(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】圃場作業システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20220809BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20220809BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20220809BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
A01B69/00 301
A01C11/02 331D
G05D1/02 N
(21)【出願番号】P 2019001362
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】絹田 圭志
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-123829(JP,A)
【文献】特開2015-112070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0216406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01C 11/02
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場作業機が、圃場の周囲の畦に近づくように直進走行を行い、直進走行後に再び直進走行を行うために旋回走行を行うことを繰り返しながら、当該圃場作業機の作業装置による作業を前記圃場に対して行う圃場作業システムにおいて、
前記圃場作業機の位置を取得する位置取得部と、
前記位置取得部により取得された前記圃場作業機の位置を、前記圃場で直進走行と旋回走行とを行う当該圃場作業機の挙動に関連付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶された、前記畦に近接する2点以上の前記圃場作業機の位置に基づいて、
畦際領域を推定する
第1モードと、前記畦に近接する1点の前記圃場作業機の位置に基づいて、畦際領域を推定する第2モードと、を切換可能な推定部と、
を備えることを特徴とする圃場作業システム。
【請求項2】
請求項1に記載の圃場作業システムであって、
前記圃場が、前記圃場作業機の進行方向と直交する第1畦と前記圃場作業機の進行方向に対して傾斜する第2畦とを含む場合に、
前記推定部は、前記第1畦において前記第2モードにより畦際領域を推定し、前記第2畦において前記第1モードにより畦際領域を推定することを特徴とする圃場作業システム。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の圃場作業システムであって、
前記圃場作業機の挙動は、前記圃場作業機の直進走行から旋回走行への移行、及び、前記圃場作業機の旋回走行から直進走行への移行であり、
前記記憶部は、前記圃場作業機の直進走行から旋回走行への移行時における当該圃場作業機の位置を旋回開始地点とし、かつ、前記圃場作業機の旋回走行から直進走行への移行時における当該圃場作業機の位置を旋回終了地点として記憶し、
前記推定部は、
前記第1モードにおいて前記記憶部により記憶された前記圃場作業機の位置のうち、
2点の前記旋回終了地点、又は、
2点の前記旋回開始地点に基づいて、前記畦際領域を推定することを特徴とする圃場作業システム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の圃場作業システムであって、
前記圃場作業機の挙動は、前記圃場作業機の直進走行から旋回走行への移行、及び、前記圃場作業機の旋回走行から直進走行への移行であり、
前記記憶部は、前記圃場作業機の直進走行から旋回走行への移行時における当該圃場作業機の位置を旋回開始地点とし、かつ、前記圃場作業機の旋回走行から直進走行への移行時における当該圃場作業機の位置を旋回終了地点として記憶し、
前記推定部は、前記旋回開始地点若しくは前記旋回終了地点を新たに記憶した位置が前回記憶された旋回開始地点若しくは旋回終了地点を基準に生成された仮想直線から所定距離離れた位置である場合には、新たに記憶された旋回開始地点若しくは旋回終了地点を基準に前記畦際領域を推定することを特徴とする圃場作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圃場において圃場作業機が畦際領域に到達したときに当該圃場作業機を方向転換走行(旋回走行)させる構成が知られている。特許文献1は、この種の構成を開示する。
【0003】
特許文献1に開示される圃場作業車両は、圃場のうち2つの畦間において、直線状の作業走行を行う。圃場作業車両は、2つの畦のうち一方の畦側の地点(作業開始地点)から他方の畦に向かって進み、当該他方の畦側の畦際領域に到達すると、到達した地点を旋回開始地点として記録する。この地点において、圃場作業車両は、作業装置を非作業位置まで上昇させる。圃場作業車両は、記録した旋回開始地点から旋回終了地点まで方向転換走行する。圃場作業車両は、旋回終了地点に到達すると作業装置を作業位置まで下降させる。圃場作業車両は、旋回終了地点から再び直線状の作業走行を行う。このような構成において、圃場作業車両は、旋回開始地点を記録した後、この旋回開始地点と作業開始地点とに基づいて、他の旋回開始地点及び旋回終了地点を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示される構成は、畦が直線状の作業走行時の進行方向に対して直交する方向に延びることを前提として、畦際領域に対応する旋回開始地点及び旋回終了地点を推定する。従って、例えば変形田の場合で、実際の畦が、直線状の作業走行時の進行方向と直交する方向に対して傾いて延びているときは、実際の畦に応じた正確な旋回開始地点及び旋回終了地点(畦際領域)を推定することができない。そのため、正しくない場所での旋回が行われ、作業効率及び仕上がりが低下するおそれがある。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、実際の畦に応じた正確な畦際領域を推定することができる圃場作業システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の圃場作業システムが提供される。即ち、この圃場作業システムは、圃場作業機が、圃場の周囲の畦に近づくように直進走行を行い、直進走行後に再び直進走行を行うために旋回走行を行うことを繰り返しながら、当該圃場作業機の作業装置による作業を前記圃場に対して行うものである。この圃場作業システムは、位置取得部と、記憶部と、推定部と、を備える。前記位置取得部は、前記圃場作業機の位置を取得する。前記記憶部は、前記位置取得部により取得された前記圃場作業機の位置を、前記圃場で直進走行と旋回走行とを行う当該圃場作業機の挙動に関連付けて記憶する。前記推定部は、前記記憶部により記憶された、前記畦に近接する2点以上の前記圃場作業機の位置に基づいて、畦際領域を推定する第1モードと、前記畦に近接する1点の前記圃場作業機の位置に基づいて、畦際領域を推定する第2モードと、を切換可能である。
【0009】
これにより、畦が圃場作業機の直進走行時の進行方向に対して直交せず、傾いて延びている場合でも、実際の畦の向きに応じた正確な畦際領域を推定することができる。従って、圃場作業機を適切な位置で旋回走行させることができるので、作業効率を高めることができ、仕上がりも綺麗になる。
【0010】
前記の圃場作業システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記圃場は、前記圃場作業機の進行方向と直交する第1畦と前記圃場作業機の進行方向に対して傾斜する第2畦とを含む場合に、前記推定部は、前記第1畦において前記第2モードによる畦際領域を推定し、前記第2畦において前記第1モードによる畦際領域を推定する。
【0012】
前記の圃場作業システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記圃場作業機の挙動は、前記圃場作業機の直進走行から旋回走行への移行、及び、前記圃場作業機の旋回走行から直進走行への移行である。前記記憶部は、前記圃場作業機の直進走行から旋回走行への移行時における当該圃場作業機の位置を旋回開始地点とし、かつ、前記圃場作業機の旋回走行から直進走行への移行時における当該圃場作業機の位置を旋回終了地点として記憶する。前記推定部は、前記第1モードにおいて前記記憶部により記憶された前記圃場作業機の位置のうち、2点の前記旋回終了地点、又は、2点の前記旋回開始地点に基づいて、前記畦際領域を推定する。
【0013】
畦と旋回開始地点との距離と、畦と旋回終了地点との距離と、を比較すると、差異が大きいことがある。一方、同じ畦際について複数回の旋回走行を行ったときに、それぞれの旋回経路について畦と旋回開始地点との距離だけを取り出して比較した場合は、バラツキが少ないことが多い。同様に、それぞれの旋回経路について畦と旋回終了地点との距離だけを取り出して比較した場合も、バラツキが少ないことが多い。従って、2点の旋回開始地点同士又は2点の旋回終了地点同士を基準とすることで、畦際領域を正確に推定することができる。
【0014】
前記の圃場作業システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記圃場作業機の挙動は、前記圃場作業機の直進走行から旋回走行への移行、及び、前記圃場作業機の旋回走行から直進走行への移行である。前記記憶部は、前記圃場作業機の直進走行から旋回走行への移行時における当該圃場作業機の位置を旋回開始地点とし、かつ、前記圃場作業機の旋回走行から直進走行への移行時における当該圃場作業機の位置を旋回終了地点として記憶する。前記推定部は、前記旋回開始地点若しくは前記旋回終了地点を新たに記憶した位置が前回記憶された旋回開始地点若しくは旋回終了地点を基準に生成された仮想直線から所定距離離れた位置である場合には、新たに記憶された旋回開始地点若しくは旋回終了地点を基準に前記畦際領域を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圃場作業システムで使用される田植機の側面図。
【
図4】圃場の畦際領域を推定する処理を示すフローチャート。
【
図7】本実施形態の変形例における圃場の畦際領域を示す図。
【
図8】本実施形態の変形例における圃場の畦際領域を推定する前の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る圃場作業システムで使用される田植機1の側面図である。
図2は、田植機1の平面図である。
図3は、田植機1に関するブロック図である。
【0018】
本実施形態の圃場作業システムは、圃場において作業を行う圃場作業機として田植機1を使用し、この田植機1に田植え(苗の植付作業)を行わせるものである。なお、本発明における圃場作用機は、田植機1に限定されるものではなく、例えば、播種機、トラクタ、コンバイン等を使用することができる。
【0019】
図1及び
図2に示すように、田植機1は、車体部11と、前輪12と、後輪13と、植付部(作業装置)14と、を備えている。前輪12及び後輪13は、それぞれ、車体部11に対して左右1対で設けられている。
【0020】
車体部11は、ボンネット21を備えている。ボンネット21は、車体部11の前部に設けられている。ボンネット21の内部には、エンジン22が設けられている。
【0021】
エンジン22が発生させた動力は、ミッションケース23を介して前輪12及び後輪13に伝達される。この動力は、ミッションケース23と、車体部11の後部に配置されたPTO軸24と、を介して、植付部14にも伝達される。
【0022】
車体部11は、運転座席25と、複数の操作部材と、を更に備えている。運転座席25には、オペレータが座ることができる。運転座席25は、車体部11の前後方向において前輪12と後輪13の間に配置されている。複数の操作部材は、操舵ハンドル26と、変速操作ペダル(変速操作部材)27と、植付昇降レバー(植付昇降操作部材)30と、を有している。
【0023】
操舵ハンドル26を操作することにより、田植機1を操舵することができる。変速操作ペダル27を操作することにより、田植機1の走行速度(車速)を調節することができる。植付昇降レバー30を操作することにより、植付部14を昇降させることができる。
【0024】
植付部14は、車体部11の後方に配置されている。植付部14は、昇降リンク機構31を介して車体部11に連結されている。昇降リンク機構31は、トップリンク31a及びロワーリンク31bを含む平行リンクにより構成されている。
【0025】
昇降リンク機構31において、ロワーリンク31bには、昇降装置の昇降シリンダ32が連結されている。前記昇降装置は、昇降シリンダ32を伸縮させることによって、植付部14を車体部11に対して上下に昇降させることができる。
【0026】
植付部14は、植付作業を行うための下降位置と、植付作業を行わない上昇位置と、の間で昇降することができる。この上昇位置とは、前記昇降装置が植付部14を車体部11に対して最も上昇させた位置である。
【0027】
なお、昇降シリンダ32は、本実施形態においては油圧シリンダとしているが、電動シリンダとしても良い。また、前記昇降装置は、シリンダ以外のアクチュエータにより植付部14を昇降させるものであっても良い。
【0028】
植付部14は、植付入力ケース部33と、複数の植付ユニット34と、苗載台35と、複数のフロート36と、予備苗台37と、を備えている。植付部14は、各植付ユニット34に対して苗を苗載台35から順次供給し、苗の植付けを連続的に行うことができる。
【0029】
各植付ユニット34は、植付伝動ケース部41と、回転ケース部42と、を有している。植付伝動ケース部41には、PTO軸24及び植付入力ケース部33を介して動力が伝達される。
【0030】
回転ケース部42は、植付伝動ケース部41に回転可能に取り付けられている。回転ケース部42は、植付伝動ケース部41の車幅方向の両側に配置されている。各回転ケース部42の一側には、2つの植付爪43が取り付けられている。
【0031】
2つの植付爪43は、田植機1の進行方向に並べられている。2つの植付爪43は、回転ケース部42の回転に伴い変位する。2つの植付爪43が変位することにより、1条分の苗の植付が行われる。
【0032】
苗載台35は、複数の植付ユニット34の前上方に配置されている。苗載台35は、苗マットを載置可能である。苗載台35は、当該苗載台35に載置された苗マットの苗を各植付ユニット34に対して供給できるように構成されている。
【0033】
具体的には、苗載台35は、車幅方向に往復するように横送り移動可能に(横方向にスライド可能に)構成されている。また、苗載台35は、当該苗載台35の往復移動端で苗マットを間欠的に下方に縦送り搬送可能に構成されている。
【0034】
フロート36は、植付部14の下部に揺動可能に設けられている。フロート36は、植付部14の植付姿勢を圃場表面に対して安定させるために、当該フロート36の下面を圃場表面に接触させることができる。
【0035】
予備苗台37は、車体部11に対して左右1対で設けられている。予備苗台37は、ボンネット21の車幅方向外側に配置されている。予備苗台37は、予備のマット苗を収容した苗箱を搭載可能である。
【0036】
左右1対の予備苗台37の上部同士は、上下方向及び車幅方向に延びる連結フレーム28によって連結されている。連結フレーム28の車幅方向の中央に、筐体29が設けられている。筐体29の内部には、測位アンテナ61と、慣性計測装置62と、が設けられている。
【0037】
測位アンテナ61は、測位システム(GNSS)を構成する測位衛星からの電波を受信することができる。測位アンテナ61により受信された電波に基づいて公知の測位計算が行われることによって、田植機1の位置を取得することができる。
【0038】
上記の測位システムとしては、GPS技術(GPS衛星)を活用した衛星測位システムが挙げられる。しかし、測位システムはこれに限定されず、準天頂衛星、グロナス衛星等の他の衛星を用いたシステムとすることもできる。また、GNSS技術を活用した測位システムとしては、単独測位、相対測位、DGNSS測位、RTK-GNSS測位等を用いたものを採用することができる。
【0039】
慣性計測装置62は、3つのジャイロセンサ(角速度センサ)と、3つの加速度センサと、を有している。慣性計測装置62が検出する田植機1の角速度及び加速度が補助的に用いられることによって、田植機1の測位結果の精度が高められる。
【0040】
図3に示すように、田植機1は、制御部50を備えている。制御部50は、公知のコンピュータとして構成されている。制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、入出力部を有している。
【0041】
制御部50は、適宜のセンサにより、植付部14の昇降位置を取得することができる。例えば、制御部50は、植付部14の下降位置から上昇位置への変更、及び、上昇位置から下降位置への変更を検出することができる。
【0042】
制御部50は、走行制御部51と、記憶部52と、推定部53と、を有している。制御部50は、慣性計測装置62と電気的に接続されている。また、制御部50は、位置取得部65と、車速センサ66と、舵角センサ67と、にそれぞれ電気的に接続されている。
【0043】
位置取得部65は、測位アンテナ61と電気的に接続されている。位置取得部65は、測位アンテナ61が電波を受信して出力する信号に基づいてGNSS測位を行う。この結果、位置取得部65は、田植機1の位置(現在位置)を例えば緯度及び経度の情報として取得することができる。
【0044】
車速センサ66は、田植機1の車速を検出することができる。車速センサ66は、田植機1の適宜の位置、例えば前輪12の車軸に設けられる。この場合、車速センサ66は、前輪12の車軸の回転に応じたパルスを発生させる。
【0045】
舵角センサ67は、前輪12の舵角を検出することができる。舵角センサ67は、田植機1の適宜の位置、例えば前輪12に設けられた図示しないキングピンに設けられる。なお、舵角センサ67は、操舵ハンドル26に設けられても良い。
【0046】
走行制御部51は、田植機1の走行に関する自動制御を行うことができる。例えば、走行制御部51は、車速制御及び操舵制御を行うことができる。走行制御部51は、車速制御及び操舵制御の両方を同時に行っても良いし、操舵制御のみを行うようにしても良い。後者の場合、田植機1の車速は、オペレータが変速操作ペダル27を用いて操作する。
【0047】
車速制御では、予め定められた条件に基づいて田植機1の車速が調整される。車速制御は、具体的には、走行制御部51が、車速センサ66の検出結果により得られた現在の車速を目標の車速に近づける制御を行う。この制御は、ミッションケース23内の変速装置の変速比、及び、エンジン22の回転速度のうち、少なくとも一方を変更することにより実現される。なお、この車速制御は、田植機1が停止するように車速をゼロにする制御も含む。
【0048】
操舵制御とは、予め定められた条件に基づいて田植機1の舵角を調整する制御である。操舵制御は、具体的には、走行制御部51が、舵角センサ67の検出結果により得られた現在の舵角を目標の舵角に近づける制御を行う。この制御は、例えば、操舵ハンドル26の回転軸に設けられた操舵アクチュエータを駆動することにより実現される。なお、操舵制御に関しては、走行制御部51が、操舵ハンドル26の回動角度ではなく、田植機1の前輪12の操舵角を直接調整しても良い。
【0049】
記憶部52は、植付作業時に、直進走行及び旋回走行を行う田植機1の位置を当該田植機1の挙動に関連付けて記憶することができる。この田植機1の挙動は、本実施形態においては、植付作業時における田植機1の走行状態の変更である。更に具体的に言えば、田植機1の挙動は、田植機1の直進走行から旋回走行への移行、及び、田植機1の旋回走行から直進走行への移行である。
【0050】
田植機1の走行状態の変更は、本実施形態においては植付部14の昇降位置の変更(後述するように、植付部14が下降位置から上昇位置に変更されることと、上昇位置から下降位置に変更されること)に基づいて認識される。ただし、田植機1の走行状態の変更は、例えば、植付部14への動力伝達の有無の切換に基づいて認識されても良い。植付部14への動力伝達の状態は、エンジン22と植付部14との間の動力伝達機構に設けられた植付クラッチの状態に基づいて検出することができる。
【0051】
推定部53は、圃場の周囲の畦に近接する2点以上の田植機1の位置に基づいて、この畦に対応する畦際領域を推定する。本実施形態において、2点以上の田植機1の位置は、植付作業時に、田植機1が直進走行から旋回走行へ移行するときの位置(旋回開始地点)と、田植機1が旋回走行から直進走行へ移行するときの位置(旋回終了地点)と、の中から選択される。畦際領域の推定の詳細に関しては後述する。
【0052】
なお、記憶部52及び推定部53は、制御部50に設けられる代わりに、田植機1とは別の部材に設けられても良い。
【0053】
次に、
図4から
図6を参照して、田植機1の植付作業時に推定部53が圃場70の畦際領域72を推定する処理について説明する。
図4は、圃場70の畦際領域72を推定する処理を示すフローチャートである。
図5及び
図6は、旋回開始地点又は旋回終了地点を記憶する処理を説明する模式図である。なお、
図6の直進経路76及び旋回経路78は田植機1の動作を明示するための想像的な経路であり、田植機1が走行する前に設定している訳ではない。また、本実施形態では、直進経路76では自動操舵が行われ、旋回経路78ではオペレータによる手動操舵が行われることを想定している。
【0054】
図5及び
図6に示すように、圃場70の周囲の畦74のうち互いに概ね対向する2つの畦74に着目したときに、田植機1は、2つのうち一方の畦74A側から圃場70に入る。その後、田植機1は、他方の畦74Bに近づくように直進走行を行い、直進走行後に再び直進走行を行うために旋回走行を行う。田植機1は、このような走行を繰り返す。
【0055】
即ち、田植機1は、直進走行と再度の直進走行との間に旋回走行を挟み、一方の畦74Aと他方の畦74Bとの間で往復走行を行う。このときに田植機1が走行する経路は、複数の直進経路76と、複数の旋回経路78と、に分けることができる。
【0056】
直進経路76は、田植機1が直進走行を行うための経路である。直進経路76は、圃場70を挟んで対で配置される畦74A,74Bの間にわたって直線状に延びる。オペレータは、植付作業の開始地点A1から畦74Bに向かって田植機1を直進走行させる。以下の説明では、このときの直進経路76を第1直進経路76Aと呼ぶことがある。次に、オペレータは、第1直進経路76Aに対して所定の間隔を保持しながら、畦74Bから畦74Aに向かって田植機1を直進走行させる。以下の説明では、このときの直進経路76を第2直進経路76Bと呼ぶことがある。田植機1が直進走行を繰り返すことにより、植付作業の開始地点A1から順に、第1直進経路76A、第2直進経路76B、第3直進経路76C、第4直進経路76D、・・・が形成される。複数の直進経路76は平行に配置される。
【0057】
本実施形態では、前述のとおり、直進走行時において、田植機1の走行制御部51は、位置取得部65の測位結果を用いて、田植機1の走行軌跡が直線状の経路に沿うように自動操舵を行う。
【0058】
旋回経路78は、田植機1が旋回走行を行うための経路である。オペレータは、圃場70の一方の畦74Aに近接した位置、及び、他方の畦74Bに近接した位置で、旋回走行を行う。
【0059】
旋回経路78のうち植付作業開始時の最初のものは、
図6に示すように、第1直進経路76Aと第2直進経路76Bとを結ぶように、畦74Bの近傍に配置される。最初の旋回経路78を第1旋回経路78Aとした場合、次に第2直進経路76Bと第3直進経路76Cとを結ぶ第2旋回経路78Bが、畦74Aの近傍に配置される。次に、第3直進経路76Cと第4直進経路76Dとを結ぶ第3旋回経路78Cが、畦74Bの近傍に配置される。このように、旋回経路78は、2つの畦74A,74Bの近傍に交互に配置される。
【0060】
圃場70において、田植機1は、以下のようにして、直進走行及び旋回走行を交互に行う。
【0061】
即ち、
図5に示すように、田植機1は、植付作業時、まず圃場70において、一方の畦74A側に位置する植付作業の開始地点A1から他方の畦74Bに向かって直進走行を行う。田植機1が畦74Bに対して適切な距離まで近づくと、オペレータは操舵ハンドル26を手で操作して、田植機1の旋回を開始する。このタイミングで、直進走行が終了する。
【0062】
次に、田植機1は、直進走行から旋回走行に移行する。
図6に示すように、田植機1は、圃場70の畦74B付近において、その進行方向を反転させるために旋回走行を行う。田植機1の方向転換が完了すると、オペレータは操舵ハンドル26を手で操作して、田植機1の直進を開始する。このタイミングで、旋回走行が終了する。
【0063】
続いて、田植機1は、旋回走行から直進走行に移行する。田植機1は、圃場70において、他方の畦74B側から一方の畦74Aに向かって再び直進走行を行う。田植機1は、先の直進走行時とは逆向きに進む。田植機1が畦74Aに対して適切な距離まで近づくと、オペレータは操舵ハンドル26を手で操作して、田植機1の旋回を開始する。このタイミングで、直進走行が終了する。
【0064】
そして、田植機1は、直進走行から旋回走行に移行する。田植機1は、圃場70の畦74A付近において、その進行方向を反転させるために旋回走行を行う。田植機1の方向転換が完了すると、オペレータは操舵ハンドル26を手で操作して、田植機1の直進を開始する。このタイミングで、旋回走行が終了する。
【0065】
田植機1は、このような直進走行から旋回走行への移行、又は、旋回走行から直進走行への移行を適宜行いながら、直線走行時に圃場70に対して植付作業を行う。田植機1は、直進走行時には、植付部14を下降位置に保持して、植付部14により苗を圃場70に植え付ける。一方、田植機1は、旋回走行時には、植付部14を上昇位置に保持して、苗を圃場に植え付けない。植付部14の昇降位置の変更は、オペレータが植付昇降レバー30を手で操作することにより行われる。
【0066】
このような構成において、田植機1の植付作業時に、推定部53が圃場70の畦際領域72を推定する処理が行われる。オペレータは、直進走行と旋回走行とを切り換えるときの田植機1の位置的基準として、圃場70の形状(畦74の形状)を内側に所定距離だけオフセットした想像的な境界を目安とするが、畦際領域72は、その境界の外側の領域であると考えることができる。この境界に植付部14が到達したタイミングで、オペレータは、植付部14の上昇位置/下降位置の切換を行う。
【0067】
畦際領域72の幅(言い換えれば、圃場70を内側にオフセットする距離)は、田植機1の最小旋回半径等を考慮して、オペレータが定める。後に田植機1が畦際領域72を走行して植付作業を行う場合は、畦際領域72の幅を定める際に、植付部14の作業幅及び適宜のマージンが考慮される。
【0068】
具体的には、
図4のフローチャートのような処理が行われる。田植機1が圃場70において植付部14による植付作業を行いながら直進走行を行っているとき、制御部50は、植付部14が下降位置から上昇位置へ変更されたか否かを判定する(ステップS101)。
【0069】
ステップS101において、植付部14が下降位置から上昇位置へ変更されたと判断した場合、制御部50は、そのときの田植機1の位置を位置取得部65により取得する(ステップS102)。制御部50は、位置取得部65により取得した田植機1の位置を、植付部14が下降位置から上昇位置へ変更された旨の情報と関連付けて、記憶部52に記憶させる(ステップS103)。
【0070】
詳しくは、制御部50は、植付部14の下降位置から上昇位置への変更を検出することによって、田植機1が直進走行から旋回走行に移行したという田植機1の挙動を認識する。そして、制御部50において、記憶部52が、田植機1が直進走行から旋回走行へ移行したときの位置を、田植機1の旋回開始地点S1として記憶する。
【0071】
なお、旋回開始地点S1は、田植機1の直進走行が終了する地点であるとともに、田植機1が旋回走行を開始する地点である。また、旋回開始地点S1は、苗の植付が行われないように植付部14が下降位置から上昇位置に変更される地点と考えることもできる。
【0072】
ステップS103の処理の後、制御部50は、植付部14が上昇位置から下降位置へ変化したか否かを判定する(ステップS104)。
【0073】
ステップS104において、植付部14が上昇位置から下降位置へ変更されたと判断した場合、制御部50は、そのときの田植機1の位置を位置取得部65により取得する(ステップS105)。制御部50は、位置取得部65により取得した田植機1の位置を、植付部14が上昇位置から下降位置へ変更された旨の情報と関連付けて、記憶部52に記憶させる(ステップS106、
図4)。
【0074】
詳しくは、制御部50は、植付部14が上昇位置から下降位置への変更を検出することによって、田植機1が旋回走行から直進走行に移行したという田植機1の挙動を認識する。そして、制御部50において、記憶部52が、田植機1の旋回走行から直進走行へ移行したときの位置を、田植機1の旋回終了地点E1として記憶する。
【0075】
なお、旋回終了地点E1は、田植機1の旋回走行が終了する地点であるとともに、田植機1が直進走行を開始する地点である。また、旋回終了地点E1は、苗の植付が行われるように植付部14が上昇位置から下降位置に変更される地点と考えることもできる。
【0076】
制御部50において、記憶部52が田植機1の旋回開始地点S1と旋回終了地点E1とを記憶すると、この記憶部52により記憶された旋回開始地点S1と旋回終了地点E1とに基づいて、推定部53が第2畦際領域72Bを推定する(ステップS107)。
【0077】
旋回開始地点S1と旋回終了地点E1とを結ぶ仮想直線は、上述の想像的な境界を表していると考えることができる。そこで、推定部53は、平面視で旋回開始地点S1と旋回終了地点E1とを結ぶ直線を含む直線L1を求め、これが田植機1の直進時の進行方向と直交する方向に対してなす角度φを算出する。推定部53は、その算出された角度φに基づいて、畦74Bの形状、及び、第2畦際領域72Bを推定する。
【0078】
図5には矩形でない圃場70の例が示され、平面視で、畦74Bが田植機1の直進走行時の進行方向に対して直交せず傾いている。この場合でも、旋回開始地点S1及び旋回終了地点E1の位置関係を基準にすることで、第2畦際領域72Bを、実際の畦74Bの形状に即した傾いた領域として正しく推定することができる。
【0079】
そして、制御部50は、田植機1が再び直進走行から旋回走行への移行、及び、この旋回走行から更に再び直進走行への移行を行うとき、一方の畦74A付近において田植機1の走行状態の変更を上記と同様に認識する。これに応じて、記憶部52が旋回開始地点S2と旋回終了地点E2とを記憶する。推定部53は、記憶された旋回開始地点S2と旋回終了地点E2とに基づいて、畦74Aに対応する第1畦際領域72Aを推定する。
【0080】
推定部53が畦際領域72(第2畦際領域72B及び第1畦際領域72A)を推定した後、制御部50は、次の田植機1の直進走行中に、旋回開始地点が近いことをオペレータに報知することができる。具体的には、制御部50は、位置取得部65から得られた田植機1の現在位置に基づいて、次の旋回開始地点(現在の直進走行の終了点)までの距離を計算する。次の旋回開始地点は、直進走行している田植機1の経路を延長した直線が畦際領域72に到達する点として求めることができる。制御部50は、計算により得られた距離を所定の閾値と比較し、距離が閾値以下である場合には、田植機1が備える図略の報知部が適宜の報知動作を行うように制御する。
【0081】
報知部による報知の手段としては、田植機1において、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたり、操舵ハンドル26近傍に設けられた表示部に警告を表示したりすること等が挙げられる。報知のタイミングは、上記閾値の設定により適宜変更可能である。
【0082】
植付作業は田植機1の後部の植付部14にて行われるので、直進走行時にオペレータは運転座席25から後方を見ていることが多く、旋回開始のタイミングを誤ってしまうことも少なくない。この点、上記の構成とすれば、例えば田植機1が第3直進経路76Cを直進走行しているときに、旋回開始地点S3に田植機1が間もなく到達することをオペレータに知らせることができる。これにより、田植機1の旋回走行時における植付部14の上昇位置への移行を確実に行うことができる。
【0083】
なお、田植機1の直進走行時に、走行制御部51による自動走行が行われても良い。この場合、制御部50が、オペレータに報知を行うことに加えて、走行制御部51により旋回開始地点に向かって田植機1を自動的に減速させることもできる。なお、このときの田植機1の減速には、次の旋回開始地点において田植機1を停止させる場合が含まれる。
【0084】
旋回開始地点S3で田植機1が旋回走行を開始した後の第3旋回経路78Cにおいて、旋回終了地点E3に間もなく到達することをオペレータに報知したり、それに伴う自動的な走行制御を行ったりすることもできる。
【0085】
本実施形態において、田植機1は、推定部53により推定された畦際領域72を走行することができる。例えば、田植機1は、畦際領域72よりも内側の領域(内側領域82)で植付作業を完了した後、畦際領域72を、植付作業を行うために走行する。そして、制御部50は、畦際領域72のうち作業領域を通過するとき、走行制御部51により田植機1の自動操舵を行う。この作業領域とは、畦際領域72のうち、植付作業を行うための領域である。
【0086】
以上に説明したように、本実施形態の圃場作業システムは、田植機1が、圃場70の周囲の畦74に近づくように直進走行を行い、直進走行後に再び直進走行を行うために旋回走行を行うことを繰り返しながら、植付部14による植付作業を圃場70に対して行うものである。この圃場作業システムは、位置取得部65と、記憶部52と、推定部53と、を備える。位置取得部65は、田植機1の位置(現在位置)を取得可能である。記憶部52は、位置取得部65により取得された田植機1の位置を、圃場70で直進走行と旋回走行とを行う当該田植機1の挙動に関連付けて記憶可能である。推定部53は、記憶部52により記憶された、畦74に近接する2点以上の田植機1の位置に基づいて、この畦74に対応する畦際領域72を推定可能である。
【0087】
これにより、例えば
図5のように畦74Bが田植機1の直進走行時の進行方向に対して直交せず、傾いて延びている場合でも、実際の畦74Bの向きに応じた正確な畦際領域72を推定することができる。従って、直進走行と旋回走行との切換等に関して確実な制御(例えば、上述の報知の制御)を行うことができる。この結果、田植機1を適切な位置で旋回走行させることができるので、作業効率を高めることができ、仕上がりも綺麗になる。
【0088】
また、本実施形態の圃場作業システムにおいて、田植機1の挙動は、当該田植機1の直進走行から旋回走行への移行、及び、当該田植機1の旋回走行から直進走行への移行である。そして、記憶部52が、田植機1の直進走行から旋回走行への移行時における当該田植機1の位置を旋回開始地点S1として記憶し、かつ、田植機1の旋回走行から直進走行への移行時における当該田植機1の位置を旋回終了地点E1として記憶する。推定部53が、記憶部52により記憶された田植機1の位置のうち、隣接する旋回開始地点S1と旋回終了地点E1とに基づいて畦際領域72を推定する。
【0089】
これにより、畦際領域72を容易に推定することができる。例えば、田植機1が一度の旋回走行を行うだけで、畦際領域72を推定することができる。
【0090】
また、本実施形態の圃場作業システムは、推定部53により推定された畦際領域72において、田植機1が畦際領域72のうちの田植機1の作業領域を通過するように、田植機1の自動操舵を行う。
【0091】
畦74Bに対してほぼ等しい距離となるタイミングで田植機1が所定の挙動を行うことを複数回反復することで、推定部53により推定された畦際領域72は、前述のとおり、畦74Bに対して略平行に延びる。そのため、得られた畦際領域72に沿って自動操舵を行うことで、畦際領域72の圃場作業の際、自動操舵することでオペレータの負担を軽減することができ、ひいては全体の仕上がりを綺麗にすることができる。
【0092】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0093】
推定部53は、畦74が延びる方向において当該畦74側で旋回開始地点の両隣に位置する2点の旋回終了地点、又は、旋回終了地点の両隣に位置する2点の旋回開始地点を少なくとも含む複数の地点から、畦際領域を推定するようにしても良い。例えば、推定部53は、
図6に示すように旋回終了地点E1の両隣に位置する旋回開始地点S1及び旋回開始地点S3から第2畦際領域72Bを推定しても良い。
【0094】
同一の旋回経路78において、旋回開始地点と旋回終了地点とでは田植機1の向きが180°異なる。従って、直進走行から旋回走行への移行と、旋回走行から直進走行への移行とでは、それぞれ異なる独特の操作スキルが要求される。このことから、例えば、畦74Bと旋回開始地点S1との距離と、畦74Bと旋回終了地点E1との距離と、を比較すると、オペレータの熟練にもよるが、差異が大きいことがある。このバラツキは、畦際領域72を推定する精度に影響を与える。
【0095】
一方、同じ畦74Bの畦際について複数回の旋回走行を行ったときに、畦74Bと旋回開始地点S1,S2,・・・との距離だけを取り出して比較した場合は、バラツキが少ないことが多い。同様に、畦74Bと旋回終了地点E1,E2,・・・との距離だけを取り出して比較した場合も、バラツキが少ないことが多い。従って、2点の旋回開始地点同士又は2点の旋回終了地点同士を基準とすることで、畦際領域72を正確に推定することができる。オペレータの癖等の要因により、2点の旋回開始地点同士で推定した畦際領域と2点の旋回終了地点同士で推定した畦際領域との間に差が生じることがある。その場合、推定部53は、田植機1の周囲に余裕を確保する観点から、より広い畦際領域を推定する。
【0096】
推定部53は、畦際領域72を推定するために、隣接する旋回開始地点及び旋回終了地点からなる2点の田植機1の位置を使用することに代えて、少なくとも1つの旋回開始地点と少なくとも1つ旋回終了地点とを含む3点以上の田植機1の位置を使用しても良い。例えば、推定部53は、第2畦際領域72Bを推定するために、旋回開始地点S1と、旋回終了地点E1と、旋回終了地点E1に隣接する旋回開始地点S3と、を使用しても良い。また、畦際領域72の推定のために、3つ以上の旋回開始地点S1,S2,S3,・・・を使用しても良いし、3つ以上の旋回終了地点E1,E2,E3,・・・を使用しても良い。3つ以上の点が与えられたときは、上述の角度φを求めるための直線は、公知の方法、例えば最小二乗法により求めることができる。
【0097】
推定部53のモードとして、上述のように2つ以上の点に基づいて畦際領域72を推定する第1モードと、例えば旋回開始地点の1点だけで畦際領域72を推定する第2モードと、を切換可能に構成しても良い。第2モードでは、推定部53は、得られた1点から、上述の角度φを90°とみなして直線を引くことで、畦際領域72を推定する。1つの圃場70において、対向する畦74A,74Bのそれぞれについてモードを指定できるようにしても良い。
【0098】
植付部14の動力伝達の有無の切換、及び、植付部14の上昇/下降は、オペレータの操舵ハンドル26の操作に連動して自動的に行われても良い。
【0099】
推定部53が推定した畦際領域72の形状、上述の境界を示す直線L1等を、適宜の表示部(例えば、液晶ディスプレイ)に表示しても良い。
【0100】
推定部53が第2畦際領域72Bを推定した後、制御部50が、圃場70の新たな畦際領域を推定するようにしても良い。この場合、制御部50は、推定部53による第2畦際領域72Bの推定後も田植機1の旋回開始地点/旋回終了地点を記憶部52に連続して記憶し、最新の旋回開始地点/旋回終了地点が推定部53により得られた直線L1上に位置しないと判断した場合に、畦際領域の形状が変化したことを把握する。そして、制御部50は、新たな畦際領域の推定が必要と判断し、推定部53により新たな畦際領域を推定する。この構成は、例えば、圃場70が
図7に示す別の畦74Cに対応する新たな畦際領域(第3畦際領域72C)を備える場合に用いることができる。別の畦74Cは、圃場70において畦74Bに接続しつつ、異なる方向に延びるものである。ここで、旋回開始地点/旋回終了地点が直線L1上に位置するとは、旋回開始地点/旋回終了地点が、直線L1を基準として所定の許容範囲内に位置することを意味する。
【0101】
図7に示す例では、第3畦際領域72Cの推定は前記実施形態と同様に行われるが、その推定前に
図8のフローチャートのような処理が行われる。具体的には、制御部50は、推定部53による第2畦際領域72Bの推定後、植付部14の昇降位置が変更されたか否かを判定する(ステップS201)。制御部50は、植付部14の昇降位置が変更されたと判断した場合、そのときの田植機1の位置を位置取得部65により取得する(ステップS202)。制御部50は、位置取得部65により取得した田植機1の位置を、植付部14の昇降位置が変更された旨の情報と関連付けて、記憶部52に記憶させる(ステップS203)。そして、制御部50は、記憶部52に記憶させた田植機1の位置を旋回開始地点/旋回終了地点として、この旋回開始地点/旋回終了地点が直線L1上に位置するか否かを判定する(ステップS204)。例えば、
図7に示す旋回終了地点E5と直線L1との距離D1が所定以上であれば、当該旋回終了地点E5が直線L1から外れており、新しい畦際領域(第3畦際領域72C)の推定が必要であることを意味する。従って、制御部50は、その後の旋回開始地点/旋回終了地点の位置に基づいて、推定部53により第3畦際領域72Cを推定する(ステップS205)。
【0102】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0103】
1 田植機(圃場作業機)
14 植付部(作業装置)
52 記憶部
53 推定部
65 位置取得部
70 圃場
72 畦
74 畦際領域