(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20220809BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220809BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20220809BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20220809BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H02G3/22
B60R16/02 622
F16J15/00 Z
F16L5/02 A
H01B17/58 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018121723
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2018-06-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】201720797654.0
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ヂェン
【合議体】
【審判長】田中 秀人
【審判官】山崎 慎一
【審判官】須田 勝巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-136107(JP,A)
【文献】特開平8-212858(JP,A)
【文献】特開2001-145237(JP,A)
【文献】特開2006-320161(JP,A)
【文献】特開2011-83127(JP,A)
【文献】特開平9-147649(JP,A)
【文献】特開平9-284954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G3/22
B60R16/02
F16J15/00
F16L5/02
H01B17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体にワイヤハーネスを取り付けるための密封装置であって、該密封装置が本体部(10)を含んでおり、該本体部(10)が、
前記車体の表面に適合された形態を有する第1の表面であって、該第1の表面からスリーブ(20)が延在する前記第1の表面と、
該第1の表面とは反対側にあり、第1のワイヤハーネスのための第1の導管(33)と、第2のワイヤハーネスのための第2の導管(35)とを備えた第2の表面と
を有しており、前記第1の導管(33)及び前記第2の導管(35)の両方が前記スリーブ(20)の内部空洞に連通していること、並びに前記スリーブ(20)が、第1の案内溝(21)及び第2の案内溝(22)を備えており、前記第1の導管(33)を通過するワイヤハーネスが前記第1の案内溝(21)
内を通して車両へ入り、前記第2の導管(35)を通過するワイヤハーネスが前記第2の案内溝(22)
内を通して車両へ入ることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
中間体(34)が前記第2の表面から延在していること、並びに前記第1の導管(33)及び前記第2の導管(35)が、前記中間体(34)に結合されているとともに、前記中間体(34)の内部空洞を介して前記スリーブ(20)の前記内部空洞に連通していることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記第1の導管(33)及び前記第2の導管(35)が逆方向に延在していることを特徴とする請求項2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記第1の導管(33)の内部空洞の直径が、前記第2の導管(35)の内部空洞の直径とは異なっていることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項5】
前記第1の表面が密封ガスケット(40)を備えており、該密封ガスケットによって、前記本体部と前記車体の間の密封が維持され、前記密封ガスケット(40)が、前記スリーブ(20)を包囲しているとともに、前記第1の表面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項6】
前記本体部(10)を前記車体に固定して取り付けることを可能とする留め具(23,24)が前記スリーブ(20)の外側の周縁部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項7】
当該密封装置が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項8】
前記第1のワイヤハーネスと前記第1の導管(33)の間及び前記第2のワイヤハーネスと前記第2の導管(35)の間に密封材料が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置、特に車体にワイヤハーネスを取り付けるための密封装置に関するものである。
【0002】
車両の生産中及び組み立て中には、通常、車体の内側と外側の間の電子的な接続又は電気的な接続を達成するために、ワイヤハーネスが車体を通過することが要求される。この目的のために、一般的には貫通孔が車体に設けられているとともに、密封装置が貫通孔に組み込まれており、したがってワイヤハーネスが密封装置を介して車体を通過する。密封装置の機能は、貫通孔の隙間を通して車両の外側の雨水が車両へ侵入することを回避するために貫通孔を密封することである。
【背景技術】
【0003】
従来技術では、適切な柔軟性を有するように、密封装置は一般的にEPDM材料で構成されている。使用に際しては、密封装置は、電気ケーブルにおいて覆われており、そして、例えば車体の金属薄板の貫通孔へスナップばめされている。スリーブの柔軟性により、密封は、車体の金属薄板との締まりばめを用いて達成されることが可能である。従来技術における密封装置は、従来の車両において満足のいく技術的な効果を達成することができる。なぜなら、従来の車両は単にABS(アンチロックブレーキシステム)機能が設けられているだけであるとともに、車両のシャシについての十分な配置空間が存在するためである。
【0004】
しかしながら、快適性、経済性及び安全性についての継続的に高まる人々の要求に伴い、車両における電子製品のタイプも継続的に増大し、したがって異なる形状及び機能を有するワイヤハーネスを車体に取り付ける必要がある。例えば、近年では、伝動パーキングブレーキ(EPB)及びタイヤ空気圧監視システム(TPMS)が次第に一般的となってきた。従来技術における密封装置が用いられる場合には、車体の金属薄板に多数の貫通孔を設ける必要があり、これにより、車両シャシのレイアウトの困難性が増大するだけではなく、車体の不十分な密封のおそれも増大する。加えて、従来の密封装置においてソフトなEPDM材料を用いることで、スリーブが車体の金属薄板に締まりばめされており、したがって、車両の組み立て中に操作が困難であるとともに生産効率が満足のいかないものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この目的のために、車両技術開発の条件に適合することができるとともに従来技術における上述の欠点を克服することが可能な密封装置を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術における上述の欠陥の解決を目指す本発明の目的は、車体へワイヤハーネスを取り付けるための新たな密封装置を提供することであり、この密封装置は本体部を含んでおり、この本体部が、車体の表面に適合された形態を有する第1の表面であって、この第1の表面からスリーブが延在する第1の表面と、この第1の表面とは反対側にあり、第1のワイヤハーネスのための第1の導管と、第2のワイヤハーネスのための第2の導管とを備えた第2の表面とを有しており、第1の導管及び第2の導管の両方がスリーブの内部空洞に連通している。
【0007】
本発明による密封装置により、複数のワイヤハーネスを1つの貫通孔に配置することができ、これにより、同様に車体に設けられる貫通孔の数を効果的に低減することができるとともに、取付空間を節約することができる上、車両におけるワイヤハーネスのレイアウトをより合理的に案内するために異なるワイヤハーネス間の干渉を低減することが可能である。
【0008】
さらに、第2の表面から中間体が延在おり、第1の導管及び第2の導管が中間体から延在しているとともに、中間体の内部空洞を介してスリーブの内部空洞に連通している。中間体の配置は、第1及び第2の導管とスリーブの間の連通を効果的に単純化することができるとともに、これらの製造を容易にすることが可能である。
【0009】
また、第1の導管及び第2の導管は逆方向に延在している。
【0010】
また、第1の導管の内部空洞の直径は、第2の導管の内部空洞の直径とは異なっている。異なる直径を有する内部空洞をもった第1の導管及び第2の導管により、2つのワイヤハーネスの案内がそれぞれ異なる直径を有することが可能である。
【0011】
また、スリーブは、第1の案内溝及び第2の案内溝を備えており、第1の導管を通過するワイヤハーネスが第1の案内溝を通して車両へ入り、第2の導管を通過するワイヤハーネスが第2の案内溝を通して車両へ入る。案内溝の配置により、車両におけるワイヤハーネスのレイアウトに関するより合理的な案内が可能となる。
【0012】
また、第1の表面が密封ガスケットを備えており、この密封ガスケットによって、本体部と車体の間の密封が維持され、密封ガスケットが、スリーブを包囲しているとともに、第1の表面に配置されている。
【0013】
また、本体部を車体に固定して取り付けることを可能とする留め具が設けられており、この留め具は、スリーブの外側の周縁部に配置されている。密封装置が組み込まれるときに、スリーブが車体の貫通孔へ挿入される限り、密封装置が車体に好都合に、かつ、簡単に固定されるように、留め具は、貫通孔の側壁、すなわち車体の金属薄板へ留められる。
【0014】
また、本体部は、硬質材料で形成されている。従来技術において用いられる軟質材料に比べると、硬質材料から成る密封装置は、車体の金属薄板へより容易に取り付けられることができるため、操作がより単純であり、組み付け時間を効果的に低減することが可能である。
【0015】
また、密封装置は一体的に形成されている。例えば、密封装置は、射出成形プロセスを用いて形成されることが可能である。
【0016】
さらに、第1のワイヤハーネスと第1の導管の間及び第2のワイヤハーネスと第2の導管の間に密封材料が設けられている。
【0017】
本発明の他の詳細及び利点については、後述する詳細な説明から明らかとなる。以下に、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による例示的な密封装置の正面図である。
【
図4】
図1に示された密封装置の長手断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記の添付図面において示される内容は、単に例及び例証に過ぎず、厳密に縮尺どおりに図示されていないとともに、特殊な使用環境における関連する全ての構成要素又は詳細が完全には描写されていない。当業者は、特に本発明の原理及びコンセプトの理解により特殊な使用環境において本発明を実施するために必要な従来技術において知られている関連する技術的な内容を考える。
【0020】
以下の説明において用いられる「第1の」、「第2の」などの用語は、序列を暗示するものではなく、その目的は、単に個々の構成要素、部材、構造、要素などを単に区別するために過ぎず、これら個々の構成要素、部材、構造、要素などは、同一であってよく、類似していてもよく、又は異なっていてもよい。同時に、「上側」、「下側」、「内側(又は内部)」、「外側」、「左方」、「右方」、「径方向」及び「軸方向」のような以下の説明で用いられ得る方向の説明は、明確に述べない限り、単に説明の利便性のために過ぎず、本発明の技術的な解決手段を制限するものではない。
【0021】
図1~
図4には、車体にワイヤハーネスを取り付けるための本発明による密封装置が例示的に示されている。特に、車両の生産及び組み立てのプロセスにおいては、(電子ケーブル又は電気ケーブルのような)ワイヤハーネスが車体を通過することができるように、通常は貫通孔を車体に設ける必要がある。車両の使用時に貫通孔の隙間を介して車体の外側の雨水が車両へ侵入することを防止するために、貫通孔は、本発明による密封装置を用いて密封されることが可能であり、密封装置は車体の貫通孔内に取り付けられ、ワイヤハーネスは密封装置を介して車体を通過する。
【0022】
図1を参照すると、例示的な密封装置の正面図が本発明により示されている。図示された密封装置は本体部10を有しており、この本体部10は、実質上、平坦なプレートの形状となっている。平坦なプレート状の本体部10は車体の一般に平坦な表面へ当該本体部を取り付けることを容易にすると理解されるべきであるが、密封装置が取り付けられる必要のある車体の表面が他の形状又は形態を有していれば、本体部10は、これに応じて適当な形状又は形態で配置されることも可能である。加えて、図面では、本体部10が円弧状の周縁部を有するように示されているが、本体部10の周縁部の特有の形状は、密封装置が取り付けられる必要がある車体の表面の特有の空間条件に依存して、三角形、四角形又は不規則な形状のような他の形状へ構成されることが可能であることが理解されるべきである。
【0023】
さらに、本体部10は、逆の第1及び第2の表面を備えており、第1の表面は図示された方向によれば下側の表面であり、第2の表面は図示された方向によれば上側の表面である。密封装置が車体に取り付けられるときには、第1の表面が車体へ対向し、第2の表面は車体から離れるように向き、あるいは、第1の表面が車体から離れるように向き、第2の表面が車体のへ対向する。
【0024】
本体部10の第1の表面の構造が
図1及び
図2に関連して詳細に説明され、
図2は、
図1に示されているような密封装置の下面図である。図面から見て取れるように、
図1及び
図2に示された実施例における第1の表面は、車体に対向しつつ対応する平坦な車体に適合するように一般的に平坦である構成となっており、他の観点では、本体部10は、外側の周縁部と、内側の周縁部と、スリーブ20とを含む平坦なプレートで形成された円形リングであるとともに、実質上内側の周縁部に沿って第1の表面から延在している。スリーブ20は、車体における貫通孔を通して車両へ入れるために用いられる。したがって、本体部10の内側の周縁部及びスリーブ20の部分は、好ましくは取付を容易にするために好ましくはだ円形となっている。加えて、スリーブ20の延在長さは、実際の取付条件に従って選択される。また、第1の表面には、スリーブ20の周囲に密封ガスケット40が配置されている。密封装置が車体に取り付けられるときには、第1の表面と車体の表面の間の密封を提供するために、密封ガスケットが車体の表面へ密着される。従来技術におけるあらゆる適切な材料、例えば金属銅ガスケット、ステンレス鋼ガスケット、鉄ガスケット、アルミニウムガスケットなど、又は非金属のアスベストガスケット、ペーパガスケット、ボムガスケットなどが密封ガスケットを形成するために選択され得る。密封ガスケット40は、オーバーモールドによって本体部10と一体的に形成されることができ、別々の部材であるよう構成されるとともに本体部10の第1の表面へ接着接合されることも可能である。
【0025】
本体部10の第2の表面の構造が
図1及び
図3に関連して詳細に説明され、
図3は、
図1に示されているような密封装置の平面図である。図面から見て取れるように、中間体34が実質的に本体部の平坦な第2の表面から延在しており、第1の導管33及び第2の導管35がそれぞれ中間体34の2つの逆の端部から延在しており、第1の導管33及び第2の導管35は、実質的に第2の表面に対して平行な方向に延在している。
【0026】
また、
図4を参照すると、
図1に示されているような密封装置の断面図が示されている。この図から見て取れるように、第1の導管33及び第2の導管35の内部空洞は共に中間体34に連通しており、中間体34の内部空洞はスリーブ20に連通している。したがって、本発明の密封装置は、同時に車体を通過させるように2つのワイヤハーネスを案内するために用いられることができ、すなわち、第1のワイヤハーネスが第1の導管33に沿って延在し、第2のワイヤハーネスが第2の導管35に沿って延在する。それぞれ異なる直径を有する2つのワイヤハーネスを案内することができるように、第1の導管33の内部空洞の直径は、第2の導管35の内部空洞の直径とは異なっている。更に多くのワイヤハーネスを取り付けるために、更に多くの導管を配置できることが理解され得る。加えて、理想的な状態では、シールを形成するためにワイヤハーネスの表面が導管の内部空洞の表面に密に嵌合されるように、様々な導管の内部空洞の直径は、ワイヤハーネスの直径と同一に寸法設定されている。しかしながら、組み付けを容易にするために、導管の内径は、ワイヤハーネスの直径よりもわずかに大きく設定されることも可能であり、ワイヤハーネスが導管内へ取り付けられた後、密閉材のような密封材料が導管のポートに適用される。加えて、図示された実施例の代替例として、中間体34が設けられることがなく、第1の導管33及び第2の導管35が、スリーブ20と直接連通している内部空洞として設けられ得る。さらに、第1の導管33及び第2の導管35も、特殊な使用条件に従う他の角度で第2の表面から延在するように配置され得る。
【0027】
図2及び
図4を再び参照すると、2つの留め具23,24がスリーブ20の外側の周縁部に設けられている。留め具23,24により、本体部10を車体に固定して取り付けることが可能である。特に、密封装置が組み込まれるときに、スリーブ20が車体の貫通孔へ挿入される限り、密封装置が車体に好都合に、かつ、簡単に固定されるように、留め具23,24は、貫通孔の側壁、すなわち車体の金属薄板へ留められる。さらに、スリーブ20も第1の案内溝21及び第2の案内溝22を備えており、第1の導管33を通過するワイヤハーネスは第1の案内溝21を通して車両へ入り、第2の導管35を通過するワイヤハーネスは第2の案内溝22を通して車両へ入る。案内溝の配置により、車両におけるワイヤハーネスのレイアウトに関するより合理的な案内が可能となる。
【0028】
上述の事項は、本発明の意図及び原理を具体化する例示的な実施例に過ぎない。当業者は、その意図及び原理を逸脱することなく、上述の例に対して様々な変更を行えること、並びにこれら変更及びその様々な同等なものが、全て発明者によって熟考され、本発明の特許請求の範囲によって規定される範囲内に収まることを理解する。