(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】圧縮装置及び圧縮装置の搬出方法
(51)【国際特許分類】
F04B 41/00 20060101AFI20220809BHJP
B60S 5/02 20060101ALI20220809BHJP
F16M 7/00 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
F04B41/00 A
B60S5/02
F16M7/00 F
(21)【出願番号】P 2018097114
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】名倉 見治
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】和田 大祐
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-314723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0134079(US,A1)
【文献】特開2015-232384(JP,A)
【文献】特開平05-008180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 41/00
B60S 5/02
F16M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが圧縮される圧縮室を形成しているシリンダ部を有する圧縮機と、
前記シリンダ部を搬出可能な搬出口が形成された開口壁を含み前記圧縮機が収容された内部空間を形成する周壁を有する筐体と、
前記内部空間内において前記圧縮機よりも上に配置され、前記シリンダ部を吊り下げ可能な第1吊上機の移動を案内するように構成された支持部材と、
前記搬出口よりも上方で前記開口壁から外方に突出した突出部材と、
吊上線材を有し、前記突出部材に支持された第2吊上機と、を備え、
前記支持部材は、前記圧縮機の設置位置の上方の位置と前記搬出口の上方の位置との間で前記第1吊上機の移動を案内するように延設され、
前記第2吊
上機は、前記第1吊上機によって前記搬出口に向けて搬送された前記シリンダ部に繋がれた前記吊上線材を巻き上げることによって、前記搬出口を通して前記シリンダ部を搬出するように構成されている
圧縮装置。
【請求項2】
前記吊上線材は、前記第2吊
上機から斜め下方に延設されて前記搬出口を通過し、前記搬出口に向けて搬送された前記シリンダ部に繋がれる
請求項1に記載の圧縮装置。
【請求項3】
前記突出部材は前記搬出口に対して設けられた庇である
請求項
1に記載の圧縮装置。
【請求項4】
前記突出部材は前記開口壁から分離可能に形成されている
請求項
1に記載の圧縮装置。
【請求項5】
ガスが圧縮される圧縮室を形成しているシリンダ部を有する圧縮機が収容された内部空間を形成する筐体の周壁に形成された搬出口から前記圧縮機の前記シリンダ部を搬出する方法であって、
前記内部空間において前記圧縮機
の設置位置の上方に位置する支持部材によって支持された第1吊上機を用いて
前記シリンダ部を吊り上げる工程と、
前記圧縮機
の設置位置の上方の位置から前記搬出口の上方の位置に向けて前記支持部材に沿って前記第1吊上機を移動させ、前記第1吊上機によって吊り上げられた前記シリンダ部を前記搬出口
に向けて搬送する工程と、
前記筐体の外に配置された第2吊上機から前記搬出口を通じて前記内部空間へ斜め下方に延設された吊上線材を前記シリンダ部に繋ぐ工程と、
前記第2吊上機の前記吊上線材を巻き上げ、前記吊上線材に繋がれた前記シリンダ部を吊り上げるとともに前記搬出口から搬出する工程と、を備える
搬出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内でガスを圧縮する圧縮装置及び圧縮装置のシリンダ部を搬出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮されたガスが屋外で供給されることがある(たとえば、水素ステーション)。この場合、ガスを圧縮する圧縮機は屋外に配置される。屋外に配置された圧縮機を風雨から保護するため、圧縮機は筐体内に配置される。
【0003】
圧縮機のメンテナンス作業のために、圧縮機は筐体内で分解されることがある。分解された圧縮機の部品を筐体の屋根に形成された開口部から取り出すことを特許文献1は提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、往復動圧縮機の部品の1つであるシリンダは筐体の屋根に形成された開口部を通じて外部に搬出されることから、シリンダを吊り上げる重機が必要となる。重機の用意、重機の操作、更に重機の設置スペースの確保が必要とされるので、従来の圧縮装置は筐体内の圧縮機のメンテナンスのために多大な労力を必要としている。
【0006】
本発明は、圧縮機に対するメンテナンスの労力を軽減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る圧縮装置は、ガスが圧縮される圧縮室を形成しているシリンダ部を有する圧縮機と、前記シリンダ部を搬出可能な搬出口が形成された開口壁を含み前記圧縮機が収容された内部空間を形成する周壁を有する筐体と、前記内部空間内において前記圧縮機よりも上に配置され、前記シリンダ部を吊り下げ可能な第1吊上機の移動を案内するように構成された支持部材と、前記搬出口よりも上方で前記開口壁から外方に突出した突出部材と、吊上線材を有し、前記突出部材に支持された第2吊上機と、を備える。前記支持部材は、前記圧縮機の設置位置の上方の位置と前記搬出口の上方の位置との間で前記シリンダ部が吊り下げられた第1吊上機の移動を案内するように延設されている。前記第2吊上機は、前記第1吊上機によって前記搬出口に向けて搬送された前記シリンダ部に繋がれた前記吊上線材を巻き上げることによって、前記搬出口を通して前記シリンダ部を搬出するように構成されている。
【0008】
上記の構成によれば、作業者はシリンダ部が吊り下げられた第1吊上機を支持部材の案内の下で圧縮機の設置位置の上方の位置から搬出口の上方の位置に向けて移動することができる。この結果、作業者は圧縮機のシリンダ部を搬出口に向けて搬送することができる。搬出口へのシリンダ部の搬送には重機は必要とされないので、圧縮機に対するメンテナンスの労力は低減される。しかも、第1吊上機とともに用いられる第2吊上機は搬出口の上方よりも開口壁から外方に突出した突出部材に支持されるので、第2吊上機は筐体の外に配置されている。第2吊上機がシリンダ部を吊り上げる前において、支持部材に沿って第1吊上機によって移動されたシリンダ部は筐体の内部空間内に存在する。そして、作業者が第2吊上機の吊上線材を巻き上げてシリンダ部を吊り上げると、シリンダ部は搬出口を通じて筐体の外に容易に搬出される。
【0009】
上記の構成に関して、前記吊上線材は、前記第2吊上機から斜め下方に延設されて前記搬出口を通過し、前記搬出口に向けて搬送された前記シリンダ部に繋がれてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、第2吊上機がシリンダ部を吊り上げる前において、第2吊上機は筐体の外において搬出口の上方に位置する突出部材によって支持されている一方で第1吊上機によって移動されたシリンダ部は筐体の内部空間内に存在しているので、第2吊上機の吊上線材は搬出口を通じて斜め下方に延設され、シリンダ部に繋がれる。作業者が第2吊上機を用いてシリンダ部を吊り上げると、第2吊上機の吊上線材に作用する分力のうち1つは外方に向くので、シリンダ部は搬出口を通じて筐体の外に容易に搬出される。
【0011】
上記の構成に関して、前記突出部材は前記搬出口に対して設けられた庇であってもよい。
【0012】
上記の構成によれば、突出部材は搬出口に対して設けられた庇であるので、圧縮装置は搬出口を通じて筐体から搬出されたシリンダ部を雨から保護することができる。
【0013】
上記の構成に関して、前記突出部材は前記開口壁から分離可能に形成されていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、突出部材は開口壁から分離可能に形成されているので、作業者はシリンダ部を筐体から搬出した後に突出部材を開口壁から取り外すことができる。したがって、圧縮機に対するメンテナンス作業の後に突出部材が圧縮装置に対する他の作業を邪魔するリスクは生じない。
【0015】
本発明の他の局面に係る搬出方法は、ガスが圧縮される圧縮室を形成しているシリンダ部を有する圧縮機が収容された内部空間を形成する筐体の周壁に形成された搬出口から前記圧縮機の前記シリンダ部を搬出するために用いられる。搬出方法は、前記内部空間において前記圧縮機の設置位置の上方に位置する支持部材によって支持された第1吊上機を用いて前記シリンダ部を吊り上げる工程と、前記圧縮機の設置位置の上方の位置から前記搬出口の上方の位置に向けて前記支持部材に沿って前記第1吊上機を移動させ、前記第1吊上機によって吊り上げられた前記シリンダ部を前記搬出口に向けて搬送する工程と、前記筐体の外に配置された第2吊上機から前記搬出口を通じて前記内部空間へ斜め下方に延設された吊上線材を前記シリンダ部に繋ぐ工程と、前記第2吊上機の前記吊上線材を巻き上げ、前記吊上線材に繋がれた前記シリンダ部を吊り上げるとともに前記搬出口から搬出する工程と、を備える。
【0016】
上記の構成によれば、筐体の内部空間に配置された第1吊上機を圧縮機の上方の位置から搬出口の上方の位置に向けて支持部材に沿って移動させ、第1吊上機によって吊り上げられたシリンダ部を搬出口へ搬送することができる。搬出口へのシリンダ部の搬送には重機は必要とされないので、圧縮機に対するメンテナンスの労力は低減される。
【0018】
しかも、作業者は第1吊上機を支持部材に沿って移動させ、シリンダ部を搬出口の手前まで搬送することができる。作業者は、筐体の外に配置された第2吊上機から吊上線材を斜め下方に延ばし搬出口の手前のシリンダ部に繋ぐことができる。作業者が第2吊上機の吊上線材を巻き上げると、吊上線材に作用する張力の分力のうちの1つは外方に向くので、シリンダ部は搬出口を通じて筐体の外に容易に搬出される。
【発明の効果】
【0019】
上述の技術は、圧縮機に対するメンテナンスの労力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の圧縮装置の一部の概略的な斜視図である。
【
図5】圧縮装置の搬出口へ搬送されている搬出対象のシリンダ部の概略的な斜視図である。
【
図6】搬出口の近くまで搬送されたシリンダ部の概略的な斜視図である。
【
図7】第2実施形態の圧縮装置の一部の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の圧縮装置100の一部の概略的な斜視図である。
図2は圧縮装置100の一部の概略的な正面図である。
図3は圧縮装置100の概略的な斜視図である。
図1乃至
図3を参照して、圧縮装置100の概略的な構造が説明される。
【0022】
圧縮装置100は圧縮されたガス(たとえば、水素)を生成するために用いられる。圧縮装置100は筐体110と、筐体110内に配置された圧縮機120と、筐体110内において圧縮機120の上方に配置された支持構造130と、筐体110の外面に取り付けられた庇140と、を備えている。筐体110は圧縮機120及び支持構造130が収容された内部空間111(
図1を参照)を形成している。内部空間111には圧縮機120及び支持構造130だけでなく圧縮されたガスを生成するために必要とされる様々な装置(たとえば、熱交換器)も収容されている(図示せず)。内部空間111で固定された圧縮機120はガスを圧縮する。圧縮機120に対するメンテナンス作業が行われるとき、支持構造130は圧縮機120の部品を筐体110内で持ち上げるために用いられる。筐体110の外に配置された庇140は内部空間111に出入りする作業者を雨から保護するだけでなく、圧縮機120に対するメンテナンス作業が行われるときには圧縮機120の部品を筐体110の外に搬出するために利用される。筐体110、庇140、圧縮機120及び支持構造130の構造が以下に説明される。
【0023】
筐体110は圧縮機120を取り囲むように立設された周壁112と、周壁112の上縁によって囲まれた矩形状の開口部を塞ぐように形成された屋根113と、を含む矩形状の箱体である(
図3を参照)。したがって、筐体110の周壁112は4つの面を形成する4つの壁部を含む。
図3に示されている周壁112の広い壁部は、以下の説明において「正面壁114」と称される。正面壁114の左縁から後方に拡がる面を形成する壁部は、以下の説明において「左壁115」と称される。これらの壁部の名称に合わせて、「前」、「後」、「左」及び「右」といった方向を表す用語が以下に用いられる。これらの方向は説明の明瞭化のみを目的として用いられており、限定的に解釈されるべきではない。
【0024】
筐体110の左壁115は、圧縮機120の部品が搬出される略矩形状の搬出口116(
図1を参照)が形成された開口壁117と搬出口116を開いたり閉じたりする扉118とを含む。搬出口116を開いた扉118は
図1及び
図2に示されている。搬出口116を閉じた扉118は
図3に示されている。搬出口116は圧縮機120の搬出だけでなく作業者が内部空間111に出入りするためにも用いられる。
【0025】
搬出口116の上方において開口壁117の外面には、庇140が固定されている。
【0026】
庇140の下方の扉118を作業者は開き内部空間111に入ることができる。内部空間111で作業者が圧縮機120を分解することが可能な広さの作業空間が圧縮機120の周囲に存在している。圧縮機120の構造が以下に説明される。
【0027】
図4は圧縮機120の概略的な断面図である。
図1及び
図4を参照して、圧縮機120の構造が概略的に説明される。
【0028】
圧縮機120はクランク機構121と、クランク機構121の上方に配置された第1圧縮部122と、クランク機構121の上方且つ第1圧縮部122の後方に配置された第2圧縮部123と、を含む。クランク機構121の作動下でガスは第1圧縮部122及び第2圧縮部123内で圧縮される。
【0029】
第1圧縮部122は、鉛直方向に往復動するピストン(図示せず)と、ピストンが収容されたシリンダ部421と、を含む。ピストン及びシリンダ部421では圧縮室(図示せず)が形成され、圧縮室の中でガスは圧縮される。
【0030】
シリンダ部421はピストンが収容されている収容空間を形成している略円筒部材423と、略円筒部材423の上部を塞ぐ先端部422と、を含む。先端部422、略円筒部材423及びピストンによって囲まれた空間はガスが圧縮される圧縮室として用いられる。
【0031】
略円筒部材423及び先端部422によって形成されたシリンダ部421の後方で第2圧縮部123は形成されている。第2圧縮部123は鉛直方向に往復動するピストン(図示せず)と、ピストンが収容されたシリンダ部321と、を含む。シリンダ部321はピストンが収容されている収容空間を形成している略円筒部材323と、略円筒部材323の上部を塞ぐ先端部322と、を含む。先端部322、略円筒部材323及びピストンによって囲まれた空間はガスが圧縮される圧縮室として用いられる。
【0032】
第1圧縮部122及び第2圧縮部123の先端部322,422の上面にはボルト穴(図示せず)が穿設されている。ボルト穴には圧縮機120に対するメンテナンス作業が行われるときにアイボルトEBTが螺合される。
【0033】
先端部322,422に取り付けられたアイボルトEBTはメンテナンス作業のときに、
図1において圧縮機120の上方に示されている2つの第1吊上機FCBの吊上線材LCNに繋がれる。これらの第1吊上機FCBはシリンダ部321,421を内部空間111内で吊り上げるために用いられる。これらの第1吊上機FCBそれぞれとして車輪付きのチェーンブロックが用いられている。しかしながら、第1吊上機FCBとしてシリンダ部321,421を吊り上げることができる他の装置が用いられてもよい。第1吊上機FCBとしてチェーンブロックが用いられるとき、吊上線材LCNはチェーンである。しかしながら吊上線材LCNはシリンダ部321,421を吊り上げるのに十分な強度を有するワイヤであってもよい。
【0034】
シリンダ部321,421を吊り上げる2つの第1吊上機FCBは支持構造130によって支持されている。支持構造130が
図1及び
図3を参照して以下に説明される。
【0035】
支持構造130は2つの第1吊上機FCBをそれぞれ支持する2つの支持部材を含む。2つの支持部材のうち一方は第1圧縮部122に対応して配置され、以下の説明において「第1支持部材131」と称される。他方の支持部材は第2圧縮部123に対応して配置され、以下の説明において「第2支持部材132」と称される。
【0036】
第1支持部材131及び第2支持部材132それぞれの右端は、左壁115の右方において正面壁114から後方に延設され筐体110を補強する補強フレームRFMに連結されている。第1支持部材131及び第2支持部材132それぞれの左端は、搬出口116の上方に配置されているとともに左壁115の内面に沿って略水平に延設された他のもう1つの補強フレーム(図示せず)に連結されている。したがって、第1支持部材131及び第2支持部材132それぞれは左壁115の内面から右方に延設されている。第1支持部材131は第2支持部材132と略平行である。
【0037】
第1支持部材131は第1圧縮部122の上方に位置する。第1支持部材131は必ずしも、第1圧縮部122の真上である必要はない。第1支持部材131の後方の第2支持部材132は第2圧縮部123の上方に位置する。第2支持部材132は必ずしも、第2圧縮部123の真上である必要はない。第2支持部材132は第1支持部材131と構造及び形状において略同じである。したがって、第1支持部材131の構造及び形状に関する以下の説明は第2支持部材132に援用される。
【0038】
第1支持部材131は略垂直な前面及び後面を形成している中間板部134と、中間板部134の下縁から前方及び後方に突出した下板部135と、中間板部134の上縁から前方及び後方に突出した上板部136と、を含む。第1支持部材131はH形の断面を有しているので、H形鋼が第1支持部材131として利用可能である。
【0039】
第1支持部材131の上板部136及び下板部135の間の空隙に第1吊上機FCBとして用いられているチェーンブロックの車輪(図示せず)が挿入され、チェーンブロックは第1支持部材131に支持されている。チェーンブロックの車輪は下板部135の上面で転動し、チェーンブロックは第1支持部材131に沿って左方及び右方に移動することができる。
【0040】
チェーンブロックがシリンダ部421(又は321)を吊り上げたまま圧縮機120の上方の位置から第1支持部材131(又は第2支持部材132)の左端(すなわち、搬出口116の上方の位置)へ移動すると、チェーンブロックの下方で吊り下げられたシリンダ部421(又は321)は搬出口116の近くに搬送される。搬出口116の近くまで搬送されたシリンダ部421(又は321)を筐体110の外へ搬出口116を通じて搬出するために、第2吊上機SCBが庇140の下部に取り付けられている。すなわち、庇140は第2吊上機SCBが取り付けられるように形成されているとともにシリンダ部421(又は321)を支持するのに十分な強度を有している。
【0041】
第2吊上機SCBが庇140の下部に取り付けられている一方で第1吊上機FCBは庇140より上方の屋根113(
図3を参照)の下面に沿って延設された第1支持部材131及び第2支持部材132に支持されている。したがって、第2吊上機SCBの配置位置は第1吊上機FCBの配置位置よりも低い。
【0042】
第2吊上機SCBは、第1吊上機FCBと同様にチェーンブロックであってもよい。しかしながら、シリンダ部421(又は321)を吊り上げることができる他の装置が第2吊上機SCBとして用いられてもよい。第2吊上機SCBとしてチェーンブロックが用いられるとき、第2吊上機SCBの吊上線材LCNはチェーンである。しかしながら第2吊上機SCBの吊上線材LCNはシリンダ部421(又は321)を吊り上げるのに十分な強度を有するワイヤであってもよい。
【0043】
第2吊上機SCB、第1吊上機FCB、これらをそれぞれ支持する庇140及び支持構造130は圧縮機120に対するメンテナンス作業に利用される。圧縮機120に対する例示的なメンテナンス作業が以下に説明される。
【0044】
メンテナンス作業が開始されると、作業者は吊上機を設置する作業を行う。2つの第1吊上機FCBのうち一方は第1支持部材131に取り付けられ第1圧縮部122のシリンダ部421の上方の位置に配置される。他方の第1吊上機FCBは第2支持部材132に取り付けられ第2圧縮部123のシリンダ部321の上方の位置に配置される。第2吊上機SCBは庇140に取り付けられる。
【0045】
吊上機の設置作業の後に、作業者は搬出対象のシリンダ部(すなわち、シリンダ部321,421のうちいずれか一方)とクランクケース126との間の締結を解除する。この結果、搬出対象のシリンダ部はクランクケース126から分離可能になる。その後、搬出対象のシリンダ部を筐体110の外へ搬出するための搬出作業が行われる。
【0046】
搬出作業は、搬出対象のシリンダ部を搬出口116まで搬送する作業と、搬出口116を通じて搬出対象のシリンダ部を筐体110の外に出す作業と、に大別される。これらの作業が以下に説明される。
【0047】
図5は、搬出口116へ搬送されている搬出対象のシリンダ部521(すなわち、シリンダ部321,421のうちいずれか一方)の概略的な斜視図である。
図1及び
図5を参照して、搬出対象のシリンダ部521を搬出口116まで搬送する作業が説明される。
【0048】
搬出対象のシリンダ部521を搬出口116まで搬送する作業では、作業者はまずアイボルトEBTをシリンダ部521の先端部(すなわち、
図1に示される先端部322,422のうちいずれか一方)に取り付ける。作業者はアイボルトEBTに第1吊上機FCBの吊上線材LCNの下端のフックを取り付ける。作業者は第1吊上機FCBを操作し吊上線材LCNを巻き上げる。この結果、シリンダ部521は上方に移動しクランクケース126から分離される。
【0049】
シリンダ部521が巻き上げられた後、作業者は第1吊上機FCBを支持部材133(すなわち、
図1に示される第1支持部材131又は第2支持部材132のうちいずれか一方)に沿って移動させる。この結果、第1吊上機FCBから吊り下げられたシリンダ部521は搬出口116に向けて移動する。搬出口116の近くまで搬送されたシリンダ部521を筐体110から搬出口116を通じて搬出する作業が以下に説明される。
【0050】
図6は、搬出口116の近くまで搬送されたシリンダ部521の概略的な斜視図である。
図6を参照してシリンダ部521の搬出作業が説明される。
【0051】
作業者が第1吊上機FCBを支持部材133の左端近くまで移動させると、シリンダ部521は左壁115の内面の近くに位置している。作業者はその後、シリンダ部521の上端が搬出口116の上縁の下方に位置するように第1吊上機FCBを操作しシリンダ部521を下降させる。
【0052】
シリンダ部521が適切な高さ位置まで下降すると、作業者は第2吊上機SCBの吊上線材LCNの端部に取り付けられたフックに牽引ワイヤTWRの端部を取り付ける。このとき、牽引ワイヤTWRの他端部はシリンダ部521に取り付けられたアイボルトEBTに繋がれる。牽引ワイヤTWR及び牽引ワイヤTRWが取り付けられた第2吊上機SCBの吊上線材LCNは筐体110の外の第2吊上機SCBから筐体110の中のシリンダ部521へ右斜め下に延設されているので、牽引ワイヤTWR及び第2吊上機SCBの吊上線材LCNに作用する張力の分力のうち一方は左方に向く。シリンダ部521の左方には搬出口116が形成されているので、作業者が第2吊上機SCBの吊上線材LCNを巻き上げる一方で第1吊上機FCBの吊上線材LCNを緩めると、シリンダ部521は左上方に吊り上げられ搬出口116を通じて筐体110から搬出される。
【0053】
上述のメンテナンス作業には第1吊上機FCB及び第2吊上機SCBが利用されている。第1吊上機FCB及び第2吊上機SCBとして筐体110内に配置可能な大きさを有する装置(たとえば、チェーンブロック)が利用可能である。したがって、作業者は手作業で第1吊上機FCB及び第2吊上機SCBを所定の作業位置に取り付け、圧縮機120から分離されたシリンダ部321,421を筐体110の外に搬出することができる。筐体の天井部に開口が設けられ、重機によりシリンダ部が当該開口から引き出される場合に比べて、少ない労力の下でメンテナンス作業が実行される。
【0054】
第2吊上機SCBが取り付けられた庇140は、雨天時のメンテナンス作業において搬出口116から搬出されたシリンダ部521及びメンテナンス作業を行う作業者を雨から保護する。
【0055】
上述の実施形態に関して、圧縮機120は2つのシリンダ部321,421を有している。しかしながら、上述の搬出技術は1つのシリンダ部を有する圧縮機や2を超えるシリンダ部を有する圧縮機にも利用可能である。
【0056】
上述の実施形態に関して、シリンダ部321,421に対応した第1支持部材131及び第2支持部材132が筐体110内に配置されている。しかしながら、いくつの支持部材が筐体内に配置されるかは圧縮機の構造に合わせて決定されてもよい。したがって圧縮機が1つのシリンダ部を有しているならば、1つの支持部材が筐体内に配置されてもよい。さらに、シリンダ部と支持部の距離、シリンダ部の間隔によっては複数のシリンダ部に対して1つの支持部材としてもよい。この場合、1つの吊上機FCBが筐体110内でのシリンダ部の吊り上げに利用される。
【0057】
上述の実施形態に関して、シリンダ部321,421は第1吊上機FCBによって搬出口116の近くまで搬送された後、第2吊上機SCBによって搬出口116を通じて筐体110の外に搬出される。しかしながら、シリンダ部321,421は搬出口116の近くで台車等によって搬出されてもよい。この場合、第2吊上機SCBは必要とされない。
【0058】
上述の実施形態に関連して説明されたシリンダ部521の中には単一の圧縮室が形成されていてもよいし、複数の圧縮室が形成されていてもよい。単一の圧縮室がシリンダ部521の中に形成されているならば、1つのピストンがシリンダ部521の中に収容される。複数の圧縮室がシリンダ部521の中に形成されているならば、複数のピストンがシリンダ部521の中に収容される。
【0059】
上述の実施形態に関連して説明されたシリンダ部521は複数の分割体で構成されていてもよい。例えば、シリンダ部521の略円筒部材323又は423が複数の円筒状の要素で構成されていてもよい。
【0060】
上述の実施形態に関して、シリンダ部521が単独で吊り上げられている。しかしながら、シリンダ部521とともに圧縮装置100の他の部材(たとえば、ガスクーラやピストン)が吊り上げられてもよい。
【0061】
上述の実施形態に関して、シリンダ部321,421の中心軸は鉛直方向に延設されている。しかしながら、水平方向に延設された中心軸を有するシリンダ部が搭載された圧縮装置に対して上述の搬出技術が用いられてもよい。この場合、横方向に取り外されたシリンダ部は第1吊上機FCBによって中心軸が鉛直方向に向くように起こされる。その後シリンダ部は第1吊上機FCBによって上方に引き上げられた後、搬出口116に向けて水平移動される。最終的に、シリンダ部は筐体110の外の第2吊上機SCBによって搬出口116を通じて筐体110から搬出される。
【0062】
上述の実施形態に関して、シリンダ部321,421とクランクケース126との間の締結の解除は第1吊上機FCB及び第2吊上機SCBの設置の後に行われている。しかしながら、シリンダ部321,421とクランクケース126との間の締結の解除は、第1吊上機FCB及び第2吊上機SCBの設置の前に行われてもよいし、第1吊上機FCB及び第2吊上機SCBの設置作業の間に行われてもよい。
【0063】
上述の実施形態に関して、第1吊上機FCB及び第2吊上機SCBは支持部材133及び庇140にメンテナンス作業の開始時に設置される。しかしながら、第1吊上機FCB及び第2吊上機SCBは支持部材133及び庇140に常設されていてもよい。
【0064】
上述の実施形態に関して、支持部材133としてH形鋼が利用されている。しかしながら、支持部材133は第1吊上機FCBの水平移動を案内することができる他の形状を有してもよい(たとえば、I形、C形の断面形状を有する部材)。第1吊上機FCBとして専用のレール部材とともに用いられる装置が用いられるならば、専用のレールが支持部材として用いられる。
【0065】
上述の実施形態に関して、第1吊上機FCBは支持部材133に取り付けられる一方で第2吊上機SCBは庇140に取り付けられる。しかしながら、第1吊上機FCB及び第2吊上機SCBは共通の梁部材に取り付けられてもよい。たとえば、梁部材として搬出口116の上方で開口壁117を貫通したH形鋼が用いられてもよい。この場合、第1吊上機FCBは内部空間111においてH形鋼に取り付けられ、筐体110の外において第2吊上機SCBはH形鋼に取り付けられる。共通のH形鋼に取り付けられた第1吊上機FCB及び第2吊上機SCBは実質的に同じ高さ位置で支持される。
【0066】
<第2実施形態>
第1実施形態の圧縮装置100の庇140は搬出口116の上方で開口壁117から外方に突出しているので、シリンダ部521を外方に引っ張る第2吊上機SCBの取付部位として好適に利用可能である。しかしながら、庇140に代わる他の突出部材が第2吊上機SCBの取付部位として用いられてもよい。第2実施形態において代替的な突出部材が説明される。
【0067】
図7は、第2実施形態の圧縮装置100Aの一部の概略的な斜視図である。
図1及び
図7を参照して圧縮装置100Aが説明される。
【0068】
圧縮装置100Aは第2吊上機SCBを支持するための構造においてのみ第1実施形態の圧縮装置100とは相違している。第1実施形態の説明は、第2吊上機SCBに対する支持構造を除いて圧縮装置100Aに援用される。
【0069】
第2吊上機SCBに対する支持構造として圧縮装置100Aは、筐体110Aと支持フレーム150とを有している。筐体110Aは第1実施形態に関連して説明された左壁115に代えて搬出口116の上方において2つの開口領域211が形成された左壁115Aを有している(
図7は、2つの開口領域211のうち一方を示している)。左壁115Aに取り付けられた支持フレーム150は、第1実施形態に関連して説明された庇140に代替する突出部材として用いられる。第1実施形態の庇140と同様に、支持フレーム150は左壁115Aに取り付けられている。支持フレーム150に、第2吊上機SCBが取り付けられている。左壁115A及び支持フレーム150の構造が以下に説明される。
【0070】
左壁115Aは第1実施形態と同様に扉118を含む。第1実施形態の説明は扉118に援用される。
【0071】
扉118に加えて、左壁115Aは開口壁117Aと開口壁117Aの上部に取り付けられた2つのカバー119とを含む(
図7は、2つのカバー119のうち一方を示している)。開口壁117Aには搬出口116及び上述の2つの開口領域211が形成されている。2つの開口領域211を塞ぐように2つのカバー119は形成されている。
図7に示されているカバー119は前方の開口領域211を閉じている一方で、後方の開口領域211を閉じるカバー119は取り外されている。したがって、
図7において後方の開口領域211が露出している。
【0072】
後方の開口領域211を閉じるカバー119は
図7に示されるように第2圧縮部123のシリンダ部321が搬出口116を通じて搬出されるときに取り外される。一方、前方の開口領域211を閉じるカバー119は、第1圧縮部122のシリンダ部421が搬出口116を通じて搬出されるときに取り外される。
【0073】
カバー119が取り外されると開口領域211を2つの領域に分けるように鉛直方向に延設された支柱212が現れる。支柱212は開口領域211の周囲において左壁115Aの強度を向上させるために左壁115Aの一部として開口壁117Aに組み込まれている。
【0074】
支柱212には、ボルト(図示せず)を用いて支持フレーム150が取り付けられる。支持フレーム150は、支柱212から略水平に延設された上フレーム部材151と、上フレーム部材151の下面から支柱212の左面に向けて斜め下方に延設された下フレーム部材152とを含む。上フレーム部材151の下面の左端に第2吊上機SCBが取り付けられている。第2吊上機SCBがシリンダ部321を吊り上げているときに、シリンダ部321及び第2吊上機SCBの荷重は上フレーム部材151の左端に加わる。この結果、上フレーム部材151は下方に撓もうとする。上フレーム部材151の下方に配置された下フレーム部材152は上フレーム部材151の下方への撓みを抑制する。したがって、支持フレーム150はシリンダ部321の大きな荷重に十分に耐える構造を有している。
【0075】
作業者は支持フレーム150に取り付けられた第2吊上機SCBを用いて第1実施形態と同様のメンテナンス作業を行い、搬出口116を通じてシリンダ部521を筐体110Aから搬出することができる。作業者はメンテナンス作業の後、支持フレーム150を支柱212から取り外す。その後、作業者はカバー119を用いて開口領域211を塞ぐ。
【0076】
作業者はメンテナンス作業が終わると左壁115Aから突出した支持フレーム150を取り外すので、支持フレーム150はメンテナンス作業の後に行われる他の作業を邪魔しない。支持フレーム150はメンテナンス作業のみを目的として設計されるので、メンテナンス作業だけでなく雨から作業者を保護することをも目的とする庇140ほど大きなサイズを有さなくてもよい。したがって支持フレーム150は廉価に形成される。
【0077】
上述の実施形態に関して、支持フレーム150はカバー119が取り外されると露出する支柱212に取り付けられる。しかしながら、支持フレーム150は高い強度を有する開口壁に直接的に取り付けられてもよい。この場合、開口領域211や開口領域211を覆うカバー119は必要とされない。
【0078】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
上述の実施形態の原理は、ガスの圧縮が必要な様々な技術分野に好適に利用される。
【符号の説明】
【0080】
100,100A・・・・・・・・・・圧縮装置
110,110A・・・・・・・・・・筐体
111・・・・・・・・・・・・・・・内部空間
112・・・・・・・・・・・・・・・周壁
116・・・・・・・・・・・・・・・搬出口
117,117A・・・・・・・・・・開口壁
120・・・・・・・・・・・・・・・圧縮機
131・・・・・・・・・・・・・・・第1支持部材(支持部材)
132・・・・・・・・・・・・・・・第2支持部材(支持部材)
133・・・・・・・・・・・・・・・支持部材
140・・・・・・・・・・・・・・・庇(突出部材)
150・・・・・・・・・・・・・・・支持フレーム(突出部材)
321,421,521・・・・・・・シリンダ部
FCB・・・・・・・・・・・・・・・第1吊上機
SCB・・・・・・・・・・・・・・・第2吊上機