(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】過電流保護回路
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220809BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 302A
H02H7/18
(21)【出願番号】P 2018151395
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】河野 智行
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0057808(US,A1)
【文献】特開2008-067489(JP,A)
【文献】特開2012-075262(JP,A)
【文献】実開昭63-138833(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果型トランジスタ又は絶縁ゲート型バイポーラトランジスタで構成されたメインスイッチと、負荷への過電流を検出する電流検出抵抗とを有し、第1の電流供給源から前記負荷へ電流を供給する電流供給ラインと、
前記電流検出抵抗と並列に接続され、前記電流検出抵抗の両端電位差が所定値以上のときにオン状態に切り替わることで、前記負荷への電流の供給を制限するオフ状態へ前記メインスイッチを切り替えるための過電流検出信号を出力する保護用トランジスタと、
前記保護用トランジスタのベースに接続され、前記保護用トランジスタがオン状態に切り替わる閾値電圧より小さい基準電圧を発生する電圧発生部と、
前記メインスイッチと前記保護用トランジスタとの間に接続され、前記過電流検出信号に基づき、前記メインスイッチをオフ状態に維持する第1の状態と、前記第1の状態を解除して前記メインスイッチをオン状態に維持する第2の状態とを交互に繰り返す制御回路部と
を具備
し、
前記制御回路部は、
前記過電流検出信号の入力を受けることでオン状態に切り替わる第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタがオン状態のときに、前記メインスイッチを前記第1の状態にするための制御信号を出力する第2のトランジスタと、
前記第1のトランジスタがオフ状態に切り替わってから所定時間、前記第2のトランジスタのオン状態を保持する容量素子と
を有する
過電流保護回路。
【請求項2】
電界効果型トランジスタ又は絶縁ゲート型バイポーラトランジスタで構成されたメインスイッチと、負荷への過電流を検出する電流検出抵抗とを有し、第1の電流供給源から前記負荷へ電流を供給する電流供給ラインと、
前記電流検出抵抗と並列に接続され、前記電流検出抵抗の両端電位差が所定値以上のときにオン状態に切り替わることで、前記負荷への電流の供給を制限するオフ状態へ前記メインスイッチを切り替えるための過電流検出信号を出力する保護用トランジスタと、
前記保護用トランジスタのベースに接続され、前記保護用トランジスタがオン状態に切り替わる閾値電圧より小さい基準電圧を発生する電圧発生部と、
前記メインスイッチと前記保護用トランジスタとの間に接続され、前記過電流検出信号に基づき、前記メインスイッチをオフ状態に維持する第1の状態と、前記第1の状態を解除して前記メインスイッチをオン状態に維持する第2の状態とを交互に繰り返す制御回路部と
を具備し、
前記電圧発生部は、
前記閾値電圧以上の第1の電圧を発生する基準電圧発生源と、
前記第1の電圧を前記基準電圧に相当する第2の電圧に分圧する分圧回路部と
を有
し、
前記基準電圧発生源は、前記電流供給ラインに接続される整流素子と、前記分圧回路部とは並列に前記整流素子と直列に接続される抵抗素子とを有する
過電流保護回路。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の過電流保護回路であって、
前記制御回路部は、前記第1の状態を第1の時間継続した後に前記第2の状態に遷移し、前記第2の状態を前記第1の時間よりも短い第2の時間継続した後に前記第1の状態に遷移する
過電流保護回路。
【請求項4】
請求項
2に記載の過電流保護回路であって、
前記メインスイッチは、前記電流検出抵抗と前記負荷との間に接続されたP型電界効果型トランジスタで構成され、
前記基準電圧発生源は、前記電流検出抵抗の出力端とグランド端子との間に接続され、
前記保護用トランジスタは、前記第1の電流供給源に接続されるエミッタと、前記制御回路部に接続されるコレクタと、前記分圧回路部に接続されるベースとを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成される
過電流保護回路。
【請求項5】
請求項
4に記載の過電流保護回路であって、
前記制御回路部は、
前記保護用トランジスタのコレクタに接続されるベースと、前記電流検出抵抗の出力端に接続されるコレクタと、前記グランド端子に接続されるエミッタとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのコレクタに接続されるベースと、前記電流検出抵抗の出力端に接続されるエミッタと、前記メインスイッチのゲートに接続されるコレクタとを有するPNP型トランジスタで構成された第2のトランジスタと、
前記第2のトランジスタのエミッタと前記第2のトランジスタのベースとの間に接続された容量素子と
を有する
過電流保護回路。
【請求項6】
請求項
2に記載の過電流保護回路であって、
前記メインスイッチは、前記第1の電流供給源と前記電流検出抵抗との間に接続されたN型電界効果トランジスタで構成され、
前記基準電圧発生源は、第2の電流供給源と前記電流検出抵抗の入力端との間に接続され、
前記保護用トランジスタは、前記電流検出抵抗の出力端に接続されるエミッタと、前記制御回路部に接続されるコレクタと、前記分圧回路部に接続されるベースとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される
過電流保護回路。
【請求項7】
請求項
6に記載の過電流保護回路であって、
制御回路部は、
前記第2の電流供給源と前記保護用トランジスタのコレクタとの間に接続されるベースと、前記電流検出抵抗の入力端に接続されるコレクタと、前記第2の電流供給源に接続されるエミッタとを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのコレクタに接続されるベースと、前記電流検出抵抗の入力端に接続されるエミッタと、前記メインスイッチのゲートに接続されるコレクタとを有するNPN型トランジスタで構成された第2のトランジスタと、
前記第2のトランジスタのエミッタと前記第2のトランジスタのベースとの間に接続された容量素子と
を有する
過電流保護回路。
【請求項8】
請求項
2に記載の過電流保護回路であって、
前記メインスイッチは、前記負荷と前記電流検出抵抗との間に接続されたN型電界効果型トランジスタで構成され、
前記電流検出抵抗は、前記負荷とグランド端子との間に接続され、
前記基準電圧発生源は、第2の電流供給源と前記電流検出抵抗の入力端との間に接続され、
前記保護用トランジスタは、前記電流検出抵抗の出力端に接続されるエミッタと、前記制御回路部に接続されるコレクタと、前記分圧回路部に接続されるベースとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される
過電流保護回路。
【請求項9】
請求項
2、4~8のいずれか1つに記載の過電流保護回路であって、
前記
整流素子は、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタまたはダイオードで
ある
過電流保護回路。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1つに記載の過電流保護回路であって、
前記メインスイッチをオフ状態に維持することが可能なコントロールユニットをさらに具備する
過電流保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流の検出時に負荷への通電を制限する過電流保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば負荷側の回路の地絡が原因で過電流を検出した場合に、負荷への通電を制限する保護回路が知られている。例えば特許文献1には、電源と負荷との間に接続される主トランジスタと、負荷への過電流を検出する負荷電流検出抵抗と、負荷電流抵抗における電圧降下が予め決められた過電流検出電圧に達したときに動作して主トランジスタをオフ状態に切り替える第1トランジスタと、を備えた過電流保護回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の過電流保護回路においては、第1トランジスタの閾値電圧が負荷電流検出抵抗における過電流検出電圧に相当する大きさに設定されている。このため、第1トランジスタの動作により過電流保護機能が働くときの過電流検出抵抗の発熱量を低減することが難しく、その結果、発熱量を考慮して過電流検出抵抗に比較的大型の抵抗を使用したり、過電流検出抵抗の放熱のための機構部を大きくしたりする必要があった。さらに過電流を検出した場合において、主トランジスタを大電流からの発熱から保護する必要があった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、負荷電流検出抵抗および主トランジスタの発熱量を低減することができる過電流保護回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る過電流保護回路は、電流供給ラインと、保護用トランジスタと、電圧発生部と、制御回路部とを具備する。
前記電流供給ラインは、電界効果型トランジスタ又は絶縁ゲート型バイポーラトランジスタで構成されたメインスイッチと、負荷への過電流を検出する電流検出抵抗とを有し、第1の電流供給源から前記負荷へ電流を供給する。
前記保護用トランジスタは、前記電流検出抵抗と並列に接続され、前記電流検出抵抗の両端電位差が所定値以上のときにオン状態に切り替わることで、前記負荷への電流の供給を制限するオフ状態へ前記メインスイッチを切り替えるための過電流検出信号を出力する。
前記電圧発生部は、前記保護用トランジスタのベースに接続され、前記保護用トランジスタがオン状態に切り替わる閾値電圧より小さい基準電圧を発生する。
前記制御回路部は、前記メインスイッチと前記保護用トランジスタとの間に接続され、前記過電流検出信号に基づき、前記メインスイッチをオフ状態に維持する第1の状態と、前記第1の状態を解除して前記メインスイッチをオン状態に維持する第2の状態とを交互に繰り返す。
前記制御回路部は、前記過電流検出信号の入力を受けることでオン状態に切り替わる第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタがオン状態のときに、前記メインスイッチを前記第1の状態にするための制御信号を出力する第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタがオフ状態に切り替わってから所定時間、前記第2のトランジスタのオン状態を保持する容量素子とを有する。
【0007】
上記過電流保護回路は、電圧発生部を備えているため、電流検出抵抗の抵抗値を従来よりも小さくすることができる。これにより、過電流保護機能が働くときの電流検出抵抗の発熱量の低減を図ることができる。さらに、制御回路部がメインスイッチの第1の状態と第2の状態との間の切り替えを繰り返すことで、過電流によるメインスイッチの発熱を抑えつつ、過電流状態の解消の有無を確認することができ、過電流状態が解消したときは、速やかに電流供給動作に復帰させることができる。
【0008】
前記制御回路部は、前記第1の状態を第1の時間継続した後に前記第2の状態に遷移し、前記第2の状態を前記第1の時間よりも短い第2の時間継続した後に前記第1の状態に遷移するように構成されてもよい。
【0010】
本発明の他の形態に係る過電流保護回路は、電流供給ラインと、保護用トランジスタと、電圧発生部と、制御回路部とを具備する。
前記電流供給ラインは、電界効果型トランジスタ又は絶縁ゲート型バイポーラトランジスタで構成されたメインスイッチと、負荷への過電流を検出する電流検出抵抗とを有し、第1の電流供給源から前記負荷へ電流を供給する。
前記保護用トランジスタは、前記電流検出抵抗と並列に接続され、前記電流検出抵抗の両端電位差が所定値以上のときにオン状態に切り替わることで、前記負荷への電流の供給を制限するオフ状態へ前記メインスイッチを切り替えるための過電流検出信号を出力する。
前記電圧発生部は、前記保護用トランジスタのベースに接続され、前記保護用トランジスタがオン状態に切り替わる閾値電圧より小さい基準電圧を発生する。
前記制御回路部は、前記メインスイッチと前記保護用トランジスタとの間に接続され、前記過電流検出信号に基づき、前記メインスイッチをオフ状態に維持する第1の状態と、前記第1の状態を解除して前記メインスイッチをオン状態に維持する第2の状態とを交互に繰り返す。
前記電圧発生部は、前記閾値電圧以上の第1の電圧を発生する基準電圧発生源と、前記第1の電圧を前記基準電圧に相当する第2の電圧に分圧する分圧回路部とを有し、前記基準電圧発生源は、前記電流供給ラインに接続される整流素子と、前記分圧回路部とは並列に前記整流素子と直列に接続される抵抗素子とを有する。
【0011】
前記メインスイッチは、前記電流検出抵抗と前記負荷との間に接続されたP型電界効果型トランジスタで構成されてもよい。この場合、前記基準電圧発生源は、前記電流検出抵抗の出力端とグランド端子との間に接続され、前記保護用トランジスタは、前記第1の電流供給源に接続されるエミッタと、前記制御回路部に接続されるコレクタと、前記分圧回路部に接続されるベースとを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成される。
【0012】
この場合において、制御回路部は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子とを有してもよい。
前記第1のトランジスタは、前記保護用トランジスタのコレクタに接続されるベースと、前記電流検出抵抗の出力端に接続されるコレクタと、前記グランド端子に接続されるエミッタとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。
前記第2のトランジスタは、前記第1のトランジスタのコレクタに接続されるベースと、前記電流検出抵抗の出力端に接続されるエミッタと、前記メインスイッチのゲートに接続されるコレクタとを有するPNP型トランジスタで構成される。
前記容量素子は、前記第2のトランジスタのエミッタと前記第2のトランジスタのベースとの間に接続される。
【0013】
あるいは、前記メインスイッチは、前記第1の電流供給源と前記電流検出抵抗との間に接続されたN型電界効果トランジスタで構成されてもよい。この場合、前記基準電圧発生源は、第2の電流供給源と前記電流検出抵抗の入力端との間に接続され、前記保護用トランジスタは、前記電流検出抵抗の出力端に接続されるエミッタと、前記制御回路部に接続されるコレクタと、前記分圧回路部に接続されるベースとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。
【0014】
この場合において、制御回路部は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子とを有してもよい。
前記第1のトランジスタは、前記第2の電流供給源と前記保護用トランジスタのコレクタとの間に接続されるベースと、前記電流検出抵抗の入力端に接続されるコレクタと、前記第2の電流供給源に接続されるエミッタとを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成される。
前記第2のトランジスタは、前記第1のトランジスタのコレクタに接続されるベースと、前記電流検出抵抗の入力端に接続されるエミッタと、前記メインスイッチのゲートに接続されるコレクタとを有するNPN型トランジスタで構成される。
前記容量素子は、前記第2のトランジスタのエミッタと前記第2のトランジスタのベースとの間に接続される。
【0015】
あるいは、前記メインスイッチは、前記負荷と前記電流検出抵抗との間に接続されたN型電界効果型トランジスタで構成されてもよい。この場合、前記電流検出抵抗は、前記負荷とグランド端子との間に接続され、前記基準電圧発生源は、第2の電流供給源と前記電流検出抵抗の入力端との間に接続され、前記保護用トランジスタは、前記電流検出抵抗の出力端に接続されるエミッタと、前記制御回路部に接続されるコレクタと、前記分圧回路部に接続されるベースとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。
【0016】
前記整流素子は、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタまたはダイオードであってもよい。
【0017】
前記過電流保護回路は、前記メインスイッチをオフ状態に維持することが可能なコントロールユニットをさらに具備してもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明によれば、電流検出抵抗およびメインスイッチの発熱量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る過電流保護回路の基本構成を示す回路図である。
【
図2】比較例に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【
図3】
図1の過電流保護回路における電圧発生部を示す回路図である。
【
図4】
図1の過電流保護回路における制御回路部を示す回路図である。
【
図5】
図4の制御回路部の一作用を説明するタイミングチャートである。
【
図6】
図4の制御回路部の一作用を説明するフローチャートである。
【
図7】
図4の制御回路部の他の構成例を示す回路図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【
図9】
図8の過電流保護回路における電源電圧と出力電流との関係の一例を示す図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【
図13】本発明の第6の実施形態に係る過電流保護回路の要部の一構成例を説明する図である。
【
図14】
図13の過電流保護回路における電圧発生部を示す回路図である。
【
図15】
図13の過電流保護回路における制御回路部を示す回路図である。
【
図16】
図13の制御回路部の他の構成例を示す回路図である。
【
図17】本発明の第7の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【
図18】本発明の第8の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【
図19】本発明の第9の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【
図20】本発明の第10の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【
図21】本発明の第11の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【
図22】
図19の過電流保護回路の他の構成例を示す回路図である。
【
図23】
図22の過電流保護回路の他の構成例を示す回路図である。
【
図24】本発明の第12の実施形態に係る過電流保護回路の要部の一構成例を説明する図である。
【
図25】
図14に示す過電流保護回路の要部の他の構成例を説明する図である。
【
図26】本発明の一実施形態に係る過電流保護回路の構成の一変形例を示す回路図である。
【
図27】上記過電流保護回路の構成の他の変形例を示す回路図である。
【
図28】上記過電流保護回路の構成のさらに他の変形例を示す回路図である。
【
図29】上記過電流保護回路の構成のさらに他の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
<第1の実施形態>
[基本構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る過電流保護回路の基本構成を示す回路図である。
【0022】
本実施形態の過電流保護回路100は、電流供給ライン21と、保護用トランジスタQ11と、電圧発生部X10と、制御回路部Y10とを有する。
【0023】
電流供給ライン21は、電源10(第1の電流供給源)と負荷Lに接続される出力ポート11との間に接続されたメインスイッチ(第1のスイッチ)M11と、負荷Lへの過電流を検出する電流検出抵抗Rsとを有する。
【0024】
保護用トランジスタQ11は、電源10と負荷L(出力ポート11)との間に電流検出抵抗Rsと並列に接続される。保護用トランジスタQ11は、電流検出抵抗Rsの両端電位差が所定値以上のときにオン状態に切り替わることで、負荷Lへの電流の供給を制限するオフ状態へメインスイッチM11を切り替えるための過電流検出信号を出力するように構成される。
【0025】
電圧発生部X10は、保護用トランジスタQ11のベースに接続され、保護用トランジスタQ11がオン状態に切り替わる閾値電圧(Vbe)よりも小さい基準電圧(Vref)を発生することが可能に構成される。
【0026】
制御回路部Y10は、メインスイッチM11と保護用トランジスタQ11との間に接続され、上記過電流検出信号に基づき、メインスイッチM11をオフ状態に維持する第1の状態と、当該第1の状態を解除してメインスイッチM11をオン状態に維持する第2の状態とを交互に繰り返すように構成される。
【0027】
以下、各部の詳細について説明する。
【0028】
電源10は、本実施形態では、バッテリ等の直流電源で構成される。
メインスイッチM11は、電流検出抵抗Rsと出力ポート11(負荷L)との間に接続される。メインスイッチM11は、制御ライン22を介して制御回路部Y10と接続されるゲートと、電流検出抵抗Rsに接続されるソースと、出力ポート11に接続されるドレインとを有するP型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)で構成される。
保護用トランジスタQ11は、電圧発生部X10に接続されるベースと、電源10と電流検出抵抗Rsとの間の電流供給ライン21に接続されるエミッタと、制御回路部Y10に接続されるコレクタとを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成される。
【0029】
メインスイッチM11は、保護用トランジスタQ11によって、電源10から負荷Lへ電流を供給するオン状態と、電源10から負荷Lへ供給される電流を制限するオフ状態とを切り替え可能に構成される。
ここで、「電流を制限する」とは、本実施形態では、負荷Lへ供給される電流を遮断する(出力電流をゼロにする)ことをいうが、これに限られず、負荷Lへ供給される電流を所定の電流値以下に規制するようにメインスイッチM11が構成されてもよい。
【0030】
過電流保護回路100は、制御ライン22を介してメインスイッチM11のゲートに接続される入力ポート12を有する。入力ポート12には、メインスイッチM11をオンオフ制御することが可能な入力信号が入力可能に構成される。メインスイッチM11のゲートは、メインスイッチM11のソースとドレイン間のインピーダンスを調整する。
【0031】
入力ポート12からメインスイッチM11をオン状態にする入力信号(電圧)がゲートに入力されたときのソース-ドレイン間のインピーダンスは、保護用トランジスタQ11のエミッタとコレクタ間が導通した際に制御回路部Y10からメインスイッチM11をオフ状態にする入力信号(電圧)がゲートに入力されたときのソース-ドレイン間のインピーダンスに比べて高く、保護用トランジスタQ11の動作が優先的に働くように構成される。
【0032】
保護用トランジスタQ11は、電流検出抵抗Rsの電圧降下が所定の過電流検出電圧に達したときにオン状態に切り替わる閾値電圧(Vbe)を有し、ベース-エミッタ間の電圧が当該閾値電圧(Vbe)以上のときにメインスイッチM11を上記オフ状態へ切り替えるための過電流検出信号(コレクタ電流)を出力することが可能に構成される。
【0033】
電圧発生部X10は、電流検出抵抗Rsの出力端(電流検出抵抗RsとメインスイッチM11との間の電流供給ライン21)と、保護用トランジスタQ11のベースとの間に接続される。電圧発生部X10は、基準電圧(Vref)を発生する。基準電圧(Vref)は、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)に満たない適宜の大きさに設定される。さらに、基準電圧(Vref)は、電流検出抵抗Rsにおける電圧降下が所定の大きさ(以下、過電流検出電圧(ΔVrs)ともいう)に達したとき、その過電流検出電圧(ΔVrs)と基準電圧(Vref)との加算値が保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)以上となる値に設定される。
【0034】
これにより、負荷Lへ所定量の(過電流ではない)電流が供給される通常時においては、保護用トランジスタQ11はオフ状態に維持される。一方、電流検出抵抗Rsの電圧降下が所定の過電流検出電圧(ΔVrs)に達したときは、その過電流検出電圧(ΔVrs)と基準電圧(Vref)との加算値が保護用トランジスタQ11のベース-エミッタ間に入力されることで、保護用トランジスタQ11がオン状態に切り替えられるように構成される。
【0035】
このように本実施形態の過電流保護回路100においては、保護用トランジスタQ11のベースに基準電圧(Vref)を入力する電圧発生部X10を備えているため、電流検出抵抗Rsでの電圧降下が比較的小さい場合でも保護用トランジスタQ11をオン状態に切り替えて、メインスイッチM11をオフ状態へ切り替えることが可能となる。
【0036】
比較例として、電圧発生部X10を備えていない過電流保護回路1を
図2に示す。ここでは説明を容易にするため、保護用トランジスタQ11のコレクタを直接、制御ライン22を介してメインスイッチM11のゲートに接続した構成例について説明する。
【0037】
同図に示すように、比較例の過電流保護回路1は、電流検出抵抗Rsの出力端(電流供給ライン10)と保護用トランジスタQ11のベースとの間がダイレクトに接続されている。過電流保護回路1においては、電流検出抵抗Rsでの電圧降下が、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)以上になったときに、保護用トランジスタQ11がオン状態に切り替わる。これによりメインスイッチM11が、電源10から負荷Lへ供給される電流を制限するオフ状態に切り替えられる。
【0038】
比較例の過電流保護回路1においては、過電流が生じたときの電流検出抵抗Rsの発熱量が問題となる。過電流の電流値をImax[A]、電流検出抵抗Rsの抵抗値をRs1[Ω]、保護用トランジスタQ11の閾値電圧をVbe[V]、過電流発生時における電流検出抵抗Rsの発熱量をPmax1[W]とすると、過電流保護回路1においては以下の関係を満たす。
【0039】
Imax=Vbe/Rs1 …(1)
Pmax1=(Imax)2・Rs1
=(Vbe)2/Rs1 …(2)
【0040】
比較例の過電流保護回路1において、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)が0.6[v]である条件下での電流、電流検出抵抗Rsの抵抗値、電流検出抵抗Rsでの損失電力の関係を表1に示す。
【0041】
【0042】
一方、本実施形態の過電流保護回路100は、電流検出抵抗Rsにおける過電流検出電圧を保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)以上の電圧(Vref)に変換することが可能な電圧発生部X10を有する。このため、電流検出抵抗Rsに、比較例よりも低い抵抗値の抵抗素子を用いることが可能となり、これにより過電流発生時における電流検出抵抗Rsの発熱量を比較例における発熱量よりも低く抑えることができる。
【0043】
例えば、本実施形態の過電流保護回路100における電流検出抵抗Rsの抵抗値をRs100(=Rs1/(1+a)[Ω](係数aは正数))、過電流発生時における電流検出抵抗Rsの発熱量をPmax100[W]とすると、以下のように、発熱量Pmax100は、比較例における発熱量Pmax1の1/(1+a)倍に低下する。
【0044】
Imax=Vbe/Rs100=Vbe/Rs1/(1+a) …(3)
Pmax100=(Imax)2・Rs100
=[Vbe/{Rs1/(1+a)}]2・Rs1/(1+a)
=Pmax1/(1+a) …(4)
【0045】
[電圧発生部]
以下、電圧発生部の詳細について説明する。
図3は、その一例としての本実施形態の電圧発生部X11を備えた過電流保護回路101を示す回路図である。図において
図1と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下、保護用トランジスタQ11の閾値電圧を「Vbe1」として説明する。
【0046】
図3に示すように、電圧発生部X11は、電流検出抵抗Rsの出力端(電流検出抵抗RsとメインスイッチM11との間の電流供給ライン21)と保護用トランジスタQ11のベースとの間に接続される。電圧発生部X11は、基準電圧発生源VSと、分圧回路部VDとを有する。
【0047】
基準電圧発生源VSは、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe1)以上の第1の電圧を発生することが可能に構成される。分圧回路部VDは、上記第1の電圧を基準電圧(Vref)に相当する第2の電圧に分圧することが可能に構成される。
【0048】
本実施形態において、基準電圧発生源VSは、上記第1の電圧として、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe1)に相当する電圧(以下、標準電圧ともいう)を発生することが可能に構成される。基準電圧発生源VSは、電流検出抵抗Rsの出力端とグランド端子(GND)との間に接続された電圧発生用トランジスタQ12を含む。電圧発生用トランジスタQ12は、整流素子で構成され、本実施形態では、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタで構成される。
【0049】
より具体的に、電圧発生用トランジスタQ12は、電流検出抵抗Rsの出力端に接続されるエミッタと、グランド端子(GND)に抵抗R3を介して接続されたコレクタと、コレクタに接続されたベースとを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成される。
【0050】
上記標準電圧は、電圧発生用トランジスタQ12がオン動作する閾値電圧(Vbe2)に相当し、本実施形態では、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe1)と同一の値に設定される(以下、上記標準電圧を標準電圧(Vbe2)ともいう)。電圧発生用トランジスタQ12は、典型的には、保護用トランジスタQ11と同一のトランジスタ素子で構成される。これにより、周囲温度の変化等による両トランジスタQ11,Q12間における特性のバラツキを防ぐことができる。
【0051】
分圧回路部VDは、電流供給ライン21(電流検出抵抗Rsの出力端)とグランド端子(GND)との間に基準電圧発生源VSと並列的に接続される。分圧回路部VDは、相互に直列接続された2つの抵抗R1(第1の抵抗素子)及び抵抗R2(第2の抵抗素子)を含み、これら2つの抵抗R1,R2の接続点が保護用トランジスタQ11のベースに接続される。これにより、分圧回路部VDにおいて、標準電圧(Vbe2)が基準電圧(Vref)に分圧される。
【0052】
抵抗R1は、電流検出抵抗Rsの出力端とグランド端子(GND)との間に接続され、抵抗R2は、抵抗R1とグランド端子(GND)との間に接続される。抵抗R1,R2の抵抗値は、過電流検出時に保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe1)以上の電圧を保護用トランジスタQ11のベースへ入力できる値であれば、特に限定されない。典型的には、抵抗R1の抵抗値(R1)は、抵抗R2の抵抗値(R2)よりも大きく設定される。本実施形態において、抵抗R2の抵抗値は、電流検出抵抗Rsの抵抗値よりも大きな値に設定される。抵抗R2の抵抗値は、電流検出抵抗Rsに流れる電流が大きくなっていき、抵抗R2に生じる電位差に対して、電流検出抵抗Rsの電位差の方が大きくなった場合に保護機能が働く(保護用トランジスタQ11がオンになる)値に設定されるのが好ましい。
【0053】
一例として、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe1)及び標準電圧(Vbe2)がいずれも0.6[v]、電流検出抵抗Rsにおける過電流検出電圧が0.1[v]の場合、抵抗R1,R2は、0.5[v]以上0.6[v]未満の基準電圧(Vref)が得られるように標準電圧(Vbe2)を分圧することが可能な抵抗値に設定される。これにより、電圧検出抵抗Rsに0.1[v]の電圧降下が生じたときに、その電圧検出抵抗Rsの両端電位差が基準電圧(Vref)に加算されることで、保護用トランジスタQ11がオン状態に切り替えられる。
【0054】
電圧発生部X11は、抵抗R3(第3の抵抗素子)を有する。抵抗R3は、抵抗R2とグランド端子(GND)との間に接続される。抵抗R3の抵抗値は、基準電圧発生源VSが上述の標準電圧(Vbe2)を発生させることができる値であれば、特に限定されない。
【0055】
[制御回路部]
続いて、制御回路部Y10の詳細について説明する。
図4は、その一例としての本実施形態における制御回路部Y11を示す回路図である。
【0056】
図4に示すように、制御回路部Y11は、電流供給ライン21と保護用トランジスタQ11のコレクタとの間に接続される。制御回路部Y11は、第1のトランジスタQ51と、第2のトランジスタQ52と、キャパシタC1(容量素子)とを有する。
【0057】
第1のトランジスタQ51は、保護用トランジスタQ11から出力される過電流検出信号の入力を受けることでオン状態に切り替わるように構成される。第2のトランジスタQ52は、第1のトランジスタQ51がオン状態のときに、メインスイッチM11をオフ状態に維持する第1の状態にするための制御信号を出力するように構成される。キャパシタC1は、第1のトランジスタQ51がオフ状態に切り替わってから所定時間、第2のトランジスタQ52のオン状態を保持するタイマー機能を有するように構成される。
【0058】
本実施形態において第1のトランジスタQ51は、保護用トランジスタQ11のコレクタに接続されるベースと、電流検出抵抗Rsの出力端に接続されるコレクタと、グランド端子(GND)に接続されるエミッタとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。第1のトランジスタQ51は、保護用トランジスタQ11がオン動作したときにオン状態に切り替わるように構成される。
【0059】
第2のトランジスタQ52は、第1のトランジスタQ51のコレクタに接続されるベースと、電流検出抵抗Rsの出力端に接続されるエミッタと、制御ライン22を介してメインスイッチM11のゲートに接続されるコレクタとを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成される。第2のトランジスタQ52は、第1のトランジスタQ51がオン動作したときにオン状態に切り替わり、メインスイッチM11をオフ状態に切り替えるための制御信号を出力するように構成される。
【0060】
キャパシタC1は、第2のトランジスタQ52のエミッタと第2のトランジスタQ52のベースとの間に接続される。キャパシタC1は、第1のトランジスタQ51がオン動作したときに、電流供給ライン21から第1のトランジスタQ51を介してグランド端子(GND)へ流れる電流で充電される。キャパシタC1は、第1のトランジスタQ51がオフ状態に切り替えられた後も、第2のトランジスタQ52を所定時間オン状態に維持することが可能に構成される。
【0061】
保護用トランジスタQ11のコレクタは、直列接続された2つの抵抗R11,R12を介してグランド端子(GND)に接続される。第1のトランジスタQ51のベースは、これら抵抗R11,R12との間に抵抗R13を介して接続される。抵抗R11,R12は、過電流検出時に保護用トランジスタQ11から出力される過電流検出信号(コレクタ電流)を分圧して、第1のトランジスQ51のベースに印加される電圧を調整する。抵抗R13は、第1のトランジスタQ51のベースに流れる電流の大きさを調整するためのものであり、必要に応じて省略することができる。
【0062】
第1のトランジスタQ51のコレクタは、直列接続された2つの抵抗R14,R15を介して電流供給ライン21に接続される。抵抗R14は、キャパシタC1と並列的に接続され、キャパシタC1の放電時間の調整に用いられる。抵抗R15は、第1のトランジスタQ51のコレクタに流れる電流の大きさを調整するためのものであり、必要に応じて省略することができる。
【0063】
第2のトランジスタQ52のベースは、抵抗R16を介して、キャパシタC1の他方の電極と、抵抗R14と抵抗R15との間に接続され、抵抗R16は、第2のトランジスタQ52のベースに流れる電流の大きさを調整する。第2のトランジスタQ52のコレクタは、抵抗R17を介して制御ライン22へ接続され、抵抗R17は、メインスイッチM11のゲートに流れる電流の大きさを調整する。
【0064】
ここで、抵抗R13と抵抗R16は、専用の抵抗素子ではなく、配線の抵抗成分であってもよい。キャパシタC1が担うタイマー機能は、抵抗R12と並列にキャパシタを接続することや、メインスイッチM11のソースとゲート間にキャパシタを接続することで、同様の振る舞いをさせることができる。上記以外にも、上記タイマー機能は、保護回路と出力素子のループの中で、容量と抵抗の組み合わせでいずれのノードでも作り出せることは言うまでもない。
【0065】
入力ポート12には、制御ライン22を介してメインスイッチM11のゲートへ入力信号を出力することが可能なコントロールユニット30が接続される。コントロールユニット30は、過電流保護回路101に接続された制御ICなどで構成され、メインスイッチM11のオンオフ動作を切り替え可能な入力信号を生成する。
【0066】
コントロールユニット30は、直列接続された第1および第2のスイッチ素子Sw1,Sw2と、これら2つのスイッチ素子Sw1,Sw2の間と入力ポート12の間を接続する抵抗R30とを有する。第1のスイッチ素子Sw1は、抵抗R30を介して入力ポート12をグランド端子(GND)に接続する。第2のスイッチ素子Sw2は、抵抗R30を介して入力ポート12を任意の電圧源31に接続する。第1および第2のスイッチ素子Sw2は、典型的には、電界効果型トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)などの半導体素子で構成される。
【0067】
通常時は、第1のスイッチ素子Sw1はオン状態にセットされ、第2のスイッチ素子Sw2はオフ状態にセットされる。これにより、メインスイッチM11のゲートがグランド電位に安定に維持される。過電流保護回路101によらずにコントロールユニット30によってメインスイッチM11をオフ状態に切り替えることが可能であり、この場合は、第1のスイッチ素子Sw1がオフ状態に、第2のスイッチ素子Sw2がオン状態にそれぞれセットされることで、電圧源31よりメインスイッチM11へオフ状態に切り替えるための入力信号が供給される。この入力信号の供給が停止されるまで、メインスイッチM11は、オフ状態に維持される。
【0068】
[過電流保護回路の動作]
続いて、以上のように構成される本実施形態の過電流保護回路101の典型的な動作について説明する。
【0069】
電源10から負荷Lへ所定量の電流を供給する通常状態では、コントロールユニット30の第1のスイッチ素子Sw1はオン状態に、第2のスイッチ素子Sw2はオフ状態にセットされる(
図4参照)。これにより、入力ポート12にはメインスイッチM11をオン状態に維持する信号電圧(グランド電位)が入力される。これにより、電源10から投入された電流は、電流検出抵抗Rs及びメインスイッチM11を含む電流供給ライン21を介して出力ポート11及びこれに接続される負荷Lへ上記所定量の電流が供給される。
【0070】
図3に示すように、電圧発生部X11は、電流検出端子Rsの出力端からグランド端子(GND)へ流れる電流から基準電圧(Vref)を発生する。より具体的に、電圧発生部X11は、基準電圧発生源VSにおいて標準電圧(Vbe2)を生成し、これを分圧回路部VDにおいて基準電圧(Vref)に分圧する。このようにして得られた基準電圧(Vref)は、保護用トランジスタQ11のベース(ベース-エミッタ間)に入力される。
【0071】
負荷Lが地絡すると、負荷Lに対する電源電位(Vcc)が上昇し、出力電流(Iout)が増大する結果、電流検出抵抗Rsでの電圧降下も増加する。保護用トランジスタQ11のベース-エミッタ間にはあらかじめ基準電圧(Vref)が入力されており、この基準電圧(Vref)は、過電流検出電圧(ΔVrs)との加算時に上記ベース-エミッタ間電圧が保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe1)以上となる値に設定されている。
【0072】
したがって、電流検出抵抗Rsにおける電圧降下が所定の過電流検出電圧(ΔVrs)にまで増加すると、電圧発生部X11における基準電圧(Vref)と電流検出抵抗Rsにおける電圧降下分との加算値が保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe1)に達する。その結果、保護用トランジスタQ11がオン状態に切り替えられ、メインスイッチM11をオフ状態に切り替えるための過電流検出信号(コレクタ電流)が制御回路部Y11へ入力される。
【0073】
制御回路部Y11においては、
図4に示すように、過電流検出信号の入力により、第1のトランジスタQ51がオン状態に切り替えられることで、抵抗R14および抵抗R15を介して電流供給ライン21とグランド端子(GND)との間が通電するとともに、キャパシタC1が充電される。そして、第2のトランジスタQ52のベース-エミッタ間に閾値以上の電位差が生じることによって、第2のトランジスタQ52もオン状態に切り替えられる。第2のトランジスタQ52がオン状態に切り替われると、メインスイッチM11のゲートが抵抗R17および電流供給ライン21を介してメインスイッチM11のソースに接続される。これにより、メインスイッチM11がオフ状態に切り替わり、電源10から負荷Lへ供給される電流値が制限されるため、負荷Lを過電流から保護することが可能となる。
【0074】
メインスイッチM11がオフ状態に切り替えられると、負荷Lへの電流供給が停止するため、保護用トランジスタQ11はオフ状態に切り替わる。これにより、制御回路部Y11においては、第1のトランジスタQ51はオフ状態となるため電流供給ライン21からグランド端子(GND)への通電は停止するが、キャパシタC1の充電電圧が第2のトランジスタQ52のベースに印加される。このため、第2のトランジスタQ52は継続してオン状態を維持し、メインスイッチM11は、保護用トランジスタQ11がオフ状態になった後もオフ状態を維持する。
【0075】
一方、キャパシタC1の充電電圧は、抵抗R14および抵抗R15を介して徐々に放電し、第2のトランジスタQ52のベース-エミッタ間の電位差が閾値未満にまで低下すると、第2のトランジスタQ52がオフ状態に切り替わる。これにより、メインスイッチM11は、そのゲートがコントロールユニット30の抵抗R30を介してグランド電位に接続されるためオン状態に復帰し、負荷Lへの電流供給を再開する。このとき、負荷Lの地絡が解消されていない場合は保護用トランジスタQ11が再びオン状態に切り替わり、これを受けて制御回路部Y11は、再びメインスイッチM11をオフ状態へ切り替えるための制御信号を生成する。
【0076】
以上のように、制御回路部Y11は、保護用トランジスタQ11から出力される過電流検出信号に基づき、メインスイッチM11をオフ状態に維持する第1の状態と、当該第1の状態を解除してメインスイッチM11をオン状態に維持する第2の状態とを交互に繰り返す。
【0077】
そして、負荷Lの地絡が解消した場合、負荷Lに対する電源電位(Vcc)は通常時の電位に復帰するため、電源10から負荷Lへ供給される電流の大きさは通常時の所定量に減少し、したがって電流検出抵抗Rsにおける電圧降下分も減少する。その結果、保護用トランジスタQ11がオフ状態となるため、制御回路部Y11からの制御信号の出力停止が維持される。これにより、メインスイッチM11のオン状態が維持され、過電流保護回路101を電流出力停止モードから通常の電流出力動作モードへ自動的に復帰する。
【0078】
本実施形態の過電流保護回路101によれば、電圧発生部X11を備えているため、電流検出抵抗Rsの抵抗値を比較例の過電流保護回路1(
図2参照)よりも小さくすることができる。これにより、過電流保護機能が働くときの電流検出抵抗Rsの発熱量の低減を図ることができる。
【0079】
例えば、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe1)及び標準電圧(Vbe2)がいずれも0.6[v]、抵抗R1と抵抗R2との比が9:1である条件下での電流と、電流検出抵抗Rsと、電流検出抵抗Rsでの損失電力の関係を表2に示す。
【0080】
【0081】
表2に示すように、本実施形態によれば、
図2の過電流保護回路1と比較して、電流検出抵抗Rsでの損失電力を1/10にまで低下させることができる。これにより、電流検出抵抗Rsでの発熱量の大幅な削減を図ることができるため、電流検出抵抗Rsをより小型の抵抗素子で構成することができる。また、放熱機構の小型化や簡素化を図ることが可能となる。
【0082】
さらに、本実施形態の過電流保護回路101は、メインスイッチM11をオフにする第1の状態とメインスイッチM11をオンにする第2の状態との切り替えを繰り返す制御回路部Y11を備えている。制御回路部Y11は、
図5において時刻t1、t2、t4およびt5で示すように、保護用トランジスタQ11と同期してオンオフ動作する第1のトランジスタQ51と、同図において時刻t3およびt6で示すように、第1のトランジスタQ51がオフ状態に切り替えられた後も所定の時間(dT)だけオン状態が延長される第2のトランジスタQ52とを有する。メインスイッチM11は、第2のトランジスタQ52と同期してオン状態からオフ状態に、あるいはオフ状態からオン状態に切り替えられる。
【0083】
例えば、制御回路部Y11を備えておらず、保護用トランジスタQ11のオン信号(過電流検出信号)が直接メインスイッチM11のゲートに入力される場合、メインスイッチM11がオフ状態に切り替えられると、電流供給ライン21が遮断されるため保護用トランジスタQ11はオフ状態に復帰するとともに、メインスイッチM11もすぐにオン状態に復帰することになる。過電流状態が継続している場合、メインスイッチM11は再度オフ状態に切り替わることになるが、十分なオフ時間を与えられることなく比較的短時間でオン状態に戻されるため、過電流の通電によるメインスイッチM11の発熱が回避できず、メインスイッチM11の損傷あるいは劣化が問題となる。
【0084】
これに対して本実施形態においては、上述した構成の制御回路部Y11を備えているため、第2のトランジスタQ52の作用により、過電流検出後、メインスイッチM11がオフ状態になり、過電流状態が解消されずに再び保護用トランジスタQ11がオフ状態に切り替わったとしても、メインスイッチM11が所定の時間(dT)オン状態が継続される。これにより、メインスイッチM11が過電流に曝される時間が短くなるため、メインスイッチM11の発熱を抑えることができる。
【0085】
メインスイッチM11のオフ状態の延長時間(dT)は任意に設定可能であり、好ましくは、メインスイッチM11を十分に冷却することができる時間が確保される。当該延長時間(dT)は、キャパシタC1の容量および抵抗R14,R15の抵抗値で定まる時定数で任意に設定することができる。
【0086】
また、
図5に示すように、制御回路部Y11は、メインスイッチM11をオフ状態に維持する第1の状態を第1の時間(T1)継続した後に、メインスイッチM11をオン状態に維持する第2の状態に遷移し、当該第2の状態を第2の時間(T2)継続した後に、状態第1の状態に遷移するように構成される。第1の時間(T1)は、保護用トランジスタQ11のオン状態の継続時間に上記所定の時間(dT)を加算した時間に相当する。
【0087】
本実施形態では、第2の時間(T2)は、第1の時間(T1)よりも短く設定される。これにより、メインスイッチM11が過電流に曝される時間を極力短くしつつ、メインスイッチM11の十分な冷却時間を確保することができる。
【0088】
また、制御回路部Y11が上記第1および第2の状態を繰り返すように構成されているため、過電流の検出により過電流保護回路101が一度動作した後も、定期的に過電流状態の解消の有無を監視することができる。これにより、過電流状態が解消したときは、速やかに電流供給動作に復帰させることができる。
【0089】
なお、制御回路部Y11は、上述したアナログ回路で構成される場合に限られず、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有する制御ICで構成されてもよい。この場合、制御ICは、例えば
図6に示すような処理手順を実行する。すなわち、制御ICは、保護用トランジスタQ11の出力に基づき、過電流が生じたか否かを判定し(ステップ101)、過電流が生じたときはメインスイッチM11をオフ状態にするための制御信号を、制御ライン22を介してメインスイッチM11のゲートへ入力する(ステップ102)。そして、制御信号の出力後、所定時間(第1の時間(T1)に相当)経過したかを判定し(ステップ103)、所定時間経過したときは制御信号の出力を停止してメインスイッチM11をオン状態に復帰させる(ステップ104)。以上の動作を繰り返し実行することで、上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0090】
また、
図1に示す制御回路部Y10は、
図4に示した制御回路部Y11の構成に限られない。例えば電力源として、
図4の制御回路部Y11においては電流供給ライン21が用いられたが、これに限られず、
図7に示す制御回路部Y12のように、専用の電源10Yが用いられてもよい。この場合、第1のトランジスタQ51のコレクタおよび第2のトランジスタQ52のエミッタは、それぞれ電源10Yに接続される。このような構成によっても上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0091】
<第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る過電流保護回路102を示す回路図である。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0092】
本実施形態の過電流保護回路102は、電圧発生部X12の構成が第1の実施形態と異なる。本実施形態において電圧発生部X12の基準電圧発生源VSは、電圧発生用トランジスタQ12と直列に接続された抵抗R4(第4の抵抗素子)をさらに有する。本実施形態では、抵抗R4は、電圧発生用トランジスタQ12と抵抗R3との間に接続されるが、これに限られず、電圧発生用トランジスタQ12のエミッタ側に接続されてもよい。
【0093】
保護用トランジスタQ11及び電圧発生用トランジスタQ12各々の閾値電圧(Vbe1,Vbe2)は、温度依存性を有し、低温になるほど上昇(増加)する傾向にある。電圧発生部X12は、抵抗R4の抵抗値の大きさによって、負荷Lに対する電源電圧(Vcc)の上昇に応じた基準電圧発生源VSの標準電圧(Vbe2)の変化を調整することができる。
【0094】
図9A~Cは、過電流保護回路102における負荷Lに対する電源電圧(Vcc)と出力電流(Iout)との関係を示す実験結果である。ここでは、簡易的に、抵抗R4の抵抗値が「小」、「中」、「大」の3つを用い、それぞれについて環境温度(周囲の空気の温度:ta)が-40℃、25℃、85℃のときの出力電流の測定値をプロットした。
【0095】
図9A~Cに示すように、抵抗R4の大きさに関係なく、環境温度が低温になるほど、電源電圧(Vcc)の上昇に応じて出力電流(Iout)が増加する傾向にある。また、抵抗R4の抵抗値が大きくなるに従い、電源電圧(Vcc)の上昇に伴って出力電流(Iout)が低下する傾向にある。
【0096】
出力電流(Iout)は、メインスイッチM11の出力特性に依存し、メインスイッチM11の出力特性は、保護用トランジスタQ11の出力特性に依存する。さらに、保護用トランジスタQ11の出力特性は、過電流検出時における電圧発生部X12の回路特性に強い相関を有する。このため、例えば、電圧発生部X12の出力特性が電源10と負荷Lとの間の電圧に大きく依存する場合等において、抵抗R4の抵抗値を最適化することで、電圧発生部X12の出力特性の調整が可能となる。
【0097】
以上のように構成される本実施形態の過電流保護回路102においても、上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。本実施形態によれば、基準電圧発生源VSが抵抗R4を有しているため、この抵抗R4の値を調整することで、電圧発生部X12の所望とする回路特性を得ることができる。
【0098】
<第3の実施形態>
図10は、本発明の第3の実施形態に係る過電流保護回路103を示す回路図である。以下、第2の実施形態と異なる構成について主に説明し、第2の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0099】
本実施形態の過電流保護回路103は、電圧発生部X13の構成が第2の実施形態と異なる。本実施形態の電圧発生部X13は、切替スイッチM12(第2のスイッチ)を含む切替回路部SCをさらに有する。そして、過電流保護回路103はさらに、スタンバイポート13をさらに有する。
【0100】
切替スイッチM12は、抵抗R3とグランド端子(GND)との間の接続を遮断可能なスイッチング素子で構成される。本実施形態において切替スイッチM12は、抵抗R3とグランド端子(GND)との間に接続されたN型のMOSFETで構成される。切替スイッチM12は、スタンバイポート13に接続されるゲートと、抵抗R3に接続されるドレインと、グランド端子(GND)に接続されるソースとを有する。
スタンバイポート13は、切替スイッチM12をオンオフ制御することが可能なスタンバイ信号が入力可能に構成される。
【0101】
本実施形態の過電流保護回路103は、入力ポート12及びスタンバイポート13へ入力される外部信号の電位を調整することにより、待機状態モードと、電流出力動作モードと、電流出力停止モードとを切り替えることが可能に構成される。入力信号及びスタンバイ信号と電流出力との関係を表3に示す。
【0102】
【0103】
待機状態モードでは、入力ポート12へ入力される信号(I信号)はメインスイッチM11をオフにさせる電位に調整され、スタンバイポート13へ入力される信号(Standby信号)は切替スイッチM12をオフにしてグランド端子(GND)に流れる電流を制限する電位に調整される。このモードでは、出力ポート11から出力される電源電流がメインスイッチM11によって制限され、抵抗R3の暗電流も抑制される。このため、機器の非動作時等において電源10の電流消費を最小限に抑えることができる。
【0104】
電流出力動作モードでは、入力ポート12へ入力される信号(I信号)がメインスイッチM11をオンにさせる電位に調整され、スタンバイポート13へ入力される信号(Standby信号)は切替スイッチM12をオンにさせる電位に調整される。このモードでは、機器の動作時において過電流保護回路103は有効となり、地絡の発生時においては電圧発生部X13の動作によりメインスイッチM11がオフ状態に切り替わることで、適正な過電流保護機能が得られる。
【0105】
電流出力停止モードでは、入力ポート12へ入力される信号(I信号)がメインスイッチM11をオフにさせる電位に調整され、スタンバイポート13へ入力される信号(Standby信号)は切替スイッチM12をオンにさせる電位に調整される。このモードでは、例えば、地絡以外の他の理由で機器の動作を停止させたい場合に入力ポート12からの入力信号によってメインスイッチM11をオフ状態に遷移させて負荷への電流供給を制限する場合に適用される。
【0106】
以上のように本実施形態によれば、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、過電流保護回路103が外部の制御回路に接続されることで、通常モード(電流出力動作モード)以外の他の動作モードを実行することが可能となる。
【0107】
なお、入力ポート12は、上記制御回路へ接続されていなくてもよい。この場合、入力ポート12は、適宜の抵抗素子を介してグランド端子に接続される。
【0108】
切替スイッチM12は、FETで構成される場合に限られず、バイポーラトランジスタ、フォトカプラ、フォトMOS等のスイッチング素子で構成されてもよい。あるいは、切替スイッチM12は、CPUで制御しやすいスイッチ素子であれば、メカニカルなリレーで構成されてもよい。
【0109】
<第4の実施形態>
図11は、本発明の第4の実施形態に係る過電流保護回路104を示す回路図である。以下、第3の実施形態と異なる構成について主に説明し、第3の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0110】
本実施形態の過電流保護回路104においては、入力ポート12の設置が省略され、スタンバイポート13に入力ポート12の機能が付加されている点で、第3の実施形態と異なる。
図7の回路例では、スタンバイポート13に切替スイッチM12をオフにさせるスタンバイ信号は、メインスイッチM11をオフにさせる入力信号を兼ねる。これにより、メインスイッチM11及び切替スイッチM12を切替制御するための外部の制御回路の構成を簡素化することができる。
【0111】
本実施形態における電圧発生部X14の切替回路部SCは、抵抗R5(第5の抵抗素子)をさらに有する。抵抗R5は、制御ライン22と切替スイッチM12のソースとの間に接続される。抵抗R5は、メインスイッチM11のベースにグランドに対して所定のバイアス電位を与えるためのものである。
【0112】
さらに電圧発生部X14は、メインスイッチM11のソースとベースとの間に接続された抵抗R6(第6の抵抗素子)をさらに有する。抵抗R6は、メインスイッチM11をオフ状態に切り替えた際の電流供給ライン21に生じるサージを吸収するインピーダンス素子として構成される。これにより過電流検出時においてメインスイッチM11をサージ電流から保護することができる。
【0113】
スタンバイポート13へ切替スイッチM12をオンにする電位が入力されると、メインスイッチM11がオンになる電流出力動作モードに切り替えられる。これにより、出力ポート11を介して電源10から負荷へ所定の値の電流が供給される。
【0114】
<第5の実施形態>
図12は、本発明の第5の実施形態に係る過電流保護回路105を示す回路図である。以下、第4の実施形態と異なる構成について主に説明し、第4の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0115】
本実施形態の過電流保護回路105は、第4の実施形態と同様に、電圧発生部X15と、切替回路部SCとを有する。本実施形態の過電流保護回路105は、さらに、第1及び第2のインピーダンス素子Z1、Z2を有する点で、第4の実施形態と異なる。
【0116】
第1のインピーダンス素子Z1は、第4の実施形態の抵抗R6に代わって、メインスイッチM11のソースとゲートとの間に接続される。第2のインピーダンス素子Z2は、切替スイッチM12のゲートとソースとの間に接続される。
【0117】
第1及び第2のインピーダンス素子Z1,Z2は、メインスイッチM11及び切替スイッチM12を外来ノイズや使用環境の負荷から守るために設けられる。特に、第1のインピーダンス素子Z1により、メインスイッチM11をオフ状態に切り替えた際の電流供給ライン21に生じるサージを吸収することができる時定数が設定される。これにより過電流検出時においてメインスイッチM11をサージ電流から保護することができる。
【0118】
第1及び第2のインピーダンス素子は、抵抗素子、容量素子、整流素子等の2以上の受動素子を適宜組み合わせた並列回路で構成される。なお図示せずとも、メインスイッチM11のドレインと出力ポート11との間にフェライトビーズ等の電波吸収材が別途設置されてもよい。
【0119】
<第6の実施形態>
図13は、本発明の第6の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0120】
[基本構成]
本実施形態の過電流保護回路200は、電流供給ライン21と、保護用トランジスタQ21と、電圧発生部X20と、制御回路部Y20とを有する。
【0121】
電流供給ライン21は、電源10(第1の電流供給源)と負荷Lに接続される出力ポート11との間に接続されたメインスイッチ(第1のスイッチ)M21と、負荷Lへの過電流を検出する電流検出抵抗Rsとを有する。
【0122】
保護用トランジスタQ21は、電源10と負荷L(出力ポート11)との間に電流検出抵抗Rsと並列に接続される。保護用トランジスタQ21は、電流検出抵抗Rsの両端電位差が所定値以上のときにオン状態に切り替わることで、負荷Lへの電流の供給を制限するオフ状態へメインスイッチM21を切り替えるための過電流検出信号を出力するように構成される。
【0123】
電圧発生部X20は、保護用トランジスタQ21のベースに接続され、保護用トランジスタQ21がオン状態に切り替わる閾値電圧(Vbe)よりも小さい基準電圧(Vref)を発生することが可能に構成される。
【0124】
制御回路部Y20は、メインスイッチM21と保護用トランジスタQ21との間に接続され、上記過電流検出信号に基づき、メインスイッチM21をオフ状態に維持する第1の状態と、当該第1の状態を解除してメインスイッチM21をオン状態に維持する第2の状態とを交互に繰り返すように構成される。
【0125】
以下、各部の詳細について説明する。
【0126】
メインスイッチM21は、電源10と電流検出抵抗Rsとの間に接続される。メインスイッチM21は、制御ライン22を介して制御回路部Y20と接続されるゲートと、電流検出抵抗Rsに接続されるソースと、電源10に接続されるドレインとを有するN型のMOSFETで構成される。
保護用トランジスタQ21は、電圧発生部X20に接続されるベースと、電流検出抵抗Rsと出力ポート11との間の電流供給ライン21に接続されるエミッタと、制御回路部Y20に接続されるコレクタとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。
【0127】
メインスイッチM21は、保護用トランジスタQ21によって、電源10から負荷Lへ電流を供給するオン状態と、電源10から負荷Lへ供給される電流を制限するオフ状態とを切り替え可能に構成される。
ここで、「電流を制限する」とは、第1の実施形態と同様に、負荷Lへ供給される電流を遮断する(出力電流をゼロにする)ことをいうが、これに限られず、負荷Lへ供給される電流を所定の電流値以下に規制するようにメインスイッチM21が構成されてもよい。
【0128】
過電流保護回路200は、制御ライン22を介してメインスイッチM21のゲートに接続される入力ポート12を有する。入力ポート12には、メインスイッチM21をオンオフ制御することが可能な入力信号が入力可能に構成される。
【0129】
保護用トランジスタQ21は、電流検出抵抗Rsの電圧降下が所定の過電流検出電圧(ΔVrs)に達したときにオン状態に切り替わる閾値電圧(Vbe)を有し、ベース-エミッタ間の電圧が当該閾値電圧(Vbe)以上のときにメインスイッチM21を上記オフ状態へ切り替えるための過電流検出信号を出力することが可能に構成される。
【0130】
電圧発生部X20は、電流検出抵抗の入力端(電流検出抵抗RsとメインスイッチM21との間の電流供給ライン21)と、保護用トランジスタQ21のベースとの間に接続される。電圧発生部X20はさらに、基準電圧(Vref)を発生するための補助電源20(第2の電流供給源)に接続される。基準電圧(Vref)は、保護用トランジスタQ21の閾値電圧(Vbe)に満たない適宜の大きさに設定される。さらに、基準電圧(Vref)は、電流検出抵抗Rsにおける電圧降下が所定の大きさ(過電流検出電圧(ΔVrs))に達したとき、その過電流検出電圧(ΔVrs)と基準電圧(Vref)との加算値が保護用トランジスタQ21の閾値電圧(Vbe)以上となる値に設定される。
【0131】
これにより、負荷Lへ所定量の(過電流ではない)電流が供給される通常時においては、保護用トランジスタQ21はオフ状態に維持される。一方、電流検出抵抗Rsの電圧降下が所定の過電流検出電圧(ΔVrs)に達したときは、その過電流検出電圧(ΔVrs)と基準電圧(Vref)との加算値が保護用トランジスタQ21のベース-エミッタ間に入力されることで、保護用トランジスタQ21がオン状態に切り替えられるように構成される。
【0132】
[電圧発生部]
以下、電圧発生部X20の詳細について説明する。
図14は、その一例としての本実施形態の電圧発生部X21を備えた過電流保護回路201を示す回路図である。図において
図13と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下、保護用トランジスタQ21の閾値電圧を「Vbe1」として説明する。
【0133】
図14に示すように、電圧発生部X21は、電流検出抵抗Rsの入力端と保護用トランジスタQ21のベースとの間に接続される。電圧発生部X21は、第1の実施形態と同様に、基準電圧発生源VSと、分圧回路部VDとを有する。
【0134】
基準電圧発生源VSは、保護用トランジスタQ21の閾値電圧(Vbe1)以上の第1の電圧を発生することが可能に構成される。分圧回路部VDは、上記第1の電圧を基準電圧(Vref)に相当する第2の電圧に分圧することが可能に構成される。
【0135】
本実施形態において、基準電圧発生源VSは、上記第1の電圧として、保護用トランジスタQ21の閾値電圧(Vbe1)に相当する電圧(標準電圧)を発生させることが可能に構成される。基準電圧発生源VSは、補助電源20と電流検出抵抗Rsの入力端との間に接続された電圧発生用トランジスタQ22を含む。電圧発生用トランジスタQ22は、整流素子で構成され、本実施形態では、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタで構成される。
【0136】
より具体的に、電圧発生用トランジスタQ22は、電流供給ライン21(電流検出抵抗Rsの入力端)に接続されるエミッタと、補助電源20に抵抗R3を介して接続されたコレクタと、コレクタに接続されたベースとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。
【0137】
補助電源20は、
図14に示すように、電圧発生部X21の抵抗R3と出力ポート11との間に接続された直流電源で構成される。補助電源20の電圧(Vp)は、典型的には、電源10の電圧(Vcc)よりも高い。一例を挙げると、電源10が12Vの場合、補助電源20には22Vの直流電源が用いられる。補助電源20の回路構成は特に限定されず、典型的には、チャージポンプあるいはDC-DCコンバータで構成される。
【0138】
上記標準電圧は、電圧発生用トランジスタQ22がオン動作する閾値電圧(Vbe2)に相当し、本実施形態では、保護用トランジスタQ21の閾値電圧(Vbe1)と同一の値に設定される(以下、上記標準電圧を標準電圧(Vbe2)ともいう)。電圧発生用トランジスタQ22は、第1の実施形態と同様に、保護用トランジスタQ21と同一のトランジスタ素子で構成される。
【0139】
分圧回路部VDは、電流供給ライン21(電流検出抵抗Rsの入力端)と補助電源20との間に基準電圧発生源VSと並列的に接続される。分圧回路部VDは、相互に直列接続された2つの抵抗R1(第1の抵抗素子)及び抵抗R2(第2の抵抗素子)を含み、これら2つの抵抗R1,R2の接続点が保護用トランジスタQ21のベースに接続される。これにより、分圧回路部VDにおいて、標準電圧(Vbe2)が基準電圧(Vref)に分圧される。
【0140】
抵抗R1は、電流検出抵抗Rsの入力端と補助電源20との間に接続され、抵抗R2は、抵抗R1と補助電源20との間に接続される。抵抗R1,R2の抵抗値は、過電流検出時に保護用トランジスタQ21の閾値電圧(Vbe1)以上の電圧を保護用トランジスタQ21のベースへ入力できる値であれば、特に限定されない。典型的には、抵抗R1の抵抗値(R1)は、抵抗R2の抵抗値(R2)よりも大きく設定され、抵抗R2の抵抗値は、電流検出抵抗Rsの抵抗値よりも大きな値に設定される。抵抗R2の抵抗値は、電流検出抵抗Rsに流れる電流が大きくなっていき、抵抗R2に生じる電位差に対して、電流検出抵抗Rsの電位差の方が大きくなった場合に保護機能が働く(保護用トランジスタQ21がオンになる)値に設定されるのが好ましい。
【0141】
電圧発生部X21は、抵抗R3(第3の抵抗素子)を有する。抵抗R3は、抵抗R2と補助電源20との間に接続される。抵抗R3の抵抗値は、基準電圧発生源VSが上述の標準電圧(Vbe2)を発生させることができる値であれば、特に限定されない。
【0142】
[制御回路部]
続いて、制御回路部Y20の詳細について説明する。
図15は、その一例としての本実施形態における制御回路部Y21を示す回路図である。
【0143】
図15に示すように、制御回路部Y21は、補助電源20と保護用トランジスタQ21のコレクタとの間に接続される。制御回路部Y21は、第1のトランジスタQ61と、第2のトランジスタQ62と、キャパシタC2(容量素子)とを有する。
【0144】
第1のトランジスタQ61は、保護用トランジスタQ21から出力される過電流検出信号の入力を受けることでオン状態に切り替わるように構成される。第2のトランジスタQ62は、第1のトランジスタQ61がオン状態のときに、メインスイッチM21をオフ状態に維持する第1の状態にするための制御信号を出力するように構成される。キャパシタC2は、第1のトランジスタQ61がオフ状態に切り替わってから所定時間、第2のトランジスタQ62のオン状態を保持するタイマー機能を有するように構成される。
【0145】
本実施形態において第1のトランジスタQ61は、補助電源20と保護用トランジスタQ21のコレクタとの間に接続されるベースと、電流検出抵抗Rsの入力端に接続されるコレクタと、補助電源20に接続されるエミッタとを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成される。第1のトランジスタQ61は、保護用トランジスタQ21がオン動作したときにオン状態に切り替わるように構成される。
【0146】
第2のトランジスタQ62は、第1のトランジスタQ61のコレクタに接続されるベースと、電流検出抵抗Rsの入力端に接続されるエミッタと、制御ライン22を介してメインスイッチM21のゲートに接続されるコレクタとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。第2のトランジスタQ62は、第1のトランジスタQ61がオン動作したときにオン状態に切り替わり、メインスイッチM21をオフ状態に切り替えるための制御信号を出力するように構成される。
【0147】
キャパシタC2は、第2のトランジスタQ62のエミッタと第2のトランジスタQ62のベースとの間に接続される。キャパシタC2は、第1のトランジスタQ61がオン動作したときに、補助電源20から第1のトランジスタQ61を介して電流供給ライン21へ流れる電流で充電される。キャパシタC2は、第1のトランジスタQ61がオフ状態に切り替えられた後も、第2のトランジスタQ62を所定時間オン状態に維持することが可能に構成される。
【0148】
保護用トランジスタQ21のコレクタは、直列接続された2つの抵抗R11,R12を介して補助電源20に接続される。第1のトランジスタQ61のベースは、これら抵抗R11,R12との間に抵抗R13を介して接続される。抵抗R11,R12は、過電流検出時に保護用トランジスタQ21から出力される過電流検出信号を分圧して、第1のトランジスQ61のベースに印加される電圧を調整する。抵抗R13は、第1のトランジスタQ61のベースに流れる電流の大きさを調整するためのものであり、必要に応じて省略することができる。
【0149】
第1のトランジスタQ61のコレクタは、直列接続された2つの抵抗R14,R15を介して電流供給ライン21に接続される。抵抗R14は、キャパシタC2と並列的に接続され、キャパシタC2の放電時間の調整に用いられる。抵抗R15は、第1のトランジスタQ61のコレクタに流れる電流の大きさを調整するためのものであり、必要に応じて省略することができる。
【0150】
第2のトランジスタQ62のベースは、抵抗R16を介して、キャパシタC2の他方の電極と、抵抗R14と抵抗R15との間に接続され、第2のトランジスタQ62のベースに流れる電流の大きさを調整する。第2のトランジスタQ62のコレクタは、抵抗R17を介して制御ライン22へ接続され、メインスイッチM21のゲートから電流供給ライン21に流れる電流の大きさを調整する。
【0151】
入力ポート12には、制御ライン22を介してメインスイッチM21のゲートへ入力信号を出力することが可能なコントロールユニット30が接続される。コントロールユニット30は、過電流保護回路201に接続された制御ICなどで構成され、メインスイッチM21のオンオフ動作を切り替え可能な入力信号を生成する。
【0152】
コントロールユニット30は、直列接続された第1および第2のスイッチ素子Sw1,Sw2と、これら2つのスイッチ素子Sw1,Sw2の間と入力ポート12の間を接続する抵抗R30とを有する。第1のスイッチ素子Sw1は、抵抗R30を介して入力ポート12をグランド端子(GND)に接続する。第2のスイッチ素子Sw2は、抵抗R30を介して入力ポート12を任意の電圧源31に接続する。第1および第2のスイッチ素子Sw2は、典型的には、FET(Field Effect Transistor)などの半導体素子で構成される。
【0153】
通常時は、第1のスイッチ素子Sw1はオフ状態にセットされ、第2のスイッチ素子Sw2はオン状態にセットされる。これにより、メインスイッチM21のゲートが電圧源31に接続されてオン状態に維持される。過電流保護回路201によらずにコントロールユニット30によってメインスイッチM21をオフ状態に切り替えることが可能であり、この場合は、第1のスイッチ素子Sw1がオン状態に、第2のスイッチ素子Sw2がオフ状態にそれぞれセットされることで、電圧源31よりメインスイッチM21へオフ状態に切り替えるための入力信号が供給される。この入力信号の供給が停止されるまで、メインスイッチM21はオフ状態に維持される。
【0154】
[過電流保護回路の動作]
続いて、以上のように構成される本実施形態の過電流保護回路201の典型的な動作について説明する。
【0155】
電源10から負荷Lへ所定量の電流を供給する通常状態では、コントロールユニット30の第1のスイッチ素子Sw1はオフ状態に、第2のスイッチ素子Sw2はオン状態にセットされる(
図15参照)。これにより、入力ポート12にはメインスイッチM11をオン状態に維持する信号電圧が入力される。これにより、電源10から投入された電流は、電流検出抵抗Rs及びメインスイッチM21を含む電流供給ライン21を介して出力ポート11及びこれに接続される負荷Lへ上記所定量の電流が供給される。
【0156】
図14に示すように、電圧発生部X21は、補助電源20から供給される電流から基準電圧(Vref)を発生させる。より具体的に、電圧発生部X21は、基準電圧発生源VSにおいて標準電圧(Vbe2)を生成し、これを分圧回路部VDにおいて基準電圧(Vref)に分圧する。このようにして得られた基準電圧(Vref)は、保護用トランジスタQ21のベース(ベース-エミッタ間)に入力される。
【0157】
負荷Lが地絡すると、出力電流(Iout)が増大する結果、電流検出抵抗Rsでの電圧降下も増加する。保護用トランジスタQ21のベース-エミッタ間にはあらかじめ基準電圧(Vref)が入力されており、この基準電圧(Vref)は、過電流検出電圧(ΔVrs)との加算時に上記ベース-エミッタ間電圧が保護用トランジスタQ21の閾値電圧(Vbe1)以上となる値に設定される。
【0158】
したがって、電流検出抵抗Rsにおける電圧降下が所定の過電流検出電圧(ΔVrs)にまで増加すると、電圧発生部X21における基準電圧(Vref)と電流検出抵抗Rsにおける電圧降下分との加算値が保護用トランジスタQ21の閾値電圧(Vbe1)に達する。その結果、保護用トランジスタQ21がオン状態に切り替わり、メインスイッチM21オフ状態に切り替えるための過電流検出信号(コレクタ電流)が制御回路部Y21へ入力される。
【0159】
制御回路部Y21においては、
図15に示すように、過電流検出信号の入力により、第1のトランジスタQ61がオン状態に切り替えられることで、抵抗R14および抵抗R15を介して補助電源20と電流供給ライン21との間が通電するとともに、キャパシタC2が充電される。そして、第2のトランジスタQ62のベース-エミッタ間に閾値以上の電位差が生じることによって、第2のトランジスタQ62もオン状態に切り替えられる。第2のトランジスタQ62がオン状態に切り替わると、メインスイッチM21のゲートが抵抗R17および電流供給ライン21を介してメインスイッチM21のソースに接続される。これにより、メインスイッチM21がオフ状態に切り替わり、電源10から負荷Lへ供給される電流値が制限されるため、負荷Lを過電流から保護することが可能となる。
【0160】
メインスイッチM21がオフ状態に切り替えられると、負荷Lへの電流供給が停止するため、保護用トランジスタQ21はオフ状態に切り替わる。これにより、制御回路部Y21においては、第1のトランジスタQ61はオフ状態となるため補助電源20から電流供給ライン21への通電は停止するが、キャパシタC2の充電電圧が第2のトランジスタQ62のベースに印加される。このため、第2のトランジスタQ62は継続してオン状態を維持し、メインスイッチM21は、保護用トランジスタQ21がオフ状態になった後もオフ状態を維持する。
【0161】
一方、キャパシタC2の充電電圧は、抵抗R14および抵抗R15を介して徐々に放電し、第2のトランジスタQ62のベース-エミッタ間の電位差が閾値未満にまで低下すると、第2のトランジスタQ52がオフ状態に切り替わる。これにより、メインスイッチM21はオン状態に復帰し、負荷Lへの電流供給を再開する。このとき、負荷Lの地絡が解消されていない場合は保護用トランジスタQ21が再びオン状態に切り替わり、これを受けて制御回路部Y21は、再びメインスイッチM21をオフ状態へ切り替えるための制御信号を生成する。
【0162】
以上のように、制御回路部Y21は、保護用トランジスタQ21から出力される過電流検出信号に基づき、メインスイッチM21をオフ状態に維持する第1の状態と、当該第1の状態を解除してメインスイッチM21をオン状態に維持する第2の状態とを交互に繰り返す(
図5参照)。
【0163】
そして、負荷Lの地絡が解消した場合、電源10から負荷Lへ供給される電流の大きさは通常時の所定量に減少し、したがって電流検出抵抗Rsにおける電圧降下分も減少する。その結果、保護用トランジスタQ21がオフ状態となり、メインスイッチM21が再びオン状態に切り替えられる。これにより、過電流保護回路201を電流出力停止モードから通常の電流出力動作モードへ自動的に復帰させることができる。
【0164】
本実施形態の過電流保護回路201においても第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができ、電流検出抵抗Rsの抵抗値を比較例の過電流保護回路1(
図2参照)よりも小さくすることができる。これにより、過電流保護機能が働くときの電流検出抵抗Rsの発熱量の低減を図ることができる。
【0165】
さらに、本実施形態の過電流保護回路201は制御回路部Y21を備えているため、第2のトランジスタQ62の作用により、過電流検出後、メインスイッチM21がオフ状態になり、過電流状態が解消されずに再び保護用トランジスタQ21がオフ状態に切り替わったとしても、メインスイッチM21が所定の時間(dT)オン状態が継続される。これにより、メインスイッチM21が過電流に曝される時間が短くなるため、メインスイッチM21の発熱を抑えることができる。
【0166】
なお、
図13に示す制御回路部Y20は、
図15に示した制御回路部Y21の構成に限られない。例えば、
図15の制御回路部Y21において第1のトランジスタQ61のコレクタおよび第2のトランジスタQ62のエミッタはそれぞれ電流供給ライン21に接続されたが、これに限られず、
図16に示すようにそれらをグランド電位あるいは所定のマイナス電位源に接続されてもよい。このような構成によっても上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0167】
<第7の実施形態>
図17は、本発明の第7の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。以下、第6の実施形態と異なる構成について主に説明し、第6の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0168】
本実施形態の過電流保護回路202は、電圧発生部X22の構成が第6の実施形態と異なる。本実施形態において電圧発生部X22の基準電圧発生源VSは、電圧発生用トランジスタQ22と直列に接続された抵抗R4(第4の抵抗素子)をさらに有する。本実施形態では、抵抗R4は、電圧発生用トランジスタQ22と抵抗R3との間に接続されるが、これに限られず、電圧発生用トランジスタQ22のエミッタ側に接続されてもよい。
【0169】
本実施形態の過電流保護回路202においても、上述の第6の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、本実施形態によれば、基準電圧発生源VSが抵抗R4を有しているため、
図8を参照して説明した第2の実施形態と同様に、抵抗R4の値を調整することで電圧発生部X22の所望とする回路特性を得ることができる。
【0170】
<第8の実施形態>
図18は、本発明の第8の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。以下、第7の実施形態と異なる構成について主に説明し、第7の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0171】
本実施形態の過電流保護回路203は、電圧発生部X23の構成が第7の実施形態と異なる。本実施形態の電圧発生部X23は、切替スイッチM22(第2のスイッチ)を含む切替回路部SCをさらに有する。そして、過電流保護回路203はさらに、スタンバイポート13をさらに有する。
【0172】
切替スイッチM22は、補助電源20と抵抗R3との間の接続を遮断可能なスイッチング素子で構成される。本実施形態において切替スイッチM22は、スタンバイポート13に接続されるゲートと、補助電源20に接続されるソースと、抵抗R3に接続されるドレインとを有するP型のMOSFETで構成される。
スタンバイポート13は、切替スイッチM22をオンオフ制御することが可能なスタンバイ信号が入力可能に構成される。
【0173】
本実施形態の過電流保護回路203は、入力ポート12及びスタンバイポート13へ入力される外部信号の電位を調整することにより、待機状態モードと、電流出力動作モードと、電流出力停止モードとを切り替えることが可能に構成される。入力信号及びスタンバイ信号と電流出力との関係を表4に示す。
【0174】
【0175】
待機状態モードでは、入力ポート12へ入力される信号(I信号)はメインスイッチM21をオフにさせる電位に調整され、スタンバイポート13へ入力される信号(Standby信号)は切替スイッチM22をオフにして補助電源20から電圧発生部X23へ流れる電流を制限する電位に調整される。このモードでは、出力ポート11から出力される電源電流がメインスイッチM21によって制限され、抵抗R3の暗電流も抑制される。このため、機器の非動作時等において補助電源20の電流消費を最小限に抑えることができる。
【0176】
電流出力動作モードでは、入力ポート12へ入力される信号(I信号)がメインスイッチM21をオンにさせる電位に調整され、スタンバイポート13へ入力される信号(Standby信号)は切替スイッチM22をオンにさせる電位に調整される。このモードでは、機器の動作時において過電流保護回路203は有効となり、地絡の発生時においては電圧発生部X23の動作によりメインスイッチM21がオフ状態に切り替わることで、適正な過電流保護機能が得られる。
【0177】
電流出力停止モードでは、入力ポート12へ入力される信号(I信号)がメインスイッチM21をオフにさせる電位に調整され、スタンバイポート13へ入力される信号(Standby信号)は切替スイッチM22をオンにさせる電位に調整される。このモードでは、例えば、地絡以外の他の理由で機器の動作を停止させたい場合に入力ポート12からの入力信号によってメインスイッチM21をオフ状態に遷移させて負荷への電流供給を制限する場合に適用される。
【0178】
以上のように本実施形態によれば、第7の実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、過電流保護回路203が外部の制御回路に接続されることで、通常モード(電流出力動作モード)以外の他の動作モードを実行することが可能となる。
【0179】
切替スイッチM22は、FETで構成される場合に限られず、バイポーラトランジスタ、フォトカラ、フォトMOS等のスイッチング素子で構成されてもよい。あるいは、切替スイッチM22は、CPUで制御しやすいスイッチ素子であれば、メカニカルなリレーで構成されてもよい。
【0180】
<第9の実施形態>
図19は、本発明の第9の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。以下、第8の実施形態と異なる構成について主に説明し、第8の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0181】
本実施形態の過電流保護回路204においては、入力ポート12の設置が省略され、スタンバイポート13に入力ポート12の機能が付加されている点で、第8の実施形態と異なる。
図19の回路例では、スタンバイポート13に切替スイッチM22をオフにさせるスタンバイ信号は、メインスイッチM21をオフにさせる入力信号を兼ねる。これにより、メインスイッチM21及び切替スイッチM22を切替制御するための外部の制御回路の構成を簡素化することができる。
【0182】
本実施形態における電圧発生部X24の切替回路部SCは、抵抗R5(第5の抵抗素子)をさらに有する。抵抗R5は、制御ライン22と切替スイッチM22のソースとの間に接続される。抵抗R5は、メインスイッチM21のゲートに入力される切替スイッチM22からの出力電流を適宜の値に調整するためのものである。
【0183】
スタンバイポート13へ切替スイッチM22をオンにする電位が入力されると、メインスイッチM21がオンになる電流出力動作モードに切り替えられる。これにより、出力ポート11を介して電源10から負荷へ所定の値の電流が供給される。
【0184】
本実施形態の過電流保護回路204は、さらに、第1及び第2のインピーダンス素子Z1、Z2と抵抗R7(第7の抵抗素子)を有する点で、第8の実施形態と異なる。第1のインピーダンス素子Z1は、メインスイッチM21のソースとゲートとの間に接続される。第2のインピーダンス素子Z2は、切替スイッチM22のゲートとソースとの間に接続される。抵抗R7は、保護用トランジスタQ21のコレクタとメインスイッチM21のゲートとの間に接続される。
【0185】
第1及び第2のインピーダンス素子Z1,Z2は、抵抗素子、容量素子、整流素子等の2以上の受動素子を適宜組み合わせた並列回路で構成される。第1及び第2のインピーダンス素子Z1,Z2は、メインスイッチM21及び切替スイッチM22を外来ノイズや使用環境の負荷から守るために設けられる。特に、第1のインピーダンス素子Z1及び抵抗R7により、メインスイッチM21をオフ状態に切り替えた際の電流供給ライン21に生じるサージを吸収することができる時定数が設定される。これにより、過電流検出時においてメインスイッチM21をサージ電流から保護することができる。
【0186】
<第10の実施形態>
図20は、本発明の第10の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。以下、第6の実施形態と異なる構成について主に説明し、第6の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0187】
本実施形態の過電流保護回路301は、メインスイッチM31がIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)で構成されている点で、第6の実施形態と異なる。
【0188】
すなわち、メインスイッチM31は、電源10と電流検出抵抗Rsとの間に接続され、制御ライン22を介して制御回路部Y20と接続されるゲートと、電流検出抵抗Rsに接続されるエミッタと、電源10に接続されるコレクタとを有するN型のIGBTで構成される。
【0189】
メインスイッチM31は、制御回路部Y20によって、電源10から負荷Lへ電流を供給するオン状態と、電源10から負荷Lへ供給される電流を制限するオフ状態とを切り替え可能に構成される。
ここで、「電流を制限する」とは、第1の実施形態と同様に、負荷Lへ供給される電流を遮断する(出力電流をゼロにする)ことをいうが、これに限られず、負荷Lへ供給される電流を所定の電流値以下に規制するようにメインスイッチM31が構成されてもよい。
【0190】
以上のように構成される本実施形態の過電流保護回路301においても上述の第6の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。本実施形態においてメインスイッチM31がIGBTで構成されているため、比較的大電流が流れる電流供給ラインに設けられる過電流保護回路として好適に用いることができる。
【0191】
上述の第7~第10の実施形態についても同様に、N型MOSFETで構成されたメインスイッチM21をN型IGBTで構成されたメインスイッチM31に置き換えて過電流保護回路202~204を構成してもよい。
【0192】
<第11の実施形態>
図21は、本発明の第11の実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。以下、第5の実施形態と異なる構成について主に説明し、第5の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0193】
本実施形態の過電流保護回路106は、
図12を参照して説明した第5の実施形態に係る過電流保護回路105に、監視回路MCを設置することで構成される。
【0194】
監視回路MCは、電源10とメインスイッチM11との間に保護用トランジスタQ11に対して並列的に接続される監視用トランジスタQ13を有する。監視用トランジスタQ13は、監視ポート14と接続されるベースと、電源10に接続されるエミッタと、制御ライン22を介してメインスイッチM11のゲートに接続されるコレクタとを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成される。
【0195】
監視回路MCは、メインスイッチM11からの出力電流(Iout)の大きさを監視し、これが所定の過電流に相当する電流値であることを検出したとき、監視ポート14から監視用トランジスタQ13をオン状態に切り替える入力信号が監視用トランジスタQ13のベースに入力される。これにより、制御回路部Y20からメインスイッチM11をオフ状態に切り替える制御信号が出力されるため、負荷Lを過電流から保護することができる。
【0196】
監視用トランジスタQ13がオン状態に切り替わるタイミングは、電流検出抵抗Rsにおける過電流検出電圧の検出時に保護用トランジスタQ11がオン状態へ切り替わるタイミングと同一であってもよいし、これよりも早いタイミングであってもよい。監視回路MCを併用することにより、過電流検出時において負荷Lを過電流から速やかに保護することができる。また、第1のインピーダンス素子Z1及び抵抗R7により、過電流検出時においてメインスイッチM11をサージ電流から効果的に保護することができる。
【0197】
図22に示す過電流保護回路205は、
図19を参照して説明した第10の実施形態に係る過電流保護回路204に、監視回路MCを設置したものに相当する。
本例において監視回路MCは、補助電源20と負荷L(出力ポート11)との間に保護用トランジスタQ21に対して並列的に接続される監視用トランジスタQ23を有する。監視用トランジスタQ23は、監視ポート14と接続されるベースと、出力ポート11に接続されるエミッタと、補助電源20に接続されるコレクタとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。
本例においても上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0198】
図23に示す過電流保護回路302は、
図22に示した過電流保護回路205のメインスイッチが、N型IGBTで構成されたメインスイッチM31に置き換えられたものに相当する。それ以外の構成は
図22の構成と同様であり、本例においても上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0199】
監視用トランジスタQ13,Q23は、バイポーラトランジスタで構成される場合に限られず、FET、フォトカプラ、フォトMOS等のスイッチング素子で構成されてもよい。
【0200】
<第12の実施形態>
上述の各実施形態の過電流保護回路において、保護用トランジスタQ11,Q21(以下、Q1と総称する)及び電圧発生用トランジスタQ12,Q22(以下、Q2と総称する)は、各々の閾値電圧(Vbe1、Vbe2)に温度特性を有する(例えば、約-2mV/℃)。このため、これら温度特性による両トランジスタの素子特性のバラツキを防ぐには、両トランジスタを共通のトランジスタ素子で構成するのが好ましい。
【0201】
一方、上記過電流保護回路における電圧発生部は、
図1及び
図13に示したように、例えば
図2に示す過電流保護回路1に対して外付けされる別途の回路部品として構成することが可能である。この場合、保護用トランジスタQ1と電圧発生用トランジスタQ2とは異なるパッケージ部品で構成されることが多い。このため、両トランジスタ間において温度差が発生し易く、これが原因で、両トランジスタの閾値電圧に差異が生じ、その差異が大きくなると、過電流保護回路としての目的とする動作を確保することができなくなるおそれがある。
【0202】
そこで本実施形態の過電流保護回路601は、
図24に示すように、保護用トランジスタQ1を内蔵する第1のパッケージ部品61と、電圧発生用トランジスタQ2を内蔵する第2のパッケージ部62と、これら2つのパッケージ部品61,62との間を熱的に接続する伝熱部材63とを備える。
【0203】
第1のパッケージ部品61は、保護用トランジスタQ1を封止するパッケージ体610と、保護用トランジスタQ1のベース、エミッタ及びコレクタにそれぞれ接続される外部端子611~613とを有する。
同様に、第2のパッケージ部品62は、電圧発生用トランジスタQ2を封止するパッケージ体620と、電圧発生用トランジスタQ2のベース、エミッタ及びコレクタにそれぞれ接続される外部端子621~623とを有する。
なお、各パッケージ部品61,62の外部端子の配置は図示の例に限られず、任意の位置に変更可能である。また、同一パッケージ内の素子の端子配置を変えてもよい。
【0204】
伝熱部材63は、典型的には、銅やアルミニウム等の伝熱性が比較的高い金属材料で構成される。伝熱部材63は、典型的には板状に形成されるが、これに限られず、箱状、棒状、メッシュ状等であってもよい。各パッケージ部品61,62と伝熱部材63との間の接続には、例えば熱伝導性接着剤が用いられるが、これに限られず、例えば二色成形法等によってパッケージ体610,620と一体的に形成されてもよい。
【0205】
本実施形態の過電流保護回路601は、両パッケージ部品61,62が伝熱部材63によって相互に接続されているため、両パッケージ部品61,62間における温度差の発生が抑制される。これにより、保護用トランジスタQ1及び電圧発生用トランジスタQ2を共通の温度環境に維持することができるため、温度差に起因する動作バラツキが抑えられ、目的とする過電流保護動作を安定に確保することができる。
【0206】
一方、第1及び第2のパッケージ部品61,62は、共通の1つのパッケージ部品で構成されてもよい。例えば
図25A,Bに示すパッケージ部品64は、保護用トランジスタQ1及び電圧発生用トランジスタQ2を封止するパッケージ体640と、保護用トランジスタQ1及び電圧発生用トランジスタQ2各々のベース、エミッタ及びコレクタにそれぞれ接続される外部端子611~613,621~623とを有する。
【0207】
上記構成によれば、保護用トランジスタQ1及び電圧発生用トランジスタQ2が共通のパッケージ体640に収容されているため、保護用トランジスタQ1及び電圧発生用トランジスタQ2の温度差の発生を極力阻止することができる。また、パッケージ本体64に温度分布が生じ得るような場合、
図25Bに示すように、パッケージ本体64の表面を銅板や銅箔等で構成された伝熱部材65で被覆することで、パッケージ本体64での温度分布の発生を抑えることができる。
【0208】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0209】
例えば以上の第2~5、7~9及び11の実施形態では、電圧発生部における抵抗R4が電圧発生用トランジスタQ12,Q22と抵抗R3との間に接続されたが、これに限られない。例えば
図26に示す電圧発生部X16のように、電圧発生用トランジスタQ12が抵抗R4と抵抗R3との間に接続されてもよい。この構成は、
図27及び
図28を参照して後述する回路例についても同様に適用可能である。
【0210】
基準電圧発生源VSを構成する電圧発生用トランジスタQ12は、PNP型のバイポーラトランジスタで構成される例に限られない。例えば
図27に示す電圧発生部X17のように、電圧発生用トランジスタQ14がNPN型のバイポーラトランジスタで構成されてもよい。この場合も、電圧発生用トランジスタQ14は、保護用トランジスタQ11と同一の閾値電圧を有するとともに、ベース-コレクタ間が接続(ダイオード接続)されることで整流素子として構成される。これにより、上述の各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
同様に、NPN型バイポーラトランジスタで構成される電圧発生用トランジスタQ22(例えば
図12参照)は、PNP型バイポーラトランジスタで構成されてもよい。
【0211】
基準電圧発生源VSを構成する整流素子は、トランジスタに限られない。例えば
図28に示す電圧発生部X18のように、基準電圧発生源VSを構成する整流素子は、ダイオードD1で構成されてもよい。ダイオードは、第1のトランジスタQ1の閾値電圧(Vbe)と同等の動作電圧(Vf)を有し、電流供給ライン21(電流検出抵抗Rs)から抵抗R4に向かう電流の流れが順方向となるように接続される。このような構成によっても、上述の各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0212】
以上の各実施形態では、メインスイッチM1,M2としてP型のMOSFETあるいはN型のMOSFETで構成されたが、各メインスイッチが相補型のMOSFET(CMOS:Complementary MOS)に置き換えられてもよい。また、各メインスイッチを相補型のMOSFETに置き換えるとともに、高電位(電源端子)側を低電位(グランド端子)側に、低電位(グランド端子)側を高電位(電源端子)側に置き換えることで、同様の機能をもつ過電流保護回路を実現してもよい。
【0213】
さらに以上の各実施形態では、メインスイッチが負荷Lに対して電源20側に設置されるハイサイド駆動方式の過電流保護回路を例に挙げて説明したが、これに限られず、メインスイッチが負荷Lに対してグランド側に設置されるローサイド駆動方式の過電流保護回路にも本発明は適用可能である。
この場合、
図29に示す過電流保護回路107のように、メインスイッチM3は、N型のMOSFETで構成される。保護用トランジスタQ31は、NPN型のバイポーラトランジスタで構成され、電圧発生部X19における電圧発生用トランジスタQ32もまた、NPN型のバイポーラトランジスタで構成される。
【0214】
過電流保護回路107において、メインスイッチM3及び電流検出抵抗Rsは、負荷Lとグランド端子(GND)との間の直列に接続され、メインスイッチM3は負荷Lと電流検出抵抗Rsとの間に接続される。
保護用トランジスタQ31は、前記電流検出抵抗Rsと並列に接続され、電流供給ライン21(電流検出抵抗Rsの出力端)に接続されるエミッタと制御回路部Y10に接続されるコレクタとを有する。制御回路部Y10は、過電流検出時に保護用トランジスタQ31がオン状態に切り替わることで、メインスイッチM3を、負荷Lへの過電流を制限するオフ状態(第1の状態)とその制限を解除するオン状態(第2の状態)との間で交互に切り替えることが可能に構成される。
電圧発生部X19は、保護用トランジスタQ31のベースに接続され、保護用トランジスタQ31がオン状態に切り替わる閾値電圧(Vbe1)より小さい基準電圧(Vref)を発生する。本例において、電圧発生部X19は、
図19を参照して説明した第9の実施形態における電圧発生部X24と同様な構成を有し、補助電源20から供給される電流から標準電圧(Vbe2)を発生させる電圧発生用トランジスタQ32を含む。
その他の構成については、
図19と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
このような構成においても、上述の各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0215】
10…電源(第1の電流供給源)
11…出力ポート
12…入力ポート
13…スタンバイポート
14…監視ポート
20…補助電源
21…電流供給ライン
22…制御ライン
63,65…伝熱部材
100~107,200~205,301,302,601…過電流保護回路
610,620,640…パッケージ体
C1,C2…キャパシタ
D1…ダイオード
M11,M12,M3…メインスイッチ(第1のスイッチ)
M12,M22…切替スイッチ(第2のスイッチ)
Q11,Q21,Q31…保護用トランジスタ
Q12,Q22,Q32…電圧発生用トランジスタ
Q51,Q61…第1のトランジスタ
Q52,Q62…第2のトランジスタ
R1~R6…抵抗
Rs…電流検出抵抗
SC…切替回路部
VS…基準電圧発生源
VD…分圧回路部
X10~X19,X20~X24…電圧発生部
Y10,Y11,Y12,Y20,Y21,Y22…制御回路部
Z1,Z2…インピーダンス素子