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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/06 20060101AFI20220809BHJP
   B43K 8/04 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
B43K8/06
B43K8/04 100
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018088513
(22)【出願日】2018-05-02
(65)【公開番号】P2019193988
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】坂元 大介
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-058383(JP,U)
【文献】特開2000-190683(JP,A)
【文献】特開2000-238488(JP,A)
【文献】実開平07-035082(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 8/06
B43K 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン体と、前記ペン体が前端部に前後方向に移動可能に保持される前軸と、前記前軸が前端部に螺合され且つ内部にインキ貯溜部を有する後軸と、前記後軸の前端開口部に配置され且つ前記ペン体を後方に押圧することにより開口する弁装置と、前記前軸の内面に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体と、を備えた筆記具であって、前記前軸内面に前記インキ吸収体の外面が圧接保持される吸収体保持部が形成され、前記吸収体保持部は、微細な凹凸からなる梨地面と、該梨地面より径方向内方に突出する突部と、を有し、前記インキ吸収体が前記吸収体保持部に取り付けられた状態において、前記インキ吸収体の外面が前記梨地面及び前記突部に圧接されることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記突部は、前記吸収体保持部の軸方向に延びる複数本の縦リブである請求項1記載の筆記具。
【請求項3】
前記梨地面は、少なくとも前記縦リブの後方に設けられる請求項2記載の筆記具。
【請求項4】
前記縦リブの後端部は、前記吸収体保持部の前端部より、前記吸収体保持部の軸方向長手寸法の全長の5/10以上9/10以下の位置に設けられる請求項2又は3に記載の筆記具。
【請求項5】
前記突部は、前記吸収体保持部より径方向内方に突出する環状突起である請求項1記載の筆記具。
【請求項6】
前記梨地面は、少なくとも前記環状突起の後方に設けられる請求項5記載の筆記具。
【請求項7】
前記環状突起は、前記吸収体保持部の前端部より、前記吸収体保持部の軸方向長手寸法の全長の5/10以上9/10以下の位置に設けられる請求項5又は6に記載の筆記具。
【請求項8】
前記インキ吸収体は、前記前軸内の前記吸収体保持部の梨地面及び突部に圧接保持された状態において、前記前軸内の前記吸収体保持部の梨地面及び突部により、径方向に圧縮状態にされる請求項1乃至7のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項9】
前記突部の表面は、微細な凹凸からなる梨地面である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。詳細には、ペン体を後方に押圧することにより弁装置を開口させ、インキ貯溜部内のインキをペン体に供給するタイプの筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、インキ室を有する筆記具本体と、該筆記具本体の先端に設けられる保持部を有する先軸と、該先軸内に嵌入されるインキ保持体と、前記インキ室開口部に装備される弁機構部と、該弁機構部を介して外方に突出すると共に、前記先軸内の保持部及びインキ保持体に挿入保持されたペン芯とを備え、前記インキ保持体でインキを保持する筆記具のインキ保持装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、前軸内部にはインキを貯溜するための筒状の多孔質弾性体が配置せられており、筆記先端部を押圧操作することにより弁体を作動させ、インキ収納室より筆記先端部にインキを供給するようにした液体筆記具において、前記多孔質弾性体が配置せられる前軸内壁面に該多孔質弾性体の外周面に若干食い込むことにより、該多孔質弾性体を支持固定するための固定部を設けてなる液式筆記具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第2594990号公報
【文献】実公平2-2630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の筆記具は、スポンジ等からなるインキ保持体(本願のインキ吸収体に相当)を先軸内に取り付ける際、インキ保持体と先軸の内面との不安定な接触により、インキ保持体が先軸内面に傾いて取り付けられる等のインキ保持体の組立不良が発生するおそれがある。
【0006】
また、前記特許文献2の筆記具は、固定部に長手方向に形成された同じ高さを有する複数本のリブを設け、多孔質弾性体が抜け出ることを防ぐ一方で、多孔質弾性体を挿入する際は前記リブが大きな抵抗となり、多孔質弾性体が先軸内面に傾いて取り付けられる等の多孔質弾性体の組立不良が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、インキ吸収体を前軸内に円滑に挿入でき、その結果、前軸内にインキ吸収体を適正に取り付けることができ、且つ吸収体保持部に挿入されたインキ吸収体が抜けることのない組立性の優れた筆記具を提供しようとするものである。
【0008】
尚、本発明において、「前」とはペン体側を指し、「後」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る筆記具は、ペン体と、前記ペン体が前端部に前後方向に移動可能に保持される前軸と、前記前軸が前端部に螺合され且つ内部にインキ貯溜部を有する後軸と、前記後軸の前端開口部に配置され且つ前記ペン体を後方に押圧することにより開口する弁装置と、前記前軸の内面に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体と、を備えた筆記具であって、前記前軸内面に前記インキ吸収体の外面が圧接保持される吸収体保持部が形成され、前記吸収体保持部は、微細な凹凸からなる梨地面と、該梨地面より径方向内方に突出する突部と、を有することを要件とする。
【0010】
本願発明に係る筆記具は、前記構成により、インキ吸収体を前軸内に後方より前方に挿入する際、吸収体保持部の内面の梨地面とインキ吸収体との接触抵抗を小さくでき、インキ吸収体を前軸内に円滑に挿入し始めることができ、挿入中にインキ吸収体が傾くなどの組立不良が発生することを防ぐことができる。また、インキ吸収体を前軸内に挿入した後は、突部とインキ吸収体との接触抵抗によりインキ吸収体が抜けることを防ぐことができる。すなわち、前軸内にインキ吸収体を適正に圧接保持でき、且つ取付後はインキ吸収体が抜け落ちることを防ぎ、インキ吸収体の組立不良の発生を防止することができる。
【0011】
また、本願発明に係る筆記具は、ペン体と、前記ペン体が前端部に前後方向に移動可能に保持される前軸と、前記前軸が前端部に螺合され且つ内部にインキ貯溜部を有する後軸と、前記後軸の前端開口部に配置され且つ前記ペン体を後方に押圧することにより開口する弁装置と、前記前軸の内面に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体と、を備えた筆記具であって、前記前軸内面に前記インキ吸収体の外面が圧接保持される径方向内方に突出する突部が形成され、少なくとも前記突部の表面に微細な凹凸からなる梨地面を有することを要件とする。
【0012】
また、本願発明に係る筆記具は、前記構成により、インキ吸収体を前軸内に後方より前方に挿入する際、突部の表面の梨地面とインキ吸収体との接触抵抗を小さくでき、インキ吸収体を前軸内に円滑に挿入することができ、挿入中にインキ吸収体が傾くなどの組立不良が発生することを防ぐことができる。また、インキ吸収体を前軸内に挿入した後は、突部とインキ吸収体との接触抵抗によりインキ吸収体が抜けることを防ぐことができる。すなわち、前軸内にインキ吸収体を適正に圧接保持でき、且つ取付後はインキ吸収体が抜け落ちることを防ぎ、インキ吸収体の組立不良の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の筆記具は、インキ吸収体を前軸内に円滑に挿入でき、その結果、前軸内にインキ吸収体を適正に取り付けることができ、且つ吸収体保持部に挿入されたインキ吸収体が抜けることのない組立性の優れた筆記具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態の縦断面図である。
図2図1の要部拡大縦断面図である。
図3図1の前軸内にインキ吸収体を取り付ける前の状態を示す縦断面図である。
図4図1の前軸内にインキ吸収体を取り付けた後の状態を示す縦断面図である。
図5】本発明の第2の実施の形態の前軸内にインキ吸収体を取り付ける前の状態を示す縦断面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態の前軸内にインキ吸収体を取り付けた後の状態を示す縦断面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態の前軸内にインキ吸収体を取り付ける前の状態を示す縦断面図である。
図8図7のA-A線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
本発明の筆記具の第1の実施の形態を図面に従って説明する。(図1乃至図4参照)
【0016】
本実施の形態の筆記具1は、ペン体2と、前端部にペン体2が前後方向に移動可能に保持される前軸3と、前記前軸3が前端部に螺合され且つ内部にインキ貯溜部を有する後軸4と、前記後軸4の前端開口部に配置され且つ前記ペン体2を後方に押圧することにより開口する弁装置5と、前記前軸3内に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体10と、を備える。
【0017】
・前軸
前軸3は、両端が開口された先細円筒体であり、合成樹脂の射出成形により得られる。前軸3の前端部内面には、ペン体保持部31が形成される。ペン体保持部31は、前後方向に延びる複数本の縦リブを備え、縦リブによりペン体2が摺動可能に保持される。また、前軸3の後端部内面には、螺合部33が形成される。前軸3の後端部内面の螺合部33が、後軸4の前端部外面の螺合部41と螺着される。
【0018】
ペン体保持部31の後方且つ螺合部33の前方の前軸3の内周面には、インキ吸収体10が圧接保持される吸収体保持部32が形成される。吸収体保持部32は、全周面が微細な凹凸からなる梨地面32aと、該梨地面32aより径方向内方に突出する突部36と、により構成される。インキ吸収体10が前軸3内の吸収体保持部32に取り付けられた状態において、前軸3内の吸収体保持部32(具体的には、梨地面32a及び突部36)により、インキ吸収体10の外周面が径方向に圧縮状態にされる。
【0019】
梨地面32aの算術平均粗さ(Ra)は、5μm~50μmの範囲にあることが好ましい。5μmより小さい場合、吸収体保持部32の表面が鏡面に近くなり、吸収体保持部32の内面とインキ吸収体10との接触抵抗が大きくなり、インキ吸収体10を前軸内に円滑に挿入することができなくなるおそれがある。一方50μmより大きい場合、離型が困難になり又十分な金型表面(梨地面)転写性が得られなくなる。なお、梨地面32aの算術平均粗さ(Ra)は、10μm~40μmの範囲にあることが、より好ましい。なお、良好な離型性や金型表面転写性が得られる点で、10μm~25μmの範囲にあることが、より一層好ましい。
【0020】
梨地面32aは、金型表面をエッチング加工やサンドブラスト加工、鏡面仕上げではない研磨処理などの処理を行うことにより得られる。また、放電加工後の金型部品表面を研磨等せずに残すことにより梨地面32aとすることもできる。
【0021】
梨地面32aの算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:1982で定義されている算術平均粗さ(Ra)を指すものである。またその際の表面粗さの測定は、(ミツトヨ社製の機種名SJ-301)が使用されている。
【0022】
前記構成により、インキ吸収体10を前軸3内に後方より前方に挿入する際、吸収体保持部32の内面の梨地面32aとインキ吸収体10との接触抵抗を小さくでき、インキ吸収体10を前軸3内に円滑に挿入し始めることができ、挿入中にインキ吸収体10が傾くなどの組立不良が発生することを防ぐことができる。また、インキ吸収体10を前軸内に挿入した後は、突部36とインキ吸収体10との接触抵抗によりインキ吸収体10が抜けることを防ぐことができる。すなわち、前軸3内にインキ吸収体10を適正に圧接保持でき、且つ取付後はインキ吸収体10が抜け落ちることを防ぎ、インキ吸収体10の組立不良の発生を防止することができる。
【0023】
突部36は、吸収体保持部32の軸方向に延びる複数本の縦リブ36aにより構成される。これにより、インキ吸収体10を前軸内に挿入した後は、突部36とインキ吸収体10との接触抵抗によりインキ吸収体10が抜けることを防ぐことができる。また、突部36が縦リブ36aであり、インキ吸収体10の進入方向と同一方向に延びるため、縦リブ36aへの挿入抵抗は、より小さいものとなり、挿入中にインキ吸収体10が傾くなどの組立不良が発生することをより防ぐことができる。
【0024】
梨地面32aは、少なくとも縦リブ36aの後方に設けられることが好ましい。これにより、インキ吸収体10を前軸3内に挿入する際、吸収体保持部32の内面とインキ吸収体10との接触抵抗が小さくでき、インキ吸収体10を前軸3内に円滑に挿入し始めることができ、挿入過程でインキ吸収体10が縦リブ36aに到達した際もインキ吸収体10の姿勢が安定しているため、縦リブ36aへのインキ吸収体10の挿入が容易となる。また梨地面32aの加工範囲を最小限にとどめ、金型加工を容易にすることができる。
【0025】
縦リブ36aの後端部は、吸収体保持部32の前端部より、吸収体保持部32の軸方向長手寸法の全長の5/10以上9/10以下の位置に設けられることが好ましく、より好ましくは、吸収体保持部32の軸方向長手寸法の全長の6/10以上8/10以下である。これにより、吸収体保持部32の後端部に確実に梨地面32aを設けることができ、インキ吸収体10を前軸3内により円滑に挿入し始めることができる。また、縦リブ36aの軸方向長手寸法が十分確保できるため、インキ吸収体10との接触抵抗によりインキ吸収体10が抜けることを確実に防ぐことができる。
【0026】
吸収体保持部32は、抜き勾配が形成されていることにより、離型性及び金型表面(梨地面)転写性を向上させることができる。その結果、前軸内にインキ吸収体を適正かつ確実に取り付けることができ、インキ吸収体の組立不良の発生を防止でき、且つ生産性の高い部品成形が可能となる。抜き勾配は、0.2度~3.0度の範囲にあることが好ましい。抜き勾配が0.2度より小さいと離型が困難になり又吸収体保持部32への金型表面(梨地面)転写性が悪くなるおそれがある。一方抜き勾配が、3.0度より大きいと、吸収体保持部32に挿入されたインキ吸収体10が抜けやすくなるおそれがある。なお、抜き勾配は、0.5度~1.5度の範囲にあることがより好ましい。
【0027】
前軸3の螺合部33の前方の内面には環状段部34が形成される。前軸3内面の環状段部34の前方には、係止段部35が形成される。係止段部35にインキ吸収体10の前面が係止される。前軸3内面における環状段部34の前方且つ係止段部35の後方の全領域に、梨地面32aからなる吸収体保持部32が形成される。吸収体保持部32を除く前軸3内面は、平滑面により形成される。
【0028】
突部36の表面は、微細な凹凸からなる梨地面であることが好ましい。これにより、インキ吸収体10を前軸内に挿入する際に、突部36への挿入抵抗をより小さくすることができ、挿入中にインキ吸収体10が傾くなどの組立不良が発生することを、より一層防ぐことができる。且つ、インキ吸収体10が挿入された状態において、インキ吸収体10が径方向に圧縮状態にされるため、突部36とインキ吸収体10との接触抵抗によりインキ吸収体10が抜けることを防ぐことができる。
【0029】
・後軸
後軸4は、前端が開口され且つ後端が閉鎖された有底筒状体により形成され、合成樹脂のブロー成形により得られる。後軸4の前端部は、縮径され、その外面に螺合部41が形成される。後軸4内には、インキ貯溜部が形成され、インキ貯溜部内にインキ及び撹拌部材11(球状体)が収容される。
【0030】
・ペン体
ペン体2は、棒状の繊維束の樹脂加工体である。ペン体2の両端部が先細状に形成される。ペン体2の先細状の両端部の頂部に凸曲面が形成される。
【0031】
・インキ吸収体
インキ吸収体10は、ペン体側からのインキの過剰流出を抑えるためにインキ貯溜部からのインキを保持するものである。インキ吸収体10は、合成樹脂の弾性を有する連続気孔体(いわゆるスポンジ)からなる。インキ吸収体10は、ペン体2が貫通する中心孔を備え、円環状に形成される。例えば、インキ吸収体10は、ポリエステル系ウレタンフォーム、ポリエーテル系ウレタンフォーム、ポリオレフィンフォーム等から得られる。
【0032】
また、インキ吸収体10は、ポリエステル、アクリル等からなる繊維集束体からなり、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来より汎用の連通気孔の多孔質部材繊維集束体からなる。なお、前記インキ吸収体10は気孔率が好ましくは概ね80~90%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材繊維集束体からなる。
【0033】
また、インキ吸収体10は、前軸3内の吸収体保持部32の梨地面32a及び突部36に取り付けられた状態(即ち圧接保持された状態)において、前軸3内の吸収体保持部32の梨地面32a及び突部36により、径方向に圧縮状態にされる。これにより、吸収体保持部32に挿入された状態においてインキ吸収体10が径方向に圧縮状態にされることに加えて、吸収体保持部32が微細な凹凸からなる梨地面32aを有することにより、吸収体保持部32に挿入されたインキ吸収体10が抜けにくくなる効果がより一層得られる。具体的には、前軸3内の吸収体保持部32に取り付ける前のインキ吸収体10の外径は、吸収体保持部32の内径より大きく、その径差は0mm~0.6mm、より好ましくは0.1mm~0.3mmである。
【0034】
・弁装置
弁装置5は、ペン体2の後端に当接される弁体6と、弁体6との密接離間作動により開閉自在の弁孔74を備える弁座部材7と、弁体6を前方に付勢する弾発体8と、弁体6、弁座部材7及び弾発体8を収容する弁収容筒9とからなる、
【0035】
・弁体
弁体6は、棒状の前部61と、棒状の前部61より後方に一体に形成され且つ径方向外方に環状に突出される弁部62と、弁部62より後方に一体に形成される棒状の後部63とからなる。弁体6は合成樹脂の射出成形により得られる。
【0036】
・弁座部材
弁座部材7は、両端が開口された円筒体であり、合成樹脂の射出成形により得られる。弁座部材7は、前端に径方向外方に突出された環状の鍔部71が一体に形成される。鍔部71より後方に筒状部72が一体に形成される。筒状部72の後端内面には、径方向内方に突出する座部73が一体に形成される。座部73の中心には弁孔74が前後方向に貫設される。座部73に、弁体6の弁部62が密接離間可能である。
【0037】
・弾発体
弾発体8は圧縮コイルスプリングよりなる。弾発体8の内部に、弁体6の棒状の後部63が挿通される。弾発体8の前端が、弁体6の弁部62の後面に係止され、弁体6が前方に付勢される。弾発体8の後端は、弁収容筒9の係止壁部93に係止される。
【0038】
・弁収容筒
弁収容筒9は、両端が開口された円筒体であり、合成樹脂の射出成形により得られる。弁収容筒9は、前端に径方向外方に突出された環状の鍔部91が一体に形成される。鍔部91より後方に筒状部92が一体に形成される。筒状部92の後端内面には、径方向内方に突出する係止壁部93が一体に形成される。係止壁部93の中心には、ガイド孔94が前後方向に貫設され、ガイド孔94に弁体6の棒状の後部63が挿通される。筒状部92の後部側壁には、複数のインキ流通孔95が径方向に貫設される。弁収容筒9の筒状部92の前端開口部内面には、弁座部材7の筒状部72の外面が圧入固着される。弁収容筒9の鍔部91前面は、弁座部材7の鍔部71の後面に密接される。弁収容筒9の鍔部91後面は後軸4の前端に密接される。弁収容筒9の筒状部92の前端部外面は後軸4の前端開口部内面に圧入固着される。前軸3の環状段部34が、弁座部材7の鍔部71前面に密接される。前軸3と後軸4との螺着により、前軸3の環状段部34と後軸4の前端との間で、弁座部材7の鍔部71と弁収容筒9の鍔部91が前後方向に挟持される。弁収容筒9内には、弁体6、弁座部材7及び弾発体8が収容され、ユニット化された弁装置5を得る。
【0039】
<第2の実施の形態>
本発明の筆記具の第2の実施の形態を図面に従って説明する。(図5及び図6参照)
【0040】
本実施の形態の筆記具1は、ペン体2と、前端部にペン体2が前後方向に移動可能に保持される前軸3と、前記前軸3が前端部に螺合され且つ内部にインキ貯溜部を有する後軸4と、前記後軸4の前端開口部に配置され且つ前記ペン体2を後方に押圧することにより開口する弁装置5と、前記前軸3内に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体10と、を備える。
【0041】
・前軸
突部36は、吸収体保持部32より径方向内方に突出する環状突起36bにより構成される。これにより、インキ吸収体10を前軸内に挿入した後は、突部36とインキ吸収体10との接触抵抗によりインキ吸収体10が抜けることを防ぐことができる。また、突部36が環状突起36bであり、インキ吸収体10の進入方向と垂直方向に延びるため、より確実にインキ吸収体10が抜けることを防ぐことができる。また、それに伴い、環状突起36bの吸収体保持部32からの突出量を少なくできるため、環状突起36bの挿入抵抗は、より小さいものとなり、挿入中にインキ吸収体10が傾くなどの組立不良が発生することをより防ぐことができる。なお、環状突起36bは軸方向に複数設けても構わない。
【0042】
梨地面32aは、少なくとも環状突起36bの後方に設けられることが好ましい。これにより、インキ吸収体10を前軸3内に挿入する際、吸収体保持部32の内面とインキ吸収体10との接触抵抗が小さくでき、インキ吸収体10を前軸3内に円滑に挿入し始めることができ、挿入過程でインキ吸収体10が環状突起36bに到達した際もインキ吸収体10の姿勢が安定しているため、環状突起36bへのインキ吸収体10の挿入が容易となる。また梨地面32aの加工範囲を最小限にとどめ、金型加工を容易にすることができる。
【0043】
環状突起36bの後端部は、吸収体保持部32の前端部より、吸収体保持部の軸方向長手寸法の全長の5/10以上9/10以下の位置に設けられることが好ましく、より好ましくは、吸収体保持部の軸方向長手寸法の全長の7/10以上8/10以下である。これにより、吸収体保持部32の後端部に確実に梨地面32aを設けることができ、インキ吸収体10を前軸3内により円滑に挿入し始めることができる。また、吸収体保持部32に挿入されたインキ吸収体10は、外周面の後方が径方向に圧縮状態にされるため、環状突起36bとの接触抵抗によりインキ吸収体10が抜けることを確実に防ぐことができる。
【0044】
尚、前記第2の実施の形態において、他の構成及び作用効果は、第1の実施の形態と共通であるため説明を省略する。
【0045】
<第3の実施の形態>
本発明の筆記具の第3の実施の形態を図面に従って説明する。(図7及び図8参照)
【0046】
本実施の形態の筆記具1は、ペン体2と、前記ペン体2が前端部に前後方向に移動可能に保持される前軸3と、前記前軸3が螺合され且つ内部にインキ貯溜部を有する後軸4と、前記後軸4の前端開口部に配置され且つ前記ペン体2を後方に押圧することにより開口する弁装置5と、前記前軸3の内面に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体10と、を備える。
【0047】
・前軸
前軸3内面に、インキ吸収体10の外面が圧接保持される径方向内方に突出する突部36(具体的には縦リブ36a)が形成され、少なくとも前記突部36の表面に微細な凹凸からなる梨地面32aを有する。これにより、インキ吸収体10を前軸内に挿入する際に、突部36への挿入抵抗をより小さくすることができ、挿入中にインキ吸収体10が傾くなどの組立不良が発生することをより確実に防ぐことができる。且つ、インキ吸収体10が挿入された状態において、インキ吸収体10が突部36により径方向に圧接保持にされるため、突部36とインキ吸収体10との接触抵抗によりインキ吸収体10が抜けることを防ぐことができる。
【0048】
インキ吸収体10が前軸3内に取り付けられた状態において、突部36を除く前軸3内面とインキ吸収体10の間に隙間12が形成されることが好ましい。これにより、インキ吸収体10を前軸3内に挿入する際に、吸収体保持部32への挿入抵抗をより小さくすることができ、挿入中にインキ吸収体10が傾くなどの組立不良が発生することを防ぐことができる。
【0049】
尚、前記第3の実施の形態において、他の構成及び作用効果は、第1の実施の形態と共通であるため説明を省略する。
【符号の説明】
【0050】
1 筆記具
2 ペン体
3 前軸
31 ペン体保持部
32 吸収体保持部
32a 梨地面
33 螺合部
34 環状段部
35 係止段部
36 突部
36a 縦リブ
36b 環状突起
4 後軸
41 螺合部
5 弁装置
6 弁体
61 棒状の前部
62 弁部
63 棒状の後部
7 弁座部材
71 鍔部
72 筒状部
73 座部
74 弁孔
8 弾発体
9 弁収容筒
91 鍔部
92 筒状部
93 係止壁部
94 ガイド孔
95 インキ流通孔
10 インキ吸収体
11 撹拌部材
12 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8