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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】加速度計
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20220809BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20220809BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20220809BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
G01P15/08 101A
H01L29/84 Z
B81B3/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018148590
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2019032320
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】1712661.6
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508296554
【氏名又は名称】アトランティック・イナーシャル・システムズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Atlantic Inertial Systems Limited
【住所又は居所原語表記】Clittaford Road, Southway, Plymouth, PL6 6DE, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】マルヴァーン,アラン
(72)【発明者】
【氏名】スネル,ルイーズ
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506343(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061099(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0283913(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0083506(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-15/18
H01L29/84
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サポート及び前記サポートに可撓性脚により検知方向に沿って加わる加速度に応じて面内移動するように装着されるプルーフマスを備え、
前記プルーフマスは、前記検知方向に対して実質的に垂直に延び、かつ前記検知方向に離間する複数の可動電極フィンガを備え、更に、
少なくとも4つの固定コンデンサ電極であって、それぞれが前記検知方向に対して実質的に垂直に延びかつ前記検知方向に離間する固定コンデンサ電極フィンガのセットを備える、前記少なくとも4つの固定コンデンサ電極を備え、固定コンデンサ電極フィンガのそれぞれのセットは、前記可動電極フィンガと互いに噛み合うように配置され、
前記プルーフマスは、前記プルーフマスの中心線上に位置決めされるプルーフマスアンカーにより、前記サポートに装着され、
前記プルーフマスは、前記少なくとも4つの固定コンデンサ電極を囲む外フレームの形態を取り、前記可撓性脚は前記プルーフマスから前記プルーフマスアンカーに向けて横方向内方に延び、
前記少なくとも4つの固定コンデンサ電極は、前記プルーフマスの前記中心線のそれぞれの側に1つずつ2つの内側固定コンデンサ電極、及び前記プルーフマスの前記中心線のそれぞれの側に1つずつ2つの外側固定コンデンサ電極を備え、
前記2つの内側固定コンデンサ電極のそれぞれは、基板に固着された固着部、及び前記中心線から離隔して前記固着部から延びかつこれに装着された固定コンデンサ電極フィンガを有する片持ちアームを備え、更に、
前記2つの外側固定コンデンサ電極は、内側固定コンデンサ電極の前記片持ちアームと前記検知方向で重なる位置で前記基板に固着された固着部、及び前記中心線から離隔して前記固着部から延びかつこれに装着された固定コンデンサ電極フィンガを有する片持ちアームを備える、加速度計用検知構造。
【請求項2】
前記プルーフマスアンカーは、第1プルーフマスアンカー及び第2プルーフマスアンカーを備え、前記第1プルーフマスアンカー及び前記第2プルーフマスアンカーの双方が、前記プルーフマスの前記中心線上に位置決めされ、その間に間隙が形成され、前記2つの内側固定コンデンサ電極のそれぞれが少なくとも部分的に前記間隙内に位置決めされるその固着部を有する、請求項1に記載の検知構造。
【請求項3】
前記第1プルーフマスアンカー及び前記第2プルーフマスアンカーは、前記中心線に沿う細い接続構造により一緒に接続される、請求項2に記載の検知構造。
【請求項4】
前記第1プルーフマスアンカー及び前記第2プルーフマスアンカーは、別箇の構造として形成され、別箇の電気接続により電気的に接続される、請求項2に記載の検知構造。
【請求項5】
前記可撓性脚は、前記第1プルーフマスアンカー及び前記第2プルーフマスアンカーにその内側で取り付けられる、請求項2、3または4に記載の検知構造。
【請求項6】
固定コンデンサ電極フィンガのそれぞれのセットは、内側固定電極または外側固定電極の一方の片持ちアームに片持ち状態で装着される、請求項1~5のいずれかに記載の検知構造。
【請求項7】
それぞれの内側固定コンデンサ電極は、固着部から離隔して延びる2つの実質的に平行な片持ちアームを備えるC字状形状として形成される、請求項1~6のいずれかに記載の検知構造。
【請求項8】
前記プルーフマスは、可撓性脚の2以上の別箇の対により、前記プルーフマスアンカーに接続される、請求項1~7のいずれかに記載の検知構造。
【請求項9】
前記検知構造は、MEMSである、請求項1~8のいずれかに記載の検知構造。
【請求項10】
前記サポートは、ガラスで形成される、請求項1~9のいずれかに記載の検知構造。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の検知構造を備える加速度計。
【請求項12】
請求項9に記載の加速度計であって、前記検知構造は、前記中心線の一側の第1内側固定電極及び第1外側固定電極と、前記中心線の反対側の第2内側固定電極及び第2外側固定電極を備え、
前記第1内側固定電極の前記固定電極フィンガは、その間の中線から一方向にオフセットして前記可動電極フィンガと互いに噛み合うように配置され、前記第2内側固定電極の前記固定電極フィンガは、その間の中線から反対方向に対称にオフセットして前記可動電極フィンガと互いに噛み合うように配置され、
前記第1外側固定電極の前記固定電極フィンガは、その間の中線から一方向にオフセットして前記可動電極フィンガと互いに噛み合うように配置され、前記第2外側固定電極の前記固定電極フィンガは、その間の中線から反対方向に対称にオフセットして前記可動電極フィンガと互いに噛み合うように配置され、
前記加速度計は、前記第2内側固定電極と同相で前記第1外側固定電極を駆動するように配置され、前記第1内側固定電極を前記第2外側固定電極と同相で駆動するように配置される、前記加速度計。
【請求項13】
開ループ電子回路が、前記第1内側固定電極及び前記第1外側固定電極を逆位相で駆動するように配置され、前記第2内側固定電極及び前記第2外側固定電極を逆位相で駆動するように配置される、請求項11または12に記載の加速度計。
【請求項14】
閉ループ電子回路が、前記第1内側固定電極及び前記第1外側固定電極を逆位相で駆動するように配置され、前記第2内側固定電極及び前記第2外側固定電極を逆位相で駆動するように配置される、請求項11または12に記載の加速度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度計用検知構造、特に、加速度計用静電容量型検知構造に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度計は、運動及び/または振動による加速力を測定することのできる電気機械装置である。加速度計は、地震感知、振動感知、慣性感知、及び傾斜感知を含む多種多様な応用分野に用途が見出されている。静電容量型加速度センサは、典型的にはシリコンから製造され、マイクロ電気機械システム(MEMS)構造として実装されている。典型的なMEMS静電容量型検知構造は、サポートに対して移動可能に装着されるプルーフマスを備える。プルーフマスから延びる移動可能な電極フィンガのセットが、固定電極フィンガの1つまたは複数のセットと互いに噛み合い、検知方向におけるプルーフマスの偏倚を検出するために、電極フィンガ間の差動静電容量が測定可能である。検知構造を備える加速度計は、信号を駆動及びピックオフする適切な電子機器を含む。
【0003】
プルーフマスは、典型的には、このプルーフマスの検出方向における移動を可能とする可撓性装着脚により、基板のアンカーポイントに装着される。固定コンデンサフィンガも基板に装着される。固定コンデンサフィンガの複数の異なるセットが設けられてもよく、それぞれのセットはその自身の電極から延び、それぞれのセットは基板に個別的に装着される。これらの異なるフィンガのセットは、異なるフィンガ配置(例えば、フィンガ間隔及びオフセット)及び異なる駆動配置を可能とする。しかし、それぞれの電極は他の電極から電気的に絶縁しなければならず、それぞれは基板に対してその自身の装着アンカーを必要とする。
【0004】
WO2004/076340及びWO2005/083451は、MEMS装置の検出方向に実質的に垂直に延びる複数の互いに噛み合う固定及び可動電極フィンガを備える静電容量型加速度計の例を示す。移動及び固定電極フィンガ及びプルーフマス組立体は、単一のシリコン基板から例えば深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)を使用して形成される。シリコン基板は、典型的には、素子が移動する場所にガラスのプレキャビテーションを設けたガラスサポートに陽極接合される。接合及びDRIEの後、キャップガラスウェハが追加され、内側にガス状媒体を閉じ込めた密閉組立体を提供する。大気圧ガス(典型的には、アルゴン)は、プルーフマスが移動するときのプルーフマスに対するクリティカルなスクイーズフィルムダンピングを提供する。そして、ダウンホールビアが追加され、ガラスサポートの頂面からアクティブなシリコン素子に電気接続を形成する。ガラスサポートは、高度の電気絶縁性を示すが、ガラスのタイプに依存する熱膨張率の不一致が存在する。例えば、SD2ガラス(アルミノシリケート)は、パイレックス(登録商標)(ボロシリケート)よりも良好に熱的にマッチする。ガラスは、接地に対する浮遊容量を減少するため、サポートに対してシリコン(酸化技術の結合シリコンなど)よりも優先して使用される。
【0005】
従来技術の加速度計の例がWO2012/076837号に記載されている。この検知構造では、プルーフマスは、一対の固定コンデンサ電極の反対側に配置される第1及び第2マス素子に分割される。マス素子は、ブレースバーにより堅く相互連結され、一体的に移動可能なプルーフマスを形成し得る。マス素子は、別箇の頂部及び底部アンカーポイントに接続する4つの可撓性脚のセットにより、下側のサポートに装着される。アンカーポイント及び固定電極フィンガの2つのセットが下側のガラスサポートに陽極結合される。このデザインにおける問題は、温度が変化したときのガラスサポートとシリコン基板との間の膨張に差が生じることである。均一な熱膨張の場合には、2つの固定電極が2つのプルーフマスアンカーポイントに対して対称的に移動し(例えば、外方に)、これは電極フィンガ間隙が変化するにつれてスケール係数シフトを生じさせる。装置にわたる熱勾配が生じる場合、2つの固定電極は互いに非対称に移動し、バイアスシフトがもたらされる。開ループでの動作、このような装置の感度は、典型的には30nm/g(30gのレンジについて)であり、したがって30pmの相対移動により1mgのバイアスシフトを生じる。サポートガラスに作用する応力は、熱膨張/勾配から生じ、または装置の包装に使用されるダイボンドにより誘導されることがある。ダイボンドは、通常は大きな熱膨張率を有し、更に経年変化の影響を受けることのある低ヤング率の弾性材料であるのが普通である。代替的に、ダイボンド材料は、包装からMEMSへの応力を最小とするために使用することもある。
【0006】
WO2015/124910号は、温度効果の問題に対処する上述の構造の改善を記載する。第1に、プルーフマスは、単一の中央アンカーにより基板に固着され、したがって、熱勾配が存在するときに固定電極フィンガに対して大きく動き難い。第2に、固定及び可動フィンガの4つのセットが使用され、2つの差動静電容量方式が熱勾配効果を相殺するのを可能とする。
【0007】
MEMSセンサダイは、典型的にはシリコンオンガラス配置またはシリコンオンシリコン配置として形成される。前者の配置は、シリコンMEMS構造が上側ガラス基板と下側ガラス基板との間に挟まれ、組立体の内側にMEMS構造を密閉するために、これに陽極接合(または、フリット接合)される。後者の配置では、シリコン基板がガラス基板に代えて使用される。ガラスのCTEは、例えばドーピングにより、シリコンのCTEにかなり近くなるように調整することがよくある。しかし、達成可能なCTE整合には限度があり、したがって、依然として差が存在し、応力が生じる。より高度の正確さを追及するほど、これらの残留する差がより重要となる。
【0008】
既存の同様なMEMS加速度計は、あらゆる環境にわたって(動作温度、寿命等)、およそ1mg(1gの千分の1)のバイアス安定性を達成する。これは、温度、使用寿命等における全ての予期される変動状態で、バイアスは1mgより多くの変化が予期されないことを意味する。しかし、これについて改善が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示によると、加速度計用検知構造が提供され、これは、
サポート及びサポートに可撓性脚により検知方向に沿って加わる加速度に応じて面内移動するように装着されるプルーフマスを備え、
このプルーフマスは、検知方向に対して実質的に垂直に延び、かつ検知方向に離間する複数の可動電極フィンガを備え、更に、
少なくとも4つの固定コンデンサ電極であって、それぞれが検知方向に対して実質的に垂直に延びかつ検知方向に離間する固定コンデンサ電極フィンガのセットを備える、少なくとも4つの固定コンデンサ電極を備え、
固定コンデンサ電極フィンガのそれぞれのセットは、可動電極フィンガと互いに噛み合うように配置され、
プルーフマスは、プルーフマスの中心線上に位置決めされるプルーフマスアンカーにより、サポートに装着され、
プルーフマスは、少なくとも4つの固定コンデンサ電極を囲む外フレームの形態を取り、可撓性脚はプルーフマスからプルーフマスアンカーに向けて横方向内方に延び、
少なくとも4つの固定コンデンサ電極は、プルーフマスの中心線のそれぞれの側に1つずつ2つの内側固定コンデンサ電極、及びプルーフマスの中心線のそれぞれの側に1つずつ2つの外側固定コンデンサ電極を備え、
2つの内側固定コンデンサ電極のそれぞれは、基板に固着された固着部、及び中心線から離隔して固着部から延びかつこれに装着された固定コンデンサ電極フィンガを有する片持ちアームを備え、更に、
2つの外側固定コンデンサ電極は、内側固定コンデンサ電極の片持ちアームと検知方向で重なる位置で基板に固着された固着部、及び中心線から離隔して固着部から延びかつこれに装着された固定コンデンサ電極フィンガを有する片持ちアームを備える。
【0010】
固着部から延びる片持ちアーム上に内側固定コンデンサ電極フィンガを装着することにより、固着部は、範囲を減少することができ、したがって、そのフィンガのように同じ軸方向範囲(検知軸に沿う)を占めない。これは、次に、隣接する外側固定電極の固着部が中心線により近接、したがってプルーフマスアンカーにより近接する軸方向に(検知軸に沿って)移動するのを可能とする。アンカーポイントを一緒により近くに移動することは、アンカーポイントの端部間の温度差がより小さくなるため、検知構造にわたる熱勾配の効果を減少する。内側及び外側電極の片持ちアームは、アンカーポイントのように下側の基板に直接固定されず、したがって、以前のデザインではこのフィンガが受けた熱応力から、実質的に分離される。内側電極の片持ちアームにフィンガを装着することは更に、片持ちアームに並んで配置すべき外側電極のアンカーポイントに対するスペースを形成し、一方、同じ材料片(典型的にはシリコン)から形成されている。外側電極の片持ちアームに外側フィンガを装着することは更に、以前にはセンサ構造の外側端部に生じていた熱応力からこれらのフィンガが実質的に分離されることを可能とする。したがって、内側及び外側電極に対するアンカーポイントを一緒にかつプルーフマスアンカーにより近接してグループ化すること、すなわち、全てのアンカーポイントをセンサ構造の中心に近接してグループ化することにより、熱効果が減少し、加速度計のバイアスの変動が減少する。したがって、装置のバイアス安定性が改善され、これは加速度計出力の正確さを改善する。この改善されたデザインにより、加速度計は、以前のデザインの1mgのバイアス安定性に比較して0.1mgのバイアス安定性、すなわち、10倍の性能改善を達成することができる。これは、長手方向の温度勾配による、及び長期間のバイアスシフト及びダイボンド経年変化効果を生じさせるダイボンドの長期クリープ等のダイボンド効果による、MEMSの応力負荷の効果を減少することにより達成される。
【0011】
以前のデザインでは、プルーフマスアンカーは、検知軸に沿う中心線の中間及びその中心線の中心の双方の中心に位置決めされていた。これは、可撓性脚のスペースがプルーフマスアンカーからプルーフマスフレームに向けて外方に延びることを可能とする。しかし、本開示の好ましい例では、プルーフマスアンカーは、第1プルーフマスアンカー及び第2プルーフマスアンカーを備え、第1プルーフマスアンカー及び第2プルーフマスアンカーの双方が、プルーフマスの中心線上に位置決めされ、その間に間隙が形成され、2つの内側固定コンデンサ電極のそれぞれがその固着部を少なくとも部分的に間隙内に位置決めされる。
【0012】
第1及び第2プルーフマスアンカーはいずれも、まだ中心線上に位置決めされているため、熱応力に関する利点が維持される。しかし、2つのプルーフマスアンカー部間の中央に間隙を生成することは、内側電極のアンカーポイントを中心線のより近くに移動し、したがってプルーフマスアンカーと重なることを可能とする。これは更に、プルーフマスアンカーポイントと内側電極アンカーポイントにより経験される温度差を減少し、したがって、フレームの可動電極と内側固定電極の固定電極との間の熱応力が減少する。更に、外側電極アンカーが内側電極の片持ちアームと重なった状態で、外側電極アンカーポイントも中心線により近く、プルーフマスアンカーポイントにより近くなり、再度、熱応力を減少し、構造のバイアス安定性を改善する。
【0013】
プルーフマスアンカーがその間に間隙を設けた第1及び第2プルーフマスアンカーに分割された状態で、以前は可撓性脚のために使用していたスペースが少なくとも部分的にプルーフマスアンカーにより占められる。したがって、フレームのサイズを増大することなく、可撓性脚に対して十分な長さを可能とするために、可撓性脚はその内側(フレームから最も遠い)でプルーフマスアンカーに取り付けられることが好ましい。この結果、可撓性脚が中心線から離隔して第1及び第2プルーフマスアンカーの側部に位置決めされることになる(2つの可撓性脚がそれぞれのプルーフマスアンカーにあり、中心線の両側でそれぞれの側部に1つがあるのが好ましい)。
【0014】
プルーフマスアンカー構造に対する変更も、第1及び第2プルーフマスアンカーを同じ電位に維持することに関する問題が生じる。これは、フレームの両側における一貫した静電容量測定を確保するために望ましい。したがって、いくつかの例では、第1プルーフマスアンカー及び第2プルーフマスアンカーが、中心線に沿う細い接続構造により一緒に接続され、したがって2つの構造が一緒にI字状(上から見たとき、フレームの平面に対して垂直に)の単一構造に電気的に接続される。薄い接続構造は、内側電極アンカーを配置することができる中心線との近接程度を減少するため、適切な電気接続を達成するために必要な限り細くすることが好ましい。代替的な例では、第1プルーフマスアンカー及び第1プルーフマスアンカーは別個の構造として形成される。これらは更に、支持脚及びプルーフマスのフレームを介して電気的に接続されるが、必要な場合には、それぞれのプルーフマスアンカーに対して1つのビアである2つのビア間のトレース等の別個の電気接続により電気的に接続してもよい。電気的な接続は、多くの固定電極に対して、移動プルーフマスの1つの容量測定だけが存在することを確実にする。このような配置が2つのプルーフマスアンカー間の適正な電気接続を提供する場合、細い接続構造は必要なく、次にこれは、内側電極アンカーがその間の電気的接続なしで中心線に可能な限り近接するのを可能とする。
【0015】
典型的なセンサ構造では、それぞれの固定電極が2つの反対方向における検知方向に垂直に延びる(すなわち、検知方向に対して平行な中央線から離隔する両方向に延びる)電極フィンガを有する。これは、典型的には、内側電極が「C」の平行なアームが片持ちアームで、「C」の接続主軸が固着部分であるC字状形状を有するように、それぞれの内側電極のそれぞれの側に片持ちアームを必要とする(すなわち、中央線の一側に1つのアーム、中央線の他側に1つのアーム)。隣接する外側電極の固着部は、この後、「C」の内側、すなわち、2つの平行な片持ちアームの間に配置することができる。
【0016】
内側電極及び外側電極の片持ちアーム(複数を含む)は、検知方向に平行に延び、それぞれの電極の固着部よりも検知方向に更に延びる電極フィンガに対する装着構造を提供することが好ましいことを理解されたい。同時に、固定コンデンサ電極フィンガのそれぞれのセットの少なくともいくつかのフィンガが、内側固定電極または外側固定電極の片持ちアームに片持ち状に装着される。電極フィンガは、検知方向に対して垂直に延びる。したがって、少なくともいくつかの電極フィンガは、2つの垂直な片持ち部により、2重の片持ち方法でそのそれぞれの電極のアンカーポイントに接続される。
【0017】
プルーフマスは、任意の適切数の可撓性脚により、サポートに装着してもよい。例の1つのセットでは、外側フレームの対向側部が、一対の可撓性脚によりプルーフマスアンカーに接続されてもよい。例えば、対の可撓性脚がプルーフマスアンカーの対向側部から延びる。しかし、2以上の別個の可撓性脚の対により、プルーフマスをサポートに装着することで、面外回転剛性を改善することができる。これは、検知構造が、望ましくない面外モードに対するより高い共振周波数を提供するのを可能とすることがある。上述のように、プルーフマスアンカーが、その間に間隙を有する第1及び第2プルーフマスアンカーに分割される場合には、2以上の別個の可撓性脚の対がプルーフマスアンカーの1つの内側(検知方向に平行な中央線に最も近い)に取り付けられ、可撓性脚に対する十分な長さを可能とするのが好ましくい。
【0018】
本開示の多くの例では、プルーフマス及び固定コンデンサ電極は、例えばシリコン基板である半導体基板から一体的に形成してもよい。プルーフマスの外側フレーム(及び、全ての他の特徴は固定電極を含む)は、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)等のエッチング工程により半導体基板から製造してもよい。これは、単一ステージのエッチで行うことができる。MEMS構造では、プルーフマス及び固定コンデンサ電極は、同じ平面に形成してもよい。中央アンカーは、固定状態に接合、例えば、下側の電気的に絶縁されるサポート(例えば、ガラス)に陽極接合してもよい。
【0019】
本明細書に開示のように検知構造を備える加速度計は更に、互いに噛み合う容量電極フィンガの減衰効果を提供する任意の適切なガス状媒体を備える。ガス状媒体は、空気、窒素、アルゴン、ヘリウムまたはネオンの1つまたは複数を備えてもよい。しかし、ネオンはそのより高度の粘性により減衰係数を増大するために選択してもよい(例えば、アルゴンよりも)。したがって、加速度計は、ネオンガスを包含し、移動プルーフマス構造の少なくとも臨界減衰を達成するために、互いに噛み合う電極フィンガを減衰させてもよい。
【0020】
本明細書に開示のいずれの例においても、検知構造はMEMS、特に、例えばシリコン基板である半導体基板から形成されるMEMSの形態を取ってもよい。サポートは、半導体基板を支持する、例えば、電気絶縁性であるガラス基板から構成してもよい。当該分野で周知のように、陽極接合を使用してもよい。半導体基板を、例えば、電気絶縁性であるガラス基体に陽極接合することは、互いに噛み合う電極フィンガの静電容量を接地平面から電気的に絶縁する利点を有する。小さな静電容量の変化は、静電容量型加速度計における検知構造の精度に極めて重要である。
【0021】
可動及び固定電極フィンガは、横方向、すなわちプルーフマスまたは固定コンデンサ電極から側方に、それぞれ櫛状形態に離間するように延びてもよい。
【0022】
用語「可動」は、プルーフマスが全体として可撓性脚により装着されているためにサポートに対して移動可能であるという事実により、フィンガがサポート、及びサポートに対して固定された任意の電極に対して移動可能なことを示すために使用することを理解されたい。勿論、個々の可動電極フィンガはプルーフマスに対して移動可能ではない。
【0023】
本開示の他の態様は、上述の検知構造(選択的に、同様に上述の任意の好ましいまたは選択的な機能を含む)を加速度計に及ぶ。
【0024】
いくつかの好ましい例では、検知構造は、中心線の一側の第1内側固定電極及び第1外側固定電極と、中心線の反対側の第2内側固定電極及び第2外側電極とを備え、第1内側電極の固定電極フィンガは、その間の中線から一方向にオフセットした可動電極フィンガと互いに噛み合うように配置され、第2内側電極の固定電極フィンガは、その間の中線から反対方向に対称的にオフセットした可動電極フィンガと互いに噛み合うように配置され、第1外側電極の固定電極フィンガは、その間の中線から一方向にオフセットした可動電極フィンガと互いに噛み合うように配置され、第2外側電極の固定電極フィンガは、その間の中線から反対方向に対称的にオフセットした可動電極フィンガと互いに噛み合うように配置され、加速度計は、第1外側電極が第2内側電極と同相で駆動するように配置され、第1内側電極が第2外側電極と同相で駆動するように配置される。したがって、4つの固定電極が2つのセットを形成してプルーフマスに差動静電容量を出力する。
【0025】
開ループ動作について、逆位相方形波を使用して2対の固定電極を駆動する(例えば、第1内側及び第2外側に対して1つの方形波、及び、第2内側及び第1外側固定電極に対して逆位相方形波)。閉ループ動作について、方形波は逆位相PWM駆動により交換される。出力信号は、プルーフマスでピックアップされ、プリアンプがこれに接続されオフセット静電容量を検出する。
【0026】
本開示の例では、検知構造は、適切な駆動装置及びピックオフ電子機器に接続し、加速度計を形成してもよい。加速度計では、固定電極のそれぞれの対(1つの内側電極及び中心線の反対側の1つの外側電極の対)は、開ループまたは閉ループ構成で駆動してもよい。開ループ構成では、例えば、開ループ電子回路が、第1及び第2対を逆位相で駆動するように配置されている。換言すると、開ループ電子回路は、第1内側電極及び第1外側電極を逆位相で駆動するように配置され、第2内側電極及び第2外側電極を逆位相で駆動するように配置されるのが好ましい。開ループ電子回路は、サイン波または方形波駆動信号を印加してもよい。開ループ動作では、プルーフマスは、加速度下で自由に移動し、固定電極フィンガの内側及び隣接する外側セット間の静電容量の差分変化(出力としてプルーフマスで検知される)は、プルーフマスの偏倚に比例する。これらの例におけるピックオフ信号は、出力に表れる復調された電圧としてもよい(例えば、ローパスフィルタリングの後)。開ループ加速度計の動作は、WO2004/076340号により詳細に記載されており、参照することによりその内容が本明細書に包含される。
【0027】
閉ループ構造では、例えば、閉ループ電子回路が、固定電極の対(中心線の一側の内側固定電極及び反対側の外側固定電極の対)を、固定電圧PWM駆動装置のマーク(1つの対)及びスペース(他の対)を使用する逆位相で駆動するように配置されている。換言すると、閉ループ電子回路は、第1内側電極及び第1外側電極を逆位相で駆動するように配置され、第2内側電極及び第2外側電極を逆位相で駆動するように配置されるのが好ましい。駆動電子回路は、可変静電力を電極に作用させて力を平衡させ、プルーフマスを中立位置に維持し、したがって、PWM比は加速度に直線状に比例する。閉ループ動作の下では、通常、PWM電圧は駆動及び検知電圧を形成する。それぞれのハーフサイクルに対するPWM遷移の後に、検知は通常短期間で行われる(例えば、1つの特定の例では2マイクロ秒)(典型的には、上述の例では20マイクロ秒でもよいサイクルの長さに比較して検知期間は短い)。
【0028】
デジタルアプローチでは、パルス幅変調(PWM)信号は、周波数領域において励起及びフィードバック信号に分離することにより、駆動及び検知の双方に作用させてもよい。例えば、ほぼ1~3kHzの共振周波数を有するプルーフマスについて、PWM駆動信号は、ほぼ50kHzの周波数としてもよい。いくつかの例では、閉ループ電子回路は、プルーフマスの静電復元力を変更するためにマークスペース比を調整し得るパルス幅変調(PWM)駆動信号を作用させてもよい。これらの例におけるピックオフ信号は、PWM駆動信号を使用してプルーフマスから取得される。開ループ加速度計の動作は、WO2005/083451号により詳細に記載されており、参照することによりその内容が本明細書に包含される。
【0029】
1つまたは複数の非制限的な例を、例としてのみ添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来技術の加速度計を示す。
図2】片持ち固定フィンガを有する加速度計の第1例を示す。
図3】片持ち固定フィンガを有する加速度計の第2例を示す。
図4】加速度計の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、既存の加速度計のデザインを示す。加速度計100は、矩形フレームの形態のプルーフマス102を備える。プルーフマス102は、基板に取り付けられた(例えば、それに陽極接合された)中央マウント104から延びる可撓性脚106を通して下側の基板に装着される。
【0032】
更に、基板には4つの固定電極108、110、112、114が装着されている。それぞれの固定電極は、破線で示すそれぞれのアンカー109、111、113、115において基板に接合される。それぞれの固定電極は、それから検知軸に垂直な両方向に(及び、検知軸に平行な中央線の回りに対称的に)延びる固定電極フィンガ116を有する。これらの固定電極フィンガ116は、プルーフマス102に形成されかつそれから内方に延びる可動電極フィンガ118と相互に噛み合う。
【0033】
検知方向(両矢印103で示す)の加速の下で、プルーフマス102は基板、したがって固定電極フィンガ108、110、112、114に対して検知方向に移動し、互いに噛み合う固定及び可動コンデンサフィンガ116、118間の間隙を変化させる。
【0034】
4つの固定電極は、第1外側固定電極108、第1内側固定電極110、第2内側固定電極112及び第2外側固定電極112として識別してもよい。第1外側固定電極108及び第1内側固定110は、検知軸103に垂直な中心線120の一側にあり、一方、第2内側電極112及び第2外側電極114は中心線120の反対側にある。加速度計100は、中心線120について対称である。
【0035】
固定電極フィンガ116及び可動電極フィンガ118は、均等に相互に噛み合うのではなく、隣接する固定電極フィンガ間の中線からはオフセットしている。したがって、プルーフマス102が加速状態にないときに、2つの隣接する固定コンデンサフィンガ116間で相互に噛み合う可動電極フィンガ118はこれらの固定コンデンサフィンガの一方に対して、他方よりも近づく。オフセットの方向は、異なる固定電極108、110、112、114について相違する。したがって、図1に示すように、可動コンデンサフィンガ118は、第1外側電極108の固定コンデンサフィンガ116に対して一方向にオフセットするが、第1内側電極110の固定コンデンサフィンガ116に対しては反対方向にオフセットする。上述のように、加速度計100は中心線120について対称である。したがって、第1外側電極108の固定フィンガ116は、第2内側電極112のこれらと同じオフセットを有し、加速状態で同じ静電容量変化を経験する(したがって、固定電極の第1対を形成する)。同様に、第1内側電極110の固定フィンガ116は、第2外側電極114のこれらと同じオフセットを有し、加速状態で同じ静電容量変化を経験する(したがって、固定電極の第2対を形成する)。加速状態では、一方の対の静電容量が増大し、一方他方の対の静電容量は減少し、逆もまた同様であるように、固定電極108、112の第1対は、固定電極110、114の第2対に比較して反対の静電容量変化を経験する。逆位相信号により固定電極フィンガの2つの対を駆動することにより、プルーフマスで差動静電容量信号が検知され、これは検知軸103に沿う変位に比例し、したがって加速度計出力を提供する。
【0036】
図1に示すように、固定電極108、110、112、114のアンカーポイント109、111、113、115、すなわち固定電極が下側の基板に接合される領域は、検知軸に沿ってかなり遠くに離隔している。熱勾配状態では、第1外側固定電極110のアンカーポイント109により経験される応力は、第1外側固定電極114のアンカーポイント115により経験される応力と相違する。これらのアンカーポイント109、115が遠くに離隔するほど、この応力差が大きくなる。応力の差は、加速度計出力にバイアスを生じさせる。
【0037】
図2は、加速度計100の改善された配置を示し、ここでは、固定電極110、112、114、116のアンカーポイント109、111、113、115間の距離が減少している。
【0038】
外側固定電極108、114のアンカーパッド109、115を共に近づける(及び、中心線120に近づける)ため、内側固定電極110、112はC字状形状に形成されている。第1内側電極110を例として挙げると、アンカーパッド111はC字状形状の背部を形成し、一方、C字状形状のアーム131は、アンカーパッド111から離隔する片持ちの態様で検知方向に延びる。これらの片持ちアーム131は、自身は下側(または上側)の基板に接合されておらず、アンカーパッド111を介して接続されているだけである。固定コンデンサフィンガ116は、通常と同様にアーム131から外方に延びる。固定電極フィンガ116は通常(すなわち、図1における)片持ち態様で装着されるが、この例では、これらが二重片持ち状の態様で装着され、すなわち、固定電極フィンガ116は、自身がアンカーパッド111から片持ち状に離れるアーム131から片持ち状に離隔することを理解されたい。固定電極フィンガ110のC字状形状は、第1外側固定電極108のアンカーパッド109が形成される領域を片持ちアーム131間に設ける。これは、以前のデザインよりもアンカーパッド109を中心線120により近くに、すなわち、隣接する第1内側電極110のアンカーパッド111により近く、かつプルーフマス102のアンカーパッド104a、104bにより近く(更に後述する)に移動可能とする。アンカーパッド109のこの新しい位置により、第1固定電極108の固定電極フィンガ116も、それぞれのフィンガ116が、下側(または、上側)の基板に接合されず、したがって自身がアンカーパッド109に片持ち状に装着される第1外側固定電極108の領域132から片持ち状態に装着されるため、二重片持ち状態に装着される。
【0039】
同じ配置が、中心線120の他側に対称に形成される第2内側電極112及び第2外側電極114に用いられ、本明細書ではこれ以上説明しない。
【0040】
アンカーパッド109、111、113、115の位置決めにおける更なる改善も、中心のアンカーパッド104を2つのアンカーパッド、すなわち第1アンカーパッド104a及び第2アンカーパッド104bに分離することにより達成される。それぞれのアンカーパッドは、基板に接合(例えば、陽極接合)される。第1及び第2アンカーパッド104a、104bはまだ中心線120上に形成されているが、ここではその間(すなわち、アンカーパッド104a、104bの内側対面間)に間隙130が存在する。この間隙130をアンカーパッド104a、104b間に形成することで、アンカーパッド111、113が間隙130内、したがって中心線120により近く移動することを可能とする。これは、アンカーパッド111、113間の距離を減少し、次に外側固定電極108、114のアンカーパッド109、115間の距離を減少する。この更なる改善(間隙130を形成するためにプルーフマスアンカー104を分離すること)は、図2にも記載されており、プルーフマスアンカー104が図1に示すように単一の中央に形成されたアンカーとして維持されるが、C字状形状の内側電極110、112を有する例において重要な改善が更に達成されることを理解されたい。
【0041】
図2に示す配置では、プルーフマスアンカーが第1アンカーパッド104a及び第2アンカーパッド104bに分離され、アンカーパッド104a及び104bと、プルーフマスフレーム102との間の距離が大きく減少しているのを見ることができる。したがって、可撓性脚106はアンカーパッド104の外側面からフレーム102に、図1に示すように単純に延びることはできなくなり、これは、プルーフマス102及び可動フィンガ118の移動可能とする十分な可撓性を提供しないためである。したがって、図2に示すように、可撓性装着脚106がフレーム102からそれぞれのアンカーパッド104a、104bの最内側134まで延び、したがって、これらはアンカーパッド104a、104bとフレーム102との間を可能な限り遠くまで延びる。図1の配置と比較すると、これは、可撓性脚106がアンカーパッド104a、104bの側部に、すなわちアンカーパッド104a、104bの両側に検知方向に延びることを必要とし、したがって、検知方向103における加速度計の必要とする長さを僅かに増大する。しかし、この増大は問題ではなく、固定電極108、110、112、114のアンカーパッド109、111、113、115の位置決めの利点はより重要な改善である。
【0042】
図3は、図2の配置の変形例を示す。同じ参照数字を用い、その詳細な説明を省略する。図2の例では、2つのプルーフマスアンカーパッド104a、104bは、可撓性脚106及びプルーフマスフレーム102を通して電気的に接続されるのみである。これは、適正な電気接続を形成し、全体のプルーフマス構造にわたる均一な電位を確保することができる。しかし、可撓性脚106及びフレーム102等の構造の部分が特に細く形成され、または不均一な電圧を発生させる欠陥を有する場合、第1プルーフマスアンカーパッド104a及び第2プルーフマスアンカーパッド104b間に追加の電気接続部を設けることが望ましいことがある。これは、センサ構造の外部に別個の電気接続を設けることにより、例えば、それぞれのアンカーパッド104a、104bに対して1つずつ2つのビアを形成し、その間に外部電気接続部を設けることにより、達成することができる。しかし、図3は、代替的解決策を示し、ここでは、第1プルーフマスアンカーパッド104a及び第2プルーフマスアンカーパッド104b間の電気接続を、中心線120に沿ってそれらを接続する細いビーム136を通して維持する。この細いビーム136は、2つの内側固定電極アンカーパッド111、113の理想的な配置を可能な限り互いの近くで阻害するが、これは、それらが細いビーム136のいずれかの側に位置しなければならない(及び、電気的にこれから分離する)ためである。しかし、ビーム136の太さは、プルーフマスアンカーパッド104a、104b間の電気接続を達成するためにより太くする必要がないため、固定電極アンカーパッド111、113は一緒に極めて近くに位置することができ、このような設置により大きな利点に結び付けられる。
【0043】
したがって、固定電極アンカーパッド109、111、113、115を互いにより近くに、検知方向でプルーフマスアンカーパッド104a、104bのより近くに、及び中心線120により近くに配置することにより、アンカーパッド104a、104b、109、111、113、115を通して伝達される応力(5つの熱勾配から生じる応力等)が減少する。この効果は、このような応力から生じるバイアスが減少し、加速度計100の全体のバイアス安定性が改善されることである。上述のように、いくつかの例では、バイアス安定性が10倍改善され、したがって0.1mgまたはこれよりも良好なバイアス安定性が達成されることが見出されている。
【0044】
図4は、図2または図3と同様なデザインの加速度計100の、検知軸に沿い、プルーフマスアンカーパッド104aの1つを通る断面を示す。加速度計100の構造は、第1基板200、第2基板202(典型的には、ガラス製)、及び第1基板200と第2基板202との間に挟まれたシリコン層203を含むことが見てとることができる。プルーフマスフレーム102のアンカー104aが、第1基板200に凹部206を形成することにより形成される突起204において第1基板200に取り付けられる(典型的には、陽極接合)。凹部208は更に、第2基板202にも形成され、これらの凹部206、208は固定及び可動フィンガ116、118を自由に移動可能とする。
図1
図2
図3
図4