(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】電気接続箱及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/14 20060101AFI20220809BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20220809BHJP
H02G 3/08 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H02G3/14
H02G3/16
H02G3/08 080
(21)【出願番号】P 2018164239
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】山本 覚
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-236654(JP,A)
【文献】特開2002-58128(JP,A)
【文献】特開平9-36568(JP,A)
【文献】特開2015-77059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/14
H02G 3/16
H02G 3/08
B60R 16/02
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁及び内壁を有する二重壁構造のフレーム周壁と、該フレーム周壁に囲まれた開口部を覆うカバーとを備えて構成され、
前記フレーム周壁は、前記開口部近傍の前記外壁及び前記内壁の端部に前記カバーに対するフレーム側継ぎ目部を有する形状に形成され、
前記カバーは、前記フレーム側継ぎ目部に対し係合するカバー側継ぎ目部を有する形状に形成され、
前記カバーがアッパーカバーである場合、前記フレーム側継ぎ目部には、フレーム側段部を有して前記外壁に連続する第一係合壁と、前記内壁に連続する第二係合壁とが形成され、且つ、前記カバー側継ぎ目部には、前記第一係合壁の外側に配置される第三係合壁と、前記第一係合壁及び前記第二係合壁の間に差し込まれる第四係合壁と、前記第一係合壁を跨ぐように前記第三係合壁及び前記第四係合壁を連結する連結部とが形成され、且つ、前記第一係合壁には、切り欠き形状のフレーム側スリット又は貫通孔形状のフレーム側孔が形成される一方、
前記カバーがロアカバーである場合、前記フレーム側継ぎ目部には、前記外壁に連続する第五係合壁と、前記内壁に連続する第六係合壁とが形成され、且つ、前記カバー側継ぎ目部には、カバー側段部を有して前記第五係合壁及び前記第六係合壁の間に差し込まれる第七係合壁が形成され、且つ、該第七係合壁には、切り欠き形状のカバー側スリット又は貫通孔形状のカバー側孔が形成され、
前記フレーム側スリット、前記フレーム側孔、前記カバー側スリット、又は、前記カバー側孔は、前記フレーム側継ぎ目部及び前記カバー側継ぎ目部の係合部分に対し水分が浸入してきた場合の、前記フレーム周壁における周方向に生じる水路の途中に配置形成される
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続箱において、
前記フレーム側スリットは、前記第一係合壁の先端から前記フレーム側段部が連続する基端まで切り欠いて形成される
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項3】
請求項1に記載の電気接続箱において、
前記カバー側スリットは、前記第七係合壁の先端から前記カバー側段部が連続する基端まで切り欠いて形成される
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項4】
端末に請求項1、2又は3に記載の電気接続箱を備えて自動車に配索される
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される電気接続箱に関する。また、この電気接続箱を備えて自動車に配索されるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される電気機器として、例えば電気接続箱が挙げられる。電気接続箱は、リレーボックスやヒューズボックス、或いはジャンクションブロック等を総称するものとして知られる。以下、従来例の電気接続箱(下記特許文献1参照)に関し簡単に説明をする。
【0003】
従来例の電気接続箱は、電子部品ブロックと、この電子部品ブロックを収容するための筐体とを備えて構成される。電子部品ブロックは、複数の電気部品が組み付けられるとともに、この電気部品が所定回路に接続されるような状態に形成される。一方、筐体は、電子部品ブロックが組み付け固定されるフレームと、このフレームの上部開口部を覆うアッパーカバーと、フレームの下部開口部を覆うロアカバーとを備えて構成される。
【0004】
電気接続箱は、フレームの上部開口部及び下部開口部がアッパーカバー及びロアカバーにてそれぞれ覆われると、各カバーの継ぎ目部及びフレームの継ぎ目部同士が係合し、外部からの水分に対する防水構造が形成される。防水構造は、継ぎ目部同士が係合することにより、継ぎ目部の壁同士が接触したかのような微小な隙間をあけて対向することにより形成される。そのため、電気接続箱の外部から水分が掛かった程度では、水分が電気接続箱の内部まで到達することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術にあっては、フレームの継ぎ目部及びアッパーカバーの継ぎ目部の係合部分に対し、例えば高圧洗浄により水分が強く掛かった場合、その水分が上記微小な隙間に入り込んでしまうという虞があり、そして、水分が継ぎ目部の延在方向(フレームの周方向)に流れるような状態になると、場所によってはその流れの勢いで電気接続箱の内部に近い側に水分が吹き出してしまうことが懸念される。本願発明者は、防水構造に改善の余地があると考えている。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、防水構造をより良くすることが可能な電気接続箱及びワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明の電気接続箱は、外壁及び内壁を有する二重壁構造のフレーム周壁と、該フレーム周壁に囲まれた開口部を覆うカバーとを備えて構成され、前記フレーム周壁は、前記開口部近傍の前記外壁及び前記内壁の端部に前記カバーに対するフレーム側継ぎ目部を有する形状に形成され、前記カバーは、前記フレーム側継ぎ目部に対し係合するカバー側継ぎ目部を有する形状に形成され、前記カバーがアッパーカバーである場合、前記フレーム側継ぎ目部には、フレーム側段部を有して前記外壁に連続する第一係合壁と、前記内壁に連続する第二係合壁とが形成され、且つ、前記カバー側継ぎ目部には、前記第一係合壁の外側に配置される第三係合壁と、前記第一係合壁及び前記第二係合壁の間に差し込まれる第四係合壁と、前記第一係合壁を跨ぐように前記第三係合壁及び前記第四係合壁を連結する連結部とが形成され、且つ、前記第一係合壁には、切り欠き形状のフレーム側スリット又は貫通孔形状のフレーム側孔が形成される一方、前記カバーがロアカバーである場合、前記フレーム側継ぎ目部には、前記外壁に連続する第五係合壁と、前記内壁に連続する第六係合壁とが形成され、且つ、前記カバー側継ぎ目部には、カバー側段部を有して前記第五係合壁及び前記第六係合壁の間に差し込まれる第七係合壁が形成され、且つ、該第七係合壁には、切り欠き形状のカバー側スリット又は貫通孔形状のカバー側孔が形成され、前記フレーム側スリット、前記フレーム側孔、前記カバー側スリット、又は、前記カバー側孔は、前記フレーム側継ぎ目部及び前記カバー側継ぎ目部の係合部分に対し水分が浸入してきた場合の、前記フレーム周壁における周方向に生じる水路の途中に配置形成されることを特徴とする。
【0009】
このような請求項1の特徴を有する本発明によれば、電気接続箱の外部から水分が強い圧力でフレーム側継ぎ目部とカバー側継ぎ目部との係合部分周辺に掛かり、そして、水分が継ぎ目部の壁同士の微小な隙間に入り込んで継ぎ目部の延在方向(フレーム周壁の周方向)に流れた場合に、その流れの勢いはスリット又は孔によって緩められる。具体的には、上記微小な隙間に入り込み、そして、継ぎ目部の延在方向(フレーム周壁の周方向)の水路を流れた水分がスリット又は孔に到達すると、この時、水路の断面積が急に大きくなったような部分に入り込んだのと同じ状態になり、そのためスリット又は孔の位置において水分の圧力は弱められたような状態になる。すなわち、水路を流れる水分の勢いは、スリット又は孔により緩和される。勢いが緩和された状態になれば、次の水路に入り込もうとする力が弱くなり、結果、電気接続箱の内部に近い側へ向けての水分の吹き出しが抑制される。従って、本発明によれば、防水構造をより良くすることができる。尚、本発明においては、スリット又は孔が一つだけでも効果があり、複数形成すれば水分の勢いを格段に弱めることができる。スリット又は孔に到達した水分の一部(又は全部)は、例えば外壁及び内壁の間に落とし込まれ、適宜手段で電気接続箱の外部に排水される。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の電気接続箱において、前記フレーム側スリットは、前記第一係合壁の先端から前記フレーム側段部が連続する基端まで切り欠いて形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の電気接続箱において、前記カバー側スリットは、前記第七係合壁の先端から前記カバー側段部が連続する基端まで切り欠いて形成されることを特徴とする。
【0012】
以上のような請求項2、請求項3の特徴を有する本発明によれば、スリットが基端まで切り欠き形成されることから、水路の断面積を最も大きくすることができる。これにより水分の圧力を効果的に弱めることができる。尚、孔の場合も上記基端の位置を含んで貫通形成すればよい。この場合も水分が流れ易い位置での形成になることから、水分の圧力を効果的に弱めることができる。孔に関して補足すると、スリットよりも壁の強度を確保することができるという利点を有する。
【0013】
また、上記課題を解決するためになされた請求項4に記載の本発明のワイヤハーネスは、端末に請求項1、2又は3に記載の電気接続箱を備えて自動車に配索されることを特徴とする。
【0014】
このような請求項4の特徴を有する本発明によれば、電気接続箱の防水構造をより良くしたワイヤハーネスを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電気接続箱によれば、防水構造をより良くすることができるという効果を奏する。また、本発明のワイヤハーネスによれば、より良いものを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の電気接続箱の一実施形態を示す斜視図である(実施例1)。
【
図5】フレーム側スリットがある位置でのフレーム側継ぎ目部及びカバー側継ぎ目部を示す断面図である。
【
図6】フレーム側スリットがある位置でのフレーム側継ぎ目部及びカバー側継ぎ目部を示す断面図である。
【
図7】フレーム側継ぎ目部及びカバー側継ぎ目部を示す断面図である。
【
図8】フレーム側継ぎ目部及びカバー側継ぎ目部を示す断面図である。
【
図10】フレーム側継ぎ目部及びカバー側継ぎ目部を示す図であり、(a)はカバー側スリットがある位置での断面図、(b)はカバー側スリットがない位置での断面図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ワイヤハーネスの端末に備えられる電気接続箱は、外壁及び内壁を有する二重壁構造のフレーム周壁と、このフレーム周壁に囲まれた開口部を覆うカバーとを備えて構成される。フレーム周壁は、開口部近傍の外壁及び内壁の端部に、カバーに対するフレーム側継ぎ目部を有する形状に形成される。また、カバーは、フレーム側継ぎ目部に対し係合するカバー側継ぎ目部を有する形状に形成される。フレーム側継ぎ目部及びカバー側継ぎ目部の係合部分においては、スリット又は孔を有する形状に形成される。スリット又は孔は、上記係合部分に対し水分が浸入してきた場合の、フレーム周壁における周方向に生じる水路の途中に配置形成される。
【実施例1】
【0018】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。
図1は本発明の電気接続箱の一実施形態を示す斜視図である。また、
図2は
図1のフレームを示す斜視図、
図3は
図2の円Aの拡大図、
図4は
図3の変形例を示す図、
図5及び
図6はフレーム側スリットがある位置でのフレーム側継ぎ目部及びカバー側継ぎ目部を示す断面図、
図7及び
図8はフレーム側継ぎ目部及びカバー側継ぎ目部を示す断面図、
図9は水分の流れを模式的に示す図である。尚、図中の矢印Pは上下方向、矢印Qは左右方向、矢印Rは前後方向を示すものとする。
【0019】
<電気接続箱1について>
図1において、電気接続箱1は、図示しないワイヤハーネスの所定位置の端末に設けられた状態で自動車やトラック等の車両に搭載される。このような電気接続箱1は、図示しない電子部品ブロックと、この電子部品ブロックを収容するための筐体2とを備えて構成される。尚、電気接続箱1の外観は一例であるものとする。
【0020】
電気接続箱1は、以下の説明で分かるようになるが、従来例のものと比べて防水構造が改善されたものとなる。別な言い方をすれば、電気接続箱1は、上記図示しない電子部品ブロックに対し水分が吹きかからないように改善がなされた防水構造(水分の吹き出しを抑えて電子部品ブロックに対し水分が吹きかからないような構造)を有する。先ず、電気接続箱1の上記構成部材について説明をする。
【0021】
<電子部品ブロックについて>
図示しない電子部品ブロックは、複数の電子部品が組み付けられる部材として備えられる。また、電子部品ブロックは、上記電子部品が所定回路に接続される部材として備えられる。具体的には、例えばリレーが樹脂製のリレー組み付け部に組み付けられるとともに、ヒューズが樹脂製のヒューズ組み付け部に組み付けられるような部材として備えられる(一例であるものとする)。以上のような電子部品ブロックは、カセット式のものであって、後述するフレーム3の組み付け部(符号省略)に対し着脱自在に組み付けられるように形成される。尚、電子部品ブロックに関しては、この名称をカセットブロックと読み替えてもよいものとする。
【0022】
<筐体2について>
図1において、筐体2は、絶縁性を有する樹脂製の部材の組み合わせであって、具体的には、図示しない電子部品ブロックが着脱自在に組み付けられるフレーム3と、このフレーム3の上部開口部4(開口部)を覆うアッパーカバー5(カバー)と、フレーム3の下部開口部6(開口部)を覆うロアカバー7(カバー)と、フレーム3の一側部に組み付けられるサイドカバー8、9とを備えて構成される。このような筐体2には、図示しないワイヤハーネスの電線束が引き出される(挿通される)通し部10が突出形成される。
【0023】
<フレーム3について>
図1及び
図2において、フレーム3は、樹脂成形品であって、フレーム周壁11と、このフレーム周壁11の外側に設けられる固定脚部12と、同じくフレーム周壁11の外側に設けられる固定ベース13と、フレーム周壁11の内側に設けられて図示しない電子部品ブロックが着脱自在に組み付けられる複数の組み付け部(符号省略)とを有して図示形状に形成される。フレーム3は、上下が開口する矩形枠状の部材に形成される。フレーム3の上側の開口は、上部開口部4として形成される。また、フレーム3の下側の開口は、下部開口部6として形成される。固定脚部12は、電気接続箱1を車両に搭載する際の固定部分として形成される。固定脚部12には、ボルトにて車両に締結するための貫通孔14が形成される。固定ベース13には、矩形の貫通孔形状となる突起係合部15が一対形成される。この一対の突起係合部15は、アッパーカバー5の取り付けの際の回転中心となる部分として形成される。
【0024】
<フレーム周壁11について>
図1、
図2、
図5、
図6、
図7、及び
図8において、フレーム周壁11は、矩形枠状の外壁16と、この外壁16の内側に配設される矩形枠状の内壁17とを有する二重壁構造のものに形成される。また、フレーム周壁11は、外壁16及び内壁17を所定の間隔で連結・配置するための複数の連結部18と、アッパーカバー5を係止するためのフレーム側ロック部19と、ロアカバー7を係止するための複数のフレーム側ロック部20とを有して図示形状に形成される。
【0025】
外壁16及び内壁17は、特に符号を付さないが、それぞれ四つの壁にて形成される(壁の数は一例であるものとする)。具体的には、矢印Rの方向にある前側の壁及び後側の壁と、矢印Qの方向にある左側の壁及び右側の壁にて形成される。このような外壁16及び内壁17の上端には、アッパーカバー5に対するフレーム側継ぎ目部21が形成される。また、外壁16及び内壁17の下端には、ロアカバー7に対するフレーム側継ぎ目部22が形成される。尚、ロアカバー7に対するフレーム側継ぎ目部22については実施例2の欄で説明するものとする。
【0026】
<フレーム側継ぎ目部21について>
図5ないし
図8において、フレーム側継ぎ目部21には、外壁16に連続する第一係合壁23と、内壁17に連続する第二係合壁24とが形成される。第一係合壁23は、外壁16の上端に連続するフレーム側段部25と、このフレーム側段部25に連続し且つ上方に真っ直ぐ突出する壁本体26とを有して断面略L字状に形成される。第一係合壁23は、断面略L字状となる形状がフレーム側継ぎ目部21の延在方向(フレーム周壁11の周方向)にわたって続くように形成される。フレーム側段部25は、アッパーカバー5の後述する第三係合壁34の下端が当接するような部分に形成される。第一係合壁23は、フレーム側段部25があることにより、壁本体26が第二係合壁24の側に近くなるように配置形成される。第二係合壁24は、内壁17の上端から真っ直ぐ上方に突出するような壁部分に形成される。以上のようなフレーム側継ぎ目部21においては、本発明の特徴部分であるフレーム側スリット27が一又は複数配置形成される。
【0027】
<フレーム側スリット27について>
図2、
図3、
図5、及び
図6において、フレーム側スリット27は、第一係合壁23の壁本体26に形成される。フレーム側スリット27は、壁本体26の先端(上端)からフレーム側段部25が連続する基端まで真っ直ぐ切り欠くように形成される。尚、基端まで切り欠くか否かは任意であるが、後述する水路39(
図9参照)を流れる水分の勢い(圧力)を緩和させるためには(弱めるためには)、基端まで切り欠く方が好ましいものとする。この他、フレーム側スリット27の切り欠き幅は適宜寸法に設定されるものとする。フレーム側スリット27は、上記水路39の途中に一又は複数配置形成される。尚、電気接続箱1に対し例えば高圧洗浄の水分が当たり易い位置があるのであれば、この位置から多少ずれた位置にフレーム側スリット27は配置形成されることが好ましいものとする。
【0028】
<フレーム側孔28について>
図4において、引用符号28はフレーム側孔を示す。このフレーム側孔28は、
図3のフレーム側スリット27の変形例であって、第一係合壁23の壁本体26を矩形に貫通するような形状に形成される。フレーム側孔28は、フレーム側スリット27に対しこの上端にブリッジ部分を追加したような形状に形成される。本発明においては、フレーム側スリット27でなくフレーム側孔28を採用してもよいものとする。
【0029】
<アッパーカバー5について>
図1において、アッパーカバー5は、上記の如くフレーム3の上部開口部4を覆うための樹脂成形品であって、天井壁29と、この天井壁29の周縁に連続するカバー周壁30と、フレーム3の一対の突起係合部15にそれぞれ差し込まれる突起31と、この一対の突起31の反対側に設けられるカバー側ロック部32とを有して図示形状に形成される。アッパーカバー5は、フレーム3に対して別体の部材となるように形成される。カバー周壁30は、本実施例において矢印Pの上下方向に短く形成される。このような短いカバー周壁30の下端には、カバー側継ぎ目部33が形成される。
【0030】
<カバー側継ぎ目部33について>
図5ないし
図8において、カバー側継ぎ目部33は、フレーム側継ぎ目部21に対して係合する部分に形成される。具体的には、フレーム周壁11の第一係合壁23の外側に配置される第三係合壁34と、第一係合壁23及び第二係合壁24の間に差し込まれる第四係合壁35と、第一係合壁23を跨ぐように第三係合壁34及び第四係合壁35を連結する連結部36とを有して、図示のようなカバー側継ぎ目部33が形成される。第三係合壁34は、この内面が第一係合壁23の外面に対向するように形成される。また、第三係合壁34は、この下端がフレーム側段部25の当接部分として形成される。このような第三係合壁34には、下端から外側に突出する段部37と、段部37から下側に突出する袴部38とが形成される。第三係合壁34は、段部37及び袴部38を含めて見ると、断面略クランク形状の壁に形成される。カバー側継ぎ目部33は、上記の壁等がフレーム側継ぎ目部21と同じ方向に延在するように形成される。
【0031】
<水路39について>
図5ないし
図8において、例えば高圧洗浄により外壁16の外面と袴部38の内面との間から水分が浸入した水分は、第一係合壁23の外面と第三係合壁34の内面との間の微小な隙間に到達すると、この後に毛細管現象により矢印方向(フレーム周壁11の周方向と同じ)に広がり、そのため上記微小な隙間は水路39として機能する。
【0032】
尚、従来例においては、水路39を流れる水分の勢いが強いと、例えばコーナー部分40(
図2参照)の位置等で突き当たりが生じ、この時、水分が上方へ吹き出すことがある。しかしながら、本発明においては上記説明からも分かるように、水分の吹き出しを抑えて図示しない電子部品ブロックに水分が吹きかからないようにすることができる構造を有する。以下、その構造の作用について説明をする。
【0033】
<フレーム側スリット27(フレーム側孔28)の作用について>
図9において、水分が水路39を流れた場合、その流れの勢いはフレーム側スリット27(フレーム側孔28)により緩められる(図中の矢印の太さ等を参照)。具体的には、水路39を流れた水分がフレーム側スリット27(フレーム側孔28)に到達すると、この時、水路39の断面積が急に大きくなったような部分に入り込んだのと同じ状態になり、そのためフレーム側スリット27(フレーム側孔28)の位置において水分の圧力は弱められたような状態になる。すなわち、水路39を流れる水分の勢いは、フレーム側スリット27(フレーム側孔28)により緩和される。勢いが緩和された状態になれば、次の水路39に入り込もうとする力が弱くなり、結果、上記図示しない電子部品ブロックへ向けての水分の吹き出しが抑制される。
【0034】
<電気接続箱1の効果について>
以上、
図1ないし
図9を参照しながら説明してきたように、本発明の一実施形態である電気接続箱1によれば、上記の如く水分の吹き出しを抑制することができる。従って、従来例よりも防水構造をより良くすることができるという効果を奏する。
【0035】
<ワイヤハーネスの効果について>
また、図示しないワイヤハーネスにおいては、端末に電気接続箱1を備えることから、より良いものを提供することができるという効果を奏する。
【実施例2】
【0036】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。
図10はフレーム側継ぎ目部及びカバー側継ぎ目部を示す図であり、(a)はカバー側スリットがある位置での断面図、(b)はカバー側スリットがない位置での断面図である。尚、上記実施例1と基本的に同じ構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】
<フレーム側継ぎ目部22について>
図10において、フレーム側継ぎ目部22には、外壁16に連続する第五係合壁41と、内壁17に連続する第六係合壁42とが形成される。第五係合壁41及び第六係合壁42は、真っ直ぐ下にのびるような壁に形成される。また、第五係合壁41及び第六係合壁42は、端部が同じ位置になるように形成される。このようなフレーム側継ぎ目部22は、電気接続箱1(
図1参照)を構成するロアカバー7に対しての継ぎ目部分として形成される。
【0038】
<ロアカバー7及びカバー側継ぎ目部44について>
図10において、ロアカバー7のカバー周壁43の上端には、カバー側継ぎ目部44が形成される。カバー側継ぎ目部44は、フレーム側継ぎ目部22に対し係合する部分に形成される。カバー側継ぎ目部44には、カバー側段部45を有して第五係合壁41及び第六係合壁42の間に差し込まれる第七係合壁46が形成される。カバー側段部45は、第五係合壁41の端部が当接する部分として外側に突出する形状に形成される。尚、第五係合壁41の内面と第七係合壁46の外面との間の微小な隙間には、特に符号や矢印を付さないが、実施例1と同様の水路が形成される。
【0039】
第七係合壁46には、この水路の途中となるようにカバー側スリット47(又はカバー側孔)が配置形成される。カバー側スリット47は、実施例1のフレーム側スリット27(
図3参照)と同じく水分の勢いを弱める機能を有する(ここでは詳細な説明を省略するものとする)。カバー側スリット47は、フレーム側スリット27と同様の形状に形成される。カバー側スリット47を介してロアカバー7の底壁まで到達した水分は、図示しない排水孔にて外部に排水される。
【0040】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1…電気接続箱、 2…筐体、 3…フレーム、 4…上部開口部(開口部)、 5…アッパーカバー(カバー)、 6…下部開口部(開口部)、 7…ロアカバー(カバー)、 8、9…サイドカバー、 10…通し部、 11…フレーム周壁、 12…固定脚部、 13…固定ベース、 14…貫通孔、 15…突起係合部、 16…外壁、 17…内壁、 18…連結部、 19…フレーム側ロック部、 20…フレーム側ロック部、 21、22…フレーム側継ぎ目部、 23…第一係合壁、 24…第二係合壁、 25…フレーム側段部、 26…壁本体、 27…フレーム側スリット、 28…フレーム側孔、 29…天井壁、 30…カバー周壁、 31…突起、 32…カバー側ロック部、 33…カバー側継ぎ目部、 34…第三係合壁、 35…第四係合壁、 36…連結部、 37…段部、 38…袴部、 39…水路、 40…コーナー部分、 41…第五係合壁、 42…第六係合壁、 43…カバー周壁、 44…カバー側継ぎ目部、 45…カバー側段部、 46…第七係合壁、 47…カバー側スリット