(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】電動式ガス弁装置
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
F23K5/00 301D
(21)【出願番号】P 2018226693
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀幸
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-068356(JP,A)
【文献】特開2013-068355(JP,A)
【文献】実開昭61-141875(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0094199(US,A1)
【文献】特開昭63-270985(JP,A)
【文献】特開2018-013251(JP,A)
【文献】特開2018-128198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナへのガス供給路に介設される電動式ガス弁装置であって、バルブケーシング内に、電磁安全弁と、電動モータにより連動機構を介して軸方向に駆動される操作ロッド
とが設けられ
、電磁安全弁は、
バルブケーシング内の空間を軸方向一方の一次側ガス室と軸方向他方の二次側ガス室とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材と、軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、弁座部材の往動方向側の端面に一次側ガス室に面するように設けられた弁
座に対向する弁体と、弁体を復動方向に付勢して弁座に着座させる弁バネと、弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを備えるものにおいて、
弁座部材は、操作ロッドと一体に軸方向に移動するように操作ロッドに連結され、
電動モータを正転させて操作ロッドを往動方向に移動させることにより、弁座部材を往動方向に移動させ、弁座を弁体に当接させた状態で、弁体を電磁石に吸着片が当接する開弁位置まで弁バネの付勢力に抗して押動させ、この状態で電磁石に通電することにより弁体を開弁位置に吸着保持し、その後、電動モータを逆転させて操作ロッドを復動方向に移動させることにより、弁座部材を復動方向に移動させ、弁座を開弁位置に吸着保持される弁体から離隔させて、電磁安全弁を開弁させ、弁座部材に形成した弁孔を介して一次側ガス室から二次側ガス室にガスが流れるようにしたことを特徴とする電動式ガス弁装置。
【請求項2】
前記弁体に、前記弁孔に挿入される、復動方向に向けて先細のニードル部が連結され、開弁位置に吸着保持された弁体と前記弁座との距離が前記弁座部材の復動方向への移動で増加するのに伴い前記一次側ガス室から前記二次側ガス室に流れるガス流量が増加するようにしたことを特徴とする請求項1記載の電動式ガス弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナへのガス供給路に介設される電動式ガス弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動式ガス弁装置として、バルブケーシング内に、電磁安全弁と、電動モータにより連動機構を介して軸方向に駆動される操作ロッドとを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、電磁安全弁は、バルブケーシング内の空間を軸方向一方の一次側ガス室と軸方向他方の二次側ガス室とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材と、軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、弁座部材の往動方向側の端面に一次側ガス室に面するように設けられた弁座に対向する弁体と、弁体を復動方向に付勢して弁座に着座させる弁バネと、弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを備えている。また、弁座部材は、操作ロッドには連結されておらず、操作ロッドの往動方向への移動で操作ロッドに押されて往動方向に移動する。更に、バルブケーシング内に、弁座部材の復動方向への移動を所定の復動端位置で制止する弁座ストッパと、弁座部材を復動方向に付勢する弁座バネとが設けられている。
【0003】
上記従来例では、電動モータを正転させて操作ロッドを往動方向に移動させることにより、弁座部材を復動端位置から往動方向に押動させ、弁座を弁体に当接させた状態で、弁体を電磁石に吸着片が当接する開弁位置まで弁バネの付勢力に抗して押動させ、この状態で電磁石に通電することにより弁体を開弁位置に吸着保持する。その後、電動モータを逆転させて操作ロッドを復動方向に移動させることにより、弁座部材を弁座バネの付勢力で操作ロッドに追従して復動方向に移動させ、弁座を開弁位置に吸着保持される弁体から離隔させて、電磁安全弁を開弁させ、弁座部材に形成した弁孔を介して一次側ガス室から二次側ガス室にガスが流れるようにしている。
【0004】
ここで、電磁安全弁が低温で長期間閉弁状態に放置されると、弁体が弁座に張り付いてしまうことがある。そして、このような張り付きを生ずると、上記従来例では、弁体を開弁位置に吸着保持した後、操作ロッドを復動方向に移動させても、弁座バネの付勢力では弁座部材が復動方向に移動せず、電磁安全弁を開弁させられなくなる。尚、弁座バネの付勢力を弁体と弁座との張り付きを解除できるほど大きくすれば、電磁安全弁を開弁させることができる。然し、これでは、弁座部材を復動端位置から弁座バネの付勢力に抗して往動方向に移動させるために、電動モータの出力を大きくすることが必要になり、消費電力が増加して省電力の要請に反することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、弁体と弁座との張り付きを生じても、電磁安全弁を確実に開弁できるようにした、構造が簡単で安価な電動式ガス弁装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナへのガス供給路に介設される電動式ガス弁装置であって、バルブケーシング内に、電磁安全弁と、電動モータにより連動機構を介して軸方向に駆動される操作ロッドとが設けられ、電磁安全弁は、バルブケーシング内の空間を軸方向一方の一次側ガス室と軸方向他方の二次側ガス室とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材と、軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、弁座部材の往動方向側の端面に一次側ガス室に面するように設けられた弁座に対向する弁体と、弁体を復動方向に付勢して弁座に着座させる弁バネと、弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを備えるものにおいて、弁座部材は、操作ロッドと一体に軸方向に移動するように操作ロッドに連結され、電動モータを正転させて操作ロッドを往動方向に移動させることにより、弁座部材を往動方向に移動させ、弁座を弁体に当接させた状態で、弁体を電磁石に吸着片が当接する開弁位置まで弁バネの付勢力に抗して押動させ、この状態で電磁石に通電することにより弁体を開弁位置に吸着保持し、その後、電動モータを逆転させて操作ロッドを復動方向に移動させることにより、弁座部材を復動方向に移動させ、弁座を開弁位置に吸着保持される弁体から離隔させて、電磁安全弁を開弁させ、弁座部材に形成した弁孔を介して一次側ガス室から二次側ガス室にガスが流れるようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、弁体を開弁位置に吸着保持した後の電動モータの逆転により、弁座部材が連動機構と操作ロッドとを介して伝達される電動モータの力で復動方向に駆動される。従って、従来の如く弁座バネの付勢力で弁座部材を復動方向に移動させるものと異なり、弁体と弁座との張り付きを生じていても、弁座部材は電動モータの力で復動方向に移動し、電磁安全弁を確実に開弁することができる。更に、本発明によれば、弁座バネが不要となり、構造を簡素化してコストダウンを図ることもできる。
【0009】
また、開弁位置に吸着保持される弁体に対し弁座部材を離間又は接近させて、弁体と弁座との間の距離を増減することにより、一次側ガス室から二次側ガス室に流れるガス流量を調節することができる。特に、弁体に、弁孔に挿入される、復動方向に向けて先細のニードル部が連結され、開弁位置に吸着保持された弁体と弁座との距離が弁座部材の復動方向への移動で増加するのに伴い一次側ガス室から二次側ガス室に流れるガス流量が増加するように構成すれば、ガス流量を緻密に精度よく調節することができ有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の電動式ガス弁装置の切断側面図。
【
図2】(a)(b)第1実施形態の電動式ガス弁装置の作動を説明する切断側面図。
【
図3】本発明の第2実施形態の電動式ガス弁装置の切断側面図。
【
図4】(a)(b)第2実施形態の電動式ガス弁装置の作動を説明する切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、Aは、コンロに設けられるバーナBへのガス供給路Gに介設した本発明の実施形態の電動式ガス弁装置である。このガス弁装置Aは、ガス流入口1aとバーナBに連なるガス流出口1bとを有するバルブケーシング1を備えている。このバルブケーシング1内には、電磁安全弁2と、ステッピングモータ等から成る電動モータ3により連動機構4を介して軸方向に駆動される操作ロッド5
とが設けられている。
【0012】
電動モータ3は、バルブケーシング1の軸方向他方の端部に連動機構4を囲うようにして取付けられるボックス13の外端に搭載されている。連動機構4は、電動モータ3の出力軸31に連結したナット41と、ナット41に螺合し、操作ロッド5に連結される雄ネジ42とから成る送りねじ機構で構成されている。
【0013】
電磁安全弁2は、
バルブケーシング1内の空間をガス流入口1aに連通する軸方向一方の一次側ガス室11とガス流出口1bに連通する軸方向他方の二次側ガス室12とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材6と、軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、弁座部材6の往動方向側の端面に一次側ガス室11に面するように設けられた弁座2
1に対向する弁体22と、弁体22を復動方向に付勢して弁座21に着座させる弁バネ23と、弁体22に往動方向にのびる弁軸22aを介して連結した吸着片24と、吸着片24に対向する電磁石25とを備えている。そして、弁体22を吸着片24が電磁石25に当接する開弁位置(
図2(a)に示す位置)まで弁バネ23の付勢力に抗して押動させた状態で電磁石25に通電することにより、弁体22が開弁位置に吸着保持されるようにしている。また、バーナBに付設する図示省略した火炎検知素子により失火が検知されたときや消火操作を行ったときは、電磁石25への通電を停止し、弁体22を弁バネ23により弁座21に着座する閉弁位置に復帰させて、電磁安全弁2を閉弁させる。
【0014】
尚、弁座部材6には、一次側ガス室11と二次側ガス室12とを連通する弁孔61が形成されている。弁体22は、弁座21に弁孔61を閉塞するように着座するため、電磁安全弁2の閉弁状態では一次側ガス室11から二次側ガス室12にガスは流れない。また、弁座部材6の外周面には、弁座部材6の外周面とバルブケーシング1の内周面との間の隙間をシールするシール部材としてOリング62が装着されている。
【0015】
ここで、本実施形態において、弁座部材6は、操作ロッド5と一体に軸方向に移動するように操作ロッド5に連結されている。尚、本実施形態では、弁座部材6が操作ロッド5と一体であるが、操作ロッド5にこれとは別体の弁座部材を連結することも可能である。
【0016】
点火操作を行ったときは、先ず、電動モータ3を正転させて操作ロッド5を往動方向に移動させ、これにより弁座部材6を往動方向に移動させ、弁座21を弁体22に当接させた状態で、弁体22を開弁位置まで押動させ、電磁石25への通電で弁体22を開弁位置に吸着保持する。次に、電動モータ3を逆転させると共に、図示省略したイグナイタに通電する。この際、弁座部材6は、連動機構4と操作ロッド5とを介して伝達される電動モータ3の力で
図2(b)に示す如く復動方向に駆動される。従って、上記従来例の如く弁座バネの付勢力で弁座部材6を復動方向に移動させるものと異なり、弁体22と弁座21との張り付きを生じていても、弁座部材6は電動モータ3の力で復動方向に移動し、電磁安全弁2が確実に開弁される。そして、電磁安全弁2の開弁により、弁座部材6に形成した弁孔61を介して一次側ガス室11から二次側ガス室12にガスが流れ、バーナBに確実に点火することができる。更に、弁座バネが不要となり、構造を簡素化してコストダウンを図ることもできる。
【0017】
尚、開弁位置に吸着保持される弁体22に対し弁座部材6を離間又は接近させて、弁体22と弁座21との間の距離を増減することにより、一次側ガス室11から二次側ガス室12に流れるガス流量を調節することができる。然し、ガス流量を緻密に精度よく調節することは困難である。
【0018】
そこで、ガス流量の調節精度を向上できるようにした、
図3、
図4に示す第2実施形態について説明する。第2実施形態の基本的な構造は、上記第1実施形態のものと特に異ならず、第1実施形態と同様の部材、部位に上記と同一の符号を付している。第2実施形態の第1実施形態との相違点は、弁体22に、弁孔61に挿入される、復動方向に向けて先細のニードル部26を連結したことである。
【0019】
第2実施形態では、
図4(a)に示す如く弁体22を開弁位置に押動させた状態で電磁石25に通電することにより、弁体22を開弁位置に吸着保持した後、
図4(b)に示す如く弁座部材6を復動方向することで、弁体22と弁座21の距離が増加するのに伴い、一次側ガス室11から二次側ガス室12に流れるガス流量が増加する。そして、ニードル部26の働きによりガス流量を緻密に精度よく調節することができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、弁座部材6の外周面とバルブケーシング1の内周面との間の隙間をシールするシール部材としてOリング62を用いているが、弁座部材6の外周面とバルブケーシング1の内周面とに夫々内周部と外周部とを固定したベロフラムを用いてもよい。また、上記実施形態では、連動機構4を送りねじ機構で構成しているが、カム機構やラックピニオン機構等で連動機構4を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0021】
A…電動式ガス弁装置、B…バーナ、G…ガス供給路、1…バルブケーシング、11…一次側ガス室、12…二次側ガス室、2…電磁安全弁、21…弁座、22…弁体、22a…弁軸、23…弁バネ、24…吸着片、25…電磁石、26…ニードル部、3…電動モータ、4…連動機構、5…操作ロッド、6…弁座部材、61…弁孔。