(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】積層造形物の造形手順設計方法、積層造形物の造形方法及び製造装置、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/04 20060101AFI20220809BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20220809BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20220809BHJP
B23K 9/032 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B23K9/04 A
B29C64/386
B33Y50/00
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B23K9/032 Z
(21)【出願番号】P 2018033877
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雄幹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸志
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳史
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530027(JP,A)
【文献】特開平05-345359(JP,A)
【文献】特開2017-191574(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0043631(US,A1)
【文献】特開2001-282768(JP,A)
【文献】特開2014-203366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/04
B23K 9/21
B23K 26/34
B33Y 10/00 - 99/00
B23K 9/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形物の3次元形状データを用いて、溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードで前記積層造形物を積層造形する積層造形物の積層造形手順設計方法であって、
前記3次元形状データと、予め定めた特定方向を入力する工程と、
前記3次元形状データを用いて前記積層造形物の形状を
前記特定方向に沿って複数のポリゴン面に分割する工程と、
前記特定方向に沿って配列される前記ポリゴン面の列において、それぞれの前記列の一端の始端面から他端側に向けて、前記ポリゴン面にインデックス番号を順に付与する工程と、
前記ポリゴン面の列
における隣り合う一対の面の
面法線の交差角に
基づいて、前記列の他端の終端面を検出する工程と、
前記始端面から前記終端面までの複数の前記ポリゴン面のうち前記終端面を除く面に、ビード形成オンのフラグを付与し、前記終端面に、ビード形成オフのフラグを付与する工程と、
前記ポリゴン面に付与された前記インデックス番号と前記フラグとを対応付けしたビードマップを生成する工程と、
前記ポリゴン面の列に沿って前記ビードを連続形成する造形手順を、前記ビードマップの前記ビード形成オンのフラグを有するポリゴン面から、前記ビード形成オフのフラグを有するポリゴン面の位置に到達したとき、当該ポリゴン面の列のビード形成を停止させ、次のポリゴン面の列のビード形成を行う手順に決定する工程と、
を備える積層造形物の積層造形手順設計方法。
【請求項2】
前記特定方向は、前記ビードの形成方向である請求項1に記載の積層造形物の積層造形手順設計方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の積層造形物の積層造形手順設計方法により決定された前記造形手順により、前記積層造形物を造形する積層造形物の製造方法。
【請求項4】
前記ビードは、アーク溶接のトーチを用いて形成され、
前記ビード形成オンのフラグを有するポリゴン面と、前記ビード形成オフのフラグを有するポリゴン面とで、アーク溶接のトーチに印加する電力を異ならせる請求項3に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の積層造形物の製造方法の前記造形手順を決定する制御部と、
前記制御部により決定された前記造形手順に応じて駆動され、前記ビードを形成する造形部と、
を備える積層造形物の製造装置。
【請求項6】
積層造形物の3次元形状データを用いて、溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードで前記積層造形物を積層造形する積層造形手順を決定する手順を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記3次元形状データと、予め定めた特定方向を入力する手順と、
前記3次元形状データを用いて前記積層造形物の形状を
前記特定方向に沿って複数のポリゴン面に分割する手順と、
前記特定方向に沿って配列される前記ポリゴン面の列において、それぞれの前記列の一端の始端面から他端側に向けて、前記ポリゴン面にインデックス番号を順に付与する手順と、
前記ポリゴン面の列
における隣り合う一対の面の
面法線の交差角に
基づいて、前記列の他端の終端面を検出する手順と、
前記始端面から前記終端面までの複数の前記ポリゴン面のうち前記終端面を除く面に、ビード形成オンのフラグを付与し、前記終端面に、ビード形成オフのフラグを付与する手順と、
前記ポリゴン面に付与された前記インデックス番号と前記フラグとを対応付けしたビードマップを生成する手順と、
前記ポリゴン面の列に沿って前記ビードを連続形成する造形手順を、前記ビードマップの前記ビード形成オンのフラグを有するポリゴン面から、前記ビード形成オフのフラグを有するポリゴン面の位置に到達したとき、当該ポリゴン面の列のビード形成を停止させ、次のポリゴン面の列のビード形成を行なわせる造形手順に決定する手順と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形物の造形手順設計方法、積層造形物の造形方法及び製造装置、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産手段として3Dプリンタを用いた造形のニーズが高まっており、金属材料を用いた造形の実用化に向けて研究開発が進められている。金属材料を造形する3Dプリンタは、レーザや電子ビーム、更にはアーク等の熱源を用いて、金属粉体や金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層させることで積層造形物を作製する。
【0003】
アークを用いる場合には、アークにより溶加材を溶融及び凝固させてビードを形成し、このビードを複数層に積層することで積層造形物を作製する。この場合のビードの積層手順は、積層造形物の形状を表す3次元モデルデータを用いて、その形状に応じた適宜な積層計画によって決定される。
【0004】
上記のような3次元モデルデータを用いて積層造形物を作製する技術が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1においては、3次元モデルデータを、多数のポリゴンに分割し、ポリゴンの面の向きからグループ分けすることで、積層造形物の形状を複数のパーツに分解している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明は、切削加工と積層造形を行う装置において、切削加工と積層造形を行う部位及び加工順を自動で決定している。しかしながら、被加工物が連続的に積層可能な形状であるかまでは判断していない。
被加工物の形状に応じて最適な手順で造形することに関しては、作業者の経験と勘に頼ることが多く、その作業に熟練を要するのが実情となっている。そのため、被加工物の形状に応じて、高効率で積層造形を行える技術の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、積層造形物をビードの積層によって造形するに際して、積層造形物の3次元モデルデータからビード形成を行う造形手順の決定に資するビードマップを生成し、これにより、積層造形の手順を効率よく自動的に決定できる積層造形物の積層造形手順設計方法、積層造形物の製造方法及び製造装置、並びに、その造形手順をコンピュータに実行させるプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記構成からなる。
(1) 積層造形物の3次元形状データを用いて、溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードで前記積層造形物を積層造形する積層造形物の積層造形手順設計方法であって、
前記3次元形状データを用いて前記積層造形物の形状を複数のポリゴン面に分割する工程と、
予め定めた特定方向に沿って配列される前記ポリゴン面の列において、それぞれの前記列の一端の始端面から他端側に向けて、前記ポリゴン面にインデックス番号を順に付与する工程と、
前記ポリゴン面の列の隣り合う一対の面の向きに応じて、前記列の他端の終端面を検出する工程と、
前記始端面から前記終端面までの複数の前記ポリゴン面のうち前記終端面を除く面に、ビード形成オンのフラグを付与し、前記終端面に、ビード形成オフのフラグを付与する工程と、
前記ポリゴン面に付与された前記インデックス番号と前記フラグとを対応付けしたビードマップを生成する工程と、
前記ポリゴン面の列に沿って前記ビードを連続形成する造形手順を、前記ビードマップの前記ビード形成オンのフラグを有するポリゴン面から、前記ビード形成オフのフラグを有するポリゴン面の位置に到達したとき、当該ポリゴン面の列のビード形成を停止させ、次のポリゴン面の列のビード形成を行う手順に決定する工程と、
を備える積層造形物の積層造形手順設計方法。
(2) (1)の積層造形物の積層造形手順設計方法により決定された前記造形手順により、前記積層造形物を造形する積層造形物の製造方法。
(3) (2)の積層造形物の製造方法の前記造形手順を決定する制御部と、
前記制御部により決定された前記造形手順に応じて駆動され、前記ビードを形成する造形部と、
を備える積層造形物の製造装置。
(4) 積層造形物の3次元形状データを用いて、溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードで前記積層造形物を積層造形する積層造形手順を決定する手順を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記3次元形状データを用いて前記積層造形物の形状を複数のポリゴン面に分割する手順と、
予め定めた特定方向に沿って配列される前記ポリゴン面の列において、それぞれの前記列の一端の始端面から他端側に向けて、前記ポリゴン面にインデックス番号を順に付与する手順と、
前記ポリゴン面の列の隣り合う一対の面の向きに応じて、前記列の他端の終端面を検出する手順と、
前記始端面から前記終端面までの複数の前記ポリゴン面のうち前記終端面を除く面に、ビード形成オンのフラグを付与し、前記終端面に、ビード形成オフのフラグを付与する手順と、
前記ポリゴン面に付与された前記インデックス番号と前記フラグとを対応付けしたビードマップを生成する手順と、
前記ポリゴン面の列に沿って前記ビードを連続形成する造形手順を、前記ビードマップの前記ビード形成オンのフラグを有するポリゴン面から、前記ビード形成オフのフラグを有するポリゴン面の位置に到達したとき、当該ポリゴン面の列のビード形成を停止させ、次のポリゴン面の列のビード形成を行なわせる造形手順に決定する手順と、
を実行させるプログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層造形物をビードの積層によって造形するに際して、積層造形物の3次元モデルデータからビード形成を行う造形手順の決定に資するビードマップを生成し、これにより、積層造形の手順を効率よく自動的に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の積層造形物を製造する製造装置の概略構成図である。
【
図3】積層造形物を積層設計し、この設計された条件で積層造形物を造形するプログラムを生成するまでの手順を示すフローチャートである。
【
図4】積層造形物の一断面において粗形材領域を決定する様子を示す説明図である。
【
図5】積層造形物の外形を、粗形材領域と積層造形領域とに区分けした結果を示す説明図である。
【
図7】
図6に示すVII-VII線のA1部における断面図である。
【
図8】ビードを形成する様子を模式的に示す工程説明図である。
【
図9】積層造形領域における一層の仮想ビード層を形成する際の、基準方向である溶接方向に沿ったトーチ移動ラインと、ビード形成範囲とを示す模式的な工程説明図である。
【
図10】積層造形物の3次元モデルデータから積層造形物の形状を複数のポリゴン面に分割した様子を示す説明図である。
【
図11】3次元モデルデータから複数のポリゴン面に分割し、これらポリゴン面の中から、ビード形成開始後にビード形成を終了させる終端面を検出する手順を示すフローチャートである。
【
図12】(A)、(B)はポリゴンの面の法線方向を示す説明図である。
【
図13】ビードマップを生成する手順を示すフローチャートである。
【
図14】ポリゴンの面のうち、オフのフラグが登録された面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の積層造形物を製造する製造装置の概略構成図である。
本構成の積層造形物の製造装置100は、造形部11と、造形部11を統括制御する造形コントローラ13と、電源装置15と、を備える。
【0012】
造形部11は、先端軸にトーチ17が設けられたトーチ移動機構としての溶接ロボット19と、トーチ17に溶加材(溶接ワイヤ)Fmを供給する溶加材供給部21とを有する。
溶接ロボット19は、例えば6軸の自由度を有する多関節ロボットであり、ロボットアームの先端軸に取り付けたトーチ17には、溶加材Fmが連続供給可能に支持される。トーチ17の位置や姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
【0013】
トーチ17は、溶加材Fmを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Fmの先端からアークを発生する。トーチ17は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給されるようになっている。アーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する積層造形物に応じて適宜選定される。例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Fmがコンタクトチップに保持される。
【0014】
溶加材Fmは、あらゆる市販の溶接ワイヤを用いることができる。例えば、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ(JIS Z 3312)、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ(JIS Z 3313)等で規定されるワイヤを用いることができる。
【0015】
溶加材Fmは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構により、溶加材供給部21からトーチ17に送給される。そして、造形コントローラ13からの指令により、溶接ロボット19はトーチ17を移動しつつ、連続送給される溶加材Fmを溶融及び凝固させる。これにより、溶加材Fmの溶融凝固体であるビードが形成される。ここでは詳細を後述するように、ベース材23に支持された軸体25に、ビードで形成されるブレード27を形成する場合を例に説明する。
【0016】
溶加材Fmを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。アークを用いる場合は、シールド性を確保しつつ、素材、構造によらずに簡単にビードを形成できる。電子ビームやレーザにより加熱する場合は、加熱量を更に細かく制御でき、溶着ビードの状態をより適正に維持して、積層造形物の更なる品質向上に寄与できる。
【0017】
造形コントローラ13は、ビードマップ生成部31と、プログラム生成部33と、記憶部35と、これらが接続される制御部37と、を有する。制御部37には、作製しようとする積層造形物の形状を表す3次元モデルデータ(CADデータ等)や、各種の指示情報が入力部39から入力される。
【0018】
ビードマップ生成部31は、詳細を後述するが、入力された積層造形物の3次元モデルデータを用いて、ビードを形成する位置情報を含むビードマップ(詳細は後述)を生成する。生成されたビードマップは、記憶部35に記憶される。
【0019】
プログラム生成部33は、造形部11を駆動して積層造形物の造形手順を設定し、この手順をコンピュータに実行させるプログラムを、上記のビードマップを用いて生成する。生成されたプログラムは、記憶部35に記憶される。
【0020】
記憶部35には、造形部11が有する各種の駆動部や可動範囲等の仕様情報も記憶され、プログラム生成部33でプログラム生成する際や、プログラムを実行する際に適宜情報が参照される。この記憶部35は、メモリやハードディスク等の記憶媒体からなり、各種情報の入出力が可能となっている。
【0021】
制御部37を含む造形コントローラ13は、CPU、メモリ、I/Oインターフェース等を備えるコンピュータ装置であって、記憶部35に記憶されたデータやプログラムを読み込み、データの処理やプログラムを実行する機能、及び造形部11の各部を駆動制御する機能を有する。制御部37は、入力部39からの操作や通信等による指示によって、記憶部35からプログラムを読み込み、実行する。
【0022】
制御部37がプログラムを実行すると、溶接ロボット19や電源装置15等がプログラムされた所定の手順に従って駆動される。溶接ロボット19は、造形コントローラ13からの指令により、プログラムされた軌道軌跡に沿ってトーチ17を移動させるとともに、溶加材Fmを所定のタイミングでアークにより溶融させて、所望の位置にビードを形成する。
【0023】
ビードマップ生成部31やプログラム生成部33は、造形コントローラ13に設けられるがこれに限らない。図示はしないが、例えば積層造形物の製造装置100とは別体に、ネットワーク等の通信手段や記憶媒体を介して離間して配置されたサーバや端末等の外部コンピュータに、ビードマップ生成部31やプログラム生成部33が設けられてもよい。外部コンピュータにビードマップ生成部31やプログラム生成部33が接続されることで、積層造形物の製造装置100を要せずにビードマップやプログラムを生成でき、プログラム生成作業が繁雑にならない。また、生成したビードマップやプログラムを、造形コントローラ13の記憶部35に転送することで、造形コントローラ13で生成した場合と同様に動作させることができる。
【0024】
図2は積層造形物41の斜視図である。
一例として示す積層造形物41は、円柱状の軸体25と、軸体25の外周に径方向外側へ突出する複数条(図示例では6条)の螺旋状のブレード27とを備える。複数のブレード27は、軸体25の軸方向中間部で、周方向に沿って等間隔に設けられたスクリュー形状となっている。
【0025】
図1に示す積層造形物の製造装置100は、積層造形物41を造形する際、全形状を積層造形法により形成するのではなく、軸体25については棒材等の粗形材を用いて形成し、ブレード27を積層造形法により形成してもよい。その場合、積層造形物41の軸体25を粗形材で形成し、軸体25の外周に形成されるブレード27をビードによって積層造形する。これにより、積層造形物41Aの造形工数を大きく削減できる。
【0026】
次に、上記一例としての積層造形物の基本的な積層手順を説明する。
図3は積層造形物41を積層設計し、この設計された条件で積層造形物41を造形するプログラムを生成するまでの手順を示すフローチャートである。
【0027】
まず、
図1に示す入力部39から制御部37に積層造形物41の形状を表す3次元モデルデータ(以降、形状データと称する。)を入力する(S11)。形状データには、積層造形物41の外表面の座標、軸体25の径や軸長等の寸法情報の他、必要に応じて参照される材料の種類や最終仕上げ等の情報も含まれる。以下のプログラムを生成する工程は、プログラム生成部33により行われる。
【0028】
図4は積層造形物41の一断面において粗形材領域を決定する様子を示す説明図である。
積層造形物41は、円柱状又は円筒状の軸体25を有し、複数のブレード27が軸体25の外周面から立設される。そこで、入力された形状データを用いて、積層造形物41の外形を、積層造形物41の基体となる粗形材領域と、基体上に形成される積層造形物41の外形となる積層造形領域とに区分けする。
【0029】
粗形材領域と積層造形領域は、積層造形物41の形状データと、用意可能な粗形材の種類に応じて決定される。図示例の積層造形物41の場合、一例として示される粗形材(丸棒)43A,43B,43Cのうち、積層造形物41の形状に合わせるための切削量が最小となる径の粗形材43Cが選択される。
【0030】
図5は積層造形物41の外形を、粗形材領域45と積層造形領域47とに区分けした結果を示す説明図である。
本例の場合、粗形材43Cが粗形材領域45となり、粗形材43Cの外周に配置される複数のブレード27がそれぞれ積層造形領域47となる(S12)。
【0031】
次に、上記S12で決定された積層造形領域47に、ビードを形成する手順を決定する。
積層造形領域47では、複数のビードを順次に積層することでブレード27の粗形状を造形する。積層造形領域47を構成する個々のビードのビード幅、ビード高さ等のビードサイズは、トーチ17(
図1参照)の移動速度、つまり、ビードの連続形成速度や、電源装置15からの溶接電流、溶接電圧、印加パルス等の溶加材や溶接部への入熱量、等の溶接条件の変更によって制御される。このビードサイズは、溶着ビードを形成するトーチの移動方向に直交する断面で管理することが好ましい。
【0032】
図6は積層造形物41の一部正面図である。
本構成の積層造形物41においては、螺旋状のブレード27の延設方向をビード形成方向Vbに一致させれば、溶着ビードの連続形成長さを長くできる。そのため、ビード形成方向Vbをブレード27の延設方向と同じにして、これを基準方向とする(S13)。これにより、ビードサイズは、基準方向(ビード形成方向Vb)に直交するVII-VII線断面で示すビード断面の形状を基準に制御する。
【0033】
例えば、特定方向に連続した少なくとも一つの突起部を有する積層造形物においては、この連続する特定方向に沿って溶着ビードを形成すれば、効率よく造形が行え、積層造形工程の煩雑化が軽減される。そこで、作製しようとする積層造形物の形状データから、まず、積層造形物の連続する特定方向を求める。この特定方向は、コンピュータによる演算によって、形状データを適宜なアルゴリズムで解析して決定してもよく、作業者が判断する等、人為的に決定してもよい。
【0034】
図7は
図6に示すVII-VII線のA1部における断面図である。図中の横軸は、ブレード27の延設方向(基準方向)に直交する方向で、縦軸は軸体25の径方向となるビード積層方向である。
【0035】
ここで、ブレード27の積層造形領域47を、複数の仮想ビード層に層分解する(S14)。複数層の仮想ビード層のビード(仮想ビード51として示す)は、仮想ビード層の1層分のビード高さhに応じて、ブレード27の最終形状が内包されるように配置される。図示例では、点線で示す仮想ビード51を、軸体25(粗形材43C)の表面から順次積層(層H1,H2,・・・)して、7層目(層H7)においてブレード27の径方向最外縁部27aが覆われる場合を示す。つまり、ここでは合計7層の仮想ビード層を有する積層モデルとなる。
【0036】
この積層モデルは、
図5に示す複数の積層造形領域47の全てに対して生成される。そして、各積層モデルにおいて、共通の断面でビードサイズを設計する。つまり、積層造形領域47の各仮想ビード層における仮想ビード51の配置位置(ビード積層高さh等)、ビードサイズ(ビード幅W等)、溶接条件、等の諸条件を設定する(S15)。なお、
図7においては仮想ビード層を7つに分割しているが、ビードサイズ、積層造形物の大きさや形状、等に応じて分割層数は任意に設定できる。
【0037】
次に、上記のように設計された積層モデルに従ってビードを粗形材43C上に形成する手順を示すプログラムを生成する(S16)。このプログラムの生成は、
図1に示すプログラム生成部33が行う。
【0038】
ここでいうプログラムとは、入力された積層造形物の形状データから、所定の演算により設計されたビードの形成手順を、造形部11により実施させるための命令コードである。制御部37は、予め用意されたプログラムの中から所望のプログラムを特定し、この特定されたプログラムを実行することで、造形部11によって積層造形物41を製造させる。つまり、制御部37は、記憶部35から所望のプログラムを読み込み、このプログラムにしたがってビードを形成して、積層造形物41を造形する。
【0039】
図8はビードを形成する様子を模式的に示す工程説明図である。
造形コントローラ13(
図1参照)は、造形部11を生成したプログラムにしたがって駆動して、積層造形物41の粗形材43Cにビード55A,55B,55C,・・・を順次に並設し、第1層目(層H1)のビード層を形成する。そして、第1層目(層H1)のビード層の上に第2層目(層H2)のビード55D,55E,・・・を順次に並設する。
【0040】
ここで、ビード55Dの外表面とビード55Bの外表面との境界をPc(ビード55Dの図中右側の境界)とし、境界Pcにおけるビード55Dの外表面の接線をL1、境界Pcにおけるビード55Bの外表面の接線をL2とする。また、接線L1とL2とのなす角をαとし、角αの二等分線をNとする。
【0041】
ビード55Dに隣接する次のビード55Eは、境界Pcを目標位置として形成される。ビード55Eを形成する際、トーチ17のトーチ軸線の向きは、直線Lと概ね同じ方向に設定される。なお、ビード55Eを形成する目標位置は、境界Pcに限らず、ビード55Bとビード55Cとの間の境界Pcaにしてもよい。
【0042】
造形コントローラ13は、各ビード55A~55E,・・・の形成時に、上記したプログラムに従ってトーチ17を図中奥側(紙面垂直方向)に向けて移動させ、シールドガスG雰囲気中で発生させたアークによりビード形成の目標位置付近を加熱する。そして、加熱により溶融した溶加材Fmが目標位置で凝固することで、新たなビードが形成される。これにより、
図7に示す粗形状のビード層が形成される。ビード層が形成された積層造形領域47は、その後の適宜な加工によって所望のブレード27の形状に仕上げられる。
【0043】
ここで、積層造形物41の形状データから積層造形物の製造装置100の造形部11を駆動させるプログラムを生成する際に、このプログラムの生成に資するビードマップを作成する手順と、作成したビードマップを用いて積層造形する工程とを詳細に説明する。
【0044】
図9は積層造形領域47における一層の仮想ビード層Hを形成する際の、基準方向であるビード形成方向Vbに沿ったトーチ移動ライン57と、ビード形成範囲とを示す模式的な工程説明図である。
図示例のように、仮想ビード層Hの一部が基準方向からずれている場合、
図1に示すトーチ17を移動させながらビードを形成する際に、ビード形成のオンオフ制御を行う必要がある。つまり、
図9に示す各トーチ移動ライン57においては、トーチ17が仮想ビード層Hの領域に到達する位置Psから、トーチ17が仮想ビード層Hの領域から外れる位置Peまでの間でそれぞれビード形成を行い、それ以外ではビード形成を行わない。
【0045】
ビード形成を行う場合は、トーチ17を移動させながらトーチ17に溶接電力を印加してアークを発生させる。ビード形成を行わない場合は、トーチ17を移動させながらトーチ17への溶接電力の印加を停止させる。
図1に示すプログラム生成部33は、この動作の手順をプログラムに組み込む。その際、ビードの形成位置が記録されたビードマップを用いることで、プログラム生成部33のプログラム生成の演算負担を軽減できる。
【0046】
以下、ビードマップの生成手順について説明する。
ビードマップは、積層造形物の形状を表す3次元モデルデータ(形状データ)を用いて、ビードを積層して積層造形物を造形するに際して使用され、ビードを形成する位置情報を含む。積層造形の際は、積層造形物の層分解された各層毎にビードマップを求めるが、ここでは説明を簡単にするため、積層造形物が単一層の仮想ビード層で構成される単純なモデルで説明する。
【0047】
図10は積層造形物の3次元モデルデータから積層造形物の形状を複数のポリゴン面に分割した様子を示す説明図である。ここでいうポリゴンとは、3次元コンピュータグラフィックスで立体の表面を形作る小さな多角形要素である。図示例では4角形のポリゴンを示しているが、3角形のポリゴンであってもよい。
【0048】
ここで示す積層造形物のモデルは、基準方向である溶接方向に沿って8つのポリゴン面(インデックスiで示し、端面を含むものとする。)を有し、基準方向に直交する方向に沿って4つのポリゴン面(インデックスjで示す)を有する。モデルの各ポリゴン面は、iを基準方向に並ぶ面の順番、jを列とし、(j,i)=(1,1)~(4,8)で示している。つまり、j=1の列は、ポリゴン面(1,1),(1,2),(1,3),・・・,(1,7),(1,8)となり、合計8個のポリゴン面が存在する。一列分のポリゴン面の総数をN(=8)とする。また、このモデルは、合計4つのポリゴン面の列が存在し、列の総数をM(=4)とする。
【0049】
図11は、3次元モデルデータから複数のポリゴン面に分割し、これらポリゴン面の中から、ビード形成開始後にビード形成を終了させる終端面を検出する手順を示すフローチャートである。ここでの工程は、
図9に示す位置Peを求めるための工程であり、
図1に示すビードマップ生成部31によってなされる。
【0050】
まず、積層造形物の形状を表す3次元モデルデータと、予め定めたビード形成方向(基準方向)とを入力する(S21)。
次に、入力された3次元モデルデータを多数のポリゴン面に分割する(S22)。つまり、
図10に示すように積層造形物の外形面を、インデックスj,iを用いて表現される多数のポリゴン面に分割する。
【0051】
そして、基準方向に隣接するポリゴン面の列を抽出する(S23)。ここでは、分割された各ポリゴン面が四角形とされているため、基準方向に繋がる複数のポリゴン面が、合計4つの列として、列毎にそれぞれ抽出される。
【0052】
次に、
図10に示すモデルの基準方向に沿った終端面(1~4,8)、即ち、
図9の位置Peに相当するポリゴン面を検出する。
まず、ステップS24でインデックスjを1(1列目)にセットし、インデックスiを2(2番目)にセットする。ステップS25でj列目(1列目)において、i番目(2番目)のポリゴン面の面法線と、i+1番目(3番目)のポリゴン面の面法線とのなす角(交差角)θi(θ2)を求める。ここで、インデックスi=1は、
図10に示すモデルの基準方向に沿った始端面のインデックスであることは既知なので、終端面の検出対象から外している。
【0053】
i=2の場合、
図12の(A)に示すように、1番目のポリゴン面PLiの面法線Niと、2番目のポリゴン面PLi+1の面法線Ni+1との交差角θiが、予め定めた閾値θthより小さいか(θi<θth)を判断し(S26)、小さい場合には、インデックスiがNになるまでインクリメントする(S27)。
【0054】
一方、
図12の(B)に示すように、1番目のポリゴン面PLiの面法線Niと、2番目のポリゴン面PLi+1の面法線Ni+1との交差角θiが閾値θth以上(θi≧θth)となる場合、境界面リストBd(j)にインデックスiを登録する(S28)。このときのインデックスiに対応するポリゴン面(始端面からi番目の面)が終端面となる。
【0055】
このようなj=1の列における終端面の検出を、全ての列(M列)に対して行い(S29)、終端面となるインデックスiを境界面リストBd(j)に登録する。
【0056】
以上の工程により、境界面リストBd(j)には、各列(j=1~M)の終端面(
図1においてはポリゴン面(1~4,8))が登録される。なお、ここで用いたモデルは単純形状であるため、各列で同じインデックスiが登録される結果となるが、実際の積層造形物のモデルでは、列毎に異なるインデックスiが登録されることも生じ得る。
【0057】
次に、複数列のポリゴン面に、前述した検出された終端面の情報に基づいて、ビード形成を行う面か否かのフラグを付与したビードマップを生成する。
具体的には、基準方向(溶接方向)に連続するポリゴンの各面において、各面の列の始端面から終端面までのポリゴン面のうち終端面を除く各面に、ビード形成を行うことを表すビード形成オンのフラグを付与し、終端面にビード形成を行わないことを表すビード形成オフのフラグを付与する。ビード形成オンのフラグが付与されたポリゴン面は、積層造形の際にその位置でビードを形成する面であり、ビード形成オフのフラグが付与されたポリゴン面は、その位置でビード形成を停止させる面であることを意味する。
【0058】
図13はビードマップを生成する手順を示すフローチャートである。
ここでは、3Dモデルデータから生成した全ポリゴン面(j,i)のインデックスi,jの最大値N,Mと、境界面リストBd(j)(j=1~M)の情報とを用いる。
【0059】
まず、インデックスi,jを1にセットし(S31)する。そして、1列目(j=1)のポリゴン面の列において1番目(i=1)から順に、境界面リストBd(j)に登録された終端面のインデックス番号と一致したか否かを判定する(S32)。この判定をインデックスiがN番目のポリゴン面まで繰り返す(S35)とともに、インデックスjがM列目になるまで繰り返す(S36)。
【0060】
判定の結果、境界面リストBd(j)と一致しないポリゴン面の場合は、ビードマップBM(j,i)にビード形成オンのフラグ(FLG_ON)を登録し(S33)、一致する場合はビードマップBM(j,i)にビード形成オフのフラグ(FLG_OFF)を登録する(S34)。
【0061】
これにより、ビードマップBM(j,i)として、
図14に示すように、複数のポリゴン面(j,i)のうち、各列のポリゴン面の終端面(1~4,8)にのみ、ビード形成オフのフラグ(FLG_OFF)が登録され、他の面は、ビード形成オンのフラグ(FLG_ON)が登録されたマップデータが得られる。
【0062】
このビードマップBM(j,i)を求めておくことで、
図1に示す溶接ロボット19の駆動によりアーク溶接を行うトーチ17を基準方向(ビード形成方向)Vbに移動させて、積層造形物の特定のビード層を形成する際に、アークのオンオフをどの位置で行うのかを簡単に求めることができる。つまり、ビードマップの各ポリゴン面のフラグを参照させることで、アークのオンオフ位置を自動抽出することができる。
【0063】
具体的な参照手順としては、例えば次のような手順が挙げられる。
ビードマップBM(j,i)は、積層造形物の形状を表すポリゴン面をインデックスj,iに対応させて生成したデータである。そこで、ビードマップBM(j,i)を積層造形物の実空間での座標系(実座標系)の実空間ビードデータRDに変換する。この変換された実空間ビードデータRDには、積層造形物の形状を表す多数のポリゴン面内に、それぞれのポリゴン面に登録された前述したフラグが設定される。つまり、実座標系における積層造形物の表面に、その表面に対応するポリゴン面のフラグ(FLG_ON又はFLG_OFF)が割り振られる。また、ビードマップBM(j,i)の範囲外の位置(積層造形物のビード層が配置されない領域)に対応する実空間ビードデータRDには、ビードを形成しないため、ビード形成オフのフラグ(FLG_OFF)が登録される。
【0064】
ここで、トーチ17を基準方向Vbに移動させながら、トーチ17から発生させるアークによって、積層造形物のビード層を形成することを考える。その場合、トーチ17の移動によって、トーチ先端位置に対する実空間ビードデータRDが、ビード形成オフのフラグ(FLG_OFF)から、ビード形成オンのフラグ(FLG_ON)に変化したとき、トーチ17からアークを発生させる。このときのトーチ先端位置が、ビード形成の開始端(
図9の位置PS)に相当する。
【0065】
そして、アークを発生させながらトーチ17を基準方向Vbに移動させる、その移動途中で、トーチ先端位置に対応する実空間ビードデータRDがオフのフラグ(FLG_OFF)の位置を通過するとき、アークの発生を停止させる。このときのトーチ先端位置が、ビード形成の終端(
図9の位置Pe)に相当する。
【0066】
この制御によれば、積層造形物の3Dモデルデータの寸法情報から、基準方向に沿った前述したビードの形成始端及び終端の位置を逐一演算して、アーク発生開始位置、アーク停止位置を求める方法と比較して、実空間ビードデータRDを参照するだけで、ビード形成の開始及び停止タイミングを簡単に決定できるため、工程が簡素化できる。
【0067】
上記したアークの駆動動作は、制御部37による造形コントローラ13の駆動指令となるプログラムの実行によって実現される。具体的には、
図1に示す制御部37が電源装置15からトーチ17に印加させる電力を、実空間ビードデータRDのフラグを参照して増減制御する。つまり、本構成によれば、積層造形物を造形するビード形成手順を示すプログラムを、3Dモデルデータから直接演算するのではなく、予め作成したビードマップから求めた実空間ビードデータRDのフラグを用いて決定するため、プログラムの生成工程を大幅に簡略化できる。
【0068】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0069】
上記例では、ビードマップのフラグに応じて、アーク溶接用のトーチに印加する電力を設定しているが、アーク以外の熱源の場合も同様に行える。例えば、レーザを熱源とする場合は、フラグに応じてレーザの出力を設定し、電子ビームを熱源とする場合には、フラグに応じて電子銃のビームエネルギー密度を設定すればよい。
また、積層造形物を積層造形する際のビード形成方向は、水平方向に限らず、上下方向や水平方向から傾斜した方向にすることができる。また、ビード形成方向は、直線に限らず、曲線であってもよい。
【0070】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 積層造形物の3次元形状データを用いて、溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードで前記積層造形物を積層造形する積層造形物の積層造形手順設計方法であって、
前記3次元形状データを用いて前記積層造形物の形状を複数のポリゴン面に分割する工程と、
予め定めた特定方向に沿って配列される前記ポリゴン面の列において、それぞれの前記列の一端の始端面から他端側に向けて、前記ポリゴン面にインデックス番号を順に付与する工程と、
前記ポリゴン面の列の隣り合う一対の面の向きに応じて、前記列の他端の終端面を検出する工程と、
前記始端面から前記終端面までの複数の前記ポリゴン面のうち前記終端面を除く面に、ビード形成オンのフラグを付与し、前記終端面に、ビード形成オフのフラグを付与する工程と、
前記ポリゴン面に付与された前記インデックス番号と前記フラグとを対応付けしたビードマップを生成する工程と、
前記ポリゴン面の列に沿って前記ビードを連続形成する造形手順を、前記ビードマップの前記ビード形成オンのフラグを有するポリゴン面から、前記ビード形成オフのフラグを有するポリゴン面の位置に到達したとき、当該ポリゴン面の列のビード形成を停止させ、次のポリゴン面の列のビード形成を行う手順に決定する工程と、
を備える積層造形物の積層造形手順設計方法。
この造形手順の設計方法によれば、ビード形成の際に、ビード形成位置が、ビード形成オンのフラグを有するポリゴン面からビード形成オフのフラグを有するポリゴン面に到達したときに、次のポリゴン面の列に移ることで、最適な造形手順で積層造形が行える。
【0071】
(2) 前記特定方向は、前記ビードの形成方向である(1)に記載の積層造形物の積層造形手順設計方法。
この造形手順の設計方法によれば、特定方向をビード形成方向として造形することで、高効率な積層造形が実現できる。
【0072】
(3) (1)又は(2)に記載の積層造形物の積層造形手順設計方法により決定された前記造形手順により、前記積層造形物を造形する積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、ビード形成のオンオフの位置が最適となり、高効率に積層造形が行える。
【0073】
(4) 前記ビードは、アーク溶接のトーチを用いて形成され、
前記ビード形成オンのフラグを有するポリゴン面と、前記ビード形成オフのフラグを有するポリゴン面とで、アーク溶接のトーチに印加する電力を異ならせる(3)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の造形方法によれば、ビード形成をアーク溶接によるアークの電源制御によって、高精度に行える。
【0074】
(5) (3)又は(4)に記載の積層造形物の製造方法の前記造形手順を決定する制御部と、
前記制御部により決定された前記造形手順に応じて駆動され、前記ビードを形成する造形部と、
を備える積層造形物の製造装置。
この積層造形物の製造装置によれば、積層造形物を高効率で造形できる。
【0075】
(6) 積層造形物の3次元形状データを用いて、溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードで前記積層造形物を積層造形する積層造形手順を決定する手順を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記3次元形状データを用いて前記積層造形物の形状を複数のポリゴン面に分割する手順と、
予め定めた特定方向に沿って配列される前記ポリゴン面の列において、それぞれの前記列の一端の始端面から他端側に向けて、前記ポリゴン面にインデックス番号を順に付与する手順と、
前記ポリゴン面の列の隣り合う一対の面の向きに応じて、前記列の他端の終端面を検出する手順と、
前記始端面から前記終端面までの複数の前記ポリゴン面のうち前記終端面を除く面に、ビード形成オンのフラグを付与し、前記終端面に、ビード形成オフのフラグを付与する手順と、
前記ポリゴン面に付与された前記インデックス番号と前記フラグとを対応付けしたビードマップを生成する手順と、
前記ポリゴン面の列に沿って前記ビードを連続形成する造形手順を、前記ビードマップの前記ビード形成オンのフラグを有するポリゴン面から、前記ビード形成オフのフラグを有するポリゴン面の位置に到達したとき、当該ポリゴン面の列のビード形成を停止させ、次のポリゴン面の列のビード形成を行なわせる造形手順に決定する手順と、
を実行させるプログラム。
このプログラムによれば、ビード形成の際に、ビード形成位置が、ビード形成オンのフラグを有するポリゴン面からビード形成オフのフラグを有するポリゴン面に到達したときに、次のポリゴン面の列に移ることで、最適な造形手順で積層造形できる。
【符号の説明】
【0076】
11 造形部
13 造形コントローラ
15 電源装置
17 トーチ
31 ビードマップ生成部
33 プログラム生成部
35 記憶部
37 制御部
41 積層造形物
55A~55E ビード
100 積層造形物の製造装置
Fm 溶加材