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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】湿度を算出するための測定センサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20220809BHJP
   G01K 1/08 20210101ALI20220809BHJP
【FI】
G01N25/18 D
G01K1/08 Z
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018166013
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2019049552
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】17189901.6
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035104
【氏名又は名称】エー・ウント・エー・エレクトロニック・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】カール・ヤーン
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011111959(DE,A1)
【文献】国際公開第2016/133834(WO,A2)
【文献】特開平07-174721(JP,A)
【文献】特開平07-294469(JP,A)
【文献】特開昭57-019539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/18
G01K 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度測定値を検出するための温度センサ(150)と、湿度測定値を検出するための湿度センサ(180)とを有する測定センサ素子(100)であって、
-当該測定センサ素子(100)の基端部(111)と先端部(112)の間で長く延在する本体部(110)と、
-湿度を表すデータ信号を出力し、前記湿度センサ(180)を加熱するための供給信号を受信するように形成された、前記基端部(111)に配置されたインターフェース(120)と、
-前記温度センサ(150)及び前記湿度センサ(180)に接続され、前記本体部(110)に配置され、前記インターフェース(120)に後続配置された電子機器(130)と
を含み、該電子機器(130)が、温度測定値及び湿度測定値に依存してデータ信号を提供するように形成されており、
-前記湿度センサ(180)が前記先端部(112)に配置されており、
-前記温度センサ(150)が、前記本体部(110)の一部によって前記湿度センサ(180)から離間している周囲温度測定プローブ(151)を含んでおり、該周囲温度測定プローブ(151)が、延長方向において前記基端部(111)における前記インターフェース(120)に後続配置された前記電子機器(130)と前記湿度センサ(180)を有する先端部(112)との間に配置されており、前記本体部(110)が、前記周囲温度測定プローブ(151)を包囲する第1の凹部(113)を備えていることを特徴とする測定センサ素子。
【請求項2】
前記周囲温度測定プローブ(151)が、前記基端部(111)へ向いた先端部(1511)を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の測定センサ素子(100)。
【請求項3】
前記周囲温度測定プローブ(151)が、そのほか、前記本体部(110)の別の部分によって前記電子機器(130)から離間されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定センサ素子(100)。
【請求項4】
前記本体部(110)が、前記湿度センサ(180)と前記温度センサ(150)の間に配置された分離構造を備えていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の測定センサ素子(100)。
【請求項5】
前記分離構造が、局所的に低減された熱伝導率を有していることを特徴とする請求項に記載の測定センサ素子(100)。
【請求項6】
前記分離構造が、前記本体部の第2の凹部(114)を含んでいることを特徴とする請求項又はに記載の測定センサ素子(100)。
【請求項7】
前記第2の凹部(114)が少なくとも5mmの長さを有していることを特徴とする請求項に記載の測定センサ素子(100)。
【請求項8】
前記第2の凹部(114)が、前記本体部(110)の幅の少なくとも40%の幅を有していることを特徴とする請求項又はに記載の測定センサ素子(100)。
【請求項9】
前記湿度センサ(180)が、同様に前記先端部(112)に配置されたヒータ(183)を含んでいることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の測定センサ素子(100)。
【請求項10】
前記電子機器(130)が、前記湿度センサ(180)における温度を調整するように形成されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の測定センサ素子(100)。
【請求項11】
前記湿度センサ(180)が、湿度測定プローブ(18)及び温度測定プローブ(182)を含んでいることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の測定センサ素子(100)。
【請求項12】
前記湿度センサ(180)の加熱可能な湿度チャンバ(184)も、また前記電子機器(130)も収容し、前記本体部(110)を包囲するハウジング(170)を更に含むことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の測定センサ素子(100)。
【請求項13】
前記ハウジング(170)が合成樹脂射出成形部材を含んでいることを特徴とする請求項12に記載の測定センサ素子(100)。
【請求項14】
当該測定センサ素子(100)が、空調装置において位置固定して取り付けるように形成されていることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の測定センサ素子(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、例えば気象学-データ検出の目的のために湿度を算出するための測定センサ素子の実施形態に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周囲空気の湿度を算出するための測定センサ素子において、湿度センサが周囲温度より高い温度へもたらされる測定センサ素子が従来技術から知られている。これにより、測定箇所における相対湿度が低減されることができ、したがって測定を誤らせ得る結露のおそれが低減され得る。そして、湿度センサの固有の温度測定プローブによって、この温度過上昇が算出され得る。湿度センサの湿度測定プローブによって算出された湿度値と、温度過上昇とに基づき、例えば水蒸気分圧を算出することが可能である。
【0003】
測定センサ素子についてのこのような湿度センサの例は、E+E Elektronik有限会社のタイプ「EE33」の装置についてのデータシートから知られており、このデータシートは、URL http://downloads.epluse.com/fileadmin/data/product/ee33/Datenblatt_EE33.pdfから得ることが可能である。
【0004】
そのほか、URL http://downloads.epluse.com/fileadmin/data/product/ee33/HMC01_deutsch.pdfから得られる、E+E Elektronik有限会社のタイプ「HMC01」の装置についてのデータシートにおいて得られるように、測定センサ素子の湿度センサにおいては、湿度測定プローブ及び温度測定プローブが一部材で統合されることができる。
【0005】
周囲の実際の湿度の最終的な演算のために、湿度測定プローブにおいて生じる温度のほかに、実施の周囲温度、すなわち湿度値が特定されるべき各周囲の周囲温度を算出することが合目的であり得る。このために、湿度センサに加えて設けられるべき、湿度測定プローブにおいて生じる高められた温度の影響をできる限り受けずに周囲温度を算出する周囲温度センサが必要である。
【0006】
この関連では、測定センサ素子において、湿度センサと、周囲温度の測定のための温度センサは、それぞれ別々のハウジングに収納される、したがって互いに別々に位置決めされ得ることが知られている。例えば、VAISALA株式会社のタイプ「HMP155」の装置についてのユーザマニュアルにはこの種の手法が記載されており、この文書は、URL http://www.vaisala.com/Vaisala%20Documents/User%20Guides%20and%20Quick%20Ref%20Guides/HMP155_User_Guide_in_English.pdfから得られる。測定センサ素子のこの分配された配置においては、周囲温度を比較的正確に算出することができるものの、測定センサ素子の取付が、別々の両ハウジングにより煩わしい。
【0007】
湿度センサが、周囲温度を測定するための温度センサとしても共通の本体部に固定されている測定センサ素子は、ROTRONICのタイプ「HydroMet4」の装置についてのデータシートから知られており、このデータシートは、URL https://www.rotronic.com/en/productattachments/index/download?id=929から得られる。
【0008】
しかしながら、最後に挙げた装置においては、周囲温度を測定するための温度センサが測定センサ素子の先端部を形成し、したがって比較的容易に損傷し得るという問題がある。さらに、温度センサは湿度センサの直近に配置されているため、温度センサにより算出される温度は、とりわけ、湿度センサにおいて生じる温度過上昇の影響を受けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、課題は、一方ではコンパクトなデザインを有し、他方では湿度の正確な算出を可能とする測定センサ素子を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これを起点として、ここでは、独立請求項1により、温度測定値を検出するための温度センサと、湿度測定値を検出するための湿度センサとを有する測定センサ素子が提案される。いくつかの実施例の特徴が従属請求項に記載されている。特に明示的に言及しない限り、従属請求項の特徴は、別の実施形態を形成するために互いに組み合わせられることが可能である。
【0011】
測定センサ素子は、測定センサ素子の基端部と先端部の間で長く延在する本体部を含んでいる。基端部には、湿度について示すデータ信号を出力するように形成されたインターフェースが配置されている。そのほか、インターフェースは、湿度センサを加熱するための供給信号を受信するように形成されている。
【0012】
測定センサ素子においては、本体部に配置されインターフェースの近傍に配置された電子機器が更に設けられており、この電子機器は、温度センサにも、また湿度センサにも接続されている。電気機器は、温度測定値及び湿度測定値に依存してデータ信号を提供するように形成されている。
【0013】
このとき、湿度センサは、先端部に配置されている。湿度センサは、測定センサ素子の先端部を形成することも可能である。
【0014】
温度センサは周囲温度測定プローブを含んでおり、この周囲温度測定プローブは、本体部の一部によって湿度センサから離間しているとともに、基端部と先端部の間に配置されている。したがって、例えば、湿度センサは、測定センサ素子の先端部を形成しており、温度センサは、例えば本体部のほぼ中央に固定されることができる。さらに、温度センサの周囲温度測定プローブは、本体部110の別の部分によって電子機器からも離間されることが可能である。
【0015】
湿度センサ及び温度センサの配置により、湿度の正確な算出が可能となる上、応用における測定センサ素子の簡単な取付も可能となり、同時に、温度センサが外部の作用に対して保護されることが保証され得る。さらに、有利には、測定センサ素子は、湿度センサと温度センサの間の間隔に基づき、キャリブレーションされることが可能である。
【0016】
例えば、周囲温度測定プローブは先端部を含んでおり、この先端部は、湿度センサに向いておらず、測定センサ素子の基端部へ、すなわち加熱され得る湿度センサから離れるように向いている。
【0017】
一実施形態においては、本体部は、周囲温度測定プローブを包囲する第1の凹部を含んでいる。本体部は、例えば基板(PCB、Printed Circuit Board)として構成されることができ、この本体部には、凹部がフライス加工又は打抜き加工され、この凹部には、周囲温度測定プローブが配置される。したがって、周囲温度測定プローブは、本体部によって、外部の作用に対して保護されている。
【0018】
本体部は、湿度センサと温度センサの間に配置された分離構造を備えることが可能である。したがって、温度センサは、湿度センサに対して直接隣り合っているのではなく、本体部の一部、すなわち分離構造によって湿度センサから離間している。分離構造は、局所的に低減された熱伝導率を有することができ、熱伝導率のこのような低減は、様々な態様で、例えば適当な材料の選択によって、及び/又は幾何学的な構成によって、実行されることが可能である。同様の事項は、周囲温度測定プローブと電子機器の間の間隔を形成する本体部の一部についても当てはまり得る。
【0019】
例えば、分離構造が本体部の第2の凹部を含んでいるか、あるいはこのような凹部によって形成されていることが本発明の範囲にある。この第2の凹部は、例えば、先端部と、周囲温度測定プローブを包囲する第1の凹部との間に配置されることができる。例えば、この第2の凹部は、(本体部の長手延長部に沿って)少なくとも5mmの長さ及び/又は本体部の幅の少なくとも40%の幅を有している。幅及び/又は長さは、より大きく選択されることもでき、これにより、測定センサ素子の機械的な安定性が危険にさらされない限り、先端部における湿度センサと周囲温度測定プローブの箇所の間の適当により大きな熱的な分離が生じる。
【0020】
測定センサ素子の湿度センサは、同様に先端部に配置されている別々の、あるいは追加のヒータを含むことができる。湿度センサは、湿度測定プローブ及び温度測定プローブを備えることが可能であり、これら湿度測定プローブ及び温度測定プローブは、タイプ「HMC01」の装置についての冒頭で挙げたデータシートに記載されているような態様で実装される。測定センサ素子の一実施形態では、湿度センサは、このデータシートに記載されているのと全く同様に構成されている。湿度測定プローブ及び温度測定プローブは、(例えば上述のヒータによって)加熱可能な湿度センサの湿度チャンバに収容されることが可能である。この湿度チャンバあるいはこれを空間的に画成する閉鎖スリーブは、測定センサ素子の先端部を形成することが可能である。別々のヒータに加えて、湿度センサの加熱を、温度測定プローブの高められた測定電流によって、あるいはその損失出力によっても行うことができる。電子機器は、湿度センサにおける温度を適切に調整するように形成されることが可能である。
【0021】
インターフェースを除いて、測定センサ素子の構成要素は、例えば射出成形部材を含み得る共通のハウジングに統合されることが可能である。特に、ハウジングは、湿度センサの湿度チャンバも、また電子機器も収容することが可能である。
【0022】
同様に、上述の本体部の第1の凹部は、ハウジングによって形成されることができ、その結果、ハウジングの対応する凹部が周囲温度測定プローブを包囲する。
【0023】
測定センサ素子の一実施形態においては、測定センサ素子の電子機器により生成された、インターフェースから出力されるデータ信号は、相対湿度と、選択的に更に周囲の温度を表す。
【0024】
測定センサ素子は、できる限り正確な湿度の算出が重要である複数の異なる用途のために形成されることができる。このとき、特に気象学的なデータ検出が考慮に入れられる。他の実施形態においては、例えば、測定センサ素子は、空調装置、例えば車両の空調装置において位置固定して取り付けるように形成されている。他の応用分野は、製薬産業及び食品産業、キノコ農場、湿気倉庫、空調室、試験室及び熟成室、気象学並びに対象物の乾燥、例えばセラミック、木材、コンクリート及び/又はポリエステルの乾燥を含む。
【0025】
本発明の他の詳細及び利点は、図面に基づくいくつかの実施例の以下の説明において明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】1つ又は複数の実施形態による測定センサ素子の例示的かつ概略的な斜視図である。
図2A】1つ又は複数の実施形態による測定センサ素子の一部の例示的かつ概略的な斜視図である。
図2B】1つ又は複数の実施形態による測定センサ素子の一部の例示的かつ概略的な斜視図である。
図2C】1つ又は複数の実施形態による測定センサ素子の一部の例示的かつ概略的な斜視図である。
図3】1つ又は複数の実施形態による測定センサ素子の湿度センサの一部の例示的かつ概略的な平面図である。
図4】1つ又は複数の実施形態による測定センサ素子の湿度センサの一部の例示的かつ概略的な断面図である。
図5】1つ又は複数の実施形態による測定センサ素子の温度センサの例示的かつ概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、測定センサ素子100の概略的かつ例示的な斜視図が示されている。測定センサ素子100は、温度測定値(特に周囲温度測定値)を検出するための温度センサ150と、湿度測定値を検出するための湿度センサ180とを含んでいる。
【0028】
測定センサ素子100は、測定センサ素子100の基端部111と先端部112の間で長く延在する本体部110を基礎としている。本体部110は、その中央の幅の少なくとも2倍の長い延長部を備えることができる。
【0029】
図2Aに概略的に図示されているような実施形態においては、本体部110は、基板、例えばプリント回路基板(PCB基板)を含んでいる。本体部110は、基板の形態で存在することも可能である。基板は、測定センサ素子100の構成要素に装着されていることが可能である。
【0030】
基端部111には、湿度について示すデータ信号を出力するように形成されたインターフェース120が配置されている。本実施例では、インターフェース120は、本体部110に固定されているとともに、データ信号をデータバスへ出力するプラグを含んでいる。これに代えて、データ信号を、インターフェース120によってワイヤレスに無線信号として出力することも可能である。
【0031】
インターフェース120は、通常のシリアルデータ伝送規格、例えばEIA-485規格と互換性があってよい。同時に、インターフェース120は、例えばプラグがネジ部へ螺着されるか、あるいはネジ部へ螺入されることで、測定センサ素子100の機械的な固定のために形成されることも可能である。インターフェース120は、測定センサ素子100を取り付けることが可能な応用(Anwendung)の連結点と本体部110の間の移行部を形成している。
【0032】
そのほか、測定センサ素子100は、インターフェース120を介して、湿度センサ180を加熱するための供給(給電)信号を受信することが可能である。供給信号は、例えば電流信号又は電圧信号である。
【0033】
インターフェース120は、図1では視認不能な、図2Aでは概略的にのみ図示された電子機器130が準備されており、この電子機器は、本体部110に固定されている。電子機器130は、例えば、温度センサ150によって検出された温度測定値と、湿度センサ180によって検出された湿度測定値とを受信し、これらの測定値に依存して、湿度(及び選択的に更に周囲温度)を表すデータ信号を演算し、提供し、インターフェース120を介して出力する評価ユニットを含んでいる。
【0034】
電子機器130は、評価ユニットのほかに、パッシブ構成要素及び/又はパワーエレクトロニクス構成要素を含むことができるとともに、例えば、これら構成要素を用いて供給信号を受信し、湿度センサ180の加熱の目的のために供給信号を処理し、湿度センサ180へ伝送するように形成されることが可能である。
【0035】
供給信号あるいはこの供給信号から導出される信号を伝達するため、及び温度測定値及び湿度測定値を伝達するために、例えば上述の基板の形態の本体部110は、適当なライン、ケーブル及び/又は不図示の統合された伝導経路を含んでいる。
【0036】
図1図4の全てにおいて明らかであるように、湿度センサ180は、測定センサ素子100の先端部112に配置されている。したがって、図示の実施例において、湿度センサ180は、測定センサ素子100の先端部を形成しており、これについては、図2A図4に関連して後により詳細に説明する。
【0037】
先端部112へ向いた本体部110の端部には、本体部110のこの端部から突出する、ここでは2つのピン1171,1172が設けられており、これらピンには、例えばはんだ付けによって支持部1800(図3参照)が固定されている。図示の両ピン1171,1172の代わりに、より多くのピン又は1つのみのピンも設けることが可能である。同様に、測定センサ素子の他の実施形態においては、ピン1171,1172に代わる結合手段を設けることが可能である。しかし、図示の目的のために、以下では常に「ピン1171,1172」について言及する。
【0038】
支持部1800には、例えば、E+E ELEKTRONIK有限会社の「HMC01」のタイプの装置についての、冒頭で引用したデータシートから公知であるような態様で、湿度測定プローブ181及び温度測定プローブ182が配置されている。この関係において、湿度センサ180のこの考えられる実施形態の例示的な詳細に関してこのデータシートが参照される。
【0039】
支持部1800は例えばガラス基板で製造されており、このガラス基板は、温度測定プローブ182と、その上に位置する湿度測定プローブ181を支持している。このとき、支持部1800の加熱は、一方では、温度測定プローブ182の測定電流が適切に上昇され、これによる損失出力が加熱出力として利用されることによって可能である。他方では、本体部110の端部において、ヒータ183を用いて湿度センサ180の追加的な加熱が可能であり、このヒータ183は、本体部110に配置された熱抵抗として形成されることが可能である。そして、両ピン1171,1172のうち少なくとも1つは、熱伝導部として機能することができ、この熱伝導部を介して、追加的なヒータ183によって発生する熱が支持部1800へ供給される。図4に示されているように、両ピン1171,1172のうち1つは、例えば本体部110の上側に固定されることができ、両ピン1171,1172のうち他方は、本体部110の下側に固定されることができる。
【0040】
これにより、特に、湿度測定プローブ181と、温度測定プローブ182とから成る構造を測定センサ素子100の周囲温度より高い温度にさらすことが可能となり得る。特に、電子機器130は、ヒータ183及び温度測定プローブ182の測定電流を用いつつ、湿度センサ180、例えば支持部1800における温度を適切に調節するように形成されることが可能である。例えば、測定センサ素子100は、加熱により、湿度センサ180の結露及びこれに伴う測定値の誤りを防止するように形成されている。この種の結露は、加熱しない場合に、例えば、特に空気湿度を有する周囲環境において生じ得る。
【0041】
湿度測定プローブ181及び温度測定プローブ182のセンサ信号は、電子機器130、特に電子機器130の評価ユニットへ更なる処理のために供給され、このために、両ピン1171,1172のほかに(不図示の)伝導部及び/又は伝導経路を本体部110に、又は本体部110内に設けることが可能である。
【0042】
図示の実施例では、湿度センサ180は、そのほか閉鎖スリーブ186を備えており、この閉鎖スリーブは、湿度測定プローブ181及び温度測定プローブ182から成る構造へかぶせられることができ、例えばネジ構造187,188を用いて測定センサ素子100の他の部分に結合されることが可能である。このようにして、閉鎖スリーブ186により、湿度センサ180の湿度チャンバ184を形成することが可能である。この閉鎖スリーブ186は、同時に、測定センサ素子100を閉鎖するハウジング170の一部、特に測定センサ素子100の先端部112を形成することができる。
【0043】
周囲温度の測定に用いられ、したがって周囲温度測定プローブ151を含む温度センサ150は、先端部112には配置されていない。むしろ、周囲温度測定プローブ151は、本体部110の一部によって、湿度センサ180から離間して、基端部111と先端部120の間に、例えば図1図2Cに図示されているように本体部のほぼ中央に配置されている。さらに、周囲温度測定プローブ151は、本体部110の別の部分によって電子機器130から離間されることが可能である。
【0044】
本実施例では、電子機器130は、基端部111と周囲温度測定プローブ151の間に設けられている。
【0045】
加熱された湿度センサ180及び温度センサ150の構造により、周囲温度測定プローブ151は、過熱された湿度センサ180から熱的に分離されており、その結果、周囲温度を正確に検出することが可能である。
【0046】
本実施例では、周囲温度測定プローブ151の測定信号も、電子機器130へ、特に電子機器130の評価ユニットへ供給される。この電子機器は、周囲温度測定プローブ151の測定信号、湿度センサ180の温度測定プローブ182の測定信号及び湿度センサ180の湿度測定プローブ181の測定信号に依存して、測定センサ素子100の周囲の湿度を示すデータ信号を演算し、提供し、インターフェース120を介して出力することが可能である。
【0047】
熱的な分離は、周囲温度測定プローブ151の先端部1511が基端部111へ向いていること、すなわち湿度センサ180が配置されている先端部112から離れるように向いていることによってさらに改善され得る。したがって、実際の周囲温度に関する測定記録の箇所は、上述のように加熱され得る湿度測定の箇所から比較的大きく離間している。
【0048】
図示の実施例では、本体部110は第1の凹部113を備えており、この第1の凹部は、図2Aに図示されているように、周囲温度測定プローブ151を包囲している。考えられる実施例において、周囲温度測定プローブ151及び第1の凹部113の配置は、電子機器130と周囲温度測定プローブ151の間の最小間隔も保持されるように選択されており、この最小間隔は、本体部110の別の部分によって形成されることが可能である。なぜなら、電子機器130からも、周囲温度の測定を誤らせ得る熱が放出されるためである。
【0049】
図5には、温度センサ150の例示的な実施形態が断面図に基づいて示されている。このとき、温度センサ150は、例えば、スリーブ1512、例えば金属スリーブ1512内に配置された抵抗型の温度センサ(例えばPT100センサ要素、PT1000センサ要素、NTCセンサ要素又はPTCセンサ要素)の形態のセンサ要素1513を備えた、周囲温度測定プローブ151を含んでいる。スリーブ1512の先端部1511は、(先端部112にあるか、又はこの先端部を形成する湿度センサ180ではなく)基端部111の方向へ向いている。センサ要素1513は、例えば本体部110にはんだ付けされているとともに、図5に例示的に図示されているように、スリーブ1512が部分的に本体部110の適当な部分から突出している。センサ要素1513を収容するスリーブ1512は、第1の凹部113に配置されているとともに、したがってハウジング170の、この凹部113を規定する部分によって保護されている。そのほか、スリーブ1512の内部空間は、高い熱伝導率の材料で充填されることが可能であり、その結果、スリーブ1512と内部に位置するセンサ要素1514の間の良好な熱的な結合が確保されている。
【0050】
温度センサ150と湿度センサ180の間の熱的な分離は、測定センサ素子100において、空間的な離間のみによって達成され得るわけではなく、本体部110の材料技術的な、及び/又は構造上の適合によっても達成され得る。
【0051】
したがって、本体部110は、例えば、湿度センサ180と温度センサ150の間に、例えば局所的に低減された熱伝導率を有する分離構造を備えることが可能である。
【0052】
熱伝導率の低減は、例えば適当な材料を本体部110に設けることで実行することが可能である。
【0053】
これに代えて、又はこれに加えて、図2Aに概略的に図示されているように、本体部110は、関連する部分において、構造上の変更を受けることも可能である。そこでは、本体部110は、分離構造の一部であるか、又はこの一部を形成する第2の凹部114を備えている。第2の凹部114は、周囲温度測定プローブ151を包囲する第1の凹部113と先端部112の間に設けられている。例えば、この凹部は、少なくとも5mmの長さ及び/又は本体部110の幅の少なくとも40%の幅を有している。測定センサ素子100の機械的な安定性が保証されている限り湿度センサ180と温度センサ150の間のより大きく表れる熱的な分離を生じさせるために、第2の凹部114は、この例示的に挙げられた値よりも大きく寸法設定されることも可能である。
【0054】
両凹部113,114は、側部の方向において、例えば適当な結合ウェブ1131,1141によって画成されており、これら結合ウェブは、それぞれ、(本体部の幅に関して)比較的狭くてよく、したがってわずかな熱伝導率を有する。これによっても、一方では周囲温度測定プローブ151と電子機器130の間の熱的な分離が確保されることができ、他方では周囲温度測定プローブ151と湿度センサ180の間の熱的な分離が確保され得る。
【0055】
上述の説明は、特に、温度センサ150と湿度センサ180の間の熱的な分離に関するものである。しかしながら、温度センサ150と電子機器130の間の熱的な分離について類似の又は同様の措置がとられ得ることはいうまでもない。
【0056】
測定センサ素子100の製造についての可能な変形例については、以下において図2A図2Cが参照される。すなわち、本例においては、まず、本体部110が、測定記録の目的に必要な構成要素が装備された基板の形態で準備され、これには、例えば電子機器130と、周囲温度測定プローブ151と、端部において一方ではインターフェース120と、他方では後に取り付けられるべき湿度センサ180へ延びるピン1171,1172とが含まれる。基板は、第1の凹部113及び第2の凹部114を更に備えており、これら凹部は、例えば基板から打ち抜かれるか、又は基板からフライス加工される。
【0057】
つづいて、図2Bに示されているように、本体部110は、保護材料の適当な装着の後に、インターフェース120から始めて両ピン1171,1172に至るまで、例えばいわゆるホットメルトモールディング法によってオーバーモールドされる。
【0058】
つづいて、この生産品は、例えば図2Cに示されているように熱可塑的にオーバーモールドされることで合成樹脂オーバーモールドにさらされる。本体部110の端部には、その前に、又はその後に更にネジ部187を設けることができ、このネジ部は、湿度センサ180の閉鎖スリーブ186(図3)の対応するカウンタ部材188を収容するために形成されている。
【0059】
同様に、ここでも図1を参照して、測定センサ素子100は、本体部110を包囲するハウジング170を備えることができ、このハウジングは、測定センサ素子100全体を閉鎖し、特に、湿度センサ180の加熱可能な湿度チャンバ184も、また電子機器130も格納するものである。上述の事項に対応して、ハウジング170は、合成樹脂射出成形部を含むことができる。
【0060】
例えば、ハウジング170は二部材で形成されており、第1の一体的な部材が、例えば図2Cに例示的に示されているように、本体部110を完全に包囲しており、第2の一体的な部材が閉鎖スリーブ186によって形成されている。閉鎖スリーブ186は、同様に合成樹脂射出成形部材として製造されることが可能である。
【0061】
各図に示された測定センサ素子100は、できる限り正確な湿度の算出が重要である複数の異なる用途のために形成されることができる。
【0062】
例えば、測定センサ素子100は、空調装置、例えば車両の空調装置において位置固定して取り付けるように形成されている。他の応用分野は、製薬産業及び食品産業、キノコ農場、湿気倉庫、空調室、試験室及び熟成室、気象学並びに対象物の乾燥、例えばセラミック、木材、コンクリート及び/又はポリエステルの乾燥を含む。
【0063】
測定センサ素子100は、例えば約250mmの全長と、約24mmの平均直径とを有しており、本体部110の全長は、インターフェース120及び閉鎖スリーブ186により、測定センサ素子100の全長より小さい例えば50mmである。
【0064】
測定センサ素子100の提案された構造により多くの利点が得られ、まず、温度センサ150及び湿度センサ180が同一の本体部110へ連結され、したがって互いに分離して位置決めされる必要がない。それにもかかわらず、温度センサ150を加熱可能な湿度センサ180から熱的に分離することが、例えば第2の凹部114を含む分離構造によって保証されている。第1の凹部113内での周囲温度測定プローブ151の配置により、この周囲温度測定プローブが外部からの作用から機械的に保護されている。さらに、温度センサ150及び湿度センサ180の提案された配置により、測定センサ素子100の有利なキャリブレーションが許容される。例えば、測定センサ素子100のキャリブレーション時には、閉鎖スリーブ186によって形成された測定センサ素子100の先端部112が、湿度キャリブレーション反応装置に挿入され、その結果、湿度センサ180が隔離してキャリブレーションされることができる。これとは別に、温度センサ150がキャリブレーションされ得る。周囲温度測定プローブ151を包囲する上述の第1の凹部113は、例えば基端部111に位置する、同様に少なくともわずかな熱を放出し得る電子機器130から周囲温度測定プローブ151の先端部1511が十分に、例えば少なくとも5mm離間しているように寸法設定されることが可能である。さらに、構造により、現場での使用中又は現場での使用後に測定センサ素子を容易に洗浄することが可能である。
【0065】
インターフェース120を介して出力されるデータ信号は、特に、測定センサ素子100の周囲における相対湿度について表すことが可能である。さらに、電子機器130は、温度センサ150の測定信号を別の分離したデータ信号としてインターフェース120を介して出力するように形成されることが可能である。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.温度測定値を検出するための温度センサ(150)と、湿度測定値を検出するための湿度センサ(180)とを有する測定センサ素子(100)であって、
-当該測定センサ素子(100)の基端部(111)と先端部(112)の間で長く延在する本体部(110)と、
-湿度を表すデータ信号を出力し、前記湿度センサ(180)を加熱するための供給信号を受信するように形成された、前記基端部(111)に配置されたインターフェース(120)と、
-前記温度センサ(150)及び前記湿度センサ(180)に接続され、前記本体部(110)に配置され、前記インターフェース(120)に後続配置された電子機器(130)と
を含み、該電子機器(130)が、温度測定値及び湿度測定値に依存してデータ信号を提供するように形成されており、
-前記湿度センサ(180)が前記先端部(112)に配置されており、
-前記温度センサ(150)が、前記本体部(110)の一部によって前記湿度センサ(180)から離間して前記基端部(111)と前記先端部(112)の間に配置されている周囲温度測定プローブ(151)を含んでいることを特徴とする測定センサ素子。
2.前記周囲温度測定プローブ(151)が、前記基端部(111)へ向いた先端部(1511)を含んでいることを特徴とする上記1.に記載の測定センサ素子(100)。
3.前記本体部(110)が、前記周囲温度測定プローブ(151)を包囲する第1の凹部(113)を備えていることを特徴とする上記1.又は2.に記載の測定センサ素子(100)。
4.前記周囲温度測定プローブ(151)が、そのほか、前記本体部(110)の別の部分によって前記電子機器(130)から離間されていることを特徴とする上記1.~3.のいずれか1つに記載の測定センサ素子(100)。
5.前記本体部(110)が、前記湿度センサ(180)と前記温度センサ(150)の間に配置された分離構造を備えていることを特徴とする上記1.~4.のいずれか1つに記載の測定センサ素子(100)。
6.前記分離構造が、局所的に低減された熱伝導率を有していることを特徴とする上記5.に記載の測定センサ素子(100)。
7.前記分離構造が、前記本体部の第2の凹部(114)を含んでいることを特徴とする上記5.又は6.に記載の測定センサ素子(100)。
8.前記第2の凹部(114)が少なくとも5mmの長さを有していることを特徴とする上記7.に記載の測定センサ素子(100)。
9.前記第2の凹部(114)が、前記本体部(110)の幅の少なくとも40%の幅を有していることを特徴とする上記7.又は8.に記載の測定センサ素子(100)。
10.前記湿度センサ(180)が、同様に前記先端部(112)に配置されたヒータ(183)を含んでいることを特徴とする上記1.~9.のいずれか1つに記載の測定センサ素子(100)。
11.前記電子機器(130)が、前記湿度センサ(180)における温度を調整するように形成されていることを特徴とする上記1.~10.のいずれか1つに記載の測定センサ素子(100)。
12.前記湿度センサ(180)が、湿度測定プローブ(182)及び温度測定プローブ(182)を含んでいることを特徴とする上記1.~11.のいずれか1つに記載の測定センサ素子(100)。
13.前記湿度センサ(180)の加熱可能な湿度チャンバ(184)も、また前記電子機器(130)も収容し、前記本体部(110)を包囲するハウジング(170)を更に含むことを特徴とする上記1.~12.のいずれか1つに記載の測定センサ素子(100)。
14.前記ハウジング(170)が合成樹脂射出成形部材を含んでいることを特徴とする上記13.に記載の測定センサ素子(100)。
15.当該測定センサ素子(100)が、空調装置において位置固定して取り付けるように形成されていることを特徴とする上記1.~14.のいずれか1つに記載の測定センサ素子(100)。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5