(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】レーザ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20220809BHJP
H01L 21/268 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/268 J
H01L21/268 T
H01L21/268 G
(21)【出願番号】P 2018130422
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521476506
【氏名又は名称】JSWアクティナシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭 石煥
(72)【発明者】
【氏名】町田 政志
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-277429(JP,A)
【文献】特開2002-231629(JP,A)
【文献】特開2010-238897(JP,A)
【文献】特開2001-102304(JP,A)
【文献】特開2011-204913(JP,A)
【文献】特開2011-204912(JP,A)
【文献】特開2006-032843(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174347(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/268
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むレーザ処理装置:
レーザ光を照射するレーザ発振器;
前記レーザ光が照射される基板を搬送するための搬送ステージ;
前記搬送ステージの上方に配置された測定器;および
前記測定器から出力された値に基づいて前記レーザ光のエネルギーを制御可能な制御部、
ここで、前記基板の上面に前記レーザ光が透過可能な部材が載せられ、
前記測定器は、前記レーザ光が前記部材によって反射された反射光のエネルギーを測定し、
前記搬送ステージは、前記基板を浮上して搬送可能である。
【請求項2】
以下を含むレーザ処理装置:
レーザ光を照射するレーザ発振器;
前記レーザ光が照射される基板を搬送するための搬送ステージ;および
前記搬送ステージの上方に配置された反射鏡、
ここで、前記基板の上面に前記レーザ光が透過可能な部材が載せられ、
前記反射鏡は、前記部材で反射された前記レーザ光を前記基板に向って反射し、
前記反射鏡によって反射された前記レーザ光は、前記レーザ光が前記基板に照射された第1位置よりも、前記搬送ステージの搬送方向において後ろ側となる第2位置に照射される。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載のレーザ処理装置において、
前記基板の上面には非晶質の半導体膜が形成され、
前記レーザ光を照射することにより、前記非晶質の半導体膜が多結晶の半導体膜に変質する、レーザ処理装置。
【請求項4】
請求項
1または2に記載のレーザ処理装置において、
前記部材は、ガラスまたは石英を主成分とする、レーザ処理装置。
【請求項5】
請求項
1または2に記載のレーザ処理装置において、
前記部材は、前記基板の前記上面全体を覆うように配置されている、レーザ処理装置。
【請求項6】
請求項
1または2に記載のレーザ処理装置において、
前記部材と前記基板とは、静電気によって固定される、レーザ処理装置。
【請求項7】
請求項
1または2に記載のレーザ処理装置において、
前記基板と前記部材との間に隙間が形成され、
前記隙間に不活性ガスが充填されている、レーザ処理装置。
【請求項8】
請求項
1または2に記載のレーザ処理装置において、
前記搬送ステージは、移動可能であり、
前記基板は、前記搬送ステージ上に固定される、レーザ処理装置。
【請求項9】
請求項
2に記載のレーザ処理装置において、
前記搬送ステージは、前記基板を浮上して搬送可能である、レーザ処理装置。
【請求項10】
以下を含むレーザ処理装置:
レーザ光を照射するレーザ発振器;
前記レーザ光が照射される基板を搬送するための搬送ステージ;および
前記基板の上方に配置され、かつ、上下方向に変位可能に構成された吸着部、
ここで、前記基板と前記吸着部との間に前記レーザ光が透過可能な部材が載せられ、
前記吸着部は、前記部材を吸着することが可能であり、
前記吸着部は、前記基板と前記部材とを密着させる状態あるいは前記基板と前記部材との間に隙間が存在する状態のいずれかが実現されるように、前記部材を吸着して変位可能に構成されており、
前記基板の上面には非晶質の半導体膜が形成され、
前記レーザ光を照射することにより、前記非晶質の半導体膜が多結晶の半導体膜に変質する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの製造技術およびレーザ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-54603号公報(特許文献1)および特開2016-162856号公報(特許文献2)には、レーザ光を照射する照射部と被処理体との間に存在するガス雰囲気に関する技術が記載されている。
【0003】
特開2011-204912号公報(特許文献3)には、被処理体で反射した反射光を反射ミラーによって再び被処理体に入射させる技術が記載されている。
【0004】
特開2011-204913号公報(特許文献4)には、被処理体で反射した反射光のパワーに基づいて、照射部から被処理体に入射させるレーザ光の出力を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-54603号公報
【文献】特開2016-162856号公報
【文献】特開2011-204912号公報
【文献】特開2011-204913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置に使用される基板の大型化が進んでいる。これに伴って、基板に形成されている非晶質膜を結晶膜に変化させるためのレーザアニール処理を施すレーザアニール装置の大型化も進んでいる。この場合、基板の大型化に起因して、レーザ光を照射する照射部と基板との間の雰囲気を安定化させることが困難になってきており、雰囲気の不安定性に基づく結晶膜の劣化(ムラ)が問題点として顕在化してきている。したがって、基板の大型化が進んでも、基板に形成される結晶膜の品質を向上させるためは、雰囲気を安定化させることが望まれている。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態におけるパネルの製造方法では、レーザ光が透過可能な部材を介して、非晶質の半導体膜にレーザ光を照射することにより、多結晶の半導体膜を形成する。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態によれば、結晶膜の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】液晶表示装置としての大画面テレビジョンを示す外観図である。
【
図2】液晶表示装置としてのモバイル通信機器を示す外観図である。
【
図3】実施の形態1における表示装置を製造する製造工程の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1における表示装置の構成例を示す図である。
【
図6】薄膜トランジスタのデバイス構造を示す断面図である。
【
図7】薄膜トランジスタの製造工程の流れを示すフローチャートである。
【
図8】チャネル膜の形成工程の流れを説明するフローチャートである。
【
図9】関連技術におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【
図10】実施の形態1におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【
図11】変形例1におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【
図12】変形例1におけるレーザ処理装置に特有の動作を説明するフローチャートである。
【
図13】変形例2におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【
図14】変形例3におけるレーザ処理装置で使用する搬送ステージの模式的な外観構成を示す図である。
【
図15】変形例3における搬送ステージを使用したレーザ処理装置を模式的に示す図である。
【
図16】アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に変化させる際に生じる現象を説明する図である。
【
図17】アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に変化させる際に生じる現象を説明する図である。
【
図18】アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に変化させる際に生じる現象を説明する図である。
【
図19】実施の形態2におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【
図20】実施の形態2における「基板構造体」の構成を示す平面図である。
【
図22】「基板構造体」の製造工程を示す断面図である。
【
図23】
図22に続く「基板構造体」の製造工程を示す断面図である。
【
図24】
図23に続く「基板構造体」の製造工程を示す断面図である。
【
図25】
図24に続く「基板構造体」の製造工程を示す断面図である。
【
図26】実施の形態2の変形例1におけるレーザ処理装置の構成を示す図である。
【
図27】実施の形態2の変形例2におけるレーザ処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0012】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0014】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0015】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0016】
(実施の形態1)
<表示装置の一例>
図1は、液晶表示装置としての大画面テレビジョンを示す外観図である。
図1において、液晶表示装置としての大画面テレビジョン100は、本実施の形態1における表示装置の一例となる。一方、
図2は、液晶表示装置としてのモバイル通信機器を示す外観図である。
図2においては、モバイル通信機器の一例として、スマートフォン200が示されており、このスマートフォンも本実施の形態1における表示装置の他の一例となる。
【0017】
このように本実施の形態1における表示装置としては、大きなサイズの大画面テレビジョン100から小さなサイズのスマートフォン200といった幅広いサイズの表示装置が対象となっている。さらに、本実施の形態1における表示装置は、液晶表示装置に限定されるものではなく、例えば、有機EL表示装置も対象となっている。
【0018】
<表示装置の製造工程>
次に、本実施の形態1における表示装置の製造工程の概要について、液晶表示装置の製造工程を例に挙げて簡単に説明する。
【0019】
図3は、本実施の形態1における表示装置を製造する製造工程の流れを示すフローチャートである。
【0020】
まず、TFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板のそれぞれを形成する。具体的には、ガラス基板を用意し、このガラス基板に対して、洗浄技術、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術およびアッシング技術を繰り返し使用することにより、ガラス基板に薄膜トランジスタを形成する。これにより、ガラス基板の表面に薄膜トランジスタを形成したTFTガラス基板を得ることができる(S101)。
【0021】
続いて、TFTガラス基板の表面に、例えば、ポリイミド膜からなる配向膜を塗布する(S102)。
【0022】
その後、配向膜を形成したTFTガラス基板の表面をラビングする(S103)。これにより、所定方向に揃った微細な傷を有する配向膜をTFTガラス基板の表面に形成することができる。その後、TFTガラス基板の表面にシール剤を塗布する(S104)。
【0023】
一方、他のガラス基板を用意し、このガラス基板に対して、ブラックマトリックスを形成した後、顔料分散法、染色法、電着法あるいは印刷法などを使用することにより、ガラス基板にカラーフィルタを形成する。これにより、ガラス基板の表面にカラーフィルタを形成したカラーフィルタガラス基板を得ることができる(S105)。
【0024】
続いて、カラーフィルタガラス基板の表面に、例えば、ポリイミド膜からなる配向膜を塗布する(S106)。その後、配向膜を形成したカラーフィルタガラス基板の表面をラビングする(S107)。これにより、所定方向に揃った微細な傷を有する配向膜をカラーフィルタガラス基板の表面に形成することができる。その後、カラーフィルタガラス基板の表面にスペーサを塗布する(S108)。
【0025】
次に、シール剤を塗布したTFTガラス基板と、スペーサを塗布したカラーフィルタガラス基板とを貼り合せた後(S109)、貼り合せたTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板に対してスクライブ(分断)する(S110)。これにより、貼り合せたTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板は、個々の液晶表示装置のサイズに切断されることになる。
【0026】
その後、シール剤とスペーサによって確保されているTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板との間の隙間に液晶を注入する(S111)。そして、液晶を注入した隙間(空間)を封止する(S112)。
【0027】
続いて、貼り合せたTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板を挟むように一対の偏光板を貼り付ける(S113)。このようにして液晶ディスプレイパネルを製造することができる。そして、製造された液晶ディスプレイパネルに対して、液晶ディスプレイパネルを駆動するための駆動回路を圧着した後(S114)、さらに、液晶ディスプレイパネルにバックライトを着装する(S115)。このようにして、液晶表示装置が完成する(S116)。以上のようにして、本実施の形態1における表示装置を製造できる。
【0028】
<表示装置の詳細な構成>
続いて、本実施の形態1における表示装置の詳細な構成について説明する。
【0029】
図4は、本実施の形態1における表示装置の構成例を示す図である。
図4に示すように、本実施の形態1における表示装置は、複数の画素10がマトリクス状(行列状)に配置された画素部11を有している。そして、本実施の形態1における表示装置は、画素部11を構成する複数の画素10を駆動する回路として、走査線駆動回路12と信号線駆動回路13とを有している。画素10は、走査線駆動回路12と電気的に接続された配線14(走査線)によって供給される走査信号によって、行ごとに選択状態か非選択状態かが決定される。また、走査信号によって選択されている画素10は、信号線駆動回路13と電気的に接続された配線15(信号線)によって、画像信号(映像信号)が供給される。
【0030】
ここで、
図4においては、複数の画素がマトリクス状に配置されているストライプ配置の例を示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、複数の画素10に対して、デルタ配置やベイヤ配置を採用することもできる。
【0031】
さらに、画素部11における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式などを使用することができる。カラー表示する際に画素10で制御する色要素としては、RGB(赤緑青)の三色に限定されるものではなく、例えば、RGBW(赤緑青白)や、RGBにイエロー、シアン、マゼンダなどを一色以上追加する構成も可能である。このとき、色要素のドット毎に表示領域のサイズ(大きさ)が異なっていてもよい。なお、本実施の形態1における表示装置は、カラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置にも適用することができる。
【0032】
次に、
図5は、
図4に示す画素の構成例を示す図である。
図5に示すように、画素10には、スイッチング素子として機能する薄膜トランジスタ16と、表示部として機能する液晶素子17とが設けられている。例えば、液晶素子17は、一対の電極(画素電極と対向電極)の間に液晶材料を挟んだ構造をしている。
【0033】
薄膜トランジスタ16においては、ゲート電極が配線14(走査線)と電気的に接続されている。一方、ソース電極およびドレイン電極のいずれか一方が、配線15A(信号線)と電気的に接続されているとともに、ソース電極およびドレイン電極の他方が液晶素子17の画素電極と電気的に接続されている。
【0034】
このように表示装置を構成するパネルは、複数の画素領域(複数の画素)を有し、複数の画素領域のそれぞれには、薄膜トランジスタが形成されている。
【0035】
<薄膜トランジスタのデバイス構造>
続いて、薄膜トランジスタ16のデバイス構造について説明する。
【0036】
図6は、薄膜トランジスタのデバイス構造を示す断面図である。
図6に示す薄膜トランジスタ16は、ボトムゲート型の構造をしている。
図6に示すように、薄膜トランジスタ16は、絶縁表面を有する基板20上に形成されたゲート電極21を有する。そして、このゲート電極21を覆い、かつ、基板20上に、例えば、酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜22が形成されている。さらに、このゲート絶縁膜22上には、多結晶の半導体膜であるポリシリコン膜からなるチャネル膜23が形成されており、このチャネル膜23と接触するようにソース電極24Aとドレイン電極24Bとが形成されている。そして、
図6に示すように、チャネル膜23とソース電極24Aとドレイン電極24Bとを覆うように、保護膜25が形成されている。以上のようにして、薄膜トランジスタ16が形成されている。
【0037】
<薄膜トランジスタの製造工程>
次に、薄膜トランジスタの製造工程について説明する。
【0038】
図7は、薄膜トランジスタの製造工程の流れを示すフローチャートである。
【0039】
まず、例えば、ガラスや石英からなる基板上にゲート電極を形成する(S201)。ゲート電極の材料は、例えば、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの金属材料やこれらの金属材料を主成分とする合金材料を使用することができる。
【0040】
次に、ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する(S202)。ゲート絶縁膜は、例えば、酸化シリコン膜から形成され、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を使用することにより形成することができる。
【0041】
そして、ゲート絶縁膜上にチャネル膜を形成する(S203)。このチャネル膜は、例えば、ポリシリコン膜から形成することができる。
【0042】
続いて、チャネル膜上にソース電極およびドレイン電極を形成する(S204)。ソース電極およびドレイン電極の材料としては、例えば、アルミニウム、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどを使用することができる。
【0043】
その後、チャネル膜、ソース電極およびドレイン電極を覆うように保護膜を形成する(S205)。この保護膜は、例えば、酸化シリコン膜から形成することができる。
【0044】
以上のようにして、薄膜トランジスタを製造することができる。
【0045】
<<チャネル膜の形成工程>>
ここで、チャネル膜の形成工程の詳細について説明する。
【0046】
図8は、チャネル膜の形成工程の流れを説明するフローチャートである。
【0047】
図8に示すように、チャネル膜の形成工程においては、まず、ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する(S301)。その後、アモルファスシリコン膜に対してレーザ光を照射して、レーザアニール処理を施す(S302)。これにより、アモルファスシリコン膜は、加熱される。この結果、アモルファスシリコン膜からポリシリコン膜が形成される(S303)。以上のようにして、ポリシリコン膜からなるチャネル膜を形成することができるが、以下では、チャネル膜をアモルファスシリコン膜から構成するのではなく、ポリシリコン膜から構成する有用性について説明する。
【0048】
チャネル膜は、電子の通り道となる機能を有することから、チャネル膜の特性が薄膜トランジスタの性能を左右することになる。このとき、チャネル膜をアモルファスシリコン膜から形成すると、経時変化に伴って、アモルファスシリコン膜中に不均一な結晶粒が形成されて、チャネル膜の不均一性が生じる結果、移動度の劣化に代表される薄膜トランジスタの経時劣化が顕在化する。すなわち、チャネル膜をアモルファスシリコン膜から形成する場合、アモルファスシリコン膜の経時劣化に起因して、長期間にわたって薄膜トランジスタの特性を維持することが困難となるのである。
【0049】
これに対し、チャネル膜をポリシリコン膜から形成する場合、ポリシリコン膜中には、整った結晶配列が形成されているため、ポリシリコン膜は、アモルファスシリコン膜に比べて、経時劣化が生じにくい。つまり、長期間にわたって薄膜トランジスタの特性を維持する観点からは、アモルファスシリコン膜よりも経時劣化が生じにくいポリシリコン膜をチャネル膜として使用することが望ましいのである。
【0050】
以上のことから、本実施の形態1では、チャネル膜をポリシリコン膜から構成している。具体的には、上述したように、アモルファスシリコン膜を形成した後、アモルファスシリコン膜に対してレーザアニール処理を施すことにより、アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に変化させている。したがって、チャネル膜をポリシリコン膜から構成するためには、レーザアニール処理(加熱処理)が必要であり、このレーザアニール処理を実施するためには、レーザ処理装置が必要となる。
【0051】
本実施の形態1における技術的思想は、レーザ処理装置に関する工夫であり、以下では、まず、関連技術におけるレーザ処理装置について説明した後、関連技術に存在する改善の余地について説明する。その後、関連技術に存在する改善の余地に対する工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明する。
【0052】
<関連技術におけるレーザ処理装置>
図9は、関連技術におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【0053】
ここで、本明細書でいう「関連技術」は、新規に発明者が見出した課題を有する技術であって、公知である従来技術ではないが、新規な技術的思想の前提技術(未公知技術)を意図して記載された技術である。
【0054】
図9において、関連技術におけるレーザ処理装置500は、レーザ光発生部501と、光減衰器502と、光学系モジュール503と、密閉筐体504と、処理室505とを備えている。レーザ光発生部501は、レーザ光を出力するレーザ発振器から構成されており、レーザ光発生部501の出力先には、レーザ光の出力を調整するための光減衰器(アッテネータ)502が配置されている。光減衰器502は、レーザ光の透過率を調整することにより、レーザ光の出力を調整する機能を有している。
【0055】
次に、光減衰器502で出力調整されたレーザ光の進行先には、光学系モジュールが配置されている。この光学系モジュールは、反射ミラー503Aとレンズ(図示せず)などから構成されており、光減衰器502から光学系モジュール503に入力されたレーザ光をラインビーム状のレーザ光に成形する機能を有している。そして、光学系モジュール503の出力部には、レーザ光に対して透光性を有するシールウィンドウ503Bが設けられており、このシールウィンドウ503Bを介して、光学系モジュール503で成形されたレーザ光は、光学系モジュール503から出力される。
【0056】
続いて、光学系モジュール503から出力されるレーザ光の進行先には、密閉筐体504が設けられている。この密閉筐体504の内部は、密閉空間となっており、この密閉空間をレーザ光が進行するようになっている。そして、密閉筐体504の出力部には、レーザ光に対して透光性を有するシールウィンドウ504Aが設けられている。
【0057】
そして、密閉筐体504から出力されるレーザ光の進行先には、処理室505が配置されている。この処理室505には、密閉筐体504の出力部に設けられているシールウィンドウ504Aと接続するシールボックス505Aが取り付けられている。このシールボックス505Aには、例えば、窒素ガスに代表される不活性ガスが供給されるようになっている。このとき、
図9に示すように、シールボックス505Aの上側は、密閉筐体504に設けられたシールウィンドウ504Aによって封止されている一方、シールボックス505Aの下側には、開口部OPが設けられている、したがって、シールボックス505Aに供給された窒素ガスは、開口部OPを介してシールボックス505Aの下側に排出されることになる。ここで、
図9に示すように、シールボックス505Aに設けられた開口部OPの下方には、搬送ステージ1が配置されており、この搬送ステージ1上には、例えば、ガラスや石英から形成されている基板2が配置される。この基板2の表面(上面)には、アモルファスシリコン膜3Aが形成されており、シールボックス505Aに設けられた開口部OPから排出された窒素ガスは、基板2の表面に形成されたアモルファスシリコン膜3Aに吹き付けられるようになっている。なお、基板2が搭載された搬送ステージ1は、例えば、
図9の矢印の方向に移動可能なように構成されており、搬送ステージ1上に配置されている基板2を矢印の方向に搬送可能になっている。
【0058】
<関連技術におけるレーザ処理装置の動作>
以上のようにして、関連技術におけるレーザ処理装置500が構成されており、以下に、関連技術におけるレーザ処理装置500の動作について、
図9を参照しながら説明する。
【0059】
図9において、レーザ光発生部501から出力されたレーザ光は、光減衰器502で光出力が調整された後、光学系モジュール503に入力する。光学系モジュール503では、内部に設けられたレンズ系によって、光学系モジュール503に入力したレーザ光がラインビーム形状に成形される。ラインビーム形状に成形されたレーザ光は、例えば、光学系モジュール503の内部に配置されている反射ミラー503Aで反射された後、シールウィンドウ503Bから密閉筐体504に入射する。密閉筐体504に入射したレーザ光は、密閉筐体504の内部空間を進行した後、シールウィンドウ504Aから処理室505に設けられたシールボックス505Aに入射する。そして、シールボックス505Aに入射したレーザ光は、シールボックス505Aに設けられている開口部OPを介して、搬送ステージ1上に配置されている基板2に照射される。詳細には、レーザ光は、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに照射される。このとき、シールボックス505Aには、窒素ガスが供給されており、シールボックス505Aの下部に設けられた開口部OPから窒素ガスが排気される。そして、シールボックス505Aに設けられた開口部OPから排出された窒素ガスは、搬送ステージ1上に配置されている基板2に吹き付けられる。詳細には、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに対して、窒素ガスが吹き付けられる。このようにして、関連技術におけるレーザ処理装置500では、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに対して、窒素ガスを吹き付けながら、ラインビーム形状に成形されたレーザ光が照射される。詳細には、搬送ステージ1を矢印の方向に移動させながら、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに対して、窒素ガスを吹き付けつつ、ラインビーム形状に成形されたレーザ光が照射される。この結果、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aが局所的に加熱されることになり、これによって、アモルファスシリコン膜3Aのレーザ光照射領域をポリシリコン膜に変化させながら、アモルファスシリコン膜3Aにおけるレーザ光照射領域を走査することができる。このようにして、関連技術によれば、アモルファスシリコン膜3Aの全体をポリシリコン膜に変化させることができる。
【0060】
<改善の検討>
レーザ処理装置は、液晶表示装置や有機EL表示装置に代表される高性能の表示装置に使用される薄膜トランジスタ(選択トランジスタ、スイッチングトランジスタ)の特性を向上するために使用されている。具体的に、レーザ処理装置は、薄膜トランジスタのチャネル膜を、経時劣化の生じやすいアモルファスシリコン膜ではなく、経時劣化の生じにくいポリシリコン膜から構成するために使用される。すなわち、レーザ処理装置は、アモルファスシリコン膜に対して、レーザアニール処理を施すことにより、アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に変化させるために使用される。
【0061】
ここで、レーザ処理装置を使用したレーザアニール処理は、マザーガラスの状態で実施されるが、近年では、製造コストを削減するために、1枚のマザーガラスから取得できるパネルの個数を増加させることが行なわれている。このことから、表示装置の製造工程で使用されるマザーガラスの大型化が進んでいる。このことは、マザーガラスの状態でレーザアニール処理を実施するレーザ処理装置も大型化する必要があることを意味する。
【0062】
この点に関し、従来技術では、レーザ処理装置の処理室全体を真空状態にして、レーザアニール処理を実施していたが、マザーガラスの大型化に伴うレーザ処理装置の大型化によって、処理室全体を真空状態にする「真空タイプ」のレーザ処理装置では、レーザ処理装置の重量化や生産性の低下(処理室の真空引きに要する時間の増大)を招くことから、代替装置の検討が必要とされている。
【0063】
そこで、例えば、上述した関連技術におけるレーザ処理装置(
図9参照)のように、シールボックス505Aを設けて、シールボックス505Aに供給されている窒素ガスを基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに局所的に吹き付けながら、アモルファスシリコン膜3Aに局所的にレーザ光を照射するレーザ処理装置が検討されている。このようなレーザ処理装置によれば、窒素ガスを吹き付けたアモルファスシリコン膜3Aの領域上の雰囲気が局所的に酸素濃度の低い雰囲気(真空状態に近い雰囲気)となる。すなわち、関連技術におけるレーザ処理装置によれば、シールボックス505Aを使用することにより、レーザ光照射領域の上方の雰囲気だけを酸素濃度の低い雰囲気(真空状態に近い雰囲気)にすることができるため、「真空タイプ」のレーザ処理装置よりも、レーザ処理装置の軽量化および生産性の向上を図ることができる。
【0064】
ただし、本発明者の検討によると、さらなるマザーガラスの大型化に伴って、関連技術におけるレーザ処理装置においても、改善の余地が存在することが明らかとなった。すなわち、マザーガラスのサイズが大きくなると、マザーガラスの全面に対してレーザ光を走査する時間も長くなる。この対策として、ラインビーム形状自体の長さを長くすることによって、走査時間を短縮することが考えられるが、この場合、ラインビーム形状自体の長さが長くなることによって、レーザ光をラインビーム形状に成形するための光学系モジュール503も大型化することになる。さらには、局所雰囲気を安定化させるためのシールボックス505Aやシールウィンドウ504Aも大きくなる。そして、シールボックス505Aが大きくなると、シールボックス505Aから窒素ガスを吹き付けることによって形成される局所雰囲気の安定性を維持することが困難となる。この結果、本発明者の検討によると、局所雰囲気の不安定性に起因して、ポリシリコン膜の均一性の低下が顕在化することが判明した。このように、マザーガラスのさらなる大型化が進むと、関連技術におけるレーザ処理装置では、薄膜トランジスタのチャネル膜として使用されるポリシリコン膜の均一性低下によって、薄膜トランジスタの特性向上を図ることが難しくなるのである。
【0065】
そこで、本実施の形態1では、マザーガラスの大型化に伴って、関連技術におけるレーザ処理装置で顕在化する薄膜トランジスタの特性低下という改善の余地に対する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について、図面を参照しながら説明することにする。
【0066】
<実施の形態1におけるレーザ処理装置の構成>
図10は、本実施の形態1におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【0067】
図10において、本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000は、レーザ光発生部501と、光減衰器502と、光学系モジュール503と、処理室505とを備えている。
【0068】
レーザ光発生部501は、レーザ光を出力するレーザ発振器から構成されており、レーザ光発生部501の出力先には、レーザ光の出力を調整するための光減衰器(アッテネータ)502が配置されている。光減衰器502は、レーザ光の透過率を調整することにより、レーザ光の出力を調整する機能を有している。
【0069】
次に、光減衰器502で出力調整されたレーザ光の進行先には、光学系モジュールが配置されている。この光学系モジュールは、反射ミラー503Aとレンズ(図示せず)などから構成されており、光減衰器502から光学系モジュール503に入力されたレーザ光をラインビーム状のレーザ光に成形する機能を有している。そして、光学系モジュール503の出力部には、開口部503Cが設けられており、この開口部503Cを介して、光学系モジュール503で成形されたレーザ光は、光学系モジュール503から出力される。
【0070】
そして、光学系モジュール503から出力されるレーザ光の進行先には、処理室505が配置されている。ここで、
図9に示すように、処理室505には、搬送ステージ1が配置されており、この搬送ステージ1上には、例えば、ガラスや石英から形成されている基板2が配置される。この基板2の表面(上面)には、非晶質の半導体膜が形成されている。具体的に、基板2の表面には、アモルファスシリコン膜3Aが形成されている。このアモルファスシリコン膜3A上には、透光性部材4が配置されている。この透光性部材4は、レーザ光に対して透光性を有しており、例えば、ガラスまたは石英を主成分とする材料から構成されている。特に、透光性部材4は、基板2と同じサイズのマザーガラスから構成することができる。この透光性部材4は、基板2の上面全体を覆うように配置される。そして、透光性部材4と基板2とは、例えば、静電気によって固定される。
【0071】
本明細書では、基板2と、基板2上に形成されているアモルファスシリコン膜3Aと、透光性部材4とを合わせて「基板構造体50」と呼ぶことにする。
【0072】
「基板構造体50」が搭載された搬送ステージ1は、例えば、
図9の矢印の方向に移動可能なように構成されており、搬送ステージ1上に配置されている基板構造体50を矢印の方向に搬送可能になっている。
【0073】
<実施の形態1におけるレーザ処理装置の動作>
以上のようにして、本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000が構成されており、以下に、本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000の動作について、
図10を参照しながら説明する。
【0074】
まず、上面に非晶質の半導体膜であるアモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2上に、レーザ光が透過可能な透光性部材4が配置される。その後、レーザ光発生部501において、レーザ光を発生させる。
【0075】
次に、
図10において、レーザ光発生部501から出力されたレーザ光は、光減衰器502で光出力が調整された後、光学系モジュール503に入力する。光学系モジュール503では、内部に設けられたレンズ系によって、光学系モジュール503に入力したレーザ光がラインビーム形状に成形される。ラインビーム形状に成形されたレーザ光は、例えば、光学系モジュール503の内部に配置されている反射ミラー503Aで反射された後、開口部503Cから処理室505に入射する。処理室505に入射したレーザ光は、処理室505の内部空間を進行した後、搬送ステージ1上に配置されている「基板構造体50」に照射される。詳細には、レーザ光は、「基板構造体50」の一部を構成する透光性部材4を介して、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに照射される。このようにして、本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000では、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに対して、ラインビーム形状に成形されたレーザ光が透光性部材4を介して照射される。詳細には、搬送ステージ1を矢印の方向に移動させながら、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに対して、ラインビーム形状に成形されたレーザ光が透光性部材4を介して照射される。この結果、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aが局所的に加熱されることになり、これによって、アモルファスシリコン膜3Aのレーザ光照射領域をポリシリコン膜に変化させながら、アモルファスシリコン膜3Aにおけるレーザ光照射領域を走査することができる。このようにして、本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000によれば、アモルファスシリコン膜3Aの全体をポリシリコン膜に変化させることができる。
【0076】
<実施の形態1における特徴>
続いて、本実施の形態1における特徴点について説明する。
【0077】
本実施の形態1における特徴点は、例えば、
図10に示すように、上面に非晶質の半導体膜であるアモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2上に、レーザ光に対して透光性を有する透光性部材4を配置した状態で、アモルファスシリコン膜3Aに対してレーザ光を照射する点にある。これにより、アモルファスシリコン膜3Aの上面は、透光性部材4で覆われて、透光性部材4と密着するため、アモルファスシリコン膜3Aの上方の雰囲気の不安定性(ゆらぎ)の影響を受けることがなくなる。この結果、本実施の形態1における特徴点によれば、レーザ光を照射して、アモルファスシリコン膜3Aをポリシリコン膜に変化させる際、雰囲気の不安定性に起因するポリシリコン膜の均一性低下(結晶粒のばらつき)を抑制することができる。すなわち、本実施の形態1における特徴点によれば、薄膜トランジスタのチャネル膜として使用されるポリシリコン膜の均一性低下を抑制できる結果、薄膜トランジスタの特性向上を図ることができる。
【0078】
このように、本実施の形態1における特徴点は、アモルファスシリコン膜3A上に透光性部材4を配置する点にある。つまり、本実施の形態1では、アモルファスシリコン膜3A上に透光性部材4を配置することにより、アモルファスシリコン膜3Aの上方の雰囲気が不安定になっても、不安定な雰囲気とアモルファスシリコン膜3Aとの接触が透光性部材4によって遮断される。このことから、本実施の形態1によれば、雰囲気の影響を受けることなく、アモルファスシリコン膜3Aをポリシリコン膜に変化させる際のポリシリコン膜の均一性を向上することができる。
【0079】
本実施の形態1における基本思想は、アモルファスシリコン膜3Aの上方の雰囲気の不安定性を抑制するように雰囲気を制御する思想ではなく、発想の転換を図って、アモルファスシリコン膜3A上に部材を配置することで、不安定な雰囲気とアモルファスシリコン膜3Aとの直接接触を遮断する思想である。このような本実施の形態1における基本思想によれば、雰囲気を制御するという困難性を回避しながらも、不安定な雰囲気に起因するポリシリコン膜の均一性の低下(結晶粒のばらつき)を抑制できる点で非常に優れた思想ということができる。そして、本実施の形態1では、不安定な雰囲気とアモルファスシリコン膜3Aとの直接接触を抑制する観点から、アモルファスシリコン膜3A上に部材を配置する一方、アモルファスシリコン膜3Aにレーザ光を照射する必要があることから、部材をレーザ光に対して透光性を有する透光性部材4から構成している。すなわち、本実施の形態1において、アモルファスシリコン膜3A上に透光性部材4を配置する技術的意義は、アモルファスシリコン膜3Aへのレーザ光の照射を確保しながら、アモルファスシリコン膜3Aと不安定な雰囲気との直接接触を遮断することにある。このようにして、本実施の形態1における特徴点によれば、雰囲気の不安定性に影響を受けることなく、アモルファスシリコン膜3Aから均一性の高いポリシリコン膜を形成できるため、ポリシリコン膜をチャネル膜とする薄膜トランジスタの特性向上を図ることができ、これによって、表示装置の性能向上を図ることができる。
【0080】
例えば、
図9に示す関連技術におけるレーザ処理装置500では、上面にアモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2の上方にシールボックス505Aを設けて、このシールボックス505Aに供給する窒素ガスをシールボックス505Aから基板2に向かって吹き付けている。これにより、関連技術におけるレーザ処理装置500では、窒素ガスの吹き付けで生じる低酸素濃度の局所雰囲気を基板2上に形成しながら、この局所雰囲気に曝されているアモルファスシリコン膜3Aの部分にレーザ光を照射することにより、アモルファスシリコン膜3Aを均一性のあるポリシリコン膜に変化させている。
【0081】
ところが、このように構成されている関連技術におけるレーザ処理装置500では、基板2の大型化に伴って、シールボックス505Aも大型化する必要があるが、シールボックス505Aが大型化すると、シールボックス505Aから吹き付ける窒素ガスによって生じる局所雰囲気を安定化(均一化)させることが困難となる。つまり、基板2の上方に形成される局所雰囲気の不安定性(不均一性)が増大するのである。
【0082】
この点に関し、大型化したシールボックス505Aからの窒素ガスの基板2への吹き付けで生じる局所雰囲気の不安定性を抑制するように制御することは困難である。なぜなら、シールボックス505Aの大型化に伴って、シールボックス505Aに下部に設けられている開口部OP全体から均一な窒素ガスの吹き付けを行なうことは難しく、窒素ガスの吹き付けで生じる局所雰囲気の安定性を高めるためには、非常に高い技術的困難性(ハードル)が存在するからである。
【0083】
そこで、本実施の形態1では、あえて非常に高い技術的困難性を伴う局所雰囲気の制御を行なうのではなく、発想の転換を図って、アモルファスシリコン膜3Aの表面から不安定な雰囲気の影響を遮断する思想に基づき、アモルファスシリコン膜3A上に透光性部材4を配置している。すなわち、本実施の形態1における技術的思想は、不安定な雰囲気とアモルファスシリコン膜3Aとの直接接触に起因して、ポリシリコン膜の均一性低下(結晶粒のばらつき)が生じることを考慮して、それならば、制御の困難な局所雰囲気をあえて形成することなく、不安定な雰囲気とアモルファスシリコン膜3Aとの直接接触を遮断すればよいという方向性に基づいてなされている。具体的に、この技術的思想は、アモルファスシリコン膜3A上に透光性部材4を配置した状態で、アモルファスシリコン膜3Aにレーザ光を照射するという構成(特徴点)によって具現化されている。
【0084】
このような本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000を使用して、薄膜トランジスタを含むパネル(表示装置)の製造工程を実現することにより、ポリシリコン膜をチャネル膜とする薄膜トランジスタの特性向上を図ることができ、これによって、表示装置の性能向上を図ることができる。
【0085】
さらに、本実施の形態1では、関連技術で採用している「局所雰囲気タイプ」のレーザ処理装置500の構成(
図9参照)から離れることによって、以下に示す利点も得ることができる。具体的に、本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000では、窒素ガスを基板2に吹き付けるためのシールボックス505Aが不要となる結果、密閉筐体504も不要となり、装置全体の簡素化および小型化を図ることができる。
【0086】
そして、シールボックス505Aが不要となるため、シールボックス505Aの定期交換に代表されるメンテナンス作業も不要となる。この結果、本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000では、表示装置の生産性向上やレーザ処理装置1000自体のコスト削減を図ることができる。
【0087】
また、レーザ処理装置1000の処理室505に「基板構造体50」を搬入あるいは搬出する際においては、処理室505を開放する必要がある。この場合、外部から空気が入り込んで処理室505の内部の雰囲気が乱される。しかしながら、本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000では、処理室505の内部の雰囲気が乱される場合であっても、アモルファスシリコン膜3A上に雰囲気の接触を遮断する透光性部材4が配置されているため、雰囲気の乱れに関係なく、雰囲気が安定するまでの待ち時間を確保しなくても、レーザ処理装置1000を稼働させることができる。これにより、レーザ処理装置1000を使用したパネルの製造方法によれば、スループットを向上できる。
【0088】
さらには、本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000では、アモルファスシリコン膜3A上に透光性部材4が配置されているため、アモルファスシリコン膜3A上に異物(パーティクル)が付着することも防止できる。すなわち、透光性部材4は、本来、不安定な雰囲気とアモルファスシリコン膜3Aとの直接接触を遮断しながら、アモルファスシリコン膜3Aにレーザ光を照射するために設けられているが、上述したように、透光性部材4には、例えば、レーザ処理装置1000に起因する異物のアモルファスシリコン膜3Aへの付着を抑制するという付随的な機能も有していることになる。
【0089】
本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000を使用して、アモルファスシリコン膜3Aに対するレーザアニール処理を実施した後は、基板2から透光性部材4を取り外すことから、レーザ処理装置1000に起因する異物が、その後のパネルの製造工程に悪影響を及ぼすことを防止できる。これにより、本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000を使用したパネルの製造方法によれば、完成品である表示装置の歩留り向上を図ることができる。
【0090】
なお、透光性部材4としては、例えば、何も処理されていないマザーガラスを使用することができる。これにより、透光性部材4を新たに製造する必要がなくなる利点が得られる。ただし、透光性部材4は、マザーガラスから構成する場合に限定されず、レーザ光に対して透光性を有する部材から幅広く構成することができる。
【0091】
<さらなる工夫点>
次に、さらなる工夫点について説明する。本実施の形態1におけるレーザ処理装置1000では、例えば、
図10に示すように、シールボックスが不要となるため、シールボックスが配置されていた「基板構造体50」の上方空間に空きスペース510が形成される。そこで、この空きスペース510を有効活用することが望まれる。
【0092】
ここで、本実施の形態1では、アモルファスシリコン膜3A上に透光性部材4を配置しているため、不安定な雰囲気とアモルファスシリコン膜3Aとの直接接触に起因して、ポリシリコン膜の均一性低下(結晶粒のばらつき)が生じること効果的に抑制できる。
【0093】
一方、透光性部材4を介して、アモルファスシリコン膜3Aにレーザ光を照射するため、透光性部材4でのレーザ光の反射が生じる。このことは、本実施の形態1では、レーザ光のエネルギーをアモルファスシリコン膜3Aの加熱に使用する観点から、さらなる改善の余地が存在することを意味している。すなわち、透光性部材4でのレーザ光の反射によって、アモルファスシリコン膜3Aの加熱に使用されるレーザ光のエネルギーが減少することになる。そこで、透光性部材4での反射光を有効活用することも望まれる。
【0094】
以上のことから、空きスペース510を有効活用する観点と、透光性部材4での反射光を有効活用する観点とを考慮して、以下に示す変形例1~変形例2が想到されている。
【0095】
<<変形例1>>
図11は、本変形例1におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【0096】
本変形例1におけるレーザ処理装置1000の構成(
図11参照)は、実施の形態1におけるレーザ処理装置1000の構成(
図10参照)とほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明することにする。
【0097】
図11において、本変形例1におけるレーザ処理装置1000では、不要なシールボックスを除去することにより生まれた空きスペースに、「基板構造体50」によるレーザ光の反射光のエネルギーを測定する測定器506が配置されている。すなわち、搬送ステージ1の上方に測定器506が配置されている。そして、この測定器506は、測定器506から出力された値に基づいてレーザ光のエネルギーを制御可能な制御部507と電気的に接続されている。この制御部507は、例えば、レーザ処理装置1000の内部に設けることもできるが、これに限らず、レーザ処理装置1000の外部に設けるように構成されていてもよい。
図11に示すように、この制御部507は、光減衰器502と接続されており、光減衰器502でのレーザ光の透過率を調整することにより、レーザ光の出力を制御可能に構成されている。
【0098】
本変形例1におけるレーザ処理装置1000は、上記のように構成されており、以下に、本変形例1におけるレーザ処理装置1000に特有の動作について、図面を参照しながら説明する。
図12は、本変形例1におけるレーザ処理装置に特有の動作を説明するフローチャートである。まず、
図11において、上面に非晶質の半導体膜であるアモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2上に、レーザ光が透過可能な透光性部材4が配置される。その後、レーザ光発生部501において、レーザ光を発生させる(レーザ発振)(S401)。次に、
図11において、レーザ光発生部501から出力されたレーザ光は、光減衰器502に入射する。このとき、光減衰器502と電気的に接続されている制御部507によって、予め光減衰器502におけるレーザ光の透過率が設定されている。すなわち、制御部507によって、光減衰器502から出力されるレーザ光のエネルギーが所定範囲に設定されている(S402)。その後、光減衰器502で光出力が調整されたレーザ光は、光学系モジュール503に入力する。光学系モジュール503では、内部に設けられたレンズ系によって、光学系モジュール503に入力したレーザ光がラインビーム形状に成形される。ラインビーム形状に成形されたレーザ光は、例えば、光学系モジュール503の内部に配置されている反射ミラー503Aで反射された後、開口部503Cから処理室505に入射する。処理室505に入射したレーザ光は、処理室505の内部空間を進行した後、搬送ステージ1上に配置されている「基板構造体50」に照射される(S403)。詳細には、レーザ光は、「基板構造体50」の一部を構成する透光性部材4を介して、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに照射される。
【0099】
ここで、レーザ光の一部は、「基板構造体50」によって反射される。この「基板構造体50」で反射された反射光は、シールボックスを除去することにより生まれた空きスペースに配置されている測定器506に入射する。そして、測定器506では、反射光のエネルギーが測定される(S404)。次に、測定器506からは、反射光のエネルギーに対応したデータ(値)が制御部507に出力される。このとき、測定器506からのデータ(値)を入力した制御部507は、このデータが所定範囲内に入っているかを判定する(S405)。ここで、測定器506から出力されたデータが所定範囲内に入っている場合には、制御部507は、設定通りのエネルギーを有するレーザ光が「基板構造体50」に照射されていると判断して、「基板構造体50」へのレーザ光の照射を継続する(S406)。一方、測定器506から出力されたデータが所定範囲から外れている場合、制御部507は、設定通りのエネルギーを有するレーザ光が「基板構造体50」に照射されていないと判断して(S405)、光減衰器502でのレーザ光の透過率の設定を新たに変更する。具体的に、測定器506から出力されたデータが所定範囲の上限値を上回っている場合、制御部507は、光減衰器502でのレーザ光の透過率が小さくなるように設定を変更する。一方、測定器506から出力されたデータが所定範囲の下限値を下回っている場合、制御部507は、光減衰器502でのレーザ光の透過率が大きくなるように設定を変更する。このようにして、本変形例1によれば、空きスペースを有効活用しながら、透光性部材4での反射光も有効活用することができる。具体的に、本変形例1によれば、空きスペースに測定器506を設け、かつ、測定器506からの出力に基づいて、光減衰器502でのレーザ光の透過率を制御する制御部507を設けることにより、設定通りのエネルギーを有するレーザ光を「基板構造体50」に照射することができる。
【0100】
<<変形例2>>
続いて、実施の形態1における変形例2について説明する。
【0101】
図13は、本変形例2におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【0102】
本変形例2におけるレーザ処理装置1000の構成(
図13参照)は、実施の形態1におけるレーザ処理装置1000の構成(
図10参照)とほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明することにする。
【0103】
図13において、本変形例2におけるレーザ処理装置1000では、不要なシールボックスを除去することにより生まれた空きスペースに、「基板構造体50」によるレーザ光の反射光をさらに「基板構造体50」に向って反射する反射鏡508が配置されている。すなわち、搬送ステージ1の上方に反射鏡508が配置されている。この反射鏡508は、反射鏡508によって反射されたレーザ光により「基板構造体50」を予備加熱することが可能な角度で配置されている。具体的には、
図13に示すように、反射鏡508で反射されたレーザ光が、レーザ光が「基板構造体50」に照射された位置L1よりも、搬送ステージ1の搬送方向(矢印方向)において後ろ側となる位置L2に照射されるように、反射鏡508の角度と位置が調整されている。
【0104】
本変形例2におけるレーザ処理装置1000は、上記のように構成されており、以下に、本変形例2におけるレーザ処理装置1000の動作について、図面を参照しながら説明する。まず、
図13において、上面に非晶質の半導体膜であるアモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2上に、レーザ光が透過可能な透光性部材4が配置される。その後、レーザ光発生部501において、レーザ光を発生させる。次に、
図13において、レーザ光発生部501から出力されたレーザ光は、光減衰器502に入射する。その後、光減衰器502で光出力が調整されたレーザ光は、光学系モジュール503に入力する。光学系モジュール503では、内部に設けられたレンズ系によって、光学系モジュール503に入力したレーザ光がラインビーム形状に成形される。ラインビーム形状に成形されたレーザ光は、例えば、光学系モジュール503の内部に配置されている反射ミラー503Aで反射された後、開口部503Cから処理室505に入射する。処理室505に入射したレーザ光は、処理室505の内部空間を進行した後、搬送ステージ1上に配置されている「基板構造体50」の位置R1に照射される。詳細には、レーザ光は、「基板構造体50」の一部を構成する透光性部材4を介して、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aの位置R1に照射される。これにより、アモルファスシリコン膜3Aの位置R1においては、アモルファスシリコン膜3Aが加熱されて、アモルファスシリコン膜3Aがポリシリコン膜に変化する。ここで、
図13に示すように、アモルファスシリコン膜3Aの位置R1に照射されたレーザ光の一部は、「基板構造体50」によって反射され、反射鏡508に入射する。そして、反射鏡508で反射した反射光(レーザ光)は、搬送ステージ1上に配置されている「基板構造体50」の位置R2に照射される。この結果、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aの位置R2に存在する部分が予備加熱される。すなわち、位置R2に照射されるレーザ光(反射光)の強度は、位置R1に照射されるレーザ光の強度よりも小さいことから、アモルファスシリコン膜3Aの位置R2においては、アモルファスシリコン膜3Aをポリシリコン膜に変化させるため必要な加熱量よりも小さな加熱量が加えられることになる(予備加熱)。
【0105】
その後、
図13において、「基板構造体50」が配置されている搬送ステージ1を矢印方向に移動させると、位置R2で予備加熱されているアモルファスシリコン膜3Aの部分が、位置R1に移動して、レーザ光が照射されることになる。この結果、位置R2で予備加熱されているアモルファスシリコン膜3Aの部分は、移動した位置R1において、充分な加熱が加えられることにより、ポリシリコン膜に変化する。
【0106】
このように、本変形例2でも、空きスペースを有効活用しながら、「基板構造体50」での反射光も有効活用することができる。具体的に、本変形例2では、「基板構造体50」で反射したレーザ光(反射光)を反射鏡508で「基板構造体50」に再照射して予備加熱するように構成しているため、良い結晶を得るために必要なレーザ光のエネルギー密度を低減することができる。この結果、余ったレーザ光のエネルギー密度によって、より幅の広いラインビームを形成することができるため、処理速度を向上することができる。すなわち、本変形例2におけるレーザ処理装置1000によれば、スループットを向上することができる。
【0107】
<<変形例3>>
本変形例3では、搬送ステージに対する工夫点について説明する。
【0108】
図14は、本変形例3におけるレーザ処理装置で使用する搬送ステージの模式的な外観構成を示す図である。
図14に示すように、本変形例3における搬送ステージ600は、複数の「基板構造体50」を配置できる大きな平面サイズを有しており、搬送ステージ600上に配置される「基板構造体50」は、固定された搬送ステージ600上において、浮上しながら搬送される。
【0109】
例えば、
図10に示す実施の形態1における搬送ステージ1は、1枚の「基板構造体50」を配置できる程度の平面サイズを有しており、搬送ステージ1自体は、搬送ステージ1上に搭載された「基板構造体50」とともに矢印方向に移動可能に構成されている。これにより、「基板構造体50」を搭載した搬送ステージ1が矢印方向に移動して、「基板構造体50」の全面にラインビーム形状に成形されたレーザ光を走査することができる。
【0110】
一方、
図14に示す本変形例3における搬送ステージ600は、
図10に示す実施の形態1における搬送ステージ1とは異なり、固定されている。そして、固定されている搬送ステージ600上に複数の「基板構造体50」(
図14では、4枚の「基板構造体50」が図示されている)が配置されており、この複数の「基板構造体50」は、搬送ステージ600上を浮上しながら、例えば、
図14の矢印方向に移動可能に構成されている。そして、
図14において、ラインビーム形状に成形されたレーザ光60が示されており、このレーザ光60が照射される位置を、搬送ステージ600上を浮上しながら搬送されている複数の「基板構造体50」が通り過ぎる際に、「基板構造体50」の一部を構成するアモルファスシリコン膜にレーザ光60が照射される。これにより、浮上しながら搬送されている複数の「基板構造体50」に対して、レーザ光60を走査することができる。
【0111】
実施の形態1における搬送ステージ1を使用した場合には、レーザ処理装置に1枚の「基板構造体50」しか搬入されていないため、「基板構造体50」を入れ替える際には、レーザアニール処理を実施することができない。これに対し、本変形例3における搬送ステージ600を使用する場合には、レーザ処理装置に複数の「基板構造体50」が同時に搬入されているため、同時に搬入されている複数の「基板構造体50」に対して、連続してレーザアニール処理を実施することができる。この結果、本変形例3における搬送ステージ600を使用したレーザ処理装置によれば、実施の形態1における搬送ステージ1を使用したレーザ処理装置よりもスループットを向上することができる。
【0112】
図15は、本変形例3における搬送ステージを使用したレーザ処理装置を模式的に示す図である。
図15に示すように、本変形例3における搬送ステージ600を使用したレーザ処理装置1000では、搬送ステージ600の表面から吹き出すガスによって、「基板構造体50」は、搬送ステージ600上を浮上しながら、矢印方向に搬送されるように構成されている。これにより、搬送ステージ600上を浮上しながら、矢印方向に搬送される「基板構造体50」に対して、レーザ光を照射することができる。
【0113】
(実施の形態2)
<レーザ処理に関する知見>
まず、レーザ光をアモルファスシリコン膜に照射することにより、アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に変化させる際に生じる現象について説明する。
【0114】
図16には、基板2上に形成されたアモルファスシリコン膜3Aに対して、レーザ光(矢印)を照射する様子が示されている。この場合、アモルファスシリコン膜3Aに対して、レーザ光が照射されることにより、アモルファスシリコン膜3Aは、レーザ光のエネルギーを吸収して加熱される。この結果、アモルファスシリコン膜3Aは、ポリシリコン膜に変化する。ここで、例えば、レーザ光は、複数回のパルスとして、アモルファスシリコン膜3Aに照射される。このとき、
図17には、例えば、初めの数回のパルスがアモルファスシリコン膜3Aに照射されてポリシリコン膜3Bが形成されている状態が模式的に示されている。
図17において、初めの数回のパルスを照射した段階では、ポリシリコン膜3Bの表面に、周期性の少ない微細な突起70Aが形成されている。すなわち、アモルファスシリコン膜3Aにレーザ光を照射すると、レーザ光の干渉効果によって、光の強め合うところで、結晶粒がよく成長する結果、光の強め合う位置に対応して、ポリシリコン膜3Bの表面に微細な突起70Aが形成される。つまり、アモルファスシリコン膜3Aからポリシリコン膜3Bに変化する際、ポリシリコン膜3Bの表面には、微細な突起70Aが形成され、この微細な突起70Aは、結晶粒の粒界に沿って形成される。この点に関し、初めの数回のパルスを照射した段階では、微細な突起70Aの形成位置の周期性は低く、したがって、微細な突起70Aが結晶粒の粒界を規定することを考慮すると、初めの数回のパルスを照射した段階では、ポリシリコン膜3Bに形成される結晶粒の均一性が低いことを意味する。これは、初めの数回のパルスを照射した段階では、光の強め合う位置の周期性が明確に顕在化しないからであると考えられている。
【0115】
ところが、照射するパルスの数を増大させると、光の強め合う位置の周期性が明確化され、例えば、
図18に示すように、突起70Bの形成位置の周期性は高くなる。すなわち、照射するパルスの数を増大させると、ポリシリコン膜3Bの表面に成長する突起Bの周期性が高くなり、これによって、ポリシリコン膜3Bを構成する結晶粒の均一性が向上する。
【0116】
このような現象から、アモルファスシリコン膜3Aに対して、光パルスを照射すると、アモルファスシリコン膜3Aは、ポリシリコン膜3Bに変化するとともに、ポリシリコン膜3Bの表面に突起が形成されることがわかる。そして、突起が微細な突起70Aから突起70Bに成長することによって、ポリシリコン膜3Bを構成する結晶粒の均一性が高まることがわかる。つまり、突起のサイズと結晶粒の均一性とは一定の相関関係があることが想定される。さらに、照射するパルスの数を増大させると、光の強め合う位置が明確化される結果、突起が周期性の低い微細な突起70Aから周期性の高い突起70Bに成長することがわかる。このような知見に基づくと、ポリシリコン膜3Bを構成する結晶粒の均一性を向上する観点からは、照射するパルスの数を複数回にすることが望ましい。
【0117】
ここで、前記実施の形態1では、例えば、
図10に示すように、基板2上に形成されているアモルファスシリコン膜3Aと透光性部材4とが密着している。このことは、前記実施の形態1における「基板構造体50」の構成では、アモルファスシリコン膜3Aと透光性部材4とが密着しているため、アモルファスシリコン膜3Aをポリシリコン膜に変化させる際に形成される突起が成長しにくくなることを意味している。さらに、突起が成長しにくくなるということは、上述した知見を考慮すると、ポリシリコン膜を構成する結晶粒の均一性を向上することが難しくなることを意味する。そして、ポリシリコン膜を構成する結晶粒の均一性を向上することが難しくなるということは、このポリシリコン膜をチャネル膜として使用する薄膜トランジスタの電流駆動力を向上できなくなることを意味する。なぜなら、ポリシリコン膜を構成する結晶粒の均一性が低下するということは、ポリシリコン膜での移動度が低下することを意味し、これによって、薄膜トランジスタの電流駆動力が低下することを意味するからである。したがって、前記実施の形態1における「基板構造体50」の構成では、薄膜トランジスタの特性向上を図る観点から最善の構成とは言えないとも考えられる。
【0118】
ただし、前記実施の形態1における「基板構造体50」の構成でも、薄膜トランジスタの移動度の向上がそれほど要求されない用途においては、充分に有効な技術的思想となる。具体的には、表示装置として、大画面テレビジョンを想定する場合には、前記実施の形態1における技術的思想は有効である。なぜなら、大画面テレビジョンでは、薄膜トランジスタのサイズがそれほど小さくならないため、薄膜トランジスタのゲート幅を容易に大きく設計することが可能となる結果、薄膜トランジスタのチャネル膜の移動度を大きくしなくても、ゲート幅を大きくすることによって、薄膜トランジスタの電流駆動力の向上を図ることができるからである。
【0119】
これに対し、サイズの小さなスマートフォンを想定すると、前記実施の形態1における技術的思想に対して、さらなる工夫が必要とされる。なぜなら、サイズの小さなスマートフォンにおいては、薄膜トランジスタのサイズを小さくする必要があることから、薄膜トランジスタのゲート幅を容易に大きく設計することが困難となるからである。つまり、スマートフォンに形成される薄膜トランジスタの電流駆動力を向上するためには、ゲート幅を大きくする手段を採用することが困難となる結果、薄膜トランジスタのチャネル膜を構成するポリシリコン膜の移動度を向上させる必要があるからである。すなわち、スマートフォンに形成される薄膜トランジスタの電流駆動力を向上するためには、ポリシリコン膜を構成する結晶粒の均一性をできるだけ向上させて、移動度の向上を図る必要がある。
【0120】
そこて、例えば、スマートフォンなどの小型モバイル通信機器用途は、前記実施の形態1における技術的思想をさらに改善する必要がある。以下では、前記実施の形態1における技術的思想に基づき、さらにポリシリコン膜を構成する結晶粒の均一性を高める工夫を施した本実施の形態2における技術的思想について、図面を参照しながら説明する。
【0121】
<実施の形態2における特徴>
図19は、本実施の形態2におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【0122】
本実施の形態2におけるレーザ処理装置1000の構成(
図19参照)は、前記実施の形態1におけるレーザ処理装置1000の構成(
図10参照)とほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明することにする。
【0123】
本実施の形態2における特徴点は、例えば、
図19に示すように、基板2上に形成されたアモルファスシリコン膜3Aと、アモルファスシリコン膜3Aの上方に配置される透光性部材4との間に隙間5を設ける点にある。つまり、本実施の形態2における特徴点は、基板2と、この基板2上に形成されたアモルファスシリコン膜3Aと、隙間5を介してアモルファスシリコン膜3Aの上方に配置された透光性部材4とから「基板構造体50」を構成する点にある。これにより、本実施の形態2によれば、アモルファスシリコン膜3Aをポリシリコン膜に変化させる際に形成される突起を隙間5に成長させることができる。つまり、本実施の形態2では、アモルファスシリコン膜3Aと透光性部材4との間に隙間5を設けることにより、この隙間5が突起の成長スペースとなる。この結果、本実施の形態2によれば、突起が成長しやすくなるため、ポリシリコン膜を構成する結晶粒の均一性を向上することができることになる。そして、ポリシリコン膜を構成する結晶粒の均一性を向上することが容易になるということは、このポリシリコン膜をチャネル膜として使用する薄膜トランジスタの電流駆動力を向上できることを意味する。なぜなら、ポリシリコン膜を構成する結晶粒の均一性が向上するということは、ポリシリコン膜での移動度が向上することを意味し、これによって、薄膜トランジスタの電流駆動力を向上できることを意味するからである。したがって、本実施の形態2における隙間5を有する「基板構造体50」の構成によれば、薄膜トランジスタの特性向上を図ることができる。特に、上述したように、スマートフォンに代表される小型モバイル通信機器では、薄膜トランジスタのチャネル膜の移動度を向上させることが薄膜トランジスタの特性向上を実現する上で重要である。この点に関し、本実施の形態2における「基板構造体50」を使用したレーザ処理装置1000によって、レーザアニール工程(レーザ処理工程)を実施することにより、薄膜トランジスタのチャネル膜であるポリシリコン膜の結晶粒の均一性を向上できることから、ポリシリコン膜の移動度を向上できる。この結果、本実施の形態2によれば、特に、小型モバイル通信機器(表示装置)に使用される薄膜トランジスタの特性向上を通じて、表示装置の性能向上を図ることができる。
【0124】
ここで、
図19において、アモルファスシリコン膜3Aと透光性部材4との間に形成される隙間5の高さL(アモルファスシリコン膜3Aと透光性部材4との間の間隔)は、アモルファスシリコン膜3Aの膜厚よりも広いことが望ましい。なぜなら、隙間5の高さLがアモルファスシリコン膜3Aの膜厚と同程度以下になると、この隙間5におけるレーザ光の多重反射に起因する不所望な干渉が生じやすくなり、この干渉が、突起の周期性を乱す原因となるからである。一方、隙間5の高さLが、アモルファスシリコン膜3Aの膜厚よりも充分に広くなりと、明確な干渉が起こりにくくなり、突起の周期性を乱す干渉が生じにくくなるため、アモルファスシリコン膜3Aと透光性部材4との間に形成される隙間5の高さLは、アモルファスシリコン膜3Aの膜厚よりも広いことが望ましいのである。
【0125】
<具体的な「基板構造体50」の構成例>
次に、本実施の形態2における「基板構造体50」の構成例について説明する。
【0126】
図20は、本実施の形態2における「基板構造体50」の模式的な構成を示す平面図である。
図20に示すように、本実施の形態2における「基板構造体50」では、平面形状が矩形形状の透光性部材4の下層に網目状の突起部6が形成されており、この網目状の突起部6によって、基板2は、複数のパネル領域7に区画されている。
【0127】
図21は、
図20のA-A線で切断した断面図である。
図21において、基板2上には、アモルファスシリコン膜3Aが形成されており、このアモルファスシリコン膜3A上には、複数の突起部6が形成されている。そして、複数の突起部6で支持されるようにして、アモルファスシリコン膜3Aの上方に透光性部材4が配置されている。ここで、アモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2と透光性部材4と複数の突起部6で囲まれるように複数の隙間5が形成されており、この隙間5には、例えば、窒素ガスに代表される不活性ガスが充填されている。特に、この不活性ガスに静電気処理がなされている場合には、この静電気処理がなされた不活性ガスによって、アモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2と透光性部材4とが複数の突起部6に固定される。ただし、これに限らず、例えば、剥離可能な接着材を使用して、アモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2と透光性部材4とが複数の突起部6に固定することもできる。
【0128】
以上のようにして、本実施の形態2における「基板構造体50」が構成されている。
【0129】
<「基板構造体50」の製造方法>
本実施の形態2における「基板構造体50」は、上記のように構成されており、以下に、その製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0130】
まず、
図22に示すように、基板2上に非晶質の半導体膜であるアモルファスシリコン膜3Aを形成する。次に、
図23に示すように、上面に非晶質の半導体膜であるアモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2上に、複数の突起部6を形成する。具体的に、複数の突起部6は、アモルファスシリコン膜3A上にレジスト膜を塗布した後、このレジスト膜に対して露光・現像処理を施すことにより形成することができる。続いて、
図24および
図25に示すように、例えば、窒素ガスに代表される不活性ガス8の雰囲気中で、複数の突起部6を介して、アモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2上に、レーザ光が透過可能な透光性部材を載せる。このとき、不活性ガスに静電気処理が施されている場合には、静電気力によって、透光性部材4は、複数の突起部6に固定される。
【0131】
このようにして、本実施の形態2における「基板構造体50」を製造した後、この「基板構造体50」を、例えば、
図19に示すレーザ処理装置1000の処理室505に搬入する。そして、
図19に示すように、透光性部材4の下方に形成されている隙間5を介して、アモルファスシリコン膜3Aに対してレーザ光を照射することにより、アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に変化させる。このとき、本実施の形態2における「基板構造体50」では、
図25に示すように、透光性部材4とアモルファスシリコン膜3Aとの間に隙間5が存在するため、隙間5に充分な突起が形成することが可能となる。このことから、本実施の形態2によれば、ポリシリコン膜を構成する結晶粒の均一性を向上できる。
【0132】
<変形例1>
続いて、実施の形態2における変形例1について説明する。
【0133】
図26は、本変形例1におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【0134】
本変形例1におけるレーザ処理装置1000の構成(
図26参照)は、実施の形態2におけるレーザ処理装置1000の構成(
図19参照)とほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明することにする。
【0135】
図26において、本変形例1におけるレーザ処理装置1000は、「基板構造体50」の上方に設けられた吸着部800を有する。この吸着部800は、上下方向に吸着部800を変位可能に構成する変位機構801と、「基板構造体50」の透光性部材4を吸着する吸着機構802とから構成されている。
【0136】
この吸着部800は、吸着部800を制御する制御部803と電気的に接続されている。また、制御部803は、ポンプ804と吸着部800との間に設けられたバルブ805と電気的に接続されている。制御部803は、吸着部800の変位機構801を制御可能に構成されているとともに、バルブ805の開度を制御可能に構成されている。
【0137】
本変形例1におけるレーザ処理装置1000は、上記のように構成されており、以下に、本変形例1におけるレーザ処理装置1000の動作について、図面を参照しながら説明する。まず、
図26において、制御部803は、バルブ805の開度を調整する。これにより、バルブ805を介してポンプ804と接続されている吸着部800の吸着機構802からの吸着圧力が調整されて、吸着部800に「基板構造体50」の透光性部材4が吸着する。次に、制御部803は、吸着部800の変位機構801を制御する。これにより、「基板構造体50」の透光性部材4が吸着している吸着部800が上下方向に変位する。この結果、アモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2と透光性部材4との間の隙間5の高さが調整される。以上のようにして、制御部803による吸着部800とバルブ805との制御によって、アモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2と透光性部材4との間の隙間5の高さが所望の値に設定される。
【0138】
その後、レーザ光発生部501において、レーザ光を発生させる。
【0139】
次に、
図26において、レーザ光発生部501から出力されたレーザ光は、光減衰器502で光出力が調整された後、光学系モジュール503に入力する。光学系モジュール503では、内部に設けられたレンズ系によって、光学系モジュール503に入力したレーザ光がラインビーム形状に成形される。ラインビーム形状に成形されたレーザ光は、例えば、光学系モジュール503の内部に配置されている反射ミラー503Aで反射された後、開口部503Cから処理室505に入射する。処理室505に入射したレーザ光は、処理室505の内部空間を進行した後、搬送ステージ1上に配置されている「基板構造体50」に照射される。詳細には、レーザ光は、「基板構造体50」の一部を構成する透光性部材4と隙間5を介して、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに照射される。このようにして、本変形例1におけるレーザ処理装置1000では、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに対して、ラインビーム形状に成形されたレーザ光が透光性部材4と隙間5とを介して照射される。詳細には、搬送ステージ1を矢印の方向に移動させながら、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aに対して、ラインビーム形状に成形されたレーザ光が透光性部材4と隙間5とを介して照射される。この結果、基板2の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3Aが局所的に加熱されることになり、これによって、アモルファスシリコン膜3Aのレーザ光照射領域をポリシリコン膜に変化させながら、アモルファスシリコン膜3Aにおけるレーザ光照射領域を走査することができる。このようにして、本変形例1におけるレーザ処理装置1000によれば、アモルファスシリコン膜3Aの全体をポリシリコン膜に変化させることができる。このとき、本変形例1においても、
図26に示すように、透光性部材4とアモルファスシリコン膜3Aとの間に隙間5が存在するため、隙間5に充分な突起が形成することが可能となる。このことから、本変形例1においても、ポリシリコン膜を構成する結晶粒の均一性を向上できる。
【0140】
<<変形例1の有用性>>
上述したように、本変形例1の構成によれば、アモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2と透光性部材4との間の隙間の高さを変化させることができる。
【0141】
ここで、実施の形態2の「<レーザ処理に関する知見>」の欄で説明したように、アモルファスシリコン膜3Aをポリシリコン膜3Bに変化させる際、表面に突起が形成され、この突起のサイズとポリシリコン膜3Bを構成する結晶粒のサイズとは相関関係がある。例えば、突起のサイズが大きく成長すればするほど、ポリシリコン膜3Bを構成する結晶粒のサイズは大きくなる。したがって、例えば、本変形例1における吸着部800を設けることにより、アモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2と透光性部材4との間の隙間の高さを変化させることができるということは、ポリシリコン膜3Bを構成する結晶粒のサイズを調整できることを意味する。例えば、本変形例1の吸着部800の構成を採用すれば、隙間5を無くして、アモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2と透光性部材4とを密着させることもできる一方、隙間5を大きくすることもできる。
【0142】
実際に、隙間5を無くした場合には、ポリシリコン膜3Bを構成する結晶粒のサイズは、数nm以上数十nm以下程度にすることができる。一方、例えば、隙間5の高さをアモルファスシリコン膜3Aの膜厚よりも広くし、かつ、隙間5に不活性ガスを充填した場合、ポリシリコン膜3Bを構成する結晶粒のサイズは、数百nmのサイズまで大きくできる。
【0143】
<変形例2>
次に、実施の形態2における変形例2について説明する。
【0144】
図27は、本変形例2におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す図である。
【0145】
本変形例2におけるレーザ処理装置1000の構成(
図27参照)は、実施の形態2におけるレーザ処理装置1000の構成(
図19参照)とほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明することにする。
【0146】
図27において、本変形例2におけるレーザ処理装置1000の搬送ステージ1上に配置される「基板構造体50」は、アモルファスシリコン膜3Aが形成された基板2と透光性部材4との間に隙間5が設けられている、そして、本変形例2においては、この隙間5に、例えば、窒素ガスに代表される不活性ガス8が流されている。このように隙間5に一定流量の不活性ガス8を流すことにより、隙間5を設けた場合においても、アモルファスシリコン膜3A上の隙間5内の雰囲気を均一にすることができるため、アモルファスシリコン膜3A上の雰囲気の不均一性に起因するポリシリコン膜の特性低下を抑制できる。
【0147】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0148】
1 搬送ステージ
2 基板
3A アモルファスシリコン膜
3B ポリシリコン膜
4 透光性部材
5 隙間
50 基板構造体
70A 微細な突起
70B 突起
506 測定器
507 制御部
508 反射鏡
800 吸着部
801 変位機構
802 吸着機構
803 制御部
804 ポンプ
805 バルブ
1000 レーザ処理装置