(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】送液装置
(51)【国際特許分類】
A61M 39/28 20060101AFI20220809BHJP
A61M 39/10 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
A61M39/28
A61M39/10 110
(21)【出願番号】P 2019042787
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】元岡 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】角田 健
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3133453(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0106101(US,A1)
【文献】特開2014-030489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/28
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体を収容する第1容器に連結する瓶針を備えるとともに前記第1液体の流路を形成する第1流路形成部と、
第2液体を収容する第2容器に連結するコネクタを備えるとともに前記第2液体の流路を形成する第2流路形成部と、
前記第1流路形成部の下流端及び前記第2流路形成部の下流端に連結するとともに前記第1液体及び前記第2液体の流路を形成する第3流路形成部と、
医療用器具とを有し、
前記第1流路形成部が、チューブによって構成され、
前記医療用器具が、
前記コネクタを分離可能に保持するコネクタ保持部と、
前記コネクタ保持部への前記コネクタの保持により、前記チューブに対するクランプを解除するとともに、前記コネクタ保持部からの前記コネクタの分離により、前記チューブをクランプするクランプ部とを有する送液装置。
【請求項2】
第1液体を収容する第1容器と、
前記第1容器に連結するとともに前記第1液体の流路を形成する第1流路形成部と、
第2液体を収容する第2容器と、
前記第2容器に連結するとともに前記第2液体の流路を形成する第2流路形成部と、
前記第1流路形成部の下流端及び前記第2流路形成部の下流端に連結するとともに前記第1液体及び前記第2液体の流路を形成する第3流路形成部と、
医療用器具とを有し、
前記第1流路形成部が、チューブによって構成され、
前記第2流路形成部が、互いに着脱可能に連結する一対のコネクタを有し、
前記医療用器具が、
前記第2流路形成部の前記下流端の側に位置する前記一対のコネクタの一方である第1コネクタを分離可能に保持するコネクタ保持部と、
前記コネクタ保持部への前記第1コネクタの保持により、前記チューブに対するクランプを解除するとともに、前記コネクタ保持部からの前記第1コネクタの分離により、前記チューブをクランプするクランプ部とを有する送液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用器具及び送液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液等の液体を体内へ送る送液ラインを形成する送液装置が知られている。送液ラインは、第1液体を体内へ送るメインラインと、第2液体をメインラインへ送るサブラインとを有する場合がある。その場合、送液装置は、第1液体を収容する第1容器と、第1容器に連結するとともに第1液体の流路を形成する第1流路形成部と、第2液体を収容する第2容器と、第2容器に連結するとともに第2液体の流路を形成する第2流路形成部と、第1流路形成部の下流端及び第2流路形成部の下流端に連結するとともに第1液体及び第2液体の流路を形成する第3流路形成部とを有し、第2流路形成部が、互いに着脱可能に連結する一対のコネクタを有する。第1容器、第1流路形成部及び第3流路形成部により、メインラインが形成される。第2容器及び第2流路形成部により、サブラインが形成される。第1容器を交換することで、2種類以上の第1液体を順次送液することもできる。第2容器を交換することで、2種類以上の第2液体を順次送液することもできる。
【0003】
このような送液装置を用いて例えば抗癌剤を送液する場合には、第1液体(例えば、生理食塩液、制吐剤など)の送液と、第2液体(例えば、1種類以上の抗癌剤など)の送液とを、適切な順序で選択的に行う必要がある。つまり、第1液体のみが送液される状態と、第2液体のみが送液される状態との間で、送液状態の切替えを間違いなく行う必要がある。例えば特許文献1には、第1流路形成部、第2流路形成部及び第3流路形成部の連結部を三方活栓で構成した送液装置が記載されている。三方活栓の操作により、第1液体のみが送液される状態と、第2液体のみが送液される状態との間で、送液状態が切替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されるような送液装置を用いる場合には、三方活栓の操作を失念することにより、送液状態の適切な切替えが行われないおそれがある。したがって、送液状態の切替えの間違いを抑制することが望まれている。
【0006】
本開示は、このような点に鑑み、送液状態の切替えの間違いを抑制可能な医療用器具及び送液装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様としての医療用器具は、コネクタを分離可能に保持するコネクタ保持部と、前記コネクタ保持部への前記コネクタの保持により、チューブに対するクランプを解除するとともに、前記コネクタ保持部からの前記コネクタの分離により、前記チューブをクランプするクランプ部とを有する。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記医療用器具は、前記クランプ部を、前記クランプ部が前記チューブをクランプするように付勢する付勢部材を有する。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記医療用器具は、前記コネクタ保持部が、前記コネクタを解除可能に係止する係合部を有する。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記医療用器具は、第1スライド部材と、前記第1スライド部材に対して相対的に、第1方向と前記第1方向の反対方向である第2方向とにスライド可能な第2スライド部材とを有し、前記第1スライド部材が、前記チューブと対向するとともに前記チューブより前記第2方向に位置する第1対向部を有し、前記第2スライド部材が、前記チューブと対向するとともに前記チューブより前記第1方向に位置する第2対向部と、前記コネクタ保持部に前記コネクタを保持させるために前記コネクタによって前記第1方向に押圧される被押圧部とを有し、前記クランプ部が、前記第1対向部及び前記第2対向部によって構成される。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記医療用器具は、第1回動部材と、前記第1回動部材に対して相対的に、回動軸線を中心として、第1方向と前記第1方向の反対方向である第2方向とに回動可能な第2回動部材とを有し、前記第1回動部材が、前記チューブと対向するとともに前記チューブより前記第2方向に位置する第1対向部を有し、前記第2回動部材が、前記チューブと対向するとともに前記チューブより前記第1方向に位置する第2対向部を有し、前記クランプ部が、前記第1対向部及び前記第2対向部によって構成される。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記医療用器具は、前記第1回動部材が、前記コネクタ保持部に前記コネクタを保持するために前記コネクタを前記第1方向に押圧する第1押圧部を有し、前記第2回動部材が、前記コネクタ保持部に前記コネクタを保持するために前記コネクタを前記第2方向に押圧する第2押圧部を有し、前記コネクタ保持部が、前記第1押圧部及び前記第2押圧部によって構成される。
【0013】
本発明の第2の態様としての送液装置は、第1液体を収容する第1容器に連結する瓶針を備えるとともに前記第1液体の流路を形成する第1流路形成部と、第2液体を収容する第2容器に連結するコネクタを備えるとともに前記第2液体の流路を形成する第2流路形成部と、前記第1流路形成部の下流端及び前記第2流路形成部の下流端に連結するとともに前記第1液体及び前記第2液体の流路を形成する第3流路形成部と、医療用器具とを有し、前記第1流路形成部が、チューブによって構成され、前記医療用器具が、前記コネクタを分離可能に保持するコネクタ保持部と、前記コネクタ保持部への前記コネクタの保持により、前記チューブに対するクランプを解除するとともに、前記コネクタ保持部からの前記コネクタの分離により、前記チューブをクランプするクランプ部とを有する。
【0014】
本発明の第3の態様としての送液装置は、第1液体を収容する第1容器と、前記第1容器に連結するとともに前記第1液体の流路を形成する第1流路形成部と、第2液体を収容する第2容器と、前記第2容器に連結するとともに前記第2液体の流路を形成する第2流路形成部と、前記第1流路形成部の下流端及び前記第2流路形成部の下流端に連結するとともに前記第1液体及び前記第2液体の流路を形成する第3流路形成部と、医療用器具とを有し、前記第1流路形成部が、チューブによって構成され、前記第2流路形成部が、互いに着脱可能に連結する一対のコネクタを有し、前記医療用器具が、前記第2流路形成部の前記下流端の側に位置する前記一対のコネクタの一方である第1コネクタを分離可能に保持するコネクタ保持部と、前記コネクタ保持部への前記第1コネクタの保持により、前記チューブに対するクランプを解除するとともに、前記コネクタ保持部からの前記第1コネクタの分離により、前記チューブをクランプするクランプ部とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、送液状態の切替えの間違いを抑制可能な医療用器具及び送液装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る送液装置を示す外観図である。
【
図2】
図1に示す送液装置に設けられたチューブクランプのクランプ解除状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す状態のチューブクランプの上面図である。
【
図4】
図2に示す状態のチューブクランプの断面図である。
【
図5】
図1に示す送液装置に設けられたチューブクランプのクランプ状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す状態のチューブクランプの上面図である。
【
図8A】
図1に示す送液装置に設けられたチューブクランプの分解斜視図である。
【
図8B】
図8Aとは異なる角度から視たチューブクランプの分解斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る送液装置に設けられたチューブクランプのクランプ解除状態を示す斜視図である。
【
図10】
図9に示す状態のチューブクランプの平面図である。
【
図11】
図9に示すチューブクランプのクランプ状態を示す斜視図である。
【
図12】
図11に示す状態のチューブクランプの平面図である。
【
図14】
図9に示すチューブクランプの変形例のクランプ状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る医療用器具及び送液装置について詳細に例示説明する。
【0018】
まず、
図1~
図8Bを参照して、本発明の第1実施形態に係る医療用器具及び送液装置について詳細に例示説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る送液装置1は、第1液体2aを収容する第1容器3aと、第1容器3aに連結するとともに第1液体2aの流路を形成する第1流路形成部4aと、第2液体2bを収容する第2容器3bと、第2容器3bに連結するとともに第2液体2bの流路を形成する第2流路形成部4bと、第1流路形成部4aの下流端及び第2流路形成部4bの下流端に連結するとともに第1液体2a及び第2液体2bの流路を形成する第3流路形成部4cとを有する。第1容器3a、第1流路形成部4a及び第3流路形成部4cにより、メインラインが形成される。第2容器3b及び第2流路形成部4bにより、サブラインが形成される。
【0020】
第1液体2aは、例えば、生理食塩液又は制吐剤であってよい。第1容器3aは、例えば、輸液バッグであってよい。第1容器3aは、他の第1容器3aと交換可能であってよい。この場合、第1容器3aを交換することで、2種類以上の第1液体2aを順次送液することもできる。例えば、第1液体2aとして生理食塩液を収容する第1容器3aを第1流路形成部4aに連結して送液した後に、第1液体2aとして制吐剤を収容する他の第1容器3aに交換してもよい。
【0021】
第2液体2bは、例えば、抗癌剤であってよい。第2容器3bは、例えば、輸液バッグであってよい。第2容器3bは、他の第2容器3bと交換可能であってよい。この場合、第2容器3bを交換することで、2種類以上の第2液体2bを順次送液することもできる。例えば、第2液体2bとして抗癌剤を収容する第2容器3bを第2流路形成部4bに連結して送液した後に、第2液体2bとして他の種類の抗癌剤を収容する他の第2容器3bに交換してもよい。
【0022】
第1流路形成部4aは、チューブ5によって構成される。より具体的には、第1流路形成部4aは、瓶針6と、チューブ5と、分岐コネクタ7の第1ポート7aとによって構成される。瓶針6は、第1容器3aに連結する。チューブ5の上流端は、瓶針6に連結する。チューブ5の下流端は、分岐コネクタ7の第1ポート7aに連結する。分岐コネクタ7は、図示の例ではY型コネクタであるが、例えば、T型コネクタ又は三方活栓などであってもよい。
【0023】
第2流路形成部4bは、互いに着脱可能に連結する第1コネクタ8a及び第2コネクタ8b(以下、一対のコネクタ8a、8bとも言う)を有する。より具体的には、第2流路形成部4bは、第2容器3bと一体的に形成された第2コネクタ8bと、第1コネクタ8aと、チューブ10と、分岐コネクタ7の第2ポート7bとによって構成される。チューブ10の上流端は、第1コネクタ8aに連結する。チューブ10の下流端は、分岐コネクタ7の第2ポート7bに連結する。
【0024】
第3流路形成部4cは、分岐コネクタ7の第3ポート7cと、チューブ11と、点滴筒12と、チューブ13と、コネクタ14とによって構成される。チューブ13には、流量調整用のクレンメ15が取り付けられる。チューブ11の上流端は、分岐コネクタ7の第3ポート7cに連結する。チューブ11の下流端は、点滴筒12の上流端に連結する。チューブ13の上流端は、点滴筒12の下流端に連結する。チューブ13の下流端は、コネクタ14に連結する。コネクタ14は、患者などの体内に連通する流路を形成する第4流路形成部(図示省略)の上流端に設けられるコネクタ(図示省略)に連結する。第4流路形成部は、例えばカテーテルによって構成される。
【0025】
送液装置1は、本実施形態に係る医療用器具としてのチューブクランプ20をさらに有する。送液装置1を用いて例えば抗癌剤を送液する場合には、第1液体2a(例えば、生理食塩液、制吐剤など)の送液と、第2液体2b(例えば、1種類以上の抗癌剤など)の送液とを、適切な順序で選択的に行う必要がある。つまり、第1液体2aのみが送液される状態と、第2液体2bのみが送液される状態との間で、送液状態の切替えを間違いなく行う必要がある。本実施形態においては、チューブクランプ20を用いることにより、送液状態の切替えの間違いを抑制可能である。
【0026】
図2~
図8Bに示すように、本実施形態のチューブクランプ20は、第1コネクタ8aを分離可能に保持するコネクタ保持部21(特に
図2、
図4参照)と、コネクタ保持部21への第1コネクタ8aの保持により、チューブ5に対するクランプを解除するとともに、コネクタ保持部21からの第1コネクタ8aの分離により、チューブ5をクランプするクランプ部22(特に
図3、
図4参照)とを有する。クランプとは、チューブ5を挟むことによりチューブ5の流路を閉塞させることを意味する。クランプ部22は、コネクタ保持部21への第1コネクタ8aの保持によってチューブ5に対するクランプを解除した状態においても、チューブ5との接触を維持するように構成されることが好ましい。このような接触によって生じる摩擦力により、クランプの解除状態においても、チューブクランプ20をチューブ5に保持することができる。
【0027】
本実施形態において、チューブクランプ20は、第1スライド部材23aと、第1スライド部材23aに対して相対的に、第1方向Ds1と第1方向Ds1の反対方向である第2方向Ds2とにスライド可能な第2スライド部材23bと、コイル状のばねによって構成される付勢部材24とを有する(特に
図4、
図8A、
図8B参照)。第1スライド部材23a及び第2スライド部材23bは、それぞれ、例えば合成樹脂の射出成形によって形成されるが、これに限定されない。付勢部材24は、例えば金属製であるが、これに限定されない。
【0028】
図4に示すように、第1スライド部材23aは、チューブ5と対向するとともにチューブ5より第2方向Ds2に位置する第1対向部25aを有する。第2スライド部材23bは、チューブ5と対向するとともにチューブ5より第1方向Ds1に位置する第2対向部25bを有する。クランプ部22は、第1対向部25a及び第2対向部25bによって構成される。
【0029】
第2スライド部材23bは、コネクタ保持部21に第1コネクタ8aを保持させるために第1コネクタ8aによって第1方向Ds1に押圧される被押圧部26を有する。被押圧部26は、
図8B等に示すように、2つの円弧状の凸部26aによって構成されるが、その形状は変更可能である。被押圧部26は、凹部又は平坦面によって構成されてもよい。また、第2スライド部材23bは、第1コネクタ8aの先端部を挿入することで第1方向Ds1と垂直な方向への第1コネクタ8aの移動を規制する周壁27を有する。
図4等に示すように、第1スライド部材23aは、第1コネクタ8aを解除可能に係止する係合部28を有する。
【0030】
より具体的には、係合部28は、第1コネクタ8aの先端部が周壁27に挿入され、第1コネクタ8aの先端部によって被押圧部26が第1方向Ds1に押圧され、第1コネクタ8a及び第2スライド部材23bが第1スライド部材23aに対して相対的に第1方向Ds1に移動することにより、クランプ部22によるチューブ5に対するクランプが解除された状態(
図4参照)で、第1コネクタ8aが第1スライド部材23aに対して相対的に第2方向Ds2に移動することを規制するように第1コネクタ8aを係止する。第1スライド部材23aは、2つの係合片29を有し、2つの係合片29がそれぞれ有する係止突起30により、係合部28が構成される。2つの係合片29がそれぞれ有する操作部31を使用者が外側から押し込むことにより、係合部28による第1コネクタ8aへの係止が解除される。
【0031】
付勢部材24は、クランプ部22を、クランプ部22がチューブ5をクランプするように付勢する。より具体的には、付勢部材24は、第1スライド部材23aと第2スライド部材23bとの間に配置され、第2スライド部材23bを第1スライド部材23aに対して相対的に第2方向Ds2に付勢する。付勢部材24は、上述のとおりコイル状のばねによって構成されるが、例えば、コイル状以外のばねによって構成されてもよいし、クランプ部22がチューブ5をクランプするようにクランプ部22を付勢する磁石によって構成されてもよい。
【0032】
図8A及び
図8Bに示すように、第1スライド部材23aは、第1方向Ds1と垂直な矩形状の前壁32を有する。前壁32の右端は、左右方向に垂直な矩形状の右壁33の前端に連結する。前壁32の左端は、左右方向に垂直な矩形状の左壁34の前端に連結する。右壁33及び左壁34は、それぞれ、切欠きによって形成された係合片29を有する。また、第1スライド部材23aは、前壁32の後方に位置する第1方向Ds1と垂直な矩形状の後壁35を有する。後壁35の右端は、下端のみにおいて右壁33に連結する。後壁35の左端は、下端のみにおいて左壁34に連結する。後壁35の右端における上端は、上下方向に延在する係合片35aを有する。係合片35aは、係合片35aの上端から右側へ突出する係止突起を有する。後壁35の左端における上端は、上下方向に延在する係合片35bを有する。係合片35bは、係合片35bの上端から左側へ突出する係止突起を有する。第1スライド部材23aは、右壁33の下端と左壁34の下端と後壁35の下端とを連結する上下方向に垂直な下壁36を有する。下壁36は、チューブ5が挿入される開口36aを有する。
【0033】
本実施形態において、チューブクランプ20について、前方とは第1方向Ds1であり、後方とは第2方向Ds2である。本実施形態において、チューブクランプ20について、上下方向とはチューブ5の延在方向であり、下壁36が位置する側が下側である。本実施形態において、チューブクランプ20について、左右方向とは、前後方向と上下方向との両方と垂直な方向である。
【0034】
第2スライド部材23bは、第1方向Ds1と垂直な矩形状の前壁37を有する。前壁37の右端は、左右方向に垂直な矩形状の右壁38の前端に連結する。前壁37の左端は、左右方向に垂直な矩形状の左壁39の前端に連結する。また、第2スライド部材23bは、前壁37の後方に位置する第1方向Ds1と垂直な矩形状の後壁40を有する。第2スライド部材23bは、前壁37の上端と後壁40の上端とを連結する上下方向に垂直な上壁41を有する。上壁41は、チューブ5が挿入される開口41aを有する。また、上壁41は、開口41aの右側に位置する右開口41bと、開口41aの左側に位置する左開口41cとを有する。右開口41bには、第1スライド部材23aの後壁35の係合片35aが挿入され、係合片35aの係止突起が右壁38の上端に係止する。左開口41cには、第1スライド部材23aの後壁35の係合片35bが挿入され、係合片35bの係止突起が左壁39の上端に係止する。第2スライド部材23bは、後壁40の後方に位置する略円筒状の周壁27を有する。周壁27は、前後方向に亘る2つの切欠き27aを有する。2つの切欠き27aは、周壁27の左右に位置する。
【0035】
図4及び
図7に示すように、第1スライド部材23aの後壁35の前面は、クランプ部22の第1対向部25aを構成する。第2スライド部材23bの前壁37の後面は、クランプ部22の第2対向部25bを構成する。第1スライド部材23aの後壁35の前面は、後壁35の上端から上下方向中央部に向けて前方に傾斜する上側テーパ面と、後壁35の下端から上下方向中央部に向けて前方に傾斜する下側テーパ面とを有する。第2スライド部材23bの前壁37の後面は、前壁37の上端から上下方向中央部に向けて後方に傾斜する上側テーパ面と、前壁37の下端から上下方向中央部に向けて後方に傾斜する下側テーパ面とを有する。したがって、チューブ5は、第1スライド部材23aの後壁35の前面における上下方向中央部と、第2スライド部材23bの前壁37の後面における上下方向中央部とによって集中的に挟まれて、それにより確実にクランプされる。しかし、第1スライド部材23aの後壁35の前面、及び第2スライド部材23bの前壁37の後面の形状は、変更可能である。
【0036】
第1スライド部材23aの前壁32は、コイルばね状の付勢部材24の前端と係合する係合部32aを有する。係合部32aは、円柱状の突起であるが、例えば、円筒状の凸部であってもよいし、円形の凹部であってもよい。第2スライド部材23bの前壁37は、コイルばね状の付勢部材24の後端と係合する係合部37aを有する。係合部37aは、円柱状の突起であるが、例えば、円筒状の凸部であってもよいし、円形の凹部であってもよい。
【0037】
第1コネクタ8aは、第2スライド部材23bの周壁27に挿入される先端部を備える略円筒状の外筒42を有する。また、第1コネクタ8aは、外筒42の径方向内側に位置する円筒状の内筒43を有する。内筒43の先端部は、弁体44により開閉可能である。内筒43は、その内側に流路を形成する。外筒42は、第2コネクタ8bを解除可能に係止する係合片42aをそれぞれ形成する2つの切欠き42bを有する。2つの切欠き42bは、外筒42の中心軸線に対して互いに反対側に位置する。
【0038】
図5~
図7に示すようなクランプ状態から、
図2~
図4に示すようなクランプ解除状態にするための要領は、例えば次のとおりである。まず、使用者は、第1コネクタ8aの外筒42の先端部をチューブクランプ20の第2スライド部材23bの周壁27に挿入する。そして、使用者は、外筒42の先端部により、第2スライド部材23bの後壁40の後面に位置する被押圧部26を、付勢部材24の付勢力に抗して押圧し、それにより、第2スライド部材23bを第1スライド部材23aに対して相対的に第1方向Ds1に移動させる。この移動により、第1スライド部材23aの後壁35の前面、すなわち第1対向部25aと、第2スライド部材23bの前壁37の後面、すなわち第2対向部25bとの距離が拡大し、クランプ部22によるチューブ5に対するクランプが解除される。このとき、第1スライド部材23aの係合部28を構成する2つの係止突起30が、それぞれ、外筒42の切欠き42bに入り込み、外筒42を係止する。したがって、第1コネクタ8aは、周壁27及び係合部28によって構成されるコネクタ保持部21に保持される。このように、クランプ部22は、コネクタ保持部21への第1コネクタ8aの保持により、チューブ5に対するクランプを解除する。
【0039】
図2~
図4に示すようなクランプ解除状態から、
図5~
図7に示すようなクランプ状態にするための要領は、例えば次のとおりである。すなわち、使用者は、第1スライド部材23aの2つの係合片29の操作部31を外側から押し込み、係合部28による外筒42の係止を解除する。この係止の解除により、第2スライド部材23bは、付勢部材24の付勢力により、第1スライド部材23aに対して相対的に第2方向Ds2に移動する。この移動により、クランプ部22がチューブ5をクランプする。このように、クランプ部22は、コネクタ保持部21からの第1コネクタ8aの分離により、チューブ5をクランプする。
【0040】
送液装置1によれば、第1液体2aを送液するためには、第1コネクタ8aをチューブクランプ20のコネクタ保持部21に保持する操作が必要である。この操作は、第2液体2bを収容する第2容器3bがメインラインに連結されないことを保証する。また、送液装置1によれば、第2液体2bを送液するためには、チューブクランプ20のコネクタ保持部21から第1コネクタ8aを分離し、第2コネクタ8bに連結する操作が必要である。この操作は、チューブクランプ20のクランプ部22がチューブ5をクランプし、第1液体2aが送液されないことを保証する。したがって、送液装置1によれば、送液状態の切替えの間違いを抑制可能である。
【0041】
また、送液装置1によれば、第2液体2bを送液しないときには、第1コネクタ8aをチューブクランプ20のコネクタ保持部21に保持しておくことができる。このとき、第1コネクタ8aの先端部はコネクタ保持部21の周壁27によって包囲されるので、第1コネクタ8aの先端部の衛生状態を良好に維持することができる。
【0042】
次に、
図9~
図14を参照して、本発明の第2実施形態に係る医療用器具及び送液装置について詳細に例示説明する。
【0043】
本実施形態に係る送液装置1は、チューブクランプ20(医療用器具)及び一対のコネクタ8a、8bの具体的構成が異なる他は、第1実施形態の場合と同様の構成を有する。第2実施形態において、第1実施形態で示した要素に対応する要素には、第1実施形態の場合と同様の符号を付している。
【0044】
図9~
図13Bに示すように、本実施形態のチューブクランプ20は、第1実施形態の場合と同様に、第1コネクタ8aを分離可能に保持するコネクタ保持部21と、コネクタ保持部21への第1コネクタ8aの保持により、チューブ5に対するクランプを解除するとともに、コネクタ保持部21からの第1コネクタ8aの分離により、チューブ5をクランプするクランプ部22とを有する。本実施形態においても、クランプ部22は、コネクタ保持部21への第1コネクタ8aの保持によってチューブ5に対するクランプを解除した状態においても、チューブ5との接触を維持するように構成されることが好ましい。このような接触によって生じる摩擦力により、クランプの解除状態においても、チューブクランプ20をチューブ5に保持することができる。
【0045】
本実施形態において、チューブクランプ20は、第1回動部材50aと、第1回動部材50aに対して相対的に、回動軸線Lrを中心として、第1方向Dr1と第1方向Dr1の反対方向である第2方向Dr2とに回動可能な第2回動部材50bと、Cリング状のばねによって構成される付勢部材51とを有する。第1回動部材50a及び第2回動部材50bは、それぞれ、例えば合成樹脂の射出成形によって形成されるが、これに限定されない。付勢部材51は、例えば金属製であるが、これに限定されない。
【0046】
第1回動部材50aは、チューブ5と対向するとともにチューブ5より第2方向Dr2に位置する第1対向部52aを有する。第2回動部材50bは、チューブ5と対向するとともにチューブ5より第1方向Dr1に位置する第2対向部52bを有する。クランプ部22は、第1対向部52a及び第2対向部52bによって構成される。
【0047】
第1回動部材50aは、コネクタ保持部21に第1コネクタ8aを保持するために第1コネクタ8aを第1方向Dr1に押圧する第1押圧部53aを有する。第2回動部材50bは、コネクタ保持部21に第1コネクタ8aを保持するために第1コネクタ8aを第2方向Dr2に押圧する第2押圧部53bを有する。コネクタ保持部21は、第1押圧部53a及び第2押圧部53bによって構成される。つまり、第1コネクタ8aは、第1押圧部53a及び第2押圧部53bに挟み込まれることによって保持される。この挟み込む力は、クランプ部22がチューブ5をクランプするように付勢する付勢部材51によって付与される。付勢部材51は、上述のとおりCリング状のばねで構成されるが、例えば、Cリング状以外のばねによって構成されてもよいし、クランプ部22がチューブ5をクランプするようにクランプ部22を付勢する磁石によって構成されてもよい。第1押圧部53a及び第2押圧部53bは、それぞれ、回動軸線Lrに沿って視たときに略円弧形状を有するが、例えば、略円弧形状以外の凹形状を有してもよい。
【0048】
図13A及び
図13Bに示すように、第1回動部材50aは、第1端54aから第2端55aまで延在する長尺状をなす。回動軸線Lrは、第1端54aと第2端55aとの間に位置する。第1対向部52aは、回動軸線Lrよりも第1端54aの側に位置する。第1押圧部53aは、回動軸線Lrよりも第2端55aの側に位置する。第2回動部材50bは、第1端54bから第2端55bまで延在する長尺状をなす。回動軸線Lrは、第1端54bと第2端55bとの間に位置する。第2対向部52bは、回動軸線Lrよりも第1端54bの側に位置する。第2押圧部53bは、回動軸線Lrよりも第2端55bの側に位置する。
【0049】
第1対向部52aは、第1回動部材50aの長さ方向に一定の楔形断面形状を有する。第2対向部52bは、第2回動部材50bの長さ方向に一定の楔形断面形状を有する。また、第1対向部52aの尖った先端(第1回動部材50aの長さ方向に延在する稜線)と、第2対向部52bの尖った先端(第2回動部材50bの長さ方向に延在する稜線)とは、クランプ状態において互いに略平行になるように構成される(
図12参照)。したがって、クランプ部22は、第1対向部52aの尖った先端と第2対向部52bの尖った先端とにより、チューブ5を確実に信頼性良くクランプすることができる。
【0050】
第1回動部材50aは、第1対向部52aに対応する位置でループ状をなすループ部56を有する。ループ部56は、回動軸線Lrに沿う方向に互いに離間する一対のループ状板体56aによって構成される。ループ部56には、チューブ5が挿入される。
【0051】
第1回動部材50aは、回動軸線Lrに対応する位置に、第2回動部材50bによって貫通される第1貫通口57aを有する。また、第1回動部材50aは、第1貫通口57aの回動軸線Lrに沿う両側に位置するとともに開口によって構成される軸受け部58を有する。第2回動部材50bは、軸受け部58に対応する軸59を有する。軸受け部58及び軸59により、回動軸線Lrが規定される。軸受け部58及び軸59の配置を互いに入れ替えてもよい。
【0052】
第2回動部材50bは、第1貫通口57aの内側に位置するとともに、付勢部材51によって貫通される第2貫通口57bを有する。付勢部材51は、第1端51aから第2端51bまでCリング状をなすように延在している。付勢部材51の第1端51aは、第1回動部材50aにおける回動軸線Lrと第2端55aとの間の部分に外側から当接し、内側へ(つまり、第1方向Dr1に)押圧力を付与する。付勢部材51の第2端51bは、第2回動部材50bにおける回動軸線Lrと第2端55bとの間の部分に外側から当接し、内側へ(つまり、第2方向Dr2に)押圧力を付与する。
【0053】
図9に示すように、本実施形態において、第1コネクタ8aは、コネクタ保持部21に挟まれて保持される外周面60を有する。外周面60は、略円筒外周面形状をなすが、コネクタ保持部21の形状に合わせて変更可能である。
【0054】
図11~
図12に示すようなクランプ状態から、
図9~
図10に示すようなクランプ解除状態にするための要領は、例えば次のとおりである。すなわち、使用者は、第1コネクタ8aの外周面60を、第1回動部材50aの第2端55aと第2回動部材50bの第2端55bとの間から、コネクタ保持部21に向けて、付勢部材51の付勢力に抗しながら押し込む。この押し込みにより、第1コネクタ8aの外周面60がコネクタ保持部21に達すると、第1押圧部53aと第2押圧部53bとの(回動軸線Lrの周方向の)間隔が拡大するとともに第1対向部52aと第2対向部52bとの(回動軸線Lrの周方向の)間隔が拡大した状態で、第1コネクタ8aの外周面60がコネクタ保持部21に保持される。この第1対向部52aと第2対向部52bとの間隔の拡大により、クランプ部22によるチューブ5に対するクランプが解除される。このように、クランプ部22は、コネクタ保持部21への第1コネクタ8aの保持により、チューブ5に対するクランプを解除する。
【0055】
図9~
図10に示すようなクランプ解除状態から、
図11~
図12に示すようなクランプ状態にするための要領は、例えば次のとおりである。すなわち、使用者は、コネクタ保持部21から第1コネクタ8aの外周面60を引き抜く。この引き抜きにより、付勢部材51の付勢力によって、第1押圧部53aと第2押圧部53bとの間隔が縮小するとともに第1対向部52aと第2対向部52bとの間隔が縮小する。第1対向部52aと第2対向部52bとの間隔の縮小により、クランプ部22がチューブ5をクランプする。このように、クランプ部22は、コネクタ保持部21からの第1コネクタ8aの分離により、チューブ5をクランプする。
【0056】
送液装置1によれば、第1実施形態の場合と同様に、送液状態の切替えの間違いを抑制可能である。また、送液装置1によれば、第1実施形態の場合と同様に、第2液体2bを送液しないときには、第1コネクタ8aをチューブクランプ20のコネクタ保持部21に保持しておくことができる。
【0057】
上述した第2実施形態において、付勢部材51の第1端51a及び第2端51bは、第1回動部材50a及び第2回動部材50bの第2端55a、55bの側に位置する。しかし、
図14に示す変形例のように、付勢部材51の第1端51a及び第2端51bは、第1回動部材50a及び第2回動部材50bの第1端54a、54bの側に位置してもよい。
【0058】
前述した実施形態は、本発明の実施形態の一例にすぎず、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1 送液装置
2a 第1液体
2b 第2液体
3a 第1容器
3b 第2容器
4a 第1流路形成部
4b 第2流路形成部
4c 第3流路形成部
5 チューブ
6 瓶針
7 分岐コネクタ
7a 第1ポート
7b 第2ポート
7c 第3ポート
8a 第1コネクタ
8b 第2コネクタ
10、11 チューブ
12 点滴筒
13 チューブ
14 コネクタ
15 クレンメ
20 チューブクランプ(医療用器具)
21 コネクタ保持部
22 クランプ部
23a 第1スライド部材
23b 第2スライド部材
24 付勢部材
25a 第1対向部
25b 第2対向部
26 被押圧部
26a 凸部
27 周壁
27a 切欠き
28 係合部
29 係合片
30 係止突起
31 操作部
32 前壁
32a 係合部
33 右壁
34 左壁
35 後壁
35a、35b 係合片
36 下壁
36a 開口
37 前壁
37a 係合部
38 右壁
39 左壁
40 後壁
41 上壁
41a 開口
41b 右開口
41c 左開口
42 外筒
42a 係合片
42b 切欠き
43 内筒
44 弁体
50a 第1回動部材
50b 第2回動部材
51 付勢部材
52a 第1対向部
52b 第2対向部
53a 第1押圧部
53b 第2押圧部
54a、54b 第1端
55a、55b 第2端
56 ループ部
56a ループ状板体
57a 第1貫通口
57b 第2貫通口
58 軸受け部
59 軸
60 外周面
Ds1 第1方向
Ds2 第2方向
Dr1 第1方向
Dr2 第2方向
Lr 回動軸線