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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】熱伝導性熱膨張性部材
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20220809BHJP
   A62C 2/00 20060101ALI20220809BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220809BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220809BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20220809BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220809BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20220809BHJP
【FI】
C09K5/14 E
A62C2/00 X
C08L83/04
C08K3/013
C08K3/016
H01M10/6554
H01M10/613
H01M10/658
H01M10/651
H01M10/6555
H01M10/653
H01M10/647
H01M10/643
H01M50/20
H01M50/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018060613
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019172762
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】野本 博之
(72)【発明者】
【氏名】岩根 和良
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206624(JP,A)
【文献】特開2009-021223(JP,A)
【文献】特開2012-156057(JP,A)
【文献】特開2002-138205(JP,A)
【文献】特表2015-518638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/14,C08L83/00,C08K3/00,H01M10/00,H01M50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-30℃~80℃において熱伝導率1W/m・K以上を有し、80℃を超える温度で膨張を開始し、熱膨張後の熱伝導率が0.5W/m・K以下となり、かつUL94規格においてV-1以上の難燃性を有する、熱伝導性熱膨張性部材であって、
前記熱伝導性熱膨張性部材は、熱伝導性フィラー(A)、熱膨張性材料(B)、シリコーン樹脂(C)を含有し、前記熱膨張性材料(B)は熱膨張性黒鉛であり、
前記熱伝導性フィラー(A)の含有量が20~99質量%であり、
前記熱膨張性材料(B)の含有量が0.2~60質量%であり、
前記シリコーン樹脂(C)は、シリコーン化合物(C1)を架橋剤(C2)により架橋させて硬化させたものである、熱伝導性熱膨張性部材
【請求項2】
前記シリコーン樹脂(C)の含有量が0.2~60質量%である請求項に記載の熱伝導性熱膨張性部材。
【請求項3】
少なくとも一面に放熱部が設けられる請求項1又は2に記載の熱伝導性熱膨張性部材。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱伝導性熱膨張性部材と、バッテリーセルとを備え、前記熱伝導性熱膨張性部材が、前記バッテリーセルの周囲に配置されるバッテリーセル構造体。
【請求項5】
前記熱伝導性熱膨張性部材が、前記バッテリーセルの表面に設けられる請求項に記載のバッテリーセル構造体。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱伝導性熱膨張性部材と、複数のバッテリーセルと、前記複数のバッテリーセルを内部に収容するモジュール用筐体とを備えるバッテリーモジュールであって、
前記熱伝導性熱膨張性部材が、前記モジュール用筐体の内部、及び前記モジュール用筐体の外表面のいずれか1箇所又は複数箇所に設けられるバッテリーモジュール。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱伝導性熱膨張性部材と、
それぞれが前記複数のバッテリーセルと、前記複数のバッテリーセルを収容するモジュール用筐体とを備える、複数のバッテリーモジュールと、
前記複数のバッテリーモジュールを内部に収容するパック用筐体とを備えるバッテリーパックであって、
前記熱伝導性熱膨張性部材が、前記パック用筐体の内部、及び前記パック用筐体の外表面のいずれか1箇所又は複数箇所に設けられる、バッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱することで膨張する熱伝導性熱膨張性部材、熱伝導性熱膨張性部材を得るための熱伝導性熱膨張性組成物、並びに熱伝導性熱膨張性部材を備えるバッテリーセル構造体、バッテリーモジュール、及びバッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池に代表される各種バッテリーでは、通常、1又は複数のバッテリーセルが筐体内に収容されて使用される。バッテリーセルは、衝突、短絡、高温などにより熱暴走して、発火、発煙等が生じることがある。熱暴走により異常高温になったバッテリーセルは、隣接するバッテリーセルや、他の電子部品に熱を伝えて、他のバッテリーセルや電子部品も熱暴走させ、それにより、発火、発煙等が連鎖して重大な事故につながるおそれがある。そのため、異常により高温となったバッテリーセルの熱が、他のバッテリーセルや、周囲に配置された他の電子部品に伝えにくくする対策が必要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、シェルと1以上のバッテリーセルとの間に防火制御剤が設置されたバッテリーパックが開示される。このバッテリーパックでは、防火制御剤が熱膨張剤を含むことで、熱暴走時の加熱で熱膨張剤が膨張してバッテリーパック内での発火が防止される。特許文献1の防火制御剤は、熱膨張剤として、熱膨張性グラファイトが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2015-518638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリーは、高温になることを防止するために、通常の使用時には放熱性を確保することが重要である。しかし、特許文献1では、防火制御剤が熱膨張剤として熱膨張性グラファイトを含有する点が示されるのみで、通常使用時の放熱性を十分に高めることができない。また、防火制御剤に熱膨張性グラファイトを配合しただけでは、バッテリーの熱暴走時の発火、発煙などを有効に防止することができないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、バッテリーの通常作動時の放熱性を良好にしつつ、バッテリーの熱暴走時には他のバッテリーセルへの伝熱を有効に防止することが可能な熱伝導性熱膨張性部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、バッテリーの通常作動時の温度下、及び高温下での熱伝導率を所定の範囲にし、かつ熱伝導性熱膨張性部材に所定の難燃性を持たせることで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[15]を提供する。
[1]-30℃~80℃において熱伝導率1W/m・K以上を有し、80℃を超える温度で膨張を開始し、熱膨張後の熱伝導率が0.5W/m・K以下となり、かつUL94規格においてV-1以上の難燃性を有する、熱伝導性熱膨張性部材。
[2]熱伝導性フィラー(A)及び熱膨張性材料(B)を含有する上記[1]に記載の熱伝導性熱膨張性部材。
[3]熱伝導性フィラー(A)の含有量が20~99質量%であり、かつ前記熱膨張性材料(B)の含有量が0.2~60質量%である上記[2]に記載の熱伝導性熱膨張性部材。[4]前記熱膨張性材料(B)が、熱膨張性層状無機物及びカルシウム系の無機塩からなる群から選択される少なくとも1つである上記[2]又は[3]に記載の熱伝導性熱膨張性部材。
[5]シリコーン樹脂(C)を含有する上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の熱伝導性熱膨張性部材。
[6]前記シリコーン樹脂(C)の含有量が0.2~60質量%である上記[5]に記載の熱伝導性熱膨張性部材。
[7]少なくとも一面に放熱部が設けられる上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の熱伝導性熱膨張性部材。
[8]熱伝導性フィラー(A)、熱膨張性材料(B)、シリコーン化合物(C1)、及び架橋剤(C2)を含有する熱伝導性熱膨張性組成物。
[9]前記熱伝導性フィラー(A)の含有量が20~99質量%、前記熱膨張性材料(B)の含有量が0.2~60質量%、かつシリコーン化合物(C1)と架橋剤(C2)の合計含有量が0.2~60質量%である上記[8]に記載の熱伝導性熱膨張性組成物。
[10]前記シリコーン化合物(C1)が、両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンであって、前記架橋剤(C2)がヒドロシリル基を2つ以上有する化合物である上記[8]又は[9]に記載の熱伝導性熱膨張性組成物。
[11]上記[8]~[10]のいずれか1項に記載の熱伝導性熱膨張性組成物を硬化してなる熱伝導性熱膨張性部材。
[12]上記[1]~[7]、及び[11]のいずれか1項に記載の熱伝導性熱膨張性部材と、バッテリーセルとを備え、前記熱伝導性熱膨張性部材が、前記バッテリーセルの周囲に配置されるバッテリーセル構造体。
[13]前記熱伝導性熱膨張性部材が、前記バッテリーセルの表面に設けられる上記[12]に記載のバッテリーセル構造体。
[14]上記[1]~[7]、及び[11]のいずれか1項に記載の熱伝導性熱膨張性部材と、複数のバッテリーセルと、前記複数のバッテリーセルを内部に収容するモジュール用筐体とを備えるバッテリーモジュールであって、
前記熱伝導性熱膨張性部材が、前記モジュール用筐体の内部、及び前記モジュール用筐体の外表面のいずれか1箇所又は複数箇所に設けられるバッテリーモジュール。
[15]上記[1]~[7]、及び[11]のいずれか1項に記載の熱伝導性熱膨張性部材と、
それぞれが前記複数のバッテリーセルと、前記複数のバッテリーセルを収容するモジュール用筐体とを備える、複数のバッテリーモジュールと、
前記複数のバッテリーモジュールを内部に収容するパック用筐体とを備えるバッテリーパックであって、
前記熱伝導性熱膨張性部材が、前記パック用筐体の内部、及び前記パック用筐体の外表面のいずれか1箇所又は複数箇所に設けられる、バッテリーパック。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バッテリーの通常作動時の放熱性を良好にしつつ、バッテリーの熱暴走時には他のバッテリーセルへの伝熱などを有効に防止することが可能な熱伝導性熱膨張性部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】放熱部が形成された熱伝導性熱膨張性部の具体例を示す斜視図である。
図2】放熱部が形成された熱伝導性熱膨張性部の具体例を示す斜視図である。
図3】バッテリーモジュールの一実施形態を示す断面図である。
図4】バッテリーモジュールの一実施形態を示す断面図である。
図5】バッテリーモジュールの一実施形態を示す断面図である。
図6】バッテリーモジュールの一実施形態を示す断面図である。
図7】バッテリーモジュールの一実施形態を示す断面図である。
図8】バッテリーパックの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。
<熱伝導性熱膨張性部材>
本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、-30℃~80℃において熱伝導率1W/m・K以上を有し、80℃を超える温度で膨張を開始し、熱膨張後の熱伝導率が0.5W/m・K以下となり、かつUL94規格においてV-1以上の難燃性を有する。
【0011】
本発明では、-30℃~80℃において高い熱伝導率を有することで、熱伝導性熱膨張性部材は、例えば、バッテリーに使用すると、バッテリーの通常作動時には放熱性に優れ、バッテリーの作動により生じた熱を良好に発散することができる。また、バッテリーに局所的に熱が発生した場合でも、その熱を様々な方向に発散して放熱することでバッテリーセルのヒートスポットによる局所劣化などを抑制することが可能となる。
また、熱伝導性熱膨張性部材は、加熱されると膨張を開始し、断熱層を形成し他のバッテリーセルへの伝熱を防止し発火の連鎖を防ぎ重大な事故につながることを防止できる。
更に、炎及び熱の流路となる空間を閉塞することもできる。また、熱伝導性熱膨張性部材自体が、V-1以上の高い難燃性を有する。そのため、例えば、1つのバッテリーセルが熱暴走しても、他のバッテリーセルへの伝熱を防止したり、そのバッテリーセルの周りの空気の流れを遮断したりすることもでき、熱や炎が広がることを防止して、バッテリーの安全性を確保する。
【0012】
一方で、-30℃~80℃における熱伝導率が1W/m・K未満となると、バッテリーの通常の作動時における放熱性が十分ではなく、バッテリーセルにヒートスポットによる局所劣化等が発生したり、異常加熱が生じたりする。また、熱膨張後の熱伝導率が0.5W/m・Kより大きくなったり、熱伝導性熱膨張性部材の難燃性がV-1未満であったりすると、バッテリーセルが熱暴走したときの安全性が十分に確保ではない。
【0013】
-30℃~80℃における熱伝導率は、通常使用時の熱伝導性をより良好にする観点から、1.5W/m・K以上が好ましく、2.0W/m・K以上がより好ましい。-30℃~80℃における熱伝導率は、高ければ高いほうがよいが、実用的には、30W/m・K以下である。
また、熱膨張後の熱伝導率は、バッテリーセル熱暴走時の安全性を高める観点から、好ましくは0.4W/m・K以下、より好ましくは0.3W/m・K以下である。また、熱膨張後の熱伝導率は、低ければ低いほうがよいが、実用的には、0.01W/m・K以上である。
熱伝導率の測定方法は、後述する実施例のとおりであるが、-30℃~80℃における熱伝導率は、例えば-30℃、80℃の両方を確認すればよい。
【0014】
また、熱伝導性熱膨張性部材は、UL94規格においてV-1以上の難燃性を有すればよいが、好ましくは、V-1又はV-0の難燃性を有すればよい。これら難燃性は、後述するように、例えば樹脂成分としてシリコーン樹脂(C)を使用することで達成することができる。また、熱伝導性熱膨張性部材は、V-0の難燃性を有することがさらに好ましい。V-0の難燃性を有することで、バッテリーなどに使用したときなどの安全性がより高められた熱伝導性熱膨張性部材を実用的に提供できる。
【0015】
熱伝導性熱膨張性部材の膨張開始温度は、80℃を超えればよいが、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。熱伝導性熱膨張性部材の膨張開始温度は、170℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。
熱伝導性熱膨張性部材の膨張開始温度をこれら下限値以上とすることで、バッテリーの通常作動時に熱伝導性熱膨張性部材が誤って膨張することを防止する。
また、熱伝導性熱膨張性部材は、膨張開始温度を上記上限値以下とすることで、比較的低温で膨張する。したがって、例えば、バッテリーの熱暴走による発火、発煙が起こる前、或いはこれらが大規模となる前に、断熱したり、炎及び熱の経路を防ぐことができ、バッテリーの安全性が高まる。なお、上記範囲内の膨張開始温度は、後述する熱膨張性黒鉛などの熱膨張性材料の膨張開始温度を調整することで達成できる。
【0016】
熱伝導性熱膨張性部材の膨張倍率(膨張後の厚み/膨張前の厚み)は、例えば1.5~40倍、好ましくは2~30倍である。膨張倍率がこれら下限値以上にすることで、加熱されたときに十分に膨張し、良好な断熱性を有する。したがって、熱伝導性熱膨張性部材は、熱膨張後に炎及び熱の経路を十分に防ぐことができる。また、上限値以下とすることで、熱膨張後でも一定の強度を有することになり、安定した防火性能を達成できる。
【0017】
本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、高い耐電圧特性を有する。高い耐電圧特性を有することにより、例えば、バッテリーセルに接するように使用されても、絶縁破壊することが防止される。熱伝導性熱膨張性部材は、具体的には、IEC-J60950-1に準拠した750V、60秒の条件下で、絶縁破壊が生じない耐電圧特性を有することが好ましい。
【0018】
本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、高い耐電解液性を有する。バッテリーセルは、例えば、ガス排出弁などから電解液が外部に漏れることがある。したがって、熱伝導性熱膨張性部材は、耐電解液性が高いことで、耐久性が良好になる。耐電解液性の指標としては、電解液に浸漬したときの熱伝導性熱膨張性部材の変化量がある。本発明では、電解液に所定時間浸漬したときの熱伝導性熱膨張性部材の変化量が、1質量%以下であることが好ましい。なお、電解液は、種々知られているが、本発明では、代表的に、EC(エチレンカーボネート)及びDEC(ジエチルカーボネート)からなる電解液(EC/DEC(体積比)=3/7)、及びDMC(ジメチルカーボネート)単体からなる電解液に対する変化量を測定して、いずれも1質量%以下となるとよい。
【0019】
熱伝導性熱膨張性部材は、特に限定されないが、熱膨張したときに断熱層を形成できるように、適度な厚さを有することが好ましい。また、熱伝導性熱膨張性部材は、シート状、液状、ブロック状、円筒状などあらゆる形状であってもよいが、シート状または液状であることが好ましい。具体的な熱伝導性熱膨張性部材の厚さは、好ましくは0.01~50mm、より好ましくは0.1~5mm、さらに好ましくは0.15~3mmである。
なお、シート状とは、単にシート単体からなるもののみならず、他の部材に積層されて層状となったもの、他の部材に塗布などによりコーティングされて薄膜状になったものも含まれる。また、液状とは流動性があればどのような粘度でも良く、押し出しにより成形されてもよいし、他の手段により適宜所定の位置に配置されてもよい。また、液状のものは、厚みは限定されず、例えば隙間空間を埋めるように配置されればよい。
【0020】
本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、熱伝導性フィラー(A)及び熱膨張性材料(B)を含有することが好ましい。熱伝導性熱膨張性部材は、これらを含有することで、熱膨張前における高い熱伝導性を確保しつつ、加熱されたときには十分に膨張し、熱膨張後の熱伝導率が低くなる。
【0021】
[熱伝導性フィラー(A)]
熱伝導性フィラー(A)は、熱伝導性熱膨張性部材の熱伝導率を向上させる機能を有するものであれば特に限定されない。熱伝導性フィラー(A)の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化珪素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)、タルク、グラファイト、グラフェン、アセチレンブラック、ケッチンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)などの炭素系材料、及び、アルミニウム、銅、銀、チタン、ニッケル、スズ、金などの金属等が挙げられ、フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。熱伝導性フィラー(A)の形状は、特に限定されず、粒子状、繊維状、りん片状などのいかなる形態でもよい。また、ナノレベルの大きさでも良い。
熱伝導性フィラー(A)としては、上記した中では、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭素系材料などが好ましく、アルミナが特に好ましい。
【0022】
熱伝導性フィラー(A)の熱伝導率は、1W/m・K以上が好ましく、5W/m・K以上がより好ましく、10W/m・K以上がさらに好ましく、20W/m・K以上がよりさらに好ましい。熱伝導率が上記下限値以上であれば、熱伝導性熱膨張性部材の熱伝導率が十分に高いものになる。また、熱伝導率は、その上限は特に限定されないが、実用的には5500W/m・K以下である。なお、熱伝導性フィラーの熱伝導率は、定常法により測定されるものである。
熱伝導性フィラー(A)の平均粒径は、熱伝導性若しくは導電性、成形性、加工性、又は力学的物性等の点から、0.001~3000μmであることが好ましく、0.01~300μmであることがより好ましく、0.1~100μmがさらに好ましい。
なお本明細書において、平均粒径は、メジアン径(d50)であり、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(HELOS BFM, Sympatec GmbH社製)により測定した5回の平均値として算出されるものである。
【0023】
熱伝導性フィラー(A)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して200~10000質量部が好ましく、400~5000質量部がより好ましく、800~2000質量部がさらに好ましい。
また、熱伝導性熱膨張性部材における熱伝導性フィラー(A)の含有量は、熱伝導性熱膨張性部材全量に対する割合では、例えば20~99質量%、好ましくは25~95質量%、より好ましくは50~92質量%、さらに好ましくは70~90質量%である。
熱伝導性フィラー(A)の含有量が上記範囲内であれば、熱伝導性熱膨張性部材に熱伝導性フィラーを十分に分散させつつ、十分な熱伝導性を付与することができる。
【0024】
[熱膨張性材料(B)]
熱膨張性材料(B)は、加熱されることにより、固体、液体などから気体への相変化、又は気体の発生などが生じて、容積が増加する材料である。熱膨張性材料(B)は、所定の温度以上に加熱された際、膨張することで断熱層を形成する。また、熱膨張性材料(B)は、熱伝導性フィラー(A)の熱伝導パスを分断し熱伝導性を低下させる。
熱膨張性材料(B)の膨張開始温度は、熱伝導性熱膨張性部材の膨張開始温度に応じて設定すればよい。熱膨張性材料(B)の膨張開始温度は、80℃を超えればよいが、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましい。また、170℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
【0025】
熱膨張性材料(B)としては、熱膨張性層状無機物、無機塩を使用することが好ましい。熱膨張性材料(B)としてこれら無機物を使用することで、長期保管特性が良好となる。また、熱伝導性熱膨張性部材内でガスが発生するため、膨張倍率が高くなり、熱膨張後の熱伝導率を十分に低くできる。
【0026】
熱膨張性層状無機物としては、特に限定されないが、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などが挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性層状無機物としては、粒子状やりん片状のものを用いてもよい。
熱膨張性黒鉛とは、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、無機酸と、強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。無機酸としては濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。強酸化剤としては濃硝酸、過硫酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和処理してもよい。
【0027】
また、熱膨張性材料(B)に使用される無機塩としてはカルシウム系の無機塩が挙げられる。カルシウム系の無機塩としては、硝酸カルシウム水和物である。また、カルシウム系の無機塩以外でも、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、バナジン酸(V)アンモニウム、炭酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ、ヘキサカルボニルモリブデン等が使用できるが、これらの中では、カルシウム系の無機塩が好ましい。
【0028】
熱膨張性材料としては、上記した中では、熱膨張性層状無機物、カルシウム系の無機塩を使用することが好ましく、中でも熱膨張性黒鉛がより好ましい。熱膨張性材料(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
熱伝導性熱膨張性部材中の熱膨張性材料(B)の含有量は、必要とされる膨張倍率に応じて適宜設定できる。熱膨張性材料(B)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、通常0.5~200質量部であり、1~100質量部が好ましく、5~80質量部がより好ましい。
また、熱伝導性熱膨張性部材における熱膨張性材料(B)の含有量は、熱伝導性熱膨張性部材全量に対する割合では、例えば、0.2~60質量%、好ましくは0.3~25質量%、より好ましくは0.5~15質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。
【0030】
[シリコーン樹脂(C)]
本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、上記熱伝導性フィラー(A)及び熱膨張性材料(B)を樹脂成分により結着させて構成される。本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、樹脂成分として、シリコーン樹脂(C)を含有することが好ましい。シリコーン樹脂(C)を樹脂成分として使用することで、熱伝導性熱膨張性部材は、上記した難燃性、耐電圧性、及び耐電解液性を達成しやすくなる。また、膨張前の熱伝導率も高くしやすくなる。さらには、弾性率を高くして、熱膨張性材料から発生したガスが抜けにくくなるため、発泡倍率を高くして、膨張後の熱伝導率を十分に低くできる。
シリコーン樹脂は、縮合硬化型シリコーン樹脂、付加反応硬化型シリコーン樹脂のいずれでもよいが、付加反応硬化型シリコーン樹脂が好ましい。
シリコーン樹脂(C)の含有量は、熱伝導性熱膨張性部材全量に対して、例えば0.2~60質量%、好ましくは4~50質量%、より好ましくは5~35質量%、さらに好ましくは7~25質量%である。
下限値以上とすることで、成形性が良好となり、また、熱膨張性材料から発生したガスが抜けにくくなる。上限値以下とすることで、熱伝導性フィラー(A)及び熱膨張性材料(B)の含有量を多くできる。
【0031】
シリコーン樹脂(C)は、シリコーン化合物(C1)を架橋剤(C2)により架橋させて硬化させたものが好ましい。シリコーン化合物(C1)としては、アルケニル基を2つ以上有するオルガノポリシロキサンを使用する。アルケニル基を2つ以上有するオルガノポリシロキサンは、ビニル基を2つ以上有するオルガノポリシロキサンであることが好ましく、両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、ビニル両末端ポリジメチルシロキサン、ビニル両末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニル両末端ジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、ビニル両末端ジメチルシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマー、ビニル両末端ジメチルシロキサン-ジエチルシロキサンコポリマーなどが挙げられ、これらの中では、ビニル両末端ポリジメチルシロキサンが好ましい。
アルケニル基を2つ以上有するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、4000~50000が好ましく、7500~25000がより好ましい。重量平均分子量を下限値以上とすることで、熱伝導性熱膨張性部材の弾性率などを高めやすくなる。弾性率が高くなることで、熱膨張性材料により発生したガスが外部に放出しにくくなり、熱膨張後の熱伝導率が十分に低くなる。また、上限値以下とすることで、成形性、加工性などが良好となる。なお、重量平均分子量は、GPCにより測定してポリスチレン換算の値である。
シリコーン化合物(C1)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
架橋剤(C2)としては、上記したシリコーン化合物(C1)を架橋できるものであれば限定されないが、ヒドロシリル基(SiH)を2つ以上有する化合物が挙げられ、中でもヒドロシリル基を2つ以上有するポリオルガノシロキサン(以下、「ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン」ともいう)が好ましい。ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンは、シリコーン樹脂に網目構造を形成して弾性率を高めるために、ヒドロシリル基を3つ以上有することが好ましい。
ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルヒドロシロキサン、ポリエチルヒドロシロキサン、メチルヒドロシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマーなどが挙げられる。これらは、末端にヒドロシリル基を含有していてもよいが、含有していなくてもよく、例えば、両末端がトリメチルシリル基、トリエチルシリル基などによって封鎖されてもよい。
ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、好ましくは800~5000、より好ましくは1500~4000である。
架橋剤(C2)の配合量は、シリコーン化合物(C1)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~7質量部、さらに好ましくは0.3~3質量部である。
架橋剤(C2)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
[硬化触媒(D)]
樹脂成分としてシリコーン樹脂(C)が使用される場合、熱伝導性熱膨張性部材には、通常、硬化触媒(D)が配合される。硬化触媒(D)としては、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。硬化触媒は、シリコーン樹脂の原料となるシリコーン化合物(C1)及び架橋剤(C2)を硬化させる触媒である。硬化触媒(D)の配合量は、シリコーン樹脂(C)(すなわち、(C1)および(C2)成分の合計質量)に対して通常0.1~200ppm、好ましくは0.5~100ppmである。
【0034】
[反応抑制剤(E)]
また、樹脂成分として上記したシリコーン樹脂(C)が使用される場合、熱伝導性熱膨張性部材には、反応抑制剤(E)が配合されることが好ましい。反応抑制剤(E)は、室温下での硬化を抑制し、かつ加熱下での硬化を可能とするものである。
反応抑制剤(E)としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール等のアルキンアルコール、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾールなどが例示される。反応抑制剤(E)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
反応抑制剤(E)の熱伝導性熱膨張性部材における配合量は、シリコーン樹脂(C)(すなわち、(C1)および(C2)成分の合計量)100質量部に対して例えば0.001~10質量部、好ましくは0.01~3質量部である。
【0035】
[その他の添加剤(F)]
本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて上記以外の添加剤(「その他の添加剤(F)」ともいう)を含有してもよい。その他の添加剤(F)は、特に限定されず、例えば、滑剤、収縮防止剤、気泡核剤、結晶核剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、消泡剤、上記熱伝導性フィラー及び熱膨張性材料以外の充填剤、補強剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、界面活性剤、及び表面処理剤等が挙げられる。添加剤の添加量は、熱膨張性材料の膨張等を損なわない範囲で適宜選択できる。これら添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
なお、上記添加剤のうち、難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物の他に、デカブロモジフェニルエーテル等の臭素系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステル等のリン系難燃剤等が挙げられる。また、難燃助剤は、難燃剤と併用して使用するとよい。そのような難燃助剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ナトリウム、三塩化アンチモン、三硫化アンチモン、オキシ塩化アンチモン、二塩化アンチモンパークロロペンタン、アンチモン酸カリウム等のアンチモン化合物、メタホウ酸亜鉛、四ホウ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、塩基ホウ酸亜鉛等のホウ素化合物、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物、モリブデン酸化物等が挙げられる。
ただし、本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、難燃剤を含有しなくても、上記したシリコーン樹脂(C)及び硬化触媒(D)を使用することにより、上記したV-1以上の難燃性を有することが可能になる。
【0037】
<熱伝導性熱膨張性組成物>
本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、上記したとおり、熱伝導性フィラー(A)、熱膨張性粒子(B)、及びシリコーン樹脂(C)を含み、シリコーン樹脂(C)が、上記したシリコーン化合物(C1)を架橋剤(C2)によって架橋させて硬化させたものが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一実施形態における熱伝導性熱膨張性部材は、シリコーン樹脂組成物からなる熱伝導性熱膨張性組成物を硬化させてなるものである。
【0038】
熱伝導性熱膨張性組成物(シリコーン樹脂組成物)は、上記した熱伝導性フィラー(A)、熱膨張性粒子(B)、シリコーン化合物(C1)及び架橋剤(C2)を含む。
また、熱伝導性熱膨張性組成物は、上記したとおり、通常、硬化触媒(D)を含み、また、硬化触媒(D)及び反応抑制剤(E)の両方を含むことがより好ましい。また、熱伝導性熱膨張性組成物は、必要に応じて上記したその他の添加剤(F)を含有してもよい。
【0039】
熱伝導性熱膨張性組成物における各成分の含有量は、上記した熱伝導性熱膨張性部材における各成分の含有量、及び配合量と同じである。なお、シリコーン化合物(C1)及び架橋剤(C2)は、硬化して熱伝導性熱膨張性部材においてシリコーン樹脂(C)となるものであり、シリコーン化合物(C1)及び架橋剤(C2)の合計含有量は、上記したシリコーン樹脂の含有量の規定と同じである。
【0040】
したがって、熱伝導性熱膨張性組成物において、熱伝導性フィラー(A)の含有量は、熱伝導性熱膨張性組成物全量に対して、例えば20~99質量%、好ましくは25~95質量%、より好ましくは50~92質量%、さらに好ましくは70~90質量%である。熱膨張性材料(B)の含有量は、例えば、0.2~60質量%、好ましくは0.3~25質量%、より好ましくは0.5~15質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。シリコーン化合物(C1)及び架橋剤(C2)の合計含有量は、熱伝導性熱膨張性組成物全量に対して、例えば0.2~60質量%、好ましくは4~50質量%、より好ましくは5~35質量%、さらに好ましくは7~25質量%である。
【0041】
(熱伝導性熱膨張部材の製造方法)
本発明の熱伝導性熱膨張部材は、熱伝導性熱膨張性組成物を所望の形状となるように調製したうえで、適宜硬化することで製造することが可能である。また、未硬化で供給することも可能である。
例えば、熱伝導性熱膨張性組成物を剥離紙などの上に塗布などし、その後、加熱プレスすることによってシート状の熱伝導性熱膨張部材を得ることができる。また、所望の形状の型の内部に熱伝導性熱膨張性組成物を充填して、硬化することで、所望の形状の熱伝導性熱膨張部材を製造できる。さらに、熱伝導性熱膨張性部材は、例えば、熱伝導性熱膨張性組成物をバッテリーセルなどに塗布などによりコーティングし、硬化させることで得てもよい。
また、熱伝導性熱膨張性組成物は、上記の各成分を単軸押出機、二軸押出機、射出成型機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機、カレンダー成形装置、自転ミキサー、公転ミキサー等の公知の混合装置を用いて混練して得ることができる。
【0042】
(放熱部)
本発明では、図1、2に示すように、熱伝導性熱膨張性部材4は、少なくとも一面に、放熱部が設けられてもよい。熱伝導性膨張部材は、放熱部が設けられると、表面積が増大するため、熱伝導性熱膨張性部材の放熱性が向上する。
放熱部としては、図1(A)に示すように、熱伝導性熱膨張性部材4の一面に形成された複数の凹部20で構成されてもよいし、図1(B)に示すように、複数の凸部21で構成されてもよいし、図1(C)に示すように、複数の凹部20と凸部21の組み合わせにより構成されてもよい。なお、図1では、凹部20及び凸部21は半円球形であるが、この形状に限定されない。また、図1(C)において、凹部20及び凸部21は交互に配置されるが、他の配置であってもよい。
【0043】
また、凸部は、例えば、図2(A)に示すように、フィン21Aであってもよいし、図2(B)に示すようにリブ21Bであってもよい。ここで、フィン21Aは、板形状を有し、その板形状のフィン21Aが複数並べられて放熱部を構成する。複数のフィン21Aは、例えば所定の一方向に沿って並べられており、互いに平行となることが好ましい。
また、リブ21Bは、図2(B)に示すように、熱伝導性熱膨張性部材4の表面において延在しており、複数のリブ21Bが一方向に複数並べられて放熱部を構成する。複数のリブ21は、互いに平行であることが好ましい。リブ21Bは、図2(B)において、断面が略三角形であるが、断面の形状は、三角形に限定されず、三角形の角が取れた形状や、半円形であってもよい。
【0044】
放熱部を構成する凸部は、熱伝導性熱膨張性部材と同じ材料により構成され、熱伝導性熱膨張性部材と一体的に形成されるとよい。放熱部を構成する凹部又は凸部を形成する方法は、特に限定されないが、型によって形成すればよい。具体的には、熱伝導性熱膨張性部材を成形するための型に、凹部又は凸部に対応した凸部又は凹部を設けて、その型に熱伝導性熱膨張性組成物を充填して成形するとよい。
熱伝導性熱膨張性部材4は、後述するように、例えばバッテリーセル3の表面に配置されるが、図1,2に示すように、放熱部(すなわち、凸部及び凹部)は、バッテリーセル3に重ね合わされる面とは、反対側の面に設けられるとよい。したがって、シート状の熱伝導性熱膨張性部材4においては、一方の面がバッテリーセル3に重ね合わされ、他方の面に放熱部が設けられればよい。
また、熱伝導性熱膨張性部材は、放熱部以外にも、放熱放射を高める処理を適宜行ってもよい。すなわち、放射性の高い材料を配置またはコーティングしても良い。
【0045】
<熱伝導性熱膨張性部材の使用方法>
本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、例えば、バッテリーに使用される。バッテリーとしては、リチウムイオン電池、全固体リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル・水素電池、リチウム・硫黄電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・鉄電池、ニッケル・亜鉛電池、ナトリウム・硫黄電池、鉛蓄電池、空気電池等の二次電池が挙げられ、中でもリチウムイオン電池が好ましい。
【0046】
バッテリーは、通常、バッテリーセルを有する。リチウムイオン電池は、セルの形状により、円筒型、角型、及びラミネート型に分類される。バッテリーセルが円筒型の場合、バッテリーセルは、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、ガス排出弁、ガスケット、正極キャップ等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。
バッテリーセルが角型の場合、バッテリーセルは、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、ガス排出弁等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。
バッテリーセルがラミネート型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、等が外装フィルムに収容されているバッテリーの構成単位を指す。外装フィルムとしては例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されたアルミニウムフィルム等が挙げられる。
【0047】
バッテリーにおいて、バッテリーセルは、一般的にバッテリーモジュールを構成する。本明細書において、「バッテリーモジュール」とは複数のバッテリーセルをモジュール用筐体に収容したバッテリーの構成単位を指す。また、複数のバッテリーモジュールは、バッテリーパックを構成してもよい。なお、本明細書において「バッテリーパック」とは複数のバッテリーモジュールをパック用筐体に収容したものを指す。
【0048】
本発明の熱伝導性熱膨張性部材は、例えば、バッテリーセルの周囲に配置されればよい。熱伝導性熱膨張性部材は、バッテリーセルの表面上に配置されることが好ましいが、表面と離間して配置されてもよい。熱伝導性熱膨張性部材は、シート状である場合には、その一方の面がバッテリーセルの表面上に重ねられるように配置されるとよい。
なお、本明細書では、このように、バッテリーセルと、バッテリーセルの周囲に配置される熱伝導性熱膨張性部材とを備えるものをバッテリーセル構造体ともいう。
【0049】
熱伝導性熱膨張性部材のバッテリーセルの表面への配置方法は特に限定されないが、例えば、予めシート状などに成形した熱伝導性熱膨張性部材を貼付などしてバッテリーセルの表面に配置すればよい。熱伝導性熱膨張性部材をバッテリーセルに貼付するとき、熱伝導性熱膨張性部材又はバッテリーセルの貼り付け面に、粘着剤層を設けてもよいし、接着剤などを塗布してもよい。また、熱伝導性熱膨張性部材は、他の固定手段によってバッテリーセルに固定させてもよい。また、熱伝導性熱膨張性部材が自着性を有する場合などには、粘着剤、接着剤などを使用せずにバッテリーセルに貼り付けてもよい。
【0050】
また、熱伝導性熱膨張部材は、バッテリーセルの表面に枠などを配置して、枠内に、上記した熱伝導性熱膨張性組成物を充填して、その組成物を硬化することで、バッテリーセルの表面に配置させてもよい。また、熱伝導性熱膨張部材は、熱伝導性熱膨張性組成物をバッテリーセルの表面に塗布などしてその後硬化して、バッテリーセルの表面に配置させてもよい。
また、熱伝導性熱膨張性部材は、バッテリーセルの少なくとも一面に設けられればよいし、二面以上に設けられてもよいし、全ての面に設けられてもよい。例えば、熱伝導性熱膨張性組成物が、バッテリーセルの表面に塗布などされて、熱伝導性熱膨張性部材が形成される場合、熱伝導性熱膨張性部材(すなわち、バッテリー表面層)はバッテリーの全ての面に設けられるとよい。勿論、バッテリー表面層は、バッテリーセルの全ての面に設けられなくてもよい。
【0051】
本発明では、熱伝導性熱膨張性部材は、加熱する前においては、熱伝導率が高く、優れた放熱性を有する。したがって、バッテリーの通常作動時には、放熱材として機能し、バッテリーで発生した熱をバッテリーセルの外部に逃がして、バッテリーセルが過加熱されることを防止する。一方で、バッテリーセルが熱暴走して異常高温になったりした場合には、熱伝導性熱膨張性部材は、熱膨張して熱伝導率が低くなり断熱層を構成する。さらには、熱伝導性熱膨張性部材自体も難燃性を有する。したがって、バッテリーセルで生じた発火や発熱が、他の部材や、隣接する他のバッテリーセルに連鎖することを防止する。
【0052】
(バッテリーモジュール)
バッテリーにおいてバッテリーセルは、一般的に複数個設けられ、その複数個のバッテリーセルはモジュール用筐体内に収容され、バッテリーモジュールを構成する。バッテリーモジュールにおいて、モジュール用筐体の内部には、バッテリーセルの他に、バッテリーセルと電気的に接続される電気接続ケーブル等必要な部材や冷却のための構造体(冷却板や管など)が必要に応じて収容される。
熱伝導性熱膨張性部材がバッテリーモジュールに設けられる場合、熱伝導性熱膨張性部材は、例えば、モジュール用筐体の内部に配置される。具体的には、バッテリーセルとバッテリーセルとの間、バッテリーセルと上記モジュール用筐体との間の空間などの1箇所又は2箇所以上に設けられるとよいが、バッテリーセルの表面に配置されることが好ましい。また、熱伝導性熱膨張性部材は、バッテリーセルとバッテリーセルの間に配置されることも好ましい。なお、バッテリーセルとバッテリーセルとの間などの空間には、熱伝導性熱膨張性部材で満たす場合もあり、空間を空ける場合もある。
【0053】
以下、熱伝導性熱膨張性部材が設けられるバッテリーモジュールの一実施形態について、図3を用いてより詳細に説明する。ただし、以下のバッテリーモジュールの各実施形態は、例示であり限定されない。図3に示すように、バッテリーモジュール1は、モジュール用筐体2と、モジュール用筐体2内部に収容される複数(図3では3個を図示)のバッテリーセル3とを備える。モジュール用筐体2は例えば金属製又は樹脂成型品の筐体であるが、これに限定されない。また、図3では、バッテリーセル3は、角型を模式的に四角で示したものであるが、これに限定されず、勿論、ラミネート型、円筒型であってもよい。更にバッテリーモジュールやバッテリーパックに冷却機構を備えたものであっても良い。
バッテリーセル3は、モジュール用筐体2内部において、互いに離間しつつ、一方向に沿って並べられ、バッテリーセル3、3の間に、熱伝導性熱膨張性部材4が配置される。
【0054】
各熱伝導性熱膨張性部材4は、バッテリーセル3の互いに対向する表面3A、3Bの一方に配置される。なお、表面3Aは、同じ方向を向くバッテリーセル3の一面である。また、表面3Bは、表面3Bの反対側の面であり、表面3Aとは反対側を向く。図3では、熱伝導性熱膨張性部材4は、バッテリーセル3の表面3A上に設けられる。各熱伝導性熱膨張性部材4は、上記のように例えばシート状であり、その一方の面がバッテリーセル3の各表面3Aに重ね合わさればよい。なお、シート状の熱伝導性熱膨張性部材4は、上記のように予めシート状に成形したものをバッテリーセル3の表面3A上に配置してもよいがバッテリーセル3上に、塗布などによりコーティングして形成してもよいし、上記のように型を用いて成形してもよい。
【0055】
バッテリーモジュール1において、バッテリーセル3の周囲には、モジュール用筐体2との間に空間5が設けられ、また、バッテリーセル3とそのバッテリーセル3に隣り合う熱伝導性熱膨張性部材4との間にも空間6が設けられる。これらの空間5,6はバッテリーセル3の放熱のための空気の通路として作用する。また、熱伝導性熱膨張性部材4は、高い放熱性を有する。したがって、通常作動時においてバッテリーセル3で発生した熱は、熱伝導性熱膨張性部材4を介して、空間5、6に放出され、バッテリーモジュール1の外部に素早く放熱される。
【0056】
また、バッテリーセル3の異常発熱等により、熱伝導性熱膨張性材4が加熱されると、熱伝導性熱膨張性材4は膨張する。ここで、熱伝導性熱膨張性材4は、難燃性であるため、膨張した熱伝導性熱膨張性材4は、燃焼することなく、断熱性を発現し熱及び火の流路となる空間を遮蔽する。したがって、1つのバッテリーセル3における異常加熱や発火が、隣接する他のバッテリーセル3などに連鎖することが防止される。特に、図3に示す構成では、隣接するバッテリーセル3、3間に熱伝導性熱膨張性材4が設けられるので、異常発熱や発火の連鎖が有効に防止される。
【0057】
勿論、熱伝導性熱膨張性部材4は、各バッテリーセル3の一面に設けられる構成に限られず、図4に示すように、バッテリーセル3の2面に設けられてもよいし、2面以上に設けられてもよく、バッテリーセル3の全ての面に設けられてもよい。
2面以上に設けられる場合、熱伝導性熱膨張性部材4は、図4に示すように、少なくとも、表面3Aとその表面3Aの反対側の面である表面3Bに設けられるとよい。したがって、図4に示すように、バッテリーセル3と熱伝導性熱膨張性部材4は、一方向に沿って並べられるが、隣り合うバッテリーセル3、3の間には、2つの熱伝導性熱膨張性部材4、4が設けられる。
このように、各バッテリーセル3の2面以上に熱伝導性熱膨張性部材4が設けられることで、放熱性が高められる。また、隣り合うバッテリーセル3、3の間に2つの熱伝導性熱膨張性部材4、4が設けられることで、あるバッテリーセルで異常高温や発火が生じた場合でも、その異常高温又は発火を隣接するバッテリーセルに連鎖することをより効果的に防止できる。
【0058】
また、熱伝導性熱膨張性部材4は、バッテリーセル3の表面以外の箇所に設けられてもよい。例えば、図5に示すように、モジュール用筐体2の内表面に設けられてもよい。また、熱伝導性熱膨張性部材4は、モジュール用筐体2の外側に配置されてもよく、例えば図6に示すように、モジュール用筐体2の外表面に設けられてもよい。
なお、図5、6の構成では、モジュール用筐体2の内表面、外表面以外にも、バッテリーセル3、3の間にも熱伝導性熱膨張性部材4が設けられるが、バッテリーセル3、3間の熱伝導性熱膨張性部材4は適宜省略されてもよい。
【0059】
また、上記で説明した各バッテリーモジュール1では、一方向に沿って並べられるバッテリーセル3、及び熱伝導性熱膨張性部材4においては、熱伝導性熱膨張性部材4、4の間、或いは、バッテリーセル3と熱伝導性熱膨張性部材4の間に空間6が設けられていたが、図7に示すように、空間6が設けられなくてもよい。具体的には、バッテリーセル3と熱伝導性熱膨張性部材4が交互に積層されるような構成を有していてもよい。
【0060】
(バッテリーパック)
バッテリーパックは、上記した複数のバッテリーモジュールと、複数のバッテリーモジュールを内部に収容するパック用筐体を備える。バッテリーパックにおいては、パック用筐体内部には、バッテリーモジュールの他に、電気接続ケーブルや冷却機構などの必要な部材が収容されていてもよい。
バッテリーパックにおいて、熱伝導性熱膨張性部材は、例えば、パック用筐体の内部に設けられるとよい。具体的には、熱伝導性熱膨張性部材は、バッテリーセルとバッテリーセルの間の空間、バッテリーセルとモジュール用筐体の間の空間、バッテリーモジュールとバッテリーモジュールの間の空間、バッテリーモジュールとパック用筐体の間の空間などの1箇所又は複数箇所に設けられるとよい。
【0061】
次に、熱伝導性熱膨張性部材が設けられるバッテリーパックの一実施形態について、図8用いてより詳細に説明する。
図8に示すように、バッテリーパック10は、パック用筐体11内部にバッテリーモジュール1を複数有する。バッテリーモジュール1は、モジュール用筐体2と、その内部に収容された複数のバッテリーセル3を備える。バッテリーモジュール1は、上記実施形態で説明したとおりに、熱伝導性熱膨張性部材4が配置される。なお、図8の構成では、モジュール用筐体2の内部において、熱伝導性熱膨張性部材4は、図3の構成と同様に配置されるが、勿論、他の態様と同様に配置されてもよい。
【0062】
複数のバッテリーモジュール1は、パック用筐体11内部において、例えば一方向に沿って並べられる。バッテリーパック10では、図8に示すように、2つの隣り合うバッテリーモジュール1、1の間の空間に熱伝導性熱膨張性材4が配置されるとよい。バッテリーモジュール1、1の間の熱伝導性熱膨張性材4は、モジュール用筐体2の表面上に配置されてもよいが、図8に示すように、いずれのモジュール用筐体2、2から離間して配置されてもよい。
【0063】
以上のバッテリーパック10の実施形態でも、バッテリーモジュール1のモジュール用筐体2の内部に上記したように熱伝導性熱膨張性部材4が設けられることで、バッテリーセル3で発生した熱が、熱伝導性熱膨張性部材4を介して、空間5、6に放出され、バッテリーモジュール1の外部に素早く放熱できる。また、異常加熱や発火が連鎖することも有効に防止される。
さらに、本実施形態では、バッテリーモジュール1、1間にも、熱伝導性熱膨張性材4が設けられたことで、バッテリーモジュール1の通常の動作により発生した熱は、より一層外部に放出されやすくなる。また、1つのバッテリーモジュール1で発生した異常加熱や火災が、隣接する他のバッテリーモジュール1に連鎖するのも防止される。
【0064】
勿論、バッテリーパックは、以上の構成に限定されない。例えば、バッテリーモジュール1と、パック用筐体11の間に、熱伝導性熱膨張性材4が設けられてもよく、その場合、熱伝導性熱膨張性材4は、例えば、パック用筐体11の内表面上に設けられてもよい。また、熱伝導性熱膨張性材4は、バック用筐体11の外側に設けられてもよく、例えば、バック用筐体11の外表面上に設けられてもよい。
【0065】
また、以上のバッテリーセル、バッテリーモジュールの具体例において、熱伝導性熱膨張性部材が、シート状である構成を中心に説明したが、熱伝導性熱膨張性部材はシート状に限定されず、流動性を持った状態でも問題ない。例えば、バッテリーセルが、角型、円筒型などの場合には、熱伝導性熱膨張性部材は、円筒形、断面四角枠状の筒形などであってもよい。これら筒状の熱伝導性熱膨張性部材を使用する場合、バッテリーセルは、熱伝導性熱膨張性部材の内部に挿入すればよい。
【実施例
【0066】
以下に本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
なお、熱伝導性熱膨張性部材の各種物性の測定方法は以下の通りである。
(膨張開始温度、膨張倍率)
ホットプレートを用いて、熱伝導性熱膨張性部材を室温(23℃)から30℃/分で昇温し膨張開始を目視で見て、膨張開始温度を測定した。その後、熱伝導性熱膨張性部材を、さらに、30℃/分加熱しながら、最大膨張寸法を目視測定して膨張倍率(膨張後の厚み/膨張前の厚み)を算出した。
(熱伝導率)
熱伝導性熱膨張性部材の熱伝導率は、レーザーフラッシュ式熱伝導率測定装置(ネッチ社製、LFA467)を用いて測定した。測定は80℃、及び、-30℃の両方の条件で行った。膨張後の熱伝導率は、30℃/分で昇温して膨張させ、膨張が終了した時点で測定した。また、実施例、比較例では、熱伝導性熱膨張性部材の厚さ方向の熱伝導率を測定した。
【0068】
(難燃性)
熱伝導性熱膨張性部材をUL94規格に従って難燃性を評価した。
(耐電圧特性)
熱伝導性熱膨張性部材について、IEC-J60950-1に準拠して750V、60秒の条件で、絶縁破壊が生じているか否かで評価した。絶縁破壊が生じなかったものをOK,絶縁破壊が生じたものをNGとした。
(耐電解液性)
熱伝導性熱膨張性部材を、EC(エチレンカーボネート)及びDEC(ジエチルカーボネート)からなる電解液(EC/DEC(体積比)=3/7)、DMC(ジメチルカーボネート)からなる電解液に、25℃で24時間浸漬して、変化量を評価した。変化量は、浸漬前の熱伝導性熱膨張性部材の重量(X)、浸漬後の熱伝導性熱膨張性部材の重量(Y)を測定して、以下の式により算出した。
(X-Y)/X×100
【0069】
実施例、比較例で使用する各成分は以下の通りである。
(熱伝導性フィラー(A))
アルミナフィラー(1):商品名「AS-400」、昭和電工株式会社製、平均粒径(d50):13μm、熱伝導率:34W/m・K
アルミナフィラー(2):商品名「AO-502」、アドマテックス製、平均粒径:0.7μm、熱伝導率:32 W/m・K
(熱膨張性材料(B))
熱膨張性黒鉛(1):商品名「EXP-50S120」、富士黒鉛工業株式会社製、膨張開始温度120℃
熱膨張性黒鉛(2):商品名「EXP-50S150L」、富士黒鉛工業株式会社製、膨張開始温度150℃
(シリコーン化合物(C1))
シリコーン化合物(1):商品名「DMS-V22」、Gelest社製、重量平均分子量:9400、ビニル両末端ポリジメチルシロキサン
シリコーン化合物(2):商品名「DMS-V25」、Gelest社製、重量平均分子量:17200、ビニル両末端ポリジメチルシロキサン
(架橋剤(C2))
架橋剤:商品名「HMS-301」、Gelest社製、両末端トリメチルシリル基封鎖メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、Hオイル、重量平均分子量:1900~2000
(成分(D),(E))
触媒:Karstedt触媒、白金系触媒、和光純薬株式会社製
反応抑制剤:3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、和光純薬株式会社製
(その他)
オレフィンポリマー(1):商品名「X-4010M」、三井化学株式会社製
オレフィンポリマー(2):商品名「PW-380」、出光興産株式会社製
【0070】
[実施例1~3、比較例1]
表1に記載の成分を混練ロールで混練し、得られた組成物を離型紙上に0.5mm厚で塗布し、100℃2時間加熱して硬化させ、0.5mm厚のシート状の熱伝導性熱膨張性部材を得た。
【0071】
【表1】
【0072】
以上の実施例の熱伝導性熱膨張性部材は、膨張前熱伝導率、及び膨張後熱伝導率のいずれもが所定の値になり、かつV-1以上の難燃性を有していた。そのため、バッテリーに使用すると、通常時には放熱性に優れ、かつバッテリーセルが異常高温となった場合には、発火や発煙などが連鎖的に広がることを防止できる。
【符号の説明】
【0073】
1 バッテリーモジュール
2 モジュール用筐体
3 バッテリーパック
3A,3B 表面
4 熱伝導性熱膨張性部材
5、6 空間
10 バッテリーパック
11 パック用筐体
20 凹部
21 凸部
21A フィン(凸部)
21B リブ(凸部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8