(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】レーザスキャナシステム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20220809BHJP
G01C 1/00 20060101ALI20220809BHJP
G01S 17/88 20060101ALI20220809BHJP
G01S 5/14 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
G01C1/00 A
G01S17/88
G01S5/14
(21)【出願番号】P 2018146746
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠之
(72)【発明者】
【氏名】古明地 隆浩
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-536613(JP,A)
【文献】特開2007-200045(JP,A)
【文献】特開2017-223489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G01S 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局を有し、3次元点群データを取得するレーザスキャナと、少なくとも3つの固定局とを有するレーザスキャナシステムであって、前記レーザスキャナは、該レーザスキャナの水平回転軸心上の機械点から既知の位置にオフセットされた移動局と、前記レーザスキャナの相対水平角を検出する水平角検出部と、前記レーザスキャナの水平回転を制御する演算制御部とを具備し、前記固定局は、前記移動局にパルスを発信し、該移動局からのパルスを受信することで該移動局との距離を測定可能であり、前記演算制御部は、各固定局で形成される2次元の固定局座標系を演算し、前記レーザスキャナを前記機械点を中心に360°水平回転させつつ、所定角度毎に各固定局を中心とし、各固定局と前記移動局との距離を半径とする少なくとも3つの円の交点の座標を前記移動局の測位結果として演算し、360°分の各測位結果を平均して前記固定局座標系での概略機械点座標を演算するレーザスキャナシステム。
【請求項2】
前記演算制御部は、前記移動局の測位結果に基づき、前記機械点と前記移動局を結ぶ直線と前記固定局座標系の基準軸とが成す概略回転角と、前記水平角検出部で検出される相対水平角とを対応付け、前記概略回転角が0°となる時の前記相対水平角を概略方位角として演算する請求項1に記載のレーザスキャナシステム。
【請求項3】
前記演算制御部は、演算された前記概略機械点座標と前記概略方位角とを初期値として、前記レーザスキャナで取得された複数の3次元点群データを結合させる請求項2に記載のレーザスキャナシステム。
【請求項4】
前記各固定局は、既知の3次元座標を有する請求項3に記載のレーザスキャナシステム。
【請求項5】
前記固定局は他の固定局との距離を測定可能であり、前記演算制御部は、前記固定局のうちの2つの前記固定局座標系での位置を設定し、前記2つの固定局を中心とし、残りの固定局との距離を半径とする少なくとも2つの円が交差する少なくとも2点に基づき前記残りの固定局の2つの候補位置を演算し、各候補位置で前記移動局の測位結果の軌跡をそれぞれ取得し、托架部の回転方向と合致する回転方向で取得される軌跡を有する前記候補位置を前記残りの固定局の設置位置として決定する請求項3に記載のレーザスキャナシステム。
【請求項6】
前記概略機械点座標と前記概略方位角の演算後、前記固定局のうちの1つと前記移動局とを移動させ、前記演算制御部が再度概略機械点座標と前記概略方位角を演算する請求項4又は請求項5に記載のレーザスキャナシステム。
【請求項7】
前記移動局と少なくとも1つの前記固定局にそれぞれ気圧センサが設けられ、前記演算制御部は、各気圧センサの検出結果に基づき前記固定局に対する前記移動局の相対的な高さを演算し、演算した高さに基づき3次元の概略機械点座標を演算する請求項4~請求項6のうちのいずれか1項に記載のレーザスキャナシステム。
【請求項8】
前記各固定局はそれぞれ固定局装置に設けられ、該固定局装置は前記レーザスキャナにより3次元座標を測定可能なターゲットを具備する請求項1~請求項7のうちいずれか1項に記載のレーザスキャナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザスキャナにより複数の地点から点群データを取得し、又複数の点群データを同一の座標系の点群データとして統合するレーザスキャナシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
測量装置として、トータルステーションや3次元レーザスキャナがある。トータルステーションは、測定対象点の測定を行う場合に用いられる。3次元レーザスキャナは、測定対象物の形状を3次元座標を有する無数の点の集まり、即ち3次元点群データとして取得する。
【0003】
3次元レーザスキャナにより3次元点群データを取得する際、特に建物の内部では、部屋の形状や柱等の障害物により、1箇所からの測定では部屋全体の3次元点群データを取得できない場合がある。この場合、複数箇所で3次元点群データを取得し、得られた複数の3次元点群データを結合(レジストレーション)することで、部屋全体の3次元点群データを取得している。
【0004】
従来では、建物の内部に複数枚のターゲットシートを貼設し、3次元点群データの中からターゲットシートを検出し、対応するターゲットシートを介して点群データ間を関連付けることで3次元点群データ同士のレジストレーションを行っていた。
【0005】
又、レジストレーションを自動で行う方法として、特許文献1に示されるICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを用いる方法がある。ICPアルゴリズムでは、レーザスキャナの概略の機械点(レーザスキャナの座標系の原点)座標と概略の方位角を初期値として必要とする。
【0006】
然し乍ら、従来では、レーザスキャナの概略機械点座標と概略方位角とを自動で演算する方法がなかった。この為、複数の3次元点群データ間で機械点と方位角とを概略一致させる為の処理は、作業者が手動で行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5715166号明細書
【文献】特開2016-161411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、レーザスキャナの概略機械点座標と概略方位角とを自動で演算するレーザスキャナシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、移動局を有し、3次元点群データを取得するレーザスキャナと、少なくとも3つの固定局とを有するレーザスキャナシステムであって、前記レーザスキャナは、該レーザスキャナの水平回転軸心上の機械点から既知の位置にオフセットされた移動局と、前記レーザスキャナの相対水平角を検出する水平角検出部と、前記レーザスキャナの水平回転を制御する演算制御部とを具備し、前記固定局は、前記移動局にパルスを発信し、該移動局からのパルスを受信することで該移動局との距離を測定可能であり、前記演算制御部は、各固定局で形成される2次元の固定局座標系を演算し、前記レーザスキャナを前記機械点を中心に360°水平回転させつつ、所定角度毎に各固定局を中心とし、各固定局と前記移動局との距離を半径とする少なくとも3つの円の交点の座標を前記移動局の測位結果として演算し、360°分の各測位結果を平均して前記固定局座標系での概略機械点座標を演算するレーザスキャナシステムに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記演算制御部は、前記移動局の測位結果に基づき、前記機械点と前記移動局を結ぶ直線と前記固定局座標系の基準軸とが成す概略回転角と、前記水平角検出部で検出される相対水平角とを対応付け、前記概略回転角が0°となる時の前記相対水平角を概略方位角として演算するレーザスキャナシステムに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記演算制御部は、演算された前記概略機械点座標と前記概略方位角とを初期値として、前記レーザスキャナで取得された複数の3次元点群データを結合させるレーザスキャナシステムに係るものである。
【0012】
又本発明は、前記各固定局は、既知の3次元座標を有するレーザスキャナシステムに係るものである。
【0013】
又本発明は、前記固定局は他の固定局との距離を測定可能であり、前記演算制御部は、前記固定局のうちの2つの前記固定局座標系での位置を設定し、前記2つの固定局を中心とし、残りの固定局との距離を半径とする少なくとも2つの円が交差する少なくとも2点に基づき前記残りの固定局の2つの候補位置を演算し、各候補位置で前記移動局の測位結果の軌跡をそれぞれ取得し、托架部の回転方向と合致する回転方向で取得される軌跡を有する前記候補位置を前記残りの固定局の設置位置として決定するレーザスキャナシステムに係るものである。
【0014】
又本発明は、前記概略機械点座標と前記概略方位角の演算後、前記固定局のうちの1つと前記移動局とを移動させ、前記演算制御部が再度概略機械点座標と前記概略方位角を演算するレーザスキャナシステムに係るものである。
【0015】
又本発明は、前記移動局と少なくとも1つの前記固定局にそれぞれ気圧センサが設けられ、前記演算制御部は、各気圧センサの検出結果に基づき前記固定局に対する前記移動局の相対的な高さを演算し、演算した高さに基づき3次元の概略機械点座標を演算するレーザスキャナシステムに係るものである。
【0016】
更に又本発明は、前記各固定局はそれぞれ固定局装置に設けられ、該固定局装置は前記レーザスキャナにより3次元座標を測定可能なターゲットを具備するレーザスキャナシステムに係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、移動局を有し、3次元点群データを取得するレーザスキャナと、少なくとも3つの固定局とを有するレーザスキャナシステムであって、前記レーザスキャナは、該レーザスキャナの水平回転軸心上の機械点から既知の位置にオフセットされた移動局と、前記レーザスキャナの相対水平角を検出する水平角検出部と、前記レーザスキャナの水平回転を制御する演算制御部とを具備し、前記固定局は、前記移動局にパルスを発信し、該移動局からのパルスを受信することで該移動局との距離を測定可能であり、前記演算制御部は、各固定局で形成される2次元の固定局座標系を演算し、前記レーザスキャナを前記機械点を中心に360°水平回転させつつ、所定角度毎に各固定局を中心とし、各固定局と前記移動局との距離を半径とする少なくとも3つの円の交点の座標を前記移動局の測位結果として演算し、360°分の各測位結果を平均して前記固定局座標系での概略機械点座標を演算するので、前記移動局を前記機械点と同心に設けて測位した場合よりも誤差を低減することができ、概略機械点座標の測位精度を向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施例に係るレーザスキャナを示す正断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る移動局の測位を説明する説明図である。
【
図3】前記移動局を回転させつつ測位した場合の測位結果の軌跡を示す説明図である。
【
図4】測位結果の平均値との差分を演算し、前記軌跡の中心を原点とした場合を示す説明図である。
【
図5】前記移動局を回転させつつ測位した際の、相対水平角と概略回転角との関係を示す説明図である。
【
図6】本発明の第2の実施例に係る固定局の候補位置を示す説明図である。
【
図7】各候補位置で移動局を測位した際の、軌跡が取得される方向の違いを示す説明図である。
【
図8】本発明の第3の実施例に係る移動局と固定局を移動させた場合を示す説明図である。
【
図9】本発明の第4の実施例に係る固定局装置を示す正面図である。
【
図10】本発明の第5の実施例に係るレーザスキャナを示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0020】
先ず、
図1に於いて、本発明の第1の実施例に係るレーザスキャナについて説明する。
【0021】
レーザスキャナ1は、図示しない三脚に取付けられた整準部2と、該整準部2に設けられたスキャナ本体3とを有している。
【0022】
前記整準部2は整準ネジ4を有し、該整準ネジ4により前記スキャナ本体3の整準を行う。
【0023】
前記スキャナ本体3は、固定部5と、托架部6と、水平回転軸7と、水平回転軸受8と、水平回転駆動部としての水平回転モータ9と、水平角検出部としての水平角エンコーダ11と、鉛直回転軸12と、鉛直回転軸受13と、鉛直回転駆動部としての鉛直回転モータ14と、鉛直角検出部としての鉛直角エンコーダ15と、鉛直回転部である走査鏡16と、操作部と表示部とを兼用する操作パネル17と、アンテナ18と、移動局19と、演算制御部21と、記憶部22と、光波距離計(EDM)として構成される距離測定部23等を具備している。
【0024】
前記水平回転軸受8は前記固定部5に固定される。前記水平回転軸7は鉛直な軸心7aを有し、前記水平回転軸7は前記水平回転軸受8に回転自在に支持される。又、前記托架部6は前記水平回転軸7に支持され、前記托架部6は水平方向に前記水平回転軸7と一体に回転する様になっている。
【0025】
前記水平回転軸受8と前記托架部6との間には前記水平回転モータ9が設けられ、該水平回転モータ9は前記演算制御部21により制御される。該演算制御部21は、前記水平回転モータ9により、前記軸心7aを中心に前記托架部6を回転させる。
【0026】
前記托架部6の前記固定部5に対する相対回転角は、前記水平角エンコーダ11によって検出される。該水平角エンコーダ11からの検出信号は、前記演算制御部21に入力され、該演算制御部21により水平角データが演算される。前記演算制御部21は、前記水平角データに基づき、前記水平回転モータ9に対するフィードバック制御を行う。
【0027】
又、前記托架部6には、水平な軸心12aを有する前記鉛直回転軸12が設けられている。該鉛直回転軸12は、前記鉛直回転軸受13を介して回転自在となっている。尚、前記軸心7aと前記軸心12aの交点が、測距光の射出位置であり、前記スキャナ本体3の座標系の原点(機械点)となっている。
【0028】
前記托架部6には、凹部20が形成されている。前記鉛直回転軸12は、一端部が前記凹部20内に延出している。前記一端部に前記走査鏡16が固着され、該走査鏡16は前記凹部20に収納されている。又、前記鉛直回転軸12の他端部には、前記鉛直角エンコーダ15が設けられている。
【0029】
前記鉛直回転軸12に前記鉛直回転モータ14が設けられ、該鉛直回転モータ14は前記演算制御部21に制御される。該演算制御部21は、前記鉛直回転モータ14により前記鉛直回転軸12を回転させ、前記走査鏡16は前記軸心12aを中心に回転される。
【0030】
前記走査鏡16の回転角は、前記鉛直角エンコーダ15によって検出され、検出信号は前記演算制御部21に入力される。該演算制御部21は、検出信号に基づき前記走査鏡16の鉛直角データを演算し、該鉛直角データに基づき前記鉛直回転モータ14に対するフィードバック制御を行う。
【0031】
前記アンテナ18は、前記托架部6の上面に設けられている。前記アンテナ18は、例えばUWB(Ultra Wide Band)等の無線通信により、後述する固定局との間で電磁波等のパルスの送受信やデータの授受が可能となっている。又、前記アンテナ18は、前記軸心7aと前記軸心12aに対してオフセットされ、前記軸心7aに対する距離と前記軸心12aに対する距離とがそれぞれ既知となっている。即ち、機械点に対する前記アンテナ18のオフセット量は既知となっている。
【0032】
前記移動局19は、前記アンテナ18と接続されている。前記移動局19は、前記アンテナ18を介して固定局(後述)から発せられた電磁パルスを受信し、更に受信したパルスに対応したパルスを前記固定局に発信する機能を有している。又、前記移動局19は、前記固定局にパルスを発信し、該固定局からのパルスを受信し、該固定局迄の距離を測定する機能を有している。更に、前記移動局19は、前記固定局で測定された前記移動局19迄の距離データを受信する機能を有している。
【0033】
前記演算制御部21としては、マイクロプロセッサ汎用CPU、或は本装置に特化したCPUが用いられる。前記演算制御部21で演算された水平角データ、鉛直角データや測距結果、前記移動局19と固定局との間の距離データ、前記固定局の座標、後述する前記移動局19の概略座標及び概略方向等は、前記記憶部22に保存される。水平角データ、鉛直角データや測距結果、前記移動局19と固定局との間の距離データ、前記固定局の座標、後述する前記移動局19の概略座標及び概略方向等が保存された前記記憶部22の一部は、前記托架部6に対して着脱可能であってもよく、或は図示しない通信手段を介して外部記憶装置や外部データ処理装置にデータを送出可能としてもよい。
【0034】
又、前記記憶部22としては、RAM、ROM、フラッシュROM、DRAMの様な半導体装置、HDDの様な磁気装置、CDROMの様な光学装置等の装置が適宜用いられる。
【0035】
前記記憶部22には、測定点の測距、測角を行う為のプログラム、前記水平回転モータ9、前記鉛直回転モータ14を駆動させる為のプログラム、前記固定局に対する前記移動局19の概略座標を演算する為のプログラム、該移動局19の概略方向を演算する為のプログラム、複数の3次元点群データをレジストレーションする為のプログラム等のプログラムが保存されている。前記演算制御部21は、前記記憶部22に保存された各プログラムに基づき、本発明の実施例に係る各種処理を実行する。
【0036】
前記操作パネル17は、例えばタッチパネルであり、測距の指示や測定条件、例えば測定点間隔の変更等を行う操作部と、測距結果等を表示する表示部とを兼用している。
【0037】
前記距離測定部23は、パルス光又はバースト光の測距光を射出可能となっている。前記距離測定部23は、測距光を射出し、測定対象物の測定点からの反射測距光を受光する。測距光の射出タイミングと、反射測距光の受光タイミングは、それぞれ前記演算制御部21に入力される。尚、バースト光については、特許文献2に開示されている。
【0038】
前記レーザスキャナ1により測定を行う場合について説明する。
【0039】
前記距離測定部23から射出された測距光は、前記走査鏡16に入射する。この時、測距光の光軸は前記軸心12aと合致しており、測距光は前記走査鏡16によって直角に偏向される。該走査鏡16が前記軸心12aを中心に回転することで、測距光は前記軸心12aと直交し、且つ軸心7aを含む平面内で回転(走査)される。前記走査鏡16で反射された測距光は、測定対象物の所定の測定点に照射され、測定対象物が走査される。測定点で反射された反射測距光は、前記走査鏡16で直角に反射され、前記距離測定部23に受光される。
【0040】
前記演算制御部21は、測距光の射出タイミングと、反射測距光の受光タイミングとの時間差(即ち、パルス光の往復時間)と光速とに基づき、測距光の1パルス毎に測距を実行する(Time Of Flight)。又、前記演算制御部21は、測距光の射出タイミング、即ちパルス間隔を変更可能となっている。
【0041】
尚、前記距離測定部23に内部参照光光学系を設け、内部参照光の受光タイミングと、反射測距光の受光タイミングとの時間差により測距を行うことで、より高精度な測距が可能となる。
【0042】
又、前記托架部6と前記走査鏡16とがそれぞれ定速で回転し、該走査鏡16の鉛直方向の回転と、前記托架部6の水平方向の回転との共同により、測距光が2次元に走査される。又、パルス光毎の測距により距離データ(斜距離)が得られ、各パルス光毎に前記鉛直角エンコーダ15、前記水平角エンコーダ11により鉛直角、水平角を検出することで、鉛直角データ、水平角データが取得できる。鉛直角データ、水平角データ、距離データとにより、測定対象物の3次元の点群データ(位置情報)が取得できる。
【0043】
測定対象物が複雑な形状の場合、或は測定範囲に死角が存在する場合には、前記レーザスキャナ1の設置位置を変更して複数の3次元点群データを取得する必要がある。更に、取得した複数の3次元点群データを関連付けて結合させる必要もある。前記レーザスキャナ1により得られた複数の3次元点群データを結合(レジストレーション)させる為の方法として、特許文献1に示される様な、ICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを用いたレジストレーションがある。
【0044】
ICPアルゴリズムは、複数の3次元点群データを自動でレジストレーションする為のアルゴリズムである。ICPアルゴリズムを用いることで、建物内部に多数のターゲットシートを貼設することなく複数の3次元点群データのレジストレーションを行うことができる。
【0045】
一方で、ICPアルゴリズムを用いたレジストレーションでは、前記レーザスキャナ1の概略機械点座標と概略方位とを初期値としてICPアルゴリズムに与える必要がある。従って、ICPアルゴリズムを用いる為には、前記レーザスキャナ1の概略機械点座標と概略方位とを予め測定しておく必要がある。
【0046】
以下、
図2を参照し、前記レーザスキャナ1の概略機械点の位置測定(測位)方法について説明する。尚、以下の説明では、設置面は平坦であり、前記レーザスキャナ1の設置位置に拘わらず、機械点の高さは変化しないものとする。
【0047】
本実施例では、第1固定局24、第2固定局25、第3固定局26は、それぞれ前記レーザスキャナ1から離れた既知の位置に設置され、既知の座標を有している。又、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26は、各固定局間の距離も既知となっている。従って、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26の位置は、例えば前記第1固定局24を原点とする2次元の座標系(固定局座標系)で表すことができる。
【0048】
又、本実施例では、超広帯域無線(UWB:Ultra Wide Band)を用いた前記レーザスキャナ1の局所測位(測位)が行われる。UWBを用いた測位では、1つの移動局に対して少なくとも3つの固定局を必要とする。本実施例では、前記移動局19が内蔵された前記レーザスキャナ1に対し、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26が用いられる。
【0049】
UWBを用いた測位では、距離測定を実行する局(例えば前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26)から距離測定対象となる局(例えば前記移動局19)に対してナノ秒オーダーの非常に短いパルスを発信する。又、前記移動局19は、受信したパルスに対応したパルスを前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26に対して発信する。前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26は、それぞれパルスを発信してから受信する迄の時間とパルスの伝搬速度、即ち光速とに基づき、前記移動局19迄の距離を測定する。
【0050】
尚、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26は、例えば時間差を持って前記移動局19にパルスを発信する。該移動局19は、時間差に基づき前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26を区別する。或は、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26は、識別信号と共に前記移動局19にパルスを発信してもよい。該移動局19は、識別信号に基づき前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26を区別する。この場合、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26から発信されるパルスは同時でもよい。
【0051】
尚、前記移動局19は、パルスを受信し、所定の応答時間が経過した後、パルスを発信する様になっている。従って、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26と前記移動局19との間の距離はそれぞれ以下の式で表すことができる。
【0052】
D=C×{(Ttotal-Tresponse)/2}
【0053】
上記式に於いて、Dは固定局と移動局との距離を示している。又、Cは光速を示している。又、Ttotalは固定局がパルスを発信してから受信する迄の時間を示している。更に、Tresponseは移動局がパルスを受信してから発信する迄の応答時間を示している。
【0054】
尚、上記では、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26を距離測定を実行する局とし、前記移動局19を距離測定対象となる局としているが、該移動局19を距離測定を実行する局とし、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26を距離測定対象となる局としてもよい。
【0055】
前記レーザスキャナ1が任意の位置に設置されると、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26から発せられたパルスがそれぞれ前記アンテナ18を介して前記移動局19に受信される。又、該移動局19は、前記アンテナ18を介して前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26にそれぞれ受信したパルスに対応するパルスを発信する。
【0056】
前記第1固定局24は、前記移動局19に対するパルスの往復時間と光速とに基づき、該移動局19と前記第1固定局24との間の距離d1を演算する。前記第2固定局25は、前記移動局19に対するパルスの往復時間と光速とに基づき、該移動局19と前記第2固定局25との間の距離d2を演算する。前記第3固定局26は、前記移動局19に対するパルスの往復時間と光速とに基づき、該移動局19と前記第3固定局26との間の距離d3を演算する。
【0057】
前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26で演算された距離データは、前記アンテナ18を介して前記移動局19に受信され、前記演算制御部21に入力される。尚、ここで演算されたd1~d3は、それぞれ10cm程度の誤差を含んでいる。
【0058】
この時、前記アンテナ18は、前記第1固定局24を中心とした半径d1の円の円周上に位置する。又、前記アンテナ18は、前記第2固定局25を中心とした半径d2の円の円周上に位置する。更に、前記アンテナ18は、前記第3固定局26を中心とした半径d3の円の円周上に位置する。
【0059】
従って、前記アンテナ18は、前記第1固定局24を中心とした半径d1の円と、前記第2固定局25を中心とした半径d2の円と、前記第3固定局26を中心とした半径d3の円の交点に位置すると見なすことができる。
【0060】
前記演算制御部21は、前記第1固定局24の座標と距離d1とに基づき円Aを演算し、前記第2固定局25の座標と距離d2とに基づき円Bを演算し、前記第3固定局26の座標と距離d3とに基づき円Cを演算する。従って、前記演算制御部21は、円Aと円Bと円Cとに基づき、例えば前記第1固定局24を原点とする固定局座標系に於ける前記アンテナ18の座標が演算できる。
【0061】
尚、上記の処理により演算されるのは前記アンテナ18の座標であるが、以下の説明では該アンテナ18の座標は前記移動局19の座標であるものとしている。
【0062】
図2は、該第1固定局24を原点とする固定局座標系に於いて、前記第1固定局24がX,Y=0m,0mに配置され、前記第2固定局25がX,Y=10m,0mに配置され、前記第3固定局26がX,Y=0m,10mに配置された場合を示している。
【0063】
又、測定の結果、前記移動局19と各固定局24~26との間の距離(d1,d2,d3)がそれぞれ7.071mであった場合、円Aと円Bと円Cとの交点の座標は、X,Y=5m,5mとなる。
【0064】
従って、
図2の例では、前記演算制御部21は、演算された前記移動局19の座標と、機械点に対する前記アンテナ18のオフセット量と、各固定局24~26の既知の座標とに基づき前記レーザスキャナ1の概略機械点の位置を演算することができる。
【0065】
然し乍ら、UWBを用いた測位では、測定結果に1m程度の誤差を生じる場合がある。本実施例では、前記アンテナ18が前記軸心7aに対して既知の位置にオフセットされていることを利用し、概略機械点の測定精度の向上を図っている。
【0066】
具体的には、前記托架部6を前記軸心7aを中心に360°水平回転させつつ、所定角度毎に前記移動局19の測位を行う。ここで得られる前記移動局19の測位結果の軌跡は、前記軸心7aを中心とした概略円状となる。
【0067】
従って、各測位結果に基づき、前記演算制御部21はX座標、Y座標についてそれぞれ平均値を演算することで、前記托架部6の水平回転中心を求めることができる。即ち、X座標の平均値が前記軸心7aのX座標、Y座標の平均値が前記軸心7aのY座標となり、UWBによる測位よりも精度を向上させた概略機械点座標の測定を行うことができる。
【0068】
図3は、前記托架部6を360°水平回転させつつ、3°回転させる毎に、前記移動局19の測位を行った場合の、該移動局19の座標の軌跡27を示している。ここで得られた各測位結果は、前記固定部5に対する前記托架部6の相対水平角(前記水平角エンコーダ11の検出結果)と関連付けられて前記記憶部22に保存される。
【0069】
又、前記軌跡27の各測位結果について、X座標とX座標の平均値との差分を演算し、Y座標とY座標の平均値との差分を演算する。これにより、
図4に示される様な、固定局座標系の原点(前記第1固定局24の位置)を中心とする前記移動局19が回転した場合の座標の軌跡28を得ることができる。
【0070】
尚、本実施例で測位された概略機械点座標は、30cm程度の誤差を含む場合があるが、1m以内であれば問題なくICPアルゴリズムの初期値として用いることができる。
【0071】
次に、前記レーザスキャナ1の概略方位の演算方法について説明する。
【0072】
前記レーザスキャナ1の方位を求める際には、例えば前記軸心7aと前記アンテナ18とを結んだ直線が、X軸と平行且つ前記アンテナ18が正側に位置する状態を、水平0°方向の概略方位角として設定する。
【0073】
或は、固定局座標系の原点を中心とする前記軌跡28を演算した場合には、前記アンテナ18が正の前記X軸上に位置する状態を、水平0°方向の概略方位角として設定する。
【0074】
前記軸心7aと前記アンテナ18とを結んだ直線と、X軸又はX軸と平行な直線(基準軸)との成す角度(概略回転角)は、機械点のX-Y座標と前記移動局19の測位結果(X-Y座標)とに基づき、アークタンジェントにより演算することができる。演算された概略回転角は、前記移動局19のX-Y座標と関連付けられて前記記憶部22に保存される。
【0075】
ここで、前記水平角エンコーダ11により検出された相対水平角は、前記移動局19の各測位結果(X-Y座標)と関連付けられている。従って、前記移動局19のX-Y座標に基づき、概略回転角と、相対水平角とを対応付けることができる。
【0076】
図5は、概略回転角を縦軸、相対水平角を横軸とし、概略回転角と相対水平角とを対応付けたグラフを示している。
図5に示される様に、相対水平角が約300°の時に、前記概略回転角が0°となっている。即ち、相対水平角が約300°である方向を、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26で形成された座標系(固定局座標系)に対する前記レーザスキャナ1の水平0°方向の概略方位角として演算することができる。
【0077】
尚、本実施例で演算された概略方位角は、例えば±20°程度の誤差を含む場合があるが、±30°以内であれば問題なくICPアルゴリズムの初期値として用いることができる。
【0078】
前記レーザスキャナ1を他の位置に移動させた場合も、上記と同様の処理により前記レーザスキャナ1の概略機械点座標と概略方位角を演算することができる。
【0079】
ICPアルゴリズムにより複数の3次元点群データをレジストレーションさせる際には、各地点で演算した前記レーザスキャナ1の概略機械点座標と概略方位角とを初期値としてICPアルゴリズムに入力する。これにより、前記演算制御部21がICPアルゴリズムを用いて自動で、且つ確実に複数の3次元点群データのレジストレーションを行うことができる。
【0080】
上述の様に、第1の実施例では、前記アンテナ18を機械点に対して既知の値でオフセットして設けている。又、前記托架部6を360°水平回転させつつ、所定角度毎に前記移動局19を測位し、各測位結果のX座標とY座標をそれぞれ平均した平均値を概略機械点座標として演算している。
【0081】
従って、前記アンテナ18を機械点と同心に設け、UWBで概略機械点座標を自動で測位した場合よりも誤差を低減することができ、概略機械点座標の測位精度を向上させることができる。
【0082】
又、第1の実施例では、測位した概略機械点座標に基づき、概略回転角と相対水平角との対応付けを行っている。従って、別途方位計等を設けることなく、固定局座標系に対する水平0°方向の概略方位角を自動で演算することができる。
【0083】
又、第1の実施例では、複数の3次元点群データを取得した各地点でそれぞれ概略機械点座標と概略方位角を演算し、演算した概略機械点座標と概略方位角とを初期値として、ICPアルゴリズムにより複数の3次元点群データのレジストレーションを自動で行っている。
【0084】
従って、レジストレーションを行なう際に、作業者が手動で3次元点群データの方向等を合わせる必要がなく、又建物内部にターゲットシートを貼設する必要がないので、作業時間の短縮、作業効率の向上を図ることができる。
【0085】
更に、第1の実施例では、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26と前記移動局19との距離に基づき、概略機械点座標を演算し、概略機械点座標に基づき概略方位角を演算し、概略機械点座標と概略方位角とに基づきレジストレーションを行っている。
【0086】
従って、トンネル内等、GNSS装置による測位が行えない様な場所であっても、複数の3次元点群データのレジストレーションを行うことができる。
【0087】
尚、第1の実施例では、全周分の各測位結果のX座標とY座標をそれぞれ平均した平均値を概略機械点座標としている。一方で、前記軸心7aと前記アンテナ18との水平距離は既知であるので、該水平距離を半径とする円を全周分の各測位結果の軌跡にフィッティングさせ、フィッティングさせた円の中心を概略機械点座標として演算してもよい。
【0088】
又、第1の実施例では、3つの固定局24~26を用いて前記移動局19の測位を行っているが、固定局は4つ以上であってもよい。例えば、4つの固定局を用いる場合、各固定局と前記移動局19との距離をそれぞれ求め、各固定局を中心とし前記移動局19との距離を半径とする4つの円を演算し、4つの円の交点を前記移動局19の設置位置として演算する。固定局が5つ以上の場合も同様である。
【0089】
次に、
図6、
図7に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、
図6、
図7中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。又、第2の実施例に於いても、設置面は平坦であり、レーザスキャナ1の設置位置に拘わらず、機械点の高さは変化しないものとする。
【0090】
第1の実施例では、第1固定局24、第2固定局25、第3固定局26がそれぞれ既知の点に設置されていたが、第2の実施例では、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26がそれぞれ未知の点に設置されている。
【0091】
前記第1固定局24は前記第2固定局25及び前記第3固定局26との距離を求め、前記第2固定局25は前記第1固定局24及び前記第3固定局26との距離を求め、前記第3固定局26は前記第1固定局24及び前記第2固定局25との距離を求める。
【0092】
例えば、
図6は、前記第1固定局24と前記第2固定局25との距離が10mであり、前記第1固定局24と前記第3固定局26との距離が10mであり、前記第2固定局25と前記第3固定局26との距離が14.14mであった場合を示している。
【0093】
更に、
図6は、各固定局24~26で形成される座標系(固定局座標系)に於いて、前記第1固定局24が原点(0m,0m)に位置し、前記第3固定局26が正側のY軸上(0m,10m)に位置する様固定局座標系を設定した場合を示している。
【0094】
上記の設定の場合、前記第2固定局25は前記第1固定局24を中心とした半径10mの円Dと、前記第3固定局26を中心とした半径14.14mの円Eとが交差する2点(候補位置25a,25b)のいずれかに位置する。即ち、前記第2固定局25は、Y軸(前記第1固定局24と前記第3固定局26を結ぶ直線)に関して対称なX軸上の2点のいずれかに位置する。
【0095】
然し乍ら、演算制御部21は、正側のX軸上と負側のX軸上の2つの第2固定局25の前記候補位置25a,25bのうち、どちらが正しい配置なのかどうかを判断することができない。
【0096】
図7に示される様に、この状態で任意の位置に移動局19を設置した場合、該移動局19の位置の候補として、正側と負側にY軸に関して対称な2点(候補位置19a,19b)が存在することとなる。前記移動局19についても、前記演算制御部21は、正側に位置する前記移動局19(前記候補位置19a)と負側に位置する前記移動局19(前記候補位置19b)のうち、どちらが正しい配置なのかどうかを判断することができない。
【0097】
第2の実施例では、前記移動局19と前記第2固定局25の位置が不明な状態で、托架部6(
図1参照)を軸心7a(
図1参照)を中心に360°水平回転させつつ、所定角度毎に前記移動局19の測位を行う。
【0098】
前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26により得られる前記移動局19の軌跡27は、前記第2固定局25が正側に位置するか負側に位置するかで回転方向が逆となる(
図7中27a,27b)。例えば、前記候補位置19aに位置する前記移動局19では軌跡27aが時計回りで得られ、前記候補位置19bに位置する前記移動局19では軌跡27bが反時計回りで得られる。
【0099】
前記演算制御部21は、前記托架部6の回転方向と、前記軌跡27a,27bの回転方向とを比較し、前記托架部6の回転方向と合致する回転方向の軌跡を正しい前記軌跡27として判断することができる。例えば、前記演算制御部21は、前記托架部6が時計回りで回転していた場合には、前記軌跡27aが正しい軌跡であると判断することができる。
【0100】
前記軌跡27aが正しい軌跡と判断されることで、前記演算制御部21は、
図7中前記候補位置19aと前記候補位置25aとが前記移動局19と前記第2固定局25の正しい配置であると判断することができる。従って、前記第2固定局25の配置が特定され、固定局座標系での前記移動局19の位置(座標)を特定することができる。
【0101】
前記移動局19、前記第2固定局25の位置を特定した後は、第1の実施例と同様の処理により、前記レーザスキャナ1の概略機械点座標と概略方位角を演算する。即ち、ICPアルゴリズム初期値として概略機械点座標と概略方位角を入力し、複数の3次元点群データのレジストレーションを自動で実行させる。
【0102】
第2の実施例では、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26を既知点に設けることなく、前記レーザスキャナ1の概略機械点座標、概略方位角を演算することができる。
【0103】
従って、前記移動局19、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26の設置位置は全て任意でよいので、事前に設置点の座標を取得する必要がなく、更に前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26と設置点との位置合せも不要となり、作業性を更に向上させることができる。
【0104】
尚、第2の実施例では、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26を全て座標が不明な未知点に設置している。然し乍ら、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26の一部を既知点に設置し、残部の固定局の位置を第2の実施例の方法により特定してもよい。
【0105】
又、第2の実施例では、3つの固定局24~26を用いて前記移動局19の測位を行っているが、固定局は4つ以上であってもよい。固定局を4つ設ける場合も、2つの固定局の固定局座標系での位置を設定する。次に、位置を設定した固定局を中心とし、他の2つの固定局迄の距離を半径とする2つの円を、位置を設定した固定局毎に演算する。即ち、位置を設定した固定局を中心とした円を2つずつ演算する。
【0106】
上記の場合、同一の固定局迄の距離を半径とした円同士の交点が2つずつ存在するので、他の2つの固定局の候補位置は4点となる。但し、固定局座標系での他の2つの固定局間の距離と、測定した他の2つの固定局間の距離とが一致する組合わせは2通りしかない。従って、候補位置の組合わせは、3つの固定局の場合と同様に2通りとなる。固定局が5つ以上の場合も同様である。
【0107】
次に、
図8に於いて、本発明の第3の実施例について説明する。尚、
図8中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。又、第3の実施例に於いても、設置面は平坦であり、レーザスキャナ1の設置位置に拘わらず、機械点の高さは変化しないものとする。
【0108】
3次元点群データ同士のレジストレーションでは、前記レーザスキャナ1の設置位置を移動させつつ、複数地点で3次元点群データを取得する必要がある。UWBを用いた測位に於いて、高精度に移動局19の測位を行う為には、3つの固定局24,25,26で形成される三角形内に前記移動局19が位置するのが望ましい。
【0109】
然し乍ら、前記レーザスキャナ1を移動させた際には、前記三角形の外に前記移動局19が配置される場合がある。この場合、該移動局19の測位精度を維持する為、前記三角形内に前記移動局19が位置する様、第1固定局24、第2固定局25、第3固定局26を配置し直す必要がある。
【0110】
図8は、
図2に示される第1の実施例の配置から、前記第1固定局24と前記移動局19を移動させた状態を示している。即ち、前記第1固定局24を第1の位置24αから第2の位置24βへと移動させ、前記移動局19を第1の位置19αから第2の位置19βへと移動させた状態を示している。
【0111】
前記第1固定局24を既知の点(前記第2の位置24β)に移動させた場合には、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26で形成される三角形内の任意の位置(前記第2の位置19β)に、前記移動局19を移動させる。該移動局19については、第1の実施例と同様の処理により、概略機械点座標と概略方位角を演算できる。
【0112】
又、前記第1固定局24を未知の点に移動させた場合には、第2の実施例と同様の処理により、前記第2の位置24βに位置する前記第1固定局24の位置を特定し、前記第2の位置19βに位置する前記移動局19の概略機械点座標と概略方位角を演算する。
【0113】
ここで演算される概略機械点座標と概略方位角は、共に固定局座標系での概略機械点座標と概略方位角となる。従って、前記第1の位置19αと前記第2の位置19βで得られる前記移動局19の概略機械点座標と概略方位角は、同一座標系での値となるので、確実に自動で3次元点群データ同士のレジストレーションを行うことができる。
【0114】
次に、
図9に於いて、本発明の第4の実施例について説明する。
【0115】
図9は、固定局装置31を示している。尚、第1固定局24が用いられる固定局装置、第2固定局25が用いられる固定局装置、第3固定局26が用いられる固定局装置はそれぞれ同一の構成であるので、以下では前記第1固定局24が用いられる前記固定局装置31について説明する。
【0116】
該固定局装置31は、アンテナ32と、該アンテナ32に接続された前記第1固定局24と、前記アンテナ32に対して既知の位置に設けられたターゲット33と、マグネット等金属製の構造物に対して着脱可能な構成を有する固定部34とが一体化された構造となっている。
【0117】
第4の実施例では、前記固定局装置31が前記ターゲット33を有することで、前記レーザスキャナ1、或はトータルステーション等の他の測量装置による前記固定局装置31の測定が可能となる。従って、測量装置により前記第1固定局24に座標を与えることが可能となり、該第1固定局24の座標取得が容易となるので、作業効率を向上させることができる。
【0118】
尚、前記ターゲット33としては、再帰反射性を有する物体、例えば360°プリズム、1素子プリズム、反射シート、チェッカーターゲット、スフィア等が適用可能である。
【0119】
又、前記固定部34を電磁石とし、スイッチのON/OFFの切替えにより構造物に対して着脱させる構成とするのが望ましい。又、前記固定部34は、基盤部等測量装置に対して着脱可能な構成としてもよい。
【0120】
又、前記ターゲット33は、前記移動局19が設けられた前記レーザスキャナ1により測定してもよいし、トータルステーションやレーザスキャナ等の測量装置を別途設け、該測量装置により前記ターゲット33を測定してもよい。
【0121】
更に、該ターゲット33を測定することで、前記第1固定局24の3次元座標、即ち高さも測定できるので、測位が行われる設置面が平坦ではない場合にも適用可能となる。
【0122】
次に、
図10に於いて、本発明の第5の実施例について説明する。尚、
図10中、
図1中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0123】
第5の実施例では、スキャナ本体3に気圧センサ35を別途設けている。該気圧センサ35は、10cm単位で高さを測定可能な構成となっている。他の構成については第1の実施例のレーザスキャナ1と同様である。又、図示はしないが、第1固定局24、第2固定局25、第3固定局26の少なくとも1つに気圧センサが設けられているものとする。
【0124】
第1の実施例~第3の実施例では、前記レーザスキャナ1の設置面が平坦であり、機械点の高さが変化しない場合の測位について説明している。例えば、建物の同一フロア内で取得された3次元点群データのレジストレーション行う場合は、基本的に設置面は平坦であるので、第1の実施例~第3の実施例をそのまま適用可能である。
【0125】
一方で、階段部分の様な、前記移動局19と前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26を全て平坦な設置面に設置するのが困難な場合もある。この場合、平坦面に設置した前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26に加え、異なる高さの設置面に設置された固定局を別途設けることで、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26の高さ(Z座標)を求めることが可能である。
【0126】
然し乍ら、高さを高精度に求める為には、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26と別途設ける固定局との間に遮蔽物がないことが条件となる。更に、高さを高精度に求める為には、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26と別途設ける固定局の高さの差を大きくする必要があり、実施が困難である。
【0127】
第5の実施例では、演算制御部21は、前記気圧センサ35で検出された気圧と、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26のうちの少なくとも1つに設けられた気圧センサで検出された気圧との差に基づき、固定局に対する前記移動局19の相対的な高さを演算することができる。即ち、固定局に対する前記移動局19の相対Z座標を演算し、測位の際にZ座標として用いることができる。
【0128】
従って、設置面が平坦ではなく、前記移動局19と前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26とが同一平面上に設置されていない場合であっても、前記移動局の測位が可能となる。
【0129】
尚、気圧センサは、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26にそれぞれ設けてもよい。気圧センサがそれぞれ設けられることで、前記第1固定局24、前記第2固定局25、前記第3固定局26にそれぞれZ座標を与えることができ、前記移動局の測位精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0130】
1 レーザスキャナ
3 スキャナ本体
5 固定部
6 托架部
7 水平回転軸
11 水平角エンコーダ
12 鉛直回転軸
15 鉛直角エンコーダ
16 走査鏡
18 アンテナ
19 移動局
21 演算制御部
22 記憶部
23 距離測定部
24 第1固定局
25 第2固定局
26 第3固定局
31 固定局装置
33 ターゲット
35 気圧センサ