(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
E04B1/30 G
(21)【出願番号】P 2017037335
(22)【出願日】2017-02-28
【審査請求日】2019-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 資貴
(72)【発明者】
【氏名】西崎 隆氏
(72)【発明者】
【氏名】小島 一高
(72)【発明者】
【氏名】田中 健嗣
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-239397(JP,A)
【文献】特開平05-287808(JP,A)
【文献】特開2012-219588(JP,A)
【文献】特開平02-296947(JP,A)
【文献】特開平02-128036(JP,A)
【文献】特開平07-062742(JP,A)
【文献】特開昭61-179937(JP,A)
【文献】米国特許第08631628(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 1/58
E04B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の外壁、柱、梁及びスラブを有する下部構造部と、
前記下部構造部の前記柱の上部に下端部が埋設され、上端部が前記柱から立設する鉄骨柱と、
前記下部構造部との間に耐震要素を設けずに、前記鉄骨柱で支持された屋根と、
前記下部構造部と前記屋根との間の外周部の
高さ方向の全域且つ全周に前記鉄骨柱に窓枠の縦枠部が重なるように設けられている窓と、
を備える建物。
【請求項2】
鉄筋コンクリート造の外壁、柱、梁及びスラブを有する下部構造部と、
前記下部構造部の前記柱の上部に下端部が埋設され、上端部が前記柱から立設する鉄骨柱と、
前記鉄骨柱で支持された屋根と、
前記下部構造部と前記屋根との間の外周部の全周に前記鉄骨柱に窓枠の縦枠部が重なるように設けられている窓と、
を備え、
地震時に大きく揺れると想定されている所定方向を面外方向とする前記外壁は、前記所定方向以外の方向を面外方向とする前記外壁よりも面外剛性が大きい、
建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プレキャスト鉄筋コンクリート柱における鉄骨柱の柱脚固定方法に関する技術が開示されている。この先行技術では、下階構造における鉄筋コンクリートよりなるプレキャストコンクリート柱内に鉄骨梁と一体に鉄骨柱の柱脚部を定着している。そして、同柱脚部をプレキャストコンクリート柱の上端面より突出し、同柱脚部の突出部と上階構造の鉄骨柱とを接合している。
【0003】
特許文献2には、最上階の外壁よりも外側に突出するようにして屋根の軒部が設けられた建物に関する技術が開示されている。この先行技術では、最上階の天井部と、軒部に設けられた軒天井部と、が略同じ高さとなるように設けられている。そして、最上階の外壁の上部に、最上階の天井部付近と、軒部の軒天井部付近とを連通する開口部が形成されていると共に、この開口部を開閉する換気窓が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-62742号公報
【文献】特開2007-162389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
下部構造部の外壁と屋根等の上部構造部との間に、ブレース等の耐震要素を設けることなく、外壁に立設された鉄骨柱で上部構造部を支持する構造とすると、高い意匠性を得ることができる。
【0006】
本発明は、上記事実を鑑み、下部構造部の外壁と上部構造部との間に耐震要素を設けることなく、外壁に立設された鉄骨柱で上部構造部を支持する建物を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様は、鉄筋コンクリート造の外壁を有する下部構造部と、前記下部構造部の前記外壁の上部に下端部が埋設され、上端部が前記外壁から立設する鉄骨柱と、前記鉄骨柱で支持された上部構造部と、を備える建物である。
【0008】
第一態様の建物では、鉄骨柱は、下部構造部の外壁の上部に下端部が埋設されているので、外壁の剛性が高くなり、地震力の方向が面外方向となる外壁から立設する鉄骨柱も地震力を負担できる。
【0009】
したがって、下部構造部の外壁と上部構造部との間に耐震要素を設けることなく、外壁から突出させた鉄骨柱で上部構造部を支持することができる。また、下部構造部の外壁と上部構造部との間には、耐震要素がないので、意匠性が向上する。
【0010】
第二態様は、前記下部構造部と前記上部構造部との間の外周部に窓が設けられ、前記鉄骨柱に、前記窓の窓枠の縦枠部が重なるように固定されている、第一態様に記載の建物である。
【0011】
第二態様の建物では、鉄骨柱に窓枠の縦枠部が重なるように固定されている。よって、外から鉄骨柱が隠れ、下部構造部の外壁と上部構造部との間は窓枠しかないように見え、意匠性が向上する。
【0012】
第三態様は、前記上部構造部が屋根である、第一態様又は第二態様に記載の建物である。
【0013】
第三態様の建物では、下部構造部の外壁と屋根との間には、耐震要素がないので、意匠性が向上する。また、鉄骨柱に窓枠の縦枠部が重なるように固定されている場合は、屋根が浮いているように見え、更に意匠性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、下部構造部の外壁と上部構造部との間に耐震要素を設けることなく、外壁に立設された鉄骨柱で上部構造部を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態の建物をY方向から見た正面図である。
【
図2】
図1の建物の屋根を構成する屋根架構の正面図である
【
図3】
図1の建物の下部構造部の内部構造を模式的に示す斜め上方から見た斜視図である。
【
図4】
図3に屋根架構を構成する下部架構を図示した斜視図である。
【
図5】
図4の最上階部分(三階部分)の内部を模式的に示す斜め下方から見た拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の一実施形態に係る建物について説明する。なお、図中、水平方向における直交する2方向を矢印X(X方向)及び矢印Y(Y方向)で示し、上下方向を矢印Z(Z方向)で示す。
【0017】
[構造]
先ず、本実施形態の建物10の構造について説明する。
【0018】
図1に示すように、建物10は、鉄筋コンクリート造の下部構造部20と、上部構造部の一例としての屋根50と、を含んで構成されている。
【0019】
下部構造部20は、複数階(本実施形態では三階)からなり、
図3~
図5に示すように、柱22、梁24、外壁26及びスラブ28で躯体が構成されている。なお、X方向に沿った外壁を外壁26Xとし、Y方向に沿った外壁を外壁26Yとする。
【0020】
下部構造部20の最上階(本実施形態では三階)における外壁26の上端部26A(梁24の上端部24A、柱22の上端部22A)から鉄骨柱100(
図2も参照)が立設している。なお、本実施形態では、最上階(本実施形態では三階)は、外周部以外は柱がない構造となっているが、これに限定されるものではない。
【0021】
図5に示すように、鉄骨柱100の下端部102は、鉄筋コンクリート造の外壁26の最上階(本実施形態では三階)における上部26B(柱22の上部26B)に埋設されている。なお、鉄骨柱100の外壁26から突出している部位を「鉄骨柱100の上端部104」とする(
図2~
図4も参照)。
【0022】
このように、下部構造部20の最上階(本実施形態では三階)は、階の途中までは鉄筋コンクリート造であるが、鉄骨柱100の下端部102が埋設されている外壁26の上部26B(柱22の上部22B)は鉄骨鉄筋コンクリート造となっている。
【0023】
図2に示すように、この鉄骨柱100の上端部104に屋根50(
図1も参照)を構成する屋根架構56が支持されている。なお、
図1に示すように、本実施形態の屋根50の外形形状は、宝形造である。
【0024】
図2に示すように、屋根架構56は、鉄骨材で構成され、宝形の上部架構52の下に格子状の下部架構54が設けられた構造となっており、この下部架構54が鉄骨柱100の上端部104と接合されている(
図4及び
図5も参照)。
【0025】
図1に示すように、下部構造部20と屋根50との間の外周部60には、窓62が設けられている。具体的には、外周部60には、ガラス64がはめ込まれた窓枠66が設けられている。この窓枠66は、正面視(X方向又はY方向から見た場合)において、縦枠部66Aが鉄骨柱100の上端部104(
図2等を参照)に重なるように設けられている。
【0026】
本実施形態の建物10は、地震時にX方向に沿った方向が大きく揺れると想定されている。そして、地震時にX方向に沿った方向が面外方向になるY方向に沿った外壁26Yは、他のX方向に沿った外壁26Xよりも面外剛性が高くなっている。なお、どのようにして外壁26Yの面外剛性を高くしてもよい。例えば、「最上階(本実施形態では三階)の上端部26Aを全体的に高くする(平均高さを高くする)」、「梁24の断面を大きくする」及び「壁厚を厚くする」等で面外剛性を高くできる。
【0027】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
鉄骨柱100は、下部構造部20の外壁26の上部26B(柱22の上部22B)に下端部102が埋設されているので、外壁26の上部26Bの剛性が高くなり、地震力の方向が面外方向となる外壁26から立設する鉄骨柱100も地震力を負担する。
【0029】
また、地震時にX方向に沿った方向が面外方向になるY方向に沿った外壁26Yは、X方向に沿った外壁26Xよりも面外剛性が高くなっている。よって、外壁26Yの剛性が更に高くなり、外壁26Yから立設する鉄骨柱100が効果的に地震力を負担する。
【0030】
したがって、下部構造部20の外壁26と屋根50との間の外周部60にブレースや耐震壁等の耐震要素を設けることなく、外壁26から突出させた鉄骨柱100で屋根50を支持することができる。
【0031】
別の観点から説明すると、柱22の上部22B及び外壁26の上部26Bが実質的に鉄骨鉄筋コンクリート造となり、鉄骨柱100の下端部102の応力処理と層剛性の向上との両方が可能となる合理的な構造となっている。
【0032】
また、下部構造部20の外壁26と屋根50との間には、耐震要素がなく、外周部60に窓62が設けられている。この窓62の窓枠66は、縦枠部66Aが鉄骨柱100に重なるように固定されている。
【0033】
よって、下部構造部20の外壁26と屋根50との間の外周部60には、窓62(窓枠6及びガラス64)しかないように見え、その結果、屋根50が浮いているように見えるので、高い意匠性を有している。
【0034】
また、下部構造部20の外壁26と屋根50との間の外周部60にブレース等の耐震要素が設けられていないので、窓62からの採光及び通風に対して好適である。
【0035】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0036】
下部構造部20の外壁26と屋根50との間の外周部60設けられて窓枠66の縦枠部66Aは、正面視において、鉄骨柱100に重なるように固定されている。しかし、鉄骨柱100と重ならない縦枠部66Aがあってもよいし、全く重なっていなくてもよい。
【0037】
また、下部構造部20の外壁26と屋根50との間の外周部60に、窓枠66にガラス64がはめ込まれた窓62以外の窓、例えば、障子が外周部60に設けられていてもよい。また、外周部60に窓以外のもの、例えば換気口が設けられていてもよい。更に、外周部60に、何も設けられていなくてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、上部構造部は、屋根50であったが、これに限定されない。例えば、建物の上下方向の中間部分に下部構造部の外壁から立設する鉄骨柱で上部構造部が支持された部位があってもよい。
【0039】
また、外壁26Yは、外壁26Xよりも面外剛性が高くなっているが、これに限定されない。要は、耐震要素を設けることなく、外壁から突出させた鉄骨柱100の上端部104で上部構造部を支持できればよい。
【0040】
本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【符号の説明】
【0041】
10 建物
20 下部構造部
26 外壁
26B 上部
50 屋根(上部構造部の一例)
60 外周部
66 窓枠
66A 縦枠部
100 鉄骨柱
102 下端部
104 上端部