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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20220809BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20220809BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20220809BHJP
   B01J 27/224 20060101ALI20220809BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20220809BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20220809BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B01J35/04 301D
C04B38/06 E ZAB
C04B37/00 Z
B01J27/224 A
B01J35/04 301J
B01D39/20 D
B01D46/00 302
F01N3/28 301P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018195947
(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2020062606
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】山本 博隆
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-188231(JP,A)
【文献】特開平09-049420(JP,A)
【文献】特開平09-049421(JP,A)
【文献】特開2010-101282(JP,A)
【文献】特開2006-334452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 39/20
B01D 46/00
C04B 38/06
C04B 37/00
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の角柱状のハニカムセグメントと、
複数個の前記ハニカムセグメントの側面同士を互いに接合する接合層と、
前記接合層によって前記ハニカムセグメントが格子状に配列した状態で接合されたハニカムセグメント接合体の外周を囲繞するように配設された外周壁と、を備え、
複数個の前記ハニカムセグメントのそれぞれは、第一端面から第二端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有し、
前記ハニカムセグメント接合体の前記セルの延びる方向において、それぞれの前記ハニカムセグメントの前記第一端面の位置を平均した位置を、第一基準位置とし、
前記ハニカムセグメント接合体の前記セルの延びる方向において、それぞれの前記ハニカムセグメントの前記第二端面の位置を平均した位置を、第二基準位置とし、
複数個の前記ハニカムセグメントは、特定ハニカムセグメントを含み、
前記特定ハニカムセグメントは、前記第一基準位置に対して、前記第一端面の位置が、前記セルの延びる方向に0.3~5.0mm突出している又は0.3~5.0mm窪んでおり、且つ、
前記特定ハニカムセグメントは、前記第二基準位置に対して、前記第二端面の位置が、前記セルの延びる方向に0.3~2.5mm突出している又は0.3~2.5mm窪んでいる、ハニカム構造体。
【請求項2】
前記第一端面が、前記セル内を流れる流体が流出する側の出口端面である、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記特定ハニカムセグメントの数が、全ての前記ハニカムセグメントの数に対して10%以上である、請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
複数個の前記ハニカムセグメントは、前記外周壁と接するように前記ハニカムセグメント接合体の最外周に配置された外周セグメントと、前記外周セグメントよりも前記ハニカムセグメント接合体の内側に配置された完全セグメントと、から構成され、
前記特定ハニカムセグメントの数が、全ての前記完全セグメントの数に対して10%以上である、請求項3に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、複数個のハニカムセグメントを接合層によって接合したセグメント構造のハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の各種内燃機関から排出される排ガスの中には、塵、スス、及びカーボン微粒子等の多くの粒子状物質(パティキュレートマター:Particulate Matter)が含まれている。このため、例えば、ディーゼルエンジンを動力源とする自動車から排出される排ガスを浄化する浄化装置として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が用いられている。以下、粒子状物質を「PM」ということがある。また、ディーゼルパティキュレートフィルタを「DPF」ということがある。
【0003】
上記DPFは、通常、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画されたものであり、複数のセルの開口部を交互に目封止することで、セルを形成する多孔質の隔壁がフィルタの役目を果たす構造である。
【0004】
DPFによって排ガス中のPMの除去を継続して行うと、DPFの内部にPMが堆積し、浄化効率が低下するとともに、DPFの圧力損失が大きくなる。そこで、DPFを用いた浄化装置においては、ディーゼル機関から発生する高温の排ガスにより、堆積したPMを燃焼させる「再生処理」を行う必要がある。
【0005】
上述した再生処理を行う際には、PMの燃焼熱によってDPFに高い熱応力が発生するため、DPFの破損を防止するための対策が必要である。例えば、乗用車等は、再生処理を行う頻度が多くなる傾向があり、DPFの破損を防止するための対策が特に重要視されている。
【0006】
従来、こうしたDPFの破損を防止するための技術として、DPFを一つのハニカム構造体によって製造するのではなく、ハニカム構造を有するセグメントの複数個を、接合材を介して接合する技術が提案されている(特許文献1参照)。以下、「ハニカム構造を有するセグメント」を、「ハニカムセグメント」ということがある。また、「複数個のハニカムセグメントが接合層によって接合されたハニカム構造体」を、「セグメント構造のハニカム構造体」ということがある。なお、このようなセグメント構造のハニカム構造体と対比されるハニカム構造体として、ハニカム構造体を構成する隔壁の全てが連続した1つの構造物となっているハニカム構造体がある。このような「隔壁の全てが連続した1つの構造物となっているハニカム構造体」を、「一体構造のハニカム構造体」ということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-340224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
セグメント構造のハニカム構造体は、ハニカム構造体全体の熱応力を緩和することができるものの、ハニカム構造体の外周部の接合層に、クラック(crack)等が発生し易いという問題があった。
【0009】
昨今、大型トラック等においては、DPFのダウンサイジング等の要求により、コージェライト製のDPFからSiC製のDPFへ切り替える傾向があり、大型サイズのSiC製のDPFの採用が高まっている。大型サイズのDPFでは、触媒を担持する際に、DPFの内外温度差がよりつきやすく、クラックが入りやすいという問題があった。
【0010】
また、SCRとDPFを一体化したDPFにおいては、担持する触媒量も多く、DPFの材料として高気孔率で熱伝導の低い材料を使う傾向がある。ここで、「SCR」とは、「Selective Catalitic Reduction:選択還元型NOx触媒」の略である。高気孔率の材料は、特性的に低熱伝導となるため、DPFの材料として使用した場合に、触媒を担持する際に、DPFの内外温度差がつきやすく、クラックが入りやすいという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、複数個のハニカムセグメントを接合する接合層に生じるクラックの伸展を有効に抑制することが可能なハニカム構造体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0013】
[1] 複数個の角柱状のハニカムセグメントと、
複数個の前記ハニカムセグメントの側面同士を互いに接合する接合層と、
前記接合層によって前記ハニカムセグメントが格子状に配列した状態で接合されたハニカムセグメント接合体の外周を囲繞するように配設された外周壁と、を備え、
複数個の前記ハニカムセグメントのそれぞれは、第一端面から第二端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有し、
前記ハニカムセグメント接合体の前記セルの延びる方向において、それぞれの前記ハニカムセグメントの前記第一端面の位置を平均した位置を、第一基準位置とし、
前記ハニカムセグメント接合体の前記セルの延びる方向において、それぞれの前記ハニカムセグメントの前記第二端面の位置を平均した位置を、第二基準位置とし、
複数個の前記ハニカムセグメントは、特定ハニカムセグメントを含み、
前記特定ハニカムセグメントは、前記第一基準位置に対して、前記第一端面の位置が、前記セルの延びる方向に0.3~5.0mm突出している又は0.3~5.0mm窪んでおり、且つ、
前記特定ハニカムセグメントは、前記第二基準位置に対して、前記第二端面の位置が、前記セルの延びる方向に0.3~2.5mm突出している又は0.3~2.5mm窪んでいる、ハニカム構造体。
【0014】
[2] 前記第一端面が、前記セル内を流れる流体が流出する側の出口端面である、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0015】
[3] 前記特定ハニカムセグメントの数が、全ての前記ハニカムセグメントの数に対して10%以上である、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0016】
[4] 複数個の前記ハニカムセグメントは、前記外周壁と接するように前記ハニカムセグメント接合体の最外周に配置された外周セグメントと、前記外周セグメントよりも前記ハニカムセグメント接合体の内側に配置された完全セグメントと、から構成され、
前記特定ハニカムセグメントの数が、全ての前記完全セグメントの数に対して10%以上である、前記[3]に記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカム構造体は、ハニカムセグメント接合体の接合層に生じるクラックの伸展を有効に抑制することができる。即ち、本発明のハニカム構造体においては、複数個のハニカムセグメントは、第一端面のセルの延びる方向における位置が、第一基準位置に対して所望の位置となるように構成された特定ハニカムセグメントを含んでいる。そして、特定ハニカムセグメントは、第一端面の位置及び第二端面の位置が、上述した数値範囲となるように、各基準位置に対して突出している又は窪んでいる。本発明のハニカム構造体は、ハニカムセグメント接合体の第一端面側及び第二端面側において、特定ハニカムセグメントによる段差を有しており、接合層に生じるクラックの伸展を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すハニカム構造体の第一端面側を示す平面図である。
図3図1に示すハニカム構造体の第二端面側を示す平面図である。
図4図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
図5図2のB-B’断面を模式的に示す断面図である。
図6図2のC-C’断面を模式的に示す断面図である。
図7】第一基準位置を説明するための模式図である。
図8】第二基準位置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、図1図6に示すように、複数個のハニカムセグメント4と、接合層14と、外周壁13と、を備えた、ハニカム構造体100である。本実施形態のハニカム構造体100は、所謂、セグメント構造のハニカム構造体100である。ハニカム構造体100は、排ガス中に含まれるPMを除去するためのPM捕集フィルタとして好適に利用することができる。
【0021】
ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカム構造体の第一端面側を示す平面図である。図3は、図1に示すハニカム構造体の第二端面側を示す平面図である。図4は、図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。図5は、図2のB-B’断面を模式的に示す断面図である。図6は、図2のC-C’断面を模式的に示す断面図である。
【0022】
ハニカムセグメント4は、第一端面11から第二端面12まで延びる複数のセル2を取り囲むように配設された多孔質の隔壁1を有するものである。ハニカムセグメント4は、その外周部分に、セグメント外壁を更に有することにより、その全体形状が、例えば、角柱状となるように構成されている。なお、本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0023】
複数個のハニカムセグメント4は、各ハニカムセグメント4の側面同士が接合層14を介して接合されている。複数個のハニカムセグメント4が接合層14を介して接合された接合体を、以下、「ハニカムセグメント接合体8」ということがある。ハニカム構造体100においては、複数個のハニカムセグメント4が、接合層14によって格子状に配列した状態で接合されることにより、ハニカムセグメント接合体8が形成されている。外周壁13は、このようなハニカムセグメント接合体8の外周を囲繞するように配設されている。
【0024】
複数個のハニカムセグメント4のうち、外周壁13と接するようにハニカムセグメント接合体8の最外周に配置されたハニカムセグメント4を、「外周セグメント4y」という。また、複数個のハニカムセグメント4のうち、外周セグメント4y以外のハニカムセグメント4を、「完全セグメント4x」という。即ち、完全セグメント4xは、外周セグメントよりもハニカムセグメント接合体8の内側に配置されたハニカムセグメント4である。完全セグメント4xは、第一端面11から第二端面12に向かう方向を軸方向とする「角柱状」となるように構成されている。一方で、外周セグメント4yは、角柱状に形成されたハニカムセグメント4の一部が、外周壁13の形状に沿って研削された柱状となるように構成されている。以下、本明細書において、「軸方向」とは、特に断りのない限り、ハニカムセグメント4の第一端面11側から第二端面12側に向かう方向に平行な方向のことを意味する。
【0025】
それぞれのハニカムセグメント4におけるセル2は、第一端面11側又は第二端面12側のいずれか一方の端部が、目封止部5によって目封止されている。即ち、目封止部5は、それぞれのハニカムセグメント4において、所定のセル2の第一端面11の開口部、及び、所定のセル2以外の残余のセル2の第二端面12の開口部に配設されている。
【0026】
以下、ハニカムセグメント4の第一端面11におけるセル2の開口部に目封止部5が配設されたセル2(即ち、上述した所定のセル2)を、「流出セル」ということがある。ハニカムセグメント4の第二端面12におけるセル2の開口部に目封止部5が配設されたセル2(即ち、上述した残余のセル2)を、「流入セル」ということがある。
【0027】
複数個のハニカムセグメント4は、第一端面11のセル2の延びる方向における位置が、後述する第一基準位置から所定の値だけ離れた位置となる特定ハニカムセグメント4aを含んでいる。ここで、図1図6に示すハニカム構造体100において、符号4bは、特定ハニカムセグメント4a以外のハニカムセグメント4bを示している。特定ハニカムセグメント4a以外のハニカムセグメント4bは、第一基準位置15に対する第一端面11のずれの量(絶対値)及び第二基準位置16に対する第二端面12のずれの量(絶対値)が、0.3mm未満であるということができる。
【0028】
ハニカムセグメント接合体8のセル2の延びる方向において、それぞれのハニカムセグメント4の第一端面11を平均した位置を、第一基準位置15とする。また、ハニカムセグメント接合体8のセル2の延びる方向において、それぞれのハニカムセグメント4の第二端面12の位置を平均した位置を、第二基準位置16とする。
【0029】
ここで、第一基準位置15及び第二基準位置16について、図7及び図8を参照しつつ、更に詳しく説明する。図7は、第一基準位置を説明するための模式図である。図8は、第二基準位置を説明するための模式図である。なお、図7及び図8は、図4に示す断面の一部を拡大した拡大断面を模式的に示すものである。
【0030】
図7に示すように、第一基準位置15とは、セル2の延びる方向において、それぞれのハニカムセグメント4の第一端面11の位置を平均した位置のことである。第一基準位置15は、例えば、以下の方法によって規定することができる。まず、第一基準位置15を規定するための仮の基準位置として、仮基準面17を決定する。仮基準面17は、セル2の延びる方向に直交する平面であれば、セル2の延びる方向においてどのような位置であってもよい。図7においては、それぞれのハニカムセグメント4の第一端面11よりも、セル2の延びる方向の更に外方において、仮基準面17を設けている。
【0031】
次に、仮基準面17から、それぞれのハニカムセグメント4の各第一端面11までのそれぞれの距離p1,p2,p3,p4,p5を求める。図7においては、ハニカムセグメント接合体8の一の断面における5つのハニカムセグメント4を図示しているが、仮基準面17から各第一端面11までの距離については、図示されていない全てのハニカムセグメント4について測定する。例えば、ハニカムセグメント接合体8を構成するハニカムセグメント4がn個ある場合には、仮基準面17から各第一端面11までの距離は、n箇所で測定され、それぞれの距離については、距離p1,p2,p3,p4,p5・・・,pnと示すことができる。
【0032】
次に、測定された距離p1,p2,p3,p4,p5・・・,pnの相加平均値p0を算出する。この平均値の算出において、距離p1,p2,p3,p4,p5・・・,pnは、仮基準面17を基準値として、仮基準面17からセル2の延びる一の方向の値を「正の値」とし、他の方向の値を「負の値」とする。したがって、上述したように、仮基準面17の位置を、それぞれのハニカムセグメント4の第一端面11よりも更に外方に位置するものとした場合には、測定される距離p1,p2,p3,p4,p5・・・,pnは、全て正の値(又は負の値)を示すこととなる。
【0033】
次に、仮基準面17から、セル2の延びる方向に相加平均値p0の距離の位置を、第一基準位置15とする。第一基準位置15は、セル2の延びる方向に直交する平面として規定することができる。
【0034】
また、図8に示すように、第二基準位置16とは、セル2の延びる方向において、それぞれのハニカムセグメント4の第二端面12の位置を平均した位置のことである。第二基準位置16は、例えば、以下の方法によって規定することができる。まず、第二基準位置16を規定するための仮の基準位置として、仮基準面18を決定する。仮基準面18は、セル2の延びる方向に直交する平面であれば、セル2の延びる方向においてどのような位置であってもよい。図8においては、それぞれのハニカムセグメント4の第二端面12よりも、セル2の延びる方向の更に外方において、仮基準面18を設けている。
【0035】
次に、仮基準面18から、それぞれのハニカムセグメント4の各第二端面12までのそれぞれの距離q1,q2,q3,q4,q5を求める。図8においては、ハニカムセグメント接合体8の一の断面における5つのハニカムセグメント4を図示しているが、仮基準面18から各第二端面12までの距離については、図示されていない全てのハニカムセグメント4について測定する。例えば、ハニカムセグメント接合体8を構成するハニカムセグメント4がn個ある場合には、仮基準面18から各第二端面12までの距離は、n箇所で測定され、それぞれの距離については、距離q1,q2,q3,q4,q5・・・,qnと示すことができる。
【0036】
次に、測定された距離q1,q2,q3,q4,q5・・・,qnの相加平均値q0を算出する。この平均値の算出において、距離q1,q2,q3,q4,q5・・・,qnは、仮基準面18を基準値として、仮基準面18からセル2の延びる一の方向の値を「正の値」とし、他の方向の値を「負の値」とする。したがって、上述したように、仮基準面18の位置を、それぞれのハニカムセグメント4の第二端面12よりも更に外方に位置するものとした場合には、測定される距離q1,q2,q3,q4,q5・・・,qnは、全て正の値(又は負の値)を示すこととなる。
【0037】
次に、仮基準面18から、セル2の延びる方向に相加平均値q0の距離の位置を、第二基準位置16とする。第二基準位置16は、セル2の延びる方向に直交する平面として規定することができる。
【0038】
図7及び図8に示すような第一基準位置15及び第二基準位置16については、具体的には、以下のような方法で求めることができる。まず、水平な平面を有する定盤(図示せず)の上に、ハニカム構造体100を設置する。この際、ハニカム構造体100の第一端面11側が、鉛直上方を向くように設置する。次に、ダイヤルゲージ(Dial gauge)付きの探針(プローブ;probe)を、各ハニカムセグメント4の第一端面11上を走査させる。この際の仮基準面17は、測定器である探針の基準点とすることができる。このようにして、仮基準面17から個々のハニカムセグメント4の第一端面11までの距離p1,p2,p3,p4,p5・・・,pnを測定する。そして、測定された距離p1,p2,p3,p4,p5・・・,pnの相加平均値p0を求めることにより、第一基準位置15を特定することができる。第二基準位置16についても上記した方法と同様の方法により、その位置を特定することができる。
【0039】
図1図6に示すハニカム構造体100において、複数個のハニカムセグメント4は、後述するように構成された特定ハニカムセグメント4aを含んでいる。特定ハニカムセグメント4aは、セル2の延びる方向において、第一基準位置15に対して、それぞれの第一端面11の位置が、セル2の延びる方向に0.3~5.0mm突出している又は0.3~5.0mm窪んでいる。図4図6において、第一基準位置15から、各特定ハニカムセグメント4aの第一端面11の位置までの距離は、T1a,T1b,T1c,T1dに示される距離となる。
【0040】
また、特定ハニカムセグメント4aは、セル2の延びる方向において、第二基準位置16に対して、第二端面12の位置が、セル2の延びる方向に0.3~2.5mm突出している又は0.3~2.5mm窪んでいる。図4図6において、第二基準位置16から、各特定ハニカムセグメント4aの第二端面12の位置までの距離は、T2a,T2b,T2c,T2dに示される距離となる。
【0041】
ハニカム構造体100は、ハニカムセグメント接合体8の第一端面11側及び第二端面12側において、特定ハニカムセグメント4aによって、セル2の延びる方向に段差を有している。このため、この段差によって、接合層14に生じるクラックの伸展を有効に抑制することができる。
【0042】
特定ハニカムセグメント4aの第一端面11の位置が、第一基準位置15に対して5.0mmを超えて突出している又は5.0mmを超えて窪んでいる場合、ハニカム構造体100に排ガス浄化用の触媒を担持する際に、以下のような支障を生じるおそれがある。まず、ハニカム構造体100に排ガス浄化用の触媒の担持方法については、従来公知の方法として、ハニカム構造体100の第二端面12を触媒スラリー中に漬けた状態で、ハニカム構造体100の第一端面11から触媒スラリーを吸引する吸引法がある。このような吸引法により触媒を担持する際に、第一端面11の位置が、上記数値を超えて突出している又は窪んでいる場合には、第一端面11において触媒スラリーの漏れが発生し易くなってしまう。
【0043】
また、特定ハニカムセグメント4aの第一端面11の位置が、上記数値を超えて突出している又は窪んでいる場合には、接合層14にクラック等の破損が生じ易くなる。例えば、排ガス浄化装置等の筐体となる缶体内にハニカム構造体100を収容した際に、第一端面11に付与される面圧により、接合層14に破損が生じ易くなる。ハニカム構造体100を、排ガス浄化装置等の筐体となる缶体内に収容することを、「キャニング(canning)」ということがある。
【0044】
特定ハニカムセグメント4aの第二端面12の位置が、第二基準位置16に対して2.5mmを超えて突出している又は2.5mmを超えて窪んでいる場合においても、接合層14にクラック等の破損が生じ易くなる。
【0045】
第一基準位置15から特定ハニカムセグメント4aの第一端面11の位置までの距離の下限値は、0.3mmであり、0.5mmであることが好ましい。第一基準位置15から特定ハニカムセグメント4aの第一端面11の位置までの距離が0.3mm未満であると、特定ハニカムセグメント4aによるクラックの伸展を抑制する効果が得られ難くなる。以下、「第一基準位置15から特定ハニカムセグメント4aの第一端面11の位置までの距離」のことを、「第一基準位置15からのズレ量」ということがある。
【0046】
特定ハニカムセグメント4aは、第二基準位置16に対して、第二端面12の位置が、セル2の延びる方向に0.3~2.5mm突出している又は0.3~2.5mm以下窪んでいる。第二基準位置16から特定ハニカムセグメント4aの第二端面12の位置までの距離の下限値は、0.3mmであり、0.5mmであることが好ましい。第二基準位置16から特定ハニカムセグメント4aの第二端面12の位置までの距離が0.3mm未満であると、特定ハニカムセグメント4aによるクラックの伸展を抑制する効果が得られ難くなる。以下、「第二基準位置16から特定ハニカムセグメント4aの第二端面12の位置までの距離」のことを、「第二基準位置16からのズレ量」ということがある。
【0047】
ハニカム構造体100は、例えば、排ガス中のPMを捕集するためのPM捕集フィルタとして好適に利用することができる。この場合、ハニカム構造体100は、第一端面11が、セル2内を流れる流体(具体的には、排ガス)が流出する側の出口端面であることが好ましい。このように構成することによって、クラックがより発生し易い出口端面において、接合層14に生じるクラックの伸展を有効に抑制することができる。
【0048】
特定ハニカムセグメント4aの数が、全てのハニカムセグメント4の数に対して10%以上であることが好ましく、30%以上であることが更に好ましい。このように構成することによって、接合層14に生じるクラックの伸展をより有効に抑制することができる。特定ハニカムセグメント4aの数が、全てのハニカムセグメント4の数に対して10%未満であると、第一端面11における段差箇所が少なくなり、クラックの伸展を抑制する箇所が少なくなることがある。なお、特定ハニカムセグメント4a以外のハニカムセグメント4bは、第一基準位置15に対する第一端面11のズレ量(絶対値)及び第二基準位置16に対する第二端面12のズレ量(絶対値)が、0.3mm未満である。
【0049】
特定ハニカムセグメント4aの数が、全ての完全セグメント4xの数に対して10%以上であることが好ましく、30%以上であることが更に好ましい。このように構成することによって、クラックがより発生し易い第一端面11の中央付近において、接合層14に生じるクラックの伸展をより有効に抑制することができる。特定ハニカムセグメント4aの数が、全ての完全セグメント4xの数に対して10%未満であると、第一端面11における段差箇所が少なくなり、クラックの伸展を抑制する箇所が少なくなることがある。
【0050】
ハニカム構造体100の第一端面11側又は第二端面12側における接合層14の幅については特に制限はないが、例えば、0.3~3.0mmであることが好ましく、0.5~2.5mmであることが更に好ましく、0.5~1.5mmであることが特に好ましい。接合層14の幅が0.5mm未満であると、ハニカム構造体100の接合強度が低下し易くなる点で好ましくない。接合層14の幅が3.0mmを超えると、ハニカム構造体100の圧力損失が増大することがある点で好ましくない。
【0051】
接合層14の材料については、特に制限はなく、従来公知のハニカム構造体における接合層の材料を用いることができる。なお、特定ハニカムセグメント4aが第一端面11から突出するように配設されている場合において、特定ハニカムセグメント4aの突出した側面には、接合層14が配設されていてもよいし、配設されていなくともよい。図4図6に示す断面図では、特定ハニカムセグメント4aの突出した側面には、接合層14が配設されていない状態を示している。
【0052】
ハニカムセグメント4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルと混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。
【0053】
隔壁1によって区画されるセル2のセル密度が、15~90個/cmであることが好ましく、30~60個/cmであることが更に好ましい。このように構成することによって、本実施形態のハニカム構造体100を、自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化するためのフィルタとして好適に利用することができる。
【0054】
隔壁1の気孔率が、30~80%であることが好ましく、35~75%であることが更に好ましく、40~70%であることが特に好ましい。隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の気孔率の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。気孔率の測定は、各ハニカムセグメント4の隔壁1の一部を切り出して試験片とし、その試験片を用いて行うことができる。隔壁1の気孔率が、30%未満であると、ハニカム構造体100自体の圧力損失が増大することや、触媒の担持後における圧力損失のばらつきが大きくなることがある。隔壁1の気孔率が、80%を超えると、ハニカム構造体100の、フィルタとしての強度、捕集性能が低下してしまうことがある。
【0055】
ハニカムセグメント4の形状については、特に制限はない。但し、完全セグメント4xの形状については、完全セグメント4xの軸方向に直交する断面形状が四角形の角柱状であることが好ましい。外周セグメント4yの形状については、ハニカム構造体100の全体形状に応じて、角柱状の一部が研削等により加工されたものであってもよく、加工前の形状としては、例えば、三角形、四角形等を挙げることができる。
【0056】
ハニカム構造体100の全体形状については、特に制限はない。例えば、図1に示すハニカム構造体100の全体形状は、第一端面11及び第二端面12が円形の円柱状である。その他、図示は省略するが、ハニカム構造体の全体形状としては、第一端面及び第二端面が、楕円形やレーストラック(Racetrack)形や長円形等の略円形の柱状であってもよい。また、ハニカム構造体の全体形状としては、第一端面及び第二端面が、四角形や六角形等の多角形の角柱状であってもよい。
【0057】
ハニカムセグメント4を構成する材料に特に制限はないが、強度、耐熱性、耐久性等の観点から、下記材料群から選択される少なくとも1種の材質が好ましい。材料群とは、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素-コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、及びFe-Cr-Al系金属の材料群である。これらの中でも、炭化珪素、又は珪素-炭化珪素系複合材料が更に好ましい。珪素-炭化珪素系複合材料は、炭化珪素(SiC)を骨材とし、且つ珪素(Si)を結合材とする複合材料である。
【0058】
目封止部5の材料については特に制限はない。目封止部5の材料は、例えば、ハニカムセグメント4を構成する材料として例示した材料と同様な材料が好ましい。
【0059】
ハニカム構造体100の大きさ、例えば、第一端面11から第二端面12までの長さや、ハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。本実施形態のハニカム構造体100を、排ガス浄化用のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。例えば、ハニカム構造体100の第一端面11から第二端面12までの長さは、150~305mmであることが好ましく、150~200mmであることが特に好ましい。また、ハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面の面積は、144~330mmであることが好ましく、144~178mmであることが特に好ましい。
【0060】
ハニカム構造体100においては、所定のセル2の第一端面11側の開口部、及び残余のセルの第二端面12側の開口部に、目封止部5が配設されている。ここで、第二端面12側の開口部に目封止部5が配設され、第一端面11側が開口したセル2を、流入セルとする。また、第一端面11側の開口部に目封止部5が配設され、第二端面12側が開口したセル2を、流出セルとする。流入セルと流出セルとは、隔壁1を隔てて交互に配設されていることが好ましい。そして、それによって、ハニカム構造体100の両端面に、目封止部5と「セル2の開口部」とにより、市松模様が形成されていることが好ましい。
【0061】
ハニカム構造体100においては、複数のセル2を形成する隔壁1に触媒が担持されていてもよい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。このように構成することによって、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることができる。また、捕集した煤等のPMの酸化を促進させることができる。
【0062】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
実施形態のハニカム構造体の製造方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法により製造することができる。まず、ハニカムセグメントを作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカムセグメントを作製するための坏土は、原料粉末として、前述のハニカムセグメントの好適な材料の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって調製することができる。
【0063】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを取り囲むように配設された隔壁、及び最外周に配設されたセグメント外壁を有する、角柱状のハニカム成形体を作製する。
【0064】
得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥し、ハニカム成形体の作製に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を作製する。目封止部を作製した後に、ハニカム成形体を更に乾燥してもよい。
【0065】
次に、目封止部を作製したハニカム成形体を焼成することにより、ハニカムセグメントを得る。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【0066】
次に、複数のハニカムセグメントを、接合材を用いて互いに接合する。この際、複数のハニカムセグメントのうちの少なくとも1つを、セルの延びる方向に、所定量だけ突出させる又は窪ませる。具体的には、まず、各ハニカムセグメントの側面に接合材を塗布して、複数のハニカムセグメントの側面同士を接合する。この段階では、接合材を完全に硬化させずに、ハニカムセグメントの側面同士を仮止めの状態で維持する。次に、ハニカムセグメントの端面の面積に応じた押出面を有する押出し治具を用意する。仮止めの状態で接合されたハニカムセグメントの接合体の端面に、上記した押出し治具を押し当て、複数のハニカムセグメントのうちの少なくとも1つを、セルの延びる方向に、所定量だけ突出させる。また、複数のハニカムセグメントのうちの少なくとも1つを、セルの延びる方向に、所定量だけ窪ませる場合には、上記した押出し治具を、上記とは反対側の端面に押し当てて、所定のハニカムセグメントを所定量だけ突出させる。特定ハニカムセグメント4aの突出した側面に接合層を配設しない場合には、例えば、特定ハニカムセグメント4aを突出させた後に、突出させた部位の側面に付着した接合材をヘラ等で掻き出すことで、接合層を除去することができる。
【0067】
次に、仮止めの状態で接合されたハニカムセグメントの接合体における接合層を、乾燥硬化させ、必要に応じて熱処理等を行う。次に、ハニカムセグメントの接合体の外周部分を、所望の形状となるように加工することによって、セグメント構造のハニカム構造体を製造する。接合材としては、セラミックス材料に、水等の溶媒を加えてペースト状又はスラリー状にしたものを用いることができる。
【0068】
ハニカムセグメント接合体の外周を加工した後の加工面は、セルが露出した状態となっているため、ハニカムセグメント接合体の加工面に外周コート材を塗工して、外周壁を形成してもよい。外周コート材の材料としては、例えば、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、セラミック粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加剤と水とを加えて混練し、スラリー状としたものを挙げることができる。
【実施例
【0069】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
セラミックス原料として、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合した混合原料を準備した。この混合原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加するとともに、水を添加して成形原料を作製した。得られた成形原料を、ニーダー(kneader)を用いて混練し、坏土を得た。
【0071】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて成形し、四角柱状のハニカム成形体を60個作製した。なお、実施例1においては、四角柱状のハニカム成形体の32個が完全セグメントとなる。
【0072】
次に、得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。
【0073】
次に、乾燥後のハニカム成形体に、目封止部を形成した。まず、乾燥後のハニカム成形体の第一端面にマスクを施した。次に、マスクの施された端部(第一端面側の端部)を目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていないセル(流出セル)の開口部に目封止スラリーを充填した。このようにして、乾燥後のハニカム成形体の第一端面側に、目封止部を形成した。そして、乾燥後のハニカム成形体の第二端面についても同様にして、流入セルにも目封止部を形成した。
【0074】
そして、目封止部の形成されたハニカム成形体を脱脂し、焼成し、ハニカムセグメントを得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とし、焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。
【0075】
以上のようにして、実施例1のハニカム構造体の製造に使用するハニカムセグメントを作製した。各ハニカムセグメントは、軸方向に直交する断面が正方形で、その正方形の一辺の長さ(セグメントサイズ)が39mmであった。ハニカムセグメントは、そのうちの6個を特定ハニカムセグメントとして使用するものとし、それ以外のものを、特定ハニカムセグメント以外のハニカムセグメントとして使用するものとした。特定セグメントについては、その軸方向の長さを、301.8~309.0mmとした。それ以外のハニカムセグメントについては、その軸方向の長さを、304.6~305.0mmとした。ハニカムセグメントは、隔壁の厚さが0.30mmで、セル密度が47個/cmであった。
【0076】
次に、ハニカムセグメントを接合するための接合材を調製した。接合材は、接合層を構成するための無機原料に、添加剤として、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤を加え、更に、水を加えて混練しスラリー状にしたものを用いた。
【0077】
次に、得られたハニカムセグメントを、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で、接合材によって仮止めの状態で接合した。なお、ハニカムセグメントの接合体は、その端面において、縦方向に8個、横方向に8個のハニカムセグメント4が配列するように配置した。表1の「ハニカムセグメント」における「個数(個)」及び「配置(個数×個数)」の欄には、各実施例に用いたハニカムセグメントの個数、及びその配置を示す。例えば、「配置(個数×個数)」の欄に、「8×8」と記載されている場合には、上述したように、縦方向に8個、横方向に8個のハニカムセグメント4を用いたことを意味する。なお、ハニカムセグメントの接合体を作製する際には、接合体の端面の中心を中心とした直径304.8mmの円に収まる範囲内に、60個のハニカムセグメントを配置し、それ以外の範囲については、ダミー(dummy)のハニカムセグメントを配置した。表1の「ハニカムセグメント」における「個数(個)」及び「配置(個×個)」の欄には、各実施例に用いたハニカムセグメントの個数、及びその配置を示す。例えば、「配置(個×個)」の欄に、「8×8」と記載されている場合には、縦方向に8個、横方向に8個のハニカムセグメント4を用いたことを意味する。
【0078】
次に、ハニカムセグメントの端面の面積に応じた押出面を有する押出し治具を用意した。そして、仮止めの状態で接合されたハニカムセグメントの接合体の端面に、上記した押出し治具を押し当て、複数のハニカムセグメントのうちの6つを、セルの延びる方向に、所定量だけ突出又は窪ませた。その後、ハニカムセグメントの接合体における接合層を、乾燥硬化させ、更に熱処理を行った。
【0079】
次に、ハニカムセグメント接合体の外周を円柱状に研削加工し、その外周面にコート材を塗布して、実施例1のハニカム構造体を得た。実施例1のハニカム構造体は、端面の直径が304.8mmであった。表1に各結果を示す。また、実施例1のハニカム構造体は、接合層の幅が1.0mmであった。
【0080】
実施例1のハニカム構造体は、6個のハニカムセグメントが特定ハニカムセグメントとなるものであった。実施例1のハニカム構造体について、ダイヤルゲージ付きの探針を用いて、6個の特定ハニカムセグメントにおける、第一基準位置に対する、第一端面の位置のズレ量をそれぞれ測定した。また、6個の特定ハニカムセグメントにおける、第二基準位置に対する、第二端面の位置のズレ量をそれぞれ測定した。実施例1のハニカム構造体は、特定ハニカムセグメントの第一基準面からの最大ズレ量(mm)が、+4.2mmであり、特定ハニカムセグメントの第二基準面からの最大ズレ量(mm)が、-2.2mmであった。各結果を、表2の「第一基準面からの最大ズレ量(mm)」及び「第二基準面からの最大ズレ量(mm)」の欄に示す。なお、最大ズレ量とは、ズレ量の絶対値が最大となる値のことを意味する。表2の「第一基準面からの最大ズレ量(mm)」及び「第二基準面からの最大ズレ量(mm)」の欄において、各ズレ量(mm)が±0.3mm未満である場合、「-」と記す。
【0081】
特定ハニカムセグメントの第一基準面からの最小ズレ量(mm)が、-3.0mmであり、特定ハニカムセグメントの第二基準面からの最小ズレ量(mm)が、+0.6mmであった。各結果を、表2の「第一基準面からの最小ズレ量(mm)」及び「第二基準面からの最小ズレ量(mm)」の欄に示す。なお、最小ズレ量とは、ズレ量の絶対値が最小となる値のことを意味する。表2の「第一基準面からの最小ズレ量(mm)」及び「第二基準面からの最小ズレ量(mm)」の欄において、各ズレ量(mm)が±0.3mm未満である場合、「-」と記す。
【0082】
表2に示すように、実施例1のハニカム構造体において、第一基準位置に対する、第一端面の位置のズレ量の最大値(絶対値)は、4.2mmであった。第一基準位置に対する、第一端面の位置のズレ量の最小値(絶対値)は、3.0mmであった。第二基準位置に対する、第二端面の位置のズレ量の最大値(絶対値)は、2.2mmであった。第二基準位置に対する、第二端面の位置のズレ量の最小値(絶対値)は、0.6mmであった。また、完全セグメントの個数に対する、特定ハニカムセグメントの個数の割合は、19%であった。結果を、表2の「完全セグメントに対する特定ハニカムセグメントの割合(%)」の欄に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
実施例1のハニカム構造体について、以下の方法で、クラック伸展試験、押し込み試験、及び触媒コート試験を行った。結果を表3に示す。
【0086】
[クラック伸展試験]
まず、各実施例のハニカム構造体について、以下の方法で、加熱振動試験を実施した。まず、ハニカム構造体の外周面に、非熱膨張性のセラミックマットを巻き付けた。次に、セラミックマットを巻きつけたハニカム構造体を、ステンレス製の缶体に収納した後、溶接して、缶体内にハニカム構造体を収納した。ハニカム構造体を収納した缶体を、以下、「試験用の缶体」という。次に、試験用の缶体を、加熱振動試験装置に取り付け、加熱振動試験装置から、プロパンの燃焼ガスを試験用の缶体内に供給した。燃焼ガスは、ハニカム構造体の流入端面におけるガス温度が、最大で900℃で、ガス流量が15Nm/分となるようにした。次に、上記燃焼ガスを試験用の缶体内に連続して供給した状態で、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する方向の振動を、缶体に与えた。缶体に与えた振動の条件は、200Hz、50Gの振動を200時間与えることとした。加熱振動試験において、ハニカム構造体の流入端面側を第二端面とし、ハニカム構造体の流出端面側を第一端面とした。加熱振動試験を実施した後、第一端面における接合層のクラックを観察して、以下の評価基準に基づき評価を行った。
(評価基準)
評価「優」:第一端面上における、格子状の接合層の総長さに対して、クラックが観察された範囲の長さが20%以下。
評価「良」:第一端面上における、格子状の接合層の総長さに対して、クラックが観察された範囲の長さが20%超、50%以下。
評価「可」第一端面上における、格子状の接合層の総長さに対して、クラックが観察された範囲の長さが50%超、80%以下。
評価「不可」第一端面上における、格子状の接合層の総長さに対して、クラックが観察された範囲の長さが80%超。
なお、「格子状の接合層の総長さ」とは、格子状の接合層において、格子の延びる方向の長さの総和のことを意味する。「クラックが観察された範囲の長さ」とは、クラックが観察された範囲についての、格子の延びる方向の長さの総和のことを意味する。
【0087】
[押し込み試験]
まず、ハニカム構造体の外周面に、非熱膨張性のセラミックマットを巻き付けた。次に、セラミックマットを巻きつけたハニカム構造体を、このハニカム構造体の軸方向に対して0.3MPaの面圧を掛けるようにして、ステンレス製の缶体内に押し込んだ。この際、ハニカム構造体の接合層にクラック等の破損が生じた場合を不合格の「NG」とし、クラック等の破損が生じない場合を合格の「OK」とした。
【0088】
[触媒コート試験]
まず、触媒として白金を用意し、この白金を含む触媒スラリーを調製した。次に、触媒スラリーを、ハニカム構造体に対して、乾燥後の単位体積当たりの担持量が20g/Lとなるように担持した。触媒スラリーの担持は、ハニカム構造体の第一端面側から吸引を行いつつ、ハニカム構造体の第二端面側から第一端面側に触媒スラリーを流通させることによって行った。この際に、触媒スラリーの漏れが第一端面側で発生しない場合を合格の「OK」とし、触媒スラリーの漏れが第一端面側で発生した場合を不合格の「NG」とした。
【0089】
【表3】
【0090】
(実施例2~6、比較例1~5)
ハニカム構造体の構成を、表1及び表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハニカム構造体を製造した。
【0091】
実施例2~6、比較例1~5のハニカム構造体についても、実施例1と同様の方法で、クラック伸展試験、押し込み試験、及び触媒コート試験を行った。結果を表3に示す。
【0092】
(結果)
実施例1~6のハニカム構造体は、クラック伸展試験、押し込み試験、及び触媒コート試験の全て評価において良好な結果を示すものであった。
【0093】
比較例1のハニカム構造体は、第一基準面からの最大ズレ量(mm)が+5.3mmであったため、押し込み試験において接合層にクラック等の破損が生じ、また、触媒コート試験においても触媒スラリーの漏れ発生してしまった。比較例2のハニカム構造体は、第二基準面からの最大ズレ量(mm)が+2.7mmであったため、押し込み試験において接合層にクラック等の破損が生じてしまった。比較例3~4のハニカム構造体は、第一基準面からの最大ズレ量(mm)又は第二基準面からの最大ズレ量(mm)のいずれか一方が小さ過ぎたため、クラック伸展試験において不可の結果となってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のハニカム構造体は、自動車等のエンジン等から排出される排ガスに含まれる微粒子等を除去するための捕集フィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1:隔壁、2:セル、4:ハニカムセグメント、4a:特定ハニカムセグメント、4b:特定ハニカムセグメント以外のハニカムセグメント、4x:完全セグメント、4y:外周セグメント、5:目封止部、8:ハニカムセグメント接合体、11:第一端面、12:第二端面、13:外周壁、14:接合層、15:第一基準位置、16:第二基準位置、17,18:仮基準面、100:ハニカム構造体、T1a,T1b,T1c,T1d,T2a,T2b,T2c,T2d:距離、p1,p2,p3,p4,p5,q1,q2,q3,q4,q5:距離、p0,q0:相加平均値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8