(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ハイドロフルオロオレフィン及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07D 295/125 20060101AFI20220809BHJP
B01J 27/12 20060101ALI20220809BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
C07D295/125
B01J27/12 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019533323
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 IB2017058133
(87)【国際公開番号】W WO2018116159
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-17
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ブリンスキー,マイケル ジェイ.
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/095285(WO,A1)
【文献】Journal of the Chemical Society [Section]C:Organic,1968年,Vol.7,p796-801
【文献】Chemistry - A European Journal,2010年09月13日,Vol.16,No.39,p11804-11808
【文献】Synlett,2002年,Vol.3,p411-414
【文献】Chemistry Letters,2003年,Vol.32,No.12,p1192-1193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I):
【化1】
[式中、R
f
1及びR
f
2、並びにR
f
3及びR
f
4は、(i)独立して、1~8個の炭素原子を有し、かつ任意にO若しくはNから選択される少なくとも1個の
鎖状に連結されたヘテロ原子を含有する直鎖若しくは分枝鎖フッ素化アルキル基であるか、又は(ii)一緒に結合して、4~8個の炭素原子を有し、かつ任意にO若しくはNから選択される1個以上の
鎖状に連結されたヘテロ原子を含有する環構造を形成し、Xは、CF
3、H、又はFであり、Zは、
Fである]
で表される
フッ素化化合物。
【請求項2】
R
f
1及びR
f
2、並びにR
f
3及びR
f
4が、独立して、1~8個の炭素原子を有し、かつ任意にO又はNから選択される少なくとも1個の
鎖状に連結されたヘテロ原子を含有する直鎖又は分枝鎖フッ素化アルキル基である、請求項1に記載の
フッ素化化合物。
【請求項3】
R
f
1及びR
f
2、並びにR
f
3及びR
f
4が、一緒に結合して、4~8個の炭素原子を有し、かつ任意に1個以上の
鎖状に連結されたヘテロ原子を含有する環構造を形成する、請求項1に記載の
フッ素化化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の
フッ素化化合物を含む作動流体であって、前記
フッ素化化合物が、前記作動流体中に、前記作動流体の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する、作動流体。
【請求項5】
熱を伝達するための装置であって、
デバイスと、
前記デバイスへ又は前記デバイスから熱を伝達するための機構と、を含み、前記機構が、請求項1に記載の
フッ素化化合物を含む熱伝達流体を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイドロフルオロオレフィン並びにその製造方法及び使用方法に関し、また、ハイドロフルオロオレフィンを含む作動流体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なハイドロフルオロオレフィン化合物は、例えば、PCT出願公開WO2016196240号、及びFreear,J.;Tipping,A.E.J.Chem.Soc.C,1968,1096~1103に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態において、ハイドロフルオロオレフィン化合物が提供される。ハイドロフルオロオレフィン化合物は、以下の一般式(I)によって表される。
【化1】
R
f
1及びR
f
2、並びにR
f
3及びR
f
4は、(i)独立して、1~8個の炭素原子を有し、かつ任意にO若しくはNから選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含有する直鎖若しくは分枝鎖フッ素化アルキル基であるか、又は(ii)一緒に結合して、4~8個の炭素原子を有し、かつ任意にO若しくはNから選択される1個以上の連結されたヘテロ原子を含有する環構造を形成する。Xは、CF
3、H、又はFであり、Zは、F又はHである。
【0004】
いくつかの実施形態において、作動流体が提供される。作動流体は、上述のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む。上述のハイドロフルオロオレフィン化合物は、作動流体中に、作動流体の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する。
【0005】
いくつかの実施形態において、熱を伝達するための装置が提供される。この装置は、デバイスと、デバイスへ又はデバイスから熱を伝達するための機構とを含む。熱を伝達するための機構は、上述のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を含む熱伝達流体を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、熱を伝達する方法が提供される。この方法は、デバイスを準備することと、上述のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を含む熱伝達流体を用いて、デバイスへ又はデバイスから熱を伝達することと、を含む。
【0007】
上記の本開示の概要は、本開示の各実施形態を説明することを意図したものではない。本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明にも記載される。本開示の他の特徴、目的及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
環境に優しい低毒性化合物の需要漸増にかんがみて、環境影響及び毒性を更に低減し、多種多様な用途(例えば、熱伝達、溶媒洗浄、付着コーティング溶媒、並びに電解質溶媒及び添加剤)の性能要件(例えば、不燃性、溶解力、安定性、及び作動温度範囲)を満たすことができ、かつ費用効率よく製造することができる新規の作動流体の必要性が今なお存在することが認められる。
【0009】
概して、本開示は作動流体(又は作動流体の成分)として有用な新たな分類のフッ素化化合物を提供する。このフッ素化化合物は、窒素含有ハイドロフルオロオレフィン(HFO)であり、既存のフッ素化流体に類似した物理的特性を与えるが、概ね大気寿命及び地球温暖化係数はより低く、より許容される環境プロファイルをもたらす。その上、フッ素化化合物は、低い誘電率及び高い誘電強度等の有益な電気特性を有する。更に、本開示のフッ素化化合物は、ラットにおける4時間の急性吸入毒性試験に基づいて、低急性毒性を示す。本開示のフッ素化化合物を調製するために使用される全フッ素化イミンは、例外的な収率での電気化学フッ素化から誘導される材料から作製することができる。
【0010】
本明細書で用いる場合、「連結されたヘテロ原子」は、炭素鎖(直鎖若しくは分枝鎖又は環内)の少なくとも2個の炭素原子に結合して炭素-ヘテロ原子-炭素結合を形成する、炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する。
【0011】
本明細書で用いる場合、「フルオロ-」(例えば、「フルオロアルキレン」又は「フルオロアルキル」又は「フルオロカーボン」の場合などの、基又は部分に関して)又は「フッ素化」は、(i)炭素に結合した水素原子が少なくとも1つは存在するように、部分的にフッ素化されているか、又は(ii)全フッ素化されていることを意味する。
【0012】
本明細書で用いる場合、「ペルフルオロ(perfluoro-)」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」又は「ペルフルオロアルキル」又は「ペルフルオロカーボン」の場合などの、基又は部分に関して)又は「全フッ素化(perfluorinated)」は、完全にフッ素化されており、したがって、別段に指示されている場合を除き、フッ素で置き換えることが可能な炭素結合水素原子が存在しないことを意味する。
【0013】
本明細書で用いる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容が他のことを明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の実施形態において使用されるとき、用語「又は」は、その内容が特に明確に指示しない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0014】
本明細書で用いる場合、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に含まれる全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4及び5を含む)。
【0015】
特に指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用する量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されていると理解するものとする。これに応じて、特に指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態の列挙において示す数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低限でも、また特許請求される実施形態の範囲への均等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、また通常の概算方法を適用することによって解釈されるべきである。
【0016】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下の一般式(I):
【化2】
[式中、R
f
1及びR
f
2、並びにR
f
3及びR
f
4は、(i)独立して、1~8個、2~6個、若しくは3~5個の炭素原子を有し、かつ任意にO若しくはNから選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含有する直鎖若しくは分枝鎖フッ素化アルキル基であるか、又は(ii)一緒に結合して、4~8個若しくは4~6個の炭素原子を有し、かつ任意にO若しくはNから選択される1個以上の連結されたヘテロ原子を含有する環構造を形成する)。いくつかの実施形態では、Xは、CF
3、H、又はFであり、
Zは、F又はHである]
で表されるハイドロフルオロオレフィン化合物を対象とする。
【0017】
本開示の目的で、当然のことながら、ハイドロフルオロオレフィン化合物は、一般式又は化学構造のいずれかに示されているものと関係なく、E異性体、Z異性体又はE異性体とZ異性体との混合物を含んでもよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記の連結されたヘテロ原子のいずれかは、Oが2個の炭素原子に結合した第二級Oヘテロ原子であってもよい。いくつかの実施形態において、上記の連結されたヘテロ原子のいずれかは、Nが3個の全フッ素化炭素原子に結合した第三級Nヘテロ原子であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物のフッ素含有量は、化合物をASTM D-3278-96 e-1試験法(「Flash Point of Liquids by Small Scale Closed Cup Apparatus」)による不燃にするのに十分となり得る。
【0020】
様々な実施形態において、一般式(I)の化合物の代表例には、以下が挙げられる。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0021】
いくつかの実施形態において、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物は、疎水性であり、比較的化学反応性に乏しく、熱的に安定であり得る。ハイドロフルオロオレフィン化合物は、環境影響が少ない場合がある。この点に関して、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物は、500未満、300未満、200未満、100未満、又は10未満の地球温暖化係数(GWP)を有し得る。本明細書で使用する場合、GWPは、化合物の構造に基づく化合物の地球温暖化係数の相対的尺度である。化合物のGWPは、1990年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって規定され、2007年に改訂されており、特定の積分期間(ITH)にわたる、1キログラムのCO2放出による温暖化に対する、1キログラムの化合物放出による温暖化として計算される。
【0022】
【数1】
この式中、a
iは大気中の化合物の単位質量増加当たりの放射強制力(その化合物のIR吸光度に起因する大気を通る放射束の変化)であり、Cは化合物の大気濃度であり、τは化合物の大気寿命であり、tは時間であり、iは対象化合物である。一般的に許容されるITHは、短期間の効果(20年間)と長期間の効果(500年間以上)との間の折衷点を表す100年間である。大気中の有機化合物iの濃度は、擬一次速度式(すなわち、指数関数的減衰)に従うと仮定する。同じ時間間隔のCO
2の濃度は、大気からのCO
2の交換及び除去に関する、より複雑なモデルを組み込む(Bern炭素循環モデル)。
【0023】
いくつかの実施形態では、一般式(I)で表されるハイドロフルオロオレフィン化合物は、フッ素化イミンを、触媒の存在下でフッ素化プロペニル又はビニルアミンと接触させることによって合成することができる。様々な実施形態において、一般式(I)で表されるハイドロフルオロオレフィン化合物は、スキーム1に示す合成経路を用いて合成することができる。
【化11】
ここで、R
f
1、R
f
2、R
f
3、R
f
4、X、及びZは、上記のとおりである。
【0024】
いくつかの実施形態において、本開示のプロセスにおける使用に適した触媒としては、ルイス酸金属フッ化物又は半金属フッ化物(例えば、TiF4、ZrF4、NbF5、TaF5、BF3、SbF5のうちの1つ又は2つ以上の任意の組み合わせを含む)を挙げることができる。いくつかの実施形態において、触媒は、フルオロケミカル反応物質の総重量に基づいて5~50重量%、10~50重量%、25~50重量%、又は10~25重量%の量で、反応混合物中に存在し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、スキーム1に示すプロセスは、無溶媒反応として実行され得る。本明細書で使用する場合、「無溶媒反応」は、溶媒の不在(又は実質的に不在)下で実施される反応を指す。例えば、本開示の無溶媒反応は、フルオロケミカル反応物質の総重量に基づいて2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.2重量%未満、又は0.1重量%未満の溶媒を含み得る。本開示の無溶媒系(又はほぼ溶媒を含まない系)に関連する利益としては、より大きな体積効率、より低い製造コスト、及びより少ない廃棄物が挙げられる。例えば、開示された反応スキームを使用する際、所望の生成物は、反応直後に単純分留することによって精製することができ、洗浄及び濾過などの時間及び費用のかかる工程を省略することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、本開示は更に、上記のハイドロフルオロオレフィン化合物を主要成分として含む作動流体を対象とする。例えば、作動流体は、上記のハイドロフルオロオレフィン化合物を、作動流体の総重量に基づいて少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%含んでもよい。作動流体は、ハイドロフルオロオレフィン化合物に加えて、次の成分:アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、全フッ素化第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、シロキサン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル、又はこれらの混合物のうちの1種以上を、作動流体の総重量に基づいて合計で最大75重量%、最大50重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、又は最大5重量%含んでもよい。このような追加成分は、組成物の特性を、特定の用途向けに改変又は強化するために選択できる。
【0027】
いくつかの実施形態において、本開示は更に、デバイスと、デバイスへ又はデバイスから熱を伝達する機構とを含む、熱を伝達するための装置を対象とする。熱を伝達するための機構は、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む熱伝達作動流体を含んでもよい。
【0028】
提供される熱を伝達するための装置はデバイスを含んでもよい。デバイスとは、冷却、加熱又は所定の温度若しくは温度範囲に維持されるコンポーネント、加工対象物、アセンブリ等であってもよい。このようなデバイスには、電気コンポーネント、機械コンポーネント及び光学コンポーネントが含まれる。本開示のデバイスの例としては、マイクロプロセッサ、半導体デバイスを製造するために使用されるウエハ、電力制御半導体、配電スイッチギヤ、電力変圧器、回路基板、マルチチップモジュール、パッケージされた及びパッケージされていない半導体デバイス、レーザー、化学反応器、燃料電池、熱交換器並びに電気化学セルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、デバイスは、冷却器、加熱器、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0029】
更にその他の実施形態において、デバイスは、マイクロプロセッサを含むプロセッサのような、電子デバイスを含み得る。これらの電子デバイスが強力になると、単位時間当たりに生成される熱量が増加する。したがって、熱伝達の機構は、プロセッサの性能において重要な役割を果たす。熱伝達流体は、典型的には、良好な熱伝達性能、良好な電気適合性(冷却板を採用するもの等の「間接接触」用途で使用される場合であっても)、並びに低い毒性、低い燃焼性(又は不燃性)及び低い環境影響を有する。電気適合性が良好であることは、熱伝達流体候補が、高絶縁耐力、高体積抵抗率及び極性物質に対する乏しい溶解力を呈することを示唆する。加えて、熱伝達流体は、良好な機械適合性を示す必要があり、すなわち、構造体の典型的材料に悪影響を与えないものとする。
【0030】
提供される装置は、熱を伝達するための機構を備えてもよい。その機構は、熱伝達流体を含んでもよい。熱伝達流体は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含んでもよい。デバイスと熱接触するように熱伝達機構を配置することによって、熱を伝達し得る。熱伝達機構は、デバイスと熱接触するように配置されるとき、デバイスから熱を除去するか、若しくはデバイスに熱を供給するか、又は選択された温度若しくは温度範囲にデバイスを維持する。熱流の方向(デバイスから又はデバイスに)は、デバイスと熱伝達機構との間の相対的温度差によって決定される。
【0031】
熱伝達機構としては、これらに限定されるものではないが、ポンプ、弁、流体収納システム、圧力制御システム、凝縮器、熱交換器、熱源、ヒートシンク、冷却システム、能動型温度制御システム及び受動型温度制御システムを含む、熱伝達流体を管理するための設備を挙げることができる。好適な熱伝達機構の例としては、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)ツールの温度制御ウエハチャック、ダイ性能試験のための温度制御試験ヘッド、半導体プロセス装置内の温度制御作動領域、熱衝撃試験槽液体収容容器及び恒温槽が挙げられるが、これらに限定されない。エッチャー、アッシャー、PECVDチャンバ、気相はんだ付けデバイス、及び熱衝撃試験器等の一部の系では、所望の動作温度の上限は、最高170℃、最高200℃、又は更には最高230℃であり得る。
【0032】
デバイスと熱接触するように熱伝達機構を配置することによって、熱が伝達され得る。熱伝達機構は、デバイスと熱接触するように配置されるとき、デバイスから熱を除去するか、若しくはデバイスに熱を供給するか、又は選択された温度若しくは温度範囲にデバイスを維持する。熱流の方向(デバイスから又はデバイスに)は、デバイスと熱伝達機構との間の相対的温度差によって決定される。提供される装置として、冷蔵システム、冷却システム、試験装置及び機械加工装置も挙げることができる。いくつかの実施形態において、提供される装置は、恒温槽又は熱衝撃試験槽であり得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、本開示は、消火組成物を対象とする。組成物は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物及び1種以上の共消火剤を含んでもよい。
【0034】
例示的な実施形態において、共消火剤としては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロポリエーテル、クロロフルオロカーボン、ブロモフルオロカーボン、ブロモクロロフルオロカーボン、ハイドロブロモカーボン、ヨードフルオロカーボン、フッ素化ケトン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロポリエーテル、クロロフルオロカーボン、ブロモフルオロカーボン、ブロモクロロフルオロカーボン、ヨードフルオロカーボン、ハイドロブロモフルオロカーボン、フッ素化ケトン、ハイドロブロモカーボン、フッ素化オレフィン、ハイドロフルオロオレフィン、フッ素化スルホン、フッ素化ビニルエーテル、不飽和フルオロエーテル、ブロモフルオロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、ヨードフルオロオレフィン、フッ素化ビニルアミン、フッ素化アミノプロペン及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0035】
そのような共消火剤を選択し、消火能力を強化するか、又は特定の種類(又は規模若しくは場所)の火災用に消火組成物の物理的特性を変更する(例えば、噴射剤として機能することによって導入速度を変更する)ことができ、好ましくは、得られる組成物が空気中に可燃性混合物を形成しないような比率(ハイドロフルオロオレフィン化合物に対する共消火剤の比率)で利用することができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、ハイドロフルオロオレフィン化合物及び共消火剤は、鎮火又は消火に十分な量で消火組成物中に存在し得る。ハイドロフルオロオレフィン化合物及び共消火剤は、約9:1~約1:9の重量比で存在し得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、本開示は、ランキンサイクルで熱エネルギーを機械エネルギーに変換する装置を対象とする。この装置は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む作動流体を含んでもよい。装置は、作動流体を気化させて気化作動流体を形成するための熱源と、気化作動流体を通過させることにより熱エネルギーを機械エネルギーに変換するタービンと、タービンを通過した後の気化作動流体を冷却するための凝縮器と、作動流体を再循環させるためのポンプとを更に含んでもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、本開示は、ランキンサイクルで熱エネルギーを機械エネルギーに変換するプロセスに関する。このプロセスは、熱源を使用して、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む作動流体を気化し、気化した作動流体を形成することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、熱は、熱源からエバポレーター又はボイラー内の作動流体に伝達される。気化作動流体は、加圧されてもよく、膨張により作動するように使用することができる。熱源は、化石燃料(例えば、石油、石炭又は天然ガス)由来のもの等、任意の形態であってもよい。更に、いくつかの実施形態において、熱源は、原子力、太陽エネルギー、又は燃料電池から得ることができる。他の実施形態において、熱は、他の場合であれば大気に失われていたと思われる他の熱伝達システムからの「廃熱」であり得る。いくつかの実施形態において、「廃熱」は、第2のランキンサイクルシステム(第2のランキンサイクルの凝縮器又は他の冷却デバイス)から回収される熱であることができる。
【0039】
更なる「廃熱」源は、メタンガスが燃焼処理される埋立地で見出すことができる。メタンガスが環境に入って地球温暖化の一因になることを防止するために、埋立地によって発生するメタンガスを「フレア」によって燃焼させ、二酸化炭素と水を生成することができ、この二酸化炭素と水はいずれも、地球温暖化係数の点から環境有害性がメタンよりも低い。提供されるプロセスにおいて有用であり得る他の「廃熱」源は、地熱源、並びに排気ガス中で著しい熱を出すガスタービンエンジン等の他の種類のエンジンから水及び潤滑剤等の冷却液への熱である。
【0040】
提供されるプロセスにおいて、気化作動流体は、デバイスを通って膨張し得、デバイスは、加圧した作動流体を機械エネルギーに変換することができる。いくつかの実施形態において、気化作動流体は、タービンを通って膨張し、タービンは気化作動流体の膨張圧からシャフトを回転させることができる。このタービンは、その結果、いくつかの実施形態において、発電機を作動させ、それにより発電するといった、機械的仕事を行うために使用することができる。他の実施形態において、このタービンは、ベルト、ホイール、ギア、又は取り付けた若しくは連結したデバイスで使用するための機械的仕事若しくはエネルギーを移すことができる他のデバイスを駆動するために使用することができる。
【0041】
気化作動流体が機械エネルギーに変換された後、気化した(その時点で膨張した)作動流体を、冷却源を用いて凝縮し、再使用のために液化することができる。凝縮器によって放出された熱は、同じ又は別のランキンサイクルシステムに再循環させる等、他の目的に使用して、エネルギーを節約することができる。最後に、凝縮された作動流体は、閉鎖系で再使用するため、ポンプによってボイラー又はエバポレーターに戻すことができる。
【0042】
有機ランキンサイクル作動流体の所望の熱力学的特性は、当業者には公知であり、例えば、米国特許公開第2010/0139274号(Zyhowskiら)に説明されている。熱源の温度と凝縮液体又は凝縮後に生成されたヒートシンクの温度との差が大きいほど、ランキンサイクルの熱力学的効率は高い。熱力学的効率は、作動流体を熱源温度と一致させることにより、影響を受ける。作動流体の気化温度が熱源温度に近いほど、システムの効率は高い。トルエンは、例えば、79℃~約260℃の温度範囲で使用することができるが、トルエンは、毒性及び可燃性の点で懸念される。1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン等の流体を代替としてこの温度範囲で使用することができる。しかし、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンは、300℃未満では毒性化合物を生成する可能性があり、蒸発温度を約93℃~約121℃に限定する必要がある。したがって、より高い臨界温度を有し、その結果、ガスタービン及び内燃機関排気ガス等の熱源温度を作動流体に、より一致させることができる、環境に優しい他のランキンサイクル作動流体が望まれている。
【0043】
いくつかの実施形態において、本開示は、ポリマー発泡体の製造、特に、ポリウレタン発泡体及びフェノール系発泡体の製造における核形成剤としての本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物の使用に関する。これに関連して、いくつかの実施形態において、本開示は、1種以上の発泡剤と、1種以上の発泡性ポリマー又はその前駆体組成物と、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む1種以上の核形成剤とを含む、発泡性組成物を対象とする。
【0044】
いくつかの実施形態において、生成される発泡性組成物中に、ポリマーを発泡させるために気化される液体若しくは気体状の発泡剤、又はポリマーを発泡させるためにin situで生成される気体状の発泡剤を含む、様々な発泡剤を用いることができる。発泡剤の代表例としては、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロカーボン(HCC)、ヨードフルオロカーボン(IFC)、炭化水素、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)及びハイドロフルオロエーテル(HFE)が挙げられる。生成される発泡性組成物に使用するための発泡剤は、大気圧で約-45℃~約100℃の沸点を有し得る。典型的には、大気圧では、発泡剤は、少なくとも約15℃の沸点を有し、より典型的には、約20℃~約80℃の沸点を有する。発泡剤は、約30℃~約65℃の沸点を有し得る。使用できる発泡剤の更なる代表例としては、約5~約7個の炭素原子を有する脂肪族及び脂環式炭化水素、例えばn-ペンタン及びシクロペンタン;ギ酸メチル等のエステル;HFC、例えばCF3CF2CHFCHFCF3、CF3CH2CF2H、CF3CH2CF2CH3、CF3CF2H、CH3CF2H(HFC-152a)、CF3CH2CH2CF3及びCHF2CF2CH2F;HCFC、例えば、CH3CCl2F、CF3CHCl2、及びCF2HCl;HCC、例えば、2-クロロプロパン;IFC、例えば、CF3I;及びHFE、例えば、C4F9OCH3;並びにHFO、例えば、CF3CF=CH2、CF3CH=CHF、CF3CH=CHCl及びCF3CH=CHCF3が挙げられる。特定の配合物では、水とイソシアネート等の発泡体前駆体との反応から生じるCO2を発泡剤として使用することができる。
【0045】
様々な実施形態において、生成される発泡性組成物は、1種以上の発泡性ポリマー又はその前駆体組成物も含み得る。生成される発泡性組成物で用いるのに好適な発泡性ポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、及びポリエチレン)が挙げられる。発泡体は、従来の押出法を用いてスチレンポリマーから調製することができる。発泡剤組成物は、押出機内の熱可塑化スチレンポリマー流に注入され、熱可塑化スチレンポリマー流と混合された後、押出されて発泡体を形成することができる。好適なスチレンポリマーの代表例としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、環アルキル化スチレン及び環ハロゲン化スチレンの固体ホモポリマー、並びにこれらモノマーと微量の他の容易に共重合可能なオレフィン性モノマー(例えば、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、アクリル酸、N-ビニルカルバゾール、ブタジエン、及びジビニルベンゼン)とのコポリマーが挙げられる。好適な塩化ビニルポリマーとしては、例えば、塩化ビニルホモポリマー及び塩化ビニルと他のビニルモノマーとのコポリマーが挙げられる。エチレンホモポリマー及びエチレンと例えば、2-ブテン、アクリル酸、プロピレン又はブタジエンとのコポリマーも有用となり得る。異なるタイプのポリマーの混合物を使用することができる。
【0046】
様々な実施形態において、本開示の発泡性組成物は、核形成剤と発泡剤とのモル比が、1:50、1:25、1:9、又は1:7、1:3、又は1:2以下であってもよい。
【0047】
発泡体配合物の他の従来成分が、任意選択により、本開示の発泡性組成物中に存在してよい。例えば、架橋剤又は鎖延長剤、泡安定剤又は界面活性剤、触媒及び難燃剤を使用することができる。他の可能な成分としては、フィラー(例えば、カーボンブラック)、着色剤、抗真菌剤、殺菌剤、酸化防止剤、補強剤、静電気防止剤及び他の添加剤又は加工助剤が挙げられる。
【0048】
いくつかの実施形態において、ポリマー発泡体は、少なくとも1種の発泡性ポリマー又はその前駆体組成物及び上で説明したような核形成剤の存在下で、少なくとも1種の液体若しくは気体状発泡剤を気化させるか、又は少なくとも1種の気体状発泡剤を発生させることによって調製することができる。更なる実施形態において、ポリマー発泡体は、生成する発泡性組成物を使用して、上で説明したような核形成剤と、少なくとも1種の有機ポリイソシアネートと、少なくとも2個の反応性水素原子を含有する少なくとも1種の化合物との存在下で、少なくとも1種の発泡剤を(例えば、前駆体反応の熱を利用することによって)気化させることによって調製することができる。ポリイソシアネート系発泡体の製造において、一般的に、ポリイソシアネートと、反応性水素含有化合物と、発泡剤組成物とを組み合わせて、十分に混合し(例えば、様々な既知の種類の混合ヘッド及び噴霧装置のいずれかを用いて)、膨張させ、硬化させて、多孔性ポリマーにすることができる。ポリイソシアネートと反応性水素含有化合物との反応前に、発泡性組成物の特定の成分を予めブレンドしておくことは便利であることが多いが、必須ではない。例えば、反応性水素含有化合物と、発泡剤組成物と、ポリイソシアネートを除く任意の他の成分(例えば、界面活性剤)とをまずブレンドし、次いで、得られた混合物をポリイソシアネートと組み合わせると有用であることが多い。あるいは、発泡性組成物の全ての成分を別々に導入することができる。反応性水素含有化合物の全て又は一部分とポリイソシアネートとを予備反応させて、プレポリマーを形成することも可能である。
【0049】
いくつかの実施形態において、本開示は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む誘電性流体及びそのような誘電性流体を含む電気デバイス(例えば、コンデンサ、スイッチギヤ、変圧器、電気ケーブル又は電気バス)を対象とする。本出願の目的のために、用語「誘電性流体」は、液体誘電体及び気体誘電体の両方を包含する。流体、気体又は液体の物理的状態は、それが使用される電気デバイスの温度動作条件及び圧力動作条件で決まる。
【0050】
いくつかの実施形態において、誘電性流体は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物と、任意に1種以上の第2の誘電性流体とを含む。好適な第2の誘電性流体としては、例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン及び二酸化炭素又はこれらの組み合わせが挙げられる。第2の誘電性流体は、非凝縮性ガス又は不活性ガスであってもよい。一般に、第2の誘電性流体は、25℃又は電気デバイスの動作温度において、蒸気圧が少なくとも70kPaである量で使用され得る。
【0051】
本出願の誘電性流体は、電気絶縁に、並びに電気エネルギーの送電及び配電に使用されるアーク消去及び電流遮断機器に有用である。一般に、本開示の流体を使用することができる電気デバイスには、(1)ガス絶縁回路遮断器及び電流遮断設備、(2)ガス絶縁送電線、並びに(3)ガス絶縁変圧器の3つの主要な種類がある。このようなガス絶縁設備は、送配電システムの主要構成要素である。
【0052】
いくつかの実施形態において、本開示は、気体誘電体が電極間の空間を満たすように互いに離れた金属電極を備える、コンデンサなどの電気デバイスを提供する。電気デバイスの内部空間は、気体誘電性流体と平衡状態にある液体誘電性流体の収容容器を備えることもある。したがって、収容容器は、誘電性流体のいかなる損失も補充し得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、本開示は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む溶媒組成物と、溶媒組成物に可溶性又は分散性である1種以上のコーティング材料と、を含むコーティング組成物に関する。
【0054】
様々な実施形態において、コーティング組成物のコーティング材料としては、顔料、潤滑剤、安定剤、接着剤、酸化防止剤、染料、ポリマー、医薬品、離型剤、無機酸化物等、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。例えば、コーティング材料としては、ペルフルオロポリエーテル、炭化水素、及びシリコーン潤滑剤;テトラフルオロエチレンの非晶質コポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。好適なコーティング材料の更なる例としては、二酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、ペルフルオロポリエーテル、ポリシロキサン、ステアリン酸、アクリル接着剤、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンの非晶質コポリマー、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態において、上記コーティング組成物は、コーティング付着に有用となる可能性があり、この場合、ハイドロフルオロオレフィン化合物がコーティング材料の担体として機能し、基材表面への材料の付着を可能にする。これに関連して、本開示は、更に、コーティング組成物を使用して基材表面にコーティングを付着させるプロセスに関する。当該プロセスは、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に、(a)1種以上のハイドロフルオロオレフィン化合物を含有する溶媒組成物と、(b)上記溶媒組成物に可溶性又は分散性である1種以上のコーティング材料と、を含む液体コーティング組成物のコーティングを適用する工程を含む。溶媒組成物は、1種以上の共分散剤若しくは共溶媒及び/又は1種以上の添加剤(例えば、界面活性剤、着色剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤等)を更に含んでもよい。好ましくは、プロセスは、例えば、蒸発させることによって(蒸発は、例えば、熱又は真空の適用によって促進することができる)、コーティングから溶媒組成物を除去する工程を更に含む。
【0056】
様々な実施形態において、コーティング組成物を形成するために、コーティング組成物の構成成分(すなわち、用いられるハイドロフルオロオレフィン化合物、コーティング材料及び任意の共分散剤又は共溶媒)を、コーティング材料を溶解、分散又は乳化するために用いられる任意の従来の混合技術によって、例えば、機械的撹拌、超音波撹拌、及び手動撹拌等によって組み合わせることができる。溶媒組成物及びコーティング材料は、所望のコーティング厚に応じて任意の比率で組み合わせることができる。例えば、コーティング材料は、コーティング組成物の約0.1~約10重量パーセントを構成し得る。
【0057】
例示的な実施形態において、本開示の付着プロセスは、任意の従来技術によりコーティング組成物を基材に適用することによって実行することができる。例えば、組成物を基材上にはけ塗りすること若しくは噴霧すること(例えば、エアゾールとして)ができ、又は基材にスピンコーティングすることができる。いくつかの実施形態において、基材は、組成物に浸漬することによりコーティングされてもよい。浸漬は、任意の好適な温度で行うことができ、任意の都合のよい長さの時間にわたって維持することができる。基材が、カテーテルなどの管であり、カテーテルの管腔壁に組成物を確実にコーティングすることが望まれる場合、減圧の適用により管腔内に組成物を引き込んでもよい。
【0058】
様々な実施形態において、コーティングを基材に適用した後、溶媒組成物をコーティングから(例えば、蒸発によって)除去することができる。所望であれば、蒸発速度を、減圧又は穏やかな熱の適用により加速することができる。コーティングは、任意の都合のよい厚さであってよく、実際には、厚さは、コーティング材料の粘度、コーティングが適用される温度、及び引き上げ速度(浸漬が用いられる場合)などの要因によって決定されるものとなる。
【0059】
有機基材及び無機基材の両方を本開示のプロセスによってコーティングすることができる。基材の代表例としては、金属、セラミック、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、天然繊維(及び天然繊維に由来する布地)、例えば、綿、絹、毛皮、スエード、革、リネン及びウール、合成繊維(及び布地)、例えば、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ナイロン又はこれらの混紡、天然繊維と合成繊維との混紡を含む布地、並びに上記材料の複合材が挙げられる。いくつかの実施形態において、コーティングされ得る基材としては、例えば、ペルフルオロポリエーテル潤滑剤を用いた磁気ハードディスク若しくは電気コネクタ、又はシリコーン潤滑剤を用いた医療機器が挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態において、本開示は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物と、1種以上の共溶媒とを含む、洗浄組成物に関する。
【0061】
いくつかの実施形態において、ハイドロフルオロオレフィン化合物は、ハイドロフルオロオレフィン化合物と共溶媒の総重量に基づいて、50重量%超、60重量%超、70重量%超又は80重量%超の量で存在してもよい。
【0062】
様々な実施形態において、洗浄組成物は、界面活性剤を更に含んでもよい。好適な界面活性剤としては、フッ素化オレフィンに十分に可溶性である界面活性剤及び汚れを溶解、分散又は排除することによって汚れの除去を促進する界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の1つの有用な分類は、約14未満の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する非イオン性界面活性剤である。例としては、エトキシ化アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪酸、アルキルアリールスルホネート、グリセロールエステル、エトキシ化フルオロアルコール及びフッ素化スルホンアミドが挙げられる。1種の界面活性剤が油性汚れの除去を促進するために洗浄組成物に添加され、別の界面活性剤が水溶性の汚れの除去を促進するために添加された、相補的特性を有する界面活性剤の混合物を使用してもよい。界面活性剤は、使用する場合、汚れ除去を促進するのに十分な量で添加することができる。典型的には、界面活性剤は、洗浄組成物の約0.1~5.0重量%の量、好ましくは約0.2~2.0重量%の量で添加される。
【0063】
代表的な実施形態において、共溶媒としては、アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、全フッ素化第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、ハロ芳香族、シロキサン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル、又はこれらの混合物を挙げることができる。洗浄組成物に使用できる共溶媒の代表例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブチルアルコール、メチルt-ブチルエーテル、メチルt-アミルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、シクロヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-デカン、テルペン(例えば、a-ピネン、カンフェン、及びリモネン)、トランス-1,2-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、メチルシクロペンタン、デカリン、デカン酸メチル、酢酸t-ブチル、酢酸エチル、フタル酸ジエチル、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ナフタレン、トルエン、p-クロロベンゾトリフルオライド、トリフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロ-N-メチルモルホリン、ペルフルオロ-2-ブチルオキサシクロペンタン、塩化メチレン、クロロシクロヘキサン、1-クロロブタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ジクロロエタン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、2,3-ジヒドロペルフルオロペンタン、1,1,1,2,2,4-ヘキサフルオロブタン、1-トリフルオロメチル-1,2,2-トリフルオロシクロブタン、3-メチル-1,1,2,2-テトラフルオロシクロブタン、1-ヒドロペンタデカフルオロヘプタン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態において、本開示は、基材を洗浄するプロセスに関する。洗浄プロセスは、汚染された基材を上述のような洗浄組成物と接触させることによって実施できる。ハイドロフルオロオレフィン化合物は、単独で用いることも、互いとの混合物若しくは他の一般に使用されている洗浄溶媒(例えば、アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、全フッ素化第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、ハロ芳香族、シロキサン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル又はこれらの混合物)との混合物で用いることもできる。このような共溶媒は、特定の用途のために洗浄組成物の溶解特性を改変又は向上するように選択でき、得られる組成物が引火点を持たないような比率(ハイドロフルオロオレフィン化合物に対する共溶媒の比率)で用いることができる。特定の用途に望ましい場合、洗浄組成物は、1種以上の溶解又は分散された気体、液体又は固体添加剤(例えば、二酸化炭素ガス、界面活性剤、安定剤、酸化防止剤又は活性炭)を更に含有することができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、本開示は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物と、任意に1種以上の界面活性剤とを含む、洗浄組成物に関する。好適な界面活性剤としては、ハイドロフルオロオレフィン化合物に十分に可溶性である界面活性剤及び汚れを溶解、分散又は排除することによって汚れの除去を促進する界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の1つの有用な分類は、約14未満の親水性-親油性バランス(HLB)を有する非イオン性界面活性剤である。例としては、エトキシル化アルコール、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化脂肪酸、アルキルアリールスルホネート、グリセロールエステル、エトキシル化フルオロアルコール及びフッ素化スルホンアミドが挙げられる。一界面活性剤が油性汚れの除去を促進するために洗浄組成物に添加され、別の界面活性剤が水溶性の汚れの除去を促進するために添加された、相補的特性を有する界面活性剤の混合物を使用してもよい。界面活性剤は、使用する場合、汚れ除去を促進するのに十分な量で添加することができる。典型的には、界面活性剤は、洗浄組成物の0.1~5.0重量%又は0.2~2.0重量%の量で添加されてもよい。
【0066】
本開示の洗浄プロセスを用いて、基材の表面から大部分の汚染物質を溶解又は除去することもできる。例えば、軽質炭化水素汚染物質等の物質;鉱油及びグリース等の高分子量炭化水素汚染物質;ペルフルオロポリエーテル、ブロモトリフルオロエチレンオリゴマー(ジャイロスコープ流体)、及びクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(油圧油、潤滑剤)等のフルオロカーボン汚染物質;シリコーン油及びグリース;はんだフラックス;微粒子;水;並びに、精密、電子、金属、及び医療機器の洗浄で遭遇するその他の汚染物質を除去することができる。
【0067】
洗浄組成物は、気体状態又は液体状態のいずれか(又は両方)で使用することができ、基材と「接触させる」ための既知技法又は将来の技法のいずれかを用いることができる。例えば、液体洗浄組成物を基材上に噴霧若しくははけ塗りすることができ、気体洗浄組成物を基材に吹き付けることができ、又は基材を気体若しくは液体組成物のいずれかにさらすことができる。高温、超音波エネルギー及び/又は撹拌を使用して、洗浄を促進することができる。様々な異なる溶媒洗浄技術が、B.N.EllisによってCleaning and Contamination of Electronics Components and Assemblies,Electrochemical Publications Limited,Ayr,Scotland,182~94(1986)に記載されている。
【0068】
有機基材及び無機基材の両方を本開示のプロセスによって洗浄することができる。基材の代表例としては、金属、セラミック、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、天然繊維(及び天然繊維に由来する布地)、例えば、綿、絹、毛皮、スエード、革、リネン及びウール、合成繊維(及び布地)、例えば、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ナイロン又はこれらの混紡、天然繊維と合成繊維との混紡を含む布地、並びに上記材料の複合材が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記プロセスは、電子部品(例えば回路基板)、光媒体若しくは磁気媒体又は医療機器の精密洗浄に使用され得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、本開示は更に、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む電解質組成物に関する。電解質組成物は、(a)1種以上のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む溶媒組成物と、(b)少なくとも1種の電解質塩とを含んでもよい。本開示の電解質組成物は、優れた酸化安定性を呈し、高圧電気化学セル(例えば、充電式リチウムイオン電池)に使用すると、卓越したサイクル寿命及びカレンダー寿命をもたらす。例えば、黒鉛化炭素電極を有する電気化学セルにこのような電解質組成物を使用すると、電解質は、少なくとも4.5V、最大6.0V(対Li/Li+)の最大充電電圧に対して安定なサイクルをもたらす。
【0070】
本開示の電解質組成物の調製における使用に好適な電解質塩としては、少なくとも1つのカチオン及び少なくとも1つの弱配位アニオン(炭化水素スルホン酸以上の酸性度を有するアニオン(例えば、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン)の共役酸)を含む塩、選択されたハイドロフルオロオレフィン化合物(又はそれと1種以上の他のハイドロフルオロオレフィン化合物若しくは1種以上の従来電解質溶媒とのブレンド)に少なくとも部分的に可溶性の塩、並びに少なくとも部分的に解離して導電性電解質組成物を形成する塩が挙げられる。塩は、動作電圧の範囲にわたって安定であることができ、非腐食性であり、かつ熱安定性及び加水分解に安定性である。好適なカチオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族金属、IIIB族金属、遷移金属、希土類金属及びアンモニウム(例えば、テトラアルキルアンモニウム又はトリアルキルアンモニウム)カチオン、並びにプロトンが挙げられる。いくつかの実施形態において、電池に使用するためのカチオンとしては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のカチオンが挙げられる。好適なアニオンとしては、(FSO2)2N-、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、及びSbF6
-等のフッ素含有無機アニオン、CIO4
-、HSO4
-、H2PO4
-;アルカン、アリール、及びアルカリルスルホネート等の有機アニオン;フッ素含有及び非フッ素化テトラアリールボレート;カルボラン及びハロゲン-、アルキル-、又はハロアルキル置換カルボランアニオン(メタロカルボランアニオンを含む);並びにペルフルオロアルカンスルホネート、シアノペルフルオロアルカンスルホニルアミド、ビス(シアノ)ペルフルオロアルカンスルホニルメチド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド等のフッ素含有有機アニオン等が挙げられる。電池に使用するのに好ましいアニオンとしては、フッ素含有無機アニオン(例えば、(FSO2)2N-、BF4
-、PF6
-及びAsF6
-)並びにフッ素含有有機アニオン(例えば、ペルフルオロアルカンスルホネート、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド)が挙げられる。フッ素含有有機アニオンは、完全にフッ素化されているか、すなわち全フッ素化されているか、又は(その有機部分内で)部分的にフッ素化されているかのいずれかであってよい。いくつかの実施形態において、フッ素含有有機アニオンは、少なくとも約80%がフッ素化されている(すなわち、アニオンの炭素結合置換基のうちの少なくとも約80%がフッ素原子である)。いくつかの実施形態において、アニオンは全フッ素化されている(すなわち、完全にフッ素化されており、炭素結合置換基の全てがフッ素原子である)。アニオンは、全フッ素化アニオンを含め、例えば、窒素、酸素又は硫黄等の1個以上の連結されたヘテロ原子を含有してもよい。いくつかの実施形態において、フッ素含有有機アニオンとしては、ペルフルオロアルカンスルホネート、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチドが挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態において、電解質塩としては、リチウム塩を挙げることができる。好適なリチウム塩としては、例えば、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ペルフルオロエタンスルホニル)イミド、リチウムテトラフルオロボレート、過塩素酸リチウム、リチウムヘキサフルオロアルセネート、リチウムトリフルオロメタンスルホネート、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li-FSI)及びこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0072】
本開示の電解質組成物は、少なくとも1種の電解質塩と、少なくとも1種の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む溶媒組成物とを組み合わせ、電解質塩を所望の動作温度で溶媒組成物中に少なくとも部分的に溶解させることによって調製することができる。ハイドロフルオロオレフィン化合物(又は通常は、それを含む、それからなる、若しくは本質的にそれからなる液体組成物)は、このような調製において使用することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、電解質組成物の伝導率が最大値又はその近傍となるような濃度(典型的には、例えば、リチウム電池用電解質の場合、Liモル濃度約0.1~4.0M、又は1.0~2.0M)で、電解質組成物中に用いられるが、広範囲の他の濃度も使用してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、1種以上の従来の電解質溶媒が、ハイドロフルオロオレフィン化合物と混合される(例えば、ハイドロフルオロオレフィンは、得られる溶媒組成物の約1~約80又は90%を構成する)。有用な従来の電解質溶媒としては、例えば、有機及びフッ素含有電解質溶媒(例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、7-ブチロラクトン、ジグリム(すなわち、ジエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグリム(すなわち、テトラエチレングリコールジメチルエーテル)、モノフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、酢酸エチル、酪酸メチル、テトラヒドロフラン、アルキル置換テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル置換1,3-ジオキソラン、テトラヒドロピラン、アルキル置換テトラヒドロピラン等、及びこれらの混合物)が挙げられる。他の従来の電解質添加剤(例えば、界面活性剤)も、所望であれば存在してもよい。
【0075】
本開示は更に、上記の電解質組成物を含む電気化学セル(例えば、燃料電池、電池、コンデンサ、エレクトロクロミックウインドウ)に関する。このような電気化学セルは、正極、負極、セパレータ及び上記の電解質組成物を含んでもよい。
【0076】
様々な負極及び正極を電気化学セルに用いてもよい。代表的な負極としては、黒鉛炭素、例えば、(002)結晶面同士の間隔(d002)が3.45A>d002>3.354Aであり、粉末、フレーク、繊維又は球(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)等の形態で存在するもの;表題「ELECTRODE FOR A LITHIUM BATTERY」の米国特許第6,203,944号(Turner’944)及び表題「ELECTRODE MATERIAL AND COMPOSITIONS」のPCT公開特許出願第WO 00103444号(Turner、PCT)に記載のLi4/3Ti5/3O4のリチウム合金組成物;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な正極としては、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、LiMn2O4、LiCoO2及びこれらの組み合わせが挙げられる。負極又は正極は、当業者によく知られる添加剤、例えば、負極にはカーボンブラック、正極にはカーボンブラック、フレーク状黒鉛等を含有してもよい。
【0077】
本開示の電気化学デバイスは、コンピュータ、電動工具、自動車、通信デバイス等の様々な電子物品に使用することができる。
【0078】
実施形態
1.以下の一般式(I):
【化12】
[式中、R
f
1及びR
f
2、並びにR
f
3及びR
f
4は、(i)独立して、1~8個の炭素原子を有し、かつ任意にO若しくはNから選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含有する直鎖若しくは分枝鎖フッ素化アルキル基であるか、又は(ii)一緒に結合して、4~8個の炭素原子を有し、かつ任意にO若しくはNから選択される1個以上の連結されたヘテロ原子を含有する環構造を形成し、Xは、CF
3、H、又はFであり、Zは、F又はHである]
で表されるハイドロフルオロオレフィン化合物。
2.R
f
1及びR
f
2、並びにR
f
3及びR
f
4が、独立して、1~8個の炭素原子を有し、かつ任意にO又はNから選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含有する直鎖又は分枝鎖フッ素化アルキル基である、実施形態1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物。
3.R
f
1及びR
f
2、並びにR
f
3及びR
f
4が、一緒に結合して、4~8個の炭素原子を有し、かつ任意に1個以上の連結されたヘテロ原子を含有する環構造を形成する、実施形態1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物。
4.ハイドロフルオロオレフィンが、
から選択される、実施形態1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物。
【化13】
5.前述の実施形態のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物の製造方法であって、
フッ素化イミンを、触媒の存在下でフッ素化プロペニル又はビニルアミンと接触させることを含む、製造方法。
6.前述の実施形態のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む作動流体であって、ハイドロフルオロオレフィン化合物が、作動流体中に、作動流体の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する、作動流体。
7.熱を伝達するための装置であって、
デバイスと、
デバイスへ又はデバイスから熱を伝達するための機構と、を含み、機構が、実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を含む熱伝達流体を含む、装置。
8.デバイスが、マイクロプロセッサ、半導体デバイスを製造するために使用される半導体ウエハ、電力制御半導体、電気化学セル、配電スイッチギヤ、電力変圧器、回路基板、マルチチップモジュール、パッケージ化された又はパッケージ化されていない半導体デバイス、燃料電池及びレーザーから選択される、実施形態7に記載の熱を伝達するための装置。
9.熱を伝達するための機構が、電子デバイスの温度又は温度範囲を維持するためのシステムの構成要素である、実施形態7~8のいずれか1つに記載の熱を伝達するための装置。
10.熱を伝達する方法であって、
デバイスを準備することと、
実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を含む熱伝達流体を用いて、デバイスへ又はデバイスから熱を伝達することと、を含む、方法。
11.(a)実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体と、
(b)1種以上のハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロポリエーテル、クロロフルオロカーボン、ブロモフルオロカーボン、ブロモクロロフルオロカーボン、ヨードフルオロカーボン、ハイドロブロモフルオロカーボン、フッ素化ケトン、ハイドロブロモカーボン、フッ素化オレフィン、ハイドロフルオロオレフィン、フッ素化スルホン、フッ素化ビニルエーテル及びこれらの混合物を含む、少なくとも1種の共消火剤と、を含み、
(a)及び(b)が、鎮火又は消火するのに十分な量で存在する、消火組成物。
12.(a)及び(b)が約9:1~約1:9の重量比である、実施形態11に記載の消火組成物。
13.実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を含む消火組成物を火災に適用することと、
鎮火することと、
を含む、消火方法。
14.消火組成物が、1種以上のハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロポリエーテル、クロロフルオロカーボン、ブロモフルオロカーボン、ブロモクロロフルオロカーボン、ヨードフルオロカーボン、ハイドロブロモフルオロカーボン、フッ素化ケトン、ハイドロブロモカーボン、フッ素化オレフィン、ハイドロフルオロオレフィン、フッ素化スルホン、フッ素化ビニルエーテル及びこれらの混合物を含む少なくとも1種の共消火剤を更に含む、実施形態11に記載の消火方法。
15.ランキンサイクルにおいて熱エネルギーを機械エネルギーに変換するための装置であって、
作動流体と、
作動流体を気化させて、気化した作動流体を形成するための熱源と、
気化した作動流体を通過させ、それによって熱エネルギーを機械エネルギーに変換するタービンと、
気化した作動流体を、タービンに通した後、冷却するための凝縮器と、
作動流体を再循環させるためのポンプと、を備え、
作動流体が、実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む、装置。
16.ランキンサイクルにおいて熱エネルギーを機械エネルギーに変換するためのプロセスであって、
作動流体を熱源によって気化させて、気化した作動流体を形成することと、
気化した作動流体を、タービンに通して膨張させることと、
冷却源を使用して気化した作動流体を冷却して、凝縮した作動流体を形成することと、
凝縮した作動流体をポンプ輸送することと、を含み
作動流体が、実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む、プロセス。
17.廃熱を回収するためのプロセスであって、
液体の作動流体を、廃熱を生成するプロセスと連通している熱交換器に通過させ、気化した作動流体を生成することと、
気化した作動流体を熱交換器から取り出すことと、
気化した作動流体を、廃熱が機械エネルギーに変換される膨張器に通過させることと、
気化した作動流体が膨張器を通過した後に気化した作動流体を冷却することと、を含み、
作動流体が、実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む、プロセス。
18.発泡剤と、
発泡性ポリマー又はその前駆体組成物と、
核形成剤と、を含み、核形成剤が、実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を含む、発泡性組成物。
19.核形成剤及び発泡剤は1:2未満のモル比である、実施形態18に記載の発泡性組成物。
20.発泡剤が、約5~約7個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、約5~約7個の炭素原子を有する脂環式炭化水素、炭化水素エステル、水又はこれらの組み合わせを含む、実施形態18~19のいずれか1つに記載の発泡性組成物。
21.ポリマー発泡体を調製するためのであって、
少なくとも1種の発泡性ポリマー又はその前駆体組成物及び核形成剤の存在下で、少なくとも1種の液体若しくは気体の発泡剤を気化させるか、又は少なくとも1種の気体の発泡剤を発生させること、を含み、核形成剤が、実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を含む、プロセス。
22.実施形態19に記載による発泡性組成物を用いて製造される、発泡体。
23.実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を含む誘電性流体を含み、
電気デバイスである、デバイス。
24.ガス絶縁回路遮断器、電流遮断設備、ガス絶縁送電線、ガス絶縁変圧器又はガス絶縁変電所を含む、実施形態23に記載のデバイス。
25.誘電性流体が第2の誘電性ガスを更に含む、実施形態23~24のいずれか1つに記載のデバイス。
26.第2の誘電性ガスが不活性ガスを含む、実施形態23に記載のデバイス。
27.第2の誘電性ガスが、窒素、ヘリウム、アルゴン又は二酸化炭素を含む、実施形態26に記載のデバイス。
28.実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を含む溶媒組成物と、
溶媒組成物に可溶性又は分散性であるコーティング材料と、を含む、コーティング組成物。
29.コーティング材料が、顔料、潤滑剤、安定剤、接着剤、酸化防止剤、染料、ポリマー、医薬品、離型剤、無機酸化物を含む、実施形態28に記載のコーティング組成物。
30.コーティング材料が、ペルフルオロポリエーテル、炭化水素、シリコーン潤滑剤、テトラフルオロエチレンのコポリマー又はポリテトラフルオロエチレンを含む、実施形態28に記載の組成物。
31.実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体と、
共溶媒と、を含む、洗浄組成物。
32.ハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体が、フッ素化オレフィン化合物及び共溶媒の総重量に基づいて、組成物の50重量%を超える、実施形態31に記載の組成物。
33.共溶媒が、アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、全フッ素化第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、ハロ芳香族、シロキサン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル又はこれらの混合物を含む、実施形態31~32のいずれか1つに記載の組成物。
34.実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体と、
界面活性剤と、を含む、洗浄組成物。
35.洗浄組成物が、0.1~5重量%の界面活性剤を含む、実施形態34に記載の組成物。
36.界面活性剤が、エトキシ化アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪酸、アルキルアリールスルホネート、グリセロールエステル、エトキシ化フルオロアルコール、フッ素化スルホンアミド又はこれらの混合物を含む非イオン性界面活性剤を含む、実施形態34~35のいずれか1つに記載の組成物。
37.基材から汚染物を除去するためのプロセスであって、
基材を、
実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体と、
共溶媒と、を含む組成物に接触させることを含む、プロセス。
38.実施形態1~6のいずれか1つに記載の少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を含む溶媒組成物と、
電解質塩と、を含む、電解質組成物。
39.全フッ素化ビニル又はプロペニルアミンの、全フッ素化ビニル又はプロペニル基の1個以上のF原子をHで置換することができる還元剤による還元を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体を製造するためのプロセス。
40.還元剤がヒドリド還元剤である、実施形態39に記載のプロセス。
【0079】
本開示の操作を、以下の詳細な実施例に関連して更に説明する。これらの実施例は、様々な実施形態及び技術を更に例示するために提供される。しかしながら、本開示の範囲内に留まりつつ、多くの変更及び修正を加えることができるということが理解されるべきである。
【実施例】
【0080】
以下の実施例の調製に使用した材料を、以下のように入手又は調製した。
【表1】
【0081】
2,2,3,3,5,6,6-ヘプタフルオロ-1,4-オキサジンは、Grinevskaja V.K.,Del’tsova D.P.,Gervits L.L.J.Fluorine Notes,2009,vol.63等の文献中の既知の方法によって調製することができる。
【0082】
2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(1,2,2-トリフルオロビニル)モルホリンは、以下の参考文献のいずれかに記載の方法によって調製することができる。
1)T.Abe,E.Hayashi,H.Baba,H.Fukaya J.Fluorine Chem.1990,48,257。
2)T.Abe,E.Hayashi,H.Fukaya,H.Baba J.Fluorine Chem.1990,50,173。
3)T.Abe,E.Hayashi,T.Shimizu Chem.Lett.1989,905。
4)T.Abe、米国特許第4,782,148号。
5)T.Abe,E.Hayashi,Chem.Lett.1988,1887。
6)T.Abe,特開平1-070444A。
7)T.Abe,特開平1-07445A。
【0083】
4-[1,2-ジフルオロビニル]-2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-モルホリンを以下のように調製した。オーバーヘッド撹拌機、冷水凝縮器、乾燥窒素バブラー及び滴下漏斗を備えた1000mLのジャケット付き三口丸底フラスコ中で、水素化ホウ素ナトリウム(10.4g、0.265mol)及びジグリム(180g)を合わせた。混合物を、-10℃の冷却機の設定温度を用いて冷却し、溶液温度を約0℃まで下げた。次いで、フラスコ内の反応温度を約0℃に保つように冷却機の温度を更に低く調節しながら、2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(1,2,2-トリフルオロビニル)モルホリン(165g、0.530mol)を反応混合物にゆっくり滴加した。2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(1,2,2-トリフルオロビニル)モルホリンの添加が完了した後、反応物を30分間撹拌し、次いで水でクエンチした。水でクエンチした後、35%(w/w)リン酸を添加して、pHを約3に調節し、全ての固体を溶解した。下層のフルオロケミカル相を水相から分離し、水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この材料を、分別蒸留によって精製した。
【0084】
実施例1:2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-[2-フルオロ-1-(2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロモルホリン-4-イル)ビニル]モルホリンの合成
【化14】
100mLのParr反応器(Hastelloy C)中で、4-[1,2-ジフルオロビニル]-2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-モルホリン(30g、102.37mmol)及び五フッ化アンチモン(20g、92.272mmol)を合わせた。反応器を密封し、次いでドライアイスで冷却した。減圧し窒素をヘッドスペース内に循環させた後、最後に1mmHgまで真空を適用した。2,2,3,3,5,6,6-ヘプタフルオロ-1,4-オキサジン(29g、137.41mmol)をシリンダーから反応器のヘッドスペースへ液体で充填した。次いで反応器をスタンドに置き、撹拌し、室温まで加温した。次いで、熱を70℃に上昇させた。これを4時間保持し、次いで室温まで冷却した。次いで、反応混合物を、水氷を含有するPFA分液漏斗に入れて空にした。次いで、分液漏斗内の液体を、セライトで予め充填した使い捨てのフィルタ漏斗に通して濾過した。合計51.5gの未精製物質を、89%の粗収量で回収した。同心円管塔を使用した分別蒸留により物質を精製した。精製した物質の沸点は、大気圧で152℃であった。物質の構造をGC/MS並びに1H及び19F NMRにより検証した。
【0085】
実施例2:4-[2,2-ジフルオロ-1-(2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロモルホリン-4-イル)ビニル]-2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-モルホリンの合成
【化15】
100mLのHastelloy C Parr反応器中で、2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(1,2,2-トリフルオロビニル)モルホリン(40g、128.60mmol)及び五フッ化アンチモン(20g、92.272mmol)を合わせた。反応器を密封し、ドライアイスで冷却した。次いで、真空をヘッドスペースに1mmHgまで適用し、次いで2,2,3,3,5,6,6-ヘプタフルオロ-1,4-オキサジン(35.3g、167.18mmol)を、シリンダーから反応器のヘッドスペースに液体として添加した。反応器をスタンドに置き、撹拌し、70℃に加熱した。70℃で一晩保持した後、反応器を冷却し、通気し、内容物をPFA分液漏斗中の氷の上に注いだ。液体の内容物を濾過し、FCを水で2回洗浄した。合計62gの未精製物質を回収し、これは、GC面積パーセントに基づいて83.1%の収率を示した。同心円管塔を使用した分別蒸留により物質を精製した。精製した生成物は、大気圧で162℃の沸点を有した。物質の構造をGC/MS並びに1H及び19F NMRにより検証した。
【0086】
当業者には、本開示の範囲及び趣旨を逸脱することのない、本開示に対する様々な改変及び変更が明らかとなるであろう。本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されることは意図していないこと、並びにそのような実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図した本開示の範囲内の例示としてのみ提示されることを理解されたい。本開示に引用される参照文献は全て、参照によりその全体が本明細書に援用される。