(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】プレキャスト部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20220809BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D22/00 A
(21)【出願番号】P 2018228966
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 均
(72)【発明者】
【氏名】渡部 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 利孝
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-050420(JP,A)
【文献】特開平08-246415(JP,A)
【文献】特開2018-053709(JP,A)
【文献】特開平09-273117(JP,A)
【文献】特開昭54-102012(JP,A)
【文献】特開2004-225348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工箇所以外の場所において、所定長範囲を構成する複数のプレキャスト部材を仮置きし、前記所定長範囲内の不足部分にセメント系材料を打設して調整部材を成形する工程と、
施工箇所で仮置きに使用した前記プレキャスト部材と調整部材とを用いて連結作業を行う工程と、を備えることを特徴とするプレキャスト部材の接合方法。
【請求項2】
施工箇所以外の場所において複数のプレキャスト部材を仮置きする仮置工程と、
前記施工箇所において複数の前記プレキャスト部材を本組する本組工程と、を備えるプレキャスト部材の接合方法であって、
前記仮置工程では、
端面同士の間に隙間をあけた状態で、一対の前記プレキャスト部材を配置する部材仮配置作業と、
前記隙間の下面および側面に型枠を設置する型枠組立作業と、
前記隙間にセメント系材料を充填して調整部材を形成する部材形成作業と、
前記型枠を脱型する脱型作業とを行い、
前記本組工程では、
前記プレキャスト部材および前記調整部材を前記施工箇所に搬入する部材搬入作業と、
前記調整部材を介して一対の前記プレキャスト部材を連結する部材連結作業とを行うことを特徴とする、プレキャスト部材の接合方法。
【請求項3】
前記部材仮配置作業において、前記プレキャスト部材の前記隙間側と反対側の端面に他のプレキャスト部材を連結することを特徴とする、請求項2に記載のプレキャスト部材の接合方法。
【請求項4】
前記部材仮配置作業において、前記プレキャスト部材の端面の角度調整を行うことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のプレキャスト部材の接合方法。
【請求項5】
前記脱型作業において、一対の前記プレキャスト部材のうちの一方のプレキャスト部材を前記調整部材から取り外し、
前記部材搬入作業において、前記調整部材を他方の前記プレキャスト部材の端面に取り付けた状態で搬入することを特徴とする、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のプレキャスト部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工期短縮化を目的として、プレキャスト部材を採用する場合がある。例えば、供用中の道路橋において老朽化した床版を更新する工事では、交通量が少ない深夜に更新作業を行い、翌朝開放する等、工事を短時間で終了する必要があるため、床版としてプレキャスト部材を使用することで工期短縮化を図る場合がある。一方、プレキャスト部材は、製作時の収縮や、プレストレスの導入により変形が生じてしまう。特に超高強度繊維補強コンクリート製のプレキャスト部材は、部材の高強度化と軽量化を図ることができるものの、普通コンクリートに比べて収縮が大きいため、大型の部材を製作すると大きな変形が生じてしまう。このようなプレキャスト部材を利用して、出来形のまま端面同士を突き合わせて連結するドライジョイントを採用すると、各プレキャスト部材の誤差が加算されてしまい、最終的な出来形に大きな誤差が生じることが懸念される。そのため、橋梁の床版のように複数のプレキャスト部材を連結する場合には、最終的な構造物として出来形精度が確保できないおそれがある。このような問題は、橋梁の床版に限定されるものではなく、例えば、箱桁等、複数のプレキャスト部材を連結する他の構造物においても同様に生じるおそれがある。
【0003】
そのため、プレキャスト部材同士の間に現場打ちコンクリート等を打設するいわゆるウェットジョイントを採用することで、プレキャスト部材の誤差を吸収する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
ウェットジョイントは、架設現場において接合部にコンクリート等を打設して養生する必要があるため、手間がかかるとともに工期短縮化の妨げとなっていた。そのため、時間的制約がある場合には採用することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ウェットジョイントを用いないプレキャスト部材同士の接合技術を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プレキャスト床版を用いた床版の更新工事において、ウェットジョイントを用いない接合技術が実現できた。
前記課題を解決するための第一発明であるプレキャスト部材の接合方法は、施工箇所以外の場所において、所定長範囲を構成する複数のプレキャスト部材を仮置きし、前記所定長範囲内の不足部分にセメント系材料を打設して調整部材を成形する工程と、施工箇所で仮置きに使用した前記プレキャスト部材と調整部材とを用いて連結作業を行う工程とを備えている。
また、第二発明のプレキャスト部材の接合方法は、施工箇所以外の場所において複数のプレキャスト部材を仮置きする仮置工程と、前記施工箇所において複数の前記プレキャスト部材を本組する本組工程とを備えるものである。前記仮置工程では、端面同士の間に隙間をあけた状態で一対の前記プレキャスト部材を配置する部材仮配置作業と、前記隙間の下面および側面に型枠を設置する型枠組立作業と、前記隙間にセメント系材料を充填して調整部材を形成する部材形成作業と、前記型枠を脱型する脱型作業とを行う。また、前記本組工程では、前記プレキャスト部材および調整部材を前記施工箇所に搬入する部材搬入作業と、前記調整部材を介して一対の前記プレキャスト部材を連結する部材連結作業とを行う。
前記各プレキャスト部材の接合方法によれば、プレキャスト部材の端面を型枠としたマッチキャスト方式により成形されたプレキャスト製の調整部材を利用してプレキャスト部材を連結するため、プレキャスト部材の製造時の収縮やプレストレス導入時のソリ等により生じる誤差を吸収した状態で構造物を構築することができる。また、調整部材は、プレキャスト部材であるため、現場でウェットジョイントを用いる必要がなく、作業の簡易化を図ることができる。また、高品質施工を短時間で行うことが可能となる。
【0007】
なお、前記部材仮配置作業において、前記プレキャスト部材の前記隙間側と反対側の端面に他のプレキャスト部材を連結しておけば、本組工程において、所定の数のプレキャスト部材毎に調整部材を形成する場合であっても、複数のプレキャスト部材を連結することにより生じる誤差を吸収することが可能な調整部材が形成できる。
また、前記部材仮配置作業では、本組工程においてプレキャスト部材の端面に生じると予想される傾斜角となるように、前記プレキャスト部材の端面の角度調整を行うのが望ましい。このようにすれば、例えば、複数のプレキャスト部材を連結することにより生じる誤差を吸収する調整部材を、仮置工程において、1つのプレキャスト部材を配置することにより形成することができる。
また、前記脱型作業において、一対の前記プレキャスト部材のうちの一方のプレキャスト部材を前記調整部材から取り外し、前記部材搬入作業において、前記調整部材を他方の前記プレキャスト部材の端面に取り付けた状態で搬入してもよい。このようにすれば、本組工程における作業工数を減らすことで、さらなる工期短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプレキャスト部材の接合方法によれば、プレキャスト部材の製造時に生じる誤差や、プレストレス導入時に生じる誤差等を吸収して高品質な構造物を施工することが可能となり、かつ、ウェットジョイントを採用した場合に比べて作業の簡易化が可能となり、ひいては、工期短縮化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態のプレキャスト床版を示す図であって、(a)は下側から望む平面図、(b)は断面図である。
【
図2】プレキャスト床版を仮置きした状態を示す図であって(a)は側面図、(b)は平面図である。
【
図3】型枠を示す図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
第一実施形態では、供用中の橋梁の老朽化した床版を更新する事業において、プレキャスト床版(プレキャスト部材)1を使用することで工期短縮化を図る場合について説明する。プレキャスト床版1は、プレストレスが導入されたコンクリート部材からなる。床版の更新事業では、複数のプレキャスト床版1を橋軸方向に連結する。プレキャスト床版1は、
図1に示すように、下面に格子状のリブ11が形成されている。また、プレキャスト床版1の下面の端部には、接合部12が形成されている。接合部12には、ボルト挿通孔13が形成されている。なお、接合部12の形成箇所は、プレキャスト床版1の下面に限定されるものではない。プレキャスト床版1は、隣り合う他のプレキャスト床版1の端に突き合わせた状態で、両プレキャスト床版1のボルト挿通孔13に挿通したボルトBにより連結する。
プレキャスト床版1には、製作時の収縮(製造誤差)やプレストレス導入によりソリ等の変形が生じている。そのため、複数のプレキャスト床版1をドライジョイントで連結すると、プレキャスト床版1の誤差(ソリ)が累積し、橋梁の端部において大きな誤差が生じてしまう。本実施形態では、プレキャスト床版1に生じた変形を吸収することを可能としたプレキャスト部材の接合方法および調整部材3を採用する。
【0012】
本実施形態のプレキャスト部材の接合方法は、所定長範囲に対応する数のプレキャスト床版1を仮置きする仮置工程と、仮置き工程で仮置きしたプレキャスト床版1を本組する本組工程とを備えている。
仮置工程では、施工箇所以外の場所において、部材仮配置作業と、型枠組立作業と、部材形成作業と、脱型作業とを行う。
部材仮配置作業では、
図2(a)および(b)に示すように、一対のプレキャスト床版1(第一接合部用床版14および第二接合部用床版15)を互いの端面同士の間に隙間Sをあけた状態で配置する。このとき、第一接合部用床版14の他方の端面(第二接合部用床版15と反対側の端面)および第二接合部用床版15の他方の端面(第一接合部用床版14と反対側の端面)には、それぞれ他のプレキャスト床版1(一般部用床版16)を連結する。なお、第一接合部用床版14および第二接合部用床版15に接合する一般部用床版16の数は限定されるものではない。また、一般部用床版16は、必要に応じて設置すればよい。
【0013】
型枠組立作業では、
図3(a)および(b)に示すように、一対のプレキャスト床版1同士の間(第一接合部用床版14と第二接合部用床版15との間)に形成された隙間S(所定長範囲内の不足部分)の下面および側面に型枠2を設置する。
隙間Sの下面に設置する底面型枠21は、鋼板により形成されている。なお、底面型枠21を構成する材料は限定されるものではない。底面型枠21の橋軸方向端部の上面には、第一接合部用床版14の端部および第二接合部用床版15の端部が載置されている。底面型枠21の上面と各プレキャスト床版1の下面との間には、止水ゴムまたはグリスを介在し、水密性を確保する。なお、底面型枠21とプレキャスト床版1は、必要に応じてボルト等の治具を介して固定する。
【0014】
隙間Sの側面に設置する側面型枠22は、断面L字状の構成部材からなる。側面型枠22は、一方の片(底板23)が下側、他方の片(側板24)が隙間Sの側面に面するように配設する。側板24の橋軸方向端部は、プレキャスト床版1の隙間S側の端部に当接している。側板24には、プレキャスト床版1との当接箇所に対応して、長穴からなる挿通孔25が一つずつ形成されている。すなわち、側板24には、橋軸方向の前端部と後端部にそれぞれ挿通孔25(計二つの挿通孔25)が形成されている。側面型枠22は、挿通孔25に挿通したボルトBをプレキャスト床版1に螺合することにより、プレキャスト床版1に固定する。このとき、側面型枠22とプレキャスト床版1との間には、止水ゴムまたはグリスを介設して水密性を確保する。なお、挿通孔25は、必ずしも長孔である必要はなく、例えば、ボルトBの軸部分の外径よりも大きめな円形であってもよい。
【0015】
なお、隙間Sには、隣接するプレキャスト床版1のボルト挿通孔13の位置に対応して、筒体31を配設しておく。筒体31は、ボルト挿通孔13と同等の内径を有しているとともに、部材形成作業において打設されるコンクリートの圧力によって変形することがない強度を有している。なお、筒体31を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、鋼管や塩化ビニル管等を使用すればよい。
また、本実施形態では、第一接合部用床版14の端面および型枠2の内面に剥離剤(図示せず)を塗着しておく。なお、剥離剤は、第二接合部用床版15の端面にも塗着しておいてもよい。
【0016】
部材形成作業では、型枠2により囲まれた領域(第一接合部用床版14および第二接合部用床版15との隙間S)にコンクリートを充填し、所定の強度が発現するまで養生する。コンクリートが硬化すると、プレキャスト床版1(第一接合部用床版14または第二接合部用床版15)との突き合わせ面がマッチキャスト方式により成形された調整部材3が形成される。なお、調整部材3を構成する材料は、セメント系材料であればコンクリートに限定させるものではなく、例えばモルタルや無収縮モルタルであってもよい。また、調整部材3には、必要に応じて鉄筋を配筋してもよい。
【0017】
脱型作業では、隙間Sに充填したコンクリートに所定の強度が発現した後、型枠2を脱型する。本実施形態では、型枠2の脱型にともにない、第一接合部用床版14(一対のプレキャスト床版1のうちの一方のプレキャスト床版1)を調整部材3から取り外し、第二接合部用床版15(他方のプレキャスト床版1)の端面に調整部材3を残置させておく。なお、調整部材3は、必ずしも第二接合部用床版15の端面に残置させておく必要はなく、両プレキャスト床版1から取り外してもよい。
脱型作業では、脱型治具4を利用する。脱型治具4は、
図4に示すように、調整部材3と第一接合部用床版14に固定する。調整部材3および第一接合部用床版14には、それぞれ予めインサート32、17が埋め込まれており、治具本体41をインサート32,17に螺合したボルト42を介して固定する。治具本体41は、断面視L字状の構成部材からなる。調整部材3に固定された治具本体41と、第一接合部用床版14に固定された治具本体41は、互いに対向している。調整部材3に固定された治具本体41には、第一接合部用床版14側に突出する長ボルト43が進退可能に設けられている。長ボルト43を第一接合部用床版14側に伸ばすと、第一接合部用床版14に固定された治具本体41に対して押圧力が付与されるため、第一接合部用床版14が、調整部材3から離隔する。なお、調整部材3を両プレキャスト床版1から取り外す場合等には、脱型治具4を第一接合部用床版14と第二接合部用床版15に固定してもよい。
【0018】
前記本組工程では、部材搬入作業と部材連結作業とを行う。
部材搬入作業では、仮置工程で使用した複数のプレキャスト床版1と、仮置き工程で形成した調整部材3とを施工箇所に搬入する。このとき、調整部材3は、第二接合部用床版15の端面に取り付けた状態で搬入する。
部材搬入時には、
図5に示すように、仮止め治具5を介して調整部材3を第二接合部用床版15の端面に固定しておく。仮止め治具5は、調整部材3および第二接合部用床版15に予め埋め込まれたインサート32,17に固定する。すなわち、仮止め治具5は、調整部材3および第二接合部用床版15に跨って配設されていることで、調整部材3と第二接合部用床版15とを連結している。
【0019】
部材連結作業では、
図1(a)および(b)に示すように、調整部材3を介して第一接合部用床版14と第二接合部用床版15とを連結する。第一接合部用床版14と第二接合部用床版15との間に調整部材3を介設した状態で、第一接合部用床版14のボルト挿通孔13、調整部材3のボルト挿通孔(筒体31)および第二接合部用床版15のボルト挿通孔13にボルトBを挿通し、ボルトBをナットNに螺着することで、第一接合部用床版14と第二接合部用床版15とを連結する。
また、第一接合部用床版14および第二接合部用床版15には、仮置き工程で使用した一般部用床版16を連結する。
【0020】
本実施形態のプレキャスト部材の接合方法および調整部材3によれば、プレキャスト床版1の端面を型枠としたマッチキャスト方式により成形されたプレキャスト製の調整部材3を利用してプレキャスト床版1を連結するため、プレキャスト床版1の製造時の収縮やプレストレス導入時のソリ等により生じる誤差等を吸収した状態でプレキャスト床版1を連結することができる。
また、調整部材3は、施工箇所以外で成形したプレキャスト部材であるため、現場でウェットジョイントを用いる必要がなく、作業の簡易化を図ることができるとともに、高品質施工を短時間で行うことが可能となる。
調整部材3を第二接合部用床版15の端面に取り付けた状態で搬送するため、薄厚の調整部材3が輸送時に損傷する危険性を低減することができる。また、調整部材3を個別に輸送するためのスペースを確保する必要もない。
【0021】
<第二実施形態>
第二実施形態では、第一実施形態と同様に、供用中の橋梁の老朽化した床版を更新する事業において、プレキャスト床版1に生じた変形を吸収することを可能としたプレキャスト部材の接合方法および調整部材3を使用する場合について説明する。
プレキャスト部材の接合方法は、所定長範囲に対応する数のプレキャスト床版1を仮置きする仮置工程と、仮置き工程で仮置きしたプレキャスト床版1を本組する本組工程とを備えている。
仮置工程では、施工箇所以外の場所において、部材仮配置作業と、型枠組立作業と、部材形成作業と、脱型作業とを行う。
【0022】
部材仮配置作業では、互いの端面同士の間に隙間Sをあけた状態で、一対のプレキャスト床版1(第一接合部用床版14および第二接合部用床版15)を配置する。
このとき、一対のプレキャスト床版1の突き合わせ面側の端部には、
図6に示すように、傾き調整部材6を配設する。傾き調整部材6は、所定長範囲に対応する数のプレキャスト床版1を連結した場合に、接合部において生じることが予想されるプレキャスト床版1のソリの高さとなるように、プレキャスト床版1の端部を持ち上げる部材である。すなわち、第一接合部用床版14および第二接合部用床版15の隙間S側(突き合わせ面側)の端部は、傾き調整部材6により持ち上げられた状態で、端面の角度調整がなされている。傾き調整部材6は、高さ調整が可能となるように、伸縮可能に構成されていてもよい。このとき、隙間Sの下面には、止水板61を配設しておく。
この他、仮置き工程の詳細(型枠組立作業、部材形成作業および脱型作業の内容)は、第一実施形態と同様なため、詳細な説明は省略する。
また、本組工程の内容も第一実施形態と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0023】
本実施形態のプレキャスト部材の接合方法および調整部材3によれば、プレキャスト床版1の端面の角度調整を行った状態で調整部材3をマッチキャスト方式で成形するため、仮置工程において、第一接合部用床版14および第二接合部用床版15に一般部用床版16を連結する必要がない。そのため、仮置工程において、一般部用床版16を必要数接合するために要する手間を省略することができる。また、仮置き工程の作業箇所において、所定長範囲に対応する作業スペースを確保できない場合であっても、調整部材3を成形することができる。
この他の第二実施形態の作用効果は、第一実施形態と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0024】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、予めプレストレスが導入された複数のプレキャスト床版1を、現場において橋軸方向に連結する場合について説明したが、プレストレスは現場にて導入してもよい。例えば、複数のプレキャスト床版1を所定の位置に設置した後、プレキャスト床版1および調整部材3に予め設けておいた緊張材配置用貫通孔に緊張材(PC鋼線、PC鋼棒、PC鋼より線等)を挿通させて現場においてプレストレスを導入してもよいし、または、アウトケーブル(外ケーブル)によって現場においてプレストレスを導入してもよい。プレキャスト床版1同士の接合部に調整部材3が介在されているため、プレキャスト床版1の製作時の変位(誤差)を調整部材3により吸収し、プレストレスを有効に断面内に作用させることができる。
また、前記実施形態では、プレキャスト床版1を用いた床版の更新事業において、本発明のプレキャスト部材の接合方法および調整部材3を採用する場合について説明したが、プレキャスト部材の接合方法および調整部材3が適用可能な部材は床版に限定されるものではない。例えば、プレキャスト製の箱桁同士の接合部において、本発明のプレキャスト部材の接合方法および調整部材を採用してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 プレキャスト床版(プレキャスト部材)
14 第一接合部用床版
15 第二接合部用床版
16 一般部用床版
2 型枠
3 調整部材
4 脱型治具
5 仮止め治具
6 傾き調整部材