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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】芳香提供システムおよび芳香提供方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/9035 20190101AFI20220809BHJP
   G06F 16/909 20190101ALI20220809BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20220809BHJP
   B60H 3/00 20060101ALI20220809BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G06F16/9035
G06F16/909
G01C21/26 C
B60H3/00 J
B60H1/00 103S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018216205
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020086625
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 耕太
【審査官】白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-082634(JP,A)
【文献】特開平11-278048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
B60H 1/00-3/06
G01C 21/00-21/36;23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが搭乗する車両の現在位置を検出する位置検出部と、
前記ユーザの空腹度を、前記ユーザの身体的な状態として検出するユーザ状態検出部と、
地域の産物に由来する1または複数種類の香りが地域ごとに登録された第1データ、および、香りに関する前記ユーザの嗜好が登録された第2データに基づいて、前記位置検出部により検出された前記車両の現在位置が属する地域の産物に由来する香りであって前記ユーザの嗜好を反映した香りを、前記車両に設けられた芳香提供機構に提供させる芳香提供部とを備え、
前記芳香提供部は、前記ユーザ状態検出部により検出された前記ユーザの空腹度を更に反映した香りを前記芳香提供機構に提供させる
ことを特徴とする芳香提供システム。
【請求項2】
ユーザが搭乗する車両の現在位置を検出する位置検出部と、
地域の産物に由来する1または複数種類の香りが地域ごとに登録された第1データ、および、香りに関する前記ユーザの嗜好が登録された第2データに基づいて、前記位置検出部により検出された前記車両の現在位置が属する地域の産物に由来する香りであって前記ユーザの嗜好を反映した香りを、前記車両に設けられた芳香提供機構に提供させる芳香提供部とを備え、
前記芳香提供部は、各地域における前記車両の移動履歴が登録された第3データに基づいて、前記位置検出部により検出された前記車両の現在位置が属する地域における移動履歴を更に反映した香りを前記芳香提供機構に提供させる
ことを特徴とする芳香提供システム。
【請求項3】
前記第2データは、地域の産物に由来する香りの属性ごとに、前記ユーザの嗜好が登録されたデータであり、
前記芳香提供部は、前記車両の現在位置が属する地域の産物に由来する香りであって、対応する属性をユーザが好む香りを前記芳香提供機構に提供させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の芳香提供システム。
【請求項4】
前記芳香提供部が前記芳香提供機構に提供させる香りに関連する施設に関する情報を提供する施設情報提供部を更に備える
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の芳香提供システム。
【請求項5】
芳香提供システムの芳香提供部が、地域の産物に由来する1または複数種類の香りが地域ごとに登録された第1データ、および、香りに関するユーザの嗜好が登録された第2データに基づいて、前記ユーザが搭乗する車両の現在位置が属する地域の産物に由来する香りであって前記ユーザの嗜好を反映した香りを決定する第1ステップと、
前記芳香提供システムの前記芳香提供部が、決定した香りを前記車両に設けられた芳香提供機構に提供させる第2ステップとを含み、
前記第2ステップにおいて前記芳香提供部は、前記芳香提供システムのユーザ状態検出部により検出された前記ユーザの空腹度を更に反映した香りを前記芳香提供機構に提供させる
ことを特徴とする芳香提供方法。
【請求項6】
芳香提供システムの芳香提供部が、地域の産物に由来する1または複数種類の香りが地域ごとに登録された第1データ、および、香りに関するユーザの嗜好が登録された第2データに基づいて、前記ユーザが搭乗する車両の現在位置が属する地域の産物に由来する香りであって前記ユーザの嗜好を反映した香りを決定する第1ステップと、
前記芳香提供システムの前記芳香提供部が、決定した香りを前記車両に設けられた芳香提供機構に提供させる第2ステップとを含み、
前記第2ステップにおいて前記芳香提供部は、各地域における前記車両の移動履歴が登録された第3データに基づいて、前記芳香提供システムの位置検出部により検出された前記車両の現在位置が属する地域における移動履歴を更に反映した香りを前記芳香提供機構に提供させる
ことを特徴とする芳香提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香提供システムおよび芳香提供方法に関し、特に、車両に搭乗するユーザに香りを提供する芳香提供システムおよび芳香提供方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された芳香提供機構によって、車両の車室内に香りを提供するシステムにおいて、現在の環境(車両の現在位置や、現在時刻等)を検出し、現在の環境に対応する香りを提供するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のシステムによれば、現在の環境に対応する香りをユーザに楽しませることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-82634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のシステムは、単に現在の環境に対応する香りを提供するだけであり、ユーザの満足度の向上という点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、車両に搭乗するユーザに香りを提供するシステムについて、ユーザの満足度を効果的に向上させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明では、地域の産物に由来する1または複数種類の香りが地域ごとに登録された第1データ、および、香りに関するユーザの嗜好が登録された第2データに基づいて、車両の現在位置が属する地域の産物に由来する香りであってユーザの嗜好を反映した香りを、車両に設けられた芳香提供機構に提供させるようにしている。その際に1つの態様として、ユーザの空腹度を更に反映した香りを芳香提供機構に提供させるようにしている。また別の態様として、車両の現在位置が属する地域における移動履歴を更に反映した香りを芳香提供機構に提供させるようにしている。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した本発明によれば、車両の現在位置が属する地域の産物に由来する香りをユーザに提供できるため、その地域に居ることを嗅覚を通じてユーザに実感させることができ、ユーザの満足度を向上できる。その際、地域の産物に由来する香りを無差別に提供するのではなく、ユーザの嗜好を反映した香りを提供するため、ユーザが苦手な香りが提供されることを防止でき、その点でユーザの満足度を効果的に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る芳香提供システムの機能構成例を示すブロック図である。
図2】第1データおよび第2データの内容を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る芳香提供システムの動作例を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態に係る芳香提供システムの機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る芳香提供システム1の機能構成例を示すブロック図である。図1に示すように、芳香提供システム1は、車両に搭載された車載装置2を備えており、この車載装置2には、音声処理装置3、タッチスクリーン4および芳香提供装置5が接続されている。以下、車載装置2が搭載された車両を「自車両」という。
【0010】
車載装置2は、車両に搭載された、いわゆるナビゲーション装置であり、車両の現在位置(以下、「自車位置」という)を検出する機能や、車両に搭乗するユーザにより設定された目的地までの経路を探索し、案内する機能等を有する。なお、車載装置2は、車両に固定的に取り付けられた装置でなくてもよい。例えば、車載装置2は、ユーザによって車内に持ち込まれたモバイル端末であってもよい。
【0011】
音声処理装置3は、D/Aコンバータや、ボリューム、アンプ、車内に設けられたスピーカ等を備え、入力された音声信号をD/A変換し、増幅した後、音声信号に基づく音声をスピーカから出力する。
【0012】
タッチスクリーン4は、車両のダッシュボードや、センターコンソール等、車両に搭乗する運転手が視認可能な位置に設けられたディスプレイと、ディスプレイに重ねて配置され、ディスプレイの表示領域に対するタッチ操作を検出するタッチパネルとを備えている。
【0013】
芳香提供装置5は、いわゆるディフューザであり、車内の所定の位置に固定的にまたは一時的に設けられる。特に、本実施形態に係る芳香提供装置5は、噴霧液を貯留する容器を複数セット可能に構成されており、セットされた複数の容器のうち、1つの容器に貯留された噴霧液を選択的にミスト化し、ミストとして噴霧する芳香提供機構6を備えている。なお、噴霧液に基づくミストを噴霧することは、特許請求の範囲の「車両のユーザに香りを提供すること」に相当する。
【0014】
なお、芳香提供装置5がミストを噴霧する方法は、液体を超音波によって振動させることによってミストを発生し噴霧する方法や、微細な噴霧孔が形成されたミストノズルによってミストを発生し噴霧する方法、筐体内に空気を導入してベンチュリ効果によって噴霧液を吸い上げ、ミスト化して噴霧する方法等、どのような方法であってもよい。また、芳香提供装置5は、据え置き型の装置である必要はなく、持ち運び可能なモバイル型の装置であって、車内に持ち込まれて使用されるものであってもよい。
【0015】
図1に示すように、車載装置2は、機能構成として、位置検出部10、経路案内部11、車両状態検出部12、ユーザ状態検出部13、芳香提供部14および施設情報提供部15を備えている。上記各機能ブロック10~15は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~15は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0016】
図1に示すように、車載装置2は、記憶手段として、記憶部17を備えている。記憶部17は、ハードディスクや、EEPROM等の不揮発性の記憶媒体を含んで構成され、各種データを記憶する。記憶部17には、少なくとも、第1データ18、第2データ19、地図データ20および施設データ21が記憶されている。第1データ18および第2データ19の内容については後述する。
【0017】
地図データ20は、地図の背景や、地図上の道路、地図上に明示される文字列(地名等)等の描画に用いられる描画用データを含んでいる。また、地図データ20は、誘導経路の探索に用いられる道路データを含んでいる。道路データは、道路網における結節点ごとに定義されたノードに関する情報、および、ノードとノードとの間の道路区間ごとに定義されたリンクに関する情報を含んでいる。
【0018】
施設データ21は、地図上に存在する施設について、施設の名称や、地図上の位置、地図上の表示に関するデータ(アイコンデータ等)、ジャンル等の施設に関する情報を保持するデータである。施設データ21は、特に、後述する施設情報提供部15が所定の産物に関連する施設を検索する際に利用可能なメタデータを保持すると共に、施設情報提供部15が施設に関する情報を提供する際に参照可能な情報を保持している。
【0019】
位置検出部10は、GPSユニット、加速度センサ、ジャイロセンサおよび車速センサ等の各種センサ(いずれも不図示)の検出結果を入力し、これらの検出結果および記憶部17に記憶された地図データ20に基づいて自車位置を検出する。
【0020】
経路案内部11は、タッチスクリーン4を介したユーザの指示(他の手段による指示であってもよい)に応じて、位置検出部10により検出された自車位置および記憶部17に記憶された地図データ20を利用して、自車位置からユーザにより設定された目的地までの経路(以下、「誘導経路」という)の探索、誘導経路の案内を実行する。誘導経路の案内は、タッチスクリーン4の表示領域に表示した地図上に、自車位置を明示すると共に、誘導経路を明示する等の既存の方法によって行われる。
【0021】
車両状態検出部12は、自車両に関する各種設定や自車両の状態を管理するコントローラと通信可能に接続されており、当該コントローラと通信し、自車両について内気循環設定となっているか外気導入設定となっているかを検出する。更に、車両状態検出部12は、当該コントローラと通信し、自車両の窓が閉まっている状態(全ての窓が閉まっている状態を意味する)か、窓が開いている状態(少なくとも何れか1つの窓が開いている状態を意味する)かを検出する。
【0022】
ユーザ状態検出部13は、ユーザの空腹度を検出する。本実施形態では、空腹度として、空腹の度合いが最も大きい「空腹度大」、空腹の度合いが最も小さい「空腹度小」、および、空腹の度合いが「空腹度大」と「空腹度小」との間の「空腹度中」が定義されている。更に、本実施形態では、時間帯によってユーザの空腹度が予め定められている。すなわち、朝食、昼食および夕食をとった直後と想定される所定の時刻から所定の期間の時間帯は「空腹度小」と定められ、朝食、昼食および夕食をとる直前と想定される所定の時刻から遡って所定の期間の時間帯は「空腹度大」と定められ、それ以外の時間帯は「空腹度中」と定められている。ユーザ状態検出部13は、RTC(不図示)から現在の時刻を取得し、現在の時刻が属する時間帯を認識し、その時間帯に対応する空腹度を、ユーザの空腹度として検出する。
【0023】
なお、ユーザ状態検出部13がユーザの空腹度を検出する方法は、本実施形態で例示する方法に限られない。一例として、ユーザに血糖値センサが装着され、ユーザ状態検出部13が血糖値センサの検出値に基づいてユーザの空腹度を検出する構成でもよい。また、ユーザ状態検出部13が、現時点までの自車両の走行履歴を利用して空腹度を検出する構成でもよい。この場合、例えば、ユーザ状態検出部13は、飲食物を提供する施設を経由した直後から所定の期間の時間帯を「空腹度小」とし、時間が経過するに従って段階的に「空腹度中」、「空腹度大」とする。
【0024】
芳香提供部14は、動作モードが自動芳香モードの場合に、以下の処理を実行する。以下、まず、第1データ18および第2データ19について説明し、その後、芳香提供部14の処理の詳細について説明する。なお、自動芳香モードへの移行は、ユーザによる明示的な指示に基づいて行われるようにしてもよく、また、所定の条件が成立したときに自動で行われるようにしてもよい。所定の条件が成立したときに自動で行う例として、例えば、特定地域(後述)を経由する誘導経路の案内が指示された場合や、設定された目的地が特定地域(後述)内に位置している場合に、動作モードが自動芳香モードに自動で移行するようにしてもよい。
【0025】
図2(A)は、第1データ18の内容を説明に適した態様で模式的に示す図である。図2(A)に示すように、第1データ18は、複数のレコードを有するテーブルであり、レコードごとに地域情報と香り情報と属性情報とを有する。地域情報は、地域を示す情報を値として有する。図2(A)の例では、地域情報は、「青森」、「山形」、「福島」、「東京」および「大阪」の何れかを示す情報である。以下では、第1データ18の地域情報が示す地域のそれぞれ(図2(A)の例では、「青森」、「山形」、「福島」、「東京」および「大阪」)を総称して「特定地域」という。
【0026】
一の地域情報に対応付けられた香り情報は、当該一の地域情報が示す地域(特定地域)の産物に由来する香りを示す情報を値として有する。例えば、図2(A)で例示する第1データ18の1件目のレコードR1および2件目のレコードR2に示すように、「青森」を示す地域情報に対応付けられた香り情報は、「青森」の産物(リンゴ)に由来する「リンゴの香り」を示す情報、および、「青森」の産物(ヒノキ)に由来する「ヒノキの香り」を示す情報を値として有している。図2(A)で例示する第1データ18では、5つの地域のそれぞれについて2つの産物が対応付けられている。
【0027】
属性情報は、対応付けられた香り情報が示す香りの属性を示す情報である。本実施形態では、属性として、「料理の香り」、「フルーツの香り」、「花の香り」および「木の香り」が準備されている。例えば、図2(A)の1件目のレコードR1および2件目のレコードR2に示すように、「リンゴの香り」を示す香り情報に対応付けられた属性情報の値は「フルーツの香り」を示す情報であり、「ヒノキの香り」を示す香り情報に対応付けられた属性情報の値は「木の香り」を示す情報である。なお、本実施形態では、属性としての「料理の香り」は、図2(A)で例示する「もんじゃの香り」や、「お好み焼きの香り」等のように、飲食店等において焼いたり揚げたりする工程を経て人為的に作られた後に提供される食べ物の香りを意味している。
【0028】
本実施形態では、芳香提供装置5の芳香提供機構6には、第1データ18の香り情報が示す香りのそれぞれについて、対応する香りを提供するための噴霧液を貯留する容器がセットされている。図2(A)で例示する第1データ18には、「リンゴの香り」および「ヒノキの香り」を含む10個の香りが記録されているが、この場合、各香りを提供するための噴霧液が貯留された10個の容器が芳香提供機構6にセットされている。なお、「リンゴの香り」を提供するための噴霧液をミスト化し、ミストを噴霧した場合、車両に搭乗するユーザは、嗅覚を通じてリンゴの香りを感じ、リンゴを思い起こすことが想定される。以上のように、第1データ18は、地域の産物に由来する1または複数種類の香りが地域ごとに登録されたデータである。
【0029】
図2(B)は、第2データ19の内容を説明に適した態様で模式的に示す図である。図2(B)に示すように、第2データ19は、4つの属性(「料理の香り」、「フルーツの香り」、「花の香り」および「木の香り」)ごとにレコードを有するテーブルであり、レコードごとに属性情報と嗜好情報とを有する。一の属性情報に対応付けられた嗜好情報は、当該一の属性情報が示す属性をユーザが好きか嫌いかを示す情報を値として有する。属性は、属性に属する対象物についての一般的なイメージから想起されるような香りのことを意味し、例えば、属性が「フルーツの香り」であれば、フルーツの一般的なイメージから想起される甘くフレッシュな香りを意味する。
【0030】
例えば、図2(B)で例示する第2データ19の1件目のレコードR3について、「料理の香り」を示す属性情報に対応付けられた嗜好情報は、「嫌い」を示す情報である。このレコードR3は、属性としての「料理の香り」をユーザが嫌いであることを示している。なお、ユーザは、属性が同じであっても、産物が異なれば、その産物に由来する香りを好む場合もあれば、嫌いな場合もある。例えば、本実施形態では「もんじゃの香り」と「お好み焼きの香り」とは「料理の香り」という共通する属性であるが、ユーザは「もんじゃの香り」は好きだが「お好み焼きの香り」は嫌いという場合もある。従って、属性を好むか否かというのは、好きか嫌いかを厳密に意味しているのではなく、ユーザがどちらかと言えば好む傾向にあるか否かといった程度の嗜好の傾向を意味している。
【0031】
第2データ19は、芳香提供部14の機能により記憶部17に記憶される。詳述すると、芳香提供部14は、ユーザの指示に応じて、属性に関する情報を入力するためのユーザインターフェイスをタッチスクリーン4に提供する。当該ユーザインターフェイスは、属性ごとに、その属性を好きか嫌いかについて入力する欄が形成されており、ユーザは、属性ごとに好き/嫌いを入力する。芳香提供部14は、当該ユーザインターフェイスに対する入力に基づいて第2データ19を生成し、記憶部17に記憶する。なお、芳香提供部14は、第2データ19の内容を変更するためのユーザインターフェイスを提供する機能を有しており、ユーザは、当該ユーザインターフェイスを利用して任意のタイミングで第2データ19の内容を変更できる。
【0032】
さて、芳香提供部14は、動作モードが自動芳香モードの場合、位置検出部10により検出された自車位置と、記憶部17に記憶された地図データ20および第1データ18とに基づいて、自車両が特定地域の何れかに進入したか否かを監視する。ここで、特定地域のそれぞれについて、地図上の領域を示す情報が予め登録されており、芳香提供部14は、当該情報を用いて地図上の特定地域の領域を認識し、認識した領域と自車位置との比較を通じて、自車両が特定地域の何れかに進入したか否かを判定する。なお、自車両が特定地域に進入するケースとしては、特定地域外に位置している自車両が特定地域に進入する場合と、一の特定地域に位置している自車両が、隣接する他の特定地域に進入する場合とがある。
【0033】
自車両が特定地域の何れかに進入したことを検出した場合、芳香提供部14は、車両状態検出部12の検出結果に基づいて、内気循環設定となっており、かつ、自車両の窓が閉まっている状態か否かを判定する。当該状態ではない場合、芳香提供部14は、以下で説明する処理を実行しない。これは、以下で説明する処理は、ミストを噴霧する処理を含んでおり、外気導入設定となっていたり、窓が開いていたりすると、効果的に香りをユーザに提供できないからである。なお、芳香提供部14が、タッチスクリーン4による表示や、音声処理装置3による音声出力によって、特定地域に進入したがミストの噴霧を行わなかったことをその原因と共に報知する構成でもよい。
【0034】
内気循環設定となっており、かつ、自車両の窓が閉まっている状態の場合、芳香提供部14は、第1データ18の各レコードの地域情報および香り情報を参照し、自車両が進入した特定地域(以下、特定地域のうち、自車両が進入した特定地域を特に「進入特定地域」という)に対応付けられた香り(進入特定地域に対応付けられた香りが複数ある場合には、複数の香りのそれぞれ)を認識すると共に、各香りの属性を認識する。例えば、第1データ18が図2(A)で例示するデータの場合において、進入特定地域が「青森」の場合、芳香提供部14は、「リンゴの香り」および「ヒノキの香り」を、進入特定地域に対応付けられた香りとして認識し、「リンゴの香り」の属性が「フルーツの香り」であること、および、「ヒノキの香り」の属性が「木の香り」であることを認識する。
【0035】
次いで、芳香提供部14は、第2データ19を参照し、認識した属性に対するユーザの嗜好(好きか嫌いか)を認識する。例えば、第2データ19が図2(B)で例示するデータであり、認識した属性が「フルーツの香り」および「木の香り」の場合、芳香提供部14は、属性としての「フルーツの香り」についてはユーザが好きであること、および、属性としての「木の香り」についてはユーザが嫌いであることを認識する。
【0036】
次いで、芳香提供部14は、認識した属性のうち、ユーザが好きな属性が1つに絞られる場合には、その1つの属性に対応する香り(進入特定地域の産物に由来する香り)を、提供する香りとして決定する。例えば、第1データ18が図2(A)で例示するデータであり、第2データ19が図2(B)で例示するデータである場合において、進入特定地域が「青森」の場合、認識する属性は「フルーツの香り」および「木の香り」の2つとなるが、ユーザは「フルーツの香り」が好きであり「木の香り」が嫌いであり、ユーザが好きな属性が1つに絞られるため、芳香提供部14は、「フルーツの香り」に対応する「リンゴの香り」を、提供する香りとして決定する。
【0037】
一方、芳香提供部14は、認識した属性のうち、ユーザが好きな属性が1つもない場合には、提供する香りを決定せず、香りを提供する処理を実行しない。例えば、第1データ18が図2(A)で例示するデータであり、第2データ19が図2(B)で例示するデータである場合において、進入特定地域が「東京」の場合、認識する属性は「料理の香り」および「木の香り」の2つとなるが、ユーザは双方の属性が嫌いであるため、芳香提供部14は、提供する香りを決定せず、香りを提供する処理を実行しない。
【0038】
また、芳香提供部14は、特定進入地域に対応付けられた香りの属性が複数種類ある場合において、ユーザが好きな属性が2つ以上あり、ユーザが好きな属性を1つに絞ることができない場合には、以下の処理を実行する。すなわち、まず、芳香提供部14は、ユーザ状態検出部13の検出結果に基づいて、ユーザの空腹度(空腹度大、空腹度中または空腹度小)を認識する。次いで、芳香提供部14は、ユーザの空腹度を反映して適切な属性を選択し、その属性に対応する香り(進入特定地域の産物に由来する香り)を、提供する香りとして決定する。属性の選択に際し、芳香提供部14は、空腹度が大きいほど、食べ物に関連する属性(本実施形態では「料理」、「フルーツ」)を優先的に選択する。
【0039】
例えば、第1データ18が図2(A)で例示するデータであり、第2データ19が図2(B)で例示するデータである場合において、進入特定地域が「福島」の場合、認識する属性は「フルーツの香り」および「花の香り」の2つとなるが、ユーザは双方の属性が好きであるため、ユーザが好きな属性を1つに絞ることができない。この場合、芳香提供部14は、ユーザの空腹度を認識する。次いで、芳香提供部14は、一例として、空腹度大および空腹度中の場合は、「フルーツの香り」を選択し、空腹度少の場合は、「花の香り」を選択する。芳香提供部14は、選択した属性に対応する香り(進入特定地域の産物に由来する香り)を、提供する香りとして決定する。
【0040】
なお、ユーザの空腹度を加味しても、提供する香りを1つに絞れないケースも生じ得る。この場合、芳香提供部14は、進入特定地域に対応付けられた香りのうち任意の1つの香りを、提供する香りとして決定する。
【0041】
以上のようにして決定された香りは、新たに進入した地域の産物に由来する香りであり、更に、ユーザが好きな属性の香りであり、また、所定の場合には、ユーザの空腹度に対応した香りである。
【0042】
提供する香りを決定した後、芳香提供部14は、その香りに対応する噴霧液をミストとして噴霧することを指示する開始制御コマンドを生成し、芳香提供装置5に出力する。芳香提供装置5は、開始制御コマンドを入力すると、開始制御コマンドに基づいて芳香提供機構6を制御して、指定された噴霧液をミスト化し、ミストの噴霧を開始する。本実施形態では、自車両の進入特定地域への進入に応じてミストの噴霧を開始した後、所定の期間(例えば、3分)だけミストの噴霧を行う設定となっている。これを踏まえ、芳香提供部14は、開始制御コマンドを出力した後、当該所定の期間が経過したタイミングでミストの噴霧を停止することを指示する停止制御コマンドを生成し、芳香提供装置5に出力する。芳香提供装置5は、終了制御コマンドを入力すると、終了制御コマンドに基づいて芳香提供機構6を制御して、ミストの噴霧を停止する。
【0043】
以上のように、車両が何れかの特定地域に進入すると、その特定地域の産物に由来する香りであって、ユーザがその属性を好む香りが、自動で芳香提供機構6から提供される。なお、自車両が進入特定地域に進入した後に芳香提供装置5によりミストの噴霧(香りの提供)が行われる態様は本実施形態で例示する態様に限らず、どのような態様であってもよい。例えば、進入特定地域に進入した後、間隔をあけて定期的にミストを噴霧する構成としてもよく、また、進入特定地域に進入した後すぐにミストを噴霧するのではなく、ある程度の時間が経過したときにミストの噴霧を開始する構成としてもよい。
【0044】
芳香提供部14は、開始制御コマンドの出力に応じて、タッチスクリーン4を制御して、ミストの噴霧を開始したことを示す情報、および、噴霧する香りに対応する産物を紹介する情報を表示する。これと併せて、芳香提供部14は、音声処理装置3を制御して、ミストの噴霧を開始したことを示す情報、および、噴霧する香りに対応する産物を紹介する情報を音声出力する。なお、表示と音声出力との何れか一方を実行する構成でもよい。ユーザは、タッチスクリーン4に表示された情報、または、スピーカから放音された情報に基づいて、ミストの噴霧が開始されたことを認識でき、更に、そのミストの香りに対応する産物を認識できる。
【0045】
また、芳香提供部14は、開始制御コマンドの出力に応じて、芳香提供機構6に提供させた香り(特定進入地域の産物に由来する香り)に対応する産物を示す情報を施設情報提供部15に通知する。
【0046】
施設情報提供部15は、芳香提供部14の通知に基づいて、芳香提供機構6により提供されている産物を認識する。次いで、施設情報提供部15は、認識した産物に関連する施設であって、自車位置の周辺に存在する施設に関する情報をタッチスクリーン4に表示する。
【0047】
例えば、芳香提供機構6により提供される香りが「リンゴの香り」である場合、施設情報提供部15は、芳香提供部14の通知に基づいて、香りに対応する産物が「リンゴ」であることを認識する。次いで、施設情報提供部15は、位置検出部10により検出される自車位置と、記憶部17に記憶された地図データ20および施設データ21とに基づいて、自車位置の周辺の施設であって、認識した産物に関連する施設を検索する。産物に関連する施設とは、認識した産物や、産物に関連する物品、産物に関連するサービスを提供する施設等、産物と何らかの関連性のある施設であり、例えば、産物が「お好み焼き」である場合に、「お好み焼き屋」である。施設の検索は、産物に関連する用語を用いたキーワード検索等、既存の技術により適切に行われる。
【0048】
次いで、施設情報提供部15は、検索した施設に関する情報を所定の態様でタッチスクリーン4に表示する。施設に関する情報を表示するときの態様は、どのような態様であってもよい。一例として、施設情報提供部15は、タッチスクリーン4に表示された地図上の施設に対応する位置に、産物に関連する施設があることを明示するアイコンを表示し、アイコンがタッチ操作された場合には、その施設の詳細な情報を表示する。また、別の例として、施設情報提供部15は、施設に関する情報をポップアップにより表示する。
【0049】
なお、上記例では、施設を検索する範囲を自車位置周辺としたが、施設を検索する範囲は自車位置周辺に限られない。一例として、誘導経路が設定されている場合において、誘導経路沿いを範囲としてもよく、また、誘導経路が設定されている場合において、目的地が進入特定地域に存在する場合には、目的地周辺を検索する範囲としてもよい。また、施設に関する情報の提供を、表示に代えてまたは表示と共に音声出力により行ってもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る芳香提供システム1は、地域の産物に由来する1または複数種類の香りが地域ごとに登録された第1データ18、および、香りに関するユーザの嗜好が登録された第2データ19に基づいて、自車位置が属する地域の産物に由来する香りであってユーザの嗜好を反映した香りを、車両に設けられた芳香提供機構6に提供させる。
【0051】
この構成によれば、自車位置が属する地域の産物に由来する香りをユーザに提供できるため、その地域に居ることを嗅覚を通じてユーザに実感させることができ、ユーザの満足度を向上できる。その際、地域の産物に由来する香りを無差別に提供するのではなく、ユーザの嗜好を反映した香りを提供するため、ユーザが苦手な香りが提供されることを防止でき、その点でユーザの満足度を効果的に向上できる。
【0052】
また、第2データ19は、地域の産物に由来する香りの属性ごとに、ユーザの嗜好が登録されたデータである。そして、芳香提供部14は、自車位置が属する地域の産物に由来する香りであって、対応する属性をユーザが好む香りを芳香提供機構6に提供させる。この構成によれば、地域の産物に由来する香りのうち、ユーザが好む属性の香りが提供されるため、ユーザが苦手な属性の香りが提供されるのを防止でき、その点でユーザの満足度を向上できる。また、この構成によれば、提供可能な地域の産物に由来する香りごとに、ユーザの嗜好を登録する必要がなく、嗜好の登録に関するユーザの煩雑さを緩和できる。
【0053】
また、本実施形態では、芳香提供部14は、ユーザ状態検出部13により検出されたユーザの空腹度を更に反映した香りを芳香提供機構6に提供させる。この構成によれば、提供される香りを嗅いだときに感じる満足度に影響を与えると考えられる空腹度を反映して、適切な香りを提供できる。
【0054】
また、本実施形態では、施設情報提供部15は、芳香提供部14が芳香提供機構6に提供させる香りに関連する施設に関する情報を提供する。この構成によれば、以下の効果を奏する。すなわち、ユーザがある産物に由来する香りを嗅いだときに、そのユーザがその産物を思い出し、その産物に関する体験(例えば、産物が食べ物や飲み物であれば、その産物を飲食するという体験。また例えば、産物が物品であれば、その産物を購入するという体験)をしたいと思う可能性がある。上記構成によれば、このような場合に、ユーザにとって利便性の高い情報を、ユーザが何ら作業を行うことなく提供でき、より効果的にユーザの満足度を向上できる。
【0055】
次に、本実施形態に係る芳香提供システム1の動作例、特に、車載装置2の芳香提供部14の動作例について図3のフローチャートを用いて説明する。以下の説明において、処理の開始時点における動作モードは自動芳香モードであるものとする。
【0056】
車載装置2の芳香提供部14は、位置検出部10により検出された自車位置と、記憶部17に記憶された地図データ20および第1データ18とに基づいて、自車両が特定地域の何れかに進入したか否かを監視する(ステップSA1)。自車両が特定地域の何れかに進入したことを検出した場合(ステップSA1:YES)、芳香提供部14は、車両状態検出部12の検出結果に基づいて、内気循環設定となっており、かつ、自車両の窓が閉まっている状態か否かを判定する(ステップSA2)。当該状態ではない場合(ステップSA2:NO)、芳香提供部14は、ステップSA3以下の処理を行わず、処理を終了する。
【0057】
当該状態である場合(ステップSA2:YES)、芳香提供部14は、第1データ18の各レコードの地域情報および香り情報を参照し、進入特定地域に対応付けられた香りを認識すると共に、各香りの属性を認識する(ステップSA3)。次いで、芳香提供部14は、第2データ19を参照し、認識した属性に対するユーザの嗜好(好きか嫌いか)を認識する(ステップSA4)。次いで、芳香提供部14は、認識した属性のうち、ユーザが好きな属性が1つに絞られるか否かを判定する(ステップSA5)。1つに絞られる場合は(ステップSA5:YES)、芳香提供部14は、その1つの属性に対応する香り(進入特定地域の産物に由来する香り)を、提供する香りとして決定する(ステップSA6)。ステップSA6の処理後、芳香提供部14は、処理手順をステップSA11へ移行する。
【0058】
1つに絞られない場合(ステップSA5:NO)、芳香提供部14は、ユーザが好きな属性が1つもない状態であるか否かを判定する(ステップSA7)。ユーザが好きな属性が1つもない状態の場合(ステップSA7:YES)、芳香提供部14は、提供する香りを決定せず(ステップSA8)、ステップSA11以下の処理を実行しない。
【0059】
好きな属性が1つもない状態ではない場合(=好きな属性が2つ以上ある場合)(ステップSA7:NO)、芳香提供部14は、ユーザ状態検出部13の検出結果に基づいて、ユーザの空腹度(空腹度大、空腹度中または空腹度小)を認識する(ステップSA9)。次いで、芳香提供部14は、ユーザの空腹度を反映して適切な属性を選択し、その属性に対応する香り(進入特定地域の産物に由来する香り)を、提供する香りとして決定する(ステップSA10)。ステップSA10の処理後、芳香提供部14は、処理手順をステップSA11へ移行する。
【0060】
ステップSA11において、芳香提供部14は、その香りに対応する噴霧液をミストとして噴霧することを指示する開始制御コマンドを生成し、芳香提供装置5に出力する。上述のとおり、芳香提供装置5は、開始制御コマンドを入力すると、開始制御コマンドに基づいて芳香提供機構6を制御して、指定された噴霧液をミスト化し、ミストの噴霧を開始する。ステップSA11の処理に応じて、芳香提供部14は、タッチスクリーン4を制御して、ミストの噴霧を開始したことを示す情報、および、噴霧する香りに対応する産物を紹介する情報を報知する(ステップSA12)。情報の報知は、タッチスクリーン4への情報の表示、および、音声処理装置3による情報の音声出力によって行われる。
【0061】
更に、ステップSA11の処理に応じて、芳香提供部14は、芳香提供機構6に提供させた香り(特定進入地域の産物に由来する香り)に対応する産物を施設情報提供部15に通知する(ステップSA13)。上述したように、施設情報提供部15は、ステップSA13の通知に応じて、香りに対応する産物に関連する施設に関する情報をユーザに提供する。
【0062】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と同じ要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。図4は、第2実施形態に係る芳香提供システム1Aの機能構成例を示すブロック図である。図4に示すように、芳香提供システム1Aの車載装置2Aは、第1実施形態の芳香提供部14に代えて芳香提供部14Aを有している。また、記憶部17Aは、第3データ22を更に記憶している。
【0063】
第3データ22は、特定地域ごとに、特定地域内での自車両の移動履歴が記録されたデータである。特に、第3データ22では、特定地域のそれぞれについて、芳香提供機構6により香りが提供され得る産物に関連する施設に過去にユーザが自車両で立ち寄った回数が移動履歴として記録されている。例えば、青森について香りが提供され得る産物が「リンゴ」と「ヒノキ」である場合、第3データ22には、青森内で「リンゴ」に関連する施設に立ち寄った回数、および、「ヒノキ」に関連する施設に立ち寄った回数がそれぞれ記録されている。
【0064】
なお、第3データ22の内容は、芳香提供部14Aが、位置検出部10により検出された自車位置や、第1データ18、第2データ19、地図データ20、施設データ21等に基づいて、適宜、更新する。
【0065】
そして、第2実施形態では、芳香提供部14Aは、提供する香りを決定する際に、進入特定地域の産物に由来する香りであること、かつ、ユーザの嗜好に合った香りであることを前提として、更に第3データ22に記録された進入特定地域における移動履歴を反映して香りを決定する。具体的には、芳香提供部14Aは、特定進入地域に対応付けられた香りの属性が複数種類ある場合において、ユーザが好きな属性が2つ以上ある場合、つまり、香りを提供する候補となる産物が複数ある場合、以下の処理を実行する。すなわち、芳香提供部14Aは、過去に関連する施設に立ち寄った回数が多い産物に由来する香りほど、優先的に選択する。
【0066】
以上の本実施形態の構成によれば、以下の効果を奏する。すなわち、上記構成によれば、ユーザが搭乗する車両が特定地域に進入したときに、その特定地域の産物であって、ユーザにとって馴染みがあることが想定される産物の香りを提供することができ、ユーザの満足度を効果的に向上することができる。すなわち、上記構成によれば、芳香提供システム1Aは、自車両の移動履歴を踏まえて、ユーザが実際の行動を反映した適切な香りを提供することが可能である。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0068】
例えば、上述した第1実施形態に係る車載装置2の機能を、車載装置2以外の装置が有する構成、または、車載装置2と車載装置2以外の装置とが連関して有する構成であってもよい。一例として、車載装置2とネットワークを介して接続された装置(例えば、インターネットを介して接続されたサーバ装置)が、車載装置2の機能ブロックの少なくとも一部を有する構成であってもよい。このことは第2実施形態についても同様である。
【0069】
また、上記各実施形態では、芳香提供機構6は、セットされた複数の容器のうち、1つの容器に貯留された噴霧液を選択的にミスト化し、ミストとして噴霧するものであった。しかしながら、芳香提供機構6の構成は、各実施形態で例示した構成に限られない。例えば、芳香提供機構6は、予め用意された材料を合成等して、可変的に様々な香りを提供する機構であってもよい。この場合、例えば、「リンゴの香り」が提供する香りとして決定された場合、芳香提供機構6は、芳香提供部14の制御の下、所定の態様で材料を合成して、「リンゴの香り」に近い香りを提供する。
【0070】
この場合において、芳香提供部14が、以下の処理を実行するようにしてもよい。すなわち、芳香提供部14が、自車両が所定の地域(特定地域に限られない)に進入したときに、当該所定の地域においてユーザが頻繁に訪れる施設に対応する産物に由来する香りを合成させて、ユーザに提供する構成としてもよい。その際、芳香提供部14が、ユーザが頻繁に訪れる施設に対応する産物に由来する香りを提供するための材料を予め合成しておきストックしておくようにしてもよい。ただし、この場合、香りは、ユーザの嗜好(例えば、属性が好きか否か)を反映したものとする必要がある。また、この場合、芳香提供部14は、適宜、ある一の地域について、当該一の地域を指定する地域情報と、当該一の地域においてユーザが頻繁に訪れる施設に対応する産物に由来する香りに関する香り情報と、香り情報が示す香りに係る属性を示す属性情報とを対応付けたレコードを第1データ18に登録する。また、施設に対応する産物に由来する香りが何であるかを示す情報や、香りを生成するための情報(材料や、合成割合等)は、車載装置2に記憶しておくようにしてもよく、一部または全部を外部装置(例えば、インターネット上のサーバ)から取得するようにしてもよい。
【0071】
また、上記各実施形態で、記憶部17が記憶するとしたデータの一部または全部を、車載装置2が通信可能な外部装置に記憶する構成でもよい。
【0072】
また、上記各実施形態では、ユーザ状態検出部13は、ユーザの身体的な状態として「空腹度」を検出した。しかしながら、ユーザ状態検出部13が対象とする、ユーザの身体的な状態は「空腹度」に限られず、香りに対する一時的な嗜好に影響を与え得る状態であればよい。一例として、眠気や、疲労等を検出し、これらを反映した香りを提供するようにしてもよい。
【0073】
また、上記各実施形態では、芳香提供機構6と車載装置2とは別体であったが、芳香提供機構6が車載装置2に実装された構成でもよい。
【0074】
また、第1実施形態では、記憶部17に1つの第1データ18が記憶される構成であった。この点に関し、記憶部17に複数の第1データ18が記憶される構成とし、複数の第1データ18のうち使用するデータを選択できる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1、1A 芳香提供システム
6 芳香提供機構
10 位置検出部
13 ユーザ状態検出部
14、14A 芳香提供部
15 施設情報提供部
18 第1データ
19 第2データ
22 第3データ
図1
図2
図3
図4