(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】パネルの取付構造、パネル用の固定具、及び固定具の設置方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20220809BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20220809BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20220809BHJP
【FI】
E04D13/00 J ETD
E04D13/00 K
E04D13/18
H02S20/23 B
(21)【出願番号】P 2018103799
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】513009668
【氏名又は名称】ソーラーフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】市川 直毅
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071091(JP,A)
【文献】特開2012-140774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00-13/18
H02S 20/00-20/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造であって、
第1板部材と、
前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、
前記パネルを直接的又は間接的に支持する固定具と、を有し、
前記固定具は、前記第1板部材の前記第1端部から、前記第1板部材の前記第1端部とは反対側の第2端部まで延びており、
前記固定具は、
搭載物と当接する支持部と前記第1板部材の前記第2端部の下側に挿入される第2挿入部
とを含む第1部材と、
前記第1部材に取り付けられ、前記第1板部材の前記第1端部のところで前記第2板部材の下側に挿入される第1挿入部
を含む第2部材と、
前記固定具上に搭載される搭載物を締結可能な第1締結部材と、前記第1部材と前記第2部材とを互いに締結可能な第2締結部材と、を有し、
前記固定具を前記設置面に固定する固定部材は、前記第1挿入部に設けられ、前記第2
板部材で覆われて
おり、
前記第1締結部材は、一方向にスライド可能に構成されており、
前記第1部材は、前記第1締結部材が通る第1穴と、前記第2締結部材が通る第2穴と、を有し、
前記第1穴は、前記第1締結部材がスライド可能なよう、前記一方向において前記第1締結部材の径よりも長く延びており、
前記第2穴は、前記第2締結部材がスライド可能なよう、前記一方向において前記第2締結部材の径よりも長く延びており、
前記第1穴と前記第2穴は、前記一方向と交差する方向にずれて配置されている、パネルの取付構造。
【請求項2】
前記固定具は、前記第1挿入部と前記第2挿入部との間の距離を調整可能に構成されて いる、請求項1に記載のパネルの取付構造。
【請求項3】
前記第1板部材の前記第1端部は、上方に折り返された第1折り返し部を有し、
前記第2板部材は、前記第1折り返し部と係合するよう下方に折り返された第2折り返し部を有し、
前記固定具は、前記第1板部材の前記第1折り返し部に沿って上方に折り返されるとともに前記第2板部材の前記第2折り返し部に沿ってさらに上方に折り返される係合部を有する、請求項1
又は2に記載のパネルの取付構造。
【請求項4】
前記固定部材は、前記第1板部材よりも外側の領域で、前記第1挿入部を前記設置面に固定する、請求項1から
3のいずれか1項に記載のパネルの取付構造。
【請求項5】
第1板部材と、前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、を含む面上にパネルを直接的又は間接的に支持する固定具であって、
前記固定具は、第1板部材の第1端部から、前記第1板部材の前記第1端部とは反対側の第2端部まで延びており、
前記固定具は、
搭載物と当接する支持部と前記第1板部材の前記第2端部の下側に挿入される第2挿入部
とを含む第1部材と、
前記第1部材に取り付けられ、前記第1板部材の前記第1端部のところで前記第2板部材の下側に挿入される第1挿入部
を含む第2部材と、
前記固定具上に搭載される搭載物を締結可能な第1締結部材と、前記第1部材と前記第2部材とを互いに締結可能な第2締結部材と、
前記固定具を設置面に固定する固定部材と、を有し、
前記固定部材は、前記第1挿入部に設けられ、前記第2板部材で覆われた位置に設けられ
ており、
前記第1締結部材は、一方向にスライド可能に構成されており、
前記第1部材は、前記第1締結部材が通る第1穴と、前記第2締結部材が通る第2穴と、を有し、
前記第1穴は、前記第1締結部材がスライド可能なよう、前記一方向において前記第1締結部材の径よりも長く延びており、
前記第2穴は、前記第2締結部材がスライド可能なよう、前記一方向において前記第2締結部材の径よりも長く延びており、
前記第1穴と前記第2穴は、前記一方向と交差する方向にずれて配置されている、固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池モジュールのようなパネルを含むパネルの取付構造と、パネル用の固定具と、固定具の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池モジュールは様々な建造物の屋根に設置されている。住宅の屋根には、屋根材の種類によって、例えば、スレート屋根、瓦屋根、金属屋根など様々な種類がある。したがって、太陽電池モジュールを屋根材上に備え付けるための固定具も様々なものが提案されている(下記の特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1は、太陽電池モジュールを、屋根に「孔」を開けることなく、外装材の下地の構成に影響を受けることなく、ハゼ部に掛かる強度を最小限(分散させて)に配設することができる外設材の支持部材及び支持構造を開示する。屋根を構成する外装材は、互いに部分的に重なって設けられる(外装材の接続部)。特許文献2に記載された支持部材は、屋根を構成する外装材の水下側の接続部に差し込まれる第一差込部と、外装材の水上側の接続部に差し込まれる第二差込部と、を有する。この支持部材は、ビスのような固定部材で屋根材に孔をあけることなく、第一差込部と第二差込部によって、屋根材に取り付けられる。
【0004】
特許文献2は、取付ネジによって敷設面に取り付けるための取付孔が形成された基底部と、太陽電池モジュールを載置する第一の載置部と、を備えた太陽電池モジュール設置用金具を開示する。太陽電池モジュール設置用金具は、水切り板と水切りカバーを有する。水切り板は敷設面上に載置されており、太陽電池モジュール設置用金具は、取付ネジによって水切り板を介して敷設面に取り付けられる。また、水切りカバーは、太陽電池モジュール設置用金具を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-127492号
【文献】特開2011-117204号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された支持部材は、ビスのような固定部材で屋根材に孔をあけることなく、第一差込部と第二差込部によって、屋根材に取り付けられる。しかしながら、ビスのような固定部材を使用しない場合、太陽電池モジュールのようなパネルの固定強度が低下することがある。また、固定強度を向上させるために多数の支持部材を使用すれば、パネルの施工に必要な部品点数が増加し、施工に時間を要することもある。
【0007】
特許文献2に記載された太陽電池モジュール設置用金具は、取付ネジによって水切り板を介して敷設面に取り付けられるため、敷設面に孔があくことになる。そのため、防水が十分でないと漏水の可能性がある。また、十分な防水を実現するためには、水切り板と水切りカバーのような特殊な防水構造が必要となり、金具自体の製造コストが高くなることもある。
【0008】
したがって、ビスのような固定部材で設置面に固定しつつも、簡易な構成で防水を実現可能なパネルの取付構造が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様に係るパネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造は、第1板部材と前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、前記パネルを直接的又は間接的に支持する固定具と、を有する。前記固定具は、前記第1板部材の前記第1端部から、前記第1板部材の前記第1端部とは反対側の第2端部まで延びている。前記固定具は、搭載物と当接する支持部と前記第1板部材の前記第2端部の下側に挿入される第2挿入部とを含む第1部材と、前記第1部材に取り付けられ、前記第1板部材の第1端部のところで前記第2板部材の下側に挿入される第1挿入部を含む第2部材と、前記固定具上に搭載される搭載物を締結可能な第1締結部材と、前記第1部材と前記第2部材とを互いに締結可能な第2締結部材と、を有する。前記固定具を前記設置面に固定する固定部材は、前記第1挿入部に設けられ、前記第2板部材で覆われており、前記第1締結部材は、一方向にスライド可能に構成されており、前記第1部材は、前記第1締結部材が通る第1穴と、前記第2締結部材が通る第2穴と、を有する。前記第1穴は、前記第1締結部材がスライド可能なよう、前記一方向において前記第1締結部材の径よりも長く延びており、前記第2穴は、前記第2締結部材がスライド可能なよう、前記一方向において前記第2締結部材の径よりも長く延びており、前記第1穴と前記第2穴は、前記一方向と交差する方向にずれて配置されている。
【0010】
一態様に係る固定具は、第1板部材と、前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、を含む面上にパネルを直接的又は間接的に支持する固定具に関する。前記固定具は、第1板部材の第1端部から、前記第1板部材の前記第1端部とは反対側の第2端部まで延びている。前記固定具は、搭載物と当接する支持部と前記第1板部材の前記第2端部の下側に挿入される第2挿入部とを含む第1部材と、前記第1部材に取り付けられ、前記第1板部材の前記第1端部のところで前記第2板部材の下側に挿入される第1挿入部を含む第2部材と、前記固定具上に搭載される搭載物を締結可能な第1締結部材と、前記第1部材と前記第2部材とを互いに締結可能な第2締結部材と、前記固定具を設置面に固定する固定部材と、を有する。前記固定部材は、前記第1挿入部に設けられ、前記第2板部材で覆われた位置に設けられており、前記第1締結部材は、一方向にスライド可能に構成されており、前記第1部材は、前記第1締結部材が通る第1穴と、前記第2締結部材が通る第2穴と、を有する。前記第1穴は、前記第1締結部材がスライド可能なよう、前記一方向において前記第1締結部材の径よりも長く延びており、前記第2穴は、前記第2締結部材がスライド可能なよう、前記一方向において前記第2締結部材の径よりも長く延びており、前記第1穴と前記第2穴は、前記一方向と交差する方向にずれて配置されている。
【発明の効果】
【0012】
上記態様によれば、ビスのような固定部材で設置面に固定しつつも、簡易な構成で防水を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係るパネルの取付構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。
【0015】
図1は、一実施形態に係るパネルの取付構造の斜視図である。
図2は、パネルの取付構造の分解斜視図である。
図3は、パネルの取付構造を構成する固定具及び板部材の斜視図である。なお、
図3では、後述する複数の板部材300のうちの1つが取り外された状態が示されている。
図4は、パネルの取付構造の部分的側面図である。ただし、
図4では、図の簡便化のため、屋根材400は示されていない。
図5は、固定具の分解斜視図である。
図6は、固定具の上面図である。
【0016】
パネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造は、パネル10と、パネル10を支持する支持部材200と、固定具100と、複数の板部材300と、を有する。パネル10は、例えば太陽電池モジュールであってよい。パネル10は、1つであってもよく、複数並んでいてもよい。
【0017】
本実施形態では、パネル10は、水平面から傾斜した設置面に設置されていてよい。そのような設置面として、例えば建造物の屋根、具体的にはスレートのような屋根材400が挙げられる。
【0018】
本明細書において、傾斜した設置面において最大傾斜線に沿って高い方から低い方へ向かう方向を「流れ方向F1」と称する。流れ方向F1の上流側を「水上側」と称する。流れ方向F1の下流側を「水下側」と称する。また、水平面に平行な面内で流れ方向F1と直交する方向を「横方向F2」と称する。
【0019】
支持部材200は、横方向F2に延びていてよい。支持部材200は、パネル10の端部を積載するパネル積載部220を有する(
図4参照)。1つのパネル10は、一対の支持部材200のパネル積載部220によって支持されている。
図4に示す態様では、支持部材200は、単一の部材によって構成されている。この代わりに、支持部材200は、互いに取り付けられた複数の部材によって構成されていてもよい。
【0020】
支持部材200は、固定具100に設けられた第1締結部材180によって固定具100に取り付けられている。固定具100は、板部材300上に設けられている。本実施形態では、各々の支持部材200は、2つの固定具100によって固定されている。これに限らず、各々の支持部材200を固定する固定具100の数は、1つ、又は3つ以上であってもよい。
【0021】
複数の板部材300は、互いに隣接して設けられている。複数の板部材300は、元々設置されていた屋根材400上に、屋根材400を覆うように設けられていてよい。板部材300は、例えば金属板によって構成されていてもよいが、これに限定されない。
【0022】
互いに隣接する板部材300は、部分的に互いに重なっていてよい。より具体的には、板部材300の第1端部300aは、上方に折り返された第1折り返し部300aを有し、板部材300の第2端部300bは、下方に折り返された第2折り返し部300bを有していてよい。ここで、第1端部300aと第2端部300bは、板部材300の互いに反対側の端部に相当する。板部材300の第1端部300aは、隣接する板部材300の第2端部300bと係合し、噛み合っている。このような板部材300の係合は、流れ方向F1に互いに隣接する板部材300どうしの間に存在することが好ましい。これにより、板部材300の表面に付着した水が、板部材300の下側の屋根材400に達することを抑制することができる。
【0023】
固定具100は、第1部材110と、第2部材140と、を有していてよい。第1部材110と第2部材140は、第2締結部材160によって互いに締結されていてよい。第1部材110は、搭載物としての支持部材200と当接する支持部を有していてよい。図示された態様では、第1部材110の支持部は、第1部材110の上部によって規定される。
【0024】
固定具100は、第1板部材300と第2板部材300とが重なる部分において、第1板部材300と第2板部材300との間に挿入される第1挿入部142を有する。本実施形態では、第1挿入部142は、第2部材140に設けられている。第1挿入部142は、固定具100が置かれている第1板部材300に隣接する第2板部材にまで達している。
【0025】
ここで、「第1板部材」及び「第2板部材」という用語は、説明の便宜上、複数の板部材300を互いに区別するために用いられている。
図3及び
図4に示す態様では、第1板部材300は、固定具100の直下に示されている板部材に相当し、第2板部材300は、第1板部材300の水上側に隣接する板部材に相当する。
【0026】
固定具100を設置面に固定する固定部材190は、第1挿入部142に設けられ、第2板部材300で覆われている。固定部材190は、例えばビスや釘であってよい。固定部材190は、第1板部材300よりも外側の領域で、第1挿入部142を設置面に固定する。より具体的には、固定部材190は、第1挿入部142を貫通し、屋根材400に達する。
【0027】
固定具100はビスや釘のような固定部材190によって固定されるため、屋根材400に強固に取り付けられる。この場合であっても、固定部材190が第2板部材300で覆われているため、板部材の表面に付着した水が固定部材190のところまで浸入することが防止される。このように、固定部材190によって固定具100を強固に固定しつつも、簡易な構成で防水を実現することができる。
【0028】
防水性を高めるため、屋根材400に打ち込まれるすべての固定部材190は、板部材300に覆われた位置のみに存在することが好ましい。
【0029】
固定具100の第2部材140は、第1板部材300の上面に当接する脚部146を有していてもよい。脚部146は、固定具100自身、及び固定具100上に搭載される搭載物の荷重を支える。
【0030】
固定具100の第2部材140は、第1板部材300の第1折り返し部300aに沿って上方に折り返されるとともに第2板部材300の第2折り返し部300bに沿ってさらに上方に折り返される係合部144を有していることが好ましい。すなわち、第2部材140は、係合部144のところで略Z型に折り曲げられている。これにより、第2部材140は、係合部144よりも脚部146側では固定具100が置かれた第1板部材300の上に位置し、係合部144よりも第1挿入部142側では第1板部材300に隣接する第2板部材300の下に配置されることになる。
【0031】
また、固定具100は、係合部144によって、第1板部材300の第1端部300aを挟む。したがって、係合部144は、固定具100の固定強度を向上させることもできる。
【0032】
第1締結部材180は、一方向にスライド可能に構成されていることが好ましい。より好ましくは、第1締結部材180は、流れ方向F1にスライド可能に構成されている。これにより、例えば支持部材200のような搭載物の位置を調節することができる。
【0033】
本実施形態では、第1部材110は、流れ方向F1に沿って延びた穴130を有する(
図5及び
図6参照)。第1締結部材180は、穴130を貫通するよう配置されている。第1締結部材180は、例えばボルトとナットを含んでいてよい。この場合、流れ方向F1に直交する横方向F2における穴130の幅は、ボルトの頭部及びナットよりも狭く、ボルトの螺旋部よりも広い。これにより、ナットを緩めることで、第1締結部材180は、穴130が延びている方向、ここでは流れ方向F1にスライドできる。
【0034】
第1締結部材180の位置がスライドできれば、一対の支持部材200どうしの間の距離が、固定具100どうしの間の距離に制限されず、調整可能となる。すなわち、パネル10のサイズに合わせて、一対の支持部材200どうしの間の距離を調節できる。
【0035】
固定具100は、第1板部材300の第1端部300aから、第1板部材300の第1端部300aとは反対側の第2端部300bまで延びている。具体的には、第1部材110は、少なくとも固定具100が置かれている第1板部材300の第2端部300bまで延びていてよい。
【0036】
固定具100、具体的には第1部材110は、第1板部材300の第2端部300bの下側に挿入される第2挿入部112を有することが好ましい。これにより、第2挿入部112は、固定具100の固定強度の向上に寄与する。前述したように、係合部144が第1板部材300の第1端部300aを挟む場合、固定具100は、係合部144と第2挿入部112によって、第1板部材の第1端部300aと第2端部300bとを挟み込むよう構成される。このように、固定具100が第1板部材300を掴むよう構成されるため、固定具100の固定強度がより向上する。
【0037】
固定具100は、第1挿入部142と第2挿入部112との間の距離を調整可能に構成されていることが好ましい。本実施形態では、第1部材110と第2部材140は、第2締結部材160によって互いに締結されており、第2締結部材160が第2部材140とともに第1部材110に関してスライド可能に構成されている。これにより、第1挿入部142と第2挿入部112との間の距離が調節可能となっている。
【0038】
具体的には、第1部材110は、流れ方向F1に沿って延びた穴120を有する(
図5及び
図6参照)。第2締結部材160は、穴120を貫通するよう配置されている。第2締結部材160は、例えばボルトとナットを含んでいてよい。この場合、流れ方向F1に直交する横方向F2における穴120の幅は、ボルトの頭部及びナットよりも狭く、ボルトの螺旋部よりも広い。これにより、ナットを緩めることで、第2締結部材160は、穴120が延びている方向、ここでは流れ方向F1にスライドできる。
【0039】
第1挿入部142と第2挿入部112との間の距離が調節可能である場合、長さの異なる板部材300に対して固定具100を設置することができるようになる。したがって、汎用性の高い固定具100を提供することができる。
【0040】
好ましくは、第2締結部材160が通る穴120は、第1部材110の上面よりも低い位置、すなわち第1板部材300に近い位置に設けられている。これにより、固定具100は、第2締結部材160が、第1部材110の上面より上方に突出しないよう構成されている。したがって、第2締結部材160が、第1部材110の上面上に置かれた支持部材200のような積載物に干渉することを防止することができる。
【0041】
(固定具の設置方法)
次に、前述した固定具100を用いたパネルの設置方法について簡単に説明する。本実施形態では、まず、もともと葺いてあった屋根材400を覆うように板部材300(金属屋根を葺く(カバー工法)。この際、板部材300の水上側の折り返し部300aを、これに隣接する板部材300の水下側の折り返し部300bに係合させる。板部材300は、水下側から水上側に向かって順番に設置すればよい。
【0042】
固定具100を設置すべき第1板部材300を屋根材400のような設置面上に設置したら、第1板部材300の水上側に隣接する第2板部材300を設置する前に、固定具の第2部材140の係合部144が第1板部材300の水上側の折り返し部300aに沿うように、固定具の第2部材140を設置する。これにより、第2部材140の第1挿入部142は、第1板部材300の水上側の屋根材400上に位置することになる(
図2も参照)。ここで、固定具100の第1部材110は、第2部材140に取り付けられた状態でも、第2部材140から取り外した状態でもよい。第1部材110が第2部材140に取り付けられている場合、第1部材110の第2挿入部112を、第1板部材300の水下側の端部の下に挿入させる。また、固定具の第1挿入部142は、第1板部材300の第1端部300aのところから延出した状態となる。
【0043】
次に、ビスや釘のような固定部材190によって、第2部材140の第1挿入部142を屋根材400のような設置面に固定する。この段階で第1部材110が第2部材140から取り外されている場合には、第2締結部材160によって、第2部材140に第1部材110を設置する。この際、第1部材110の第2挿入部112を、第1板部材300の水下側の端部の下に挿入させる。
【0044】
次に、固定部材190を覆うように、第1板部材300の水上側に隣接する第2板部材300を設置する。ここで、第2板部材300は、第1板部材300の第1端部300aに部分的に重なるように設置される。この際、第2板部材300の水下側の折り返し部300bを、第1板部材300の水上側の折り返し部300aと、固定具100の第2部材140の係合部144とに係合させる。
【0045】
固定具100が設置されたら、固定具100の第1部材110上に支持部材200を設置し、第1締結部材180によって支持部材200を第1部材110に締結する。それから、支持部材200によって太陽電池モジュールのようなパネル10を設置すればよい。
【0046】
なお、前述した施工の順番は、可能な限り変更することができる。例えば、第2部材140への第1部材110の取り付けは、第1板部材300の水上側に隣接する第2板部材300を設置した後に行われてもよい。
【0047】
以上のように、本実施形態の固定具100では、板部材300を順番に葺きながら固定具100を設置することができる。この場合、すべての板部材300を葺いた後に固定具を設置する場合と比較すると、固定具100の位置決めが容易であり、施工性が向上する。
【0048】
また、もともと葺いてあった屋根材を覆うように金属屋根を葺く工法(カバー工法)は、屋根のリフォームの際に行われることがある。本実施形態に係る固定具100は、このリフォームで行われるカバー工法に好適に適用できる。したがって、屋根のリフォームとともに太陽電池モジュールのようなパネル10を設置することができる。
【0049】
なお、カバー工法は、もともと葺いてあった屋根材を撤去する必要がないため、人件費や施工にかかる日数を削減することができ、不要な屋根材の撤去費用もかからないというメリットがある。
【0050】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0051】
例えば、上記実施形態では、パネル10は水平面から傾斜した設置面に設置されている。この代わりに、パネル10は水平面から傾斜しない設置面に設置されていてもよい。この場合、流れ方向F1と横方向F2は、それぞれ互いに直交する2つの方向と読み変えることができることに留意されたい。
【0052】
また、上記実施形態では、もともと葺いてあった屋根材400を覆うように金属屋根のような板部材300が設置され、板部材300上に固定具100が設けられている。この代わりに、固定具100は、もともと葺いてあった屋根材上に設けられてもよい。この場合、前述した実施形態において、板部材300が、もともと葺いてあった屋根材に相当することに留意されたい。
【0053】
また、固定具100が置かれる板部材300の下に不図示の防水シートが敷かれてもよい。この場合、防水シートは、少なくとも固定部材190が存在する領域に設けられていてよい。
【0054】
上記実施形態では、固定具100の第1部材110は、第2締結部材160によって第2部材140と締結されている。この代わりに、第1部材110と第2部材140は一体に形成されていてもよい。
【0055】
前述した施工方法では、固定具100の第2部材140を、ビスや釘のような固定部材190によって設置面に固定した後に、第2部材140に第1部材110を取り付けている。この代わりに、可能であれば、第1部材110と第2部材140とが互いに締結された状態で、固定具100を、ビスや釘のような固定部材190によって設置面に固定してもよい。
【0056】
上記実施形態では、固定具100は、支持部材200を介して、太陽電池モジュールのようなパネル10を間接的に支持する。この代わりに、固定具100は、パネル10を直接的に支持するものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 パネル
100 固定具
110 第1部材
112 第2挿入部
120 穴
130 穴
140 第2部材
142 第1挿入部
144 係合部
146 脚部
160 第2締結部材
180 第1締結部材
190 固定部材
200 支持部材
300 板部材
400 屋根材
F1 流れ方向
F2 横方向