において流動性を有している。より詳しくは、接着剤10は、硬化する前の状態において液状となっている。
【0027】
すなわち、接着剤10は、樹脂系の接着剤10とすることができ、樹脂系の接着剤10とするときは、シアノアクリレート樹脂系の接着剤10、酢酸ビニル樹脂系の接着剤10、エチレン酢酸ビニル樹脂系の接着剤10、エポキシ樹脂系の接着剤10、アクリル樹脂系の接着剤10、クロロプレン樹脂(ゴム)系の接着剤10、およびスチレンブタジエン樹脂(ゴム)系の接着剤10のうち少なくともいずれかとすることができる。
【0028】
接着剤10をシアノアクリレート樹脂系の接着剤10とするときは、更に接着剤10は、α-シアノアクリレートを含むことができる。
【0029】
粉末20は、接着部分50における第1の対象物30と第2の対象物40の接着に用いることができ、接着部分50に提供される(粉末20を接着部分50に提供するとは、接着部分50に提供した接着剤10に粉末20を提供する場合を含むものとする)。
【0030】
すなわち、粉末20は、接着の対象となる第1の対象物30と第2の対象物40に提供される接着剤10とともに用いられ、第1の対象物30と第2の対象物40の接着に用いられる。粉末20は、第1の対象物30と第2の対象物40の接着部分50に接着剤10を提供した後に接着部分50における接着剤10に上方から振りかけるように提供される。この粉末20の接着部分50への提供により、接着部分50において接着剤10を硬化させ、第1の対象物30と第2の対象物40を接着させることができる。
【0031】
粉末20は、例えば、ぬか、ゲルコート剤(白ゲル)、石灰、漆喰、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、重曹、ぬか、セメント、おがくず、コンクリート、塩、灰(例えば蚊取り線香の灰)、金属(例えば銅)、またはパテ材料の粉末を含むことができる。これら粉末のうち、1つの粉末のみを用いてもよく、複数の粉末を組み合わせて用いてもよい(粉末20は、ぬか、ゲルコート剤(白ゲル)、石灰、漆喰、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、重曹、ぬか、セメント、おがくず、コンクリート、塩、灰(例えば蚊取り線香の灰)、金属(例えば銅)、およびパテ材料の粉末のうち少なくともいずれか一つを含む)。詳細は後述するが、粉末20は、硬化時間の短縮または酸化した後の強度(接着力)の観点から、おがくず、灰(例えば蚊取り線香の灰)、石灰、重曹、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、金属(例えば銅)またはパテ材料が好ましい。
粉末20は、パテ材料の粉末を含む場合に硬化剤を含むことができる。また更に、粉末20は、有機溶剤を含むことができる。
【0032】
すなわち、パテ材料の粉末は、流動性を有するペースト状のパテ材料を硬化させた後に、硬化させた後のパテ材料を所定にやすり等で粉末状にして形成することができる。流動性を有するペースト状のパテ材料の硬化は、硬化剤および有機溶剤を用いて行うことができる。
【0033】
つまり、硬化剤および有機溶剤を用いて硬化させた後のパテ材料を所定に粉末状にすることで、パテ材料の粉末20は、硬化剤の成分および有機溶剤の成分を含むことができる。
【0034】
パテ材料は、例えば板金用のパテ材料(板金パテ)やポリエステルパテ材料(ポリエステルパテ)を用いることができる。また、パテ材料は、樹脂を含むことができ、樹脂は、合成樹脂を含むことができる。合成樹脂は、更にエポキシ系樹脂およびポリエステル系樹脂のうちいずれか一方を含むことができる。粉末20の形成において、流動性を有するペースト状のパテ材料の重量に対する硬化剤の重量の比は、0.001~0.05に設定されることが好ましく、0.003~0.03に設定されることが更に好ましく、0.005~0.02に設定されることが更に一層好ましい。
【0035】
硬化剤は、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンペルオキシド、およびポリアミノアミドのうち少なくともいずれかとすることができる。
【0036】
有機溶剤は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、ケトン類、およびエステル類のうち少なくともいずれかとすることができる。
【0037】
ここで、脂肪族炭化水素は、ヘキサン、ヘプタン、およびシクロヘキサンのうち少なくともいずれかとすることができる。
【0038】
また、芳香族炭化水素は、トルエンおよびキシレンのうち少なくともいずれかとすることができる。
【0039】
更に、アルコール類は、メタノール、エタノール、およびイソプロピルアルコールのうち少なくともいずれかとすることができる。
【0040】
更にまた、ケトン類は、アセトン、メチルエチルケトン、およびシクロヘキサノンのうち少なくともいずれかとすることができる。
【0041】
また更に、エステル類は、酢酸エチルおよび酢酸ブチルのうち少なくともいずれかとすることができる。
【0042】
第1の対象物30および第2の対象物40は、それぞれ平面から見て矩形状をなしており、金属、樹脂、および木材を含むことができる。金属は、鉄、アルミニウムを含むことができ、樹脂は、合成樹脂を含むことができ、合成樹脂は、プラスチックを含むことができる。
【0043】
第1の対象物30と第2の対象物40の接着は、第1の対象物30の一の端部30´つまり一の辺部30´と第2の対象物40の一の端部40´つまり一の辺部40´を相互に突き合わせることにより行うことができ、突き合わせ端部30´,40´を接着部分50とすることができる。
【0044】
第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´には、凹部30b,40bを前後方向に延びように設けることができる。凹部30a,40aは、第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´の上面側と下面側にそれぞれ設けることができる。
【0045】
すなわち、凹部30a,40aは、第1の対象物30の端部30´と第2の対象物40の端部40´を相互に突き合わせたときに他方の端部30´,40´側に開口するように形成することができる。凹部30a,40aは、第1の対象物30の端部30´と第2の対象物40の端部40´がくの字状をなすように、つまり相互に交差する2つの傾斜面が形成されるように端部30´,40´を切断して該端部30´,40´の面取りを行い、正面から見て上面側および下面側に直角三角形状の空間が並ぶように形成することができる。
【0046】
これにより、第1の対象物30の端部30´と第2の対象物40の端部40´を相互に突き合わせたときに突き合わせ端部30´,40´に凹状の接着部分50を上下に並ぶように形成することができる。接着部分50は、第1の対象物30の端部30´の上面側および下面側に形成される直角三角形状の凹部30aと第2の対象物40の端部40´の上面側および下面側に形成される直角三角形状の凹部40aが合体して上下に並ぶ山型形状に凹状に形成することができる。
【0047】
次に、本第1実施形態における接着剤セット1による接着方法を
図3乃至
図12に基づいて説明する。
【0048】
第1の対象物30と第2の対象物40の接着を行う前に、粉末20を作製する工程を行う。すなわち、流動性を有するペースト状のパテ材料に硬化剤および有機溶剤を混合してパテ材料を均一に分散させ硬化させる工程を行う。次いで、硬化させた後のパテ材料を所定にやすり等で削り粉末状にする工程を行う。
【0049】
粉末20を作製した後は、
図3に示すように、第1の対象物30および第2の対象物40を用意する。続いて、
図4に示すように、第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´の上面側と下面側のそれぞれに、凹部30a,40aを前後方向に延びるように設ける工程を行う。この凹部30a,40aは、第1の対象物30の端部30´と第2の対象物40の端部40´がくの字状をなすように、つまり相互に交差する2つの傾斜面が形成されるように端部30´,40´を切断して該端部30´,40´の面取りを行い、正面から見て上面側および下面側に直角三角形状の空間が並ぶように形成する。
【0050】
次に、
図5に示すように、第1の対象物30の端部30´と第2の対象物40の端部40´を相互に突き合わせる。上記の通り、凹部30a,40aは、第1の対象物30の端部30´と第2の対象物40の端部40´を相互に突き合わせたときに他方の端部30´,40´側に開口するように形成されているので、第1の対象物30の端部30´と第2の対象物40の端部40´を相互に突き合わせたときに突き合わせ端部30´,40´に連通する凹状より詳しくは上下に並ぶ山型形状の接着部分50を形成する工程とすることができる(接着部分50を凹状とする工程)。
【0051】
次いで、
図6および
図7に示すように、接着剤10を、第1の対象物30と第2の対象物40の上面側の接着部分50に提供する工程を行う。この接着剤10の提供は、該接着剤10が接着部分50の中間部分まで満たされるように行う。
【0052】
次に、
図8に示すように、第1の対象物30と第2の対象物40の上面側の接着部分50に接着剤10を提供した後に、粉末20を接着部分50における接着剤10に提供する工程を行う。粉末20は、上方から振りかけるように提供する。
【0053】
続いて、
図9に示すように、
図8の如く上面側の接着部分50に粉末20を提供した後に、再度接着部分50に接着剤10を重ねて提供する工程を行う。この接着剤10の提供は、上面側の接着部分50の上面まで接着剤10が満たされるように行う。
【0054】
次いで、
図10に示すように、
図9の如く再度上面側の接着部分50に接着剤10を提供した後に再度上面側の接着部分50における接着剤10に粉末20を提供する工程を行う(接着部分50における接着剤10および粉末20の提供を2回に分けて行う)。
図11に示すように、この状態で一定時間静置することにより、接着剤10が接着部分50において硬化し、第1の対象物30と第2の対象物40を接着する工程とすることができる。
【0055】
続いて、
図12に示すように、第1の対象物30と第2の対象物40の上下を反転させて下面側の接着部分50に接着剤10および粉末20を提供する工程を行う。
【0056】
なお、上記の例においては、接着部分50に対する接着剤10および粉末20の提供は2回に分けて行うこととしているが更に2回以上の複数回に分けて提供することとしてもよい。
【0057】
[比較例1]
第1の対象物30および第2の対象物40を、鉄、アルミニウム、プラスチック、木材として、第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´に傾斜面を形成せずに端部30´,40´を単に鉛直方向に延びる面としこの面を接着部分50とする(
図3の状態)。
【0058】
次いで、接着剤10を、α-シアノアクリレートを含むシアノアクリレート樹脂系の接着剤10とし、第1の対象物30と第2の対象物40の接着部分50に提供し端部30´,40´を合掌するように突き合わせて、その硬化時間(接着時間)を測定した。
【0059】
更に、硬化後、接着部分50の強度(接着力)を測定した。強度の測定は、
図13に示すように、接着した第1の対象物30および第2の対象物40の両端側を台200,200に載せた状態で、接着部分50にバネ秤100のフック部101を輪状の糸102を介して所定に引っ掛けて引っ張り、接着部分50の接着が解除されたとき(接着部分50が破断したとき)のバネ秤100が示す重量を測定することにより行った。硬化時間と強度の測定は3回行なった。
【0060】
[比較例2]
第1の対象物30および第2の対象物40を、鉄、アルミニウム、プラスチック、木材として、第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´に傾斜面を形成して凹部30a,40aとし、相互に突き合わせて突き合わせ端部30´,40´に山型形状の接着部分50を形成した。なお、接着部分50への接着剤10および粉末20の提供は、上面側および下面側それぞれ3回に分けて行った。
【0061】
次いで、接着剤10を、α-シアノアクリレートを含むシアノアクリレート樹脂系の接着剤10とし、第1の対象物30と第2の対象物40の接着部分50に提供し、その硬化時間(接着時間)を測定した。
【0062】
更に、硬化後、接着部分50の強度(接着力)を測定した。強度の測定は、
図14に示すように、接着した第1の対象物30および第2の対象物40の両端側を台200,200に載せた状態で、接着部分50にバネ秤100のフック部101を輪状の糸102を介して所定に引っ掛けて引っ張り、接着部分50の接着が解除されたとき(接着部分50が破断したとき)のバネ秤100が示す重量を測定することにより行った。硬化時間と強度の測定は3回行った。
【0063】
[実施例1]
流動性を有するペースト状の板金用のパテ材料(板金パテ)に硬化剤と有機溶剤を混合して一定時間静置し硬化させた。板金用のパテ材料(板金パテ)は、株式会社ソーラー社製(極80)とし、コバルトおよびその化合物が1%未満、シリカが1%未満、酸化チタンが1%未満、スチレンが20%、それぞれ含有するものを使用した。パテ材料の重量に対する硬化剤の重量の比は0.01とし、有機溶剤は適量とした。有機溶剤はキシレンを使用した。硬化後、板金用のパテ材料(板金パテ)をやすり等で削り粉末20を作製した。
【0064】
第1の対象物30および第2の対象物40を、鉄、アルミニウム、プラスチック、木材として、第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´に傾斜面を形成して凹部30a,40aとし、相互に突き合わせて突き合わせ端部30´,40´に山型形状の接着部分50を形成した。
【0065】
次いで、接着剤10を、α-シアノアクリレートを含むシアノアクリレート樹脂系の接着剤10とし、第1の対象物30と第2の対象物40の接着部分50に提供した。接着剤10を提供した後に、粉末20を接着部分50における接着剤10に上方から振りかけるように提供し、その硬化時間(接着時間)を測定した。
【0066】
更に硬化後、接着部分50の強度(接着力)を測定した。強度の測定は、
図14に示すように、接着した第1の対象物30および第2の対象物40の両端側を台200,200に載せた状態で、接着部分50にバネ秤100のフック部101を輪状の糸102を介して所定に引っ掛けて引っ張り、接着部分50の接着が解除されたとき(接着部分50が破断したとき)のバネ秤100が示す重量を測定することにより行った。接着時間と強度の測定は6回行った。なお、接着部分50への接着剤10および粉末20の提供は、上面側および下面側それぞれ3回に分けて行った。
【0067】
[実施例2]
流動性を有するペースト状のポリエステルパテ材料(ポリエステルパテ)に硬化剤と有機溶剤を混合して一定時間静置し硬化させた。ポリエステルパテ材料(ポリエステルパテ)は、株式会社ソーラー社製(極180)とし、コバルトおよびその化合物が1%未満、シリカが20~30%、酸化チタンが5%未満、スチレンが21%、それぞれ含有するものを使用した。ポリパテ材料の重量に対する硬化剤の重量の比は0.01とし、有機溶剤は適量とした。有機溶剤はキシレンを使用した。硬化後、ポリエステルパテ材料(ポリエステルパテ)をやすり等で削り粉末20を作製した。
【0068】
第1の対象物30および第2の対象物40を、鉄、アルミニウム、プラスチック、木材として、第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´に傾斜面を形成して凹部30a,40aとし、相互に突き合わせて突き合わせ端部30´,40´に山型形状の接着部分50を形成した。
次いで、接着剤10を、α-シアノアクリレートを含むシアノアクリレート樹脂系の接着剤10とし、第1の対象物30と第2の対象物40の接着部分50に提供した。接着剤10を提供した後に、粉末20を接着部分50における接着剤10に上方から振りかけるように提供し、その硬化時間(接着時間)を測定した。
【0069】
更に、硬化後、接着部分50の強度(接着力)を測定した。強度の測定は、
図14に示すように、接着した第1の対象物30および第2の対象物40の両端側を台200,200に載せた状態で、接着部分50にバネ秤100のフック部101を輪状の糸102を介して所定に引っ掛けて引っ張り、接着部分50の接着が解除されたとき(接着部分50が破断したとき)のバネ秤100が示す重量を測定することにより行った。接着時間と強度の測定は6回行った。なお、接着部分50への接着剤10および粉末20の提供は、上面側および下面側それぞれ3回に分けて行った。
【0070】
[実施例3]
粉末20をおがくず、コンクリート、細目のコンクリート、塩、灰より詳しくは蚊取り線香の灰、石灰、漆喰、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、重曹、ぬか、ゲルコート剤(白ゲル)、セメント(白セメント)、金属より詳しくは銅とした。
【0071】
第1の対象物30および第2の対象物40を、鉄、アルミニウム、プラスチック、木材として、第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´に傾斜面を形成して凹部30a,40aとし、相互に突き合わせて突き合わせ端部30´,40´に山型形状の接着部分50を形成した。
次いで、接着剤10を、α-シアノアクリレートを含むシアノアクリレート樹脂系の接着剤10とし、第1の対象物30と第2の対象物40の接着部分50に提供した。接着剤10を提供した後に、粉末20を接着部分50における接着剤10に上方から振りかけるように提供した。この接着部分50への接着剤10および粉末20の提供は、上面側および下面側それぞれ3回に分けて行った。接着剤10および粉末20の提供した後、3時間~1日静置した。いずれの粉末も3時間~1日の静置で硬化したことが確認された。硬化時間は3時間以下もしくは1日以下と考えられる。
【0072】
更に、硬化後、接着部分50の強度(接着力)を測定した。強度の測定は、
図14に示すように、接着した第1の対象物30および第2の対象物40の両端側を台200,200に載せた状態で、接着部分50にバネ秤100のフック部101を輪状の糸102を介して所定に引っ掛けて引っ張り、接着部分50の接着が解除されたとき(接着部分50が破断したとき)のバネ秤100が示す重量を測定することにより行った。強度の測定は1~2回行った。
【0073】
[測定結果]
上記比較例1の硬化時間および強度の測定結果を表1に、比較例2の硬化時間および強度の測定結果を表2に、実施例1の硬化時間および強度の測定結果を表3に、実施例2の硬化時間および強度の測定結果を表4に、実施例3の硬化時間および強度の測定結果を表5~表19にそれぞれ示す(表5はおがくずの測定結果、表6はコンクリートの測定結果、表7は細目のコンクリートの測定結果、表8は塩の測定結果、表9は灰より詳しくは蚊取り線香の灰の測定結果、表10は石灰の測定結果、表11は漆喰の測定結果、表12はセスキ炭酸ソーダの測定結果、表13は小麦粉の測定結果、表14は片栗粉の測定結果、表15は重曹の測定結果、表16はぬかの測定結果、表17はゲルコート剤(白ゲル)の測定結果、表18はセメント(白セメント)の測定結果、表19は金属より詳しくは銅の測定結果を示す)。接着剤10に粉末20を提供しない例であって、第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´に凹部30a,40aを形成した比較例2は、同じく接着剤10に粉末20を提供しない例であって、凹部30b,40bを形成しない比較例1に対し、強度が大きく向上したものの、硬化時間が大幅に長くなる結果となった。
【0074】
接着剤10に粉末20を提供する例であって、第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´に凹部30a,40aを形成した実施例1~実施例3は、比較例2に対し全ての粉末20で硬化時間の大幅な短縮とパテ材料(板金用のパテ材料、ポリエステルパテ材料)、おがくず、灰より詳しくは蚊取り線香の灰、石灰、セスキ炭酸ソーダ、小麦粉、片栗粉、金属より詳しくは銅等の粉末20で比較例2に対し強度の向上が認められた。これにより、第1の対象物30および第2の対象物40の端部30´,40´に凹部30a,40aを形成すること、および接着剤10に粉末20を提供することが接着性能を大幅に向上させることが確認された。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
以上説明したように本実施形態にあっては、第1の対象物30と第2の対象物40の接着部分50に提供される接着剤10と、接着部分50における第1の対象物30と第2の対象物40の接着に用いられ接着部分に提供される粉末20と、を有することにより、より詳しくは、粉末20を、第1の対象物30と第2の対象物40の接着部分50に接着剤10を提供した後に接着部分に提供することにより、接着剤10の硬化時間を短縮するとともに、強度の向上を図ることができる。
【0095】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく種々の変形実施、応用実施が可能であることは勿論である。
【0096】
例えば、上述した接着方法に対し
図15に示すように粉末20に水分21を付与する工程を含むこととし、接着部分50に粉末20を提供する工程は、粉末20に水分21を付与する工程と同時、または当該工程の前もしくは後に行うこととすると接着時間が更に短縮し、かつ、強度も更に向上するのでより好ましい。
【0097】
また、上述した実施形態にあっては、第1の対象物30および第2の対象物40のいずれの端部30´,40´にも凹部30a,40aを設けることとしているが、第1の対象物30および第2の対象物40のいずれかの一方のみの端部30´,40´に凹部30a,40aを設けることとしても所要の効果を奏することができる。すなわち、第1の対象物30および第2の対象物40の少なくともいずれかの一方の端部30´,40´に凹部30a,40aを設けることとしても所要の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0098】
1:接着剤セット
10:接着剤
20:粉体
21:水分
30:第1の対象物
30a:凹部
30´:端部
40:第2の対象物
40a:凹部
40´:端部
50:接着部分
100:バネ秤
101:フック部
102:輪状の糸
200:台