(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20220809BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20220809BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20220809BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20220809BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W50/14
B60W40/06
B60W40/04
G08G1/16 E
(21)【出願番号】P 2017094049
(22)【出願日】2017-05-10
【審査請求日】2020-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】熊野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】河野 泰樹
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147525(JP,A)
【文献】特開2014-211096(JP,A)
【文献】特開2016-095697(JP,A)
【文献】特開2007-108043(JP,A)
【文献】特開平7-035560(JP,A)
【文献】特開2008-123443(JP,A)
【文献】特開2015-087893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方を先行する他の車両である先行車両との間で確保すべき車間距離の目標値である目標車間距離を設定するように構成された目標距離設定部(24)と、
前記目標距離設定部により設定された目標車間距離に応じて、前記自車両の走行に係る運転操作の少なくとも一部を自動的に実行し、前記自車両と前記先行車両との車間距離を調節するように構成された走行制御部(31)と、
道路地図を表す地図情報を取得するように構成された地図情報取得部(20)と、
前記地図情報で表される道路上における前記自車両の現在位置を取得するように構成された位置取得部(20)と、
前記自車両に備えられたセンサによる検出結果に基づいて、前記自車両の進行方向前方の道路の構造に関する状況を認識するように構成された状況認識部(10)と、
前記状況認識部により認識された前記道路の構造に基づいて、前記道路において他所からの車両が出入りする構造が設けられた部位である交差部の入口地点及び出口地点の位置を特定するように構成された入口・出口特定部(21)と、
前記状況認識部により認識された前記道路の構造に基づいて、前記位置取得部により取得された道路上における前記自車両の現在位置を補正するように構成された補正部(22)と、
前記地図情報と、前記補正部により補正された道路上における前記自車両の現在位置と、前記入口・出口特定部により特定された前記交差部の入口地点及び出口地点の位置とに基づいて、前記自車両から前記交差部までの距離と、前記交差部の入口地点から出口地点までの距離を含む交差部情報を導出するように構成された交差部情報導出部(23)とを備え、
前記交差部情報に含まれる前記交差部の入口地点から出口地点までの距離は、前記入口・出口特定部により特定された前記交差部の入口地点から出口地点までの距離であり、
前記目標距離設定部は、前記交差部情報導出部により導出された交差部情報に基づいて、前記先行車両から前記目標車間距離を空けた位置が前記交差部の入口地点から出口地点までの区間に含まれないような前記目標車間距離を設定するように構成されて
おり、
前記状況認識部は、前記自車両の進行方向前方の道路の境界を構成する構造物を認識するように構成されており、
前記入口・出口特定部は、前記状況認識部により認識された構造物の分布に基づいて、前記交差部の入口地点及び出口地点の位置を特定するように構成されており、
前記交差部は、前記構造物が途切れる区間であって、道路以外の敷地から道路へ車両が出入りするための乗り入れが当該道路に接続されている部分である、
運転支援装置。
【請求項2】
前記状況認識部は、前記自車両の進行方向前方の道路の路面に描かれている標示物を認識するように構成されており、
前記入口・出口特定部は、前記状況認識部により認識された標示物の分布に基づいて、前記交差部の入口地点及び出口地点の位置を特定するように構成されている、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記状況認識部は、前記自車両の進行方向前方の道路の路面に描かれている標示物を認識するように構成されており、
前記補正部は、前記状況認識部により認識された標示物の位置に基づいて、前記位置取得部により取得された道路上における前記自車両の現在位置を補正するように構成されている、
請求項1
又は請求項
2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記状況認識部は、前記自車両の進行方向前方の道路に付随する構造物を認識するように構成されており、
前記補正部は、前記状況認識部により認識された構造物の位置に基づいて、前記位置取得部により取得された道路上における前記自車両の現在位置を補正するように構成されている、
請求項1ないし請求項
3の何れか1項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記状況認識部は、更に、前記自車両の進路に対して横方向から進入する移動体を認識するように構成されており、
前記交差部において前記状況認識部によって前記自車両の進行方向に対して横方向から進入する移動体が認識された場合、前記自車両に備えられた情報出力手段を用いて前記自車両の運転者に対する警告を報知するように構成された報知制御部(32)を更に備える、
請求項1ないし請求項
4の何れか1項に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、先行する車両との距離を制御する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先行車両との車間距離を制御する運転支援装置として、例えば、特許文献1に記載の運転支援装置がある。特許文献1には、自車両から交差点までの距離が設定距離以下のとき、交差点の入口地点から出口地点までの距離よりも長い距離を目標車間距離として設定することで、自車両が交差点内に停止することを回避する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、交差点の入口地点や出口地点等の位置を地図情報に依存して特定している。また、自車両の道路上における現在位置は、GPS等による測位結果と地図情報とをマッチングさせることにより特定している。前記技術は、地図情報に依存しているため、地図情報及び現在位置の測位結果の誤差が大きくなると、自車両の道路上における位置や目標車間距離を適切に算出できなくなり、交差点で不適切な位置に停止してしまうおそれがある。本開示は、上記問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態に係る運転支援装置は、目標距離設定部(24)と、走行制御部(31)と、地図情報取得部(20)と、位置取得部(20)と、状況認識部(10)と、入口・出口特定部(21)と、補正部(22)と、交差部情報導出部(23)とを備える。なお、この欄及び特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0006】
目標距離設定部は、自車両の前方を先行する他の車両である先行車両との間で確保すべき車間距離の目標値である目標車間距離を設定するように構成されている。なお、ここでいう自車両とは、当該運転支援装置が搭載されている車両である。走行制御部は、目標距離設定部により設定された目標車間距離に応じて、自車両の走行に係る運転操作の少なくとも一部を自動的に実行し、自車両と先行車両との車間距離を調節するように構成されている。地図情報取得部は、道路地図を表す地図情報を取得するように構成されている。
【0007】
位置取得部は、地図情報で表される道路上における自車両の現在位置を取得するように構成されている。状況認識部は、自車両に備えられたセンサによる検出結果に基づいて、自車両の進行方向前方の道路の構造に関する状況を認識するように構成されている。入口・出口特定部は、状況認識部により認識された道路の構造に基づいて、当該道路において他所からの車両が出入りする構造が設けられた部位である交差部の入口地点及び出口地点の位置を特定するように構成されている。なお、本開示における「交差部」とは、例えば、道路と道路とが交差する交差点や、道路以外の敷地から道路へ車両が出入りするための乗り入れが道路に接続されている部分を含む概念である。補正部は、状況認識部により認識された道路の構造に基づいて、位置取得部により取得された道路上における自車両の現在位置を補正するように構成されている。
【0008】
交差部情報導出部は、地図情報と、補正部により補正された道路上における自車両の現在位置と、入口・出口特定部により特定された交差部の入口地点及び出口地点の位置とに基づいて、交差部情報を導出するように構成されている。この交差部情報導出部もより導出される交差部情報には、自車両から交差部までの距離と、交差部の入口地点から出口地点までの距離とが含まれる。そして、目標距離設定部は、交差部情報導出部により導出された交差部情報に基づいて、先行車両から目標車間距離を空けた位置が交差部の入口地点から出口地点までの区間に含まれないような目標車間距離を設定するように構成されている。
【0009】
上述のような構成によれば、地図情報のみに依存して自車両の現在位置や交差点等の構造を特定する従来の構成と比較して、現在位置や交差点等の構造を特定する際の精度やロバスト性を向上できる。したがって、上述の構成は、先行車両との車間距離を調節する運転支援において、自車両が交差点や乗り入れ部分の途中で停止することを抑制するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】交差部における車間制御処理の手順を表すフローチャート。
【
図3】道路上の標示による交差部の判定方法の一例を表す図。
【
図4】道路脇の構造物による交差部の判定方法の一例を表す図。
【
図5】道路脇の構造物による交差部の判定方法の一例を表す図。
【
図6】道路脇の構造物による交差部の判定方法の一例を表す図。
【
図7】交差部における目標車間距離の一例を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本開示は下記の実施形態に限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
[車載システムの構成の説明]
車載システムの構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1に例示されるとおり、車載システムは車両Aに搭載されている。車両Aは、本開示における自車両に相当する。この車載システムは、運転支援装置1と、この運転支援装置1に接続されるカメラ2、レーダ3、ソナー4、経路案内装置5、車両情報入力部6、アクチュエータ7、及び情報出力装置8等の各部構成を備える。
【0012】
運転支援装置1は、図示しないCPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、入出力インタフェース等を中心に構成された情報処理装置である。運転支援装置1は、例えば、コンピュータシステムとしての機能が集約されたマイクロコントローラ等により具現化される。運転支援装置1の機能は、CPUがROMや、半導体メモリ等の非遷移的実体的記憶媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。なお、運転支援装置1を構成するマイクロコントローラの数は1つでも複数でもよい。
【0013】
カメラ2、レーダ3、ソナー4は、運転支援装置1が運転支援を行うために必要な周辺環境の状況を観測するためのセンサである。カメラ2は、車両Aの周囲(例えば、前方や後方)の領域を撮像する撮像装置であり、例えば、ステレオカメラや単眼カメラ等により具現化される。運転支援装置1は、カメラ2により撮像された画像に対して周知の画像認識処理をすることにより、車両Aの周辺に存在する物体(例えば、他の車両、道路に付随する構造物、道路上に描かれた標示物)までの距離や方向、分布を表す情報を取得する。
【0014】
レーダ3は、ミリ波帯の検知波やレーザ光を車両Aの周囲(例えば、前方や後方)に放射し、その反射波を受信することによって物体を検出する対物センサである。ソナー4は、車両Aの周囲(例えば、前方や後方)に超音波を放射し、その反射波を受信することによって物体を検出する対物センサである。運転支援装置1は、レーダ3やソナー4によって車両Aの周囲を走査することにより、車両Aの周辺に存在する物体(例えば、他の車両、道路に付随する構造物)までの距離や方向、分布を表す情報を取得する。
【0015】
経路案内装置5は、図示しないGPS受信機等を用いて検出された現在位置と所与の道路地図データとに基づいて目的地までの経路案内を行う、周知のナビゲーションシステムの中核をなす電子制御装置である。経路案内装置5が経路案内に利用する道路地図データには、道路に対応するリンクや交差点等の分岐に対応するノードに関する情報が含まれる。また、交通標識や信号等といった道路に付随する立体物ランドマークに関する情報が含まれる。本実施形態では、経路案内装置5から、道路地図を表す地図情報や、当該道路地図上における車両Aの現在位置を表す情報、道路に付随する立体物ランドマーク等に関する情報を取得する用途を想定している。
【0016】
車両情報入力部6は、車両Aの走行状態を表す各種情報を運転支援装置1に入力する。本実施形態では、車両Aの走行状態を表す情報として、車速や加速度等の挙動を計測するセンサによる計測値を想定している。
【0017】
運転支援装置1は、車両に搭載された各種機器から取得した情報に基づき、加速・操舵・制動等といった運転操作を運転者に代わって行い、車両Aの走行状態を自動的に制御する自動運転の機能を実現する。具体的には、運転支援装置1は、車両Aの進行方向前方を走行する直近の先行車両との間で確保すべき車間距離の目標値である目標車間距離を設定し、その目標車間距離に従って車両Aの走行状態を制御する。
【0018】
アクチュエータ7は、車両Aのアクセルや変速機を作動させる駆動系のアクチュエータ、ブレーキを作動させる制動系のアクチュエータ、及び操舵装置を作動させる操舵系のアクチュエータを含む装置群である。アクチュエータ7は、運転支援装置1からの指令に応じて、車両Aの加減速、制動、操舵等の運転操作を実行する。
【0019】
情報出力装置8は、運転者に対して情報を報知するための出力装置である。この情報出力装置8は、例えば、車両Aの運転者に対して画像情報を表示するための表示装置や、運転者に対して音声により情報を提示する音声出力装置によって具現化される。本実施形態では、情報出力装置8によって運転者に対する警告を報知する用途を想定している。
【0020】
運転支援装置1は、機能の構成要素として、状況認識部10と、演算部20と、制御部30とを備える。なお、運転支援装置1の機能を構成するこれらの要素を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の要素を論理回路やアナログ回路等を組合せたハードウェアを用いて実現してもよい。
【0021】
状況認識部10は、カメラ2やレーダ3、ソナー4等により観測された情報に基づき、車両A周辺に関する各種状況を認識するように構成されている。この状況認識部10は、走行区画認識部11と、周辺環境認識部12と、車両認識部13とを含む。
【0022】
走行区画認識部11は、カメラ2により撮像された画像から道路の路面に描かれた区画線や停止線等の標示物を検出し、それらの標示物の分布状況や走行区画の構造を認識するように構成されている。周辺環境認識部12は、カメラ2により撮像された画像や、レーダ3及びソナー4による立体物の検出結果に基づき、道路の境界を構成する立体物や道路に付随する立体物等の分布状況を認識するように構成されている。車両認識部13は、カメラ2により撮像された画像や、レーダ3及びソナー4による立体物の検出結果に基づき、車両Aの周辺に存在する車両等の移動体を認識するように構成されている。
【0023】
演算部20は、状況認識部10において認識された状況に基づいて各種演算処理を行い、先行車両との目標車間距離を導出するように構成されている。この演算部20は、入口・出口特定部21と、補正部22と、交差部情報導出部23と、目標距離設定部24とを含む。
【0024】
入口・出口特定部21は、状況認識部10において認識された標示物や道路の境界を構成する構造物の分布に基づいて、交差部の入口地点及び出口地点の位置を特定するように構成されている。補正部22は、状況認識部10において認識された標示物や道路に付随する構造物の分布に基づいて、道路地図上に対応付けられた車両Aの現在位置を補正するように構成されている。
【0025】
交差部情報導出部23は、地図情報や、入口・出口特定部21及び補正部22による演算結果に基づいて、交差部到達距離と交差部長とを含む交差部情報を導出するように構成されている。ここでいう交差部到達距離とは、現在位置から交差点や乗り入れ等の交差部までの距離である。また、交差部長とは、交差部の入口地点から出口地点までの距離である。
【0026】
目標距離設定部24は、車両Aの走行状態や交差部情報導出部23による演算結果に基づいて、車両Aの前方を先行する車両である先行車両との間で確保すべき車間距離の目標値である目標車間距離を設定するように構成されている。具体的には、目標距離設定部24は、車両Aの車速に応じた定められた範囲の目標車間距離を設定する。例えば、車両Aの車速が大きいほど、目標距離設定部24は目標車間距離を大きく設定する。一方、車両Aの前方に交差点や乗り入れ等の交差部が検出されている特定の制御条件下では、目標距離設定部24は、先行車両から目標車間距離を空けた位置が交差部の入口地点から出口地点までの区間に含まれないような目標車間距離を設定する。
【0027】
制御部30は、演算部20による演算結果に基づいて、車両Aに備えられた機器を制御するように構成されている。この制御部30は、走行制御部31と、報知制御部32とを含む。走行制御部31は、設定された目標車間距離に従って車両Aを走行させるために必要な加速・操舵・制動等の動作を決定する。そして、走行制御部31は、決定された動作に従ってアクセルや、操舵装置、ブレーキ等のアクチュエータを作動させ、車両Aの走行状態を制御する。報知制御部32は、状況認識部10における認識結果や演算部20における演算結果に基づき、運転者に提示すべき画像情報や音声情報を情報出力装置8に出力し、それらの情報を運転者に報知するように構成されている。
【0028】
[車間制御処理の説明]
運転支援装置1が実行する、交差部における車間制御処理の手順について、
図2のフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、交差点や乗り入れ等の交差部が検出されている条件下において、先行車両との車間距離を制御するための処理である。
【0029】
S100では、運転支援装置1は、カメラ2や、レーダ3、ソナー4、経路案内装置5、車両情報入力部6等から、各種情報を取得する。S102では、状況認識部10の各部が、S100において取得された情報から車両A周辺に関する各種状況を認識する。具体的には、走行区画認識部11が、道路の路面に描かれた標示物の分布状況や走行区画の構造を認識する。走行区画認識部11が認識する標示物には、例えば、区画線や停止線、横断歩道等が含まれる。
【0030】
また、周辺環境認識部12が、道路の境界を構成する立体物や、道路に付随する立体物ランドマークの分布状況を認識する。周辺環境認識部12が認識する道路の境界を構成する立体物には、例えば、縁石、エプロン、ガードレール、植栽、電柱等が含まれる。また、周辺環境認識部12が認識する立体物ランドマークには、例えば、道路標識や信号機等が含まれる。
【0031】
また、車両認識部13は、車両Aの周辺における車両等の移動体の有無や、それらの移動体の位置、速度等を認識する。車両認識部13が認識する車両には、例えば、車両Aの前方直近を先行する先行車両や、車両Aが通行している道路に対して他所から進入しようとする横向きの車両等が含まれる。
【0032】
S104では、入口・出口特定部21が、車両Aの前方に存在する交差部について、入口地点及び出口地点の位置を特定する。例えば、
図3に例示されるように、車道の外側に沿って描かれている車道外側線40が検出された場合、この車道外側線40が途切れる区間が交差部と認識される。具体的には、入口・出口特定部21は、車道外側線40の端部40aや変曲点40bを検出し、端部40aから変曲点40bまでの区間を交差部と特定する。そして、入口・出口特定部21は、車両Aから近い方の端部40aまでの距離を入口地点の位置として特定する。また、入口・出口特定部21は、車両Aから遠い方の変曲点40bまでの距離を出口地点の位置として特定する。あるいは、入口・出口特定部21は、例えば、停止線や横断歩道の位置を基準に入口地点の位置を特定してもよい。
【0033】
また、
図4に例示されるように、車道の外側に沿って敷設されているエプロン50が検出された場合、このエプロン50が途切れる区間が交差部と認識される。具体的には、入口・出口特定部21は、エプロン50の変曲点50a,50bを検出し、変曲点50aから変曲点50bまでの区間を交差部と特定する。そして、入口・出口特定部21は、車両Aから近い方の変曲点50aまでの距離を入口地点の位置として特定する。また、入口・出口特定部21は、車両Aから遠い方の変曲点50bまでの距離を出口地点の位置として特定する。
【0034】
また、
図5に例示されるように、車道の外側に沿って敷設されているガードレール60が検出された場合、このガードレール60が途切れる区間が交差部と認識される。具体的には、入口・出口特定部21は、ガードレール60の端部60a,60bを検出し、端部60aから端部60bまでの区間を交差部と特定する。そして、入口・出口特定部21は、車両Aから近い方の端部60aまでの距離を入口地点の位置として特定する。また、入口・出口特定部21は、車両Aから遠い方の端部60bまでの距離を出口地点の位置として特定する。
【0035】
また、
図6に例示されるように、車道の外側に沿って敷設されている縁石70が検出された場合、この縁石70が途切れる区間が交差部と認識される。具体的には、入口・出口特定部21は、縁石70の変曲点70a,70bを検出し、変曲点70aから変曲点70bまでの区間を交差部と特定する。そして、入口・出口特定部21は、車両Aから近い方の変曲点70aまでの距離を入口地点の位置として特定する。また、入口・出口特定部21は、車両Aから遠い方の変曲点70bまでの距離を出口地点の位置として特定する。
【0036】
図2のフローチャートの説明に戻る。S106では、補正部22が、経路案内装置5から取得された車両Aの現在位置を補正する。経路案内装置5から取得される現在位置は、道路地図上における車両Aの現在位置を示している。具体的には、補正部22は、走行区画認識部11により認識された走行区画の構造と、車両Aの現在位置周辺の地図情報で表される走行区画の構造とを照らし合わせ、道路地図上に対応付けられた車両Aの現在位置の誤差を導出する。また、補正部22は、周辺環境認識部12により認識された立体物ランドマークと車両Aとの位置関係と、地図情報で表される立体物ランドマークと道路地図上での車両Aの現在位置との位置関係とを比較し、道路地図上に対応付けられた車両Aの現在位置の誤差を導出する。そして、補正部22は、導出された誤差に基づいて、道路地図上に対応付けられた車両Aの現在位置を補正する。
【0037】
S108では、交差部情報導出部23が、交差部到達距離と交差部長とを含む交差部情報を導出する。具体的には、交差部情報導出部23は、地図情報、入口・出口特定部21により導出された入口地点の位置、及び補正部22により補正された現在位置に基づき、現在位置から交差部までの距離を、交差部到達距離として算出する。また、交差部情報導出部23は、入口・出口特定部21により特定された入口地点から出口地点までの距離を、交差部長として算出する。
【0038】
S110では、目標距離設定部24が、交差部情報導出部23により導出された交差部情報に基づき、先行車両との目標車間距離を設定する。具体的には、目標距離設定部24は、先行車両の位置から目標車間距離を空けた位置が、交差部の入口地点から出口地点までの区間に入らないように、目標車間距離を設定する。
【0039】
目標車間距離の設定の一例について、
図7を参照しながら説明する。
図7において、符号Bは、車両Aの前方直近を先行する先行車両を示す。また、距離Laは、車両Aと先行車両Bとの間に存在する交差部までの交差部到達距離である。また、距離Lbは、車両Aと先行車両Bとの間に存在する交差部の交差部長である。また、距離Lcは、先行車両Bとの交差部の出口地点との距離である。
【0040】
図7の事例では、車両Aと先行車両Bとの間に交差部が存在し、かつ、交差部の出口地点と先行車両Bとの間に、車両Aが安全な車間距離を保って進入する余地がない状況を想定している。この場合、目標距離設定部24は、一例として、距離La+Lb+Lcを目標車間距離Lと設定することが考えられる。こうすることで、先行車両Bの位置から目標車間距離Lを空けた位置が交差部の入口地点から出口地点までの区間に入らないようにできる。また、車両Aが交差部の中に進入した場合には、目標距離設定部24は、一例として、交差部の出口地点よりも向こう側に目標車間距離を設定することが考えられる。
【0041】
図2のフローチャートの説明に戻る。S112では、走行制御部31が、目標距離設定部24により設定された目標車間距離に応じてアクチュエータ7を制御し、車両Aと先行車両との車間距離を目標車間距離に合わせるように走行状態を調節する。
【0042】
[警告処理の説明]
運転支援装置1が実行する警告処理の手順について、
図8のフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、上述の車間制御処理と並行して実行される。
【0043】
S200では、報知制御部32は、車両認識部13や入口・出口特定部21による認識結果に基づき、前方の交差部に横方向から進入する移動体が存在するか否かを判定する。このS200において判定の対象となる移動体には、例えば、
図9に例示されるように、交差点の脇道や道路脇の敷地に通じる乗り入れ部分から、車両Aの進路前方の道路に進入しようとしている車両C等が含まれる。
【0044】
図8のフローチャートの説明に戻る。交差部に横方向から進入する移動体が存在しない場合(すなわち、S200:NO)、報知制御部32は処理を終了する。一方、交差部に横方向から進入する移動体が存在する場合(すなわち、S200:YES)、報知制御部32は処理をS202に移す。
【0045】
S202では、報知制御部32は、情報出力装置8を用いて、横方向から進入する移動体に関する警告を運転者に対して報知する。具体的には、報知制御部32は、横方向からの移動体に対する注意を喚起する旨の画像情報や音声情報を情報出力装置8の表示装置や音声出力装置に出力する。
【0046】
[効果]
実施形態の運転支援装置1によれば、以下の効果を奏する。
自車両において観測された周辺環境に基づいて交差部の構造を認識し、また、道路地図上に対応付けられた現在位置を補正することができる。このような構成により、地図情報のみに依存して自車両の現在位置や交差部の構造を特定する従来の構成と比較して、現在位置や交差部の構造を特定する際の精度やロバスト性を向上できる。したがって、運転支援装置1は、先行車両との車間距離を調節する運転支援において、自車両が交差点や乗り入れ部分の途中で停止することを的確に抑制できる。
【0047】
運転支援装置1は、道路の路面に描かれた区画線等の標示物や、道路の境界を構成する縁石、エプロン、ガードレール、植栽等の構造物等の分布に基づいて、交差部の入口地点及び出口地点を特定できる。また、運転支援装置1は、道路の路面に描かれた標示物や道路に付随する立体物ランドマークに関する認識結果を用いて、道路地図上における現在位置を補正できる。このような構成によれば、地図情報に依存せずに現在位置や、交差部の位置、構造を的確に検出できる。また、運転支援装置1は、交差部において横方向から進入する移動体に対する警告を運転者に対して報知できる。このようにすることで、運転支援による走行時における安全性の向上に寄与する。
【0048】
[変形例]
上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が、本開示の実施形態である。
【0049】
上述した運転支援装置1を構成要件とするシステム、運転支援装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、運転支援方法等の種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1…運転支援装置、2…カメラ、3…レーダ、4…ソナー、5…経路案内装置、6…車両情報入力部、7…アクチュエータ、8…情報出力装置、10…状況認識部、11…走行区画認識部、12…周辺環境認識部、13…車両認識部、20…演算部、21…入口・出口特定部、22…補正部、23…交差部情報導出部、24…目標距離設定部、30…制御部、31…走行制御部、32…報知制御部。