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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20220809BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220809BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20220809BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652F
H01L29/78 653C
H01L29/78 652D
H01L29/78 652C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 658G
H01L29/78 655A
H01L29/78 652S
H01L29/78 657A
H01L29/44 Y
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018244512
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020107707
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】前川 伸絵
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-143522(JP,A)
【文献】特開2016-001719(JP,A)
【文献】特開2018-129350(JP,A)
【文献】特開2020-025050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面とを備える半導体基板と、
前記半導体基板の内部に形成された第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域と前記第1主面との間の前記半導体基板に形成された、前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体領域と、
平面視において前記半導体基板の前記第1主面に沿う第1方向に沿ってストライプ状に形成され、かつ、前記第1主面から前記第2主面へ向かう第2方向に沿って形成された第1トレンチと、
前記第1トレンチ内に絶縁膜を介して設けられた第1ゲート電極と、
平面視において、前記第1主面に前記第1方向に沿って所定の間隔で複数形成され、前記第1トレンチの側面と接するように形成された複数の前記第1導電型の第3半導体領域と、
前記第2主面に形成された前記第2導電型の第4半導体領域と、
平面視において、前記第1方向に沿ってストライプ状に形成され、かつ、前記第2方向に沿って形成された第3トレンチと、
前記第3トレンチ内に絶縁膜を介して設けられた第3ゲート電極と、
平面視において、前記第1主面に前記第1方向に沿って所定の間隔で複数形成され、前記第3トレンチの側面と接するように形成された複数の前記第1導電型の第6半導体領域と、
を有し、
前記第1ゲート電極は、平面視において、
前記複数の第3半導体領域のそれぞれの隣に位置する第1部分と、
前記第1主面のうち、前記複数の第3半導体領域間に位置する領域の隣に位置する第2部分と、
を有し、
前記第1ゲート電極の前記第2部分は、前記第2方向において、前記第1ゲート電極の前記第1部分より短い長さを有
前記第3ゲート電極は、平面視において、
前記複数の第6半導体領域のそれぞれの隣に位置する第5部分と、
前記第1主面のうち、前記複数の第6半導体領域間に位置する領域の隣に位置する第6部分と、
を有し、
前記第6部分は、前記第2方向において、第5部分より短い長さを有し、
前記第6半導体領域は、平面視において、前記複数の第3半導体領域間に位置する前記領域を通過し、かつ、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向に沿って延在する仮想線上に位置する半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1ゲート電極の前記第2部分の側面には、前記第3半導体領域が形成されない半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、
平面視において前記第1方向に沿ってストライプ状に形成され、かつ、前記第2方向に沿って形成された第2トレンチと、
前記第2トレンチ内に絶縁膜を介して設けられた第2ゲート電極と、
を更に有し、
前記第2ゲート電極は、平面視において、
前記複数の第3半導体領域のそれぞれの隣に位置する第3部分と、
前記第1主面のうち、前記複数の第3半導体領域間に位置する領域の隣に位置する第4部分と、
を有し、
前記第2ゲート電極の前記第4部分は、前記第2方向において、前記第2ゲート電極の前記第3部分より短い長さを有する半導体装置。
【請求項4】
請求項記載の半導体装置において、
前記第導電型の第5半導体領域と前記第1導電型の第7半導体領域とを更に有し、
前記第7半導体領域は前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極とに挟まれる領域に形成され、
前記第5半導体領域は前記第1主面に形成され、前記第1ゲート電極の第1部分と前記第2ゲート電極の第3部分とに挟まれる領域においては、前記第3半導体領域と前記第7半導体領域との間に形成される半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1トレンチ内に、前記第1ゲート電極とは異なるボトム電極を更に有し、
前記ボトム電極は、前記第2方向において、
前記第1ゲート電極の前記第1部分と、前記第1トレンチの前記第2主面側の端部との間に形成される半導体装置。
【請求項6】
請求項記載の半導体装置において、
前記ボトム電極は、前記第1ゲート電極の前記第2部分と、前記第1トレンチの前記第2主面側の端部との間に更に形成される半導体装置。
【請求項7】
請求項記載の半導体装置において、
前記ボトム電極には、エミッタ電位が印加するよう構成される半導体装置。
【請求項8】
請求項記載の半導体装置において、
前記第1ゲート電極には第1ゲート電位が印加され、
前記ボトム電極には、前記第1ゲート電位とは独立して制御される第2ゲート電位が印加するよう構成される半導体装置。
【請求項9】
請求項記載の半導体装置において、
前記第1半導体領域、前記第1ゲート電極、前記ボトム電極、及び前記第4半導体領域はトランジスタを構成し、
前記トランジスタは前記第1ゲート電位及び前記第2ゲート電位がハイレベルの時にオンし、前記第1ゲート電位及び前記第2ゲート電位がローレベルの時にオフし、
前記第2ゲート電位は、前記第1ゲート電位がハイレベルからローレベルに変化が完了する時刻よりも早く、ハイレベルからからローレベルに変化するよう構成される半導体装置。
【請求項10】
請求項1の半導体装置において、
記第半導体領域は、平面視において、前記複数の第6半導体領域間に位置する前記領域を通過し、かつ、前記第3方向に沿って延在する仮想線上に位置する半導体装置。
【請求項11】
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面とを備える半導体基板と、
前記半導体基板の内部に形成された第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域と前記第1主面との間の前記半導体基板に形成された、前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2主面に形成された前記第2導電型の第3半導体領域と、
を有し、
前記半導体基板は、平面視において、第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域と、前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域と、前記第1領域、前記第2領域および前記第3領域とは異なる第4領域と、を有し、
前記第1領域は、
平面視において前記半導体基板の前記第1主面に沿う第1方向に沿って形成され、かつ、前記第1主面から前記第2主面へ向かう第2方向に沿って形成された第1トレンチと、
前記第1トレンチ内部に、絶縁膜を介して形成され、第1深さを持つ第1ゲート電極と、
平面視において、前記第1主面に形成され、前記第1トレンチと接するように形成された前記第1導電型の第4半導体領域と、
を備え、
前記第2領域は、
前記第1方向および前記第2方向に沿って形成された第2トレンチと、
前記第2トレンチ内部に、絶縁膜を介して形成され、第2深さを持つ第2ゲート電極と、
を備え、
第1ゲート電極の第1深さは第2ゲート電極の第2深さよりも深
前記第3領域は、
平面視において、前記半導体基板の前記第1主面に沿う前記第1方向に沿って形成され、かつ、前記第2方向に沿って形成された第3トレンチと、
前記第3トレンチ内部に、絶縁膜を介して形成され、第3深さを持つ第3ゲート電極と、
平面視において、前記第1主面に形成され、前記第3トレンチと接するように形成された前記第1導電型の第5半導体領域と、
を備え、
前記第4領域は、
前記第1方向および前記第2方向に沿って形成された第4トレンチと、
前記第4トレンチ内部に、絶縁膜を介して形成され、第4深さを持つ第4ゲート電極と、
を備え、
第3ゲート電極の第3深さは第4ゲート電極の第4深さよりも深く、
前記第5半導体領域は、平面視において、前記第2領域を通過し、かつ、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向に沿って延在する仮想線上に位置する
半導体装置。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置において、
前記第1トレンチと前記第2トレンチは同一のトレンチであり、
前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極は前記同一のトレンチ内部に形成される半導体装置。
【請求項13】
請求項11記載の半導体装置において、
前記第1領域および前記第2領域はそれぞれ複数存在し、前記第1方向に沿って交互に配置される半導体装置。
【請求項14】
請求項11記載の半導体装置において、
ボトム電極を更に有し、前記ボトム電極は、前記第2方向において、前記第1ゲート電極と前記第1トレンチの前記第2主面側の端部との間と、前記第2ゲート電極と前記第2トレンチの前記第2主面側の端部との間とに形成される半導体装置。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置において、
前記ボトム電極にはエミッタ電位が印加するよう構成される半導体装置。
【請求項16】
(a)第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面とを備える第1導電型の半導体基板の前記第1主面に、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第1半導体領域を形成する工程と、
(b)前記第1主面に、平面視において、前記第1主面に沿う第1方向に沿って形成され、かつ、前記第1主面から前記第2主面へ向かう第2方向に沿って形成された第1トレンチおよび第2トレンチを形成する工程と、
(c)前記第1トレンチが形成された領域のうち第1領域に、前記第2方向に第1長さをもつ第1ゲート電極および前記第2トレンチが形成された領域のうち第3領域に、前記第2方向に第3長さをもつ第3ゲート電極を形成する工程と、
(e)前記第1トレンチが形成された領域で前記第1領域とは異なる第2領域に、前記第2方向に第2長さをもつ第2ゲート電極および前記第2トレンチが形成された領域で前記第3領域とは異なる第4領域に、前記第2方向に第4長さをもつ第4ゲート電極を形成する工程と、
(f)前記第1主面で、前記第1領域と接する領域に前記第1導電型の第2半導体領域および前記第3領域と接する領域に前記第1導電型の第4半導体領域を形成する工程と、
(g)前記第2主面に、前記第1導電型の第3半導体領域を形成する工程と、
を有し、
前記第1ゲート電極の第1長さは、前記第2ゲート電極の第2長さより
前記第3ゲート電極の第3長さは、前記第4ゲート電極の第4長さよりも長く、
前記第4半導体領域は、平面視において、前記第2領域を通過し、かつ、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向に沿って延在する仮想線上に位置する
半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の半導体装置の製造方法において、
(h)(e)工程の前に、前記第2領域に、第1ボトム電極を形成する工程
を更に有し、
前記第1ボトム電極は、前記第2方向において、前記第1ゲート電極と前記第1トレンチの前記第2主面側の端部との間に形成される半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の半導体装置の製造方法において、
(i)(c)工程の前に、前記第1領域に、第2ボトム電極を形成する工程を更に有し、
前記第2ボトム電極は、前記第2方向において、前記第1ゲート電極と前記第1トレンチの前記第2主面側の端部との間に形成され、
前記第1及び第2ボトム電極には、エミッタ電位が印加される半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を備えた半導体装置に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
オン抵抗の低いIGBT、すなわち、順方向飽和電圧Vce(sat)の低いIGBT
として、トレンチゲート型IGBTが広く使用されている。トレンチゲート型IGBTの構造の一例として、隣り合う2つのトレンチがそれぞれゲート電位に接続されたGG型構造IGBTが知られている。
【0003】
特開2012-256839号公報(特許文献1)には、IE型IGBTにおいて、エミッタ電極に接続されたアクティブセル領域を、エミッタ領域を有するアクティブセクションとインアクティブセクションに分割することでIE(Injection Enhancement)効果を高める技術が開示されている。IE効果とは、IGBTがオン状態のときに正孔が排出されにくくすることでドリフト領域に蓄積される電荷の濃度を高めて、IGBTのオン電圧を下げる効果である。IE型IGBTとは、IE効果を利用したIGBTを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-256839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トレンチ構造を有するIGBTは、 ゲート電極がシリコン酸化膜などの絶縁膜で絶縁されている構造を持つため、エミッタ電位電極、コレクタ電位電極、ゲート電位電極の間に寄生の静電容量が発生する。これらは、入力容量Cies、帰還容量Cres、出力容量Coesと呼ばれ、スイッチング速度やスイッチング損失の量に影響を及ぼす。特にIGBTなどのパワーMOSFETにおいては、これら寄生の静電容量がスイッチング動作の特性に及ぼす影響が大きいため、削減することが求められる。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろ
う。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態である半導体装置は、平面視において、複数のエミッタ領域が形成された領域の隣に位置する第1部分と、半導体基板の主面のうち、複数のエミッタ領域間に位置する領域の隣に位置する第2部分を有するゲート電極を備える。ゲート電極の第2部分は、半導体基板の主面から裏面へ向かう方向において、第1部分より短い長さを有する。
【0008】
別実施の形態における半導体装置は、第1領域と第2領域を有し、第1領域には第1長さを持つ第1ゲート電極と、エミッタ領域が形成され、第2領域には、第1長さよりも短い第2長さを持つ第2ゲート電極が形成される。
【0009】
別実施の形態における半導体装置の製造方法は、第1長さを有する第1ゲート電極を形成する工程と、第1長さよりも短い第2長さを有する第2ゲート電極を形成する工程とを有する。第1ゲート電極の側方には複数のエミッタ領域が形成される。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、IGBTのスイッチング特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態1の半導体チップの全体の平面図である。
図2図2は、実施の形態1の半導体チップの要部の平面図である。
図3図3は、図2の半導体チップのA-A線に沿った断面図である。
図4図4は、図2の半導体チップのB-B線に沿った断面図である。
図5図5は、図2の半導体チップをC-C線に沿って断面した場合の、半導体チップの鳥瞰図である。
図6図6(A)は、実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すA-A断面図であり、図6(B)は実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すB-B断面図である。
図7図7(A)は、実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すA-A断面図であり、図7(B)は実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すB-B断面図である。
図8図8(A)は、実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すA-A断面図であり、図8(B)は実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すB-B断面図である。
図9図9(A)は、実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すA-A断面図であり、図9(B)は実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すB-B断面図である。
図10図10(A)は、実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すA-A断面図であり、図10(B)は実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すB-B断面図である。
図11図11(A)は、実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すA-A断面図であり、図11(B)は実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すB-B断面図である。
図12図12(A)は、実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すA-A断面図であり、図12(B)は実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すB-B断面図である。
図13図13(A)は、実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すA-A断面図であり、図13(B)は実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すB-B断面図である。
図14図14(A)は、実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すA-A断面図であり、図14(B)は実施の形態1の半導体チップの製造工程を示すB-B断面図である。
図15図15は、IGBTの動作時における容量成分を説明するための説明図である。
図16図16(A)は試料Aの断面図、図16(B)は試料Bの断面図、図16(C)は試料Cの断面図、図16(D)は試料Dの断面図、図16(E)は試料Eの断面図であり、図16(F)~図16(H)は、ゲート電極の長さと、寄生の静電容量との関係とを計算したシミュレーション結果である。
図17図17は、本発明者の検討内容を説明する説明図である。
図18図18(A)は、実施の形態2の半導体チップのA-A線に沿った断面図であり、図18(B)は、実施の形態2の半導体チップのB-B線に沿った断面図である。
図19図19は、実施の形態2の半導体チップのC-C線に沿った断面図である。
図20図20は、実施の形態3の半導体チップの全体の平面図である。
図21図21は、実施の形態3の半導体チップに係る、ゲート電極の長さと、正孔濃度分布との関係とを計算したシミュレーション結果である。
図22図22は、実施の形態4の半導体チップの全体の平面図である。
図23図23は、実施の形態4の半導体チップに係るゲート電位の制御方法を示すタイミングチャートである。
図24図24は、実施の形態4の変形例の半導体チップに係るゲート電位の制御方法を示すタイミングチャートである。
図25図25は、実施の形態5の半導体チップの要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実
施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なも
のではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。ま
た、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及す
る場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、
その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下
の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合お
よび原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するため
の全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は
省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の
説明を原則として繰り返さない。
【0014】
また、実施の形態で用いる図面においては、図面を見易くするためにハッチングを省略
する場合もある。
【0015】
本願明細書では、半導体の導電型がp型であるとは、正孔の濃度が電子の濃度よりも高く、正孔が主要な電荷キャリアであることを意味する。また、p型の半導体は、ホウ素やガリウムなどの不純物が含まれた半導体の領域を意味する。本願明細書において、半導体の導電型がn型であるとは、電子の濃度が正孔の濃度よりも高く、電子が主要な電荷キャリアであることを意味する。また、n型の半導体は、例えばリンやヒ素などの不純物が含まれた半導体の領域を意味する。
【0016】
また、本願明細書では、IGBTがオフ状態からオン状態に切り替わるスイッチング動
作を、「ターンオン」と称し、IGBTがオン状態からオフ状態に切り替わるスイッチン
グ動作を、「ターンオフ」と称する。
【0017】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら実施の形態1の半導体装置について詳細に説明する。本実施の形態1の半導体装置は、GG型構造を基本構造として開発された、新しい構造のIGBTを備えた半導体チップを有する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る半導体チップCHPの全体の平面図である。図1に示すように、半導体チップCHPの大部分はエミッタ電位電極EEで覆われる。また、エミッタ電位電極EEの外周には、エミッタ電位電極EEを囲うようにゲート電位電極GEが形成される。エミッタ電位電極EEの中央部付近にある破線で囲まれた領域はエミッタパッドEPであり、ゲート電位電極GEの破線で囲まれた領域はゲートパッドGPである。半導体チップCHPの上面は保護膜PIQ(図1では不図示)によって覆われるが、エミッタパッドEPおよびゲートパッドGPの上面は保護膜PIQが除去される。エミッタパッドEPおよびゲートパッドGPにはワイヤボンディングまたはクリップなどの外部接続端子が接続され、半導体チップCHPは外部接続端子を通して他チップまたは配線基板などと電気的に接続する。
【0019】
図2は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップCHPの要部の平面図である。半導体チップCHPは半導体基板SBを備え、図2で示される平面は、半導体基板SBの上面を示す。
【0020】
なお、図2は平面図であるが、図面を見易くするため、ゲート電極G1にハッチングを付している。また、図2では、保護膜PIQ、エミッタ電位電極EE、層間絶縁膜ILおよびゲート絶縁膜GF1の図示を省略している。
【0021】
本実施の形態の半導体基板SBは、図1に示されるゲート電位電極GEに電気的に接続されたトレンチ構造のゲート電極G1を複数有する。複数のゲート電極G1はY方向に沿ってそれぞれストライプ状に形成され、ゲート電極G1が延在する方向(Y方向)と交差するX方向で互いに隣接して配置される。図示しないが、ゲート電極G1は、半導体チップCHPの外周部において図1に示されるゲート電位電極GEと電気的に接続されており、IGBTのスイッチング動作時にゲート電位が印加される。
【0022】
また、半導体基板SBは、IGBTの主動作を行うアクティブセル領域AC、および、アクティブセル領域AC以外のインアクティブセル領域IACを有する。アクティブセル領域ACは、互いに隣り合う2つのゲート電極G1の間に形成され、エミッタ領域NEおよびコンタクトホールCHを有する領域である。インアクティブセル領域IACは、アクティブセル領域ACと同様に2つのゲート電極G1の間に形成された領域であるが、アクティブセル領域ACとは異なる領域であり、エミッタ領域NE及びコンタクトホールCHを有しない領域である。インアクティブセル領域IACには、半導体基板SB内部にフローティング領域PF(図2では不図示)が形成されている。
【0023】
半導体基板SBの表面には、p型の不純物領域であるベース領域PBが形成される。ベース領域PBは、例えばホウ素やガリウムなどの不純物が注入された領域であり、不純物濃度は例えば6×1016Atoms/cm程度とすることができる。ベース領域PBは、後述するコンタクトホールCHよりも深く、ボディ領域よりも浅い位置に形成される。また、アクティブセル領域ACでは、ベース領域PBの表面に複数のn型のエミッタ領域NEが形成される。エミッタ領域NEは、ゲート電極G1が内部に形成されるトレンチの側面と接するように形成される。更に、エミッタ領域NEは、Y方向において、それぞれ一定の間隔で互いに離間して配置される。言い換えれば、複数のエミッタ領域NEは、ベース領域PBによってY方向で互いに分離されるように形成される。
【0024】
アクティブセル領域ACでは、半導体基板SBの表面にコンタクトホールCHが形成される。図示しないが、コンタクトホールCH内部にはエミッタ電位電極EEが埋め込まれ、エミッタ電位電極EEから半導体基板SBへ電子が供給される。
【0025】
次に、図3から図5を用いて、本実施の形態の半導体チップCHPの断面構造を説明する。図3は、図2の半導体チップCHPのA-A線に沿った断面図である。A-A断面は、アクティブ領域ACであり、かつエミッタ領域NEが形成された領域を通る断面である。
【0026】
半導体基板SBには、後述するエミッタ領域NEよりも低濃度のn型の不純物領域であるドリフト領域NDが形成される。ドリフト領域NDは、例えばリンやヒ素などの不純物が注入された領域であり、不純物濃度は例えば1.5×1014Atoms/cm程度とすることができる。半導体基板SBの裏面側には、ドリフト領域NDよりも高い不純物濃度(例えば、6.0×1016Atoms/cm)を有するn型のフィールドストップ領域NS、およびp型のコレクタ領域PCが形成される。コレクタ領域PCの不純物濃度は、例えば3.0×1017Atoms/cm程度である。更に、コレクタ領域PCの表面に、金属膜からなるコレクタ電位電極CEが形成される。コレクタ領域PCには、コレクタ電位電極CEを介して、IGBTのスイッチング動作時にコレクタ電位が印加される。
【0027】
ベース領域PBが形成された半導体基板SBの表面には、トレンチT1が形成される。トレンチT1の内部には、ゲート絶縁膜GF1を介してゲート電極G1が埋め込まれる。上述したように、ゲート電極G1はゲート電位電極GEと接続しており、ゲート電位が印加される。また、ゲート絶縁膜GF1は、例えば酸化シリコン膜であり、ゲート電極G1は、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。
【0028】
アクティブセル領域ACにおいて、2つのトレンチT1の間の半導体基板SBには、ドリフト領域NDよりも高い不純物濃度(例えば、4×1015Atoms/cm程度)を有するn型のホールバリア領域NHBが形成される。ホールバリア領域NHBは、トレンチT1と同じか、トレンチT1よりも深い深さまで形成される。ホールバリア領域NHBと半導体基板SBの表面との間には、p型のベース領域PBが形成される。アクティブセル領域ACのp型のベース領域PBには、ホールバリア領域NHBよりも高い不純物濃度(例えば4×1019Atoms/cm程度)を有するn型のエミッタ領域NEが形成される。インアクティブセル領域IACの半導体基板SBには、フローティング領域PFが形成される。フローティング領域PFと半導体基板SBの表面との間には、p型のベース領域PBが形成される。
【0029】
エミッタ領域NE上およびベース領域PB上には、ゲート絶縁膜GF1の一部が形成され、このゲート絶縁膜GF1の一部とゲート電極G1との上面には、層間絶縁膜ILが形成される。そして、コンタクトホールCHが、層間絶縁膜IL、ゲート絶縁膜GFおよび半導体基板SBを貫通して形成される。アクティブセル領域ACにおいて、コンタクトホールCHは、エミッタ領域NEおよびベース領域PBに接するように形成される。
【0030】
コンタクトホールCHの底部は、ベース領域PB内に配置されており、ホールバリア領域NHBまでは達しない。コンタクトホールCHの底部には、ベース領域PBよりも高い不純物濃度を有するp型のボディ領域PRが形成される。ボディ領域PRは、ベース領域PBおよびホールバリア領域NHBに跨るように形成されており、アクティブセル領域ACにおいて、エミッタ領域NEとは接しないように形成されている。なお、ボディ領域PRは、コンタクトホールCHに埋め込まれるエミッタ電位電極EEとの接触抵抗を低くし、ラッチアップを防止するために設けられている。
【0031】
層間絶縁膜IL上には、エミッタ電位電極EEが形成され、コンタクトホールCH内にはエミッタ電位電極EEが埋め込まれている。従って、アクティブセル領域ACにおいて、エミッタ領域NE、ベース領域PBおよびボディ領域PRに、エミッタ電位が印加される。なお、インアクティブセル領域IACのフローティング領域PFには、コンタクトホールは配置されていない。このため、フローティング領域PFには、エミッタ電位およびゲート電位が印加されない。
【0032】
エミッタ電位電極EE上には、例えばポリイミドなどの樹脂からなる保護膜PIQが形成さる。図1で説明したように、保護膜PIQには、エミッタ電位電極EEの一部、および、ゲート電位電極GEの一部を露出するように、開口部が設けられている。すなわち、図1の破線で示した領域(ゲートパッドGPおよびエミッタパッドEP)には、保護膜PIQが形成されていない。
【0033】
図4は、図2の半導体チップCHPのB-B線に沿った断面図である。B-B断面は、アクティブセル領域ACの中でエミッタ領域NEが形成されていない領域を横断する断面である。図3と比較して、アクティブセル領域ACの半導体基板SBにエミッタ領域NEが形成されていない点と、トレンチT1の内部に、トレンチ内絶縁膜GF2が形成される点が異なる。その他の構成は図3と同様のため、説明を省略する。
【0034】
トレンチ内絶縁膜GF2は、トレンチT1内部に形成される絶縁膜であり、トレンチT1内部を、半導体基板SBの上面Saに近い側と、下面Sbに近い側との2つの領域に分断する。本実施の形態において、トレンチ内絶縁膜GF2より上面Sa側にあるトレンチ内部の領域をゲート電極G1、トレンチ内絶縁膜GF2より下面Sb側にあるトレンチ内部の領域をボトム電極BEと呼ぶこととする。ボトム電極BEは、ゲート電極G1と、トレンチT1の下面Sb側の端部との間に形成される。ゲート電極G1は、半導体チップCHPの外周部において、図1に示されるゲート電位電極GEに接続されるが、ボトム電極BEはゲート電位電極GEに接続されない。そのため、ボトム電極BEにはゲート電位が印加されない。ボトム電極BEは、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜などの導電膜で構成される。
【0035】
図5は、図2の半導体チップCHPのC-C線に沿った断面を斜め上から見た斜視図である。C-C断面は、ゲート電極G1をY方向に沿って切った断面である。図5では、保護膜PIQ、エミッタ電位電極EE、および層間絶縁膜ILの図示を省略している。トレンチT1の内部は、トレンチ内絶縁膜GF2によってゲート電極G1とボトム電極BEとに分断される。ボトム電極BEはトレンチ内絶縁膜GF2とゲート絶縁膜GF1の一部に囲われている。このように、ボトム電極BEは絶縁膜で周囲を囲われているため、ゲート電位は印加されない。言い換えれば、ボトム電極BEはフローティング電位となる。
【0036】
また、トレンチT1内部にボトム電極BEが形成された領域RBEの、X方向における側方には、半導体基板SB上にエミッタ領域NEが形成されない。一方、トレンチT1内部にボトム電極BEが形成されない領域RG1の、X方向における側方には、エミッタ領域NEが形成される。言い換えれば、X方向において、エミッタ領域NEが形成される領域の隣には、第1長さを有するゲート電極G1が形成される。また、Y方向において複数のエミッタ領域NEに挟まれる領域(つまり、エミッタ領域NEが形成されない領域)の、X方向における側方には、第1長さよりも短い第2長さを持つゲート電極G1が形成される。別の見方をすれば、第1長さを有するゲート電極G1の下面Sb側の端部とコレクタ領域PCとの間の距離は、第1長さを有するゲート電極G1の下面Sb側の端部とコレクタ領域PCとの間の距離よりも短い、と述べることもできる。
【0037】
なお、本実施の形態において、ゲート電極G1の「長さ」とは、ゲート電極G1の上面Sa側の端部から、下面Sb側の端部までの距離を意味する。より具体的には、半導体基板SBの厚さ方向において、ゲート電極G1が最も深く形成されている部分のゲート電極G1の厚さを示す。そして「厚さ」とは、半導体基板SBの上面Saと、ゲート電極G1の最も深い部分との間との最短距離を示す。また、ゲート電極G1の「長さ」は、半導体基板SBの厚さ方向における、ゲート電極G1の「深さ」または「厚さ」と言い換えることもできる。
【0038】
なお、このとき、ゲート電極G1の第2長さは、ベース領域PBの深さ方向の長さ以上、トレンチT1の長さの半分以下であることが望ましい。理由は後述する効果の説明において説明する。
【0039】
なお、トレンチT1内部にボトム電極BEが形成されない領域RG1の、Y方向における長さは、エミッタ領域のY方向における長さと同じかそれ以上であることが望ましい。
【0040】
また、本実施の形態の説明において、領域RG1及び領域RBEの代表的な例をそれぞれ1つ説明したが、実際は、領域RG1及び領域RBEは複数存在し、ゲート電極G1が延在するY方向に沿って交互に配置される。
【0041】
(半導体装置の製造方法)
次に、図6(A)、図6(B)~図14(A)、図14(B)を用いて、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
【0042】
図6(A)、図6(B)~図14(A)、図14(B)は、本実施の形態の半導体チップCHPの製造工程を示す断面図である。図6(A)、図7(A)~図13(A)、図14(A)は、図2のA-A断面を、図6(B)、図7(B)~図13(B)、図14(B)は図2のB-B断面を示している。
【0043】
まず、図6(A)、図6(B)に示すように、例えばリン等のn型不純物が導入されたシリコン単結晶からなる半導体基板SBを用意する。半導体基板SBは、第1主面としての上面Saと、上面Saとは反対側の第2主面としての下面Sbと、を有する。そして、半導体基板SBにトレンチT1、ゲート絶縁膜GF1、ホールバリア領域NHB、フローティング領域PFを形成する。
【0044】
次に、図7(A)、図7(B)に示すように、半導体基板SBの上面Sa上並びにトレンチT1の内部に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により、リンがドープされた多結晶シリコン(Doped Poly-Silicon)膜からなる導電性膜CF1を成膜する。導電性膜CF1の厚さは、例えば0.5μm~1.5μm程度である。そして、例えばドライエッチング法により、トレンチT1の外部に形成されていた導電性膜CF1を除去する。このドライエッチング方のエッチングのガスとして、例えばSF6ガス等を、好適なものとして例示することができる。
【0045】
次に、図8(B)に示すように、B-B断面の領域にレジストパターンRPを形成する。このとき、図8(A)に示すように、A-A断面の領域にはレジストパターンRPを形成しない。そして、ドライエッチング法により、A-A断面のトレンチT1内部にある導電性膜CF1を除去する。
【0046】
次に、図9(B)に示すように、B-B断面の領域に残されたレジストパターンRPを除去し、図9(A)に示すように、A-A断面の領域に新たにレジストパターンRPを形成する。そして、ドライエッチング法により、図9(B)に示すように、B-B断面の領域のトレンチT1内部にある導電性膜CF1の一部を除去する。このとき、トレンチT1内部に存在する導電性膜CF1の全てを除去するのではなく、トレンチT1内部に導電性膜CF1が一部残るようにする。この一部残った導電性膜CF1は、図4及び図5におけるボトム電極BEに相当する。
【0047】
次に、図10(A)に示すように、A-A断面の領域に存在するレジストパターンRPを除去する。その後、ドライエッチング法を用いてゲート絶縁膜GF1の一部を除去する。このとき、図10(B)に示すように、B-B断面の領域において、図9の工程の中で一部残された導電性膜CF1とトレンチT1の内壁との間に存在するゲート絶縁膜GF1は、除去されずに残る。このドライエッチング法のエッチングのガスとして、例えばSF6ガス等を、好適なものとして例示することができる。
【0048】
次に、図11(A)、図11(B)に示すように、例えば熱酸化法等により、半導体基板SBの上面Sa上並びにトレンチT1各々の内壁に、例えば酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜GF1を再度形成する。このとき、導電性膜CF1の上面に、トレンチ内絶縁膜GF2も同時に形成される。
【0049】
次に、図12(A)、図12(B)に示すように、半導体基板SBの上面Sa上並びにトレンチT1の内部に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により、リンがドープされた多結晶シリコン(Doped Poly-Silicon)膜からなる導電性膜CF2を成膜する。そして、例えばドライエッチング法により、半導体基板SBの上面Saの上部にある導電性膜CF2を除去する。トレンチT1の内部に残った導電性膜CF2は、最終的にゲート電極G1として使用される。
【0050】
次に、図13(A),図13(B)に示すように、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いることで、フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHBの各々の表面に、p型のベース領域PBを形成する。ベース領域PBは、フローティング領域PFよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いることで、図13(A)に示すように、A-A断面の領域のアクティブセル領域ACのベース領域PBの表面に、n型のエミッタ領域NEを形成する。エミッタ領域NEは、ホールバリア領域NHBよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。この時、インアクティブセル領域IACのベース領域PBには、エミッタ領域NEを形成しない。
【0051】
次に、図14(A)、図14(B)に示すように、トレンチT1に形成されているゲート絶縁膜GF1上に、例えばCVD法を用いることで、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜ILを形成する。次に、フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いることで、層間絶縁膜ILおよびゲート絶縁膜GF1に、コンタクトホールCHを形成する。コンタクトホールCHの底部は、半導体基板SBの一部を貫通し、ベース領域PBに達するように形成される。すなわち、コンタクトホールCHは、アクティブセル領域ACのエミッタ領域NEおよびベース領域PBに接するように形成される。
【0052】
次に、イオン注入法を用いることで、コンタクトホールCHの底部に、p型のボディ領域PRを形成する。ボディ領域PRは、ベース領域PBよりも高い不純物濃度を有する不純物領域であり、ベース領域PBおよびホールバリア領域NHBに跨るように形成される。また、アクティブセル領域ACのボディ領域PRは、n型のエミッタ領域NEに接しないように形成される。その後、各不純物領域を活性化させるための熱処理が行われる。
【0053】
次に、コンタクトホールCHを埋め込むように、層間絶縁膜IL上に、例えばスパッタリング法を用いることで、例えばアルミニウム膜が形成される。その後、フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いて、このアルミニウム膜をパターニングすることで、エミッタ電位電極EEが形成される。また、図1に示されるゲート電位電極GEも、上記のアルミニウム膜をパターニングすることで形成される。
【0054】
また、上記アルミニウム膜の形成前に、例えば窒化チタン膜からなるバリアメタル膜を
形成し、このバリアメタル膜上に、上記アルミニウム膜を形成してもよい。すなわち、エ
ミッタ電位電極EEおよびゲート電位電極GEを、バリアメタル膜とアルミニウム膜との
積層膜としてもよい。なお、本実施の形態では、バリアメタル膜の図示を省略している。
【0055】
次に、エミッタ電位電極EEおよびゲート電位電極GEを覆うように、例えば塗布法を
用いることで、例えばポリイミドなどの樹脂からなる保護膜PIQを形成する。その後、
フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いて、保護膜PIQの一部に開口部を
形成することで、開口部からエミッタ電位電極EEの一部およびゲート電位電極GEの一
部が露出する。この露出した領域が、図1に示されるエミッタパッドEPおよびゲートパッドGPとなる。
【0056】
次に、半導体基板SBの下面Sbに対して研磨処理を実施し、半導体基板SBの厚さを薄くする。次に、半導体基板SBの下面Sb側からイオン注入を行う。このイオン注入は、フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いることで行われ、これにより、n型のフィールドストップ領域NSおよびp型のコレクタ領域PCが形成される。フィールドストップ領域NSは、ドリフト領域NDよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。
【0057】
次に、半導体基板SBの下面Sb側で露出しているコレクタ領域PCの表面に、例えばスパッタリング法またはCVD法を用いることで、例えば窒化チタン膜などの金属膜からなるコレクタ電位電極CEを形成する。
【0058】
以上により、実施の形態1に係る半導体装置が製造される。
【0059】
(検討例の説明)
次に、図15から図17を用いて、本発明者が検討した検討例及び本実施の形態の効果を説明する。図15は、フローティング領域を有したGG型構造IGBTの動作時における容量成分を説明するための説明図である。なお、図15は断面図であるが、説明の明確化のため、ハッチングを省略している。
【0060】
図15に示すように、IGBTは、コレクタ電位電極CEと、エミッタ電位電極EEと、ゲート電位電極GEと、容量C1,C2,C3,C4を用いた等価回路により表すことができる。
【0061】
容量C1は、ゲート電極とコレクタ領域との間に生じる容量であり、その容量値をCgcとする。容量C2は、ゲート電極とエミッタ領域との間に生じる容量であり、その容量値をCgeとする。以下同様に、容量C3は、ゲート電位電極GEとフローティング領域PFとの間に生じる容量であり、その容量値をCgfpとする。容量C4は、コレクタ電位電極CEとフローティング領域PFとの間に生じる容量であり、その容量値をCfpcとする。
【0062】
ここで、IGBTに生じる静電容量のうち、帰還容量は特にスイッチング損失に大きく関わることから、削減することが求められている。帰還容量の容量値をとCresとすると、Cresは以下の式〔1〕を用いて表される。
【0063】
Cres=(Cfpc*Cgfp)/(Cfpc+Cgfp)+Cgc 〔1〕
【0064】
ここで本発明者は、ゲート電極の長さを短くすることで、Cresを削減する方法を検討した。ゲート電極の長さを短くすると、ゲート電極と半導体基板とが面する面積が減るため、Cfpc及びCgcが減少する。Cfpc及びCgcが減少すると、〔1〕式により、Cresが削減される。
【0065】
しかし、ゲート電極の長さをベース領域の深さよりも短くした場合、IGBTのチャネルが形成されないという問題が生じる。またゲート電極を短かくすることでフローティング領域PFが形成できる領域が減少し、IE効果が減少するという問題が生じる。
【0066】
図16(A)は試料Aの断面図、図16(B)は試料Bの断面図、図16(C)は試料Cの断面図、図16(D)は試料Dの断面図、図16(E)は試料Eの断面図である。図16(F)は、ゲート電極の長さと、入力容量の容量値(Cies)との関係、図16(G)はゲート電極の長さと帰還容量の容量値(Cres)との関係、図16(H)はゲート電極の長さと出力容量の容量値(Coes)との関係をそれぞれ計算したシミュレーション結果である。いずれの図においても、横軸はゲート電極の長さを表し、縦軸は容量値を示している。試料は、ゲート電極の長さが短い方から順に試料A、試料B、試料C、試料D、試料Eが用意されている。なお、本シミュレーションはエミッタ-コレクタ間電圧が0Vの時の各容量値を計測している。図16(G)によれば、ゲート電極の長さが長いほど、Cresが増大していることが判る。
【0067】
図17は、上記問題を解決するために本発明者が行った検討内容を説明する説明図である。図17では、例えば車両のライトなどの負荷が何らかの理由によって短絡した際に、負荷を駆動しているIGBTの素子が破壊されないよう複数のエミッタ領域を互いに離間して設けている。負荷が短絡した場合、IGBTをターンオフした時に、電流変化に伴って逆起電圧(オフサージ電圧)が発生することがある。そして、このオフサージ電圧が定格電圧以上になることで素子破壊が起こる。そこで、図17のようにエミッタ領域を離間して設け、エミッタ領域の面積を削減している。面積を削減することでエミッタ-コレクタ領域に流れる電流量を制限し、IGBTの破壊を防ぐことができる。
【0068】
この構成により、エミッタ領域NEが形成されている領域RG1は、エミッタ領域を通してエミッタ―コレクタ間に十分な電流が流れる。しかし、エミッタ領域NEから離れた領域RBEにおいては、エミッタ電位電極EEからの電子供給量が少ないためにエミッターコレクタ間に、負荷を駆動するための十分な電流が流れない。言い換えれば、アクティブセル領域ACにおいて、領域RG1はIGBTとしてメインで機能する領域であり、領域RBEは、アクティブセル領域ACの中でもIGBTとしての機能する能力が小さい領域である。つまり、アクティブセル領域ACの中でエミッタ領域NEと接する領域RG1は、IGBTのスイッチング動作を行う主駆動部分であり、アクティブセル領域ACの中でエミッタ領域NEを含まない領域RBEは、IGBTの副駆動部分である。エミッターコレクタ間に流れる電流量に大きな影響を及ぼさない領域RBEのゲート電極G1の長さを、エミッターコレクタ間に流れる電流量の多くを制御する領域RG1のゲート電極G1の長さよりも短くすることで、エミッターコレクタ間に流れる電流量に大きな影響を与えずにCresを削減することができる。
【0069】
なお、Y方向における、領域RG1の長さは最低でもエミッタ領域NEの長さと同一か、エミッタ領域NEの長さよりも長いことが望ましい。
【0070】
また、領域RBEにおけるゲート電極G1の長さは、トレンチの長さの半分以下であることが望ましい。図16(G)、図16(H)に示すように、Cres及びCoesはゲート電極G1の長さに比例して増大しているが、図16(F)に示すように、Ciesは試料D(すなわち、ゲート電極G1の長さがトレンチT1の長さの3分の1程度の長さの時)で最も高いことが判る。そのため、図16(F)、図16(G)、図16(H)によれば、Cres、Coes、Ciesすべての削減効果を得るためには、ゲート電極G1の長さは試料C以下、すなわちゲート電極G1の長さがトレンチT1の長さの半分程度以下であることが望ましい。
【0071】
また、領域RBEにおいて、ゲート電極G1の長さは、チャネル形成領域、つまりベース領域PBの深さよりも短い長さにすることが可能である。短くした場合、領域RBEにチャネルが形成されないためコレクターエミッタ間に流れる電流はなくなるものの、静電容量をより削減することができる。しかし、ゲート電極G1の長さを短くすると、ゲート電極G1の延在方向に沿ったゲート電極G1の断面積が減少するため、ゲート抵抗が上昇する問題が生じる。そのため、ゲート電極G1の長さはベース領域PBの深さ程度より長いことが望ましい。
【0072】
また、本実施の形態のように、トレンチT1の長さは領域RBEと領域RG1で変更せず、ゲート電極G1の長さのみ変更することが望ましい。トレンチT1の長さを領域RBEと領域RG1で変更した場合、ゲート容量を削減できるが、フローティング領域PFを形成する領域が減少するため、IE効果が減少する。
【0073】
なお、領域RG1と領域RBEとの境界線を破線によって説明したが、IGBTの駆動能力は破線を境に切り替わるわけではなく、エミッタ領域NEに近い領域ほど駆動能力が高く、エミッタ領域NEから遠いほど駆動能力は低くなる。
【0074】
また、本実施の形態ではGG型構造IGBTを例に説明したが、本実施の形態の適用はGG型構造IGBTに限定されるものではなく、たとえばGG型構造IGBTやEGE型構造IGBTなど、トレンチ構造のゲート電極を備える構造であれば本実施の形態を適用可能である。
【0075】
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる半導体チップCHPを、図18(A)、図18(B)及び図19を用いて説明する。半導体チップCHPの上面図は図2と同様であるため説明を省略する。図18(A)は実施の形態2の半導体装置に係るA-A断面、図18(B)はB-B断面を示したものである。実施の形態1と比較して、エミッタ領域NEが形成されていないB-B断面だけでなく、エミッタ領域NEが形成されるA-A断面にもトレンチT1内部に導電性膜CF1(ボトム電極BE)及びトレンチ内絶縁膜GF2が形成されている点が異なる。図18(A)に示すように、A-A断面において、ゲート電極G1とトレンチT1の下面Sb側の端部との間には、ボトム電極BEが形成されている。図19は、実施の形態2に係る半導体装置のC-C断面図である。A-A断面にも導電性膜CF1(ボトム電極BE)及びトレンチ内絶縁膜GF2が形成されたことで、ボトム電極BEはトレンチT1のどの領域においても存在している。
【0076】
本実施の形態の半導体チップCHPの製造工程は、図8(A)の工程を除き、実施の形態1と同様である。実施の形態1では、図8(A)の工程において、ドライエッチング法によってA-A断面のトレンチT1内部にある導電性膜CF1を全て除去した。本実施の形態では、導電性膜CF1を全て除去せず、図9(B)の工程のように、トレンチT1内部にある導電性膜CF1の一部を除去する。このとき、残った導電性膜CF1がボトム電極BEとなる。その後、図10(B)、図11(B)の工程のように、ゲート絶縁膜GF1及びトレンチ内絶縁膜GF2を形成し、図12(B)の工程のように、導電性膜CF2(ゲート電極G1)を形成する。その他の製造工程は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
(実施の形態2の効果)
トレンチ構造を有するゲート電極では、トレンチ端部に電界が集中するため、耐圧を確保することが難しいというという問題があった。本実施の形態では、トレンチT1内の全ての領域においてボトム電極BEを形成することで、ゲート電極G1にかかる電圧を緩和して耐圧を確保することができる。
【0078】
(実施の形態3)
実施の形態3にかかる半導体チップCHPを、図20及び図21を用いて説明する。本実施の形態は、実施の形態2と比較して、ボトム電極BEにエミッタ電位が印加されている点が異なる。
【0079】
図20は、本実施の形態の半導体チップCHP3の全体の平面図である。A-A断面図、B-B断面図、及びC-C断面図の構成は、ボトム電極BEにエミッタ電位が印加されている点を除き実施の形態2と同様であるため説明を省略する。図20に示すように、半導体チップCHP3の中央部分はエミッタ電位電極EE3で覆われる。また、エミッタ電位電極EE3の外周には、エミッタ電位電極EE3を挟むようにゲート電位電極GE3が形成される。更に、ゲート電位電極GE3の外周には、エミッタ電位電極EE3がゲート電位電極GE3を挟むように形成される。半導体チップCHPの中央部分に形成されたエミッタ電位電極EE3とゲート電位電極GE3を挟むように形成されたエミッタ電位電極EE3は、半導体チップCHP外周部において接続されている。ゲート電位電極GE3は、半導体基板SB内部においてゲート電極G1と接続され、エミッタ電位電極EE3は、半導体基板SB内部においてボトム電極BEと接続される。
【0080】
エミッタ電位電極EE3の中央部付近にある破線で囲まれた領域はエミッタパッドEP3であり、ゲート電位電極GE3の破線で囲まれた領域はゲートパッドGP3である。半導体チップCHP3の上面は保護膜PIQ(図20では不図示)によって覆われるが、エミッタパッドEP3およびゲートパッドGP3の上面は保護膜PIQが除去される。エミッタパッドEP3およびゲートパッドGP3にはワイヤボンディングまたはクリップなどの外部接続端子が接続され、半導体チップCHP3は外部接続端子を通して他チップまたは配線基板などと電気的に接続する。
【0081】
図21は、ゲート電極G1の長さを変更した時の、正孔濃度分布を計算したシミュレーション結果である。ゲート電極G1の長さが短い方から順に試料A、試料B、試料Cとし、各試料における正孔濃度分布を表している。正孔濃度はハッチのピッチ幅によって表現されており、ピッチ幅が狭いほど正孔濃度が高く、ピッチ幅が広いほど正孔濃度が低い。図21に示すように、ゲート電極G1の長さが短いほど、半導体基板中に含まれる正孔濃度分布が低くなっていることが判る。これは、フローティング領域PFをソース、ホールバリア領域NHBまたはドリフト領域NDをチャネル形成領域、ボディ領域PRをドレインとして構成される寄生のP型トランジスタ(以下、寄生PMOSと呼ぶ)によって、正孔がエミッタ領域NEに排出されるためである。エミッタ電位が印加されるボトム電極BEがこの寄生PMOSのゲートとして働くため、ボトム電極BEの長さが長い、つまりゲート電極G1の長さが短い試料の方が、正孔濃度分布が低くなっていることが判る。
【0082】
(実施の形態3の効果)
ターンオフ時、フローティング領域PFの正孔濃度分布を低くすることができるため、フローティング領域PFの電位変動が抑えられ、スイッチング速度を速めることができる。また、正孔が素早く排出されるため、ターンオフ時のテイル電流を低減することができる。
【0083】
(実施の形態4)
実施の形態4にかかる半導体チップCHP4を、図22から図24を用いて説明する。本実施の形態は、実施の形態2と比較して、ボトム電極BEに第2のゲート電位が印加されている点が異なる。
【0084】
図22は、本実施の形態の半導体チップCHP4の全体の平面図である。A-A断面図、B-B断面図、及びC-C断面図の構成は、ボトム電極BEに第2のゲート電位が印加されている点を除き実施の形態2と同様であるため説明を省略する。
図22に示すように、半導体チップCHP4の中央部分はエミッタ電位電極EE4で覆われる。また、エミッタ電位電極EE4の外周には、エミッタ電位電極EE4を挟むようにゲート電位電極GE4が形成され、更にゲート電位電極GE4を挟むように第2のゲート電位電極GE5が形成される。なお、説明の分かりやすさのため、本実施例の説明においてのみ、ゲート電位電極GE4に印加される電位を第1ゲート電位、ゲート電位電極GE5に印加される電位を第2ゲート電位と称する。ゲート電位電極GE4は、半導体基板SB内部においてゲート電極G1と接続され、ゲート電位電極GE5は、半導体基板SB内部においてボトム電極BEと接続される。従って、ゲート電極G1には第1ゲート電位が印加され、ボトム電極BEには第2ゲート電位が印加される。第1ゲート電位と第2ゲート電位はそれぞれ独立して制御される。
【0085】
図23は、第1ゲート電位及び第2ゲート電位が印加されるタイミングチャートを示す。図23上段は、第1ゲート電位の時間変動を示し、図23下段は、第2ゲート電位の時間変動を示す。
【0086】
時刻TM0~TM1の間、第1ゲート電位及び第2ゲート電位はいずれもローレベル電圧が印加される。つまり、IGBTはオフ状態となる。次に、時刻TM1~TM2の間、第1ゲート電位及び第2ゲート出にはいずれもハイレベル電圧が印加され、IGBTはオンの状態となる。この期間、フローティング領域PFに正孔が蓄えられ、IGBTのオン抵抗が低減される。次に、時刻TM2~TM3の間、第1ゲート電位には時刻TM2に引き続いてハイレベル電圧が印加されるが、第2ゲート電位にはローレベル電圧が印加される。言い換えれば、第1ゲート電位が印加されるゲート電極G1はIGBTがオン状態となるような電位が印加され続け、第2ゲート電位が印加されるボトム電極BEはIGBTがオフ状態となる電位へ切り替えられる。このとき、ゲート電極G1のあるトレンチT1上部はIGBTがオンの状態であり、ボトム電極BEのあるトレンチT1下部はIGBTがオフの状態となっている。トレンチT1下部のIGBTがオフの状態となることで、トレンチ下T1下部には寄生PMOSのチャネルが形成された状態となる。寄生PMOSが動作することで、フローティング領域PFの正孔分布濃度を低くすることができる。
【0087】
次に、時刻TM3において、第1ゲート電位はハイレベル電圧からローレベル電圧へと印加される。すなわち、IGBTは完全にオフの状態となる。時刻TM2~TM3の期間で既に寄生PMOSによってフローティング領域PFの正孔分布濃度は低くなっているため、フローティング領域PFおよびドリフト領域NDに蓄積されていた正孔が素早く排出される。時刻TM3において第1ゲート電位がローレベル電圧になった後は、第1ゲート電位及び第2ゲート電位の何れもローレベル電圧で維持される。時刻TM3以後正孔は排出され続けるため、テイル電流を減らすことができる。
【0088】
(実施の形態4の効果)
ターンオフする際に、第2ゲート電位を第1ゲート電位よりも早いタイミングで立ち下げることで、正孔排出効果を高めることができる。これにより、IGBTがオンしている期間でIGBTのオン抵抗を低く保ちつつ、ターンオフ時にテイル電流を減らすことができる。
【0089】
(実施の形態4の変形例)
図24は、実施の形態4の変形例の説明図であり、第1ゲート電位及び第2ゲート電位が印加されるタイミングチャートを示す。実施の形態4では、第1ゲート電位と第2ゲート電位を別々に制御するために、ゲート電位電極GE4、第2ゲート電位電極GE5を用意したが、本変形例では、ゲート電位電極GE4のみで実施の形態4と同様の効果を実現する。
【0090】
第1ゲート電位と第2ゲート電位はいずれもゲート電位電極GE4から印加される電圧で制御する。しかし、本変形例では、ゲート電極G1とボトム電極BEとでそれぞれ異なるゲート抵抗値を持たせている。異なるゲート抵抗をもたせた場合、電圧がローレベルからハイレベルまで(または、ハイレベルからローレベルまで)切り替わる時間に差が生じるため、その差を利用して、実施の形態4と同様の効果を実現する。異なるゲート抵抗値を持たせる方法としては、半導体装置の外部に抵抗を接続するか、もしくは半導体装置の内部に抵抗を付加する。半導体装置の内部に抵抗を付加する方法としては、ボトム電極BEを構成する導電性膜CF1のリン濃度を、ゲート電極G1を構成する導電性膜CF2のリン濃度よりも濃くする。もしくは、半導体チップCHP内部にポリシリコン等から成る抵抗を形成して、ゲート電極G1よりもボトム電極BEの抵抗が小さくなるようにする。
【0091】
次に、図24を用いて、実施の形態4の動作を説明する。本変形例は、実施の形態4と比較して、第1ゲート電位と第2ゲート電位の立ち上がり、及び立ち下がりのタイミングと速度が異なる。
【0092】
時刻TM0~TM1の間、第1ゲート電位及び第2ゲート電位はいずれもローレベル電圧が印加される。つまり、IGBTはオフ状態となる。次に、時刻TM1において第1ゲート電位及び第2ゲート電位にはいずれもハイレベル電圧が印加されるものの、抵抗値の違いにより第1ゲート電位の方か第2ゲート電位よりも遅く立ちあがる。第1ゲート電位及び第2ゲート電位いずれも完全に立ち上がる時刻TM3以後は、いずれもハイレベル電圧が印加され、IGBTはオンの状態となる。
【0093】
次に、時刻TM4において、第1ゲート電位及び第2ゲート電位にはいずれもローレベル電圧が印加されるものの、抵抗値の違いにより第1ゲート電位の方か第2ゲート電位よりも遅く立ち下がる。そのため、第2ゲート電位の方が、第1ゲート電位よりも早くローレベル電圧に切り替わった状態となる。第2ゲート電位が完全に立ち下がった時刻TM5から第1ゲート電位が完全に立ち下がる時刻TM6の間は、図23の時刻TM2~TM3の期間と同様、トレンチT1下部のIGBTがオフした状態となり、寄生PMOSのチャネルが半分形成された状態となる。以後の動作及び効果は実施の形態4と同様であるため説明を省略する。
【0094】
(実施の形態4の変形例の効果)
第1ゲート電位と第2ゲート電位の2つの電位の制御を、ゲート電位電極GE4の1つのみで実現することができる。そのため、実施の形態4のように2つのゲート電位を用意する必要がなくなる。
【0095】
(実施の形態5)
図25は、実施の形態5にかかる半導体チップの要部の平面図である。本実施の形態では、実施の形態1と比較して、半導体チップCHPの主面を平面で見たときの、エミッタ領域NEの形成されるレイアウトが異なる。
【0096】
図25では、GG構造型IGBTを例に説明を行う。半導体チップには、複数のゲート電極G11、G12が形成される。複数のゲート電極G11、G12の側方には、エミッタ領域NE11、NE12がそれぞれ複数配置される。ゲート電極G1と同様に、エミッタ領域NE11(NE12)の側方に位置するゲート電極G11(G12)の深さは、エミッタ領域NE11(NE12)間の領域の側方に位置するゲート電極G11(G12)の深さよりも深い。そして、このとき、複数のエミッタ領域NE12のそれぞれは、互いに隣り合う2つのエミッタ領域NE11に挟まれた領域の、ゲート電極G11(G12)が延在する方向と直交する方向(つまり、X方向)上に形成される。言い換えると、エミッタ領域NE11とエミッタ領域12は、X方向において、互いに重ならないように配置される。また、エミッタ領域12は、Y方向において隣り合う二つのエミッタ領域の間に位置する領域を通過し、かつ、X方向に沿って延在する仮想線VL上に位置すると言い換えることもできる。このように配置することにより、アクティブセル領域ACにおいてエミッタ領域NEが形成されている領域RG1に隣接するフローティング領域PFに溜まった正孔を、寄生PMOSを利用して効率的に排出することができる。これは、トレンチT1内部にボトム電極BEが形成された領域RBEの方が領域RG1よりも正孔排出効果が高いためである。
【0097】
なお、本実施の形態は実施の形態1から実施の形態4までの半導体チップCHPの平面構成に適用可能である。
【0098】
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本
発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更
可能である。
【符号の説明】
【0099】
CHP、CHP2、CHP3、CHP4 半導体チップ
EE、EE3、EE4 エミッタ電位電極
GE、GE3、GE4 ゲート電位電極
EP、EP3、EP4 エミッタパッド
GP、GP3、GP4 ゲートパッド
GE5 第2ゲート電位電極
NE、NE11、NE12 エミッタ領域
G1、G11、G12 ゲート電極
CH コンタクトホール
IAC インアクティブセル領域
AC アクティブセル領域
PB ベース領域
SB 半導体基板
Sa 半導体基板の上面
Sb 半導体基板の下面
ND ドリフト領域
NS フィールドストップ領域
PC コレクタ領域
CE コレクタ電位電極
GF1 ゲート絶縁膜
NHB ホールバリア領域
IL 層間絶縁膜
PIQ 保護膜
PF フローティング領域
PR ボディ領域
T1 トレンチ
GF2 トレンチ内絶縁膜
BE ボトム電極
CF1、CF2 導電性膜
VL 仮想線
RP レジストパターン
図1
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図3
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図5
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