(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】マッサージ機
(51)【国際特許分類】
A61H 15/00 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
A61H15/00 350Z
(21)【出願番号】P 2018104332
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000136491
【氏名又は名称】株式会社フジ医療器
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 辰美
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-077757(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01972232(EP,A1)
【文献】特開2001-178588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の大腿を支持する座部
と、前記座部の下方に配置され、前記座部を支持する基台部とを有するマッサージ機本体と、
人体の下腿を収容するオットマンと、
オットマン用アクチュエータと、
前記オットマン用アクチュエータを支持する支持部材と、
を備えるマッサージ機であって、
前記オットマンは、左右方向に沿って延びる第1回転軸回りに回転可能に
前記マッサージ機本体に取り付けられ
、先端を下方に配した第1の状態と先端を前方に配した第2の状態との間を回動し、
前記
オットマン用アクチュエータは、ロッド部材と、前記ロッド部材の後部を収容する筒状部材と、を有し、前記ロッド部材の前端が前記オットマンに接続され、前記筒状部材からの前記ロッド部材の突出量を変更でき、
前記支持部材は、一端を左右方向に沿って延びる第2回転軸回りに
回転可能に前記マッサージ機本体に取り付けられるとともに、前記第2回転軸から下方に延びて他端を左右方向に沿って延びる第3回転軸回りに
回転可能に前記筒状部材に取り付けられ、
前記第1回転軸と前記座部との位置関係は固定され、前記第2回転軸と前記座部との位置関係は固定され、前記第3回転軸と前記座部との位置関係は前記支持部材が前記第2回転軸回りに回転することで変化し、
一端を前記支持部材における前記第2回転軸と前記第3回転軸との間に取り付けられ、他端を前記基台部に取り付けられて前記第3回転軸が後方に向かうように前記支持部材を付勢する弾性部材を設け、
前記オットマンが前記第1の状態のときに前記第3回転軸は前記第2回転軸よりも後方に配置される、マッサージ機。
【請求項2】
前記第3回転軸が前記第2回転軸よりも後方にある状態で、前記第3回転軸の位置は、前記第1回転軸と前記第2回転軸よりも下方に配置される、請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記第3回転軸は、前記筒状部材の後端に設けられる、請求項1
又は2に記載のマッサージ機
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オットマンを有するマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の一実施例に係るマッサージ機では、オットマン収納動作時にセンサー感知域(オットマンとマッサージ機本体との間の所定領域)に異物が存在することをセンサーが検知した場合に、オットマンの収納動作が停止される。これにより、オットマンとマッサージ機本体との間に異物が挟まることを未然に防止する。
【0003】
特許文献1の他の実施例に係るマッサージ機では、オットマンとマッサージ機本体との間に異物が挟まってオットマンに一定以上の力が加わるとオットマンがリンク機構から外れる。これにより、オットマンとマッサージ機本体との間に挟まった異物が損傷することを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の一実施例に係るマッサージ機では、センサー感知域に存在する異物を検出するセンサー、及び、当該センサーの検出結果に基づいてオットマンの収納動作が停止させる制御部が必要であり、低コスト化を図ることができない。
【0006】
また、特許文献1の他の実施例に係るマッサージ機では、リンク機構から外れたオットマンが床面に落下するため、例えばオットマンや床面が損傷する、オットマンと床面との間に他の異物が挟まる等の二次被害が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑み、大幅なコストアップや二次被害を発生させることなく、オットマンとマッサージ機本体との間に挟まった異物が損傷することを低減することができるマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書中に開示されているマッサージ機は、人体の大腿を支持する座部を有するマッサージ機本体と、人体の下腿を収容するオットマンと、を備えるマッサージ機であって、左右方向に沿って延びる第1回転軸回りに回転可能に前記オットマンが前記マッサージ機本体に取り付けられ、前記マッサージ機本体は、アクチュエータと、前記アクチュエータを支持する支持部材と、を有し、前記アクチュエータは、ロッド部材と、前記ロッド部材の後部を収容する筒状部材と、を有し、前記ロッド部材の前端が前記オットマンに接続され、前記筒状部材からの前記ロッド部材の突出量を変更でき、前記支持部材は、左右方向に沿って延びる第2回転軸回りに回転可能であり、左右方向に沿って延びる第3回転軸回りに前記筒状部材に対して回転可能であり、前記第1回転軸と前記座部との位置関係は固定され、前記第2回転軸と前記座部との位置関係は固定され、前記第3回転軸と前記座部との位置関係は前記支持部材が前記第2回転軸回りに回転することで変化する構成(第1の構成)である。
【0009】
上記第1の構成のマッサージ機において、前記第3回転軸は、前記筒状部材の後端に設けられる構成(第2の構成)にしてもよい。
【0010】
上記第1又は第2の構成のマッサージ機において、前記マッサージ機本体は、前記第3回転軸が後方に向かうように前記支持部材を付勢する弾性部材を有する構成(第3の構成)にしてもよい。
【0011】
上記第3の構成のマッサージ機において、前記弾性部材の一端は、前記支持部材における前記第2回転軸と前記第3回転軸との間の位置に取り付けられる構成(第4の構成)にしてもよい。
【0012】
上記第1~第4いずれかの構成のマッサージ機において、前記筒状部材は、前記支持部材によって吊り下げられる構成(第5の構成)にしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本明細書中に開示されているマッサージ機によれば、大幅なコストアップや二次被害を発生させることなく、オットマンとマッサージ機本体との間に挟まった異物が損傷することを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】一実施例に係るマッサージユニットの左側面図
【
図3】一実施例に係るマッサージユニットの左側面図
【
図4】一実施例に係るマッサージユニットの左側面図
【
図6】オットマン及びオットマン用アクチュエータの後方斜視図
【
図7】オットマン用アクチュエータ及び支持部材の左側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は一実施例に係るマッサージ機1の斜視図である。以下の説明において、背凭れ部3が倒れていない状態のマッサージ機1に着座した被施療者から見て前側(正面側)を「前側」といい、背凭れ部3が倒れていない状態のマッサージ機1に着座した被施療者から見て後側(背面側)を「後側」という。また、背凭れ部3が倒れていない状態のマッサージ機1に着座した被施療者から見て上側(頭側)を「上側」といい、背凭れ部3が倒れていない状態のマッサージ機1に着座した被施療者から見て下側(脚側)を「下側」という。また、マッサージ機1に着座した被施療者から見て右側を「右側」といい、マッサージ機1に着座した被施療者から見て左側を「左側」という。
【0017】
マッサージ機1は、座部2、背凭れ部3、基台部4、前腕施療部5、及びオットマン6を備える。座部2、背凭れ部3、基台部4、及び前腕施療部5がマッサージ機本体に該当する。
【0018】
座部2は、被施療者の臀部及び太腿を支持する。座部2の左端及び右端には太腿用エアバッグAB1が設けられる。太腿用エアバッグAB1の膨縮によって被施療者の太腿が施療される。
【0019】
背凭れ部3は、被施療者の肩、腰、及び背中を支持する。背凭れ部3は、左右方向に沿って延びるリクライニング回転軸回りに回動可能に、座部2の後端に取り付けられている。
【0020】
背凭れ部3は、施療子を有するマッサージユニット(不図示)を内蔵する。マッサージユニットは、背凭れ部3に内蔵されるガイドレール(不図示)によって案内されて背凭れ部3内で昇降する。なお、ガイドレールを座部2の後部にまで延長し、マッサージユニットが座部2及び背凭れ部3内で昇降するようにしてもよい。
【0021】
背凭れ部3の上部左端及び上部右端には上腕用エアバッグAB2が設けられる。上腕用エアバッグAB2の膨縮によって被施療者の上腕が施療される。
【0022】
基台部4は、座部2の下方に設けられる金属フレームであり、座部2を支持する。基台部4の内部には、背凭れ部用アクチュエータ(
図1において不図示)と、オットマン用アクチュエータ(
図1において不図示)と、制御ユニットCU1と、が設けられる。制御ユニットCU1は、操作部(不図示)から出力される信号に基づいて各種モータ及び各種エアバッグ等を制御する。
【0023】
前腕施療部5は、座部2の左右両側且つ座部2の上方に立設して設けられる。前腕施療部5には、前腕用エアバッグ(不図示)が設けられる。前腕用エアバッグの膨縮によって被施療者の前腕が施療される。
【0024】
オットマン6は、被施療者の下腿を収容する。オットマン6には下腿用エアバッグAB3が設けられる。下腿用エアバッグAB3の膨縮によって被施療者の下腿が施療される。
【0025】
オットマン6は、左右方向に沿って延びる第1回転軸AX1回りに回動可能にマッサージ機本体に取り付けられる。具体的には、オットマン6は、左右方向に沿って延びる第1回転軸AX1回りに回動可能に基台部4上部の前端に取り付けられる。
【0026】
制御ユニットCU1は、マッサージ機本体に対するオットマン6の位置関係を操作部から出力される信号に基づいて可変する。制御ユニットCU1の制御によって実現することができるマッサージ機本体に対するオットマン6の位置関係として、例えば
図2~
図4に示す位置関係がある。なお、
図2~
図4においてマッサージ機1の側面カバー等の図示を省略している。
【0027】
図2に示す位置関係では、被施療者がマッサージ機1に着座し被施療者の下腿がオットマン6に収容されると、被施療者の足首は被施療者の膝の略真下に位置する。
【0028】
マッサージ機1の左側から視てオットマン6を時計回りに回転させる、すなわちオットマン6を後方から前方に向かって回転させることで、
図2に示す位置関係から
図3に示す位置関係に変更することができる。
図3に示す位置関係では、被施療者がマッサージ機1に着座し被施療者の下腿がオットマン6に収容されると、被施療者の足首は被施療者の膝より前方に位置する。
【0029】
マッサージ機1の左側から視てオットマン6を反時計回りに回転させる、すなわちオットマン6を前方から後方に向かって回転させることで、
図3に示す位置関係から
図2に示す位置関係に戻すことができる。しかしながら、
図3に示すようにオットマン6の背面と基台部4の前面との間に異物10が挟まる可能性がある。
【0030】
マッサージ機1では、
図3に示すようにオットマン6の背面と基台部4の前面との間に異物10が挟まっている状態において、オットマン用アクチュエータ7がマッサージ機1の左側から視てオットマン6を反時計回りに更に回転させようと動作した場合に、
図4に示すように支持部材8がマッサージ機1の左側から視て時計回りに回転することによってオットマン6の背面と基台部4の前面とが異物10を挟み込む力が増大することを防止することができる。これにより、大幅なコストアップや二次被害を発生させることなく、異物10が損傷することを低減することができる。
【0031】
図5は、オットマン用アクチュエータ7の左側面図である。オットマン用アクチュエータ7は、ロッド部材71と、ロッド部材71の後部を収容する筒状部材72と、オットマン用モータ73と、を有する。ロッド部材71の前端711は、
図6に示すようにオットマン6の背面に設けられた連結部61に回転可能な形態で接続される。
【0032】
オットマン用アクチュエータ7は、オットマン用モータ73の回転により、筒状部材72からのロッド部材71の突出量を変更することができる。筒状部材72からのロッド部材71の突出量が増加すると、マッサージ機1の左側から視てオットマン6が時計回りに回転する。逆に、筒状部材72からのロッド部材71の突出量が減少すると、マッサージ機1の左側から視てオットマン6が反時計回りに回転する。
【0033】
ただし、筒状部材72からのロッド部材71の突出量が減少した場合でも、
図4に示すように支持部材8がマッサージ機1の左側から視て時計回りに回転した分だけ、オットマン6の回転が抑制される。
【0034】
図7はオットマン用アクチュエータ7及び支持部材8の左側面図である。
図7には基台部4の一部も図示されている。基台部4は支持部材8を支持し、支持部材8はオットマン用アクチュエータ7を支持する。
【0035】
支持部材8は、左右方向に沿って延びる第2回転軸AX2回りに基台部4に対して回転可能であり、左右方向に沿って延びる第3回転軸AX3回りにオットマン用アクチュエータ7の筒状部材72に対して回転可能である。
【0036】
第1回転軸AX1と座部2との位置関係は固定され、第2回転軸AX2と座部2との位置関係は固定される。第1回転軸AX1は、第2回転軸AX2に対して前方且つ上方に位置する。第3回転軸AX3と座部2との位置関係は支持部材8が第2回転軸AX2回りに回転することで変化する。具体的には、第3回転軸AX3は支持部材8がマッサージ機1の左側から視て第2回転軸AX2回りに時計回りに回転することで座部2を基準として前方に移動する。これにより、上述したように筒状部材72からのロッド部材71の突出量が減少した場合でも、オットマン6の回転が抑制される。
【0037】
第3回転軸AX3は、オットマン用アクチュエータ7の筒状部材72の後端に設けられることが好ましい。支持部材8の回転が円滑になるためである。
【0038】
また、第3回転軸AX3が後方に向かうように支持部材9を付勢する弾性部材9を設けることが好ましい。オットマン用アクチュエータ7の筒状部材72を前方に向かわせる力が筒状部材72に係らなくなった場合に支持部材9を円滑に元の位置に戻すことができるからである。
【0039】
弾性部材9の一端91は、支持部材8における第2回転軸AX2と第3回転軸AX3との間の位置に取り付けられることが好ましい。弾性部材9の弾性のみならず、第2回転軸AX2と第3回転軸AX3との間の取り付け位置によっても弾性部材9による付勢力を調整できるからである。なお、弾性部材9の他端92は、基台部4に取り付けられる。
【0040】
上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0041】
例えば上記実施形態においては、オットマン用アクチュエータ7が支持部材8によって吊り下げられる構造であったが、オットマン用アクチュエータ7と支持部材8との上下方向に位置関係を逆転させてオットマン用アクチュエータ7が支持部材8によって持ち上げられる構造にしてもよい。ただし、オットマン用アクチュエータ7が支持部材8によって吊り下げられる構造の方が、支持部材8を支持する部材(基台部4の一部)を容易に配置できるため好ましい。
【0042】
また、例えば上記実施形態においては、座部2が基台部4に固定されている構成であったが、基台部4を基台部本体と座部用基台部とによって構成し、座部2を座部用基台部に固定し、座部用基台部を基台部本体に対して前後方向にスライド可能にしてもよい。この場合、例えば、オットマン6を第1回転軸AX1回りに回転可能に座部用基台部に取り付け、支持部材8を第2回転軸AX2回りに回転可能に座部用基台部に取り付けるとよい。これにより、座部用基台部を基台部本体に対して前後方向にスライドさせても、第1回転軸AX1と座部2との位置関係を固定することができ、第2回転軸AX2と座部2との位置関係を固定することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 マッサージ機
2 座部
6 オットマン
7 オットマン用アクチュエータ
8 支持部材
9 弾性部材
10 異物
AX1 第1回転軸
AX2 第2回転軸
AX3 第3回転軸