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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】フォーム形成エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20220809BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q19/10
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/31
A61K8/60
A61K8/44
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018093458
(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2019199407
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【氏名又は名称】大井 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】越塚 啓介
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥平
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-224275(JP,A)
【文献】特開2012-240985(JP,A)
【文献】特開2017-095393(JP,A)
【文献】特開2017-095392(JP,A)
【文献】特開2010-248098(JP,A)
【文献】特開2012-121813(JP,A)
【文献】特開2016-017118(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104692(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール用バルブを備えた耐圧容器よりなるエアゾール容器内に充填されるフォーム形成エアゾール組成物であって、
原液成分と、ガスとして吐出されるかまたは吐出されて気化しガス状となるガス成分とよりなり、
前記原液成分は、水、ポリオールおよび界面活性剤を含有してなり、
前記ガス成分は、n-ブタン、イソブタン、ペンタンおよびプロパンの少なくとも一種よりなる特定炭化水素と、二酸化炭素とよりなり、
当該エアゾール組成物全体における、前記二酸化炭素の割合が0.1~2.5質量%、前記特定炭化水素の割合が1.0~10.0質量%であり、
前記原液成分における前記ポリオールの割合が10.0~25.0質量%であり、
前記界面活性剤は、前記原液成分における割合が4.0~10.0質量%のアニオン系界面活性剤と当該原液成分における割合が6.0~10.0質量%のノニオン系界面活性剤とよりなり、
前記アニオン系界面活性剤がアミノ酸系界面活性剤であり、前記ノニオン系界面活性剤がアルキルグルコシド系界面活性剤であり、
前記原液成分における前記アニオン系界面活性剤の割合と前記ノニオン系界面活性剤の割合との比(ノニオン系界面活性剤/アニオン系界面活性剤)の値が、0.95~2.5であることを特徴とするフォーム形成エアゾール組成物。
【請求項2】
当該エアゾール組成物全体における、前記二酸化炭素の割合が0.5~1.5質量%、前記特定炭化水素の割合が3.0~7.0質量%であり、
前記原液成分における前記ポリオールの割合が12.0~20.0質量%であり、
前記アニオン系界面活性剤の前記原液成分における割合が5.0~8.0質量%、前記ノニオン系界面活性剤の前記原液成分における割合が6.0~7.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載のフォーム形成エアゾール組成物。
【請求項3】
アニオン系界面活性剤がN-アシルグルタミン酸型界面活性剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフォーム形成エアゾール組成物。
【請求項4】
ポリオールが、ジオールおよびトリオールよりなることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載のフォーム形成エアゾール組成物。
【請求項5】
前記ガス成分におけるプロパンの割合が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のフォーム形成エアゾール組成物。
【請求項6】
前記エアゾール組成物全体におけるペンタンの割合が2質量%未満であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載のフォーム形成エアゾール組成物。
【請求項7】
35℃における製品内圧が0.2~0.8MPaとなるように前記ガス成分が含まれてなることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載のフォーム形成エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーム形成エアゾール組成物に関し、更に詳しくは、二酸化炭素を含有し、皮膚洗浄用として好適に用いられるフォーム形成エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚洗浄料などとして用いられている洗浄組成物は、洗浄成分として界面活性剤を含有しており、通常、両手を擦り合わせて泡立てることによって使用する(例えば、特許文献1参照。)。このような洗浄組成物においては、人手によって泡立てをする必要があることから、きめ細かい泡沫を形成するためには泡立てに時間がかかる。また、人手によって泡立てをした泡沫においては、液膜が非常に薄く、それに起因して、適用箇所において泡沫が流れてしまう、あるいは洗浄マッサージ(例えば、洗顔マッサージ等)中に消泡が生じる、という問題がある。
【0003】
而して、泡沫を容易に形成することを目的として、洗浄組成物の剤形をエアゾール剤とすることが提案されている。
洗浄用のエアゾール組成物の或る種のものとしては、種類が異なる2種の界面活性剤と、水と、ポリオールと、液化石油ガスと、炭酸ガスとを含有し、泡沫状の吐出物が得られるフォーム形成エアゾール組成物が開示されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照。)。
しかしながら、液化石油ガスを含有するフォーム形成エアゾール組成物においては、特に液化石油ガスの蒸気圧が高い場合には、吐出物において、泡沫を構成する気泡が大きく膨張してしまうことから、良好な泡沫が得られない、という問題がある。
【0004】
また、洗浄用のエアゾール組成物の他のものとしては、HLBの値が異なる2種の界面活性剤と、ポリオールと、炭酸ガスとを含有し、泡沫状の吐出物が得られるフォーム形成エアゾール組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、液化石油ガスを含有せず、炭酸ガスのみを含有するフォーム形成エアゾール組成物においては、液化石油ガスを含有するフォーム形成エアゾール組成物に比して気泡の泡径(気泡径)が小さい泡沫が形成されるものの、泡沫に十分な安定性が得られない、という問題がある。具体的には、例えば、適用箇所において洗浄マッサージ(洗顔マッサージ)をした場合において、泡沫が流れてしまったり、消泡が生じたりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-109003号公報
【文献】特開2012-240985号公報
【文献】特開2012-240986号公報
【文献】特開2016-17052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、クリーミィな泡沫が形成されると共に、形成された泡沫が高い安定性を有する、二酸化炭素を含有するフォーム形成エアゾール組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、クリーミィな泡沫が形成されると共に、形成された泡沫が流れることがなく、高い安定性を有し、良好な使用感が得られる、二酸化炭素を含有する皮膚洗浄用のフォーム形成エアゾール組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフォーム形成エアゾール組成物は、エアゾール用バルブを備えた耐圧容器よりなるエアゾール容器内に充填されるフォーム形成エアゾール組成物であって、
原液成分と、ガスとして吐出されるかまたは吐出されて気化しガス状となるガス成分とよりなり、
前記原液成分は、水、ポリオールおよび界面活性剤を含有してなり、
前記ガス成分は、n-ブタン、イソブタン、ペンタンおよびプロパンの少なくとも一種よりなる特定炭化水素と、二酸化炭素とよりなり、
当該エアゾール組成物全体における、前記二酸化炭素の割合が0.1~2.5質量%、前記特定炭化水素の割合が1.0~10.0質量%であり、
前記原液成分における前記ポリオールの割合が10.0~25.0質量%であり、
前記界面活性剤は、前記原液成分における割合が4.0~10.0質量%のアニオン系界面活性剤と当該原液成分における割合が6.0~10.0質量%のノニオン系界面活性剤とよりなり、
前記アニオン系界面活性剤がアミノ酸系界面活性剤であり、前記ノニオン系界面活性剤がアルキルグルコシド系界面活性剤であり、
前記原液成分における前記アニオン系界面活性剤の割合と前記ノニオン系界面活性剤の割合との比(ノニオン系界面活性剤/アニオン系界面活性剤)の値が、0.95~2.5であることを特徴とする。
【0008】
本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、当該エアゾール組成物全体における、前記二酸化炭素の割合が0.5~1.5質量%、前記特定炭化水素の割合が3.0~7.0質量%であり、
前記原液成分における前記ポリオールの割合が12.0~20.0質量%であり、
前記アニオン系界面活性剤の前記原液成分における割合が5.0~8.0質量%、前記ノニオン系界面活性剤の前記原液成分における割合が6.0~7.0質量%であることが好ましい。
【0010】
本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、アニオン系界面活性剤がN-アシルグルタミン酸型界面活性剤であることが好ましい。
【0011】
本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、ポリオールが、ジオールおよびトリオールよりなることが好ましい。
【0012】
本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、前記ガス成分におけるプロパンの割合が0.5質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、前記エアゾール組成物全体におけるペンタンの割合が2質量%未満であることが好ましい。
【0014】
本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、35℃における製品内圧が0.2~0.8MPaとなるように前記ガス成分が含まれてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、ガス成分として特定炭化水素と二酸化炭素とが併用され、原液成分においては、ポリオールおよび界面活性剤が含有されていると共に、当該界面活性剤として、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とが併用されており、これらの特定炭化水素、二酸化炭素、ポリオール、アニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤が特定の割合で含有されている。そのため、二酸化炭素が含有されていても、界面活性剤による乳化作用が十分に発揮されることから、良好な泡沫形成性が得られ、しかも、形成された泡沫は、二酸化炭素と特定炭化水素と界面活性剤とポリオールとの協働により、クリーミィな泡質を有し、適用箇所において流れることのない高い安定性を有するものとなる。
従って、本発明のフォーム形成エアゾール組成物によれば、ガス成分として二酸化炭素を含有するフォーム形成エアゾール組成物において、クリーミィな泡沫が形成されると共に、形成された泡沫に高い安定性が得られる。
また、本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、原液成分にポリオールが特定の割合で含有されていることから、人体用として用いた場合において、ベタツキ感が生じることがなく、しっとりとした良好な使用感を得ることができ、よって皮膚洗浄用として好適に用いることができる。
【0016】
また、本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、アニオン系界面活性剤としてアミノ酸系界面活性剤を用いると共に、ノニオン系界面活性剤としてアルキルグルコシド系界面活性剤を用いることにより、二酸化炭素が含有されていることに起因する組成物の液相における析出物の発生を抑止することができ、また、人体用として用いた場合においては、界面活性剤に起因する皮膚刺激のない、より良好な使用感を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のフォーム形成エアゾール組成物は、原液成分と、ガスとして吐出されるかまたは吐出されて気化しガス状となるガス成分とよりなり、エアゾール用バルブを備えた耐圧容器よりなるエアゾール容器内に充填されてエアゾール製品とされるものである。
この本発明のフォーム形成エアゾール組成物において、原液成分は、水、ポリオールおよび界面活性剤を含有し、当該界面活性剤がアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とよりなるものである。一方、ガス成分は、n-ブタン、イソブタン、ペンタンおよびプロパンの少なくとも一種よりなる特定炭化水素、および二酸化炭素よりなり、噴射剤および泡沫形成ガスとして作用するものである。
そして、本発明のフォーム形成エアゾール組成物は、人体用として用いられ、具体的には、皮膚洗浄用として好適に用いられるものである。
【0018】
以下、本発明のフォーム形成エアゾール組成物を構成する原液成分およびガス成分について説明する。
【0019】
〔原液成分〕
原液成分は、組成物の液相を構成し、水と、ポリオールと、界面活性剤とを必須構成成分として含有し、当該ポリオールの割合が10.0~25.0質量%であって、当該界面活性剤が、アニオン系界面活性剤4.0~10.0質量%と、ノニオン系界面活性剤3.0~10.0質量%とよりなるものである。すなわち、原液成分は、水と、ポリオール10.0~25.0質量%と、アニオン系界面活性剤4.0~10.0質量%と、ノニオン系界面活性剤3.0~10.0質量%とを含有するものである。
【0020】
(水)
原液成分を構成する水としては、精製水が用いられる。
【0021】
水の割合は、原液成分を構成すべき他の構成成分の割合に応じ、組成物の使用用途などを考慮して適宜に定められる。
【0022】
(ポリオール)
原液成分を構成するポリオールは、界面活性剤並びにガス成分を構成する特定炭化水素および二酸化炭素との協働により、好ましい泡沫の形成作用を有するものであり、また本発明のフォーム形成エアゾール組成物を人体用として用いる場合においては、適用箇所において保湿効果を発現させるものである。
ここに、好ましい泡沫とは、具体的には、キメが細かく、弾力や粘りのあるクリーミィな泡質を有し、適用箇所において消泡が生じたり流れたりすることのない高い安定性を有する伸びのよい泡沫を示す。
【0023】
ポリオールとしては、ジオールとトリオールとを組み合わせて用いることが好ましい。
ジオールとトリオールとを組み合わせて用いることにより、より好ましい泡沫を形成することができる。
【0024】
ジオールの具体例としては、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコールなどが挙げられる。
トリオールの具体例としては、グリセリンなどが挙げられる。
本発明のフォーム形成エアゾール組成物におけるポリオールとしては、1,3-ブチレングリコールとグリセリンとを併用することが好ましい。
【0025】
また、ポリオールとしてジオールとトリオールとを組み合わせて用いる場合においては、原液成分におけるジオールとトリオールとの量比、すなわち、原液成分におけるジオールの割合とトリオールの割合との比(トリオール/ジオール)の値が、0.7~1.5であることが好ましく、さらに好ましくは0.7~1.0である。
【0026】
ポリオールの割合は、原液成分において、10.0~25.0質量%であり、好ましくは12.0~20.0質量%である。
【0027】
ポリオールの割合が過大である場合には、液相に均一性が得られなくなるおそれがある。また、クリーミィな泡沫が得られず、消泡が生じるなどして泡沫に十分な安定性が得られなくなるおそれがある。あるいは、吐出物が泡沫状にならないおそれがある。また、人体用として用いた場合においては、ベタツキ感などが生じて良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
一方、ポリオールの割合が過小である場合には、クリーミィな泡沫が得られず、泡沫に十分な安定性が得られなくなるおそれがある。具体的には、クリーミィな伸びのある泡沫が得られなくなるおそれがある。また、人体用として用いた場合においては、しっとりとした良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
【0028】
(界面活性剤)
原液成分を構成する界面活性剤は、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とによって構成される。
本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、界面活性剤として、高い洗浄作用を有するアニオン系界面活性剤と、二酸化炭素による影響を受けにくいノニオン系界面活性剤とを併用することにより、二酸化炭素の存在下において、当該界面活性剤による乳化作用が十分に発揮されることから、十分な洗浄作用を有する、良好な泡沫が形成される。
【0029】
また、界面活性剤において、原液成分におけるアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤との量比、すなわち、原液成分におけるアニオン系界面活性剤の割合とノニオン系界面活性剤の割合との比(ノニオン系界面活性剤/アニオン系界面活性剤)の値が、0.3~2.5であることが好ましく、さらに好ましくは0.5~1.5である。
【0030】
(アニオン系界面活性剤)
アニオン系界面活性剤としては、アミノ酸系界面活性剤が用いられる。
アニオン系界面活性剤としてアミノ酸系界面活性剤を用いることにより、特に人体用として用いた場合において、界面活性剤に起因する皮膚刺激の発生が抑制されて良好な使用感を得ることができる。
【0031】
アニオン系界面活性剤を構成するアミノ酸系界面活性剤としては、N-アシルグルタミン酸型界面活性剤が好適に用いられる。
アニオン系界面活性剤としてN-アシルグルタミン酸型界面活性剤を用いることにより、二酸化炭素が含有されていることに起因する析出物の発生を抑止することができる。具体的に説明すると、アニオン系界面活性剤として脂肪酸系界面活性剤を用いた場合には、当該脂肪酸系界面活性剤がアルカリ性であるため、組成物の液相中において二酸化炭素と反応して脂肪酸塩が凝集して析出するという問題が生じるが、アニオン系界面活性剤としてN-アシルグルタミン酸型界面活性剤を用いた場合には、N-アシルグルタミン酸型界面活性剤が弱酸性であることから、析出物が生じることがない。また、特に人体用として用いた場合においては、より良好なしっとりとした使用感を得ることができる。
【0032】
アニオン系界面活性剤を構成するN-アシルグルタミン酸型界面活性剤としては、水に対する溶解性の観点から、ココイルグルタミン酸カリウム(N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸カリウム)が好ましい。
また、アニオン系界面活性剤を構成するN-アシルグルタミン酸型界面活性剤としては、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ラウロイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウムおよびN-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウムなどを用いることもできる。
【0033】
アニオン系界面活性剤の割合は、原液成分において、4.0~10.0質量%であり、好ましくは5.0~8.0質量%である。
【0034】
アニオン系界面活性剤の割合が過大である場合には、吐出物が泡沫状にならないおそれがある。
一方、アニオン系界面活性剤の割合が過小である場合には、クリーミィな泡沫が得られず、泡沫に十分な安定性が得られなくなるおそれがある。あるいは、吐出物が泡沫状にならないおそれがある。
【0035】
(ノニオン系界面活性剤)
ノニオン系界面活性剤としては、アルキルグルコシド系界面活性剤が用いられる。
ノニオン系界面活性剤としてアルキルグルコシド系界面活性剤を用いることにより、良好な泡沫形成性が得られることから、より良好な泡沫を得ることができる。また、特に人体用として用いた場合においては、より優れた洗浄作用を得ることができると共に、界面活性剤に起因する皮膚刺激の発生が抑制されて良好な使用感を得ることができる。
【0036】
ノニオン系界面活性剤を構成するアルキルグルコシド系界面活性剤としては、泡沫形成性および低皮膚刺激性の観点から、ラウリルグルコシドが好適に用いられる。
また、ノニオン系界面活性剤を構成するアルキルグルコシド系界面活性剤としては、オクチルグルコシド、ノニルグルコシド、デシルグルコシド、ミリスチルグルコシドおよびパルミチルグルコシドなどを用いることもできる。
【0037】
ノニオン系界面活性剤の割合は、原液成分において、3.0~10.0質量%であり、好ましくは4.0~7.0質量%である。
【0038】
ノニオン系界面活性剤の割合が過大である場合には、吐出物が泡沫状にならないおそれがある。また、人体用として用いた場合においては、ベタツキ感などが生じて良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
一方、ノニオン系界面活性剤の割合が過小である場合には、組成物の液相に均一性が得られなくなるおそれがある。また、クリーミィな泡沫が得られず、泡沫に十分な安定性が得られなくなるおそれがある。あるいは、吐出物が泡沫状にならないおそれがある。
【0039】
(任意構成成分)
本発明のフォーム形成エアゾール組成物において、原液成分には、必須構成成分(具体的には、水、ポリオール、界面活性剤)の他、必要に応じて任意構成成分が含有されていてもよい。任意構成成分の具体例としては、例えばキサンタンガム等の増粘剤、フェノキシエタノール等の防腐剤、ヒアルロン酸等の保湿剤および香料などが挙げられる。
【0040】
以上のような必須構成成分および任意構成成分により構成されるフォーム形成エアゾール組成物においては、温度20℃における原液成分の粘度が30~1000mPa・sであることが好ましい。
原液成分の粘度が過大である場合には、良好な吐出特性を得ることができなくなるおそれがある。また、吐出物として形成される泡沫に、クリーミィな泡質および十分な伸びが得られなくなるおそれがある。また、特に人体用として用いた場合においては、ベタツキ感が生じ、良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
一方、原液成分の粘度が過小である場合には、良好な吐出特性を得ることができなくなることから、吐出物が泡沫状にならないおそれがある。
【0041】
〔ガス成分〕
ガス成分は、n-ブタン、イソブタン、ペンタンおよびプロパンの少なくとも一種よりなる特定炭化水素と二酸化炭素とよりなり、フォーム形成エアゾール組成物における特定炭化水素の割合が1.0~10.0質量%であり、当該フォーム形成エアゾール組成物における二酸化炭素の割合が0.1~2.5質量%のものである。
【0042】
(特定炭化水素)
ガス成分を構成する特定炭化水素は、一部がポリオールに溶解されることによって原液成分と共に液相を構成し、他の一部によって、二酸化炭素(具体的には、二酸化炭素の一部)と共に気相(噴射剤)を形成している。
【0043】
特定炭化水素は、n-ブタン、イソブタン、ペンタンおよびプロパンの少なくとも一種よりなるものであるが、n-ブタンおよびイソブタンの少なくとも一種よりなるものであることが好ましい。
その理由について説明すると、泡沫(吐出物)における泡質の観点からは、ガス成分を構成する特定炭化水素は、蒸気圧の高いプロパンを高い割合で含有しないものであることが好ましく、具体的には、ガス成分におけるプロパンの割合(許容含有量)は0.5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下である。また、ガス成分におけるプロパンの割合を0.5質量%以下とすることにより、吐出物において、よりクリーミィな泡質の泡沫を得ることができる。
また、皮膚刺激性抑制の観点からは、ペンタンが皮膚刺激性を有し、かつ低沸点有機ガスであることに起因して皮膚刺激性を生じさせるものであることから、フォーム形成エアゾール組成物全体におけるペンタンの割合が2質量%未満であることが好ましい。
ここに、特定炭化水素を構成する、n-ブタン、イソブタン、ペンタンおよびプロパンの蒸気圧は、各々、n-ブタンの温度20℃における蒸気圧が0.12MPaであり、イソブタンの温度20℃における蒸気圧が0.21MPaであり、ペンタン(具体的には、イソペンタン)の温度20℃における蒸気圧が0.08MPaであり、プロパンの温度20℃における蒸気圧が0.75MPaである。
【0044】
特定炭化水素の割合は、フォーム形成エアゾール組成物全体において、1.0~10.0質量%であり、好ましくは3.0~7.0質量%である。
【0045】
特定炭化水素の割合が過大である場合には、気泡が大きく膨張して泡径(気泡径)が過大となり、クリーミィな泡沫が得られず、泡沫を構成する気泡が、ブツブツとした破泡するものとなるおそれがある。
一方、特定炭化水素の割合が過小である場合には、クリーミィな泡沫が得られず、泡沫に十分な安定性が得られなくなるおそれがある。あるいは、吐出物が泡沫状にならないおそれがある。
【0046】
(二酸化炭素)
ガス成分を構成する二酸化炭素ガスは、水に対する溶解性を有するものであることから、一部が水に溶解されることによって液相を構成し、他の一部によって、特定炭化水素(具体的には、特定炭化水素の一部)と共に気相(噴射剤)を形成している。
【0047】
二酸化炭素の割合は、フォーム形成エアゾール組成物全体において、0.1~2.5質量%であり、好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0048】
二酸化炭素の割合が過大である場合には、クリーミィな泡沫が得られず、泡沫に十分な安定性が得られなくなるおそれがある。
一方、二酸化炭素の割合が過小である場合には、クリーミィな泡沫が得られず、泡沫に十分な安定性が得られなくなるおそれがある。また、特に二酸化炭素が含有されていない場合、すなわちガス成分が特定炭化水素のみよりなる場合には、当該特定炭化水素が蒸気圧の低いものであることから、低温環境下において良好な吐出特性が得られなくなるおそれがある。
【0049】
本発明のフォーム形成エアゾール組成物において、ガス成分は、エアゾール容器の製品内圧が所期の範囲内となるように含まれていることが好ましい。
ここに、本発明のフォーム形成エアゾール組成物において、エアゾール容器の製品内圧は、温度35℃において、0.8MPa以下であることが好ましく、0.2~0.8MPaであることがさらに好ましく、0.3~0.7MPaであることが特に好ましい。
製品内圧が過大である場合には、十分な安全性を得ることができなくなるおそれがある。
而して、エアゾール容器の温度35℃における製品内圧が0.2~0.8MPaであることによれば、エアゾール製品に必要とされる十分な安全性が得られると共に、良好な泡沫を形成することができる。
【0050】
このような構成の本発明のフォーム形成用エアゾール組成物は、原液成分およびガス成分をエアゾール容器内に充填することにより製造することができる。
【0051】
このような本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、ガス成分が、特定炭化水素と二酸化炭素とが併用されている。また、原液成分においては、ポリオールおよび界面活性剤が含有されていると共に、当該界面活性剤として、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とが併用されている。そして、特定炭化水素、二酸化炭素、ポリオール、アニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤が特定の割合で含有されている。そのため、二酸化炭素が含有されていても、界面活性剤による乳化作用が十分に発揮されることから、良好な泡沫形成性が得られ、しかも、形成された泡沫は、二酸化炭素と特定炭化水素と界面活性剤とポリオールとの協働により、キメが細かく、弾力や粘りのあるクリーミィな泡質を有し、適用箇所において消泡が生じたり流れたりすることのない高い安定性を有する伸びのよいものとなる。
従って、本発明のフォーム形成エアゾール組成物によれば、ガス成分として二酸化炭素を含有するフォーム形成エアゾール組成物において、クリーミィな泡沫が形成されると共に、形成された泡沫に高い安定性が得られる。
また、本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、原液成分にポリオールが特定の割合で含有されていることから、人体用として用いた場合において、ベタツキ感が生じることがなく、しっとりとした良好な使用感を得ることができ、よって皮膚洗浄用として好適に用いることができる。しかも、人体用として用いた場合には、二酸化炭素が含有されていることから、適用箇所において、当該二酸化炭素による血行促進効果も期待できる。
【0052】
また、本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、アニオン系界面活性剤としてアミノ酸系界面活性剤を用いると共に、ノニオン系界面活性剤としてアルキルグルコシド系界面活性剤を用いることにより、二酸化炭素が含有されていることに起因する組成物の液相における析出物の発生を抑止することができ、また、人体用として用いた場合においては、界面活性剤に起因する皮膚刺激のない、より良好な使用感を得ることができる。
【0053】
また、本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、ガス成分におけるプロパンの割合を0.5質量%以下とすることにより、吐出物において、より一層クリーミな泡質の泡沫を得ることができる。
【0054】
また、本発明のフォーム形成エアゾール組成物においては、当該エアゾール組成物全体におけるペンタンの割合を2質量%未満とすることにより、当該エアゾール組成物を人体用として用いる場合において、適用箇所における皮膚刺激の発生を十分に抑制することができる。
【実施例
【0055】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0056】
〔実施例1~実施例11、参考例1および比較例1~比較例7〕
先ず、表1および表2に示す組成物材料を用意し、当該組成物材料のうちの原液成分材料を、当該表1および表2に示す割合で混合することにより、原液成分を調製した。得られた原液成分について、20℃における粘度を測定した。結果を表1および表2に示す。
次いで、得られた原液成分と、ガス成分材料とを、当該表1および表2に示す割合でエアゾール用バルブを備えたガラス製の透明耐圧容器よりなるエアゾール容器内に、内容物の質量が50gとなるように充填することにより、評価用エアゾール製品を作製した。
得られた評価用エアゾール製品において、温度35℃における製品内圧は、0.2~0.8MPaの範囲内であった。
得られた評価用エアゾール製品について、各々、下記の評価を行った。結果を表1および表2に示す。
【0057】
(組成物の状態の確認試験)
得られた評価用エアゾール製品について、エアゾール容器内の組成物の液相の均一性(具体的には、析出物や結晶の発生、および分離の有無)を、作製直後に目視にて確認した。そして、下記の評価基準に従って評価し、評価が下記の「C」であった場合を不合格とした。
【0058】
(組成物の状態の評価基準)
「A」:析出物の発生、結晶の発生、および分離がいずれも確認されなかった場合
「B」:析出物の発生、結晶の発生、および分離のうちいずれか一つが確認された場合
「C」:析出物の発生、結晶の発生、および分離のうちの二つ以上が確認された場合
【0059】
(使用感確認試験)
得られた評価用エアゾール製品について、10人のパネラーに、評価用エアゾール製品を皮膚上に吐出し、ベタツキ感の有無を確認してもらう官能試験を行った。そして、下記の評価基準に従って評価し、評価が下記の「1」および「2」のいずれかであった場合を不合格とした。
【0060】
(使用感の評価基準)
「5」:ベタツキ感なしと判定したパネラーが9人以上であった場合
「4」:ベタツキ感なしと判定したパネラーが7人以上9人未満であった場合
「3」:ベタツキ感なしと判定したパネラーが5人以上7人未満であった場合
「2」:ベタツキ感なしと判定したパネラーが3人以上5人未満であった場合
「1」:ベタツキ感なしと判定したパネラーが3人未満であった場合
【0061】
(泡比重測定試験)
得られた評価用エアゾール製品について、室温条件下において、泡比重カップ(上蓋付き半円球状ガラスカップ)内に吐出物(泡沫状の吐出物)を満たし、その泡比重カップ内の吐出物の質量を測定し、泡比重値を算出した。そして、得られた泡比重値に基づいて下記の評価基準に従って評価し、評価が下記の「2」であった場合を不合格とした。
この泡比重測定試験において測定される泡比重値は、泡沫のクリーミィ感を示す指標の1つである。
【0062】
(泡比重の評価基準)
「5」:吐出物の泡比重値が0.06g/mL以上0.1g/mL以下であった場合
「4」:吐出物の泡比重値が0.02g/mL以上0.06g/mL未満であった場合
「3」:吐出物の泡比重値が0.01g/mL以上0.02g/mL未満であった場合
「2」:吐出物の泡比重値が0.1g/mLを超えた場合、または、0.01g/mL未満であった場合
【0063】
(皮膚刺激確認試験)
得られた評価用エアゾール製品について、10人のパネラーに評価用エアゾール製品を腕に吐出して適用し、5分間経過後の適用箇所における赤みの発生の有無を評価者によって確認することにより皮膚刺激の有無を確認する試験を行った。そして、下記の評価基準に従って評価し、評価が下記の「1」および「2」のいずれかであった場合を不合格とした。
【0064】
(皮膚刺激の評価基準)
「5」:皮膚刺激なしと判定されたパネラーが9人以上であった場合
「4」:皮膚刺激なしと判定されたパネラーが7人以上9人未満であった場合
「3」:皮膚刺激なしと判定されたパネラーが5人以上7人未満であった場合
「2」:皮膚刺激なしと判定されたパネラーが3人以上5人未満であった場合
「1」:皮膚刺激なしと判定されたパネラーが3人未満であった場合
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表2において、比較例2に係る評価用エアゾール製品は、泡沫状の吐出物を得ることができないものであったことから、泡比重を測定することができなかった。また、比較例2に係る評価用エアゾール製品については、原液成分の粘度の測定および皮膚刺激確認試験を行わなかった。
なお、比較例3の評価用エアゾール製品においては、組成物の液相に分離が見られたことから、組成物の状態の評価を「B」とした。
【0068】
以上の結果から、本発明に係る実施例1~実施例11に係る本発明のエアゾール組成物によれば、クリーミィな泡沫が形成されると共に、ベタツキ感および皮膚刺激のない良好な使用感が得られることが確認された。
【0069】
また、使用感確認試験においては、実施例1~11に係る評価用エアゾール製品について、皮膚上に吐出した際における吐出物の状態を確認してもらうと共に、吐出物の伸びの状態、および、伸ばした状態の吐出物の状態と適用箇所からの流れの有無とを確認してもらったところ、いずれの評価用エアゾール製品においても、半数以上のパネラーが、吐出物は、キメが細かく、適用箇所において消泡が生じたり流れたりすることがなく、伸びのよい泡沫であると判定した。
以上の結果から、本発明に係る実施例1~実施例11に係る本発明のエアゾール組成物によれば、クリーミィな泡沫が形成されると共に、形成された泡沫に高い安定性が得られることが確認された。