(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】感圧センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/24 20060101AFI20220809BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20220809BHJP
G01L 5/166 20200101ALI20220809BHJP
G01L 1/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01L1/24 Z
G01L5/00 101Z
G01L5/166
G01L1/00 B
(21)【出願番号】P 2019065498
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】金原 悠帆
(72)【発明者】
【氏名】景岡 正和
(72)【発明者】
【氏名】田實 佳郎
(72)【発明者】
【氏名】三塚 雅彦
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6462009(JP,B2)
【文献】特許第6458058(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光弾性定数の絶対値が互いに異なる複数の光弾性ポリウレタン樹脂と、複数の光弾性ポリウレタン樹脂のそれぞれを通過した光を検知する光センサと、前記光センサによって検知された光信号が入力される処理部とを備える感圧センサであって、
前記処理部は、前記光センサが前記光弾性ポリウレタン樹脂毎に検知した光信号から、測定荷重を算出することを特徴とする、感圧センサ。
【請求項2】
前記処理部は、
前記光弾性ポリウレタン樹脂に負荷された荷重と、その荷重が負荷されたときに前記光弾性ポリウレタン樹脂を通過した光信号の強度との相関データが、前記光弾性ポリウレタン樹脂毎に格納された記憶領域を備え、
前記光センサが前記光弾性ポリウレタン樹脂毎に検知した光信号の強度から、前記相関データに基づいて、前記光弾性ポリウレタン樹脂毎に、複数の推定荷重を算出し、
前記光弾性ポリウレタン樹脂毎に算出された複数の推定荷重から、すべての前記光弾性ポリウレタン樹脂に共通する推定荷重を、測定荷重として抽出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の感圧センサ。
【請求項3】
複数の前記光弾性ポリウレタン樹脂は、荷重が負荷される方向に、重なって配置されていることを特徴とする、請求項1または請求項2の記載の感圧センサ。
【請求項4】
複数の前記光弾性ポリウレタン樹脂は、荷重が負荷される方向と交差する方向に、並んで配置されていることを特徴とする、請求項1または請求項2の記載の感圧センサ。
【請求項5】
前記光弾性ポリウレタン樹脂は、荷重が負荷される方向において前記光センサの光が通過する光路と重なる部分が、荷重が負荷される方向と反対方向に、突出していることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の感圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧センサに関し、詳しくは、光弾性ポリウレタン樹脂を備える感圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光弾性を有するポリウレタン樹脂などの光弾性ポリウレタン樹脂を、感圧センサとして用いることが提案されている。
【0003】
例えば、25℃におけるヤング率が2~5MPaであり、25℃における光弾性定数が1000×10-12Pa-1~100000×10-12Pa-1であり、ガラス転移温度が-60℃~-21℃である光弾性ポリウレタン樹脂からなる樹脂部材に光を通過させ、その通過光をフォトダイオードで受光して、光量の減衰を検知することにより、樹脂部材に対して負荷された荷重を検知する感圧センサが、提案されている(例えば、特許文献1(第1実施形態)参照)。
【0004】
しかし、光弾性ポリウレタン樹脂は、負荷される荷重が大きくなるに従って、フォトダイオードで受光される光信号(電圧)が、一定比率で大きくなるのではなく、所定荷重までは大きくなるが、それ以降は小さくなり、その後、再び所定荷重まで大きくなり、それ以降小さくなるという、光弾性定数に応じた波形を形成する。
【0005】
従って、検知された光信号(電圧)から推定される荷重が、複数存在してしまい、荷重が一義的に検知できないという不具合がある。
【0006】
そこで、電圧を積算して解析することにより、荷重を算出する方法が提案されている(非特許文献1参照)。この方法では、電圧を積算していくことにより、どの荷重であるかを特定するため、負荷された荷重を一義的に求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開WO2016/125905パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【文献】三塚雅彦ら、第28回日本MRS年次大会 予稿集(2018年12月5日公開)、154頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、電圧を積算して解析することにより荷重を算出する方法は、解析に手間がかかり、また、ノイズを含んだ電圧を積算するため、誤差が大きいという不具合がある。
【0010】
本発明は、簡易な構成により、精度よく荷重を測定することのできる感圧センサである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明[1]は、光弾性定数の絶対値が互いに異なる複数の光弾性ポリウレタン樹脂と、複数の光弾性ポリウレタン樹脂のそれぞれを通過した光を検知する光センサと、前記光センサによって検知された光信号が入力される処理部とを備える感圧センサであって、前記処理部は、前記光センサが前記光弾性ポリウレタン樹脂毎に検知した光信号から、測定荷重を算出する、感圧センサを含んでいる。
【0012】
本発明[1]の感圧センサでは、光弾性定数の絶対値が互いに異なる複数の光弾性ポリウレタン樹脂のそれぞれを通過した光を、光センサにより検知する。検知された光信号は、複数の光弾性ポリウレタン樹脂の光弾性定数の絶対値が互いに異なるため、光弾性ポリウレタン樹脂毎に異なる。つまり、特定の荷重が負荷されると、検知された光信号は、光弾性ポリウレタン樹脂毎に異なる。
【0013】
そのため、処理部は、光弾性ポリウレタン樹脂毎に異なった光信号から、測定荷重を算出することができる。
【0014】
その結果、1つの光弾性ポリウレタン樹脂から検知された光信号(電圧)を積算することなく、測定荷重を算出できるので、簡易な構成により、精度よく荷重を測定することができる。
【0015】
本発明[2]は、前記処理部は、前記光弾性ポリウレタン樹脂に負荷した荷重と、その荷重が負荷されたときに前記光弾性ポリウレタン樹脂を通過した光信号の強度との相関データが、前記光弾性ポリウレタン樹脂毎に格納された記憶領域を備え、前記光センサが前記光弾性ポリウレタン樹脂毎に検知した光信号の強度から、前記相関データに基づいて、前記光弾性ポリウレタン樹脂毎に、複数の推定荷重を算出し、前記光弾性ポリウレタン樹脂毎に算出された複数の推定荷重から、すべての前記光弾性ポリウレタン樹脂に共通する推定荷重を、測定荷重として抽出する、上記[1]に記載の感圧センサを含んでいる。
【0016】
本発明[2]の感圧センサでは、処理部が、光弾性ポリウレタン樹脂に負荷された荷重と光信号の強度との相関データが格納された記憶領域を備えている。そして、処理部では、光弾性ポリウレタン樹脂毎に、検知された光信号の強度から複数の推定荷重を算出し、すべての光弾性ポリウレタン樹脂に共通する推定荷重を、測定荷重として抽出する。
【0017】
そのため、簡易な演算により、確実に荷重を測定することができる。
【0018】
本発明[3]は、複数の前記光弾性ポリウレタン樹脂は、荷重が負荷される方向に、重なって配置されている、上記[1]または上記[2]に記載の感圧センサを含んでいる。
【0019】
本発明[3]の感圧センサでは、複数の光弾性ポリウレタン樹脂が、荷重が負荷される方向に重なって配置されている。そのため、負荷される荷重が、複数の光弾性ポリウレタン樹脂に一律に作用する。その結果、確実な荷重の測定を達成することができる。
【0020】
本発明[4]は、複数の前記光弾性ポリウレタン樹脂は、荷重が負荷される方向と交差する方向に、並んで配置されている、上記[1]または上記[2]に記載の感圧センサを含んでいる。
【0021】
本発明[4]の感圧センサでは、複数の光弾性ポリウレタン樹脂が、荷重が負荷される方向と交差する方向に並んで配置されている。そのため、感圧センサの薄型化を図ることができる。
【0022】
本発明[5]は、前記光弾性ポリウレタン樹脂は、荷重が負荷される方向において前記光センサの光が通過する光路と重なる部分が、荷重が負荷される方向と反対方向に、突出している、上記[1]~上記[4]のいずれか1項に記載の感圧センサを含んでいる。
【0023】
本発明[5]の感圧センサでは、光弾性ポリウレタン樹脂の光路と重なる部分が、荷重が負荷される方向と反対方向に突出している。そのため、測定対象は、突出する部分と最初に接触することができる。そうすると、光弾性ポリウレタン樹脂の光路と重なる部分に、適切に荷重を負荷することができる。その結果、より精度のよい荷重を測定を達成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の感圧センサでは、簡易な構成により、精度よく荷重を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の感圧センサの第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す感圧センサにおける光弾性ポリウレタン樹脂を抜粋して示す斜視図であり、
図2Aは、荷重が負荷されていない光弾性ポリウレタン樹脂、
図2Bは、荷重が負荷されている光弾性ポリウレタン樹脂を、それぞれ示す。
【
図3】
図3は、光弾性ポリウレタン樹脂に負荷された荷重と、その荷重が負荷されたときに光弾性ポリウレタン樹脂を通過した光信号の強度との相関データの一例を示すグラフであり、
図3Aは、光弾性ポリウレタン樹脂Aの荷重と電圧値との相関データの一例を示し、
図3Bは、光弾性ポリウレタン樹脂Bの荷重と電圧値との相関データの一例を示す。
【
図4】
図4は、光弾性ポリウレタン樹脂に負荷された荷重と、その荷重が負荷されたときに光弾性ポリウレタン樹脂を通過した光信号の強度との相関データとしての干渉縞を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の感圧センサの第2実施形態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の感圧センサの第3実施形態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の感圧センサの第4実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下において、光弾性ポリウレタン樹脂がシート状に延びる平面方向のうち、長手方向を第1方向(長手方向)とし、第1方向と直交する幅方向を第2方向とし、第1方向および第2方向に直交する厚み方向を第3方向(上下方向)として、
図1~
図3を参照して詳述する。
【0027】
図1において、感圧センサ1は、光弾性定数の絶対値が互いに異なる複数の光弾性ポリウレタン樹脂2と、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2のそれぞれを通過した光を検知する光センサ4と、光弾性ポリウレタン樹脂2に対する光の照射を制御するための制御部6と、光センサ4によって検知された光信号が入力される処理部5とを備えている。なお、
図1において、処理部5および制御部6は、一体的に形成されている。すなわち、1つのECU(後述)が、処理部5および制御部6を兼ね備えている。
【0028】
図1において、光弾性ポリウレタン樹脂2は、光弾性を有する樹脂からなる部材であり、第1方向(長手方向)および第2方向(幅方向)に延びる平面視略矩形のシート状に形成されている。
【0029】
また、感圧センサ1において、光弾性ポリウレタン樹脂2は複数備えられている。光弾性ポリウレタン樹脂2の数は、2つ以上であり、通常、20つ以下、好ましくは、10つ以下、より好ましくは、5つ以下である。なお、
図1には、光弾性ポリウレタン樹脂2が2つ備えられる形態を示している。
【0030】
複数(2つ)の光弾性ポリウレタン樹脂2は、光弾性ポリウレタン樹脂2の第1方向(長手方向)および第2方向(幅方向)と直交する第3方向(厚み方向)において、重なって配置されている。これにより、光弾性ポリウレタン樹脂2を複数備えるポリウレタン積層体3が、形成されている。なお、第3方向は、後述する荷重が負荷される方向であり、感圧センサ1の用途に応じて異なるが、例えば、鉛直方向である。
【0031】
以下において、複数(2つ)の光弾性ポリウレタン樹脂2を区別する場合には、第3方向一方側(上側)の光弾性ポリウレタン樹脂2を、光弾性ポリウレタン樹脂2Aと称し、また、第3方向他方側(下側)の光弾性ポリウレタン樹脂2を、光弾性ポリウレタン樹脂2Bと称する。
【0032】
複数の光弾性ポリウレタン樹脂2は、例えば、国際公開WO2016/125905パンフレットに記載の方法に準拠して、得ることができる。
【0033】
そして、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2は、光弾性定数の絶対値が互いに異なるように、原料成分の種類や量が、適宜設計される。
【0034】
より具体的には、各光弾性ポリウレタン樹脂2は、それぞれ、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを含有するポリウレタン樹脂組成物を、反応および硬化させることにより、反応生成物として得ることができる。
【0035】
ポリイソシアネート成分は、好ましくは、芳香環含有ポリイソシアネートを含む。また、芳香環含有ポリイソシアネートは、好ましくは、1,4-フェニレン基(但し、1,4-フェニレン基における一部の水素原子が、メチル基および/またはメトキシ基で置換されていてもよい。)、および/または、1,5-ナフチレン基を含有している。
【0036】
1,4-フェニレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートの重合物(カルボジイミド変性MDI、ウレトンイミン変性MDI、アシル尿素変性MDIなど)、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′-MDI)、3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート(TODI)、3,3′-ジメトキシビフェニル-4,4′-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、1,4-キシリレンジイソシアネート(1,4-XDI)などのベンゼン環含有ポリイソシアネート(具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネート)などが挙げられる。
【0037】
また、1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートとしては、例えば、1,5-ナフタレンジイソシアネート(1,5-NDI)などのナフタレン環含有ポリイソシアネート(具体的には、ナフタレン環含有ジイソシアネート)などが挙げられる。
【0038】
これら1,4-フェニレン基および/または1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0039】
1,4-フェニレン基および/または1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートのうち、好ましくは、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)、3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(1,5-NDI)が挙げられる。
【0040】
また、ポリイソシアネート成分は、上記した芳香環含有ポリイソシアネート以外のポリイソシアネート(以下、その他のポリイソシアネート)を含有することもできる。
【0041】
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート(上記した芳香環含有ポリイソシアネートを除く)、芳香脂肪族ポリイソシアネート、(上記した芳香環含有ポリイソシアネートを除く)、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0042】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,2′-MDI、2,6-TDI、m-フェニレンジイソシアネート、2,6-NDIなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0043】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート(1,3-XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0044】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′-、2,4′-または2,2′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(H12MDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート、H6XDI)、2,5-または2,6-ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンもしくはその混合物(NBDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-または1,3-シクロヘキサンジイソシアネートもしくはその混合物、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0045】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,2-、2,3-または1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0046】
その他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0047】
ポリイソシアネート成分が、その他のポリイソシアネートと、1,4-フェニレン基および/または1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートとを含有する場合には、1,4-フェニレン基および/または1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートの割合が、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、30質量%以上、さらに好ましくは、50質量%以上、とりわけ好ましくは、90質量%以上である。
【0048】
また、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、その他のポリイソシアネートを含まず、1,4-フェニレン基および/または1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートからなる。
【0049】
活性水素基含有成分は、活性水素基(例えば、水酸基、アミノ基など)を有する化合物であって、例えば、ポリオール、ポリアミンなどが挙げられ、好ましくは、ポリオールが挙げられる。
【0050】
ポリオールは、好ましくは、高分子量ポリオールを含有している。
【0051】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、平均水酸基価(後述)が500mgKOH/g以下の化合物である。
【0052】
高分子量ポリオールとして、好ましくは、平均水酸基価(後述)が20~500mgKOH/gの化合物が挙げられる。また、平均官能基数(後述)が2の場合には、数平均分子量が225以上の化合物が挙げられ、また、平均官能基数(後述)が3の場合には、数平均分子量337以上の化合物が挙げられる。
【0053】
高分子量ポリオールの平均水酸基価は、20mgKOH/g以上、好ましくは、80mgKOH/g以上、より好ましくは、100mgKOH/g以上であり、500mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下、より好ましくは、250mgKOH/g以下、さらに好ましくは、220mgKOH/g以下である。
【0054】
高分子量ポリオールの水酸基価(単位:mgKOH/g)は、JIS K 1557-1のA法またはB法に準拠するアセチル化法またはフタル化法などから求めることができる。
【0055】
そして、高分子量ポリオールの平均水酸基価(単位:mgKOH/g)は、高分子量ポリオールが単独使用される場合には、その高分子量ポリオールの水酸基価と同一である。一方、高分子量ポリオールの平均水酸基価は、高分子量ポリオールが併用される場合には、それらの平均値である。
【0056】
高分子量ポリオールの平均水酸基価が上記した範囲を超過すると、光弾性ポリウレタン樹脂2において、ヤング率が高くなり過ぎ、所望の光弾性定数(絶対値)を得ることができない場合がある。一方、平均水酸基価が上記した範囲未満であると、ガラス転移温度が過度に低くなり、加工性や耐傷付き性が低下する場合がある。
【0057】
高分子量ポリオールの平均官能基数は、例えば、1.9以上、好ましくは、2.0以上であり、例えば、3以下、好ましくは、2.5以下、さらに好ましくは、2.2以下である。
【0058】
高分子量ポリオールの官能基数は、高分子量ポリオールの水酸基数であって、具体的には、1分子当たりの活性な水酸基の数である。
【0059】
そして、高分子量ポリオールの平均官能基数は、高分子量ポリオール1分子当たりの活性な水酸基の平均値である。つまり、異なる官能基数を有する高分子量ポリオールが混合(併用)される場合は、その高分子量ポリオールの混合物の分子数に対する混合物の活性な水酸基の数の割合を示した数値が、高分子量ポリオールの平均官能基数である。
【0060】
なお、高分子量ポリオールの平均官能基数は、次式(B)から求めることもできる。
【0061】
平均官能基数=(各高分子量ポリオールの官能基数×当量数)の総和/各高分子量ポリオールの当量数の総和 (B)
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、225以上、好ましくは、500以上であり、例えば、20,000以下、好ましくは、15,000以下である。
【0062】
数平均分子量は、次式(C)から求めることができる。
【0063】
数平均分子量=56100×平均官能基数/平均水酸基価 (C)
高分子量ポリオールの平均官能基数が上記した範囲を超過すると、光弾性ポリウレタン樹脂2において、所望の光弾性定数(絶対値)を得にくい場合がある。一方、平均官能基数が上記した範囲未満であると、ヤング率が低くなり過ぎ、加工性や耐傷付き性が低下する場合がある。
【0064】
そのような高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ダイマーポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体ポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0065】
高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、とりわけ好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
【0066】
また、ポリオールは、上記した高分子量ポリオールに加え、低分子量ポリオールを含有することもできる。
【0067】
ポリオールが低分子量ポリオールを含有することにより、ポリオールの平均水酸基価を増大させて、その分、イソシアネートインデックス(後述)を所望の値に調整すべく、上記したポリイソシアネート成分(好ましくは、芳香環含有ポリイソシアネート)をポリウレタン樹脂組成物に多く配合することができる。そのため、光弾性ポリウレタン樹脂2の光弾性定数の絶対値を高めることができる。
【0068】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、平均水酸基価(後述)が500mgKOH/gを超過する化合物である。
【0069】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、平均水酸基価(後述)が500mgKOH/gを超過し、3000mgKOH/g以下の化合物が挙げられ、また、官能基数(後述)が2の場合には、分子量が40以上225未満のジオールが挙げられ、官能基数(後述)が3の場合には、分子量40以上337未満のトリオールが挙げられる。
【0070】
そのような低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、トリメチレングリコール(1,3-プロパンジオール)、1,4-ブチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、1,3-ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)などの脂肪族ジオール(炭素数2~13)や、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール(炭素数6~13)、さらには、例えば、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコールなどの芳香族ジオール(芳香環を含有する炭素数6~13の芳香環含有ジオール)、さらにまた、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコールなどのオキシアルキレンアルコールなどのジオール(炭素数2~9)(2価アルコール)、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノールなどの炭素数3~6の脂肪族トリオール、および、その他の脂肪族トリオール(炭素数7~20)などのトリオール(3価アルコール)、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリン(ジグリセロール)などのテトラオール(4価アルコール)(炭素数5~27)などが挙げられる。
【0071】
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0072】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコール、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、炭素数3~6の脂肪族トリオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0073】
低分子量ポリオールの配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下、さらに好ましくは、5質量部以下である。
【0074】
低分子量ポリオールの配合割合が上記した範囲を超える場合は、光弾性ポリウレタン樹脂2が不透明になり、光が、光弾性ポリウレタン樹脂2を透過しない場合や、光弾性ポリウレタン樹脂2のヤング率が高くなり過ぎる場合がある。
【0075】
そして、光弾性ポリウレタン樹脂2は、上記ポリイソシアネート成分と上記活性水素基含有成分とを反応させて、ポリウレタン樹脂組成物を硬化および成形することにより、得ることができる。
【0076】
ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを反応させるには、例えば、ワンショット法やプレポリマー法などの公知の成形方法に準拠することができる。
【0077】
ワンショット法では、例えば、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを、イソシアネートインデックス(水酸基濃度に対するイソシアネート基濃度の比に100を乗じた値、NCO濃度/水酸基濃度×100)が、例えば、70~400、好ましくは、80~150となるように処方(混合)して、それらを成形型に注入して、例えば、0℃~250℃、好ましくは、室温(20℃)~150℃で、例えば、1分間~7日間、好ましくは、10分間~2日間、硬化反応させる。
【0078】
この硬化反応では、例えば、有機金属系触媒、アミン系触媒などの公知のウレタン化触媒を添加することができる。また、上記した硬化反応は、公知の溶媒の存在下で実施することもできる。
【0079】
そして、成形型に注入して硬化反応させた後、脱型し、必要に応じて外形加工すれば、所定形状に成形された光弾性ポリウレタン樹脂2を得ることができる。
【0080】
プレポリマー法は、例えば、まず、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分の一部(例えば、高分子量ポリオール)とを反応させて、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成する。次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基含有成分の残部(鎖伸長剤:例えば、低分子量ポリオール(および必要により高分子量ポリオール))とを反応(鎖伸長)させて、硬化反応させる。
【0081】
そして、成形型に注入して硬化反応させた後、脱型し、必要に応じて外形加工すれば、所定形状に成形された光弾性ポリウレタン樹脂2を得ることができる。
【0082】
なお、上記のポリウレタン樹脂組成物または光弾性ポリウレタン樹脂2には、必要に応じて、例えば、消泡剤、可塑剤、レベリング剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、脱水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0083】
そして、上記の光弾性ポリウレタン樹脂2は、光弾性、つまり、荷重などに基づく応力の発生により、光弾性ポリウレタン樹脂2の内部を通過する光(例えば、レーザー光など)に複屈折を生じさせることができる。そのため、感圧センサ1において好適に用いることができる。
【0084】
ポリウレタン樹脂組成物として、好ましくは、1,4-フェニレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールと、トリオールとの組合せが挙げられ、具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネートと、ポリテトラメチレンエーテルポリオールと、脂肪族トリオールとの組み合わせが挙げられる。
【0085】
また、ポリウレタン樹脂組成物において、上記ポリイソシアネート成分と上記活性水素基含有成分との組み合わせや、添加剤の添加割合は、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2が、それぞれ異なる光弾性定数の絶対値を有するように、適宜選択される。
【0086】
例えば、光弾性ポリウレタン樹脂2Aにおいて、好ましくは、ベンゼン環含有ジイソシアネートとして、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)と、3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート(TODI)とが併用される。一方、光弾性ポリウレタン樹脂2Bにおいて、好ましくは、ベンゼン環含有ジイソシアネートとして、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)が単独使用される。
【0087】
このように、各光弾性ポリウレタン樹脂2において、ポリウレタン樹脂組成物の処方を種々変更することにより、互いに光弾性定数の絶対値が異なる光弾性ポリウレタン樹脂2を得ることができる。
【0088】
なお、光弾性定数の絶対値に応じて処方を変更する例としては、上記に限定されず、例えば、原料成分として互いに異なるポリエーテルポリオールを使用することや、添加剤の配合割合を互いに変更することなどによって、複数種類の光弾性ポリウレタン樹脂2を得ることもできる。
【0089】
すべての光弾性ポリウレタン樹脂2において、25℃における光弾性定数の絶対値は、例えば、20×10-12Pa-1以上、好ましくは、500×10-12Pa-1以上、より好ましくは、1000×10-12Pa-1以上、さらに好ましくは、2000×10-12Pa-1以上、とりわけ好ましくは、3000×10-12Pa-1以上であり、例えば、1×10-5Pa-1以下(=10000000×10-12Pa-1以下)、好ましくは、1×10-6Pa-1以下(=1000000×10-12Pa-1以下)、より好ましくは、1×10-7Pa-1以下(=100000×10-12Pa-1以下)、さらに好ましくは、1×10-8Pa-1以下(=10000×10-12Pa-1以下)、とりわけ好ましくは、8000×10-12Pa-1以下である。
【0090】
光弾性定数の絶対値が上記範囲であれば、感圧センサ1において必要とされる優れた光弾性を確保することができる。
【0091】
そして、各光弾性ポリウレタン樹脂2の光弾性定数の絶対値は、上記範囲内で互いに異なる。
【0092】
各光弾性ポリウレタン樹脂2の間における光弾性定数の絶対値の差異は、例えば、100×10-12Pa-1以上、好ましくは、500×10-12Pa-1以上、より好ましくは、1000×10-12Pa-1以上であり、例えば、10000000×10-12Pa-1以下、好ましくは、100000×10-12Pa-1以下、より好ましくは、10000×10-12Pa-1以下である。
【0093】
光弾性定数の絶対値の差異が上記範囲であれば、優れた検知感度の感圧センサ1を得ることができる。
【0094】
また、例えば、光弾性ポリウレタン樹脂2が2つである場合、一方の光弾性ポリウレタン樹脂2の光弾性定数の絶対値が、例えば、4000×10-12Pa-1未満であり、他方の光弾性ポリウレタン樹脂2の光弾性定数の絶対値が、例えば、4000×10-12Pa-1以上である。
【0095】
光弾性ポリウレタン樹脂2の光弾性定数は、「築地光雄、高和宏行、田實佳郎著“光学フィルム用・光弾性定数測定システムの開発”、精密学会誌73、253-258(2007)」の「光弾性定数測定方法」の記載に準拠して測定することができる。
【0096】
また、光弾性定数の測定とともに、光弾性ポリウレタン樹脂2の歪光学定数とヤング率とが求められる。
【0097】
光弾性ポリウレタン樹脂2の歪光学定数は、光弾性ポリウレタン樹脂2の変形量に対する、かかる変形によって発生する複屈折の強さの割合を示す。
【0098】
光弾性定数、歪光学定数およびヤング率は、下記式(1)を満足する。
【0099】
光弾性定数=歪光学定数÷ヤング率 (1)
従って、光弾性ポリウレタン樹脂2の光弾性定数を上記した所望の範囲に設定するには、歪光学定数およびヤング率を調整する。
【0100】
具体的には、歪光学定数が高いほど、また、ヤング率が低いほど、光弾性定数が高くなるが、ヤング率が過度に低いと、成形性が低下する場合がある。
【0101】
そのため、光弾性ポリウレタン樹脂2の25℃におけるヤング率は、例えば、2.0MPa以上、好ましくは、3.0MPa以上、より好ましくは、4.0MPa以上であり、例えば、5.0MPa以下、好ましくは、4.9MPa以下、より好ましくは、4.8MPa以下である。
【0102】
光弾性ポリウレタン樹脂2のヤング率が上記した範囲未満である場合には、光弾性ポリウレタン樹脂2が軟らか過ぎて傷付き易く、加工性が低下する。光弾性ポリウレタン樹脂2のヤング率が上記した範囲を超過する場合には、光弾性ポリウレタン樹脂2が硬すぎるため、光弾性が低下する。
【0103】
そのため、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2のヤング率は、好ましくは、互いに同程度である。
【0104】
一方、上記した互いに異なる光弾性定数を得る観点から、光弾性ポリウレタン樹脂2の25℃における歪光学定数は、好ましくは、互いに異なる。
【0105】
好ましくは、上記した所望の光弾性定数を得るには、光弾性ポリウレタン樹脂2の25℃のヤング率が2MPa以上3MPa以下の場合には、25℃の歪光学定数が、例えば、6000×10-6以上(通常、10000×10-6以下)であり、光弾性ポリウレタン樹脂2の25℃のヤング率が3MPaを超過し5MPa以下の場合には、25℃の歪光学定数は、例えば、10000×10-6以上(通常、30000×10-6以下)である。
【0106】
そして、各光弾性ポリウレタン樹脂2の歪光学定数が、上記範囲内で互いに異なる場合、各光弾性ポリウレタン樹脂2の間における歪光学定数の差異は、例えば、100×10-6以上、好ましくは、500×10-6以上、より好ましくは、1000×10-6以上であり、例えば、20000×10-6以下、好ましくは、10000×10-6以下、より好ましくは、8000×10-6以下である。
【0107】
歪光学定数の差異が上記範囲であれば、優れた検知感度の感圧センサ1を得ることができる。
【0108】
光弾性ポリウレタン樹脂2のガラス転移温度は、例えば、-60℃以上、好ましくは、-50℃以上、より好ましくは、-40℃以上であり、例えば、25℃未満、好ましくは、0℃未満、より好ましくは、-25℃未満である。
【0109】
光弾性ポリウレタン樹脂2のガラス転移温度が上記した下限未満である場合には、光弾性ポリウレタン樹脂2の加工性および耐傷付き性が低下する場合がある。また、光弾性ポリウレタン樹脂2のガラス転移温度が、上記した上限以上である場合には、上記した所望の光弾性定数を得にくくなる場合がある。
【0110】
そのため、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2のガラス転移温度は、好ましくは、互いに同程度である。
【0111】
なお、光弾性ポリウレタン樹脂2のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置を用いて、周波数10Hzで、温度分散モード(昇温速度5℃/min)の測定により、得ることができる。
【0112】
また、上記したガラス転移温度の測定では、同時に、貯蔵伸長弾性率E’、損失伸長弾性率E’’および損失正接tanδが得られる。
【0113】
光弾性ポリウレタン樹脂2の25℃における貯蔵伸長弾性率E’は、例えば、1×106~1×108Paであり、25℃における損失伸長弾性率E’’は、例えば、1×104~1×108Paであり、25℃における損失正接tanδは、例えば、0.01~0.2である。
【0114】
そして、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2は、
図1に示されるように、互いに略同サイズの平面視略矩形のシート状に形成されており、上記したように、第3方向(厚み方向)に積層配置されることにより、ポリウレタン積層体3を形成している。
【0115】
各光弾性ポリウレタン樹脂2のサイズは、特に制限されないが、長さ(第1方向長さ)が、例えば、1mm以上、好ましくは、10mm以上であり、例えば、3000mm以下、好ましくは、80mm以下である。また、幅(第2方向長さ)が、例えば、1mm以上、好ましくは、5mm以上であり、例えば、150mm以下、好ましくは、50mm以下である。また、厚み(第3方向長さ)が、例えば、0.5mm以上、好ましくは、1mm以上であり、例えば、10mm以下、好ましくは、3mm以下である。
【0116】
また、ポリウレタン積層体3の総厚みは、例えば、1mm以上、好ましくは、2mm以上であり、例えば、30mm以下、好ましくは、10mm以下である。
【0117】
このような光弾性ポリウレタン樹脂2およびポリウレタン積層体3は、例えば、図示しない平坦な支持部材(ステージ)上に載置される。
【0118】
また、光弾性ポリウレタン樹脂2およびポリウレタン積層体3は、必要に応じて、ケースに収納することもできる。この場合、光弾性ポリウレタン樹脂2に、後述する荷重に基づく変形を生じさせるため、好ましくは、剛性が比較的低いケースを用いるか、または、ケースの内壁と光弾性ポリウレタン樹脂2との間に空隙を設ける。
【0119】
光センサ4は、
図1に示されるように、ポリウレタン積層体3の第1方向(光弾性ポリウレタン樹脂2の長手方向)一方側に配置される発光部7と、第1方向(光弾性ポリウレタン樹脂2の長手方向)他方側に配置される受光部8とを備えている。
【0120】
なお、感圧センサ1では、通常、ポリウレタン積層体3の一方側端部と、発光部7とが密着し、また、ポリウレタン積層体3の他方側端部と、受光部8とが密着する。
図1では、説明のため、ポリウレタン積層体3、発光部7および受光部8を、互いに離隔して示している。
【0121】
発光部7は、公知の発光部材を備えている。発光部材は、例えば、各光弾性ポリウレタン樹脂2に均一に光を導入できるように、ポリウレタン積層体3の第1方向一方側に単数または複数設けられている。つまり、発光部材は、光弾性ポリウレタン樹脂2の第1方向(光弾性ポリウレタン樹脂2の長手方向)の一方側端面と対向配置されている。これにより、発光部材は、各光弾性ポリウレタン樹脂2に対して、第1方向(光弾性ポリウレタン樹脂2の長手方向)の一方側端面から、光を入射可能としている。また、1つの発光部7に設けられる発光部材の数は、特に制限されず、例えば、1つの光弾性ポリウレタン樹脂2に対して1つの発光部材が設けられていてもよく、また、複数(好ましくは、すべて)の光弾性ポリウレタン樹脂2に対して1つの発光部材が設けられていてもよい。発光部材としては、特に制限されないが、例えば、半導体レーザー(波長405nm~1064nm)、発光ダイオードや蛍光灯、ハロゲンランプ、ハングステンランプなどが挙げられる。
【0122】
また、発光部7は、必要に応じて、光ファイバーなどの光導波路を備え、光導波路を介して、発光部材から光弾性ポリウレタン樹脂2に光を入射可能としていてもよい。
【0123】
また、発光部7は、
図1において仮想線で示されるように、制御部6に電気的に接続されている。
【0124】
制御部6は、発光部7を電気的に制御するECU(Electronic Control Unit)であり、演算領域としての演算部と、記憶領域としてのメモリ部とを備えている。このような制御部6から発せられる電気信号に応じて、発光部材の発光のON/OFFが、制御される。
【0125】
受光部8は、公知の受光部材を備えている。受光部材は、例えば、発光部材の数に応じて複数設けられており、光弾性ポリウレタン樹脂2の第1方向(光弾性樹脂2の長手方向)の他方側端面と対向配置されている。これにより、各受光部材は、各光弾性ポリウレタン樹脂2を長手方向一方側から他方側に通過した光を、受光可能としている。受光部材としては、受光した光の強度を電気信号(光信号)に変換可能な素子が挙げられ、例えば、フォトダイオードなどが挙げられる。
【0126】
また、受光部8は、必要に応じて、反射板などの反射部材を備え、反射部材を介して、光弾性ポリウレタン樹脂2から受光部材に光を導入可能としていてもよい。
【0127】
また、
図1において仮想線で示されるように、受光部8には、処理部5が電気的に接続されている。
【0128】
処理部5は、光センサ4が光弾性ポリウレタン樹脂2毎に検知した光信号から、測定荷重を算出するために設けられている。
【0129】
処理部5は、受光部8において受光された光の強度を分析するための分析処理ユニットであり、演算領域としての演算部と、記憶領域としてのメモリ部とを備えている。
【0130】
処理部5のメモリ部には、光弾性ポリウレタン樹脂2に負荷された荷重と、その荷重が負荷されたときに光弾性ポリウレタン樹脂2を通過した光信号の強度との相関データが、光弾性ポリウレタン樹脂2毎に格納されている。
【0131】
さらに、光センサ4は、単数または複数(好ましくは、2つ)の偏光板10を備えている。偏光板10は、例えば、発光部7およびポリウレタン積層体3の間や、受光部8およびポリウレタン積層体4の間などに、それぞれ配置される。そして、これら偏光板10は、互いに異なる振動波を通過可能とする。
【0132】
より具体的には、例えば、発光部7およびポリウレタン積層体3の間には、光の左右振動波(横波)を通過させる偏向板10Aが配置される。
【0133】
一方、受光部8およびポリウレタン積層体3の間には、光の上下振動波(縦波)を通過させる偏光板10Bが配置される。
【0134】
このような偏光板10によって、受光部8で受光される光と、ポリウレタン積層体3に負荷される荷重との相関関係を得ることができる。
【0135】
すなわち、発光部7において生じた光は、偏光板10Aを通過した後、ポリウレタン積層体3に照射される。
【0136】
このとき、
図2Aが参照されるように、ポリウレタン積層体3に荷重が負荷されていなければ、各光弾性ポリウレタン樹脂2は変形しないため、複屈折を生じない。
【0137】
そのため、偏光板10Aおよび光弾性ポリウレタン樹脂2を通過した光は、偏光板10Bにおいて遮られる。その結果、受光部8で受光される光信号の強度は、小さくなる。
【0138】
一方、
図2Bが参照されるように、ポリウレタン積層体3に対して、例えば、第3方向一方側(上側)から他方側(下側)に荷重が負荷されると、各光弾性ポリウレタン樹脂2は、荷重に応じた変形を生じ、複屈折を生じさせる。
【0139】
そのため、偏光板10Aおよび光弾性ポリウレタン樹脂2を通過し、複屈折された光が、偏光板10Bを通過して、受光部8で受光される。その結果、受光部8で受光される光信号の強度は、大きくなる。なお、複屈折の度合いと、荷重の大きさとの関係は、比例するものではなく、光弾性定数の絶対値に応じた所定波形のグラフとして示される。
【0140】
また、
図2Bにおいて、各光弾性ポリウレタン樹脂2は、光弾性定数の絶対値が互いに異なるため、発光部7から照射される光の強度(発光強度)が同一であり、また、各光弾性ポリウレタン樹脂2に対して負荷される荷重が同一であっても、各光弾性ポリウレタン樹脂2内における複屈折の度合いが異なり、その結果、受光部8で受光される光信号の強度(受光強度)が異なる。
【0141】
そこで、感圧センサ1では、各光弾性ポリウレタン樹脂2に対して、負荷される荷重の大きさと、複屈折による減衰後の光の強度(受光強度)との相関データを予め取得し、処理部5に格納する。
【0142】
例えば、受光部材としてフォトダイオードを用いる場合、各光弾性ポリウレタン樹脂2を通過した光(複屈折により減衰した後の光)の強度(受光強度)を、それぞれフォトダイオードによって電圧値に変換する。そして、各電圧値と、負荷される荷重の大きさとの相関データを取得する。このような相関データは、例えば、各光弾性ポリウレタン樹脂2において、互いに異なる波形のグラフとして示される。
【0143】
相関データの一例としては、特定の光弾性定数(絶対値)を有する光弾性ポリウレタン樹脂2Aでは、
図3Aに示すように、特定の波形の相関データが得られる。
【0144】
これに対して、光弾性ポリウレタン樹脂2Bは、光弾性ポリウレタン樹脂2Aの光弾性定数(絶対値)とは異なる光弾性定数(絶対値)を有するため、
図3Bに示すように、
図3Aの波形とは異なる波形の相関データが得られる。
【0145】
そして、これら相関データが、処理部5のメモリ部に格納される。
【0146】
また、処理部5のメモリ部には、上記の相関データから、後述の方法で光信号から荷重を算出するための荷重検知プログラムが格納されている。
【0147】
これにより、処理部5は、下記の荷重検知方法によって、受光部8において検知された光に基づく光信号(例えば、電圧値)に基づいて、光弾性ポリウレタン樹脂2に負荷された推定荷重を算出可能としている。
【0148】
次に、この感圧センサ1を用いて、光弾性ポリウレタン樹脂2に荷重が負荷された場合の推定荷重を荷重検知プログラムにより算出する方法(荷重検知方法)について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0149】
この荷重検知方法では、まず、制御部6の制御により発光部7の発光部材(ダイオードなど)から各光弾性ポリウレタン樹脂2(光弾性ポリウレタン樹脂2Aおよび光弾性ポリウレタン樹脂2B)に、光を入射する。
【0150】
そして、各光弾性ポリウレタン樹脂2(光弾性ポリウレタン樹脂2Aおよび光弾性ポリウレタン樹脂2B)を通過した光を、受光部8の受光部材(フォトダイオードなど)で受光して、その受光した光の強度を、光信号として処理部5に入力する。例えば、受光部材としてフォトダイオードを用いる場合、各光弾性ポリウレタン樹脂2を通過した光の強度を、それぞれフォトダイオードによって電圧値に変換し、各電圧値を光信号(電気信号)として処理部5に入力する。
【0151】
このとき、上記した通り、受光部8で受光される光の強度と、光弾性ポリウレタン樹脂2に負荷された荷重との相関は、各光弾性ポリウレタン樹脂2間で互いに異なる。
【0152】
つまり、
図2Aに示されるように、光弾性ポリウレタン樹脂2に荷重が負荷されていなければ、各光弾性ポリウレタン樹脂2は、無変形状態である。この場合、各光弾性ポリウレタン樹脂2に対して入射された光は、複屈折を生じることなく各光弾性ポリウレタン樹脂2を通過し、偏光板10Bで遮られる。つまり、光弾性ポリウレタン樹脂2が無変形状態である場合、受光部8で受光される光の強度は、小さくなる。
【0153】
一方、例えば、
図2Bに示されるように、光弾性ポリウレタン樹脂2の第3方向一方側(上側)から第3方向他方側(下側)に荷重が負荷されている場合、各光弾性ポリウレタン樹脂2は、荷重に応じて変形を生じる。そして、各光弾性ポリウレタン樹脂2に対して入射された光は、変形部分において複屈折を生じ、その複屈折光が、偏光板10Bを通過して、受光部8で受光される。つまり、光弾性ポリウレタン樹脂2が変形状態である場合、受光部8で受光される光の強度は、大きくなる。
【0154】
このとき、上記の各光弾性ポリウレタン樹脂2は、光弾性定数の絶対値が互いに異なるため、上記した通り、変形状態の各光弾性ポリウレタン樹脂2を通過した光の強度(受光強度LR)の減衰の度合いは、荷重の大きさに応じて変化するが、それら光の強度と荷重との相関は、各光弾性ポリウレタン樹脂2間で互いに異なる。
【0155】
そのため、この検知方法では、まず、光センサ4が光弾性ポリウレタン樹脂2毎に検知した光信号の強度から、上記の相関データに基づいて、光弾性ポリウレタン樹脂2毎に、複数の推定荷重を算出する。
【0156】
すなわち、
図3Aおよび
図3Bが参照されるように、光信号の強度と、荷重との相関データは、特定の波形を有するため、受光部8が特定の強度の光信号(例えば、特定の電圧値)を検知した場合には、その強度となる荷重の候補が複数選出される。
【0157】
より具体的には、
図3Aが参照されるように、受光部8が、光弾性ポリウレタン樹脂2Aを通過した光を、特定の光信号の強度(例えば、電圧値0.6V)として検知した場合、その光信号の強度となる推定荷重の候補は、複数選出される(例えば、5.2N、7.4N、9.5N、12.0N、15.1N、16.0N、18.3N、19.4N)。
【0158】
また、
図3Bが参照されるように、受光部8が、光弾性ポリウレタン樹脂2Bを通過した光を、特定の光信号の強度(例えば、電圧値0.8V)として検知した場合、その光信号の強度となる推定荷重の候補も、複数選出される(例えば、6.9N、10.0N、13.7N、16.0N、19.9N、26.4N、27.8N)。
【0159】
そこで、この荷重検知方法では、光弾性ポリウレタン樹脂2毎に算出された複数の推定荷重から、すべての光弾性ポリウレタン樹脂2に共通する推定荷重を、測定荷重として抽出する。
【0160】
例えば、光弾性ポリウレタン樹脂2Aを通過した光の強度から選出された推定荷重の候補(例えば、5.2N、7.4N、9.5N、12.0N、15.1N、16.0N、18.3N、19.4N)と、光弾性ポリウレタン樹脂2Bを通過した光の強度から選出された推定荷重の候補(例えば、6.9N、10.0N、13.7N、16.0N、19.9N、26.4N、27.8N)とを対比し、共通する推定荷重(例えば、16.0N)を、測定荷重として抽出する。
【0161】
つまり、この荷重検知方法では、各光弾性ポリウレタン樹脂2において選出された推定荷重のうち、すべての光弾性ポリウレタン樹脂2で共通する値を、測定荷重とする。
【0162】
このように、上記の感圧センサ1では、光弾性定数の絶対値が互いに異なる複数の光弾性ポリウレタン樹脂2のそれぞれを通過した光を、光センサ4により検知する。検知された光信号は、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2の光弾性定数の絶対値が互いに異なるため、光弾性ポリウレタン樹脂2毎に異なる。つまり、特定の荷重が負荷されると、検知された光信号は、光弾性ポリウレタン樹脂2毎に異なる。
【0163】
そのため、処理部5は、光弾性ポリウレタン樹脂2毎に異なった光信号から、測定荷重を算出することができる。
【0164】
その結果、1つの光弾性ポリウレタン樹脂2から検知された光信号(電圧)を積算することなく、測定荷重を算出できるので、簡易な構成により、精度よく荷重を測定することができる。
【0165】
とりわけ、上記の感圧センサ1では、処理部5が、光弾性ポリウレタン樹脂2に負荷された荷重と光信号の強度との相関データが格納されたメモリ部を備えている。
【0166】
そして、処理部5では、光弾性ポリウレタン樹脂2毎に、検知された光信号の強度から複数の推定荷重を算出し、すべての光弾性ポリウレタン樹脂2に共通する推定荷重を、測定荷重として抽出する。
【0167】
そのため、簡易な演算により、確実に荷重を測定することができる。
【0168】
また、上記の感圧センサ1では、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2が、荷重が負荷される方向に重なって配置されている。そのため、負荷される荷重が、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2に一律に作用する。その結果、確実な荷重の測定を達成することができる。
【0169】
なお、上記した説明では、荷重が負荷される第3方向を、鉛直方向としているが、荷重が負荷される方向は、特に制限されず、例えば、水平方向であってもよく、その他の任意の方向であってもよい。
【0170】
また、上記した説明では、予め測定された荷重と光信号の強度との相関データから、光弾性ポリウレタン樹脂2に負荷された荷重を算出しているが、処理部5による荷重の算出方法は、上記に限定されない。
【0171】
例えば、
図4に示されるように、光弾性ポリウレタン樹脂2は、荷重に応じた複屈折を生じるため、偏光板を介して複屈折光を観察すれば、荷重に応じた干渉縞Sが発現する。そこで、光弾性ポリウレタン樹脂2に負荷された荷重と、その荷重により生じる複屈折光の干渉縞との相関データを、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2毎に取得することができる。そして、処理部5(
図1参照)は、荷重が負荷されたときに生じる干渉縞Sを観測し、上記の相関データに基づいて、干渉縞Sから荷重を算出することもできる。
【0172】
また、上記した説明では、感圧センサ1は、光弾性ポリウレタン樹脂2を2つ備えているが、光弾性ポリウレタン樹脂2の数は、2つ以上であればよく、その数は特に制限されない。感圧センサ1は、3つ以上の光弾性ポリウレタン樹脂2を備えていてもよい。
【0173】
図5において、第2実施形態として、3つの光弾性ポリウレタン樹脂2を備える感圧センサ1を示す。以下、3つの光弾性ポリウレタン樹脂2を、それぞれ、光弾性ポリウレタン樹脂2A、光弾性ポリウレタン樹脂2Bおよび光弾性ポリウレタン樹脂2Cと称して区別する。
【0174】
図5に示す第2実施形態では、第3方向他方側(下側)から第3方向一方側(上側)に向けて、光弾性ポリウレタン樹脂2C、光弾性ポリウレタン樹脂2Bおよび光弾性ポリウレタン樹脂2Aが、順次積層されている。
【0175】
このような第2実施形態では、光弾性ポリウレタン樹脂2A、光弾性ポリウレタン樹脂2Bおよび光弾性ポリウレタン樹脂2Cのそれぞれについて、負荷荷重と光信号の強度との相関データが取得され、処理部5のメモリ部に格納される。
【0176】
そして、ポリウレタン積層体3に荷重が負荷された場合には、光弾性ポリウレタン樹脂2A、光弾性ポリウレタン樹脂2Bおよび光弾性ポリウレタン樹脂2Cのそれぞれにおいて、光信号の強度に基づく荷重の候補が選出される。
【0177】
その後、各光弾性ポリウレタン樹脂2において選出された推定荷重のうち、すべての光弾性ポリウレタン樹脂2で共通する値を、推定荷重とする。
【0178】
なお、上記の感圧センサ1は、光弾性ポリウレタン樹脂2を多く備えるほど、より精密に屈曲方向を検知することができる。そのため、感圧センサ1における光弾性ポリウレタン樹脂2の数は、3つ以上であることが好ましい。一方、光弾性ポリウレタン樹脂2を多く備えるほど、生産効率およびコスト性が低下するため、感圧センサ1における光弾性ポリウレタン樹脂2の数は、通常、10つ以下、好ましくは、5つ以下、より好ましくは、4つ以下、とりわけ好ましくは、3つである。
【0179】
また、上記した説明では、各光弾性ポリウレタン樹脂2は、平面視略矩形のシート状に形成されているが、光弾性ポリウレタン樹脂2の形状は、特に制限されず、測定対象に応じて、種々変更することができる。
【0180】
例えば、光弾性ポリウレタン樹脂2に対する荷重が不均一となり、光センサ4の光が通過する光路に対して、適切に荷重を負荷できない可能性がある場合には、
図6に第3実施形態として示すように、光弾性ポリウレタン樹脂2を、第3方向一方側に向けて突出させることができる。
【0181】
この第3実施形態では、荷重が負荷される方向(第3方向)における最上層の光弾性ポリウレタン樹脂2Aの、光センサ4の光が通過する光路と重なる部分が、荷重が負荷される方向(第3方向上側から下側)とは反対方向(第3方向下側から上側)に向けて、突出している。
【0182】
なお、突出する部分は、光弾性ポリウレタン樹脂2において、光センサ4の光が通過する光路と重なる部分の全部であってもよく、一部であってもよい。例えば、
図6では、光弾性ポリウレタン樹脂2Aの幅方向(第2方向)中央部分が最も第3方向一方側へ隆起し、幅方向(第2方向)両端部およびその近傍が隆起しない形状に、形成されている。
【0183】
このような感圧センサ1では、光弾性ポリウレタン樹脂2の光路と重なる部分が、荷重が負荷される方向と反対方向に突出している。そのため、測定対象は、突出する部分と最初に接触することができる。そうすると、光弾性ポリウレタン樹脂2の光路と重なる部分に、適切に荷重を負荷することができる。その結果、より精度のよい荷重を測定を達成することができる。
【0184】
また、
図5に示す第2実施形態においても、上記と同様に、光弾性ポリウレタン樹脂2を第3方向一方側に向けて突出させることができる(
図5仮想線参照)。
【0185】
また、上記の説明では、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2は、荷重が負荷される第3方向に沿って積層配置されているが、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2の配置は、上記に限定されない。
【0186】
より具体的には、例えば、
図7において第4実施形態として示すように、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2を、荷重が負荷される第3方向と交差する方向に沿って並ぶように配置することもできる。
【0187】
図7において、第4実施形態として、3つの光弾性ポリウレタン樹脂2が、荷重が負荷される第3方向と直交する第2方向に沿って、並列配置されている感圧センサ1を示す。以下、3つの光弾性ポリウレタン樹脂2を、それぞれ、光弾性ポリウレタン樹脂2D、光弾性ポリウレタン樹脂2Eおよび光弾性ポリウレタン樹脂2Fと称して区別する。
【0188】
図7に示す第4実施形態では、第2方向一方側から第2方向他方側に向けて、光弾性ポリウレタン樹脂2D、光弾性ポリウレタン樹脂2Eおよび光弾性ポリウレタン樹脂2Fが、順次並列されている。
【0189】
このような第4実施形態では、光弾性ポリウレタン樹脂2D、光弾性ポリウレタン樹脂2Eおよび光弾性ポリウレタン樹脂2Fのそれぞれについて、負荷荷重と光信号の強度との相関データが取得され、処理部5のメモリ部に格納される。
【0190】
そして、光弾性ポリウレタン樹脂2D、光弾性ポリウレタン樹脂2Eおよび光弾性ポリウレタン樹脂2Fのそれぞれについて、一様に荷重が負荷された場合には、光弾性ポリウレタン樹脂2D、光弾性ポリウレタン樹脂2Eおよび光弾性ポリウレタン樹脂2Fのそれぞれにおいて、光信号の強度に基づく荷重の候補が選出される。
【0191】
その後、各光弾性ポリウレタン樹脂2において選出された推定荷重のうち、すべての光弾性ポリウレタン樹脂2で共通する値を、推定荷重とする。
【0192】
このような感圧センサ1では、すべての光弾性ポリウレタン樹脂2に一様に荷重が付加される必要はあるが、複数の光弾性ポリウレタン樹脂2が、荷重が負荷される方向と交差する方向に並んで配置されているため、感圧センサ1の薄型化を図ることができる。
【0193】
また、
図7に示す第4実施形態においても、上記と同様に、光弾性ポリウレタン樹脂2を第3方向一方側に向けて突出させることができる(
図7仮想線参照)。
【0194】
なお、上記の感圧センサ1では、光弾性ポリウレタン樹脂2の複屈折により生じた光を光センサ4の偏光板10により抽出し、その光信号と荷重との相関データから、荷重を算出しているが、例えば、偏光板10を用いることなく、複屈折による光強度の減衰と、荷重との相関データから、荷重を算出してもよい。
【0195】
また、上記の感圧センサ1は、光弾性ポリウレタン樹脂2の第1方向一方側から光が照射され、第1方向他方側から光が射出される透過型センサであるが、例えば、光弾性ポリウレタン樹脂2の第1方向一方側から光が照射され、第1方向他方側において光が再帰性反射材により反射され、光弾性ポリウレタン樹脂2の第1方向一方側から光が射出される反射型センサであってもよい。
【0196】
そして、このような感圧センサ1は、簡易な構成により、精度よく荷重を測定することができる。そのため、各種産業分野において、ロボット、機器などの感圧部材として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0197】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0198】
製造例1<光弾性ポリウレタン樹脂A>
ガラス製フラスコに、PTG-1000(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、水酸基価111.5mgKOH/g、保土谷化学社製)100質量部を仕込み、減圧下、120℃で2時間乾燥し、温度を80℃に下げ、窒素で常圧に戻した。次いで、撹拌しながら、TMP(トリメチロールプロパン)1.0質量部を加え、温度を70℃に調整した。次いで、70℃で溶解したMDI-PH(4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、三井化学社製)20.2質量部(イソシアネートインデックス105)を投入し、撹拌混合した。
【0199】
その後、減圧下で30秒間脱泡し、窒素で常圧に戻した後、フラスコから取り出し、ポリウレタン組成物を得た。
【0200】
次いで、得られたポリウレタン組成物を、2mm厚シート型に流し込み、70℃で18時間硬化させることにより、シート状の光弾性ポリウレタン樹脂を得た。
【0201】
製造例2<光弾性ポリウレタン樹脂B>
ガラス製フラスコに、PTG-1000(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、水酸基価111.5mgKOH/g、保土谷化学社製)100質量部を仕込み、減圧下、120℃で2時間乾燥し、温度を80℃に下げ、窒素で常圧に戻した。次いで、撹拌しながら、TODI(3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート、日本曹達社製)9.2質量部(イソシアネートインデックス35)を投入した。次いで、撹拌しながら、TMP(トリメチロールプロパン)1.0質量部を加え、温度を70℃に調整した。次いで、70℃で溶解したMDI-PH(4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、三井化学社製)20.2質量部(イソシアネートインデックス105)を投入し、撹拌混合した。
【0202】
その後、減圧下で30秒間脱泡し、窒素で常圧に戻した後、フラスコから取り出し、ポリウレタン組成物を得た。
【0203】
次いで、得られたポリウレタン組成物を、2mm厚シート型に流し込み、70℃で18時間硬化させることにより、シート状の光弾性ポリウレタン樹脂を得た。
【0204】
<光弾性ポリウレタン樹脂の物性評価>
(1)光弾性定数およびヤング率
「築地光雄、高和宏行、田實佳郎著“光学フィルム用・光弾性定数測定システムの開発”、精密学会誌73、253-258(2007)」の「光弾性定数測定方法」の記載に準拠して測定し、光弾性ポリウレタン樹脂の25℃における歪み光学定数およびヤング率を得るとともに、それらから25℃における光弾性定数を算出した。上記測定には、波長630nmのレーザー光を使用した。光弾性定数およびヤング率を表1に示す。
【0205】
(2)動的粘弾性
光弾性ポリウレタン樹脂を、動的粘弾性測定装置(VES-F-III、VISCO-ELASTICSPECTROMETER、岩本製作所社製)を用いて、昇温速度5℃/分、振動数10Hz、振幅±0.01mmの温度分散モードにて測定し、貯蔵伸長弾性率(E’)、損失伸長弾性率(E’’)および損失正接(tanδ)を求めるとともに、得られたデータの損失正接(tanδ)のピーク値の温度を、ガラス転移温度(Tg)とした。貯蔵伸長弾性率(E’)、損失伸長弾性率(E’’)、損失正接(tanδ)およびガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
【0206】
【0207】
実施例1<感圧センサ>
製造例1および製造例2で得られた光弾性ポリウレタン樹脂を用いて、
図1に示すように、感圧センサを作製した。
【0208】
すなわち、光弾性ポリウレタン樹脂Aと光弾性ポリウレタン樹脂Bとを積層した。
【0209】
また、各光弾性ポリウレタン樹脂の両端を裁断して平滑化して、それぞれの一方側端部に、光源および光ファイバーU-49(商品名、キーエンス製)を接着剤で固定した。これにより、各光弾性ポリウレタン樹脂に光を入射可能とした。また、各光弾性ポリウレタン樹脂の他方側端部には、光弾性ポリウレタン樹脂を通過した光を検出するために、フォトダイオードを備えたアンプFS-N11MN(商品名、キーエンス製)を、反射板を介して接続した。そして、アンプから出力される電圧値を、データロガーNR-600(商品名、キーエンス製)にて記録した。
【0210】
<<荷重-電圧グラフ>>
上記の感圧センサと同様にして、光源およびフォトダイオードを、単独の各光弾性ポリウレタン樹脂に対して接続した。
【0211】
そして、各光弾性ポリウレタン樹脂にフォースゲージを用いて荷重を徐々に加え、荷重に応じた電圧値を観測し、グラフ化した。光弾性ポリウレタン樹脂Aの荷重-電圧グラフを、
図3Aに示す。また、光弾性ポリウレタン樹脂Bの荷重-電圧グラフを、
図3Bに示す。
【0212】
そして、光弾性ポリウレタン樹脂Aおよび光弾性ポリウレタン樹脂Bを積層した感圧センサに対して、質量未知の荷重を負荷したところ、光弾性ポリウレタン樹脂Aを通過した光は0.6Vの出力値を示し、光弾性ポリウレタン樹脂Bを通過した光は0.8Vの出力値を示した。
【0213】
次いで、各出力値と、上記の荷重-電圧グラフとを対比した。
【0214】
図3Aに示される光弾性ポリウレタン樹脂Aの荷重-電圧グラフを参照すると、光弾性ポリウレタン樹脂Aを通過した光が電圧値0.6Vを示す場合、荷重の候補は、5.2N、7.4N、9.5N、12.0N、15.1N、16.0N、18.3N、19.4Nである。
【0215】
一方、
図3Bに示される光弾性ポリウレタン樹脂Bの荷重-電圧グラフを参照すると、光弾性ポリウレタン樹脂Bを通過した光が電圧値0.8Vを示す場合、荷重の候補は、6.9N、10.0N、13.7N、16.0N、19.9N、26.4N、27.8Nである。
【0216】
これらの荷重の候補のうち、共通する推定荷重は、16.0Nであった。
【0217】
そのため、感圧センサに対して負荷され荷重は、16.0Nであると推測された。
【0218】
なお、実際に感圧センサに対して負荷された荷重を、市販の測定器で測定したところ、16.0Nであった。
【符号の説明】
【0219】
1 感圧センサ
2 光弾性ポリウレタン樹脂
3 カバー部材
4 光センサ
5 処理部
6 制御部
7 発光部
8 受光部