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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】肘関節置換装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
A61F2/38
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2018563708
(86)(22)【出願日】2017-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2017063693
(87)【国際公開番号】W WO2017211813
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-18
(31)【優先権主張番号】15/174,533
(32)【優先日】2016-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515156197
【氏名又は名称】リマコーポレート・ソチエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】LIMACORPORATE S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Nazionale, 52 Villanova 33038 San Daniele del Friuli(UD), Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】プレッサッコ ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】デル ネグロ ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ファットーリ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ホッチキス ロバート エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】フィギー マーク ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ライト ティモシー エム.
(72)【発明者】
【氏名】リップマン ジョゼフ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ロ ダリック
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0121779(US,A1)
【文献】特開昭59-006049(JP,A)
【文献】特開2004-351209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0179661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上腕骨コンポーネント(119)と尺骨コンポーネント(104)とを含む置換可能な肘プロテーゼであって、
前記上腕骨コンポーネント(119)は、
上腕骨ステム(101)と上腕骨顆本体(102)及びヒンジの軸(112)に沿ってヒンジ
回転軸(106)を嵌入するように構成された2つの上腕骨ブッシング(103)とを含み、
前記上腕骨顆本体(102)は、前記上腕骨ブッシング(103)を受け入れ保持するためのブッシング孔(117)と、2つの顆ベアリング面(121)とを有する2つの顆部(118)を備え、前記上腕骨ステム(101)の遠位端に結合されており、
前記尺骨コンポーネント(104)は、尺骨ステム(110)と尺骨本体(107)と前記尺骨本体(107)に着脱可能に結合された尺骨ベアリング(105)とを含み、
前記尺骨本体(107)は、尺骨連結孔(143)が設けられた中央フィン(137)を備え、
前記尺骨ベアリング(105)は、尺骨ヒンジ孔(145)が設けられた中央フィンカバー(130)を備え、前記中央フィンカバー(130)の両側に前記顆部(118)の前記顆ベアリング面(121)を受け入れて関節接合するための関節接合ハウジング(139)を備え、
前記ヒンジ回転軸(106)は、バレル形の末端部分(153)と、反対側のバレル形の末端部分(155)、およびその間の中間部分(106a)を含み、
前記顆部(118)と前記尺骨ベアリング(105)とは、関節が接合された状態で前記ヒンジの軸(112)を中心とし互いに関節接合するよう構成されており、
前記尺骨連結孔(143)は、前記尺骨ベアリング(105)が前記尺骨本体(107)と連結された状態で前記ヒンジの軸(112)に沿って前記尺骨ヒンジ孔(145)と軸合わせされており、
前記ヒンジ回転軸(106)が、前記上腕骨ブッシング(103)、前記尺骨ヒンジ孔(145)及び前記尺骨連結孔(143)をいずれも貫通し、前記ヒンジ回転軸(106)の中間部(106a)が、前記尺骨連結孔(143)に固定的に取り付け可能であり、
前記顆部(118)の各々が前記顆部(118)の中央面(116)を画定する関節接合環状壁(115)を有し、該中央面(116)が、前記尺骨ベアリング(105)の中央フィンカバー(130)の側方表面(131)と関節結合しており、
前記ブッシング孔(117)が、前記関節接合環状壁(115)によって前記顆部(118)の内側の範囲が定められることを特徴とする、肘プロテーゼ。
【請求項2】
前記上腕骨コンポーネント(119)は、上腕骨ステム(101)と、前記上腕骨ステム(101)に結合され前記顆部(118)を備える上腕骨顆本体部(102)と、を備えることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項3】
それぞれ2つの前記上腕骨ブッシング(103)及び前記顆部(118)は、干渉しながら互いに機械的接合するために、嵌合する雌雄の円筒部分を備えることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項4】
前記顆部(118)はそれぞれ、内側に関節接合環状壁(115)を設け、上腕骨の前記顆部(118)の中央面(116)を画定することを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項5】
前記顆部(118)はそれぞれ、内側に関節接合環状壁(115)を備え、上腕骨の前記顆部(118)の中央面(116)を画定することを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項6】
前記顆部(118)は、前記上腕骨ブッシング(103)を受け入れるためのブッシング孔(117)を備えることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項7】
前記上腕骨ブッシング(103)は、機械的干渉によってそれぞれの前記ブッシング孔(117)内部に保持されることを特徴とする、請求項6記載の肘プロテーゼ。
【請求項8】
前記顆部(118)はそれぞれ、内側に前記関節接合環状壁(115)を備え、
更に、前記ブッシング孔(117)は、前記顆部(118)の内側で、前記ブッシング孔(117)の直径を縮小する前記関節接合環状壁(115)によって画定されることを特徴とする、請求項6記載の肘プロテーゼ。
【請求項9】
前記顆部(118)、前記ヒンジ回転軸(106)、及び前記尺骨本体(107)は、金属で作製されることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項10】
それぞれ2つの前記上腕骨ブッシング(103)及び前記尺骨ベアリング(105)は、低摩擦材料で作製されることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項11】
前記尺骨本体(107)は、機械的接合によって前記尺骨ベアリング(105)に結合されることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項12】
前記尺骨コンポーネント(104)は、前記尺骨本体(107)に結合される尺骨ステム(110)を備えることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項13】
前記尺骨ベアリング(105)は、前記尺骨ヒンジ孔(145)を備える中央フィンカバー(130)を備えることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項14】
前記中央フィンカバー(130)は、前記顆部(118)を受け入れ、関節接合するために、両側に関節接合ハウジング(139)をそれぞれ有することを特徴とする、請求項12記載の肘プロテーゼ。
【請求項15】
前記顆部(118)はそれぞれ、上腕骨の前記顆部(118)の中央面(116)を画定する、内側の前記関節接合環状壁(115)を備え、
前記中央面(116)は、前記尺骨ベアリング(105)の前記中央フィンカバー(130)の外側面(131)と関節接合することを特徴とする、請求項12記載の肘プロテーゼ。
【請求項16】
前記尺骨本体(107)は、前記尺骨ベアリング(105)と連結するよう構成される中央フィン(137)を備え、
前記中央フィン(137)は前記尺骨連結孔(143)を備えることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項17】
前記尺骨ベアリング(105)は中央フィンカバー(130)を備え、
前記中央フィンカバー(130)は、前記中央フィン(137)を受け入れるように構成される連結スロット(141)を備えることを特徴とする、請求項16記載の肘プロテーゼ。
【請求項18】
前記尺骨連結孔(143)のねじ切りされかつテーパー形状又は円錐形の部分(143a)は、内側がねじ切りされた面(147)とテーパー形状の接合面(149)とを備え、
前記ヒンジ回転軸(106)のねじ切りされかつテーパー形状又は円錐形の中間部(106a)は、前記内側がねじ切りされた面(147)と前記テーパー形状の接合面(149)とそれぞれ螺合するように構成される嵌合するねじ切りされた面(151)とテーパー形状の面(152)とを備えることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項19】
前記尺骨本体(107)は、1つ以上の隆起型の取付突起部(148)を備え、そして、
前記尺骨ベアリング(105)は、それぞれの前記取付突起部(148)と係合するよう構成される1つ以上の嵌合スロット(150)を備えることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項20】
前記肘プロテーゼは、前記ヒンジ回転軸(106)を備えることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項21】
前記ヒンジ回転軸(106)は、バレル形の末端部分(153)と、対向するバレル形の末端部分(155)とを備えることを特徴とする、請求項20記載の肘プロテーゼ。
【請求項22】
前記ヒンジ回転軸(106)はねじ切りされかつテーパー形状又は円錐形の中間部(106a)を備え、
前記尺骨連結孔(143)は、前記ヒンジ回転軸(106)の前記ねじ切りされかつテーパー形状又は円錐形の中間部(106a)と嵌合する、ねじ切りされかつテーパー形状又は円錐形の部分(143a)を備えることを特徴とする、請求項1記載の肘プロテーゼ。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか1項記載の肘プロテーゼにより構成される肘関節置換装置であって、
前記尺骨連結孔(143)及び前記尺骨ヒンジ孔(145)に対する前記ヒンジ回転軸(106)の挿脱により、前記上腕骨コンポーネント(119)及び前記尺骨コンポーネント(104)を、それぞれ連結型又は非連結型に変換しうるように構成されることを特徴とする、肘関節置換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は人工関節に関する。より詳しくは本発明は、関節が内反/外反回転を受けながら、構成要素間の接触点を段階的に外側に移すよう設計された関節表面を有する肘関節のインプラントシステムに関する。そして外科医が、個々に有用性を確認したり、観察したりすることにより、使用するコンポーネントを別の物に交換できるモジュール構造を更に備える。
【背景技術】
【0002】
関節形成術は今までのところ、関節炎及び他の破壊性の関節の問題を患っている患者の痛みを軽減し、その機能を復元するための最も成功した処置である。米国において股関節及び膝関節の置換術は、それぞれ500,000件以上毎年行われており、実に一般的である。
この種の関節置換術の有効性及び耐久性により、人工股関節及び膝関節形成術の人気は確立された。
例えば、オーストラリアのナショナルレジストリーによると、初回全膝関節形成術における再置換率は、累積して7年間でわずか4%報告されるだけである。一方、スウェーデンのナショナルレジストリーによると、10年間で93%を超える股関節形成術での生存率(survivorship)が報告されている。
全肘関節置換術では、ノルウェーの関節形成術レジストリーによると、それぞれ5年で8%、更に10年では15%の破損率が報告され、結果は良くない。
【0003】
全肘形成術の2つの主要な臨床的適応症は、慢性関節リウマチ及び外傷後関節炎である。これらの関節炎の事象を治療するためには、2種類の初回肘関節置換術が採用されており、これは、拘束型「constrained」のデザインと非拘束型「unconstrained」のデザインであり、それぞれ連結型「linked」及び非連結型「unlinked」とも呼ばれる。
連結型の肘関節置換術では、上腕骨コンポーネントと尺骨コンポーネントとは互いに機械的に結合しているので、通常はヒンジを用いて内部を安定させる。内反/外反及び内側/外側への回転運動がある程度できるように、幾分緩みを存在させる。
しかし非連結型の肘関節置換術では、上腕骨コンポーネントと尺骨コンポーネントとは、機械的には結合されない。これらのインプラントでは、内反/外反足及び内側/外側への回転運動の程度は、主に靭帯及び筋肉がどの程度無傷(完全)であるかに依存している。
【0004】
以前は非連結型の肘関節として、上腕骨及び尺骨コンポーネントの固定表面上に多孔質コーティングを導入していた。しかし調査によると、肘関節置換形成術を受けた患者32人のテストグループ(セメントレス上腕骨コンポーネントの患者32人、セメントレス尺骨コンポーネントの患者4人)を平均3年間追跡した結果、患者1人のみの上腕骨コンポーネント周辺で骨透亮像(radiolucent line)が示された。尺骨コンポーネント周辺では骨透亮像は示されなかった。
【0005】
現在では、いくつかの肘置換術のための装置がある。Coonrad―Morrey人工肘関節全置換術(TEA)システムでは連結型コンポーネントが採用され、金属性の回転軸を通す上腕骨及び尺骨コンポーネント上のポリエチレンブッシングと、生体内のねじれや前後の安定性を高める骨移植とを組み合わせて用いる上腕骨コンポーネント上の前側フランジとを含む。上腕骨及び尺骨コンポーネントは、所定位置にセメントで結合される。ヒンジは、±3.5度の内反/外反運動を可能にし、最大角が形成される前に負荷を軟部組織へ移す。
【0006】
最近の研究はCoonrad―Morrey TEAの成功を評価した。そして特に1つの研究では、67件のCoonrad―Morrey TEAを評価した。このうち37件では、72%が5年の生存率(survival rate)を示す初回形成術であった。残りの30件は再形成術であり、64%が5年の生存率を示した。他の調査では、51%が10年の生存率を示し、24%が15年の生存率を示した。臨床結果は、活動量の少ない患者(例えば慢性関節リウマチの患者)の股関節及び膝関節の置換術に肩を並べるだけだった。このグループのインプラント生存率としては、約90%が5~10年である。
【0007】
Coonrad―Morrey TEAによるインプラント関連の故障モード(failure mode)は、ポリエチレンブッシングの摩耗及び変形であり、ブッシング回転軸の拘束が低減され関節の機能が低下し、そして、かなりの量のポリエチレン摩耗粒子が放出し骨溶解が生じる。調査では、6人の患者のうち3人の5年未満のブッシング摩耗の証拠となるX線像が報告された。そしてその3人の患者には再手術が必要だった。同様に他の調査では、患者10人の故障の原因としてブッシング摩耗が報告された。そしてその全員が、平均して術後5年で再手術を受けなければならなかった。調査によると、その患者の1%がTEAの後、平均して8年で単離したブッシングを交換するための再手術を必要とした。
更に別の研究において、14人の患者の16個の肘から回収されたコンポーネントを調査した。そして、上腕骨及び尺骨のポリエチレンブッシングへの損傷が、ほぼ共通して、非対称の薄層化と、楕円の塑性変形であると分かった。尺骨コンポーネントの固定ステム上の金属的な摩耗は、インプラントセメント使用インタフェースでの緩みと一致しており、ほとんどの事例において観察された。そして、TEAにおける無菌性緩み(Aseptic Loosening)の更なる課題が強調される。
【0008】
Biomet、Inc.のDiscovery Elbow Systemは、連結型でセメント使用の全肘関節置換術である。ヒンジは、上腕骨と尺骨コンポーネント間の関節表面の接触を最大にするために、砂時計形状である。最小の骨切除により、上腕骨上顆の完全性を維持する。この装置では、尺骨の側副靭帯が温存される。
【0009】
TornierのLatitude Total Elbow Prosthesisは、モジュール式の、セメント使用の全肘関節置換術である。この装置では、外科医が関節軸の中心、後部、及び前部のオフセットを調整することができる、モジュール式のスプールとなる、肘関節の通常のキネマティクスを復元するように設計されている。非連結型を連結型に変換するために、第2の関節コンポーネントを尺骨コンポーネントに取り付けることができる。
この装置はまた、任意で撓骨コンポーネントを有する。Latitudeを使用する場合の欠点は、コンポーネントのインプラントに必要とされる上腕骨遠位部の完全な切開、慢性関節リウマチ患者では無くなっている可能性がある自然な関節軸の位置を決めるための複数のジグ、尺骨管にアクセスするための三頭筋部分的切開、そしてセメント固定コンポーネントの使用等である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしこれらの装置はいずれも、軟部組織の張力を術中に調整することを考慮に入れていない。非連結型状態であるため、従来の装置は、内反/外反運動に機械的な拘束を設けない。内反/外反運動が生じ始めると、段階的に接触点を外側に移し、よって、関節における復元モーメント(復元力)を増大させるよう設計された関節表面を備えた肘関節置換術を作り出すことが望まれる。また、外科医が手術中に連結型又は非連結型を選択し、適宜セメント固定又は非セメント使用(セメントレス)固定でき、そして、関節の軟部組織の張力を調整することが可能な全肘関節置換術の装置及び方法を提供することが望まれている。
【0011】
従って、従来技術における欠点の少なくとも1つを解決する、肘関節置換装置及び方法を改良する必要がある。従来の解決策及び技術の様々な制限及び問題点は、以下の図面及び実施例の説明を参照し本出願の以降の部分を確認した後、当業者に明らかとなるが、関連技術における説明は、記載される内容が従来技術であるという承認の代わりとなることを意図としないと理解すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、尺骨ステム及び/又は上腕骨ステム本体の結合を利用することによって、外科医が連結型又は非連結型の拘束を手術中に選択できるような、全肘関節置換術のための装置及び方法を提供する。また、付加的なモジュール方式により、本願明細書に記載される、セメント使用又はセメント非使用ステムが選択できる。このモジュール方式及び調整能力には、多くの利点がある。
【0013】
1つの実施例において、肘プロテーゼ(肘用人工補綴)は上腕骨ステムコンポーネントを含み、当該上腕骨ステムコンポーネントには遠位端と近位端とがある。プロテーゼはまた、上腕骨顆(顆状の)コンポーネントを含み、当該上腕骨顆(顆状の)コンポーネントにも遠位端と近位端とがある。上腕骨顆コンポーネントの近位端は、上腕骨ステムコンポーネントの遠位端に着脱自在に係合するのに適する。上腕骨顆コンポーネントの遠位端部は遠位に突出する。
【0014】
尺骨ステムコンポーネントが提供される。当該尺骨ステムコンポーネントには遠位端と近位端とがある。尺骨ステムコンポーネントは、近位端から遠位端までテーパー形状となっている。尺骨ベアリングコンポーネントは、尺骨ステムコンポーネントの近位端と、上腕骨顆コンポーネントの遠位に突出している部分とに、着脱自在に係合するのに適している。
【0015】
他の実施例では肘プロテーゼは、上腕骨ステムコンポーネントと、上腕骨ステムコンポーネントの上腕骨顆コンポーネントとを含む。上腕骨顆コンポーネントの遠位部は突出しており、遠位部に顆部のベアリング面が画定される。プロテーゼはまた、尺骨ステムコンポーネントと、尺骨ステムコンポーネントの尺骨ベアリングコンポーネントとを含む。尺骨ベアリングコンポーネントはベアリング面を備え、上腕骨顆コンポーネントの遠位に突出する部分をベアリング面で受け、その突出部分とかみ合う。
尺骨ベアリングコンポーネントに対する上腕骨顆コンポーネントの内反又は外反回転により、顆部ベアリング面と尺骨ベアリングコンポーネントのベアリング面との間の接触点が外側(laterally)に移動するよう、顆ベアリング面及び尺骨ベアリングコンポーネントのベアリング面はそれぞれ、前頭面において少なくとも2つの異なる半径の断面を有する。
【0016】
他の実施例では肘プロテーゼは上腕骨インプラントを含み、当該上腕骨インプラントは、ステムと、ステムの端部に配置される上腕骨顆部とを備える。上腕骨顆部の遠位部は突出する。プロテーゼはまた、遠位端及び近位端を備えた尺骨ステムコンポーネントを含む。尺骨ステムコンポーネントは、近位端から遠位端へテーパーが付けられている。尺骨ステムコンポーネントとは別のコンポーネントである尺骨ベアリングコンポーネントは、尺骨ステムコンポーネントの近位端と、上腕骨顆部の遠位に突出する部分とに着脱可能に連結する。尺骨のインプラントがモジュール方式であるので、連結型又は非連結型のいずれの尺骨ベアリングコンポーネントにおいても共通の尺骨ステムを用いることができる。
【0017】
これらの、そしてまた他の態様、特徴、及び利点は、添付の図面及び本発明の特定の実施例の説明から明らかである。この明細書に取り入れられ一部を構成する図面は、本発明の実施例を図示して説明と共に、本開示内容の主旨を説明するに役立つ。
【0018】
可能な場合は、本開示内容に記載される様々な態様及び特徴は個々に応用することができる。これらの個々の態様、例えば添付の従属クレームに記載される態様及び特徴は、分割特許出願の対象となり得る。
【0019】
特許プロセスの間、すでに公知であると発見されるものは請求されておらず、ディスクレーマの対象でないと理解されることに注意されたい。
【0020】
本発明のいくつかの例示的な実施形態は、以下の図において表される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示のいくつかの実施例による、説明に役立つ、モジュール式の非連結型肘関節置換術装置の斜視図である。
図2】本開示のいくつの実施例による、説明に役立つ、モジュール式の連結型肘関節置換術装置の斜視図である。
図3A】本開示のいくつの実施例による、説明に役立つ、非モジュール式の非セメント使用の上腕骨コンポーネントの斜視図である。
図3B】本開示のいくつかの実施例による、非モジュール式のセメント使用の上腕骨コンポーネントの斜視図である。
図3C】本開示のいくつかの実施例による、側面凹部を備えた、非セメント使用の上腕骨コンポーネントの斜視図である。
図4】本開示のいくつかの実施例による、非セメント使用の上腕骨スリーブの斜視図である。
図5】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式の上腕骨顆コンポーネントの斜視図である。
図6】本開示のいくつかの実施例による、別の非セメント使用のモジュール式の上腕骨ステムデザインの斜視図である。
図7】本開示のいくつかの実施例による、連結された状態の関節接合の調節可能な尺骨コンポーネントの斜視図である。
図8】本開示のいくつかの実施例による、別の非セメント使用の尺骨ステムデザインの斜視図である。
図9】本開示のいくつかの実施例による、非連結状態の関節接合の調節可能な尺骨コンポーネントの斜視図である。
図10】本開示のいくつかの実施例による、尺骨ステム及び非連結型尺骨ベアリングの斜視図である。
図11】本開示のいくつかの実施例による、尺骨ステム、連結型尺骨ベアリング、及び連結型尺骨ベアリングハウジングの斜視図である。
図12】本開示のいくつかの実施例による、上腕骨顆と尺骨ベアリング面とにおける関節形状の差を図示する。
図13】本開示のいくつかの実施例による、外部のモーメントが加えられる関節接合の接触点の変動を図示する。
図14A】本開示のいくつかの実施例による、上腕骨顆の関節形状の差を図示する。
図14B】本開示のいくつかの実施例による尺骨ベアリング面の関節形状の差を図示する。
図14C】本開示のいくつかの実施例による、上腕骨及び尺骨コンポーネント間の関節接合を図示する。
図15】本開示のいくつかの実施例による、ブッシング孔キャップ及びブッシングの斜視図である。
図16】本開示のいくつかの実施例による、上腕骨ブッシング及び回転軸の断面図である。
図17】本開示のいくつかの実施例による、内反/外反状態の肘関節の断面図である。
図18】本開示のいくつかの実施例による、図15のブッシング孔キャップ及びブッシングの関節接合を図示する断面図である。
図19】本開示のいくつかの実施例による、橈骨頭コンポーネントの斜視図である。
図20】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換術装置の、説明に役立つ斜視図である。
図21】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換装置の上腕骨顆本体部の斜視図である。
図22】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換装置の、説明に役立つ斜視図である。
図23】開示のいくつかの実施例による、モジュール式連結型肘関節置換装置の、説明に役立つ斜視図である。
図24】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換装置の、説明に役立つ横方向の断面図である。
図25図24の拡大図である。
図26】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換装置の上腕骨顆本体部の平面図である。
図27】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換装置の上腕骨顆本体部の斜視図である。
図28】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換装置の上腕骨ステムの平面図である。
図29】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換装置の尺骨本体部の斜視図である。
図30】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換装置の尺骨ステムの斜視図である。
図31】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換装置の尺骨ステムの平面図である。
図32】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換術装置の説明に役立つ横方向の断面図である。
図33】本開示のいくつかの実施例による、モジュール式肘関節置換装置により得ることができる、スプール式解剖学的プロテーゼシステムの説明に役立つ斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
これより、本発明の各種実施例を詳細に説明し、1つ以上の実施例が図面に示される。以下の図面の説明において、同じコンポーネントを示すのに、同じ参照番号が使用される。ほとんどの場合、個々の実施例に関する違いのみを記載する。各実施例は、本発明の説明として設けられており、本発明を限定することは意図しない。例えば、1つの実施例の一部として図示されるか又は記載される特徴は、更なる実施例を挙げるために他の実施例で、又は関連して用いることができる。本発明は、この種の修正変更を含むことが意図されている。
【0023】
本願明細書に記載される全肘関節置換術のための装置及び方法では、尺骨ステム及び/又は上腕骨ステム本体部の結合を利用することによって、外科医が連結型又は非連結型の拘束を手術中に選択することができる。
肘関節のシステムは、連結型若しくは非連結型であり得る。上腕骨コンポーネントは尺骨コンポーネントに対して連結型であるか、又は連結部のない非連結型である。また、付加的なモジュール方式により、本願明細書に記載されるステムにセメントを使用するか非使用(セメントレス)とするか選択することができる。
【0024】
本開示のいくつかの実施例による、モジュール式全肘関節置換術は、図1及び図2の非連結型及び連結型バージョンにそれぞれ示される。
【0025】
非モジュール式、非セメント使用の上腕骨コンポーネント構成
本開示のいくつかの実施例において、上腕骨コンポーネント19aは図3Aに図示するように、非モジュール式かつ非セメント使用(セメントレス固定)であり得る。
近位ステム1aの形状は湾曲したシリンダ形である。ステム1aの近位端は、骨への荷重分散を改良するために弾丸状の先端1bを有する。上腕骨コンポーネント19aの中間部の形状1cは、上腕骨の通常の解剖学的構造に概ね追従するように前方にカーブする。
中間部の形状1cとしては、肘頭窩と相互に作用する後部の凹状面1dと、前部の凸状面1eとを備え、断面はV形状である。そして、できるだけ遠位で上腕骨に荷重を移動させるために、内側(medial)/外側(lateral)へテーパーが付けられている。
骨へセメントレス固定させるために、中間部1cの外側面はプラズマ溶射で被覆され得るか、又は付加製造(additive manufacturing)で提供される多孔性金属、若しくはヒドロキシアパタイトを含むこともできる。
上腕骨コンポーネント19aの遠位端は、図3Bに示すように、距離β分隔て、2つの拡張(突出)体(内側(medial)18及び外側(lateral)18の顆部)を有する。大抵の場合、18の幅(WMh)は、18の幅(WLh)より大きく(図14A)、内側の荷重の移動が改善される。
内側18及び外側18の顆部は、対応する凹状の非連結型尺骨ベアリング5a及び連結型尺骨ベアリング5bに接触する凸状面21M,Lを有する。接触部は一致していない(コンフォーマル(同形状)ではない)。
顆18M,Lはそれぞれ、上腕骨コンポーネント19aの近位端の長い軸(長手方向の軸)と直角であるか又は直角でない軸12(インプラント関節軸)を共有する円筒孔17を有する。
【0026】
孔17は、プレスフィット上腕骨ブッシング3b,c又はブッシング孔キャップ3aを受け入れる。図3Bに示すように、上腕骨コンポーネント19には、組み込みの運搬角(肘外偏角)αを備えることができる。上腕骨コンポーネント19を、軟部組織/骨とつなぐために、内側及び外側上に縫合糸孔16を備えることができる(図3A及び図3C)。顆18に隣接した中間部形状1cの後方外側には、例えば裂離骨折によって生じるすべての横骨片を収容する(含める)ために、凹部27がある。縫合糸孔16を通る縫合糸と併せて用いると、凹部27は、前記破片の固定を剪断荷重から保護する。
図3Cの陰影のついた領域が示すように、縫合糸孔16、凹状部27、及び中間部形状1cへのプラズマ溶射又は多孔質コーティングが骨のイングロース(ingrowth)を促進することはいうまでもない。
【0027】
非モジュール式、セメント使用上腕骨コンポーネントの構成
開示されるいくつかの実施例において、上腕骨コンポーネント19bでは、図3Bに示されるように、骨に対してセメントを使用(セメント固定)することができる。
コンポーネント19bの遠位端の形状は、コンポーネント19aと同一であってもよい。上腕骨コンポーネント19bのセメント領域の形状は、図3Aで図示した実施例と類似し得るが、セメントのスペース(例えば、約1から2mm厚のセメント被膜)を確保するために、小型化することも可能であり、回転を安定させるために断面は矩形又は三角形である。そして、骨セメントへの応力を低減するために、それぞれの角に半径20を備える。セメント使用のコンポーネントに対して多孔質コーティングは行わない。
【0028】
上腕骨スリーブ
本開示のいくつかの実施例において、図4に図示するように、上腕骨コンポーネント19aの中間部形状1cは、上腕骨スリーブ13で置換可能である。
スリーブ内側形状14は、本体部10と嵌合する。骨へセメントレス固定させるために、スリーブ13の外側面15はプラズマ溶射で被覆され得るか、又は付加製造で提供される多孔性金属、若しくはヒドロキシアパタイトを含むこともできる。
スリーブ13の外側横断面には、肘頭窩と相互に作用する後部凹状面13aと、インプラントと骨との接触を改善するためにV形状となっている前部凸状面13bとがあり、そして、できるだけ遠位で上腕骨に荷重を移動させるために、内側/外側にテーパー形状となっている。外科医が患者の髄内の生体構造に最も適したスリーブを選択できるように、肘関節置換術システムは多くの異なる形状の上腕骨スリーブを備えることができる。
外科医が、軟部組織をインプラントにつなぐためにインプラントに縫合糸を通すことができるように、スリーブ13には縫合糸孔16を備えることができ、結果、関節を更に安定させる。スリーブ13は、モジュール式又は非モジュール式の上腕骨コンポーネントと一緒に用いることができる。
【0029】
モジュール式上腕骨コンポーネントの構成
非セメント使用及びセメント使用の上腕骨コンポーネントデザインのための別の実施例は、本開示のいくつかの実施例によって、図4に図示される。
上腕骨顆コンポーネント2が上腕骨ステム1から延びる上腕骨拡張体11と嵌合することにより、連結型及び非連結型の肘システムのモジュール方式が確立する。
コンポーネント2aの遠位端は、図5に図示するように、上腕骨コンポーネント19bの遠位端と同一の形状である。非連結型肘システムでは、上腕骨顆コンポーネント2bを使用することもできるが、円筒孔17を備えないことを除いては、コンポーネント2aと同一である。コンポーネント2は、組み込みの運搬角αを備えることができる。
【0030】
上腕骨顆コンポーネント2と軟部組織/骨とつなぐために、内側及び外側に縫合糸孔16を備えることができる(図3C)。
顆18に隣接した、コンポーネント2の後方外側に、すべての横骨片を収容する(含める)ための、凹部27を備え得る。図3Cの陰影のついた領域に示すように、縫合糸孔16、凹部27、及びコンポーネント2へのプラズマ溶射又は多孔質コーティングが骨のイングロースを促進することはいうまでもない。
【0031】
外科医が運搬角、拘束及び/又は顆の形状を調整する必要がある場合、肘関節置換術システムは様々な形状の上腕骨顆コンポーネント2を備えることができる。
図6で図示するように、上腕骨ステム1に対してセメントを使用しない場合も可能であり、そして、湾曲したシリンダの近位ステム1aと、弾丸形状の先端1bと、プラズマ溶射で被覆されるか又は付加製造で提供される多孔性金属を備える中間部の形状1cと、顆コンポーネント2と係合するために遠位部拡張体11と、を備える。
図4で図示するように、同様に中間部形状1cは、上腕骨スリーブ13で置換可能である。
回転を安定させるために上腕骨ステム1の横断面は矩形又は三角形であり、セメントを使用することもできる。そして、それぞれの角に、骨セメントへの応力を低減させるための半径を備える。
更に、例えば顆の表面が摩滅又は損傷を受ける場合、拡張体11でモジュール方式となっていることを利用して、良好に固定された上腕骨ステム1を骨管から取り外さなくても再置換できるようにする。
【0032】
このように上腕骨インプラントコンポーネントのモジュール方式によって、外科医は上腕骨ステムを別の上腕骨顆部と交換して、適合させることができる。
この特徴に基づいて病院は主に、1つの型式(モデル)の上腕骨ステムと、多種の上腕骨顆部とを組み合わせたもの又はその逆をストックしておくことができる。
上記によると、ベアリングコンポーネントだけを置き換える一方で、インプラントされたステムは適切な位置に残ったままなので、使用する可能性のあるコンポーネントの数量を低減することができる。また、広い用途のコンポーネントを提供し、ストックするコンポーネントの数も低減させることができ、大きな節約となる。
【0033】
関節接合が調節可能な尺骨コンポーネントの構成
図7及び図8で図示するように、非セメント使用の、関節接合が調整可能な尺骨ステム4は、円錐形状である遠位ステム4bを備え、そして、骨上の荷重の分散を改良するために先端4cは弾丸形である。
中間本体部4aは、内側/外側及び前部/後部及び近位/遠位にくさび(V字)形であり、横断面4dはほぼ五角形である一方、回転を安定させるために先端部は鉤状突起と相互に作用する。
ステム軸を中心とした付加的な回転モーメントに対抗するため、近位体には大きい平坦な後部表面4eが備えられる。
尺骨ステム4の近位体29には摺動捕捉(sliding capture)機構28が備えられており、そして、この機構は、ほぼ内側及び/又は外側方向から嵌入される非連結型尺骨ベアリング5a(図1)又は連結型尺骨軸受ハウジング7(図2)と相互に作用し、調節可能な関節接合を確立する。
【0034】
捕捉機構28により、適切な大きさのコンポーネントの選択や、摩滅したコンポーネントの再置換が可能となり、及び/又は、必要に応じて容易に非連結型/連結型コンポーネントを変更することができる。
図9で図示するように、非連結状態において捕捉機構28は、非連結型尺骨ベアリング5aの係合機構33と相互に作用する(図10)。捕捉機構28は連結された状態では、連結型尺骨軸受ハウジング7の係合機構39と相互に作用する(図11)。
【0035】
本明細書において、用語「尺骨ベアリングコンポーネント」は、上腕骨顆コンポーネントの遠位に突出する部分(顆)を受け入れ、そして係合するように構成される尺骨ベアリングを少なくとも含む。本願明細書に記載されるように、尺骨ベアリングコンポーネントは非連結型又は連結型構成であり得る。非連結型構成の場合、尺骨ベアリングにより、尺骨ステムを直接係合することができる。連結型構成の場合、尺骨ベアリングコンポーネントは、尺骨ベアリングを支え、尺骨ステムを係合するのに適した他の部材(ハウジング又は基板)を含むことができる。
【0036】
非連結型尺骨ベアリングコンポーネント
非連結型尺骨ベアリング5aは、図10に図示するように、例えば尺骨ステム4の摺動捕捉機構28と互いに作用し、そして、ほぼ内側及び/又は外側方向から嵌入可能な係合機構33を有する。
例えば係止コンポーネント8を用いて、ベアリング5aをステム4に堅く係止することができる。非連結型尺骨ベアリング5aは2つの凹状面31M,Lを備え、凸状の上腕骨顆18M,Lと関節接合する。
内側面31の幅(WMu)は外側面31(WLu)より大きいので、内側の荷重の移動が改善される(図14B)。関節接合は一致していない(コンフォーマルではない)。
ベアリング5aはまた、屈曲時の尺骨の後部のずれに対抗するために内側及び外側を安定させる中心ポスト30と、隆起した遠位関節面32とを備える(図9及び図10)。ポスト30の形状は、矩形でも台形でもよい。
尺骨ステム4の関節接合調整能により、外科医は、拘束の程度を術中に調整したり、及び/又は運搬角を調整したりするためポストに様々な調節を行い、ポストの厚みδ及び/又はベアリングの厚みγにより定められる様々なサイズ/オプションから尺骨ベアリング5aを選択することができる。非連結型尺骨ベアリング5aを、低摩擦材料(例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))で作製してもよい。
【0037】
連結型の尺骨ベアリングコンポーネント
連結型尺骨ベアリングハウジング7は、図11に図示するように、尺骨ステム4の摺動捕捉機構28と相互に作用する係合機構39を備える。ハウジング7は、連結型肘システムの内側/外側を安定させる中心ポスト37を備える。ハウジング7には、内側及び/又は外側方向から連結型尺骨ベアリング5bを受け入れるための第1開口部40がある。
連結型尺骨ベアリング5bには、凸状の上腕骨顆18M,Lと関節接合する2つの凹状面41M,Lがある。内側面41の幅(WMu)は外側面41の幅(WLu)より大きく、内側の荷重の移動を改善する(図14B)。関節接合は一致していない(コンフォーマルではない)。
例えば係止コンポーネント8を使用して、ベアリング5bを中心ポスト37に堅く係止するか、又は中心ポスト37に対する摺動台として作用させることこともできる。
ベアリング5bの置換が必要な場合、内側又は外側方向からベアリング5bを取り除くことができる。連結型尺骨ベアリング5bを、低摩擦材料(例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))で作製してもよい。肘関節置換術システムには、様々なハウジングのオプションが設けられる。
ポストの厚みε及び/又はベアリングの厚みλを選択することにより、拘束の程度は術中に調整可能である。
ポスト37には、回転軸6のための第2開口部38がある。回転軸孔38の位置のオプションにより、外科医が関節軸12の前後η及び/又は上/下ζのオフセットを調整することができる。
生体内で、回転軸6を内側及び/又は外側方向から中心ポスト37に組み入れることができる。例えば係止コンポーネント9を使用すれば回転軸6をハウジング7に堅く係止することができる。ハウジング7と嵌合する回転軸の中心部6cの横断面は、関節軸12を中心に回転しないようD形状である。中心部が中心ポスト37を越えるのを防止するために、中心部6cに止め具を備えることができる。回転軸の端部34は、上腕骨ブッシング3b,cの内径と関節接合する。
【0038】
セメント使用の尺骨ステム4f(図11)の形状は、近位では非セメント使用の尺骨コンポーネント4(図8)と類似しているが、中間部4a及び遠位部分4bでは、端部の横断面は丸みを帯びた矩形又は三角形である。また、セメント(例えば厚さ約1~2mmのセメント被膜)のスペースを確保するために小型化することができる。
【0039】
上腕骨と尺骨ベアリングコンポーネント間の適合していない関節接合
上腕骨顆18M,Lと尺骨ベアリング5a,b間の関節接合は、図12で図示するように、矢状面において、完全には一致していない(R3h<R3u)。R3h/R3uの比率はおよそ0.95である。
【0040】
前頭面の上腕骨顆18M,Lと尺骨ベアリング5a,b間の関節接合は、図13及び図14Cに示すように完全には一致していない。上腕骨顆関節表面21M,Lには、図14A,B,Cに示すように、関節軸12で定まる回転の主軸が設けられる。関節表面21は、軸12を中心に1つの半径R1HLを回転させて凸状面が形成される。このように実施例において、関節表面21及び21は、同じ半径により画定可能である(すなわちR1HL=R1HM)(図14Aを参照)。
【0041】
図14A及び図14Cに図示するように、関節表面21の別の実施例でも同様に主軸を備えるが、正中線12aから距離β/2離れて、接線方向に接触する2つの異なる半径R1HL(正中線12aから近い)及びR2HL(正中線12aから遠い)を有する。半径R1HL及びR2HLは関節軸12を中心に回転し、凸面を形成する。すなわち、顆18M,Lそれぞれのベアリング面(関節表面21、21)は、少なくとも2つの異なる半径により画定される。
図において、半径R1HLは外顆18の内側(medial)半径を表し、半径R2HLは外顆18の外側(lateral)半径を表す。同様に、半径R1HMは内顆18の内側(medial)半径を表し、半径R2HMは内顆18の外側(lateral)半径を表す。
従ってインプラントの中心における顆18M,Lの半径は、それぞれの顆(インプラントの端部)の両方の外側(lateral)端部での半径とは異なると理解される。
【0042】
顆18及び18の内側から外側の幅はそれぞれ、WHM及びWHLによって定義される。以下の条件が存在する場合は、内側関節表面21と外側関節表面21は等しくなくてもよい。
半径R1HMとR1HLは等しくない、
半径R2HMとR2HLは等しくない、及び/又は
HMとWHLは等しくない。
【0043】
関節表面31、41は、軸12を中心とし単一の半径R1ULを回転させることにより形成され、凹面を成す(図14B)。このように実施例において、関節表面31及び31(そして、41及び41)は、同じ半径(すなわち、R1UL=R1UM)により画定され得る。(図14B参照)
【0044】
図14B及び14Cに図示するように関節表面31、41の別の実施例では、関節軸12を中心に回転する2つの異なる半径R1UL(正中線12aに近い)及びR2UL(正中線12aから遠い)が示され、凹面が形成されている。
図において、半径R1ULは外側面31、41の内側半径(medial)を表し、半径R2ULは外側面31、41の外側半径(lateral)を表す。同様に、半径R1UMは内側面31、41の内側半径(medial)を表し、半径R2UMは内側面31、41の外側半径(lateral)を表す。
従って表面31M,L及び41M,Lのインプラントの中心部での半径は、それぞれの顆の外側端部(インプラントの外側端部)での半径とは異なると理解される。
【0045】
表面31及び41の内側から外側の幅は、WUMにより定義される。表面31及び41の内側から外側の幅は、WULによって定義される。以下の条件が存在する場合は、内側関節表面31及び41は外側関節表面31及び41にそれぞれ等しくなくてもよい。
半径R1UMとR1ULは等しくない、
半径R2UMとR2ULは等しくない、及び/又は
UMとWULは等しくない。
上腕骨顆18の2つの半径の実施形態は、外部からモーメントが加えられると、それぞれの2つの半径の尺骨ベアリング面31、41を回動するので、図13及び14Cに示すように、それぞれの関節接合上の接触位置が、段階的外側に移動することにより(正中線12aから離れ)、復元モーメント(復元力)が増大する。
【0046】
非連結型尺骨ベアリング5aの関節表面31M,Lは、関節表面41M,Lと非常に類似している。
しかし図9に示すように、非連結型ベアリング5aは隆起した遠位表面32を備え、連結型ベアリング5bより上方に更に延在する。その結果、凹面は、肘関節の運動範囲を広げるために、この拡張された領域に広がる。
【0047】
従って、前頭面では上腕骨顆18M,Lと尺骨ベアリング5a,b間の関節接合は、図13及び図14Cに図示するように完全には一致しない。
1HL/R1UL、R1HM/R1UM、R2HL/R2UL、及びR2HM/R2UMの比率は、約0.85―0.98である。
【0048】
図13の一番上の矢印は、関節全体に加えられる圧縮力(F)を表し、そして、2つの底部の矢印は、関節反力(F/2)を表すことが理解される。
内反のモーメント(M+)(第1のカーブする矢印)が加えられると、関節反力(F+)は、外側(短い下部の矢印)より内側(長い下部の矢印)の方が大きくなる。より大きな内反のモーメント(M++)(第2のカーブする矢印)が加えられると、関節反力(F++)は完全に内側のみとなり、外側から離れる。
加えて関節反力(F++)の接触位置は、図13中の右図に示すように、R2HLがR2UL上を転がるので、距離X分、外側にシフトする。
【0049】
従って本発明の一実施例によると、上腕骨顆18M,L及び尺骨ベアリング5a,bのベアリング面は、従来設計にあるような円環形状(トロイダル形状)ではなく、係るベアリング面はそれぞれ、少なくとも2つの異なる半径を呈する前頭面の横断面を有する。
この構造により、2つの嵌合するコンポーネントは、この2つのコンポーネント間での運動の際に、2つの嵌合するコンポーネントの接触が(外側方向へ)シフト又は移動することとなり、そして、本願明細書に記載される利点が提供される。
【0050】
連結型構成のための上腕骨ブッシング
連結型の全肘構成で用いるために図15及び16で図示するような、上腕骨ブッシング3b,cは、内側上腕骨18顆又は外側上腕骨18顆の内径17にプレスフィットされる円筒状外径24を有する。
1つの実施例において、円錐形の回転軸6aの端部34aが内径26aと接触する際の接触領域を大きくするため、内径26aは円錐であり得る。円錐形の回転軸6aの円錐角度は、円錐ブッシング3bの内径26aの円錐角度より小さい。
他の実施例において、バレル形のブッシング3cとバレル形の回転軸6b間の関節接合36は、一致しない(コンフォーマルでない)。図17に図示するように、このカーブする関節接合により、回転軸6bがブッシング3cに接触する運動すべてで接触圧が改善される。図18に図示するように、ブッシングの中央面25は、内側外側間の並進の間、連結型尺骨ベアリングハウジングのポスト37と関節接合している。
ブッシングは、低摩擦材料(例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))で作製することもできる。
【0051】
非連結型構成のための上腕骨ブッシングキャップ
図15に図示するように、上腕骨ブッシング孔キャップ3aは、内側18又は外側18上腕骨顆の円筒孔17に嵌入することができ、そして、非連結型総肘構成に用いることができる。
図18に図示するように、キャップの中央面23は、内側外側間の並進の間、非連結型尺骨ベアリング5aのポスト30に関節接合されている。
肘を連結型構成に変換する場合、キャップ3aを取り外し処分することができる。
【0052】
橈骨頭コンポーネント42は、図19に図示するように、小頭で関節接合する近位体43を有する。コンポーネント42は、橈骨の骨幹軸に続く遠位ステム44を有する。骨へのセメントレス固定を促進するため、ステム44は、プラズマ溶射で被覆され得るか、又は付加製造で提供される多孔性金属、若しくはヒドロキシアパタイトを含むこともできる。
【0053】
肘関節置換装置の好適な一般的な運搬角は10°であり、この場合尺骨の運搬角が3°であり、上腕骨は7°である。
【0054】
装置の運動範囲は、0~160度の屈曲となり得る。
【0055】
生来の肘軟部組織構造が回復する時間と並行して、その時間に吸収する物質を装置に埋め込むことができる。生来の肘が治癒の過程で強くなるに従い、その物質による吸収により、肘関節置換術の関節の硬さが軽減していく。
【0056】
非連結型デザインでは、凸状の上腕骨顆18は、凹面の非連結型尺骨ベアリング面31と関節接合する。関節接合が調整可能な尺骨ステム4により、コンポーネントが摩耗したり、異なる拘束タイプが必要である場合、尺骨ベアリング5aは交換可能である。尺骨ベアリング5aは、軟部組織の拘束を術中に調整するため、様々な厚みγがある。ポスト37は、インプラントの拘束を術中に調整するために、様々な厚みδがある。
三頭筋の近位尺骨への接続を維持させるために、尺骨ベアリング5aは、ほぼ内側及び/又は外側方向から尺骨ステム4に組み入れられる。
上腕骨コンポーネントがモジュール式顆接続19a及び19bを有しない場合、ブッシング孔17は、顆18及びブッシングキャップの中央面23が非連結型尺骨ベアリング5aと関節接合できるようにキャップ3aを外すことができる。
【0057】
連結型デザインでは、凸状の上腕骨コンポーネント顆18はそれぞれ、プレスフィット上腕骨ブッシング3b,cを捕捉する、同じ軸に沿った円筒孔17を有する。
連結型尺骨ベアリングハウジング7は、三頭筋の近位尺骨への接続を維持させるために、摺動捕捉機構28により、ほぼ内側及び/又は外側方向から尺骨ステム4に組み入れられる。
連結型で凸状の尺骨ベアリング5bは尺骨ベアリングハウジング7と係合されるが、例えば時間の経過とともにベアリング面が摩耗する場合は再置換も可能である。
回転軸6は、例えば係止コンポーネント9を用いて、尺骨ベアリングハウジング7に、堅く係止される。
上腕骨の関節表面は、尺骨の関節表面と順次係合される(図17及び図18)。
1.内反/外反回転で、それぞれ、内側及び/又は外側の上腕骨顆表面21M,Lは、連結型尺骨ベアリングの内側及び/又は外側ベアリング面41と関節接合する。
2.更なる回転で、片側の上腕骨顆が片側の尺骨ベアリング面から離れ、そして、回転軸6は上腕骨ブッシング3b,cの内面26と関節接合する。
3.更なる回転及び内側外側間の並進で、上腕骨ブッシング3b,cの中央面25は、連結型尺骨ベアリングハウジングのポスト37と関節接合する。
【0058】
全肘関節置換装置
本開示内容よる全肘関節置換装置100の、本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な、実施例を説明するために図20図33を用いる。
全肘関節置換装置100は、全置換術で用いられ、そして、ヒンジピン又は回転軸106を単に追加/取り除くことによって、外科医が手術中に拘束を非連結型又は連結型から選択できるように開発される。
例えば、本開示内容の実施例によるモジュール式、連結型肘関節置換装置100を記載するために用いる図23を参照する。
【0059】
実施例によると、ヒンジ回転軸106には、ネジ切り(ネジ加工)されかつテーパー形状又は円錐形の中間部106aが備えられ得る(例えば図20、22、24及び25を参照)。
【0060】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、全肘関節置換装置100は、2つのメインパーツ(すなわち上腕骨コンポーネント又は上腕骨インプラント119と、尺骨コンポーネント又は尺骨のインプラント104)を主要部として含む。
上腕骨コンポーネント119及び尺骨コンポーネント104は、関節接合軸を中心とし、互いに関節接合するように構成される。
連結型拘束構成の場合、上述したヒンジ回転軸106(例えば金属の回転軸)を嵌入し、嵌合させ、ねじで留めることによって、2つのパーツ(上腕骨コンポーネント119及び尺骨コンポーネント104)、は、ヒンジの軸112(この場合上述の関節接合軸と一致する)を中心とし、互いに機械的にヒンジ結合され得る。
ヒンジ回転軸106は、ネジ切りされかつテーパー形状又は円錐形の中間部106aで、尺骨コンポーネント104に嵌合させ、ねじで留められ得る。
連結型から非連結型の拘束構成に変更するには、例えばねじを抜き、脱離することで、ヒンジ回転軸106を取り除けばよい。
ヒンジ回転軸106が取り除かれた非連結型構成では、機械的なヒンジの拘束は設けられていないが、上腕骨コンポーネント119及び尺骨コンポーネント104はいずれの場合も、関節接合軸を中心とし互いに関節接合することができる。
【0061】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、上腕骨コンポーネント119は、上腕骨ステム101、上腕骨顆本体102、及び2つの上腕骨ブッシング103を含むことができる。
【0062】
上腕骨ステム101の遠位端に、顆本体102を結合することができる。
考えられる実施では、上腕骨ステム101及び上腕骨顆本体102は、分離可能に結合することができる。すなわち、上腕骨ステム101の遠位端に対して顆本体102の結合は取り外し可能であるので、連結型及び非連結型肘システムのモジュール方式が確立される。
機械的接合(例えばテーパー結合)により、上腕骨ステム101の遠位端に顆本体102を結合することができる。例えば、本願明細書に記載される実施例に関し用いられるテーパー結合は、標準のテーパー形状であり、本質的に、ロッド(棒)の斜切(斜状に切断)で確定される。
【0063】
考えられる実施では、上腕骨ねじ108は、顆本体102及び上腕骨ステム101を結合するために設けることができる。
上腕骨ねじ108は、顆本体102及び上腕骨ステム101を確実に結合するために用いることができる。例えば、上腕骨ねじ108を用いて、上述の機械的接合(例えばテーパー結合)による顆本体102及び上腕骨ステム101を結合することができる。
【0064】
考えられる実施では、顆本体102は双顆部分を備えることができる。そして具体的には双顆部分は、遠位に拡張し、離隔して形成された顆部又は顆118(すなわち内顆及び外顆)を備える。
更に詳細に後述するように、それらの顆部118は、尺骨コンポーネント104の一部を受け入れるために、互いに離れている。
また更に詳細に後述するように、顆部118は、内側外側間の並進の間、尺骨コンポーネント104に設けられる嵌合する関節接合ハウジング139に関節接合するように構成される。特に顆部118は、顆ベアリング面121を確定するよう構成される。
【0065】
実施例によれば、離隔して形成された2つの上腕骨顆部118はそれぞれ、内側に関節接合のための環状壁115を備えており、上腕骨顆部118の中央面116が画定される。
環状壁115は、径方向内向きに顆部118の内側周辺端から突出する。
例えば環状壁115は、環状バンド又は環状の構造(例えば放射環状又は縁付きの突起又は付属部)で画定され得る。考えられる実施では、環状壁115は隆起しているか又は凸状であり得る。そして更に、その周縁は面取り又はラウンディング(丸め加工)することができる。
【0066】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、2つの上腕骨ブッシング103は、上腕骨顆本体102に、具体的には顆部118に嵌入することができる。
【0067】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、2つの上腕骨ブッシング103及び上腕骨顆本体102は、機械的干渉によって互いに結合し、安定して位置決めできるよう構成することができる。
考えられる実施によれば、具体的には2つの上腕骨ブッシング103及び上腕骨顆本体102(特に顆部118)は、上述の相互に結合し、安定して位置決めできるように、干渉(すなわちプレスフィット)により互いに機械的に接合するための嵌合する雌雄の円筒部分を備えることができる。
具体的には、当該コンポーネントの、雌雄の円筒部分間の干渉により、上腕骨ブッシング103及び上腕骨顆本体102(特に顆部118)を結合することができる。
【0068】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、2つの上腕骨ブッシング103を上腕骨顆本体102の顆部118に嵌入することができ、特定の関節接合の形態を確定し、連結型構成の場合には、ヒンジ回転軸106を嵌入させるようにすることができる。
【0069】
考えられる実施では、上腕骨顆本体102は、ブッシング孔117を備え得る。詳細には、上腕骨顆本体102の顆部分118それぞれに、ブッシング孔117を備えることができる。
それぞれのブッシング孔117は、それぞれの上腕骨ブッシング103を受け入れ、安定して配置するように構成され得る。例えば、ブッシング孔117は、上腕骨ブッシング103と嵌合する大きさとすることができる。
具体的には、ブッシング孔117に上腕骨ブッシング103をプレスフィットすることができる。ブッシング孔117は、上述のヒンジの軸112に沿ってアライメント(位置合わせ)することができる。
ブッシング孔117は、ヒンジの軸112に沿って顆部118を貫通する孔として作製され、そして、上述の関節接合の環状壁115により顆本体102の内側の範囲が定められる。
関節接合の環状壁115は、顆部118の内側では、ブッシング孔117を円周方向に取り囲み、径方向に突出する。よって、それぞれのブッシング孔117に受け入れる上腕骨ブッシング103を軸方向で止めるためにブッシング孔117の直径は狭まっている。一方で、顆部118の外側では、ブッシング孔117の直径は縮小されておらず、すなわち、ヒンジの軸112に沿って上腕骨ブッシング103を嵌入させるために広くなっている。
関節接合環状壁115があるので、ヒンジの軸112に沿って、顆部118の外側からブッシング孔117に上腕骨ブッシング103を嵌入することができる。
【0070】
上腕骨ブッシング103は、ブッシング孔117全体の長さに亘る機械的干渉(具体的には円筒状干渉)によって、それぞれのブッシング孔117内部に保持されることができる。特に、上腕骨ブッシング103はそれぞれ、上腕骨顆部118のブッシング孔117の内径にプレスフィットさせるための円筒外径を有することができる。
【0071】
更に、下記でより詳細に記載するように、尺骨ベアリング105の中央フィンカバー130と関節接合するために、2つの顆部118間の内側に設けられる関節接合環状壁115は、適切な関節面、すなわち上述の中央面116を確定する。
【0072】
上記のヒンジ回転軸106は、顆部118のブッシング孔117及び上腕骨ブッシング103を介して、ヒンジの軸112に沿って配置することができる(例えば図22参照)。
このように、本願明細書に記載される全肘関節置換装置100を、連結型拘束で構成することができる(例えば図23参照)。そして、ヒンジ回転軸106を取り除くことによって、本願明細書に記載される全肘関節置換装置100を、非連結型拘束で構成することもできる。
【0073】
図20図32を用いて記載される可能な、有利な実施例に従って、ある構成から他の構成へ手術中に切り替えるときに、異なる種類の上腕骨ブッシングを提供する必要はない。
【0074】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によると、上腕骨ステム101、上腕骨顆本体102(特に上腕骨顆部118)、ヒンジ回転軸106、及び上腕骨ねじ108は、金属、具体的には生体適合性金属で作製することができる。上記金属は例えば、チタン又はチタン系合金であってもよい。
【0075】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、2つの上腕骨ブッシング103は、低摩擦材料、具体的にはプラスチックポリマー、更には生体適合性のあるプラスチックポリマーで作製することができる。プラスチックポリマーは例えば、ポリエチレン又はポリエチレン系ポリマーであってもよい。具体例には、例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)であってもよい。
【0076】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、尺骨コンポーネント104は、尺骨ステム110、近位尺骨本体又は尺骨ハウジング107、及び尺骨ベアリング105を含むことができる。尺骨本体107及び尺骨ベアリング105は、互いに連結し連結状態となるよう構成される。更に、尺骨ベアリング105及び上腕骨コンポーネント119の顆部118は、関節接合状態でヒンジの軸112を中心とし、互いに関節接合するよう構成される。
【0077】
尺骨本体107を、尺骨ステム110に結合することができる。考えられる実施によると、尺骨ステム110及び尺骨本体107は、分離可能に結合することができる。すなわち、尺骨ステム110と尺骨本体107間の結合は取り外すことができるので、連結型及び非連結型肘システムのモジュール方式が確立される。
実施例によれば、機械的接合(例えばテーパー結合)で、近位尺骨本体107を尺骨ステム110に結合することができる。
【0078】
考えられる実施では、近位尺骨本体107と尺骨ステム110とを結合するために、尺骨ねじ109を設けることができる。近位尺骨本体107と尺骨ステム110とを確実に結合するために、尺骨ねじ109を用いることができる。例えば、尺骨ねじ109を用いて、上述の機械的接合(例えばテーパー結合)による近位尺骨本体107と尺骨ステム110とを結合することができる。
【0079】
実施例によれば、機械的接合、例えばスナップフィットロック機構を用いて、近位尺骨本体107を尺骨ベアリング105に結合することができる。
【0080】
実施例によれば、尺骨ベアリング105は中央フィンカバー130を備えることができる。そして、上述の上腕骨顆本体102(具体的には離隔して形成された2つの上腕骨顆部118)を受け入れ、関節接合するための2つの関節接合ハウジング139を、中央フィンカバー130の両側にそれぞれ画定する。
更に内側外側間の並進の間に、関節接合の環状壁115の上腕骨部分の中央面116は、尺骨ベアリング105の中央フィンカバー130の外側面131と関節接合する。
【0081】
好適な実施例では、より詳細には以下に記載されるが、上腕骨顆部118が金属で作製され、尺骨ベアリング105は低摩擦材料で作製されるので、上腕骨顆部118の関節接合の環状壁115の上腕骨部分の中央面116も金属で作製され、低摩擦材料で作製される中央フィンカバー130と関節接合することができる。
本開示内容による肘関節置換術プロテーゼでは、関節接合を改良し、そして関節接合の部品における摩耗を低減するために、それぞれ、金属及び低摩擦材料で作製されたコンポーネント又は面での関節接合が望ましいのである。
【0082】
実施例によれば、近位尺骨本体107は、中央フィン又はポスト137を備えることができる。中央フィン137は、尺骨ベアリング105と連結するよう構成される。
具体的には、尺骨ベアリング105は結合スロット141(例えば図24及び図25参照)を備え、上述の中央フィン137を受け入れるよう構成される。また具体的には、結合スロット141は、尺骨ベアリング105の中央フィンカバー130に設けられる。
中央フィン137は尺骨ポストカバー130の結合スロット141に嵌入され、尺骨ベアリング105が中央フィン137上に配置される。その結果、中央フィンカバー130は中央フィン137を覆う(カバー)又は組み込む。
中央フィン137はこのように、尺骨ポストカバー130の本体に完全に含まれることができる。中央フィン137は例えば非連結型構成において、尺骨ベアリング105上の曲げ応力を低減させるのに有利となる。
【0083】
考えられる実施によれば、中央フィン137は尺骨連結孔又は開口部143を備えることができる。このように連結型構成で、ヒンジ回転軸106を中央フィン137に嵌入することができる。
【0084】
実施例によれば、ヒンジ回転軸106は尺骨連結孔143に固定して取り付けることができる。
考えられる実施では尺骨連結孔143は、ヒンジ回転軸106の上記のねじ切りされかつテーパー形状又は円錐形の中間部106aと嵌合する、ねじ切りされかつテーパー形状又は円錐形の部分143aを、前記ヒンジ回転軸106に嵌合させ、ねじ留めするために、備えることができる(例えば図20、22、24、及び25参照)。
ヒンジ回転軸106及び尺骨連結孔143のねじ部をねじ留めすると共に、形状がテーパー形状又は円錐形であることにより達成される嵌合は有利である。なぜなら、ヒンジ回転軸106と尺骨連結孔143間の連結が強固となり、そして、安定性及び信頼性が高められる。ヒンジ回転軸106及び尺骨連結孔143が単にねじで螺合されるだけである場合には、ねじが抜けて緩みが生じてしまう可能性がある。
【0085】
具体的には、尺骨連結孔143を用いて中央フィン137にヒンジ回転軸106を嵌合し、ねじ留めすることができる。
尺骨ベアリング105は同様に、尺骨ヒンジ孔又は開口部145を備え、そして、尺骨ベアリング105を近位尺骨本体107に連結させるときに、尺骨ヒンジ孔又は開口部145を尺骨連結孔143と軸合わせする。
尺骨ヒンジ孔145及び尺骨連結孔143は、ヒンジの軸112に沿ってヒンジ回転軸106を完全に通過させるよう、尺骨ベアリング105及び尺骨本体107をそれぞれ介して作製される貫通孔である。
【0086】
考えられる実施によれば、尺骨連結孔143のねじ切りされかつテーパー形状又は円錐形の部分143aには、内側がねじ切りされた面147と、テーパー接合面149(例えばテーパー結合)と、を備えることができる(例えば図25参照)。
従って、ヒンジ回転軸106の上述のネジ切りされかつテーパー又は円錐形の中間部106aは、嵌合するねじ切りされた面151と、テーパー面152と、を備えることができ(図20、22、24、及び25参照)、それぞれ、ねじ切りされかつ先細り又は円錐形の部分143aの、内側がねじ切りされた面147とテーパー接合面149とに螺合するように構成される。
従って、嵌合するねじ切りされた面151及びテーパー面152は、ヒンジ回転軸106の中心部に配置することができる。
ヒンジ回転軸106はまた、バレル形の末端部分153と、反対側のバレル形の末端部分155とを備えることができる。バレル形の末端部分153、155は、上述の上腕骨ブッシング103の内面と関節接合するように構成される。ヒンジ回転軸106の嵌合するねじ切りされた面151とテーパー面152とは、バレル形の末端部分153と対向する末端部分155の間、中心部に位置することができる。
末端部分153の横断面直径を、対向する末端部分155の横断面直径より狭くすることができる。末端部分153の横断面直径はより狭く、尺骨連結孔143を介して嵌入するのに適している。一方で、対向する末端部分155の横断面直径は、尺骨連結孔143の直径より大きくてもよい。
このように、ヒンジの軸112に沿って尺骨連結孔143を介し、ヒンジ回転軸の挿入方向を一義的に定めることができる。
他の実施態様において、例えば末端部分153、155の片方又は両方は、円筒形又は円錐形であり得る。例えば、対向する末端部分155は、円筒状であるか、又はヒンジ回転軸106の中央へ、軸方向にテーパーが付けられていてもよい。
【0087】
ヒンジ回転軸106は、例えば末端部分153、あるいは対向する末端部分155に、多角形、例えば六角形の中空の頭部を備えることもでき、そして、嵌合するねじ留めツール、例えばアレンキー(六角棒スパナ)を受け入れるよう構成される。
【0088】
考えられる実施によれば、尺骨本体107は、1つ以上の隆起する取付突起部又は歯148、又は類似の係合機構を備えることができる。従って、尺骨ベアリング105は1つ以上の嵌合スロット150又は類似の捕捉機構を備えることができる。そして、尺骨本体107のそれぞれの取付突起部148と係合するよう構成される(例えば図32参照)。このように取付突起部148とスロット150間の係合により、尺骨本体107と尺骨ベアリング105とを機械的に接合させることができる。
【0089】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、尺骨ステム110、近位尺骨本体107、及び尺骨ねじ109は、金属、具体的には生体適合性金属で作製することができる。金属は例えば、チタン又はチタン系合金であってもよい。
【0090】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、尺骨ベアリング105は、低摩擦材料、具体的にはプラスチックポリマー、更には生物学的適合性のプラスチックポリマーで作製することができる。プラスチックポリマーは例えば、ポリエチレン又はポリエチレン系ポリマーであってもよい。具体例には、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)であってもよい。
【0091】
本開示内容の有利な実施例によれば、上記に記載されるように、ヒンジ回転軸106及び尺骨本体107は金属で作製される。従って、連結型構成のヒンジの軸112を中心とした、上腕骨コンポーネント119及び尺骨コンポーネント104のヒンジ結合に対して、適切な機械的耐性が達成される。
更に、尺骨本体107とヒンジ回転軸106とをねじで結合することによって、上腕骨コンポーネント119及び尺骨コンポーネント104間の結合における安全性及び信頼性が達成される。
【0092】
本開示内容の有利な実施例によれば、上腕骨ブッシング103が上述の低摩擦材料で作製されるので、連結型と非連結型構成両方で、金属で作製されるヒンジ回転軸106が上腕骨ブッシング103で適切に関節接合される。
【0093】
本開示内容の有利な実施例によれば、上腕骨顆本体102は上記に記載されるように金属で作製され、尺骨ベアリング105は上述の低摩擦材料で作製されることによって、連結型及び非連結型構成両方で、金属で作製される上腕骨顆本体102が尺骨ベアリング105に対して適切に関節接合される。
具体的にはこの種の実施例では、上腕骨顆本体102の顆ベアリング面121及び内側関節接合環状壁115は、金属で作製することができる。そして、連結型及び非連結型構成において、顆ベアリング面121及び内側関節接合環状壁115は、上述の低摩擦材料で作製される関節接合ハウジング139及び中央フィン又はポスト137の横面と、それぞれ接触し関節接合する。
【0094】
本願明細書に記載される実施例はまた、上腕骨コンポーネント119及び尺骨コンポーネント104を含む肘プロテーゼ100を、その場で(in situ)、非連結型構成から連結型構成に、又は連結型構成から非連結型構成へ変換する方法について説明する。
【0095】
非連結型構成から連結型構成へ変換する場合は、以下のステップから成る。
上腕骨コンポーネント119の顆部118にある上腕骨ブッシング103並びに、尺骨コンポーネント104の一部である尺骨ベアリング105及び尺骨本体107にそれぞれ形成され、前記ヒンジの軸112に沿って位置合わせされた尺骨ヒンジ孔145及び尺骨連結孔143に、ヒンジ回転軸106をヒンジの軸112に沿って通し、
尺骨連結孔143にヒンジ回転軸106を嵌合させ、ねじで留めることにより、
腕骨コンポーネント119と尺骨コンポーネント104とを連結するステップ。
【0096】
連結型構成から非連結型構成への変換の場合は以下のステップから成る。
尺骨連結孔143からヒンジ回転軸106のねじを抜き分離させ、
上腕骨コンポーネント119の顆部118にある上腕骨ブッシング103並びに、尺骨コンポーネント104の一部である尺骨ベアリング105及び尺骨本体107にそれぞれ形成され、前記ヒンジの軸112に沿って位置合わせされた尺骨ヒンジ孔145及び尺骨連結孔143に対して、ヒンジ回転軸106をヒンジの軸112に沿って通過させることにより、
上腕骨コンポーネント119及び尺骨コンポーネント104の連結を外すステップ。
【0097】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、全肘関節置換術100は、上腕骨コンポーネント119及び尺骨コンポーネント104のモジュール式構成を備えていることができ、そして、具体的には、上腕骨ステム101と上腕骨顆本体102間を、そして、尺骨ステム110と近位尺骨本体107間を取り外し可能に結合することによって提供される。
考えられる実施では、上腕骨ステム101及び/又は尺骨ステム110は、骨にセメントレス固定させるために、すなわちオステオインテグレーション(osteointegration/骨結合)を促進するように構成される1つ以上の表面又は部分を備えることができる。
特定の実施態様によれば、骨にセメントレス固定させるよう構成されるこの種の1つ以上の表面又は部分は、上腕骨ステム101及び/又は尺骨ステム110上だけに提供され、顆本体102及び/又は尺骨本体107上には提供されない。
【0098】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、上腕骨顆本体102は、上腕骨ステム101の末端部分161に設けられる上腕骨座部159と嵌合する上腕骨拡張体157を備えることができるので(例えば図28参照)、上腕骨コンポーネント119の連結型及び非連結型肘システムのモジュール方式が確立される。
上腕骨ステム101の末端部分161は、骨にセメントレス固定を促進させるよう、すなわちオステオインテグレーションを促進するよう構成することができる。
考えられる実施では、具体的には上腕骨ステム101の末端部分161の外面は、プラズマ溶射で被覆され得るか、又は付加製造で提供される多孔性金属、若しくはヒドロキシアパタイトを含むこともできる。
特定の実施態様において、上腕骨ステム101の末端部分161はオステオインテグレーションを促進するために、少なくとも部分的に、骨小柱(trabecular/トラベキュラー)構造、例えばチタン系(例えばチタン合金TiA1V)又はコバルト合金系骨小柱構造を備えることができる。
【0099】
例えば可能な実施例によると、骨小柱構造は、三次元的に配置され、開放され相互に連通し、互いに結合されている複数の空孔を画定するセルを備える格子構造である。
具体的には、空孔を画定する空間的に拡がった複数の多角形(例えば六角形)を画定するように、基本セルが開口し連続しているセル構造を有して、空間的に繰り返された複数の幾何学的メッシュの1つ以上のモデル(型式)により、連続性を損なうことなく、格子構造を形成することができ、その格子によりオステオインテグレーションが促進されるようにすることができる。
考えられる実施では、各幾何学的メッシュは、同一平面上にない頂点を有する多角形(例えば六角形)であり、そして、各基本セルの開いて自由(free)な領域は、約0.3mm~約1.5mmの直径に相当する円に相当する。
【0100】
本開示内容によれば、本願明細書に記載される実施例で用いることが可能な骨小柱構造は、例えば適用可能な、合成から付加製造(AM:additive manufacturing)まで、DMSLS(Direct Metal Selective Laser Sintering/直接金属選択的レーザー焼結)、SLM(Selective Laser Melting/選択的レーザー溶融)、EBM(electron Beam Melting/電子ビーム溶融)を含み、そして従来の機械加工といった広範囲に亘る技術により得ることができる。
【0101】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、尺骨ステム110は、尺骨本体107に設けられる尺骨座部165(例えば図29参照)と嵌合する尺骨拡張体163を有する末端部分162を備えることができるので、尺骨コンポーネント104の連結型及び非連結型肘システムのモジュール方式も確立される。
尺骨ステム110の末端部分162は、骨にセメントレス固定させるよう、すなわちオステオインテグレーションを促進するよう構成することができる。
具体的には考えられる実施では、尺骨ステム110の末端部分162の外面は、プラズマ溶射で被覆され得るか、又は付加製造し提供される多孔性金属、若しくはヒドロキシアパタイトを含むこともできる。
特定の実施態様において、尺骨ステム110の末端部分162は、オステオインテグレーションを促進するために少なくとも部分的に、骨小柱構造、例えばチタン系(例えばチタン合金TiA1V)又はコバルト合金系骨小柱構造を備えることができる。
【0102】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によれば、尺骨拡張体163及び嵌合尺骨座部165と同様に、上腕骨拡張体157及び嵌合上腕骨座部159は、上述した上腕骨ねじ108及び尺骨ねじ109をそれぞれ嵌入するためのそれぞれの孔157A、159A、163A及び165Aを備える。(例えば図26、27、28、29、30、及び31参照)
【0103】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によると、尺骨拡張体163及び嵌合尺骨座部165と同様に、上腕骨拡張体157及び嵌合上腕骨座部159は、相互の幾何学的な連結、具体的には円錐連結、例えば上記に開示されるようなテーパー結合を画定するよう構成(具体的には成形)することができる。
【0104】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によると、尺骨拡張体163及び嵌合尺骨座部165と同様に、上腕骨拡張体157及び嵌合上腕骨座部159は、1つ以上の起伏又はアンダーカット(窪み)を備えることができ、そして、非対称の二重湾曲(double-curved)形状を備えることもできる。
この非対称の二重湾曲形状は、連結されたコンポーネント、すなわち上腕骨ステム101及び上腕骨本体102及び尺骨ステム110及び尺骨本体107の回転防止のために効果的であり得る。
具体的にはこの種の形状は、例えば非対称の二重湾曲外周形状169A、169B、169C、及び169Dにより区切ることができる(例えば図26、27、28、29、30、及び31参照)。
考えられる実施では、この周形状169A、169B、169C、及び169Dは、離隔して画定された異なる直径の2つの円周、すなわち、片方は長い直径を有する円周で、もう一方は短い直径を有する円周により画定され得る。
更に、2つの円周は、例えば合流部分(例えば直線又はカーブ部分)を有する接合面形状(プロファイル)でつなげることができる。
上腕骨拡張体157及び尺骨拡張体163の周形状169A及び169Dのこの非対称の二重湾曲形状は、2つの円周を接合する表面に起伏又はアンダーカットを備えることができる。
この形状構成の1つの利点は、上腕骨拡張体157及び尺骨拡張体163の2つの円周の表面(形状は効果的に制御される)に、このように上腕骨座部159及び尺骨座部165が確実に接触することが保証されるということであり得る。
上腕骨拡張体157及び尺骨拡張体163の周形状169A及び169Dに起伏又はアンダーカットを設ける更なる1つの利点は、接触面を縮小することができるということもあり、その結果、フレッティングにより生じる微粒子の生成を低減し得る。
例えば、上腕骨拡張体157及び尺骨拡張体163の周形状169A及び169Dの2つの円周は、合流部分(例えば直線又はカーブ部分)でつなげることができ、そして、上記の起伏又はアンダーカットを確定するよう成形されることができる。この形状には、使用中は機械の応力に対する抵抗を最適化するという利点がある。
【0105】
本願明細書に記載されるすべての実施例と組み合わせ可能な実施例によると、全肘関節置換術100のコンポーネントの一般的なモジュール方式は、上腕骨コンポーネント119及び尺骨コンポーネント104のモジュール式構成により提供することができ、そして、具体的には、上腕骨ステム101と上腕骨顆本体102間を、そして、尺骨ステム110と近位尺骨本体107間を取り外し可能に結合することによって提供することができる。
このモジュール方式では、異なる種類の上腕骨及び/又は尺骨ステム、例えばセメント使用、非セメント使用/セメントレス、又は置換、そして、異なる遠位上腕骨パーツ、例えば解剖的スプール180(例えば半プロテーゼシステム、例えば図33参照)又は上腕骨顆本体102を選択できるようにし、そして、置換外科手術の場合は、手術工程を容易にする。
【0106】
本願明細書に開示される肘関節置換装置を患者に埋め込むための外科的技術により、三頭筋を切開せずに済む。内側又は外側からのアプローチは、装置を埋め込むのに用いることができる。このアプローチの侵襲性は低くないが、軟部組織が温存される。外側の軟部組織構造が温存される。遠位上腕骨上顆を保持することができる。橈骨頭の切除は任意である。
【0107】
本発明が特定の実施例に関連して記載される一方で、本発明は他の形でも実施され、そして他の材料や構造を利用することもできる。従って本発明は、本願明細書に添付される請求項及びその同等物の詳述により定義される。
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図3A
図3B
図3C
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